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黒猫クックさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 791
性別
自己紹介 猫と一緒に映画を見ていると、ヤツらは私より先にコイツはクソ映画だというのを察知します。ストーリー展開や伏線回収が怪しくなってくると席を立ってしまうのです。だけどそんなおっちょこちょいな映画にだって良いところはいっぱいあるんですよ。
猫のヤツらは冷酷です。

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221.  2001年宇宙の旅 《ネタバレ》 
 形而上学を地で行くストーリーは表面的につまらなく、興味を保つことが困難ではあるがボーマンの感じた驚きを自分の中にも発見すると、二重三重に折りたたまれた錯視のような世界が持つ映像の説得力はもの凄い。色やデザインの良さもインテリアに取り入れたいと思えるほど良い。映像編集は斬新だし見所が満載。未だ褪せない個性を纏った人工知能の暴走のようなきっかけもスリルがある。   つまらなさと同居する刺激がある。ストーリーは驚くほどにつまらない。全く面白くない。  しかし、万博のパビリオンに誰もストーリーなんて求めていない。そこで展示してるしょうもない技術に将来があるとも思えない。純粋に眺める。そう言う多面的な要素が実は土台になって作られてるんだと思うととても大切な話に思えてる。  正直、ふと正気に戻れば最新の万博の展示物の方が張り子の虎でプラスチックの玩具にしか見えない。しかしこの作品は正気に戻させない何かがある。それほどこの映画は強烈に未来的でアトラクティブで、迷い込める思索の樹海である。未だに。    そして、何年ぶりかで見直すと、びっくりするほどつまらないストーリーと、年代を差し引いてもゆるすぎるプロットに心の底からもう一度、同じように驚くのである。
[DVD(字幕)] 8点(2008-08-15 15:05:06)(良:1票)
222.  ミュンヘン
映像の綺麗さと、物語の醜さのコントラストが秀逸でした。今世紀になってからは、メリハリの有りすぎる主張や展開はアメコミのリメイクに一手に任されている感じがします。その分こういった映画は、まじめさとエンターテイメントのすれすれの所を真剣に狙って作られているのではないかと。  また結論を受け手に全部丸投げにしないというのも好印象です。映画を観ているだけでプロの脚本家が大金を掛けた映画の結論以上のモノを想像できるかというと多くの場合そうではないですから。ただ、ドキュメンタリー的な映画だと思って見始めると拍子抜けします。   政治的な要求を、政治家になるなり要職に就くなり、アメリカで文化的な活動をするなりきちんと手段が存在するにもかかわらず、殺人で手軽にすまそうとするテロリストは完全な悪であり一分の理も義も酌量も感じません。政治的な要求に対する一切のコストを払わず、情を挟めば殺して良いなどと言う論理が存在するのはテロリストのコミュニティの中だけです。  ですが、そんな完全悪とはいえ相手は人間。じゃぁ罰する手段は死でもって、となりますが、誰がどういう理由とモチベーションで立ち向かえばいいわけ?という矛盾を突く主題が ぴりりと小気味良い。
[DVD(字幕)] 8点(2008-08-15 14:50:17)(良:1票)
223.  シンドラーのリスト
