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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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261.  逃亡列車 《ネタバレ》 
かつて陸軍には鉄道連隊という工兵部隊がありました。文字通り戦地で鉄道を建設・運営するのが任務で、悪名高い泰緬鉄道の建設なんかも鉄道連隊の仕事です。千葉の津田沼・松戸間を走る新京成電鉄は鉄道連隊が残した演習用路線を繋げて戦後開業したのがルーツで、平坦な地形なのに異様にカーブが多いのはその名残だそうです。この鉄道連隊の部隊を主人公(たぶん日本でこれ一本だけじゃないでしょうか)にした珍しいアクション映画です。 満州の場末に駐屯する守備隊が、終戦の混乱のなか中国ゲリラの追撃を振り切って復員船の待つ北朝鮮の港までいかに逃げ切るかというのがプロットです。部隊を率いる少尉は石原裕次郎で、士官学校出の職業軍人じゃないという設定みたいなんですがバクチはめっぽう強く拳銃撃たせりゃ百発百中、まさに日活お得意の無国籍アクションのヒーローそのものといった感じです。撮影は北海道あたりで撮ったのかと思えば実は山梨県の小海線で国鉄協力の元撮影されたそうで、あの雄大な景色は八ヶ岳の麓というわけです。小駅で女学生たちとともにゲリラに包囲された裕次郎部隊なんですが、肝心の機関車疾走シーンはラストのほんの5分足らずです。それまでにいかに苦労して機関車を走行可能にするかが焦点なわけですが、部下の玉川伊三男たちがあの手この手で修理しちゃう描写が面白い。また怪しげな中国人が伊藤雄之助で、もうこの人をキャスティングしたことだけで評価が100点満点中30点はアップしましたね。でも敵のゲリラの描写はちょっと雑なところが目立ち、包囲しているくせになかなか攻めてこないし、攻撃開始すれば弱小部隊に射的の的みたいに打ち倒されるだけで、まるっきり西部劇のインディアン状態でした。 とは言えやはり石原裕次郎はカッコ良いし物語のテンポも好調で愉しめる作品だったと思います。邦画の戦争映画は湿っぽいものが多くてときにやり切れなくなりますが、東宝の『独立愚連隊』シリーズに通じる本作の様なカラッとしたアクションは貴重です。今となっては実現不可能ですけど、60年代の石原裕次郎と加山雄三が共演する陽性戦争アクション映画を観てみたいものです
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-09-02 19:55:51)
262.  魚が出てきた日 《ネタバレ》 
これは『その男ゾルバ』を観たときにも感じましたのですが、監督マイケル・カコヤニスの同胞ギリシャ人に対する眼差しは痛烈なまでに辛辣です。ぶっちゃけて言うと、孤島の欲の皮が突っ張ったギリシャ人たちがパンドラの箱を開けてしまったために世界が滅亡の危機に瀕するというお話しで、最近のギリシャ危機問題のことを考えますと鋭い予言じゃないかと思います。 ブラック・ユーモア仕立てなのでストレートな緊迫感を与える撮り方はしてないですが、昼も夜も狂ったように踊る観光客たちが迫りくる危機のメタファーになっています。この観光客たち、とくに女性たちのファッションと化粧がまた奇抜で、まるでパリからファッションモデルの団体客が押し寄せてきたみたいです。考古学者という役柄のキャンディス・バーゲンもあんなぶっ飛んだファッションで発掘調査に来る学者なんて世界中どこ捜したっていませんよ。この映画はなんとコスチューム担当が監督マイケル・カコヤニスで、それだけあの突飛な衣装には彼の思いがこもっているんでしょうね。それにしてもキャンディス・バーゲン、スタイルはいいのに凄い貧乳なのにはちょっと驚きました。 でも福島原発で苦しんでいる今の日本人には、核物質が海で拡散して魚が死滅して浮いてくるという絵は、ちょっと現実的過ぎてシャレになりません。
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-30 00:19:00)
263.  いそぎんちゃく
