1. ミッドナイトクロス
《ネタバレ》 巻き込まれ型サスペンスということでまたしてもヒッチコックのパロディかと思わせておいて実はアントニオーニの『欲望』のパロディ。原題が「Blowup」に対して「Blow Out」。カメラマンが写真から真実を見出そうとしたのに対して音響マンが録音テープから真実を見出そうとする。お得意の分割映像がこの録音シーンに使われているが、ヘッドホンをするトラボルタと音の発生源とが効果的に映し出され、そこに音が入り、その音に反応する両画面、そして重要なシーンへと繋がる流れが完璧。警官時代に囮捜査で囮の人間を殺されてしまうという失敗をしている主人公の姿をわざわざ回想で見せているので当然この展開だとナンシー・アレンは危機一髪で救われるはずなのだが、綺麗な花火をバックになんとも信じ難い結末が。後味が悪いというご不満もまったくそのとおりなんですが、このクライマックスのスローモーションは凄く美しいんです。この作品はデ・パルマ節の到達点である。いつものあからさまでやりすぎ感のあるデ・パルマの映像なのに、その一つ一つが他のデ・パルマ作品以上に機能している。 [DVD(字幕)] 7点(2008-03-26 16:38:59) |
2. ミスティック・ピザ
デイモンが出てきて笑った。デビュー作ですかね。ジュリア・ロバーツもデビュー作とか。無名の若手俳優を配した80年代青春映画にしてはすごくあっさり作られてるなぁと思った。3人の女の友情を描いてはいるけど、そこばっかり強調するわけでもなく、恋愛ドラマもくどくなく、一人だけ突出して描くわけでもなく。なので浅いんだけどチープ感がない。一応アナベス・ギッシュがメインなような気もするけど、ジュリア・ロバーツとリリ・テイラーの個性が際立っていたのでバランスがうまくとれたのかも。配役は絶妙かもしれん。他の女優だったらもっと地味な映画になってたと思う。 [DVD(字幕)] 6点(2007-11-30 11:58:12) |
3. ミステリー・トレイン
《ネタバレ》 同じ場所、同じ時間の3つのショートストーリーを紡ぐ。短編集のようでありながら群像劇としても楽しめるという造りになっています。とくに2つ目と3つ目の関係の濃厚さが群像劇っぽくさせているが、この2つの関係性をもう少し希薄にしてくれたほうがジャームッシュらしくて良かったような。3つの中で唯一カップルを描いた1つ目のエピソードは、ストーリー不在の中で見事に二人の関係を見せきったジャームッシュらしいエピソード。会話のズレも間の悪さも、これぞ日常のズレであり間であることを見せている。3つの中で唯一見知らぬ者同士の出会いのある2つ目のエピソードは、3つ目へのアプローチ的な役割を担いながら幽霊の登場によってちゃんと単独のオチをつけている。3つの中で唯一ドラマチックな3つ目のエピソードは、前2つが最初からメンフィスを出ることが予定されていたのとは違い、出る予定は無かったのに前2つに合わせて出てゆく(出てゆかざるをえない)ストーリーにすることでロードムービーとして成立させている。うまいっちゃーうまいね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2006-05-11 14:39:07) |
4. 緑の光線
ドキュメンタリーのインタビュー集でも見ているかのように、会話の洪水がこれでもかと押し寄せる。そして発せられた言葉が人物のひととなりを見事に露わにしてゆく。言葉で状況を説明しているという意味ではなく。つまり、んと、例えば、主人公の性格を、主人公の友人たちが語るのではなくて、主人公自身の語る言葉に見えてくるんです。言葉によってその言葉以上のもの、あるいはその言葉とは全く違うものを表現するのって映像だけで表現するより難しいんじゃないだろうか。ただ不満を並べるだけの女の裏腹な心情が画面に溢れているから、たんなる自然現象に我々も感動せずにはいられないのです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2005-06-14 15:13:45) |
5. 溝の中の月
