1. マダム・ウェブ
《ネタバレ》 ネタバレしています。ご注意ください。 『スパイダーマン』についてはサム・ライミ監督3部作は鑑賞済みですが、その後のリブートや他のマーベル関連登場作品は未見です。ちなみに日本版巨大ロボに乗り込むTV特撮は子どもの頃観ていました。そんなスパイダーマン年長者だけど初級者な私にとっては、マダム・ウェブって誰やねん。パワーパフガールズみたいな3人って何者?スパイダーマンにそんな設定あったの?状態。あの人気キャラクターの若き日の活躍を描くと言われても、全く持ってピンと来ない訳です。じゃあ何で観たのかと問われれば、時間調整にシネコンを使ったからであります。という訳で、門外漢の頓珍漢な感想という前提でお願いします。 劇中で描かれるマダム・ウェブの能力は、予知と思念体操作の2つでした。予知は一般的に「デジャヴ」と呼ばれるもの。未来の出来事をあらかじめ体験しているから、悲劇を回避できるというワケ。そこで疑問。主人公は何故視力や運動機能を失う結末を避けられなかったのでしょうか。考えられる可能性は2つ。一つは確定未来は変えられないとするもの。いわゆる「運命」です。もう一つは複数ある未来予想図から一つを選んでいる場合。前者だとすれば全ての苦労の意味が失われるので却下。必然的に後者の推論を採用したいですが、この場合マダム・ウェブは自ら望んでこの未来を選択したことになります。何と言う献身でしょう。敵からも忠告されたように、3人娘など放っておけばこれまで通り充実した人生が送れていたはずですから。でも彼女はそれを良しとしなかった。これは『スパイダーマン』に流れる基本理念「大いなる力には大いなる責任が伴う」の精神に他なりません。なるほど確かに本作は『スパイダーマン』の流れを汲む一作ということが分かりました。ただし騙されて(!)呼び出された救助ヘリの皆さんはあまりに可哀想。この惨事は回避出来なかったのでしょうか。何かしら言い訳を聞きたい気がしますが。 とはいえ、好き好んで得た特殊能力でもないのに責任云々言われるのは可哀想な話ではあります。でもその一方、一握りの天才や発明家の偉業のおかげで私たちが豊かな生活を享受できているのも事実なわけで。この世の成り立ち(システム)として「大いなる力には大いなる責任が伴う」のは理不尽とまでは言えないのでしょう。せめて「力なき者は力ある者からの恩恵に感謝を」でしょうか。往々にして我々は恩恵を当然の権利と錯覚しがちですから。 テーマ論に終始してしまいましたが、映画全体の感想はマーベルコミックらしい大らか(大雑把)な作品であり、基本的には「子ども向け」という気がします。少なくとも「マーベル初の本格ミステリーサスペンス」という触れ込みは、やや盛り過ぎと感じました。因みに吹き替え版では、空条徐倫VSディオの夢の対決が見られます。 [映画館(吹替)] 6点(2024-02-28 09:48:43) |
2. MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない
《ネタバレ》 ループ現象の代名詞として「オール・ユー・ニード・イズ・キル」と「ハッピー・デス・デイ」を引き合いに出した同僚に対し、そこは「恋はデジャブ」でしょと返した映画オタクと思しき眼鏡くんが微笑ましい(彼は「インディ・ジョーンズ」も「インディアナ」だと正していましたね)。前出の作品だけでなく数々の傑作を輩出している超優良ファンタジー設定。現象そのものが面白いだけでなく、人生の教訓を示唆する作品も多く、本作は特にその傾向が強いと感じました。要するに寓話ですな。 似たような一週間を繰り返すのは割とよくある話であり、ある意味幸せなことです。一般的にルーティンと呼ばれるもの。これは「平穏」に通じる状態であり、決して否定されるものではありません。しかし引き換えに「時間」や「可能性」「機会」を失っているのも事実であり、利益と損失が本当に見合っているか時々検証する必要はあるでしょう。『齢五十にして天命を知る』上司(マキタスポーツ)が、強い後悔の念から超常現象?を誘発したのも、妙に説得力を感じてしまいます。嘘です。 人生に後悔は付きものですが、なるべく少ない方がいいのも間違いないので、自己実現と社会的役割、義務と権利のバランスを保ちながら、程よい頃合いのエンディングを迎えたいものです。そう、劇中漫画の結末なんか最高じゃないですか。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-07-27 16:26:45)(良:1票) |
