241. さよなら子供たち
《ネタバレ》 子供たちの無邪気な日常に、大人たちの世界が理不尽さ残酷さと共に侵食していく様を、淡々としたタッチでありながら無駄の無い演出で描いている作品です。 ナチスドイツ占領下のフランスの人々の動きも、親独・反独がいろんな事情で入り混じっていて切なかったですね。まあ生きていくための選択ですから今の感覚で批難はできませんが・・・・・・。 [ビデオ(字幕)] 8点(2011-07-31 10:59:19) |
242. ムアラフ 改心
《ネタバレ》 他民族国家であるマレーシアの社会状況を織り交ぜながら、異なる宗教・民族の融和だけでなく、普遍的なテーマである家族の融和も描いていて非常に興味深い作品でした。 とにかく、時にユーモアを交えながら繊細なタッチで物語が進んでいくので、テーマは決して軽くはないのですがとても心地の良い時間を過ごすことができました。 ヤスミン・アフマド監督の早すぎる死が惜しまれます・・・・・。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-28 21:47:18) |
243. イップ・マン 序章
《ネタバレ》 まあ、「反日映画」であることは間違いないのですが、その一言で片付けてしまうには余りに勿体無い作品ですね。 ドニー・イェンのクールで激しい演技が見事にハマっているのは勿論のこと、池内博之やルイス・ファンも敵役でありながら、拳を通じてどこか分かりあえる部分があるような描き方をされていて単なる勧善懲悪的な物語では無いですね(まあ、部下役の日本人の演技にはちょっとイラっときてしまいましたが)。 とにかく、ストーリーも喜怒哀楽が全て詰まっているような濃厚な内容で非常に面白かったです。 [DVD(字幕)] 8点(2011-07-19 23:18:54) |
244. ばかもの
《ネタバレ》 ちょっとビターな恋愛映画かと思ったら、途中から非常にヘヴィな展開が続き少々面喰いましたが、非常に見応えのある作品でした。絲山秋子作品ですから、ありきたりな話な訳ないんですけどね。 まあ、アルコール依存症は怖いですね。酒飲みながら観てたんですけど、1杯だけで止めましたw ラストシーンは非常にキレイで印象的でしたね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-07-13 11:19:26) |
245. カラフル(2010)
《ネタバレ》 主人公と同世代の若者だけでなく、大人が見ても心が温まるファンタジー映画ですね。 中学3年生という、心身共に成長期を迎え、しかも義務教育最終年で進路を自分で決めなければならない難しい時代の感情の動きを見事に描ききっている作品でしたね。 大人の世界に足を踏み入れながらも、子供の純粋さを捨てきれず不安定な感情に翻弄されてしまう中学生たちの姿は恐らく誰もが共感できるものではないでしょうか(忘れてしまっている人もいるでしょうけど)。 何十もの異なる色を一つにしようとしてもそこには暗黒しか残りません・・・・ [DVD(邦画)] 8点(2011-07-05 23:14:12) |
246. ボーイズ・オン・ザ・ラン
《ネタバレ》 痛々しく、生々しく・・・なんと言うか日々自問自答していることを映像化され、晒されているようでとてもキツい作品でした。まあ、主人公役の峯田が惨めったらしくはあるものの非常にロックの魂を感じさせる演技だったのでまだ救われましたけどね。これで、本当に冴えない奴が演じてたら悶絶してたかもしれませんw 敵役の松田龍平も良い演技してましたね。確かにいるんですよ、こういう奴・・・(以下略) 何というか、この世界観はキツいけれども非常に共感できますね。原作は未読ですが、一度読んでみようかと思いました。 [DVD(邦画)] 8点(2011-06-22 23:37:00)(良:1票) |
247. 愛の勝利を ムッソリーニを愛した女
《ネタバレ》 最初から最後までマルコ・ベロッキオ監督の才能に圧倒され続けましたね。ストーリー的には、女好きの独裁者に捨てられた女性がストーカー化して云々ということなんで、正直個人的には興味の持てない題材ではあったのですが、とにかく監督はそういう我々の心情を想定しているかのように爆発音や古いニュース映像、そして当時のプロパガンダを思わせるようなスローガンの羅列等々興味を惹くような手法を絶妙のタイミングで挟み込み全く飽きさせることがありませんでした。そして、どこか日本的な趣さえ感じさせる美しい映像が、この昼ドラ的な物語を芸術にまで昇華させています。 特に主人公が雪の降る中を病院の柵に登りながら手紙を外にばら撒いているシーンはモノクロで本当に美しくて印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-06-18 09:15:18) |
248. 十三人の刺客(2010)
