361. 私は二歳
赤ん坊から二歳までの子どもの視点で描かれた映画というのが画期的。団地アパート、子育て、嫁姑の問題などどこにでもあるような題材なのだが、教育映画や某企業の宣伝映画にもならず、ほのぼのとした感覚に作りあげたのは見事、市川崑、和田夏十夫婦の暖かさが染み出ている。 赤ん坊が夜中にどんなに泣き叫んでみても、その後の笑顔さえ見れば、心が和んでくる。親から子へ、そして孫へと受け継いでいく家族の愛を感じさせられる映画だった。 [DVD(邦画)] 8点(2012-07-16 10:35:06) |
362. ダンサー・イン・ザ・ダーク
二度と見たくないという人には酷かもしれないが、何年か経って再度見て冷静にレビューが書ける映画かもしれない。私も最初見たときの衝撃は大きく、とても言葉にできなかったことを覚えている。 確かにセルマの考え方や行動は異常だ。しかしそれは遺伝による先天的な目の病気ということを考えれば理解できることかもしれない。それなのに敢えて子どもを産んだという事実、それをどう考えればよいのだろう。不幸はここから始まっていたのかも。そして死刑執行という運命、死刑制度がなくならない限り、解消できない不幸かもしれない。 ラース・フォン・トリアーという監督は、つくづくすごい人だと思う。ミュージカルで綴る空想の世界が見事。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-14 22:45:12) |
363. 博士の愛した数式
とかくむずかしいと敬遠されがちな数学だけど、博士やルートの神秘な数の世界の話を聞いているときっと好きになるかも。私自身完全数や友愛数など、結構勉強になった。 原作のすばらしさもだが、映画の雰囲気が実に良い。配役が良いのか監督が良いのか、その両方なのだろうと思う。 ところで些細なことかもしれないけど、数の字の筆順が違うのが気になった。 [DVD(邦画)] 8点(2012-07-14 08:27:40) |
364. 永遠のマリア・カラス
《ネタバレ》 80を過ぎてもなお歌えるオペラ歌手もいるのに、20世紀最高のプリ・マドンナと呼ばれたマリア・カラスの声の衰えは著しかった。40を過ぎると下り坂、50を超えた日本公演ではさんざんなできだったという。すでに伝説の存在となり、オナシスとの思い出と若き頃の自らのレコード音楽に浸る隠遁生活。そこから夢よもう一度という物語なのだが・・・。 マリア・カラスを演じるファニー・アルダンは秀逸。物語が進むにつれ、本当のマリア・カラスに思えてくる。そして吹き替えに使った30代のカラスの歌がすばらしい。 合成されたカルメンで大成功かと思いきやというラストがまた良い。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-11 23:04:16) |
365. チャップリンのゴルフ狂時代
1910年代の短編時代と1930年代以降の長編時代の半ば、1920年代のチャップリン映画って結構おもしろいものが多いと思う。このゴルフ狂時代もそのひとつ。 スボンをはいていないのを隠すシーンやゴルフボールを打つシーンなど、数えだしたらきりがないがない。ほとんど笑いっぱなしだが、チャップリンの放浪紳士なところをちゃんと見せてくれる。 [DVD(字幕)] 8点(2012-07-09 20:03:58) |
366. サーカス(1928)
テンポ良く、とてもおもしろい映画。だけどラストはちょっぴり寂しそう。 [映画館(字幕)] 8点(2012-07-08 10:48:50) |
367. 乱れる
《ネタバレ》 「高校三年生」がスーパーの1周年記念セールの音楽となって流れる60年代、世の中は大型店の進出によって小売店が立ち行かなくなっていく。戦後のバラックから女手ひとつで作り上げた酒屋にも、取り壊してスーパーに改造という話が持ち上がる。 前半はそうした深刻な社会派ドラマの様相も見せるが、義弟幸司の告白によって一転して純愛映画へと変身。 義姉さんへの思いや甘え、一緒にいたいという願望から、わざと心配をかけさせる気持ちがよくわかる。また18年間も家を守ってきたとはいえ、女心の揺れる気持ち、乱れる心、これまたよくわかる。状況打開のため礼子は亡き夫の写真をトランクにつめ、身を引こうと決心する。しかしそれでも追いかける幸司。 幕切れは意外とあっけなかったが、自殺か事故死か、あの後どうなるのだろうか。乱れた心は・・・。 [DVD(邦画)] 8点(2012-07-05 21:42:31) |
368. アンネの日記(1959)
第2次世界大戦やホロコーストは別にしても、2年間の隠れ家での共同生活というのは想像を絶する。その中での様々な葛藤や成長を見事なまでに再現している。アカデミー賞の作品賞にノミネートされながら、強敵ベンハーとぶつかったのは本当に不運という他はない。 改めてDVDで鑑賞して、ハヌカの祭りや黄色い星のワッペンなどを知る。このダビデの星は、近年になって「黄色い星の子供たち」を見るまで忘れかけていたものだった。 [映画館(字幕)] 8点(2012-06-30 10:50:33) |
369. あれが港の灯だ