“いそぎんちゃく”“くらげ”とくれば大映の軟体海棲生物シリーズ(なんちゅうネーミングでしょう)で一花咲かせた渥美マリです。このタイトルを見て「この映画は良い子が観ちゃいけないんだ」と子供心にも速攻で理解できる淫靡なネーミングでしたね。でもこの“いそぎんちゃく”はあくまで“礒の巾着(財布)”であって、渥美マリは肉体を駆使してひたすらカネをため込む女のお話しなんですね。まあ一種のピカレスク・ロマンみたいなもんですが、ここまで徹底してカネに執着する彼女の姿勢は、えげつなさを超越してカッコ良いと言えるところにまで昇華しています。演技力に欠ける彼女に無表情な芝居で全篇通させた演出は良い感じでした。通俗的なストーリーながらも淡々とした語り口の撮り方が好印象を与えてくれたので、プラス一点です。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-12-09 21:56:56)(良:1票)
264.  陸軍中野学校 《ネタバレ》 
陸軍中野学校では女の悦ばせ方まで教えていたって、史実なんですかね? もうこのシーンだけは爆笑するべきなんでしょうけど、マネキン使って講義してるところなんかは教える方も教わる方も大真面目なんでちょっとシュールな世界です。ちゃんとその後で芸者をあげて実習させるところなんか、さすが中野学校です(笑)。 この映画の雷蔵はもうクールで冷酷無比、時代劇で活躍した雷蔵ですが彼の数少ない現代劇を観るとほんとはこっちの方が向いていたんじゃないかと思うぐらいです。この『中野学校』シリーズのキャラは『ある殺し屋』の正体不明の主人公に通じるものがあり、実は『ある殺し屋』の塩沢は椎名次郎の戦後の姿だったという解釈もできますね。 すでにご指摘の方もいらっしゃいますが、私もヒロインは若尾文子の方が良かったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-10-20 18:50:49)
265.  秦・始皇帝 《ネタバレ》 
「大蔵貢の新東宝が明治天皇なら大映は始皇帝じゃ!」という永田雅一の雄叫びが聞こえてくるような70ミリ超大作、そりゃ始皇帝の方がはるかに各が上ですからね。大映の70ミリ大作は『釈迦』に続いての二作目で、『スパルタカス』の機材の払い下げ品である220キロも目方のあるヴィスタ・カメラも良く動かせるようになっていて、『ベン・ハー』ばりの戦車が登場する戦闘シーンまで登場します。タイトルに“中華民国陸軍協力”と出ていますので台湾ロケもしたみたいで、そういや山並みなんかの風景がちょっと日本離れしていて良かったです。 始皇帝の生涯を単発映画で見せるというのはかなり無茶ですが、後半とくに万里の長城建設に焦点を合わせた脚本は良くまとまってるんじゃないでしょうか。新東宝と違って綺麗どころの質が高い大映ですから、若尾文子・山本富士子・中村玉緒と惜しげもなく投入しています。でもそれぞれが別々に登場するのがちょっと残念で、どうせフィクションを盛り込んでいるんだからこの三女優の絡みで展開させて欲しかったところです。まあそこはオールスター映画のつらいところで、雷蔵の刑軻なんてあっという間に退場ですから実にもったいない。その中でもっとも感じが出てたのは始皇帝の勝新は別にしたらやはり鴈治郎の徐福ですね。絶妙のキャスティングで、どう考えてもこいつは稀代のペテン師だなと納得させちゃうのが凄い。 始皇帝の死なんかはまるっきりフィクションですけど、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。彼の業績というか暴政をこうやって見せられると、スターリンの独裁とそっくりだなと改めて感じました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-09-22 00:29:05)
266.  鳥(1963) 《ネタバレ》 