日本製テレビアニメのような、具体的で説明的すぎる作りにせずこういった題材で作る手腕があったというところが凄い。映像面ではスタッフの力量による部分が大きいと思うが、元々映画は監督個人のモノではないのでそれも含めて凄い。  賞狙い、と揶揄去れがちな本作ですが、多くの関係者が狙っているわけです。元々。なにも悪いことではないです。それに93年に映画に触れたすべての人をがっかりさせる発言ではないかと思うので賞狙いという言葉はいかがなものかと思います。これ以外の作品も狙ってとれなかったわけです。お金を掛けて狙ってとれる賞ではないことを誰もが知っている海外では非常に評価が高いですし、実際精巧に作り込まれています。  少年少女をターゲットにした映画が得意とされ、その評価が固定してしまった監督が、娯楽作品をストップしてやりたかったこと、長年暖めてきたものを撮って良い立場を得るまでに大変な困難があったことは想像に難くありません。どうか日本独特のフィルタを通さず本作品を見てください。
[DVD(字幕)] 8点(2008-08-15 14:38:49)(良:4票)
224.  イノセンス
見事な本歌取りだろう。これは過去の優れた要素を積み上げて洗練させて行く技法では押井守以上に優れた監督はいないのではないかと感じさせる。また、攻殻機動隊の一キャラから全編に独自の雰囲気を作り出しているところにも良さがある。  本作の哲学的な台詞や、疑似科学技術などは現実世界では意味を持たず、鑑賞中はその世界にどっぷりと浸かり込むための良いアクセントとして使われている。ここに過剰な意味を読み解こうとするとついて行くのが困難になると思われる。本編の内容にリンクはする範囲でそういった文章的ギミックは機能するが、本当に哲学的な部分で哲学的かというと必ずしもそうではないととらえることも可能。  実はテーマも結末も消化していないが、謎要素をちりばめることで「製品としての完成」に成功している作品もある。本作の場合はそういった雰囲気の醸成にあるんだか無いんだかわからない哲学的な意味をそのように使っている。そこにもちょっとした技巧を感じる。  ストーリーは前作よりも筋があるため非常に観やすくなっているのも特徴。終盤のループは面白いと感じるかくどいと感じるか、あるいは作為を感じてしまうか。多様にとられるであろうことが容易に想像されるが全体としては非常に良く出来ている。  映像技術の高さもただごとではなく、素直に楽しめる作品。哲学的な部分や疑似科学が鼻につく人もいるかと思うが、この部分に意味はないし子供だましのたぐいか。それも鑑賞中は作中の人物になったつもりでそれらもひっくるめて受け入れてしまえれば凄い映画ではないかと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2008-08-07 21:36:54)
225.  GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊
世界観にのめり込むことが目的ならば最適の映画。終末的な世界観でもなく、閉塞的でダラダラと暗い未来が続いてしまうような世界が秀逸。作画も動きも高レベル。ひたすらあの電脳というグロテスクな外観と内容を備えたヒトが醜く鮮やかに争う様にしびれることができます。  ストーリーや敵対関係がくっきりしすぎた物や、相関図が無駄に複雑な物に飽きてしまった人は必見です。  原作漫画よりおもしろいです。
[DVD(邦画)] 8点(2008-08-06 22:46:51)
226.  007/慰めの報酬 《ネタバレ》 
 追い詰めきれない。 「君は、ぼくにとって最悪の結末を用意してくれたみたいだよ」そう言うと不服そうに彼は、 「そうでもないさ、こんなことじゃ誰も死なない。君だってそうだろ?事実、死ななかった」  死ななかったならそれでいいのか?そうじゃないだろ。ふざけんな。そう言いかけたが、僕は彼を殴り倒すことにした。そして近づいた瞬間に、視界は黒くなって、花の色のような輝きが僕の視界に現れると、ぼくはもううごけない。  なぜ、協力者がいると言う当たり前の発想に至らなかったのだろう。浮遊感を感じながらぼくはその中を泳ぎ切って、眠った。   と言うレベルの間抜けさが、ボンドに襲いかかる。2時間目一杯にだ。だけど、現代のボンドは昔と違う。間抜けな敵が助けてくれるかの如くヘマをするわけじゃない。