私が子どもの頃には李承晩ラインというものがあり、ちょくちょく日本の漁船が韓国に拿捕されていた。この映画を見るには、その李承晩ラインについてよく知っておかないと、どういう映画なのか理解しにくいだろうと思うし、当時の日韓関係を知る上でも重要な映画である。 なぜ拿捕されるようになったかは、日韓併合という事実にまでさかのぼらないといけないし、韓国(朝鮮)の人たちがどうして日本を毛嫌いするようになったかをも知る必要がある。 この映画は、在日韓国(朝鮮)人の人たちが登場するが、最近の映画「パッチギ!」とともに、反目し合うことではなく理解することだと教えられる。その中で山村聡演じる漁撈長の態度は大変立派である。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-29 23:27:49) |
370. 大統領の理髪師
《ネタバレ》 単なるコメディと思いきやなかなかのヒューマンドラマである。1960年代から1970年代の韓国の歴史を背景に繰り広げられる物語は、おもしろおかしくそして感動的だ。 ここには3人の大統領が登場する。憲法を四捨五入論を使って改正(悪)し、不正選挙で失脚した大統領李承晩。軍事クーデターから大統領となり、北のスパイ摘発を徹底的に行い暗殺された朴正煕。そして民政移管後大統領となる全斗煥(髪がない)。 主人公のハンモは朴正煕の理髪師となり、韓国政府内の対立に巻き込まれたりするが、それがちょっとフォレストガンプみたいだったり、家政婦は見た風だったり、・・・ 息子が下痢から拷問を受け歩けなくなるが、その解決法が大統領の理髪師という重課の解放だったとは・・・。韓国の近代史の勉強にもなる。 そういえば、朴正煕が日本語で「今日も最高の気分」と言うが、日本の学校で学んだことを示す一端 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-25 16:30:44) |
371. レ・ミゼラブル(1958)
かの有名な長編小説に語りを入れて、より原作に迫った映画。省かれそうな人物ポンメルシー少佐なども登場させ、ワーテルローの戦いやテナディエ軍曹とのエピソードなどもしっかり描かれている。そして後半の政府軍と革命派の戦いも詳細で緊迫感もある。なおオリジナルは210分ながらDVDは186分に短縮されている。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-24 07:35:30) |
372. レ・ミゼラブル(1982)
4話に分かれたドラマ形式、もしかしたらTVドラマだったのかもと思わせる。そしてスタートから暗い、鎖でつながれた囚人たちの登場はミュージカルの「レミゼ」と似ている。ミュージカルは原作に近いが、この映画は脇役の人たちもたくさん登場させ、さらに原作に近くなっている。とにかく隅々まで細やかだ。描き方が淡々としていて盛り上がりに欠けるが、原作を読まずに概要を知るには良いかもしれない。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-23 09:40:23) |
373. ぼんち
しきたりに縛られる船場の老舗のぼんぼん喜久治、父親は仕事一筋の婿養子で影が薄い。それに引き替え母親と祖母の実権は強く、喜久治の嫁は男子を出産すると追い出される始末、というように実に鮮やかにスピーディに物語は展開する。さらに嫁がいなくなったぼんぼんに妾の世話まで焼く母と祖母、実におもしろい。 この映画の女性陣は超豪華、中村玉緒などすぐ引っ込んでしまうのがもったいないほどだが、主演の市川雷蔵も時代劇の格好良さと違ってなかなかの好演。原作のすばらしさも感じるが、脚本監督もまたそれ以上にすばらしい映画だ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-20 16:32:57) |
374. レッド・バイオリン
《ネタバレ》 1挺が何億円という高価な額で落札されるヴァイオリンの名器、この映画は1681年に製作された幻の名器が、何世紀ものの時を経てモントリオールで競売される物語。そこには誕生にまつわる話や、多くの人の運命をも変えた歴史が綴られる。 ウィーンでの神童ともいうべき少年、オックスフォードでの悪魔を思わせる鬼才(パガニーニを連想させる)、西洋文化大革命の嵐の上海とそれぞれが大変すばらしい。そしてモントリオールのオークション。楽器や音楽を扱った映画としては最高に近い。(実際の演奏も世界的なヴァイオリニストのジョシュア・ベルが行っている) ところがそれほど価値のあるヴァイオリンでありながら、その扱われ方が大変粗雑。本来なら、神経質になるくらいていねいに扱われ、慎重に保管されなければならないはずなのに・・・。この映画には名器を慈しむという心優しい人が登場しないのは残念だ。 そして映画のラスト、名器が本来あるべきところに戻ったとも言えるかもしれないが、完全なすり替え窃盗犯である。 そしてまたもうひとつ気になったのがメトロノーム、モーツァルトの時代にはまったくなく、ベートーヴェンによって初めて使われたというメトロノームは19世紀になってから、時代がちとおかしいのでは・・・。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-20 06:12:22) |