低迷期だったヒッチコックの60年代の作品で、本作が最右翼の実験作と言えるでしょう。まず誰もが驚くのがミステリー・テイストのボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーだった前半に、まるでモンスター・パニックSFの様な鳥の襲撃がメインの後半を無理矢理くっつけたドラマツルギーを無視した様な荒技でしょう。そしてヒッチコックにしては珍しく劇中いっさい音楽を流さなかったことも指摘出来るでしょう。鳥の襲撃はやはりジェシカ・タンディとティッピー・ヘドレンの確執のメタファーなんだろうかとどうしても考えてしまいますが、どうもヒッチコック御大はあまりそのあたりは深く考えないで撮ったみたいですね。やはり彼がやってみたかったことは、ブニュエルみたいな不条理劇を撮ることだったんじゃないでしょうか。音楽を流さないところもブニュエルのスタイルを真似ている感じがします。まあそれが上手くいったかは観ての通りで、やっぱヒッチコックには合わないジャンルだったみたいですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2014-05-27 18:35:19)
267.  国際秘密警察 鍵の鍵 《ネタバレ》 
シリーズもいよいよ佳境に入り、ウディ・アレンの伝説の初監督作『What's Up, Tiger Lily?』の元ネタがこの第4作目でございます。前作で大きくコメディ路線に舵をとったこのシリーズでしたが、本作では初期のハード・スタイルな撮り方も復活しており、コメディ調とのバランスがとれている感じがしました。監督が大ベテランの谷口千吉だと言うこともあるでしょうが、手堅くまとめたなと感じます。 初期二作に戻ったかの様に、オープニングはどうもブルネイをモデルにした様な東南アジアの某国から始まります。この国の大臣から横浜で船上カジノで稼いでいる反乱組織から1千万ドル強奪するのに協力して欲しいと頼まれます。つまり本作での北見次郎の活動は国際秘密警察本部からの指令が有ったわけじゃなくて、いわば彼のアルバイトみたいなものなんですよ。情報局長の浜美枝と金庫破りの達人である若林映子を引き連れ現地に乗り込むと、そこには反乱組織とはライバルの中国人組織が手ぐすねを引いていたと言うわけです。 本作では北見次郎は殴られて拉致されたり拷問されて顔傷だらけにされたり精彩があまりないのですが、その分敵役たちががんばってくれます。何と言っても“ハヤタ隊員”黒部進にご注目です。北見次郎と手を組んだり裏切ったりの中国人ボス、常に脇役に徹してきた彼としては珍しい目立ちっぷりです。そして「俺はコブラに噛まれて人が死んでゆくところを見るのが夢なんだ」なんて言ってのける、天本英世の拷問好きのド変態ぶりも強烈でした。このコブラ、アップはギニョールなんで良いですけど、ロングになると普通の青大将みたいなヘビになっちゃうのは失笑ものでした。中丸忠雄ももちろん出てますが、そういやどうも影が薄かったですね。 こうやって観ると意外と弾けるところは少なかった印象で、こうなるとますます『What's Up, Tiger Lily?』が観たくなると言うものです、出来れば日本語吹き替え版でね。個人的には、アレンのこの映画のおかげで浜美枝と若林映子がボンド・ガールに抜擢されたと睨んでいます。ということは、もし水野久美が本作にキャスティングされていたら彼女が『007は二度死ぬ』に出演していたわけで、惜しいことしました(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2014-05-22 22:47:33)
268.  グレートレース
たしか中学生の時だったと記憶していますがリバイバル上映で観ました。観客には大受けで爆笑の渦でしたが、いま見直してみますと大して笑えませんよね。何と言うか、ブレーク・エドワースの喜劇ってちょっとくど過ぎるんですよね。でもトニー・カーチスとジャック・レモンという『お熱いのがお好き』の黄金コンビの復活だけでも観る価値は十分です。ペーソスが持ち味のレモンにしては珍しいドタバタ演技ですけどあのけたたましいまでの笑い声はもうド迫力で、さすが名優です。カーチスのキラッと光る歯がこれまたベタですけど可笑しいんですよね。ナタリー・ウッドもこの頃がキャリアの頂点で、その美しさは輝きに満ち溢れています。そしてヘンリー・マンシーニの名曲中の名曲“The Sweetheart Tree”、もうこの曲を聴くだけで幸せな気分になります。 こういう雰囲気の映画は60年代以降には廃れてしまったみたいで、もう絶滅したジャンルと言えるでしょう。