相変わらず銃弾がボンドに命中するわけでもなく、捕まったり毒を盛られたりするのも通常操業だけれど、なんとなく自力で切り抜けてしまうあたりが新しい。   そう。ボンドはすっかり工作員として有能だ。米軍に一報入れれば10分で解決しそうな事案に男女でのこのこ現れて、秘密基地にまで乗り込んでしまうあたり、盤石のらしさではあるのだけれど、なんだろうかこの説得力は。だけど、ボンドに必要なのはこう言うことなんだったろうか。  どうしようもなく間抜けで無能でいい男なボンドの、スクリーンに映らない凄い部分を勝手に想像して、スクリーンに映らない凄いスパイを作り上げるという作業の素材なはずなのに、今のボンドは映画本編でそれをやってしまう。ずいぶんとお節介だ。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-09-20 22:05:17)
227.  007/ダイ・アナザー・デイ 《ネタバレ》 
 愛である。007を愛するものは、こういったコラージュを特に好むのである。そして、アメリカの精密なスパイや、アクション。リアルなギミックを引き合いに出して007を取るに足らないとする輩にはエリザベス女王閣下の鉄槌が下るだろう。  これは007という、壮大な装置であって、この途切れないワクワク感を提供する唯一のメディアなのだ。   だからこそ言ってしまうのだが、これが007なのであっていつであっても過信してはいけない。予告編に足をすくわれるのは、デフォルトである。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-17 01:37:56)
228.  十誡(1923) 《ネタバレ》 
 この映画が公開されてから90年近くたって、信じがたい大地震は起きた。モーゼが手をかざした海はエジプトの力を飲み込んでどこかに流してしまったそうだ。だけど、日本で流されたのは誰かを追いかけたり迫害していたわけじゃなくて、そこに既に住んでいて大過なく役割を全うする多くの普通の人達だった。  「人に埋め込まれた大罪だったとか?」 「自然現象だし」 「何かをやり直せば良かったの?タイムスリップできたら」 「俺には無関係」 「いや、これは無い。断じて無い」 「人間は自然に打ち勝ったとか思っていたのか」   色々、聞いた。それはもう、絶望した人は色々に口走った。だけど、やっぱりこの国のこの風土には大それた宗教は馴染まないのだ、とそのすぐ後に感じる。人が大勢海に飲み込まれた後、やっぱりモーゼみたいに火が町を飲み込んで、しまいには原子力発電所が爆発までしてしまう。それでも、知恵を精一杯に蓄積している人間は、そこにもう一度町を創って、自然には存在しない物が起こす自然現象からは全力で逃げて逃げながら、反撃を今この瞬間も目論んでいる。   それはもう、天変地異という言葉が生半可であるような出来事だったのだけれど、この映画の年の大正12年も実は同じだった。そう言う意味では。  関東をぺしゃんこにした地震は1923年の9月に起こった訳だけれども、モーゼはこの90年の間に猶予期間を与えてくれたかというとそうではなかった。たぶん四千年位前にモーゼがエジプトを出ようとしたときから何度も作られて、20世紀の頭に現代への警鐘の様に映画になっても全然、猶予は無い。それこそ全く。そこから90年経って、今こうやって文章を書いているパソコンにBASICで少しの記述するだけで、色々な答えが出てきてしまう様な21世紀の世界になっても人には全然猶予は無い。   こうなってみると宗教は全く役に立たない。旧約聖書が警告めいた物語を何千年も掛けて繰り返しても、人には学習する暇も無く海は割れてしまうし火柱もボンボン上がる。  だから90年も前のモーゼに驚き、90年も前の人間の生々しさに怖がる。それでやっぱり、今この瞬間も人間の学習その成果と成果の無さに感心してしまう。
