1. ミッドウェイ(1976)
《ネタバレ》 アメリカ合衆国建国200年に合わせて製作された、60~70年代に流行ったオールスター・キャストの戦争映画、そう言えば『遠すぎた橋』を最後にこの手のオールスター戦争映画は過去のものとなってしまいましたね。たしかにアメリカ海軍側はオールスターと呼ぶに相応しい顔ぶれですが、日本側は三船敏郎の他は日系人俳優ばかりでしかもセリフは全部英語。そして驚くべきことはこの“超大作”が撮影期間わずか二ヶ月だったということ。その後編集作業に一年近くかかって完成、つまり観れば判るように膨大な流用フィルムをつなげる方が大変だったというわけです。私が判るだけでも『東京上空三十秒』『トラ・トラ・トラ』『太平洋の嵐』、そしてなんと『空軍大戦略』まで使われています。さすがにこれは機種が確認できないようなロング・ショットの空戦シーンですが、戦中の実写フィルムまで含めてつなぎ方はデタラメ、この映画で新規に撮影した戦闘シークエンスはミッドウエイ島の爆撃だけみたいです。まさに“アメリカ海軍機映像の福袋状態(by上坂すみれ)”でございました。実際、ジャック・スマイトが監督した部分は上映時間の三分の二に満たないぐらいなんですからね。使われた空母も当時は練習空母だったエセックス型のレキシントン、この一隻でアメリカ3空母日本4空母のふりをさせる、それも映すアングルとテロップを替えるだけで済ますという荒業です。これはもうオールスターたちのギャラで予算を使い果たしたのは見え見え、というか製作者側の志しがちょっと低すぎるんじゃない? いちおうチャールストン・ヘストン親子のドラマという要素も盛り込んでますけど、とってつけた感は否めずです。脚本を書いた人はTV畑の人みたいで、本作にはTV放映版も存在しているらしく、たしかにスペシャルTVドラマという感じもしますね。まあ70年代ハリウッドを代表する底抜け超大作であることは確かです。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-11-13 19:49:59)(良:1票) |
2. ミニー&モスコウィッツ
《ネタバレ》 メンヘラ気味の中年女と、ニーチェみたいな髭を蓄えているくせにがさつで向上心のない男が出会って4日で結婚式を挙げるというお話しですけど、これほど暑苦しいボーイ・ミーツ・ガール映画があったとは、まったくもう… 監督しているのがあのジョン・カサヴェテスですから、たぶん本作も彼お得意の即興演出で撮ったんじゃないかと思います。彼の即興演出は観ててほんと疲れるんですよ、そこに来てこんな重いんだか軽いんだか判別としないストーリーとなるとくたくたにされます。ジーナ・ローランズに絡むシーモア・カッセルがまたウザいことと言ったらもう、レストランではもっと静かに喋れよ、って怒鳴りつけたくなります。彼が運転する愛車のボロトラックが、なぜか普通の道路で必ずUターンするのが観ていて鬱陶しい。でもラスト近くのミニーとモスコウィッツがそれぞれの母親を呼んで会食するところだけは可笑しかった。モスコウィッツの母ちゃんがまた声がでかくがさつなんですよね、これは完全に息子に遺伝してます。そして息子もミニーの母親に「将来の生活設計はどうなってるの?」と訊かれて「もちろん大会社に勤めます、大企業の駐車場係りの方が安定してますから」、こりゃどうしようないわ(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-06-03 23:07:44)(良:1票) |
3. ミネソタ大強盗団