[映画館(字幕)] 6点(2014-04-26 21:47:52)
269.  紳士同盟(1960) 《ネタバレ》 
プロットというか設定は『オーシャンと十一人の仲間』に酷似しています。舞台が英国で元将校ジャック・ホーキンスが集めた連中がかつての戦友じゃなくて軍を不名誉除隊となった互いに見ず知らず同士というのが『オーシャン』との大きな違いです。普通ならこの海千山千な男たちが持つ特殊技能や仲間内の確執で話を引っ張るものですが、親玉ホーキンスが飄々としているせいか実に淡泊なストーリー・テリングです。いつもそのいかつい顔を活かしたキャラが多いホーキンスも、こんなにとぼけた役もこなせるとは御見それいたしました。 犯行が露見するネタには「こんなことでばれるか?」とちょっと疑問が湧きますが、あのラスト・カットを見れば「ああこれがやりたくてこの映画を撮ったんだろうな」と思わせるようないい味がありました。
[DVD(字幕)] 6点(2014-01-19 22:24:40)
270.  愚か者の船 《ネタバレ》 
批評家からの評価も高く群像劇としての完成度は高いけど、なんか小ぢんまりと纏めましたという感じがする作品です。舞台が英米仏の豪華客船でなくて、いかにも二流感が溢れるドイツの客船としたところはうらぶれたムードが出ていて良かったです。 登場人物はみな善人かせこい悪人というわけですが、この連中は“fools”と呼んでしまうにはあまりにも普通の人間すぎる気がします。誰が「君たちは愚か者だ」と言っているのかというとそれは神様で、映画の冒頭とラストで観客に語りかける“神の子”マイケル・ダンが天上の代弁者ということなんでしょう。 この映画のいちばんの悪人は反ユダヤ主義に凝り固まったオーストリア人のホセ・ファラーになるんでしょうけど、彼の演技が魅力的なんで誰も憎む気にはなれないでしょう。シモーヌ・シニョレとオスカー・ウェルナーの悲恋がストーリー展開のメインではありますが、出番は少ないながらもヴィヴィアン・リーのエピソードにはすっかり喰われてしまったみたいです。リー・マーヴィンとのからみとその前後の狂おしいまでの演技、やっぱこの人は凄い女優だったんですよね。
[DVD(字幕)] 6点(2013-12-15 20:08:51)
271.  地下室のメロディー 《ネタバレ》 
フランスのノワールには“仁義”“掟”“男同士の友情”といった臭みが目立つ映画が多いが、この映画には不思議とそういう要素が見られません。ジャン・ギャバンが出所して家に帰りつくと通りの名前が変わっていたという冒頭シークエンスには、そこはかとないユーモアすら感じさせてくれます。でも人物造形やその背景設定には粗と言うかポカが目立ちますね。だいいち、10億フランもの大金を強奪する計画を立てる切実感や成功させようとする高揚感といったものがこの犯人たちから欠けている様に思えます。アラン・ドロンがダクトを這ってゆく様な細部描写にはとても拘りを見せているのにね。でもこのシーンを甦らせた『ダイハード』よりもずっと面白い撮り方でした(ダクトの中にエアコンの空流が吹き抜けるところなんか、もう最高です)。ドロンがちょっかいを出す踊り子やギャバンの女房が伏線の様な存在なのかと思えば全然発展しないキャラでした、ってのも自分としては不満なところです。 と言うわけで、観ての通りでラスト・シーンがすべてというジャンルの映画でした、まあこれはこれで粋な5分間であることは確かです(でもあのカバンが水に沈むかなー、『あやしい伝説』でぜひ検証して欲しいです)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-05 23:53:58)
272.  世界大戦争 《ネタバレ》 
