2141. 巴里の屋根の下
《ネタバレ》 「私にも楽譜を1枚!」と言いたくなるような、古い巴里の屋根の下。一瞬サイレント映画のようで所々に会話や歌が入る、その頃の何でもないようなお話。それでいて音楽だけがいつまでも耳に残る。 [DVD(字幕)] 6点(2011-04-11 16:26:22) |
2142. 人間の條件 第二部 激怒篇
《ネタバレ》 この第2部は第1部からそのままつながっているので、分けてコメントを書くのもどうかと思いつつ・・・。 第2部では、第1部よりもさらに内容が深まる。鉄条網、脱走、処刑という厳しい現実と梶夫婦やその周囲の人たちの苦悩が鮮明に映し出される。 人間の心は常に迷い戸惑うもの、どんな過酷な目にあっても貫き通すということは並大抵のことではない。 [DVD(邦画)] 9点(2011-04-11 09:44:45) |
2143. 人間の條件 第一部 純愛篇
《ネタバレ》 戦争は政治家や軍人だけでなく、すべての人の心を醜いものに変えてしまう恐ろしいものだろう。その中で人間としての心を失わず、ヒューマニズムに生きることのむずかしさを切々と訴える映画だと思う。 私は、このシリーズの小説や映画の存在を早くから知りながら、その機会がなかった。小説を読むのはつらすぎるし、DVDが出るのを待つほかなかったのだが・・・。 いくら口できれい事を言ってもどうにもならないということを、第1部からまざまざと見せつけてくれる。主人公夫婦は満州の鉱山に派遣され、梶は労務管理担当を命ぜられ女郎屋のおやじまでをさせられることになる。鉱山で働かされているのは、強制的に徴収された中国人、そして捕虜としてとらえられた「特殊工人」 この映画は、まさに戦争の醜い部分を赤裸々に描いている。戦争を知らない日本人がぜひとも見なければならない映画だと思う。 [DVD(邦画)] 9点(2011-04-11 09:19:49) |
2144. 秋刀魚の味(1962)
《ネタバレ》 嫁にやりそびれて嘆き、嫁にやってしまって悲しむ・・・。 小津監督の映画の中で、唯一映画館で見ることのできた映画。少年の頃見た思い出は、他の映画と違って淡々とした感じで、花嫁さんが大変きれいだったということくらいで、監督の名はもちろん、俳優さんや女優さんの名前すら知らなかった。 後にテレビやDVDで2度3度と見ているうち、なるほどこれが「オズワールド」というものかと、次第に映画の良さに引き込まれていった。 軍艦マーチに乗って敬礼をするシーン、同窓生が集まり酒を酌み交わすシーン、瓢箪先生の何とも言えぬ酔っぱらいシーンなどなど・・・、すべてが絵になる映画だと思う。 [映画館(邦画)] 7点(2011-04-10 11:09:41) |
2145. 波の塔
《ネタバレ》 原作は過去七度もテレビドラマ化された松本清張の代表的長編小説である。政財界に纏わる汚職事件を描きながら、それに絡む人妻と青年検事の許されぬ愛を描くという松本清張にとっては甚だ異色とも言うべき作品である。 しかしながらこの映画は、テレビのメロドラマの枠を超えているとは思えない。原作にほぼ忠実であり、大切な要素は網羅されていると思われるのに、なぜ・・・。 ひとつはミスキャスト、有馬稲子のヒロインはともかくとして、津川雅彦の検事はあまりにも若すぎて未熟だと思う。それに映画の展開、あまりにも原作をなぞっているだけで平坦すぎ、感動も何もない。これでは・・・。 [DVD(邦画)] 3点(2011-04-08 16:35:01) |
2146. ウォーターボーイズ
《ネタバレ》 男のシンクロに抵抗感があって、「スウィングガールズ」より見るのが遅くなってしまった。 青春の感動・爽快感は「スウィングガールズ」の比ではなく、日本アカデミー賞など数多くの賞に輝いたのも頷ける。そうか、妻夫木聡もこの映画で脚光を浴びたのかと今更になって感心する。 映画は、女子高と文化祭が同じ日であったことが幸いして、鮮やかな幕切れとなる。 [DVD(邦画)] 8点(2011-04-08 08:33:43) |
2147. 陽はまた昇る(2002)
