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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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41.  マディソン郡の橋
メロドラマで好きなのは、まだ二人が親しくないころ、丁寧な言葉づかいをしながら意識しあってく出会いのあたりと、別れのとこで、愛が成就してるあたりはつまんないの。これもそう。出会い、車中でのくどいほどの切り返しの後に橋の場になって、歩き回るカメラ(ステディカム?)がイキた。キンケイドが出ていく場も、カメラがねっとりと追いかけていく。外は闇。明け方のほうが美しいけれどそれじゃ人に見られてしまう。映画としての山場は雨の町。カッパのように頭髪を張り付かせたイーストウッド。信号待ちで二台の車がつながる。バックミラーにかけられたペンダント。ドアノブにかかるフランチェスカの手。追いすがるように追い求めるようにカメラがキンケイドの車を捉え続けようとする。ホロリ。不倫の噂で村八分になっている女を置いて「世間」というものがより濃密になった。この人の映画はいつもちょいと長い気がする。現代の子どもらを入れる必要があったかなあ。
[映画館(字幕)] 6点(2009-11-17 11:59:21)(良:1票)
42.  マッドマックス2
ちょっと『時計じかけのオレンジ』的な未来予想図で、暴力の方面により“進化”したらしいSF。昔の缶詰だけに食料を頼っているのかな。ガソリンを求めて暴れ回ってる、っていうのが面白い。でも主人公の心意気みたいのは股旅ものに通じていて、未来へ希望をかけるような連帯には目をつぶり、一人荒野を行くの。義理を重んじ、しかし復讐のためには命の危険もかえりみない。かつてのヒッピーコミューンのイメージも重なってるか。追っかけは迫力あり。ローアングルで、時々クレーンの上下も入れて、満足する長さで。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-01 11:53:22)
43.  また逢う日まで
主人公をナイーブな学生にしたのはきわどいところで、下手すると嫌なヤツになっちゃうのだが、学生仲間などを丁寧に描いていたから良かったんだろう。大事なことは何一つしゃべり合えない仲間たち。軍人になった次兄ともう一度昔のように語り合えたら、なんてのも、この主人公像のおかげで不自然でない。ナイーブな作品に登場人物を合わせてしまったわけだ。「弟的」なるものを見る目で主人公を眺めるわけ。しかし無邪気さがそのまま戦争の対極にあったかって言うとそうでもなく、無邪気さは戦争協力に使われていた部分もあったと思う。でも少なくとも軍隊的なものとは相容れなかったことは確かだ。この作品としてのナイーブさは現代では通用しないだろうなあ。こっちが照れてしまう。
[映画館(邦画)] 7点(2009-09-26 11:50:33)
44.  マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶
あたりさわりのない賛辞の合い間に、いくつかの発言が耳に残った。『甘い生活』でフェリーニは、平均的な人間を探していて彼に行き当たったのだそうだ。そういう反スター的なスタートでフェリーニと組んで、なんと非凡な役柄を演じてきたことか。マストロヤンニは“途方に暮れる”演技で最も光ったと思うんだけど、「気弱さを魅力に変えた男」と誰かが言っていた。本当にそう思う。それまでスターってのは、自分を突出させる場面で魅力を出していたのを、彼は逆に引いた場面で見せた。ヴィスコンティの発言「怠けものとか不精とか言われるが、彼はそれで自分の繊細さを守っていたんだ」ってのも分かる気がする。あと電話魔だったそうで、撮影の間にすぐいなくなって電話を掛けていたって。ヴィスコンティは彼の唯一の欠点と言ったし、フェリーニはセットに公衆電話を置こうかと思った、と言う。アンゲロプロスのマストロヤンニ観を聞きたかったが、インタビューはなかった。舞台人としてのマストロヤンニを外国の我々は知らないわけで、さらにもっと多面的な魅力を見せていたのだろう。私の大好きな映画『最後の晩餐』の数カットとテーマの断片を、随分久しぶりに見て聞けたのが嬉しい。クラウディア・カルディナーレは知らないおばあさんになっていた。