■「明るく楽しい」「不偏不党」がモットーである東宝が、SFとは言えよくぞここまでデスパレートな映画を製作したものだと感心します。あの当時は汚い核兵器である水爆の威力がほぼ頂点に達していた時期なので、あれだけ盛大にICBMを撃ちまくったらそりゃ死の灰が降り注いで全人類が滅亡するでしょう。ハリウッド映画ではよく“核戦争後の世界”というテーマがありますが、そう言えば邦画では皆無ですね。島国日本では水爆2~3発おとされたらもう逃げ場がないですし、放射能の恐ろしさを世界一に理解している国民ですから、当然です。■僧籍を持つ松林宗恵が監督ですから、根底には仏教的な無常観が感じられます。世界情勢の激変に巻き込まれてゆくフランキー堺親子という徹底的に庶民目線の作劇は、東宝特撮映画には珍しく乙羽信子が出演してることもあり、まるで新藤兼人が脚本を手掛けた様な印象です。二階で泣き叫ぶフランキー堺のシーンはあまりにも有名ですが、宝田明と星由里子が無線で「コウフクダッタネ」と交信するシーンでは観るたびに自分は不覚にも泣いちゃいます。流れ星みたいにミサイルが国会議事堂の上に飛んできてからの地獄絵図は、緻密なカット割りも功を奏して未だに強烈なトラウマとなっています。■この映画と言うか東宝という会社の限界は、「戦争は政治の継続である」と言われているのに、政治がまったく描かれていないところでしょう。ワルシャワ条約陣営を「同盟国」NATO陣営を「連邦国」と言い換えて国籍マークや軍服まで架空のものを使い、何をそこまで遠慮しなければならないの?と言いたいぐらいです。航空機や潜水艦などは当時の両陣営の実物をけっこう正確に摸しているのに、“ミグ”を“モク”と言い換えることまでしています。もちろん、アメリカやソ連と言った言葉はまったく出てこないので、なんで第三次世界大戦が勃発したのか理解不能です。登場する政治家は日本政府だけで、山村聡はじめ貫禄ある顔ぶれですけど、まるでバチカンかダライ・ラマみたいなご託宣を発するだけでどう見ても単なる傍観者でしかない。戦後の日本と言う国の国際的な位置づけからすると、この描き方もある意味リアルということでしょうか。■この映画が当時の観客にあまりに強い衝撃を与えたので、東宝は翌年に超能天気な『妖星ゴラス』を製作したんじゃないかと個人的に思っています。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-11-07 23:46:18)(良:1票)
273.  妖星ゴラス 《ネタバレ》 
私の中では“はやぶさ”と言えば、“妖星ゴラスのJX隼号”と昔から決まっています。バンザイしながらゴラスに吸い込まれて散ってゆくクルーたちは、何と日本的なことか(そういやこの映画、やたらバンザイするシーンがありますが)。古今からさまざまなSF映画が製作されたけど、ここまで壮大で大乗的な視点の大法螺話は映画史に残る偉業です。高度成長期の日本のバイタリティは、なんと地球まで動かしてしまったんですから大したものです(笑)。 南極からジェット噴射しながら地球が動く画って、稚拙な技法かもしれませんが今の眼で観ても凄い映像です。東宝特撮ミニチュアワークの粋を凝らした南極での工事シーンは見応えがあり、建設現場のミニチュアから溶接の火花が見えるように撮っているのは感心しました。 あまりに不評な唐突に怪獣が出現するシーンも、ここで登場する航空機が後に『ウルトラマン』で科学特捜隊が使用するジェットビートルの原型になっていることは評価してあげたい。 この映画で異彩を放つのは、久保明と宇宙飛行士たちの異様なまでに高いテンションと陽気さです。彼らの描き方を観ていると、旧海軍の戦闘機パイロットたちの文化をそのまま持ってきた様な印象を受けます。「宇宙飛行士は駕籠かきみたいなものよ」なんてセリフまであった気がしますが、まだ日本ではアストロノーツという職業への理解がまだ浅かったのが伺えます。当時はアメリカではジェミニ計画が進行中でしたが、『ライトスタッフ』を観れば判るように、宇宙飛行士には知力体力ともに超人的な能力が必要だと言うことは想像を超えていたんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-10-19 20:58:02)
274.  地獄(1960) 《ネタバレ》 