[インターネット(字幕)] 7点(2013-08-06 23:19:15)
229.  ファインディング・ニモ 《ネタバレ》 
 よーい、スカート。勢いをつけて彼はいった。  そこにいた四人は、ん?、と思わないでもなかったけどやり過ごした。 別の日、 パームやしってなんだ?パームとやしって同じだろ?ヤシやしだな。と、怒って言ったが物知りの子が、パーム種とココナッツ種があるんだよ、だからパームは液晶モニタみたいなもんよ。と諭す。液晶って言ったらモニタかもしれないけど、トリニトロンだってあるでしょと、至って冷静だった。何に怒ってるのよと。   学生の時、大きなお兄さんとお姉さんになった僕らは集まって、酒の席で笑い合う。彼はあれ見た?あれ。と、ファインディングニモの事を話題に出すが、みんな笑いが止まらない。彼はなんの事だか全くわからず当惑するのだけれども、また誰かが指摘を始めるのを知っているので澄ました顔で待つ。  ひとしきり笑い終わって賢い女の子から女の人にクラスチェンジをはたした彼女は、丁寧に説明を始める。あのね、ファインディングね、見つけたらとか出会ってとか、探して、なんて訳したら良いと思うよ。ファイティングじゃ違う意味合いになっちゃう。闘っちゃだめだよ、ラーメンマンじゃないんだから。  と、ファイティングニモを正しくファインディングニモに訂正した。   ここで一同大笑いをする。朗らかに、座の中心は彼だ。彼はいう。 「いやこの前、実は病院で馴染みの先生と話をしていたら、きみはあすぺるだー症候群かもねと言われた」  特別な言葉の覚え方をするんだね君は、と言われて今までなぜ指摘されて来たかわからなかった数々の独特な単語に気づいたという。本人はファインディングとファイティングを口にする段階で区別して居ないのだという。  彼が情報工学の学生でプラグラムをガリガリ書くというのも驚きだが、カリガリ博士をガリガリ博士と発音するのも驚く。   にしてもニモハッピーエンドたけどお母さんはどうなったの?やっぱ死んだの?と、いつもの調子で仲間たちの夜は更けていく。 
[DVD(吹替)] 7点(2013-07-29 16:19:43)
230.  北の国から '98時代 前編・後編<TVM> 《ネタバレ》 
 今考えると、いや、当時から変な違和感は感じないでもなかったのだけど、色々世紀末だったんだなと思う。  何をやっても徹底的に上手くいかない一家と、その周りの人たち。末世的世界観と相まって至る所で予感させる死と破滅っていう概念にはどう捉えて良いものやら、分からない。当時のテレビ番組の手癖のようなものだけど、何が何でも死を感じさせる話運びにはいかがなものかと言いたい。   それから、何か新興宗教めいているのが終始気に掛かる。有機農法を自然に反すると言うような主張をキャラが始めて、それまでに腑に落ちなかったものがスッと降りてくる。要するに、新興宗教だよねこれはと。どこかで聞いたような理屈だよこれはと理解する。  成立しない男女の性行為を、避妊もさせなければ、堕胎もさせない。その上関係の修復も、前提として与えない。このような行きすぎた宗教的な説法のような設定に加えて、有機農法を自然に反すると罰として疫病を蔓延させる。そして金銭的にも困窮させ、合理的な思考を受け手からも奪ってしまう。ある意味観ている間は一瞬でも、 「そうかも」  と思ってしまう。シムシティで市民をいじめて楽しむような恐ろしいストーリーだ。  その後で、草太が死んだのはお前らのせいだと言わんばかりに、重要キャラを殺してしまう。こんなことなら時代に合わせた農業なんてやらなければ良かった。とホントに思ってしまう。恐ろしい。   その後ちょっといい話になって、何となく暖かくなったような気がして終わる。  が、ちょっと待て。どういう風に蛍が生きていくことが子供にとってよりベターなのか、七〇年代や八〇年代の日本のような伝統農法でも科学的でもない、ある種歪んだ農業が九八年より昔と言うだけの理由でより自然である合理的な理由もどこにも示されていない。  