[DVD(字幕)] 6点(2009-09-21 12:03:03)
45.  幻の湖
これを見た試写会は、私にとって忘れられない思い出。キネ旬の試写会に応募したら当たって、うわっラッキー、と期待いっぱいでイイノホールで見た。満員。だって橋本忍が、誰にも遠慮なく自分が最も書きたいものを書いて映画化したわけでしょ、期待するなってほうが無理。だいたい日本映画は冒険をしなさ過ぎると常々思ってて、作者が本当に作りたいものより、平均的な観客が60パーセント楽しめる企画ばかりが通っちゃう。これでは未来はないよ、と考えてたからすごく期待した。しかしすべてが裏目に出たようだ。こういう結果を見ると、臆病な企画しか出来ない企業の気持ちも、理解できなくはないなと思った。最初のうちは満員の観客も?となりつつも、なんとかついていこうと黙って鑑賞していた。なにしろまだマッサラな状態で、ただ橋本氏の名声だけを信じて見ているのである。まったく独自の因果律で登場人物が動く超前衛の作品なのだろうか、と皮肉でなくかなりマジに考えたところもあったんだけど、シロの幻が主人公を励ます目を覆いたくなるような陳腐な場面があったりすると、これはただ単純にひどい映画なのではないかという判断に近づき、また満員の観客も、おそらく同じような経過をたどって同じような結論に至ったらしく、中盤からはあちこちでプッという笑いが起こり、次第に遠慮がなくなり、後半の追っかけから宇宙に飛ぶあたりはもう爆笑の渦。こうなったらもう笑って楽しみましょうや、という気分が客席を一体感で包み込む。どよもす、というのはこういう状態を言うんだろうなあ、などとしみじみ思いつつ、私も涙を流して笑った。あんなに盛り上がった試写会というのは、後にも先にも経験がない。私が座った席の前のほうに関係者席があり、見間違ったのでなければ、藤村志保と江波杏子が招待されていて、藤村さんはじっと端正なお姿のまま鑑賞を続け、江波さんは豪快に笑い転げていた。それ以来ずっと江波杏子のファンである。映画が終わって退場していく人々の顔は、つまらなかったにもかかわらず、みな晴れ晴れと輝いていた。いま見直すと評価はいくぶん変わるかも知れないが、あの日の思い出を大切に取っておきたい。思えばこう時間が前後に跳ぶ話法は『羅生門』や『生きる』や『切腹』と同じで、やはり橋本忍の刻印は押されていたのだ。
[試写会(邦画)] 4点(2009-08-20 12:12:03)(笑:2票)
46.  マイケル・コリンズ
殺人と戦争との境目はどこにあるのか、とか、テロリストと政治家とを区別する線は引けるのか、とか現代に生きる以上、気になるところを突いている。大きな敵を前にしての、穏健派と過激派との摩擦は、解消できないのだろうか、とか。つまり政治あるところ常に存在するテーマを扱ってて、さらにリーアム・ニーソンという謎めいたキャラクターを手に入れたのだから、もっと現場を離れた視点・歴史そのものをマナ板に乗せるような視点は持てなかっただろうか。もちろんアイルランド史にはまったく同情するけれども、愛国心ってものを腑分けしていくと、案外「英国帝国主義の横暴」に通じていくものもあったりし、英国だって英国なりの愛国心を対アイルランド政策で発揮しているわけだ。たしかに強大な敵に対して愛国心は抵抗の力として有効だが、愛国心というシステムそのものに潜む“それだけで止まらない”魔性を、冷静に分析する映画を期待したのだが。ジュリア・ロバーツは邪魔だった。
[映画館(字幕)] 6点(2009-04-30 12:04:39)
47.  股旅 三人やくざ 《ネタバレ》 