肝心の地獄よりも、天地茂たち主要な登場人物がほとんど死に絶える現生の方が、不気味なんです。上から見おろす、下から見上げる、そんなとてもシュールで居心地の悪いショットが一時間の現生編の半分は占めているような気がします。何度も挿入される走る蒸気機関車や線路のカットがどんどん鬱な気分にしてくれます。 しかし新東宝でも屈指のカルトにこの映画を押し上げたのは沼田曜一のそりゃ鬼気迫る怪演に違いなく、この演技を説明するには適切な言葉が思いつかないぐらいです。彼が悪魔なのか天地茂のダーク・ハーフとして出現したのか、けっきょく最後までよく判らんところがまた良いですね。 地獄で苦しめられる天地茂に何か光明がさしてくるような雰囲気もあり、まさか夢オチの最悪なハッピー・エンドかと危惧させられるも、あまりに無常なラスト・ショットで締めてくるとはさすが中川信夫です。 この映画、未成年とお迎えが近い老人は、決して観てはいけません!!
[DVD(邦画)] 6点(2012-09-08 20:04:12)
275.  招かれざる客(1967) 《ネタバレ》 
しかし、どうですか皆さん、自分の娘が突然2週間前に知り合った男とすぐに結婚すると言い出したら、ふつう親として反対しませんか、たとえ相手が異人種であろうが無かろうが。 せっかく米国のタブーに切り込むテーマだったのに、なんでこの脚本家はこんな無茶な設定にしたのでしょうかね? 娘にしたって典型的な苦労知らずのお嬢様にしか見えないですしね。ドレイトン家の外の世間は実に類型的な描かれかたなのも、ちょっと監督の意図に首をかしげてしまいます(家政婦の親戚らしいドロシーという娘なんか、どういう狙いがあって登場させたのでしょうかね) ある意味、キャサリン・ヘップバーンとスペンサー・トレイシーというゴールデン・カップルを再び銀幕に引っ張り出すための企画だったんでしょうね。 それにしても、キャサリン・ヘップバーンはほんと凄い女優ですね。実際に涙を流したシーンはひとつだけですが、そのシーンにいたるまで劇中ずっと涙をためた様な潤んだ眼で演じ続けているんですよ。そりゃ映画ってのは脚本の順番通りに撮影されることはまずないですから、彼女の“眼ぢから演技”は驚異的です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-04-30 23:22:08)
276.  アメリカ上陸作戦 《ネタバレ》 
冷戦時代の米ソ対立とアメリカ人の国民性を皮肉った映画ですが、この笑いの狙いが“ブラック・ユーモア”なのか“ほのぼのヒューマン系”かどっちつかずなのが痛いところです。ブラック・ユーモアというからには「おい、そこまでやるかよ」というハチャメチャさがなくちゃね、似た様なプロットの『1941』ぐらいはじけなくっちゃいかんでしょう(たとえそれが観客に受けなかったとしてもね)。 名優アラン・アーキンはこれが映画デビューですけど、さすがに上手いし可笑しい。もっと前面に出すプロットにして、主役として活躍させたほうが良かったでしょう。その主役はカール・ライナー(『オーシャンズ』シリーズのソールです)ですが、40年前の彼は不気味なほどニコラス・ケイジにそっくりなんですよ、あの後退した生え際なんかもね。そうか、そのうちああなっちゃうのか、ニコラス・ケイジも40年後には…
[CS・衛星(字幕)] 6点(2012-04-24 20:04:05)
277.  荒鷲の要塞 《ネタバレ》 
小説化を前提に冒険小説の巨匠アリステア・マクリーンがオリジナル原案と脚本を書いただけあって、とくに後半は二転三転するストーリーはなかなかのものです。勇壮なロン・グッドウィンのメイン・テーマも、戦争アクション映画のベスト3に入れちゃいたいほど好きです。 リチャード・バートンは名優ですけどアクション映画に不向きで、どうも体の動きが鈍重なんですよね。この手の映画にはそりゃバート・ランカスターやカーク・ダグラスが適役ですけど、この二人はとても英国人には見えないので、まあバートンでも良しとしておきましょう。ハリウッドに復帰したばかりのイーストウッドも頑張っていますが、多少短くしているとは言ってもあの髪型は特殊部隊の将校らしくないですよね。二挺拳銃みたいにしてシュマイザーをぶっ放すシーンがありますが、いくらなんでもあれはやり過ぎです。イーストウッド自身が希望して撮ったアクションなんだそうですが、あんな撃ち方が実際に出来るわけがないでしょう(カッコ良いのは確かですけど)。サービスで二人も出てくる女スパイも、定石では少なくとも一人は途中で死ぬところですがラストまで銃撃ちまくって大活躍しちゃうし、こいつら弾に当たらない超人部隊か!