《ネタバレ》 美しい戦争、美しい殺し合いなんて存在しないんです・・・・ 延々と続く殺戮の映像が暴力の破壊性、虚しさを激しく伝えてくれます。また、忠義という「美徳」によって思考停止を余儀なくされ、視野狭窄に陥ることの恐ろしさを教えてくれる作品でもありました。 忠義に殉ずる事と、主君に無条件に従うことは同じように見えて全く違うものであって、主君たる座についたからその者を主君として仕えるというよりは、主君という座がありその座の存在に対し忠義を尽くすのが本当の姿なのではないでしょうか。 稲垣吾郎演じる殿様のような愚かなリーダーは、決してドラマの中だけに出てくる創作物ではないのだと思います。 [DVD(邦画)] 8点(2011-06-14 00:29:40) |
249. マイ・バック・ページ
《ネタバレ》 非常に見応えのある作品でした。60年代後半から70年代前半の社会の空気を山下監督が上手く作り出しています。自分を、社会を変革しなければならないという思いと、世の中の真実を伝えていきたいという思い、そして己の使命に忠実であろうという思い・・・様々な思いが上手く重なっていくように見えて少しずつズレていく展開は、まさに若者が「大人の世界」の前に挫折していく姿を映し出したアメリカン・ニューシネマの世界観に相通じるものがありましたね。 まあ、マスコミのあり方というものについても考えさせられる作品でしたね。 [映画館(邦画)] 8点(2011-06-12 21:29:29) |
250. 水俣 患者さんとその世界
《ネタバレ》 のどかな漁村の風景の中で水俣病の患者たちとその暮らしが紹介され、それと並行して原因企業でありながら対応が鈍いチッソに対する怒りが徐々に盛り上がっていく姿を映し出した後世まで残すべき貴重なドキュメンタリーでしたね。 クライマックスのチッソ株主総会では、患者たちの激しい怒りと企業側の組織防衛本能(企業存続・補償金節減等)が激しくぶつかりあいフィクションでも中々作り出せないような凄まじい光景が記録されており圧巻としかいいようがありませんでした。この企業の組織防衛本能ってやつがまた厄介なものなんですよね。自営業では無い雇われ経営者は仕事として社員の生活・株主の利益等々を守っていかなければならないわけですからね。真面目に仕事をすればするほど患者にとって冷徹で頑なな存在になっていってしまうという状況になっていくわけです。 映像の力・ドキュメンタリーの力の強さを教えてくれる作品でした。 [映画館(邦画)] 8点(2011-06-05 10:11:52) |
251. パルチザン前史
《ネタバレ》 全共闘運動の激しいエネルギーに圧倒されましたね。京大・阪市大の時計台攻防戦、京都市街戦の迫力はまるで内戦のようで凄まじいものがありました。ただ、これだけのパワーが一般市民にまで浸透しなかったのは、結局滝田修が言うところの「祭り」にまで運動を持っていくことができなかったからなのでしょうかね? しかし、この滝田修という男のキャラクターが非常に魅力的でしたね。関西弁でどことなくユーモア漂う語り口や、家庭を持ち生活のためにアルバイトもするなど地に足をつけた生活の中で闘争活動を行っていくスタイルは、さぞかし多くの人に影響を与えたのだろうなと思わせます。特に大学解体を叫びながら生活のため予備校で教鞭をとらなければならない矛盾を生活費の実態を曝け出しながら弁解するシーンなどは非常に人間臭さがでていましたね。 [映画館(邦画)] 8点(2011-06-05 02:06:54) |
252. 悪人
《ネタバレ》 なんと言うか、淡々とした展開なんですが、じわじわと胸の奥からいろいろな感情がこみ上げてきましたね。まあ、人間誰しも悪人であり善人であり普通の人であることを痛感します。 この作品に出てくる人間たちはわかりあっているようでも、誰一人わかりあっていないし、皆探りあいながら他人にレッテルを貼って識別しその共通認識で連帯しようとしているような孤独な人たちなんですよね。 このどうにもならない孤独感を、妻夫木聡や深津絵里が演じ切れていたかというと正直微妙ではありますが、まあメジャー作品なのでそれは仕方ないところでしょうね(二人の演技はとても良かったですが綺麗すぎるんですよね)。これで、どこにでもいるような冴えないあんちゃん、ねえちゃんをキャスティングしていたら多分号泣していたと思います。 しかし、李相日という人は本当にヒリヒリするような映画作りをするのが上手いですね。 [DVD(邦画)] 8点(2011-05-31 00:43:33)(良:2票) |
253. フェアウェル さらば、哀しみのスパイ
《ネタバレ》 冷戦時代の緊張感を思い出させてくれる、見応えのある作品です。エミール・クストリッツァの圧倒的な存在感がとても印象的でした。終盤の展開は事実に基づいた作品であることが信じられないくらいでした。 また、当時の各国首脳も出てきますが、演じる役者が微妙にそっくりさんで中々笑えます。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-27 21:56:40) |
254. ANPO