《ネタバレ》 「陽はまた昇る」といえばヘミングウェイか谷村新司と思ったら、NHKのプロジェクトXだった。 「窓際族が世界規格を作った VHS・執念の逆転劇」は2000年から始まったシリーズの第2回の放送であり、感動のドキュメントとして私の記憶にありありと残っている。 だからどうしてもこれと比較してしまって点数が落ちるのだが、もしプロジェクトXを見ていなかったら、あと1点か2点は上がっていただろう。 VHSかベータかの勝負という観点だけでなく、日本の科学技術の飛躍的進歩という観点に立てば、ぜひ見ておかなければならない映画だと思う。 [DVD(邦画)] 7点(2011-04-08 02:55:07) |
2148. トータル・リコール(1990)
昔見た時はおもしろいSF冒険ものと思っていたが、今見ると何でこんなのを見たのかという感じ。前半は謎めいたところやSF的展開で興味を持って見られるが、火星に行ってドンパチやドタバタになってくると、途端に安っぽくなってしまう。 [DVD(字幕)] 4点(2011-04-07 16:02:52) |
2149. 哀愁のトロイメライ
《ネタバレ》 作曲家ロベルト・シューマンと妻クララの愛の物語は、結構有名であり、クラシック音楽ファンならずとも知っている人も多いのではないだろうか。この映画はロベルトとクララの出会いから始まり、彼女の父親から反対されながらも、裁判で結婚を勝ち取り、翌年交響曲第1番「春」を完成させるまでの10年間を描いている。その意味では史実に近く、パガニーニや親友メンデルスゾーンも登場するし、シューマンはもちろん彼以外の同世代の作曲家の有名な曲も、世界一流の演奏で聴くことができる。 ところで、クララの父親がどうして結婚に反対したかであるが、クララはその当時すでに超一流のピアニストであったのに対し、ロベルトは20歳過ぎてからクララの父親の弟子になった駆け出しの音楽家、やむをえなかったのではなかろうか。それにロベルトとクララは年齢が10歳も違い、初めてキスしたときクララはまだ16歳の少女だったはず。 史実と違うのは有名なピアノ協奏曲、この曲は結婚よりずっと後。 なお邦題の「哀愁のトロイメライ」はいかがなものか、原題の「春の交響曲」ではいけなかったのだろうか。 [DVD(字幕)] 7点(2011-04-07 13:16:54) |
2150. 八つ墓村(1996)
《ネタバレ》 原作小説、野村芳太郎監督、TVドラマ、そして市川崑監督と見たが、それぞれに特徴があり、これはこれで良いと思う。どの監督が映画・ドラマを作るかで力点が変わってくるのは当然のことだ。 市川版では終盤の鍾乳洞のシーンが簡素化され、達也が母親を慕う場面がないのが残念。それに犯行動機も異なったものになっていて、浅野ゆう子が鬼のような形相に変化することもない。それは逆に野村版のホラー的な要素が消えて、自然に近いものになっているとも言える。 [DVD(邦画)] 5点(2011-03-21 19:08:09) |
2151. 八つ墓村(1977)
《ネタバレ》 原作を読んだ後、映画を見た、そしてTVドラマもリメイク映画も。その中でやはりこの映画が一番印象に残る。 原作を読んだのは映画を見たほんの少し前である。だから、犯人はおろか筋書きもしっかり覚えていたはずなのに、映画に中に吸い込まれていった。 「たたりじゃ」という言葉が流行したように、戦国時代の落ち武者の怨念をしっかり強調している。また大詰めの小川真由美の形相への変化などすさまじいものがある。32人を殺傷した山崎努の要蔵にしてもしかりである、 横溝正史原作の映画は、「犬神家の一族」の評判が良かったにもかかわらず、パスしてしまい、この映画や「獄門島」の方が先になってしまった。しかし、原作の小説はこの「八つ墓村」がきっかけであり、横溝シリーズはまる基となった。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-21 13:02:59) |
2152. 日本沈没(1973)