[映画館(字幕)] 6点(2012-01-28 20:18:08)
278.  恋する女たち(1969) 《ネタバレ》 
ケン・ラッセルの得意としたジャンルは音楽家の伝記とD・H・ロレンス小説の映像化でしたが、本作はそのロレンス文学の初の映画化です。ロレンス文学らしく、登場人物がみな観念的で理屈っぽいところは、はっきり言って観ていて鬱陶しいところです。マイケル・ベイツとオリバー・リードのフルチン・レスリングはいかにもケンちゃんらしい画ですけど、別に彼の創作ではなく原作通りなのです。それよりも彼らしさが出ているのは、2回出てくる女性が踊るシーンでしょう。ケンちゃんの映画では常にダンスが、良く言えばシュール、ぶっちゃけて言えば奇妙奇天烈な振り付けで、本作でもグレンダ・ジャクソンが牛の群れにダンスを見せるシーンはいちばんインパクトがあったシーンでした。本作でケンちゃんはオスカー監督賞にノミネートされ新しい文芸派監督が誕生と称賛されたのですが、その男が70年代になると映画史に残る変態監督になろうとは、誰も予想してなかったでしょうね。 その私が愛してやまないケンちゃんも昨年ついに昇天してしまいました、合掌。
[ビデオ(字幕)] 6点(2012-01-22 00:05:23)
279.  江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 《ネタバレ》 
海外版DVDで鑑賞。ジャケットは公開時のポスターを使っているのですが、良く見るとこの映画は成人映画指定だったことが判ります。人造奇形人間と言っても実際のフリークスを出演させるわけでもなく、もっぱら暗黒舞踏団のメンバーが奇形人間のふりをすることで済ませてます。エロも大したことはなく、冒頭の精神病院のシーンにオッパイが沢山出てくるぐらいなものです。乱歩のエッセンスを詰め込み過ぎたプログラム・ピクチャーと言ってしまえばそれまでですが、全篇を通して変調な雰囲気がただよい、特に土方巽の不気味な怪演はなんか気持ちの悪いものを観た様な後味の悪さが強烈です。そして伝説の「おかあさーん」になるわけですが、こりゃ劇場で観たらきっと大爆笑まちがいなしです。なぜか突然登場する明智小五郎と突っ込みどころは満載ですが、なんと言うか、当時の時代の空気が感じられる気もします。
[DVD(邦画)] 6点(2011-02-06 20:42:30)
280.  戦う幌馬車
ただただ、全盛期で脂の乗り切ったカーク・ダグラスのカッチョよさをひたすら味わうべき!(この際、ジョン・ウェインはどうでも良い) なぜか革手袋の上からでっかい指輪をしてるのですが、そこがまたカッコ良い! ピョンピョンとび跳ねながら馬に乗るところがまた痺れちゃう! と、ダグラスに見惚れてるうちに映画は終わってしまいました(なんか装甲車みたいな馬車が出てた様な気がしましたが)。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-03 22:36:58)
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