《ネタバレ》 『ライトスタッフ』のフィリップ・カウフマンの初期の監督作で彼が撮った唯一の西部劇です。と言っても、この人は『インディ・ジョーンズ』の原案者でもあり、元からウェスタン的な世界には思い入れがあったみたいに感じます。 さてこの映画は有名なジェシー・ジェームズとコール兄弟のミネソタ州ノース・フィールドで起こした銀行強盗事件の顛末がメインストーリーです。ジェシーを演じるのがロバート・デュヴァルと言うのがちょっとジェシー・ジェームズに対して私が抱いているイメージとはかけ離れているんですけど、なんせ後年にはブラッド・ピットが演じているぐらいですからイケメン男というイメージなんですよね。でも老け顔だけど素っ頓狂な奇声を発したりする過激な演技で、キルゴア中佐みたいな狂気をはらんだキャラをやらせるとこの人は上手いですね。ニューシネマ全盛期ですから正統派ウェスタンからはちょっとずれた雰囲気なんですが、全体にペキンパー西部劇の影響が強いみたいです。つまり文明化されてきたフロンティアで取り残されてゆく男たちの挽歌を見せてくれるということです。蒸気トラクターが町を走り、町民たちは流行りだしたばかりのベースボールに興じていて、クリフ・ロバートソンたちはそれにただ感嘆するばかりなのです。劇中故障していた蒸気オルガンが、ラストにクリフ・ロバートソンたちが町民たちに捕まって引き回されているシーンで突然音色を奏で出すところなぞ、ひとつの時代が終わって新時代の開幕を告げるファンファーレが鳴っているみたいでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-12-12 20:59:52)(良:1票) |
4. ミスター・グッドバーを探して
《ネタバレ》 そうか、このお話はJ・カーターが大統領になろうとしていたころのことなんですね。この辺りは過去50年でアメリカがもっとも荒んでいた時代ですから、登場人物たちもまともなキャラがひとりもいません。D・キートンの教師だって、いくらポリオを患ったハンデを持っているとしても、その行動には何も共感できる要素はありません。彼女のフィルモグラフィでは後にも先にもない様な脱ぎっぷりの良さですが、エロさのかけらもないところには監督R・ブルックスの冷徹な視線を感じます。またR・ギアをはじめ彼女を取り巻く男たちにもまともな奴はひとりも出てこないので、観ていて余計にストレスがたまります。 この映画を女性映画として観たら大間違いで、人間の闇と言うかアメリカ社会の醜悪さを描いた映画だというのが正解でしょう。ラストの死に行くD・キートンの顔がフラッシュの中でだんだん小さくなってゆくのがとても印象に残りました。 [映画館(字幕)] 6点(2013-06-23 21:56:59) |
5. ミーン・ストリート
《ネタバレ》 デ・ニーロとスコセッシの黄金コンビが誕生した記念すべき一作です。デ・ニーロはその後のトラヴィスやラ・モッタの原型となる様なキャラなのですが、単なるへなちょこチンピラがいきがって無茶しているみたいな感じがあり、意外と普通っぽいところがあって私はデ・ニーロのフィルモグラフィ中では好きなキャラです。ジョニー・ボーイのセリフ、「俺にカネを貸すおまえは大バカだ」は名言です。私もこのセリフ使わせていただきます。タフガイのくせに信仰心が厚く、そのくせ内面では打算的で要領が良いカイテルのキャラは、どこかスコセッシという人間が反映されている様で面白いところです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-06-10 22:19:50) |
6. 未来惑星ザルドス
《ネタバレ》 この映画、相当低予算で製作されたみたいで、ショーン・コネリーのギャラに至ってはジョン・ブアマンが自腹を切ったと自ら語っています。その分ブアマンがやりたい様に撮ったわけで、まさにカルトSFの極致にふさわしい怪作です。有名な浮かぶ石像や、不老不死となった未来の人類像など、ブアマンのイマジネーションが低予算故の独特な味わいがある奇妙な映像を見せてくれます。語られる世界観は、暴力の肯定と死の賛美が根底にあるので抵抗を感じさせられますが、私はわりと好きです。シャーロット・ランプリングは全作品中で随一の美しさではないでしょうか。ベートーヴェンが流れる素晴らしいラストシーンは、その後いろんな映画でパクられました。 [DVD(字幕)] 6点(2010-03-13 19:59:39) |