181. 殴り込み戦闘機隊
《ネタバレ》 両足義足のハンディキャップをものともせず、第二次世界大戦での英空軍エースパイロットになったダグラス・バーダーの伝記映画です。第二次世界大戦のエースパイロット(撃墜王)の伝記・自伝で映画化されたのは他に「撃墜王アフリカの星(ハンス・ヨアヒム・マルセイユ、独)」「大空のサムライ(坂井三郎・日)」があります。三人の中ではダグラス・バーダーが最も出世していますが、その分エピソードとしては地味で、映画でも戦前に墜落した彼が、苦労して義足で空軍に復帰して再び戦闘機乗りになるまでのストーリーに重点が置かれています。上映時間の半分強がこのエピソードなので、戦争映画というよりも難病もの映画という雰囲気でした。戦時中のエピソードも時代考証が甘く、これといった見せ場もなく終ってしまいます。伝記映画を本人が存命中に作ると、やはりいろいろ配慮があるのでつまらない代物になってしまいます。ちょっとマニアックですが、誰かアドルフ・ガーランドの伝記映画を撮ってくれないかなあ。 [ビデオ(字幕)] 4点(2009-04-30 21:50:46) |
182. 非情の罠
《ネタバレ》 キューブリックの実質的デビュー作で原作も彼のアイデアですが、結構ストーリー展開に粗さが目立ちますね。でもそこはキューブリック、あのマネキン大乱闘を筆頭に随意にキューブリックらしい構図と伏線があって興味深い作品です。ただあの女の描き方だけは訳わからんし、とってつけたようなラストにも納得がいきません。そこら辺は、キューブリックも若かったということでしょうか。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-27 00:08:38) |
183. 狩人の夜
《ネタバレ》 スタンリー・コルテスのカメラが素晴らしい。表現主義を取り入れたような室内の光と影の描写は息を飲みます。全編今まで観たこと無い様な美しいモノクロ映像で、特に水中の死体が映るシーンは実に不気味で美しかったです。1955年という製作年度にしては際どい題材で、偽物とは言え連続殺人鬼の牧師が主人公という映画はそれまでなかったでしょう。大根役者のイメージがあるロバート・ミッチャムに、こんなに怖い演技ができたというのも驚きです。確かにロバート・ミッチャムが逮捕されてからの展開には疑問符をつけざるを得ません。ヒッチコックが撮っていたら、どういうラストになっていたかなと想像してしまいました。 [ビデオ(字幕)] 9点(2009-04-13 21:13:22) |
184. 悪い種子
《ネタバレ》 ローダは映画史上に残る極悪少女ですね。抱きしめられるシーンで見せる邪悪な表情の怖いこと!この映画は舞台とは結末が違っているそうですが、検閲で引っ掛かって文字通り「天からの罰」を与えてハッピーエンド(?)になったそうです。ラストにカーテンコールを持ってきて、母親に笑いながらローダをおしりペンペンさせているところも検閲に対する配慮でしょうか。難点は舞台劇の映画化ということもあり、出演者の演技がちょっと大げさで舞台調が抜けてないということです。でもパティ・マコーミックとアイリーン・エッカートの演技は鬼気迫るものがありますよ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-04-05 12:25:45) |
185. 独立愚連隊
《ネタバレ》 登場人物がみなキャラがたっていて、またセリフも切れがよくてものすごくテンポが快調。三船敏郎の大隊長は、彼のキャリアで他に見ない役柄ですね。ラストの八路軍との戦闘シーンは、日本映画史上に残るものですが、言いすぎかもしれませんがワイルドバンチを彷彿させます。この勢いが、大傑作「独立愚連隊西へ」と続くのですね。 [DVD(邦画)] 7点(2009-02-18 20:07:55) |
186. 大怪獣バラン
《ネタバレ》 初見はウン十年前のテレビ放映時で、DVD化されましたので見直してみました。テレビ放映時は、フィルムの状態もあってか画面が暗くてよく解らなかった記憶がありますが、DVDの鮮明な画像で観るとバランの造形が思っていた以上に秀逸なことが確認できました。本作は当初テレビ放映版として企画されたそうで、そのためか自衛隊との戦闘シーンでは「ゴジラ」の映像が使い廻されています。俳優陣もいつもの東宝特撮映画では印象が薄い野村浩三が主役で、ヒロインに至ってはちょっとどうなのっていう感じです。猪苗代湖(?)周辺が「日本のチベット」だという設定には笑わされました。 [DVD(邦画)] 5点(2009-02-07 11:49:32) |
187. イブの三つの顔
《ネタバレ》 この映画は、多重人格を米国で初めて学会で報告した精神科医のノンフィクションが原作です。イブ・ホワイトは小さい娘がいる内気で平凡な主婦でしたが、派手で高価なドレスを買ったり、ひとりでナイトクラブに出かけて男と遊んだりし始めます。夫はそのたびに妻を問い詰めますが、彼女にはその間の記憶が全然ありません。堪りかねた夫は、精神科医の診療を妻に受けさせますが、催眠療法によって彼女とは正反対の享楽的な人格イブ・ブラックが出現します。この映画は、冒頭解説者が登場して「この物語は実話に基づき、劇中の会話も記録どおりです。」と説明する昔よくあった構成で始ります。演出は平板で、サブストーリーもなく、言わばワイドショーの再現ドラマを丁寧に作りこんだような感じです。しかし、イブを演じてアカデミー主演女優賞を獲得したジョアン・ウッドワード(故ポール・ニューマンの奥さん)の演技は鬼気せまるものがあります。特殊メイクもなしにワンカットでイブ・ホワイトからイブ・ブラックに人格が変わりますが、顔つきが変わってとても同一人物が演じているとは思えません。さらにラストでは、ジェーンという第三の人格まで出てくるのですから。女性版ジキルとハイドと言えば解りやすいですね。映画はジェーンが出現してハッピーエンドで終わりますが、「私はイヴ」という自伝を読むと、実際にはこの時点では全然治っておらず、その後20年近く様々な人格が出現したそうです。この本にはこの映画が制作された時の舞台裏も書かれていて興味深かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-19 18:03:08) |