よ、よーわからん..。ジェラ-ルの弟もロレッタの兄も結局だれかれかまわず疑惑の目を向けるジェラ-ルの内情を見せるためだけに登場し、ジェラ-ルの妹をレイプした犯人を探し続ける行為も廃墟から抜け出せない自分を正当化するためのものでしかない。そして廃墟から抜け出したい願望がロレッタとの恋愛感情に化け、踏ん切りよく抜け出したはいいものの、やっぱり廃墟がお似合いさ。って話?(かなり独善的解釈かも。)まあ、内容よりもベネックスによって作り出された異世界を楽しむ、そんな映画でしょうか。 5点(2005-01-25 11:41:10) |
6. 右側に気をつけろ
3つの異なったエピソードが平行して流れるんですが、結局平行して流れるだけで交わりません。ただ凄いのは、ゴダールが登場する話は完全にコメディ、リタ・ミツコの話は完全にドキュメント、ジャック・ヴィルレの話は掴みどころのない寓話、と全く異なるジャンルで同時進行しながら、それらが違和感なくひとつの映画に収まっているところ。でも中身はちんぷんかんぷんでした。飛行機が揺れて機内放送で機長が「ちょっと居眠りしてました」は笑ったけど。ちなみに、ジャック・タチ脚本・主演の『左側に気つけろ』がこの作品のおかげで陽の目をみたらしい。ゴダールはよく作中に先人の作品に対してオマージュをささげるが、これは一番解かりやすい例かも。 5点(2004-03-30 11:52:59) |
7. ミシシッピー・バーニング
同年、同じように人種差別を扱った作品に「背信の日々」という映画があります。こちらもなかなかの良作ですのでぜひご覧下さい。私はどちらかというと「背信の日々」の方が好きです。「ミシシッピ-・バーニング」のほうが問題をストレートに描いており視覚的な怖さもこちらが優れていると思う。しかしひとつの事件を解決したにすぎないのに爽快感を得れるような作りがどうも納得できません。この爽快感を得るために怒涛の残虐行為を見せていたのかとさえ思ってしまう。憎むことを教育され7歳には憎しみが染みついているという町で、FBI捜査官がたかだかひとつの事件を解決した後、白人と黒人がいっしょになって賛美歌を歌うシーンってどうかと。それを見て捜査官が町を後にするってどうかと。救いの描写は必要かもしれないが、あまりにベタすぎるというか、簡単すぎるというか..。二人の熱い演技は見応えあります。 6点(2003-11-28 19:15:02) |
8. 南へ走れ、海の道を!
同じ奥山和由製作の「海燕ジョーの奇跡」と同じシチュエーションで二匹目のどじょうを狙ったのがみえみえ。冒頭のぎばちゃんの演技は熱っぽくて良かった。 5点(2003-11-17 15:12:47) |
9. 未来世紀ブラジル
ビデオで観ました。借りたいビデオが貸し出し中だったので、おすすめのコーナーに置いてあるこの作品をなんの予備知識もなく借りました。未来世紀とあるのに、やたらガチャポンとうるさいコンピューターやスイッチ類に笑わせてもらいながらも独特な世界に浸っていましたが、そろそろ終わりになるかなという頃にはしつこく感じてきた。結局なんなんだ?この映画は!この時点では、評価にすると3点~4点。と思ったら終わらなくてどんどんぶっ飛んだ展開へ。そしてラストカット! しばらく動けなかった。とんでもなく凄い映画を観てしまったと思い呆然としてしまった。でも前半の夢の部分(翼の生えた主人公)のシーンがあまりにちゃちい。これは間違いなく夢だと解からせる為なのか、それともギャグなのか、どちらにしてもわざとしているのだろうが、かなりひいてしまった。 7点(2003-07-07 12:02:38) |
10. ミッドナイト・ラン
かまえずに軽い気持ちで見れる映画の中では最高の映画です。がさつでイラチで不器用な生き方しか出来ない主人公をデニ-ロが完璧に演じてます。すばらしい俳優はたくさんいますがどんな役をしても、笑った顔が同じだったり、つらい時の表情が同じだったり、コーヒーの飲み方が同じだったりするものですが、デニーロはすべての映画で別の顔、別の癖、別の人格を見事に演じきっています。役に合わせて体格を変える(デニ-ロ・アプローチ)もすごいですが、デニーロの本当のすごさはこうゆうところにあると思います。比較的屈折した人格の役が多いので見落としがちですが、この映画はデニ-ロのすごさを再確認させられた映画です。 8点(2003-04-23 12:11:25) |