《ネタバレ》 戦後の日本が、実質的にはアメリカの支配下にあり、日米安保による米軍庇護の下で高度成長を成し遂げていったことが良くわかるドキュメンタリーでした。 何というか、闘うアートの数々がその複雑な事実を我々に訴えかけてくるようで非常に興味深かったです。 アーティストの一人が「日本は戦争責任の追求を連合国に任せてしまい、日本人自身が行わなかった」と語っていましたが、このような複雑な状況に陥った一端は確かにこういうことなのかなと感じましたね。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-25 23:02:46) |
255. Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン
《ネタバレ》 北朝鮮や北朝鮮を支持する在日家庭の姿をかなり踏み込んで描いており非常に興味深かったですね。 主人公の父親のキャラクターはとても魅力的ではありますが、逆にそのキャラクターが北朝鮮問題を象徴しているようにも思えました。家父長制が国家運営に巧みに取り入れられていることが、あの頑なな姿勢につながっているような気がしてなりません。 北朝鮮問題を考えるにあたり、我々があまりに相手のことを知らなさすぎることを改めて教えられる作品でした。 [DVD(邦画)] 8点(2011-05-04 13:11:42) |
256. クロッシング(2008)
《ネタバレ》 物語としてよく出来ているかどうかは別として、北朝鮮の人々の暮らしぶりや脱北、そして収容所の様子が映し出されていて非常に興味深い作品でした。 日本の隣でこのような現実があることを多くの人に知ってもらいたいですね。 [DVD(吹替)] 8点(2011-04-27 23:44:42) |
257. エリックを探して
《ネタバレ》 エリック・カントナの幻が出てきたり、クライマックスの展開などコメディ色はあるものの、やはりケン・ローチらしいイギリスの日常風景で起きる様々な問題を描いた作品でした。途中の絶望的な状況なんてまさに「いつもの」という言葉を使いたくなるような展開でした。で、「いつも」なら我々に強烈な問題提起を叩きつけて物語は終わるのですが、この作品についてはやはり「KING」エリック・カントナのカリスマ性が為せる技なのか一味違う印象を受けましたね。カントナの語る格言やアドバイスが中々心に沁みました。一番印象的だったのは「最大の復讐は赦すことである」ですかね・・・・・。 カントナの現役時代のプレー(本当に威厳があって格好いいです)もところどころに散りばめられていますし、マンチェスターユナイテッドがアメリカの実業家に買収された後に反対するサポーターがFCユナイテッド・オブ・マンチェスターを新たに結成したことなんかも触れられていたりして、サッカーファン(プレミアリーグ好きなら特に)の方には是非劇場で見ることをお勧めしたいですね。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-17 16:01:40) |
258. ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実
《ネタバレ》 ベトナム戦争がまだ終わってない段階でこのような作品が作られていたとは驚きです。アメリカの東洋人蔑視がベトナムでの残虐行為に現れていること、政府が愛国心を煽るように国民を巧みに騙しながら戦争を続けたことがしっかりと描かれています。 そして何よりも戦場の生の姿がしっかりとフィルムに収められていて非常に興味深かったです。戦争という破壊活動そのものが映像として我々に提示されている本当に貴重な記録だと思います。 まあ、これを観たら確かに反戦運動は盛り上がると思いますね。ようするに欺瞞に満ちた大義名分の下で、兵士たちが「国のために」遠いアジアで不毛な殺し合いをさせられている訳ですから。 戦争というものは格好良いものでもなんでもないことを改めて思い知らせてくれる作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2011-04-17 15:57:07) |
259. わたしを離さないで
《ネタバレ》 哀しく切ないラブストーリーであると同時に、臓器移植やクローン技術の問題の倫理のあり方について考えさせる映画でした。内容的には差別問題にもつながるテーマですので非常に興味深く観賞しました。ある生命を犠牲にして他の生命を守る行為は自発的ならともかく、制度や慣習にしてはならないと個人的には思います。 まあ豪華キャストが揃っているのでエンターテイメントとしてもしっかりとした作品でした。 「私たちと私たちが助ける人たちとではいったい何が違うのだろうか・・・・」という主人公のモノローグがとても印象に残りました。 [映画館(字幕)] 8点(2011-04-17 15:53:13)(良:1票) |
260. リリア 4-ever
《ネタバレ》 これは我々に怒りを喚起させるための映画だと思います。まるで奴隷狩りのような人身売買を営む輩に対しては勿論のこと、子どもを「これから生きていくより死んだ方がマシだ」と思わせるような親や親類、そしてこういった人身売買の実態から目を背け己の欲望を満たそうとする大人たち・・・・等々に対しても憤りを隠せません。 本当に、考えさせられる作品でした [映画館(字幕)] 8点(2011-02-13 21:13:10) |