オブジェクト指向は目的が手段になるから完全に排除してCOBOLをCUIで逐次型で何万行もスパゲティコードを書くべき、と言っているのと何ら変わらない。いきなりそう言われたら、プログラミングなんかしない私にはそうなのか!と、思ってしまうだろ。   そういう意味で、観てる人間に「どうせわかりゃしねえだろ」といい加減な専門的な出来事を挿入して、それが軽いSFや宗教の類でしかないという事を中途半端に隠そうとしてるところになにやら言い知れない不快感がある。   でも何となく観ちゃう。面白いからだ。
[地上波(邦画)] 7点(2013-07-28 22:05:21)
231.  ザ・メキシカン 《ネタバレ》 
 おい。   銃を巡るトラブルに巻き込まれたブラッドピットが、自分の愛を証明するためにジュリアロバーツときっとたどり着かないメキシコを目指す。ひっそりと殺されるかもしれない事実を受け容れながらも、二人が別々の道中で出会う人たちの何気ない行為は追う側への誤解を解いていく。そしてメキシコを目の前にした二人は、どこまで続くのかも分からないまっすぐな道で落ち合う。砂漠の廃屋で抱き合うがそこで彼女は殺されてしまう。その時一本の電話が事件を解決する。  意識の狭間を行き来する彼女の最後のメッセージは、彼の手を握ることだけで伝わった。愛していると。しゃがみ込み、ブラッドピットはほんの少し前まで彼女であった綺麗な顔を見つめて、唇を近づけるのであった。   っていうラストシーンじゃ無いの?これ。なに、このジャケット。なんなんだよ。オイ。コメディなのかよ!  にもかかわらず、そこそこ面白くて悔しい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2013-07-27 21:56:02)
232.  キンダガートン・コップ
「ごめんな、全部俺が悪かったんだ」   寡弁というか、無口では無いにしろ内容の無い事はあまり喋らない父が僕に言う。いったい何の悪気なのかさっぱり分からない僕は、うんうんと彼を宥める。  「おいしいよ、全部食べられるよ」   僕の言葉がストライクだったらしく、言葉を詰まらせて全然おいしくないスクランブルエッグのスプーンを自分の口に運ぶ父。二人だけの食卓である。   「ごめんな。母さん、出て行っちゃったのは父さんが悪かった。謝らなくちゃな」  「けんかしたら悪い方があやまるんだよ」  「うん、返ってきたらね。そうだな。すぐ謝るよ」   僕の頭を乱暴に撫でる。なかなか手は離れなくてもの寂しげだった。  「幼稚園には今日はお父さんと行こうな」  「いいよ、行ってあげる」    前の夜、一方的に父が何かを言っていた。要求を全く遮られていよいよ喧嘩になったのだった。記憶をたぐるとこうだ。  「いや、だからさ、義父さんと出掛けるから土曜は連れて行けない。見ててよ、母親だろ?」  「何で訳の分からない趣味に私が振り回されなきゃいけないの?お母さん何とか言ってよ」   優しい祖母はよその子である私の父には強く言えず、それでとうとう家を出て行ってしまった。     呼び戻してくると言って心当たりに駆けていった祖父母は夜まで帰ってこなかったが、彼らがただ今と玄関を開けたとき母もいた事で安心したのは私以上に父だった。  「でさー、うちの子がまた迷惑掛けちゃったみたいでごめんなさいねー、子供ほったらかしで戦艦見に行くって馬鹿なのよあの子馬鹿の部類の子」と、どうやら父の母までついてきて何故か楽しそうだ。  「いやー、戦艦見たかったのは俺なんだけどねー」などと見当違いな声も聞こえてくる。  「あやまってくれば?」と僕が言うと、浮き腰の父は玄関に向かう。    銃弾を雨のように浴びて一発もあたらないシュワルツェネッガーが、幼稚園で先生になってしまうのを目の当たりにしたとき、自分が幼稚園だったときの記憶がよみがえる。そう言えば普段は偉そうなのに、何かのきっかけで大人は弱くなる。   で、近所にあるマスオさんの実家に「もみあげどうされますか?」の自然な感じで愚痴を言いに行く母も大概であるなと思う。しかも彼らはそのシチュエーションを楽しんでいるとしか思えないからたいしたものだ。