《ネタバレ》 戦後最悪の自然災害となった東北関東大震災から10日がたった今、3.11以前も以後も変わらずに映画レビューを書ける自分の環境に感謝しつつ、亡くなられた方被災に遭われた方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。 今回の災害はまったく人ごとではないし、予想外ですむことではない。私は当然のことながら、若い時に見たこの映画を思い出さざるを得なかった。この映画は単なるパニック映画ではない。人間ドラマであると同時に、日本人いや世界の人に向けた警告のメッセージなのだ。 この映画の最大のポイントは、日本が全滅という危機に陥ったらどうするのか、あるいは陥る前にどうするだと思う。この映画制作時には「何もしない」という選択肢も大きな意味を持っていたが・・・。 ある政治家は今回の大災害を「天罰」と言ったが、そうではないと思う。日本がいや世界が、いかに自然を粗末にし、甘く見たかだろうと思う。 大地震が起きれば津波も起こる、心配なのは原子力、発電所はもちろんだが、世界に何万発とある原爆と実験場、それは大規模地震でも本当に大丈夫なのだろうか。 何かあっての予想外ではすまされない、阪神淡路の大震災、東北関東大震災、ぜひとも教訓にしたいものである。 そうだ、キリスト前の大昔にも「ノアの箱舟」という教訓があったのでは・・・。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-21 02:05:01)(良:1票) |
2153. 明治天皇と日露大戦争
司馬遼太郎「坂の上の雲」に触発され、日露戦争や秋山・広瀬らの軍人に興味を持った。日露戦争はなぜ起こったのか、その背景はとさぐるうち、昔この映画があったことを思い出して鑑賞。 実は映画館でも見る機会はあったのだが、いかにも右翼的ということで長い間敬遠していた映画である。 映画としては良くできており、歴史的な背景や事実関係がよくわかる。その点では良い教材でもある。明治天皇が周囲の戦争一色に対し、慎重論であったこともよくわかった。しかし最後はやはり軍部に負けたと言わざるを得ない。あれだけの権威と権力があれば、戦争を回避できたのにとも思う。 また、日露戦争そのものは多くの犠牲を払い、幸運にも恵まれて勝ったというのに、「犠牲」や「幸運」は語られず、日本は神の国、絶対に戦争に負けない国になってしまった。 東郷や乃木を大スターが演じて英雄化させることなく、日露戦争全体を描いたのは評価できる。しかし、「勝った勝った、万歳」によって不幸な歴史の始まりになったことを思うと、平均点以上はつけられない。 [DVD(邦画)] 4点(2011-03-20 08:11:34) |
2154. 無防備都市
《ネタバレ》 これが、大女優イングリット・バーグマンをロッセリーニのもとへ走らせたという、噂高き映画なのか。たしかに第2次大戦下の映画としては、驚異的なものだったろう。 主人公ともいうべきアンナ・マニャーニが映画半ばにして射殺される。またレジスタンスのリーダーは体中をバーナーで焼かれて拷問死、不屈の神父は聖職者をも恐れぬゲシュタポによって処刑、何という非情であろうか、言葉もない。 ネオレアリズモとしての第一声をあげたとされるこの映画を見るべき価値は高い。第2次世界大戦末期のイタリア、そこにはこのような歴史のドラマがあったのかと思うと感慨深い。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-20 07:16:09) |
2155. 刑事(1959)
《ネタバレ》 「鉄道員」に大変感動した私は、イタリア映画特にピエトロ・ジェルミの他の映画をもと思って見たのがこの「刑事」だった。クラウディア・カルディナーレも出てるし、音楽はカルロ・ルスティケッリ、テーマ曲も有名でよく知っている。何ひとつ申し分なかった。 しかし、映画を見てがっかり、イントロの銃声が鳴り響く緊迫した映像から、後はだんだんとおもしろくなくなっていった。 最初の事件の被害者は、何か隠しているなと思うのは当然だが、1週間後の殺人事件との関わりも腑に落ちないまま、怪しい人物はいても関係ない方向ばかり・・・。 合い鍵から急転直下、突然の事件解決・・・。こういうサスペンスはないだろう。主役・監督の刑事も、やたらタバコを吸っているだけで、捜査は理論的でないし・・・。 おっと一つ発見、犯人役の青年は「シェールブールの雨傘」のギイではないか。 [ビデオ(字幕)] 4点(2011-03-19 12:15:46) |
2156. 鬼畜