3. マイ・ブロークン・マリコ
《ネタバレ》 みんな大好き永野芽郁ちゃんの、永野芽郁ちゃんによる、永野芽郁ちゃんと奈緒ちゃんのための映画。そしてちょこっと窪田正孝さん。範馬勇次郎が背中に鬼を宿すなら、本作の芽郁ちゃんは眉間にアブドーラ・ザ・ブッチャーのデコを憑依させる神業をみせてくれました。カワイイだけの女優さんではありません。 遺骨となった親友との二人旅はまさに現実逃避の旅でした。実際、シイちゃんの精神状態はギリギリだったと思います。辛くなったら逃げるは有効なので、マリコさんがシイちゃんを窮地から連れ出したとも言えます。ただ、崖っぷちから逃げたつもりが、反対の崖に辿り着いたよう。ただし、こちら側にはクソ上司の代わりに救世主が待っていました。名乗る程ではない釣り男。神出鬼没に感じますが、彼はずっと影からシイちゃんを見守り続けていたのでしょう。一歩間違えればストーカーですが、下心が無いこと(本当はあったかもしれませんがおくびにも出さなかった)、差し入れのセンスの良さ、彼女の命を救った等数々の功績により本物語のMVPを受賞しました。シイちゃんの「大丈夫に見える?」に「大丈夫に見えますよ」の返し。このシーンがもう本当に堪らない。泣けて仕方ありませんでした。客観的にみれば、というかラブストーリーなら、これはもう運命の人に違いないわけですよ。でも全く進展する様子もなく、あっけなく別れるという。この一歩引いた感じがタナダユキ監督なんですよね。勿論このあとシイちゃんは彼に会いに行ったかもしれないし、行かなかったかもしれない。それは描かない(描く必要がない)美学を監督は持っているんだと思います。女は恋愛で生きるわけじゃないと。『百万円と苦虫女』や『ロマンス』でもその流儀は一貫していました。そんなタナダユキ監督が大好きなんですけど。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-01-14 08:46:52)(良:2票) |
4. マスカレード・ナイト
《ネタバレ》 性善説を拠り所とする顧客至上主義(ホテルの正義)と、防犯や検挙のため性悪説をとらざるをえない警察の理論(警察の正義)。異なるイデオロギーの対立構図はリベラルと保守の関係を連想させます。まるで水と油。客の無理難題にノーと言わぬホテル、捜査のため客室への無許可立ち入りを正当化する警察。どちらも私の感覚では受け入れ難い態度であり、やはり極端過ぎる価値観は駄目だなと再認識しました。それでも新田と山岸はお互いを認め合っており、相反する立場であっても相互理解と尊敬があれば、歩み寄りは不可能ではありません。それが本作で提示される希望であり、メッセージでもあると思います。ただ前述したとおりどちらの価値観もそもそも許容し難いため、認め合ったところで大して感動できないのが辛いところです。 ミステリーとしては小粒ながらよく練られており見応えがありました。役者さんもバラエティに富んでおりお得感があります。そんなの中、飛び抜けていたのが麻生久美子さん。技量も存在感も素晴らしく、ひとり異次元の怪演でした。もともと好きな女優さんでしたが、今回私の中で株がストップ高を記録した程です。それだけにタレント兼業の役者さんが可哀想で。田中みなみさんも、博多華丸さんも決して下手ではないと思いますが、本作の麻生さんの前では見劣りするなというのが無理な話。配役の重要度に応じて演技レベルや役者の格を合わせないと、違和感が際立つので注意が必要だと思います。その点、木村佳乃さんの上手さも際立っていました。流石です。 最後に主役2人のロマンスについて。前作ラストで結構いい感じだった気がするのですが、その後進展は無かった模様。それで今回もラストでまた気のある素振り。別に恋愛は自由ですからご勝手にという話ですが、いい歳した大人がちんたらやってんのは正直見ていられません。だって撮影時の実年齢キムタク49歳、長澤さん34歳ですよ。それで彼女が帰国するのを待つって何を悠長なことを言ってんだか。20代で許される恋愛が30代や40代でも通用すると思ったら大間違いですよ。それともアレですか。キムタクの本命は中村アンなので、本当にただの食事の約束でしたか。いやはや勝手に盛り上がり興奮した自分が恥ずかしいです。私のような終身名誉童貞みたいな者が、イケメンイケ女様の高度な色恋沙汰に口出すような真似をして本当にすみませんでした。 [インターネット(邦画)] 5点(2022-11-19 18:24:34) |