375. 運命じゃない人
映画の作りが何と言ってもおもしろいしすばらしい。時間軸を変え別の人物の視点で描くと、何がどうつながっていたか手品の種明かしを見るようによくわかる。 映画そのものはたいして内容はないのだが、脚本が大変良いということか。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-15 21:57:47) |
376. 少年時代(1990)
《ネタバレ》 「進二は幸せ、こんな穏やかで良い人たちに囲まれて」と母親が言う。たしかに空襲の悲惨さは免れたかもしれないが、子どもは子どもなりの苦労や悩みがあるのだ。それを知らないのは、母親だけではない。教師や周りの大人たちも知らないのだ。 この映画は空襲の的にさらされる都会を離れ、一人親戚の元に預けられた少年の物語だが、いじめや権力争いそして友情と子どもの心情を描いた名作か名作に近い映画だと思う。(有名な主題歌を除いても) 映画は子供たちが主役だが、その背景にある戦争の影響も忘れてはならない。戦地に出征する恋人に「行かないで」と言うと非国民にさせられたり、戦争が終わって見送る歌が軍歌だったり。軍歌しか知らないのだからという言葉が妙に印象的だった。 最初のうちは子供たちの表情が硬い上に動作もぎこちなく感じられたが、その分は仕方ないことかもしれない。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-12 08:43:04) |
377. グリーンマイル
《ネタバレ》 年老いた看守が過去を振り返る長い物語だったけど、それがあっという間に終わるほど感動した映画だった。そしてタイトル「グリーンマイル」の意味を調べてわかったとき、さらに感動は大きくなった。13階段が死刑場への階段ならば、グリーンマイルは死刑場へ歩むカーペットの道らしい。 2mを超す巨体の持ち主ジョン・コーフィ、病や災いを吸い取ってしまう奇跡はまさにキリストのそれのようにも思える。善悪が入り交じる現実社会において、死こそがすべて与えられた平等であるかのように。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-10 09:51:10) |
378. フォレスト・ガンプ/一期一会
《ネタバレ》 大空から舞い降りた1枚の羽毛で始まり、その1枚の羽毛が大空へ飛び立って終わる。実に印象的なオープニングとエンディングで、洒落ている。だが米国の歴史や文化それに考え方など知らないと良さがわかりにくいかもしれない。ケネディからニクソンまでの大統領やプレスリー、ビートルズらも映像として出てくるし、ジェニーが歌っている姿はジョーン・バエズそのものだ。そして何より知っておかねばならないのは、60年代から70年代にわたるベトナム戦争とその反戦運動だろう。 映画はこれらの歴史的背景とオーバーラップする形で進んでいく。走るのが速かったり、ピンポンが上手だったり・・・。そしてメインをなすのがジェーンとの愛だが、これがくっついたり離れたりするのがいまいちよくわからない。ガンプの息子は一目見て誰だかわかるが、すばらしい子役だ。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-09 22:56:44) |
379. 赤線地帯
売春防止法成立を巡って揺れ動いたその時代を反映する映画。風俗営業の店「夢の里」で男性客の相手をするミッキー、やすみ、ハナエ、ゆめ子、より江の5人の女性たち。それぞれの事情は違っても、娼婦として働く(働かざるをえなかった)様が実にリアルに描かれている。物語の構成も良く申し分ないが、あの前衛的な音楽がひどく耳障り。私は映画にマッチしているとはとても思えない。 ところでこの売春防止法だが、女性議員らの度重なる提案に対して何度も流れたという。おそらく「夢の里」経営の夫婦みたいな意見もあっただろうが、それが選挙で婦人層の票取り込みのために急転直下支持に転換した政党もあったとか、これまた時代の裏側を見るような話だ。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-09 20:20:39) |
380. 県庁の星
「行政改革とは組織や制度を変えることではない。そこに生きる人間たちの意識を変えることだ」とはよくぞ言ったもの。私は心から拍手を送りたい。 この映画は、何も変わろうとしない行政と、売り上げ向上のためにはコスト削減をも辞さない民間との対比を実に鮮やかに描いている。初めは皮肉をこめたコメディかと思ったが、なかなかの感動作だったと思う。実にいろいろなことを教えられた。なかでも素直に誤りを認め、素直な気持ちで教わる。何かをなすためには協力が必要なこと、当たり前のことだけど私たちが忘れかけていることを思い出させてくれる映画だった。 それにしても、「県庁さん」と「店長さん」がうっかりすると同じように聞こえ、紛らわしかった。 [DVD(邦画)] 8点(2012-06-07 23:41:32)(良:1票) |