どじょっこふなっこのコーラスで季節を分ける。「秋」が仲代達矢、股旅もののシルエットが土手を枯れ枝ごしに歩いていく典型的なカットから始まる、秋空から曇天へと。これだけで観客は股旅ものの世界に没入できる。桜町弘子の憎悪で噛んだ口が愛情を込め出す演出。ちょい役だが、人情家のまかない浪花千栄子がいい。「冬」は一転、志村喬・松方弘樹で室内劇のおもむき。一人もん同士、子を求めるものと父を求めるもの、が家庭を夢見かけ、松方の笑いが崩す。任侠道ってのは、己れの心のなかに幸せを求める気持ちを認めてはならないのだ。とストイックで渋い秋冬のあとで、明るく菜の花が咲く「春」、中村錦之助が自ら任侠もののパロディをやる。子どもの小便の下流で水を飲んだりして、錦ちゃんかっこいい役ではないと最初から分かる。腹すかせて農民に一宿一飯の恩義を受け、コロシを頼まれるの。「で、それどういう人?」なんてあたりの口調がうまい。相手のサッと蝶を斬る手腕に、錦ちゃんもカチャカチャッとまねるあたりも笑わせる。追いつめられれば意地を見せるってとこが、任侠ものの型で、いくじなしの主人公でも同じ、ワーワー刀を振り回し、奇跡の逆転に向かう。剣豪宮本武蔵演じた直後にこういう役をやらせる東映の洒落っ気も嬉しいじゃないか。
[映画館(邦画)] 7点(2009-02-22 12:14:41)
48.  舞姫(1951)
多くの登場人物に奥行きが感じられず、とくに肝心のヒロインが戦前松竹メロドラマの延長線上の演技で、まあ失敗作の部類に入るだろうが、ただひとりウジウジした山村聡の旦那のみ印象的である。この人はテレビではホームドラマのしっかり父さんという印象が強かったけど、映画ではけっこう暗いの専門。『宗方姉妹』はこの前年か。監督した映画も暗い。被害者意識が強くて鬱陶しさを周囲に振りまいてしまうという人、戦中は神がかったことを言ってて、今はぼんやり腑抜けという設定。家父長が身の置きどころを失ってしまった時代のお父さんを代表した俳優なのだろう。木村功がタイツ姿になるが、踊ってはくれない。岡田茉莉子は棒読み状態。チラチラと銀座が映るけど、時代を味わえるというほどではなかった。
[映画館(邦画)] 5点(2009-01-23 12:11:47)
49.  幕間 《ネタバレ》 
ここらへん、シュールレアリズムとコメディとは根が一つだったんだなあ、と思わせる。戦争が深刻になると、シュールレアリズムも陰鬱になってしまうが、もともとは“おかしみ”の新発見でもあったんだ。技術的にはスローモーションの発見。大砲のまわりでジャンプする紳士たちのスローモーション、噴水の上のラグビーボール(?)を射つ男が屋上より転落し、棺のあとを紳士淑女がやはりスローモーションで飛び跳ねながら行進する。棺が疾走し人々も走って追いかける。ジャンプするバレリーナを下から撮ったスロー。とにかくスローモーションの新鮮さが嬉しかったみたい。街を映しただけでも何か違って見えてくる。ふだん熟知していたはずのものが違って見えてくるって、この発見はシュールレアリズムの思想そのままだし。
[映画館(字幕)] 6点(2009-01-02 11:14:27)(良:1票)
50.  迷子の警察音楽隊 《ネタバレ》 
真正面からおさえるキッチリした構図、ときどき入る無人の街の光景も幾何学的、そうした中で描かれるのが“人と人との気まずさ”なので、その対照が生きてくる。気まずさ、ってのは否定的なものではないんだな、と思う。思いやり、の変形なんだ。気まずい食卓の場、みんなで陰気に歌うセントルイス・ブルース、あのあともっと暗くなったかもしれないけど、でもみんなで歌ったという記憶はけっして陰気には残らないだろう。それでいいんじゃないか。無理にはしゃいで作られるワキアイアイより。恋の伝授の長回しの場、あれだって“気まずさ”の克服のモチーフだ。エジプト側からすれば迷子だが、イスラエル側からすれば一種のマレビト、恋を成就してくれた神々。ムッツリとごろごろ楽器を引っぱっている神々。イスラエル側からエジプト側に与えたプレゼントは、クラリネット協奏曲のエンディングの示唆だ。赤ちゃんが眠る小さな部屋のような終わり方なんて、うまいことを言う。
[DVD(字幕)] 7点(2008-11-18 12:17:43)(良:1票)
51.  マイ・フェア・レディ
