181. バージニア・ウルフなんかこわくない
《ネタバレ》 4人の俳優が4人とも素晴らしい演技を見せてくれる作品です。エリザベス・テーラーは、この作品を撮影したときはまだ三十代前半だったと聞きます。この一作でそれまでのイメージを180度転換させた、それも大成功のうちに。たいした女優さんですね。オープニングシーンの歩き方からきっちり決まってますもの。バートンの、押さえ込んだ激しさが時々噴出する演技も光ります。この作品は何度も見ていますが、観るたびにGeorgeとMarthaの悲しみが少しずつ理解できるように感じます。未だになぜバーチャルで育てた子供を、Georgeが殺してしまわないといけないか、それはわかりませんが、そのうち理解できると思います。本作品には満点をつけました。俳優の演技に対しての満点です。ところで、原題のなかの"Virginia Woolf"は、狼"wolf"ではなくて、作家のヴァージニア・ウルフですよねえ。「バージニア・ウルフなんかこわくない」ってどういう意味になるのでしょうか。西洋人はこういう言い回しが当たり前で理解できるのかなあ。 [DVD(字幕)] 10点(2006-05-07 18:45:59) |
182. ヴェニスの商人
この映画を「シェイクスピアの戯曲」と関連づけないで観ればとてもいい映画です。原作は喜劇でこの映画は悲劇になってますよね。なので、喜劇として観るとあてはずれ。今、ヴェニスの商人を映画化しようとすればこういう形でしかできないのでしょうね。それでも、映画としては大変良いできですし、台詞も設定も原作とほとんど変わらないのに、配役・演技や音楽・光などの効果で喜劇の戯曲も悲劇に変わってしまうんですね。映画というのはほんとうに奥が深いなあと、原作が有名なだけに感じてしまう作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2006-05-07 17:33:14)(良:1票) |
183. 追想(1956)
ロシア革命の混乱の中で生き残ったと噂される、ロマノフ王朝最後の国王ニコライ2世の第4皇女アナスタシアの物語。こういう人物がいたのは実話(裁判までおこしたらしい)、映画は創作。バーグマンのハリウッド復帰第一作で、彼女はこの作品でアカデミー主演女優賞受賞。受賞にふさわしい演技です。ブリンナーは同年、「王様と私」でアカデミー主演男優賞を受賞。「王様と私」がなかったら、追想で受賞していたかも。二人の緊迫感のある演技に皇太后のヘレン・ヘイズが加わって、厚みを増しています。わけあって、ずっと英語版のビデオで(つたない英語力で)鑑賞してましたが、この度DVDを購入しました。全般的に、日本語字幕や吹き替え版では、英語版で鑑賞したときよりも薄っぺらい印象をもちました。特に、バーグマンとヘイズの謁見シーンは、英語版の方が遙かに迫力があると感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2006-05-07 14:31:02)(良:1票) |
184. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 「もしも自分がいなかったら」という、引き算的手法を用いてドラマを作り上げた作品。設定は非現実的でも、登場人物の心の動きにリアリティーがあるから最後は涙、涙です。人の善意を信じたくなるような映画です。最後にクラレンスが残したメッセージ "Remember no man is a failure who has friends!" 。この素晴らしい言葉をゴールとしたこの作品以上に私に生きる勇気を与えてくれた映画はありません。なので満点です。蛇足ですが、ビデオから買い換える際に、某メーカーのワンコインDVDを買いました。このDVDではジョージの幼なじみのヴァイオレットの(大人になってからの)登場シーンが全部削除されてましたので、再度別のDVDを買い直しました。もし、ヴァイオレット(色っぽい女性です)なんて観たことがないという方がいらっしゃいましたら、別のバージョンをご覧下さい。 [DVD(字幕)] 10点(2006-05-07 14:29:46) |
185. 心の旅路
《ネタバレ》 哀愁と同じく、マーヴィン・ルロイ監督のメロドラマの傑作。記憶喪失を扱った作品で、最後はhappy。記憶喪失を扱った作品としては、かなり初期の作品になるのかな。ロナルド・コールマンの、どこか不安げな内省的な演技がいいです。グリア・ガースンの理知的で力強い女性もピッタリです。強い女性が最後には疲れはてて一人旅に出る。その気持ちも良く伝わってきます。ストーリーの途中でガースンの話し相手(愚痴聞き相手?)になる男性がいったいどういった人なのかは、なんど鑑賞しても不明です。年代のせいかセットは貧相ですが、その貧相なセットで、最後にスミシー・オー・スミシーとガースンが呼びかけるシーンを思い出すだけで涙ボロボロです。なので、満点です。余談ですが、この映画を教えてくださった年配の男性(多分、日本公開時に観ている)の感想は一言。「女は恐ろしいなあ」でした。 [DVD(字幕)] 10点(2006-05-07 14:28:15)(笑:1票) |
186. 哀愁
マーヴィン・ルロイ監督の悲恋ドラマのひな形とも言える作品だと思います。ヴィヴィアン・リーが、可憐できれいで今にも折れてしまいそう。ロバート・テーラーが上品で素敵。美男美女が織りなす、古き良き時代の典型的なメロドラマです。これ以前に、同じモチーフの映画があるかどうかは知りませんが、ほんのわずかな時間の行き違いが男女の人生に大きな悲劇をもたらすことを、上手に描いている作品だと思います。この映画以前に、お守りのような小物(good luck charm)が、主人公の間を行ったり来たりする手法ってあったのでしょうか。私が白黒映画好きになるきっかけを作ってくれた映画なので、点数は甘めです。 [DVD(字幕)] 9点(2006-05-07 14:26:52) |