《ネタバレ》 横溝正史「八つ墓村」で怖い女を演じた小川真由美が、今度は松本清張「鬼畜」に・・・。子ども3人を押しつけ、さぞ怖い女かと思いきや、押しつけられた岩下志摩はそれ以上に怖い女。この二人の間に挟まれれば、緒方拳ならずともどんな男だって形なしである。よくぞこれほど怖い女を二人も相手にしたものだ。 しかし元はといえば、この印刷屋のおやじのふがいなさである。二人の女性は元はこういう怖い女ではなかったろう。それがこっなったのは「あんたがだらしがないからさ。この甲斐性なし」という二人の女性の声が聞こえてくるようだ。 それと反対に、何度も捨てられそうに必死についてくる男の子のいじらしさ・・・。しかし自分が崖から突き落とされ、九死に一生を得た後は、「この人は父ちゃんじゃない」と永遠の決別をする・・・。まさにいたたれない瞬間であった。 映画の好きずきは別として、良くできていると思うし松本清張映画では「砂の器」と並ぶ名作だと思う。緒方拳はともかくとして、岩下志麻と小川真由美の二人の女優は迫力のある核心の演技と言えるだろう。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-19 05:49:08) |
2157. 青春の門(1975)
《ネタバレ》 青春の門はこの映画が最初で、この後自立編を見て原作も読んだ。原作は筑豊編に始まり、自立編、放浪編、堕落編・・・と続くのだが、それぞれが上巻下巻と分かれる大作である。途中であえなくダウンしてしまった。(映画も自立編制作で終わっている) 小川真由美、北大路欣也のテレビドラマ版、リメイクされた松坂慶子の筑豊編も見たが、やはり最初に見たこの映画が何といっても素晴らしかった。 吉永小百合の伊吹タエ、仲代達矢の伊吹重蔵の好演が光る。それに較べると子役が中心だったこともあり、田中健の信介、大竹しのぶの織江の印象が薄い。 香春岳は異様な山である・・・というナレーションで始まるが、この映画を見た後私は筑豊を訪れる機会があり、実際の香春岳も見ることができた。仲代達也扮する伊吹重三は、ダイナマイトを巻き付けてこの炭坑に潜ったのかと思うと感慨深かった。 鋳物の街川口を舞台にしたキューポラのある街も良かったが、その時の少女ジュン(吉永小百合)が、母親タエを演じたのだ。そうか監督は同じ浦山桐郎と知って納得。 蛇足ながら、この映画でなくリメイク映画の頃だったと思うが、山崎ハコが歌う「織江の唄」が流行した。その歌は大変せつない歌で、歌を聴く度に映画を思い出さずにいられなかった。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-18 12:36:34) |
2158. この子の七つのお祝いに
《ネタバレ》 怖いそして悲しい映画と言えば、この映画の右に出る映画があるだろうか。「私とあなたを捨てたお父さんは悪い人、きっと復讐してね」と毎晩毎晩言って聞かせ、七歳の誕生日に自殺してしまった母親。またその言葉を信じ復讐一筋に生きた女。 この二人を演じた岸田今日子と岩下志麻、まさに狂気の世界である。「この子の七つのお祝いに」と言う童謡が、私のトラウマに変ってしまった・・・。 松本清張の「鬼畜」にも似た見応えのある映画、岩下志麻さんという女優さんは美しくもあり、演技力抜群の素晴らしい人だと思う。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-18 10:39:10)(良:1票) |
2159. 路傍の石(1964)
《ネタバレ》 私は子どもの頃に、映画「路傍の石」を見たが、この映画ではない。制作された年代からすれば、おそらく1955年の映画ではないかと思う。(路傍の石は戦前1回、戦後3回制作されている) 以来数十年、ようやく探し求めたのがこの1964年版のDVDであるが、極めて重要な「汽車が走ってくる鉄橋の枕木にぶらさがるシーン」が割愛されている。このシーンがあるからこそ、次野先生の自分自身を大切にせよという「吾一とは我は一人だ」の意味が生きてくると思うのだが・・・。 しかしそれを除けば、さすがに文部省推薦映画らしいできばえである。「奉公」とか「辛抱」などという言葉を知らぬ世代にはぜひ見てほしい映画である。 [DVD(邦画)] 7点(2011-03-17 22:15:34) |
2160. 死刑台のエレベーター(1958)
なつかしき映画、日本で最近リメイクされたと聞き、DVDで改めて鑑賞。エレベーターで閉じこめられたモーリス・ロネがどうやって出てきたのかさえも忘れていた。 映画の中の悲しげなトランペットが、即興演奏だったとは・・・。 [映画館(字幕)] 6点(2011-03-17 11:04:56) |