すごく大ざっぱだけど、ミュージカル映画はダンス中心から歌中心に移行してすたれた、って言えないか。この64年はもうダンスは付けたりで、踊ってても絶頂期のハレバレとした感じが出ない。「踊りあかそう」なんてどんどん狭い部屋へ入ってしまい欲求不満が残る。「時間どおりに教会へ」もいろいろやってるんだけど、コワザって感じ。競馬場での白黒の効果は見事だったが、『巴里のアメリカ人』ですでにやってるし、それにこれはミュージカルの味とは関係ない。いや、いい映画だとは思うんです、思うんですけど、峠を過ぎたジャンルの緩さも目立つ作品なんだな。かえって翌年の『サウンド・オブ・ミュージック』は、もうミュージカルの形にこだわらないことで成功したと思うんだ、でもそれはまた別の話。あ、この2つの映画、手元の「ぴあシネマクラブ」によると、どちらも上映時間は172分だぞ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-10 09:17:02)(良:1票)
52.  マイ・ネーム・イズ・ジョー 《ネタバレ》 
前半、若くもない男女が次第に親密になっていくあたりの丁寧な進行。壁紙、70年代ポップスの歌手あてゲーム、セーラの仕事場に行ったとき「ああ、ジョー?」と受付の女性にももう知られていることが分かる、なんて。で、ボーリングを経て、恋人を殴った過去を告白するまでに。いっぽう甥リアム周辺に不吉の影が立ち込め出し、ここらへんからドラマが動き出す。運び屋の仕事を引き受けてしまい、それがばれたときのセーラのせりふ「あたしを殴るの」がむごい。どこかエモーションは、仁侠映画に近いのではないか。主人公の回りをうろちょろするリアムみたいのって仁侠映画にもいるでしょ、殺され役。そして主人公の情感の爆発。ジョーがボスを殴るのは、健さんがドスを抜いたようなもんだ。リアムはジョーの分身でもあり、家庭を持てたジョーでもある。だからリアムが死んでジョーが再生し、ジョーの家庭がおそらく生まれるであろうラストになるわけ。主人公が殺されたり牢屋に入ったりしてこの社会から降りるという安易なラストにならない。地獄でも極楽でもないこの世界に踏みとどまる。いや、極楽ではないが地獄でもない、という順番かな。
[映画館(字幕)] 8点(2008-11-09 12:15:30)
53.  マラノーチェ 《ネタバレ》 
題は「最悪の夜」ってことで、どこでその言葉が出てくるかっていうと、激しいホモのセックスシーンがあって、翌朝「うーん、ケツが痛い」って言いながら主人公が街を歩いているときに「最悪の夜だった」って出てくるの。変な映画見始めちゃったなあ、と半ば後悔しながら見続けていると、今度はラスト近くに本当の最悪の夜がやってくる。アメリカに不法入国したメキシコ人が、別の捜査で来た警官に過敏に反応してしまい、逃げ回り射殺される展開。白黒画面に緊張したサスペンスが走る見事なカットの連続であった。そう言えばこの監督『サイコ』をそのままのカット割りでリメイクしたこともあったっけ。サスペンスへの興味はデビュー作からあったんだ。それと異郷の地で言葉の通じない男同士の出会いって設定は、『パリ・ジュテーム』でそのまままた使ってた。ホモの愛の世界の微妙な味わいはよく分からないけど、優越した立場になってしまう白人の、不法移民に対する疚しさみたいなものも描かれていたような。
[DVD(字幕)] 6点(2008-08-06 09:21:56)
54.  まぶだち 《ネタバレ》 
特別不貞腐れてるわけではないけど、先生にはそう見えるって子、いる。万引きがばれて、ほかの子は親に叱責されるが、主人公の親子は廊下に出て気まずく見つめ合うだけ。じゃ、そろそろ戻ろうか、と仕切るのは子の方。でも家に帰ってきて、やっぱり殴ることにした、と言ってぶち、でもいまさら殴って良かったのか? とまだハッキリしないおとーさんがいい。反省文が先生に褒められてしまうことの居心地の悪さってよく分かる。反省文を川に流す段取り、「あ、あれ何だ、って言って」って言って、それに気を取られて落とすという、事故の原因をちゃんと捏造するのがおかしい。自分から飛び込んだのではないか、と聞く先生に、足を滑らせたんです、ときっぱり答える。そういう小さな名場面がいろいろありました。生き生きとした緑の中にある廃バスや廃機関車。
[映画館(邦画)] 7点(2008-07-12 11:15:03)
55.  街のあかり 《ネタバレ》 
コンスタントに新作出されるとあんまり有り難みが薄くなってしまうけど、でもやっぱいいなこの人。いつも“ちょっといい話”なんだよね。どん底できざす希望の光。ブアイソな壁に囲まれた場面の間に、夢のように美しいヘルシンキの夕景や夜景が入るその光のよう。もうスタイルについては言うことがない、完全にこなしきった一つの話芸になっている。今回ホントにうまいなと思ったとこは、男がずっと口を鎖ざして女を守りとおし有罪の判決が下った後、そのかばわれ続けた悪漢の情婦はどうしてるか、というと、悪漢どもがトランプに興じている後ろでつまらなそうに掃除機をかけてる、ってとこ。この苦いユーモアがカウリスマキの真骨頂。