5. マリグナント 狂暴な悪夢
《ネタバレ》 典型的なサイコホラーの様式に、グロテスクな人体破壊描写、格闘アクション、ヒューマンドラマまで盛り込んだ豪華お得仕様。こう書くと、とっ散らかった印象を受けますが然に非ず。前半こそ大いに惑わされますが、伏線回収が始まる後半は怒涛の畳み掛けで感心すること頻り。ホラーにも関わらず爽快感や感動まであるという。ただ辛いだけの激辛ではない『旨辛』な映画でありました。それにしてもガブリエルのキャラはかなり魅力的でした。ビシュアル良好、ギミック最高。個人的には、多少能力面にドーピングを施して『ジャスティスリーグ』あたりに加入して欲しいとさえ思いました(メジャー感の強いアベンジャーズより似合いそう)。ワン監督らしいアイデアとサービス精神の詰ったエンタメホラーでありました。 [ブルーレイ(吹替)] 9点(2022-06-05 20:21:00) |
6. 都会(まち)のトム&ソーヤ
《ネタバレ》 実況無しのゲーム配信。というより、実況は観客によるセルフサービスなのでしょう。お茶の間ファミリー鑑賞であればツッコミし放題で、私の場合家族そろって茶々を入れながら楽しみました。創也くんが図書館で友達を見捨てた件は大いに盛り上がったものです。とはいえ、ゲームであって冒険ではなく、おじさん世代としては物足りなさを感じたのも事実。現代劇で、かつ日本が舞台で、少年少女が主役の健全な冒険譚は難しいのですかね。ちなみに『エリアZ』なる都市型体験RPGは、多人数参加のリアル謎解きゲームかと思いきやさにあらず。プレイヤーは竜王パーティのみであり、その他大勢の参加者は全員エキストラ(ゲームキャラクター)でありました。キーアイテム『栓抜き』の渡し方があまりに雑で萎えましたが。タイトルはトム&ソーヤではなく、ホームズ&ワトソンが正しいのでは?ジュリアス・ワーナー役のしおりんは、別スタイルのお姫様バージョンも拝めますので玉ノフは必ずご覧ください。 [DVD(邦画)] 5点(2022-03-21 08:48:06) |
7. 魔女見習いをさがして
《ネタバレ》 『おジャ魔女どれみ』は一般教養(?)としてタイトルは知っていた程度。そんな50目前のおっさんが何故本作を観たかといえば、声優を努めた百田夏菜子さん目当て以外の何者でもありません。ももクロファンとして夏菜子さんのスイートボイスが拝聴できればそれで満足でしたが、何というか、思いの外、心の芯にヒットしてしまい、弱りました。 聞けば本作は『おジャ魔女どれみ』20周年記念作品とのこと。子どものころTVアニメ『おジャ魔女どれみ』に心奪われた若者たちが主人公のお話。彼女らは『聖地巡礼』から『ファンの絆』をきっかけに人生を切り開いていきます。この展開は、オタク全開の私にとって胸アツでした。そう、オタクが興味の対象に費やしてきた時間やお金、心の熱量は膨大なもの。然るに、そのほとんどはただの自己満足に過ぎません。生産性などありゃしない。でもそんな無駄な時間こそが、現在の自分を形づくってきた、かけがえの無いピースに違いないのです。本作のエピソードは、過去の自分を肯定してもらえたようで嬉しくて。私が今まで(そして今なお)のめり込んできた趣味たち(囲碁、深夜ラジオ、プロレス、映画鑑賞、ももクロちゃん)。何ひとつ人に誇れるような勲章や技能を身に付けたワケではないけれど、その時折に、自分の心を豊かにしてくれたのは間違いありません。それに本作の主人公たちのように、普通なら関わるはずのない方たちとの交流もありました。回り道や寄り道、道草の中にこそ『人生の宝』があるのでは。本作は『おジャ魔女』ファンだけでなく、全てのオタクに向けられた応援歌であります。 [地上波(邦画)] 8点(2022-01-02 00:56:23) |