[地上波(吹替)] 7点(2013-06-11 10:38:24)
233.  宮本武蔵(1961) 《ネタバレ》 
 吉川英治の武蔵は今では青空文庫に収録されている。それほどの古典かと少し驚きを禁じ得なかったりする。で、小説の方でもこの映画でも、武蔵前武蔵後というか、たけぞうが宮本武蔵に昇華する瞬間にいたる倦怠感と期待感は内圧と応力を知らぬうちに密封して、その爆ぜる様の大きさと激しさを読み手が試されるような緊張感がある。  そう言う巧妙さがあって、どこまでも宮本武蔵だった。満足。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-06-09 20:42:15)
234.  アイス・カチャンは恋の味 《ネタバレ》 
意外と良い話じゃないか。テーマと主演が秀逸。 ほんの少しだけ届いたと感じさせるんだけど実は届いていなくて。そう言うのしみるぜ的な。 でも本当はそういうことじゃないんだよね的な、しみやがり加減がなかなかいいじゃないか。  マレーシア映画と言う事で観はじめたのだけど、いつまでたっても東南アジアなテイストが出てこないので焦った。何語を喋ってるのか皆目検討がつかず。最後にさいちぇんって聴こえたから中国語なのか、華僑が多いらしいので無理に納得。あとどこで止めても絵になるぜ的に絵が綺麗。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-05-31 21:12:44)
235.  希望の国 《ネタバレ》 
「まあ大丈夫だろう」 「騒ぎすぎ」 「格好付けるなよ」 「知ったかぶっちゃって」 「これくらい」 「気持ち悪い」 「面倒くさい」  こう言った雑音が、その日所々から聞こえた。 「落ち着こうよ」 「気をつけないと」 「大変なことになったらどうするんだ」 「何かおかしいほどじゃない?」 「どうなっちゃうんだよ」  それでも一様に、誰もが心の中で何度も、何度も繰り返して、口の中で唱えるようにつぶやいた。 「大きいぞ」   我々が住む東京は、今から考えれば絶望的な地震が襲って何もかもが崩れてしまった、と言うことは無かった。それは東北でも同じようなことだったかもしれない。だけど、その「思ったより揺れていない」と言う事実は人を急速に蝕んだ。油断が、である。  あの日、仕事を途中で切り上げて国道一号前のレストランでだらだらと、帰るか帰らないか、止まってしまおうか明日休んでしまおうか等とまだ明るい窓の外を眺めながらひたすらおしゃべりに興じた。  しかし、異様な光景がずっと止まらずに繰り返しそこにある事に段々と気付く。  人の列がいつまで経っても途切れない。一人が気付くと、そこに居る何人もが「あ」と声を上げる。一斉に帰宅した我々も、窓の外の人の列もどうという予定も無く出てきてしまったのだった。  このまま歩いては帰れないと言う人を残して、比較的近所に自宅のある私は群れの中に紛れて見慣れた交差点まで一緒に歩くことにした。   水田に流れ込む津波や燃える街などのリアルタイム映像が止むこと無くテレビで流れ続ける。次の日には原発が爆発してしまった。もう生きていけないんじゃ無いだろうか。とすら誰もが思った。だけど、生きてる。もう二三台原発が爆発しても私たちはきっと生きてる。だから、今はまだ諦める時じゃ無い。   地震や原発がある人がその人であると形作る決定的な物を壊してしまって、その人はその人じゃ居られなくなってしまった。死んだら何もならない、そんな気持ちを伝えてしまうと自分が残酷な人間になってしまう。でも、もう完全な手詰まりをそこに見とがめてしまったら、やはり人は自分の命を絶つ。   母親は生き残って、狂ったような生き恥を晒して、護っていたのは何だろう。少々のセシウムから子は護れても、狂ってしまったお母さんからその子を護れない。  色々な物が、そう言えばボロボロになってしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-28 02:30:31)