[DVD(字幕)] 7点(2008-04-20 12:12:32)
56.  (秘)色情めす市場 《ネタバレ》 
手持ちカメラで自然光の多用と、ドキュメンタリータッチのザラザラした感触。逆光で捉えた宿など、そのまま監獄を思わせる。全編にたちこめる大阪の匂い。とにかく、あいりん地区にカメラを持ち込んだことだけでも評価されるべきでしょう。この手の映画の需要は、すけべな気分になりたいなあ、ってのが圧倒的多数なのに、あいりん地区のドキュメントタッチでは、それに応えてくれない。こういうわがままが出来るほど、まだこのころの日本映画は作家性が許されていたのだ。せめて女の柔肌の肌色だけでも拝ませてくれ、という客の願いもむなしく、画面は白黒。ラスト近くで突如カラーになるが、それがニワトリのトサカの赤のアップ。これの驚きの効果は絶大だった。鬼才と言われた田中監督だったが、以後の日本映画界はこの異能の発揮場所を十全には与えてくれず、06年に亡くなった。合掌。
[映画館(邦画)] 6点(2008-04-15 12:18:42)(良:1票)
57.  マダム・スザーツカ
とりわけこのころのシャーリー・マクレーンは、雰囲気が江利チエミを思わせるんだよなあ。この人そう嫌いじゃないんだけど、熱演されるとちょっともたれる。まあ、そういう人物の役なんだけどね。代替わりの話で、終盤の哀感はたしかにいい。コンサートの裏で老いを自覚していくとことか、パーティをすっぽかされてるとことか。“時代”に入っていく少年ピアニストもいれば“時代”から出ていく老ピアノ教師もいる、ってこと。普遍化すれば“母親”の哀しみ。おかしかったのはエージェントの会話で、「彼はチャイコフスキーよりドビュッシーでは?」「日本ではそんなの関係ないんだよ」って。日本で異常なブーニン人気が起こってたころの映画だったか。
[映画館(字幕)] 6点(2008-04-10 12:17:35)
58.  松ヶ根乱射事件 《ネタバレ》 
見ながら思い出していたのは「ゆれる」の兄。どちらも、地方で暮らすことの息苦しさに、ゆっくりと追い込まれていっていた。田舎といっても小さな限界集落ではなく、いちおう鉄道は通っておりゲームセンターもある。限界集落ならもう助け合わなければやっていけないわけで、隣人を鬱陶しがる余裕もないだろうけど、この中途半端な規模の町では、他人のなかに埋没する自由がもうちょっとで得られそうなのに、顔見知りの隣人たちに取り囲まれて生きていかなければならない。これはなかなかきつい。父親がどこぞの娘を身籠もらせると「もう恥ずかしくって外を歩けない」ということになる。このうんざり感が、ボソボソとした語り口でじっとりと描かれた。ちょっと離れて眺めれば、うんざりも笑いになる。変なよそ者二人が触媒となって、それぞれのうんざりを危険に化学変化させていった物語ということか。どのシーンも自然な演技が楽しいが、金の延べ棒を持ち込まれた銀行員の対応の場、とりわけ二人が去ったあと周囲に対して力なく笑うところが実にうまかった。
[DVD(邦画)] 6点(2007-12-22 12:17:11)
59.  マッチポイント 《ネタバレ》 
アイルランド男は、最初のうちはおごられることに敏感に抵抗していたけど、しだいに裕福な生活に取り込まれてしまう。もひとつ踏ん張りがきかなくてテニスプレイヤーを諦めた経歴。いっぽうアメリカ娘は、とことん踏ん張ってしまう方。イギリス人になれなかった二人の異邦人の、英国の豪奢に対する二通りの反応が悲劇を呼ぶわけだ。いったいこいつ何を企んでるのか、と見てるほうがハテナのままで展開していく犯行シーンにワクワクした。人生は運に左右されているが、運がよかったからといって幸福になれるとは限らない、いう結末。
[DVD(字幕)] 7点(2007-08-21 11:22:05)(良:1票)
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