236.  バッドボーイズ(1995) 《ネタバレ》 
 色々痛くて嫌いじゃ無い。と言うか好きな部類。時代を色々思い出す。九〇年代って言うのは八〇年代よりは内容があって、それに劣らない馬鹿馬鹿しさが良い。
[地上波(吹替)] 7点(2013-05-21 20:56:00)
237.  探偵はBARにいる 《ネタバレ》 
 相棒は重要だ。特に探偵に相棒は必須だ。居ないとダメだ、必ず。相棒が居なければピンチのさなかも一人だし傷つくことを言われたって自力で回復しなきゃいけない。困った物だ。でも、ススキノの探偵には彼にぴったりの相棒が居る。   僕の同級生、彼は探偵だった。横浜で探偵をやっていた。引退した動機は「危ない目に遭って続けていく自信がなくなった」だそうだが、未だ彼の放つ雰囲気に、いつも僕は怯む。ソファでゲームをやりながら二人、どうでも良い会話が弾む。酒が入って勢いが付いてくると血の気の引くような体験談も飛び出すのだが、同じ話がループするので自然免疫も付く。 「あのさ、会社で不正をやってるおじさんが居て、突き止めた上で釘を刺したくなるよな」  などと冗談でつぶやく。酔ってグチっぽくなった。が、 「やるか。おい、面白そうじゃん。今からやろう」  乗らなくて良い話に、無くて良い行動力で乗ってくるのがこの男だ。え?いや、そこまでしなくてもね、良いんだけど。と詰まる僕の横でもう一〇四相手に適当な事を言っている。そして抗しきれない質問に、酒と普段の腹立ちからぽろりと情報を与え始めてる自分も、いつしか乗り気だった。   彼は一週間この件にのめり込んで、毎晩桜木町の飲み屋で会社のおじさんの意外な側面を僕に聞かせた。   一週間後の夜、 「やっぱりやめよう。この辺にしておくか」と、彼はらしくない事を言う。 「ん?んーもう良いでしょ。二重の浮気とか金が欲しい理由も分かったし、このまま話持ちかけたりしても後味悪いから俺もやめた方が良いと思うんだ」だよねーと同意するが、どうもそう言うことだけが理由では無いらしい。何か危ない目にも遭った、と言うのだ。詳細は語らないのだが、こりゃあ一人ではやらない方が良いし、何人か居てもこういうことはしないことにした。という。   やっぱり探偵は危ない目に遭ったときに登場する普段少し抜けてる相棒が居て、護るべきヒロインなんかが居ない限りは、割の良い業務じゃ無いらしい。とは言え、刺激的な一週間を過ごした。   この映画では、『俺』には味わいのある相棒と、女優のようなヒロインがバッチリ居る。ドラマの様なトリックとどんでん返しもあるのに、終盤に探偵がワイルドカードになってしまったのが、ひどく残念でならない。    そう言えば、あのおじさんの何が危なかったんだろう。聞きそびれた。
[地上波(邦画)] 7点(2013-05-21 18:14:29)
238.  フィッシュストーリー 《ネタバレ》 
 二つ分の原作小説を読んでしまったのがいけなかったか。シーズンが終わった後にクリーニングし忘れたコートから五百円出てきた様な爽やかさは得られなかった。でも何となく良い話になったな、と思えるのはもう片方の話がグッドエンドしたからだろう。  もちろんあの終末を味わい深く見つめるのだって心地よさがあったのだけれど、こんな風に大風呂敷を広げて、たたんでみせるのも悪くない。   あと、多部未華子って良い名前だなぁ。見た目はすんごく普通なのに、それと相まって古風な良い名前に感じられる。不思議。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-09 20:34:18)
239.  大いなる西部 《ネタバレ》 
 子供の頃。世話好きな爺さんは近所のもめ事に首を突っ込んではああでも無いこうでも無いと色々な事を僕に言っては聞かせていた。お祖母さんはそんな事をしたがる祖父にいつかやけどをするわよ、やめなさい。と慎重派であった。 「まああれだな。双方に原因がある場合は下手に割り込まないことが大事だな。良いか」孫よ。と、得意げだったのを思い出す。   昼下がり、麦茶をたっぷり入れた水差しと、ドラえもんの偽物が堂々と印刷されたお菓子をこれでもかとお盆に載せ、お茶の間に持ってきた彼は私にグラスをさあさどうぞど差し出しながら、始まろうとしている西部劇について滔々と語り始めた。ふんふんと良い聞き手に徹する孫は、肝心なところで粗筋を漏れなく先に言ってしまう祖父をたしなめながらマンガと自由研究と大いなる西部の何とも言えない乾いた大地を行ったり来たりしている。  縦横無尽に世話を焼くグレゴリーペックを二人眺めながら、 「男前ですな」 「西部の男はこうでなくてはいかん。見本にするように」  などとカットされて猛烈な勢いで進んでいく、暑い昼下がりであった。   ぽすんと膝にスナックの袋をたたきつけて、夢中でスナックを食べ続ける爺さんに、それは食べ過ぎですよと台所の方から声が聞こえる。 「もう十本くらい買っとくべきであった、百円だし」と孫の同意を求めながらペースアップする祖父に胸焼けを隠せない孫であったが、物語はクライマックスである。主人公の努力は何だったのだろうかという勢いでいがみ合う両家は決着を拳銃でつけることになる。 「この男の男前さはこれで台無しである」  と、全滅する両家を見ながら何故か鼻息が荒い爺さんに孫はこう言った。 「あのさ、止めようがなかったらこうやって死んじゃうんだよ。暴力はだめだし、そもそも諍いに首突っ込んでこの人死んでもおかしくなかったんじゃ無いの?」  まあそうなんだけどさ、とたじろぐ爺さんは、家事を終えて隣に座る彼の妻に、田代さんと藤原さんが境界のフェンスで揉めているんだ、そうそうそう言えばと即座に話題を変えて孫をひらりと躱す。  世話を焼くのは一種の娯楽であろうか。正義感の大小と行動力とユーモアの差異がグレゴリー・ペックと爺さんの境界線なのかもしれない。外見は置いておくとして。   それと、決着をつけるって腹痛が痛いみたいな言い回しだなと思ったとか思わなかったとか。
[地上波(吹替)] 7点(2013-05-07 20:24:48)
240.  ダーティハリー3 《ネタバレ》 
 結構社会的な雰囲気を映像や脚本に投影していると思われ、狙い所がかなりビシッと良い感じに面白い方向にフォーカスしている。時代的にメチャクチャな人間として描かれているハリーが実は西部劇の堅気の人的な人格で、キャラクターとのそのマッチングが上手くいっていない様が今度は悲壮感や空疎さではなく、滑稽な方向へと軌道修正されたせいで味わい深い作品になっている。   同年のアウトローと比べると明らかに引けを取る本作ではあるが、なかなか楽しめる。変なリアリティと馬鹿馬鹿しさ、フィルムの色彩が生む異様な世界。地味な風景とキャラクター達が作り物の線を越えそうな奇妙さは七十年代ならではの良さだと思う。   一歩間違えると狼よさらばの続編たちみたいになってしまうのだが、ギリギリではありながらそうならずに割ときちんとダーティハリーとしてまとまっているあたりに拍手したい。   でも別に狼よさらばが悪いって言ってるんでは無い。
[地上波(吹替)] 7点(2013-05-06 05:02:12)
030.38%
1121.52%
2162.02%
3344.30%
4486.07%
5739.23%
618022.76%
720025.28%
815219.22%
9607.59%
10131.64%

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