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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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361.  ソラから来た転校生 《ネタバレ》 
監督の近藤勇一という人物は、劇場公開前提の映画としてはこれが初だそうだが各種映像製作には以前から携わってきたとのことで、過去には美少女タレントのPVドラマのようなものも撮っていたらしく、今回のこれもその延長と思えば納得する。ちなみに主な出演者2人は同じ監督のショートフィルム「ネコヤドのハルとアキ」(2012)と共通である。 この映画でも、とにかく劇中女子(高校生)をきれいに可愛らしく映しているのが最大の特徴と思われる。男子の出演は極限して女子ばかりが多数出ているが、これは芸能事務所(イトーカンパニー)の意向もあってのことか。自分としては特に劇中少女が天使の扮装をして、新体操のリボンで踊るところが美しいので非常に和んでしまった。これで上手いのかはわからないが、少なくとも溝口恵という人は実際に新体操の経験者とのことである。またガールズラブっぽい雰囲気も出していたが、物語的には人体の物的な存在感を確かめる行為ということになっていて、この辺はうまく意味づけをやっていると見えた。 周囲の人間関係も和やかで、敵対勢力がいないのでひたすら微笑ましい雰囲気になっている。なぜか校内に変な爺様が出没していたが、この人物もやはり元気のいい若手女子が見たくて来ていたのに違いない。女子高生側の反応もユーモラスで結構だった。  ドラマとしては青春ファンタジーのようなもので、争いから逃げて孤立するのでなく、人間同士の関係性の中にこそ生きる喜びが生まれることが表現されていたようである。劇中の天使が人間世界に受け入れられていく過程が微笑ましく、別れの寂しさとともに未来の希望も見えていて、青少年向けとは思うが少しキュンとするものを見た気がした。 ストーリーを進める原動力になっていたのは、父親を亡くして部活も怪我で断念したのに屈託なく笑う女子だったが、無理して健気にふるまうだけでなく、この人のいわば包容力が地上の天使の存在を表現していたようで、これは恐らく母親のおかげだったのだろうと後になってから思う。なお全体として展開が早すぎる気がするので、もう少し長く作ってもよかったのではと思った(60分くらいとか)。 ほか映像面では、何度も出る高空の飛行機雲が天使の飛行を表現していたらしいのが印象的だった。ロープウェーから糸電話というのには突っ込まないことにする。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-05 19:57:37)
362.  ネコヤドのハルとアキ 《ネタバレ》 
栃木県鹿沼市の映画である。「鹿沼に行きたくなるショートフィルム」というお題のもと、市の助成を受けて制作したものとのことで、映像ソフトとしては同じ監督(近藤勇一)の「ソラから来た転校生」のDVD特典として収録されているほか、監督の公式YouTubeチャンネルでも公開されている。主な出演者2人は「ソラから…」の2人と共通である。  まず題名のうち「ネコヤド」が意味不明だが、これは1999年に鹿沼市上材木町の裏通りのさらに狭い路地で開業した喫茶店の経営者が、現地の古い地名である「上材木町 字 根古屋」に因んで「根古屋路地」と命名したのがもとになっている。この人物が現地で2006年2月から月1回、フリーマーケットのように工芸品や食品などを持ち寄って販売する「ネコヤド大市」というイベントを始めて大人気になり、ここをチャレンジショップの場にして起業した人々が別の場所に出店したりして動きが拡大し、2012年3月にはより広域の「ネコヤド商店街」のイベントに発展したとのことで、地方都市活性化の成功事例として知られていたらしい。 この映画との関係でいえば、田植え体験の場面は2012年5月だろうが本編は早春のように見えるので、拡大版「ネコヤド商店街」の開催に合わせて撮影したものかと思われる。  内容としては、市の意図からすればあからさまに地元PR映画だったわけだが、引越しで地元を離れる少女が見納めに市内を回る、という理屈でわざとらしさがうまく低減されている。少女が使っていた8mmカメラ?は監督の昔の体験の再現と思われる。 物語は引越しで離ればなれになる親友それぞれの思いを描いており、残る少女の思いを代弁する“編みぐるみ”の声が切なく、また去る少女がどこに行っても親友との思い出ばかりだったというのが泣かせる。たまたま仲違いしていた2人を、最後の最後に「ネコヤド商店街」がつないでくれた形になっており、ラストの観覧車の中でのやりとりが微笑ましく嬉しい。 ほか劇中の“編みぐるみ”が動く視覚効果は面白い。自分の感覚では特に可愛いとも思わないが、うちの地元に住んでいる若手クリエーター(職業不詳)の作風を思わせるものがあって親近感はわく。どうも最近はこういうのが受けるらしい。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-05 19:57:35)
363.  A.I. love you アイラヴユー 《ネタバレ》 
吉本興業とフジテレビが共同制作した映画で、フジテレビ所属の演出家が監督を担当し、吉本芸人も役者として出演している。全編スマホで撮影したとのことで、それが観客にとってどういう利点があるかはわからないが、映像的に人工知能の視野をスマホのディスプレイ形状(横向き)で表現する意味はあると思われる。 人工知能の恋といえば近年では2013年製作のアメリカ映画の例があるようだが、それより低予算なりにコンパクトでわかりやすいファンタジーができており、物語としてもそれほど無理なく目標達成する形でまとめてある。劇中の若手シェフは本来テイクオフまでの加速装置でしかないはずなので、主人公がパリに行くのが正しいわけでもなく、そこを引き留める役目までを果たした人工知能はさすがの出来である。ただラストは少し不満で、口調が似ているまではいいとして一緒に食べようなどという申し出は不要だった。  この映画の見所といえば、個人的には何といっても主人公の人物像である。最初から表情や行動がユーモラスで、主演女優のファンとしては森川さんかわいい!!!とか言いたくなる気持ちに可笑しみが作用して終始ニヤついた顔で見ていたが、そのニヤついた状態をベースにして、場面によってはさらに泣けるとか嬉しくなるとか複合的な感情になっていくのが心地いい。会話の中でかなりの間が空いたりするがそれ自体を楽しむ作りになっており、特に終盤では視点を固定したまま一人芝居のようなことを延々と1カットで(12分56秒とのこと)続けていたが、その間も見る側としては息を詰めるようにして主人公の表情に見入っている状態だった。主演女優はもともと普通の少女も壊れた少女もカワイイ系の性悪女子も変人少女も真面目少女も姫君でも京娘でも26歳居酒屋勤務でも何でもありの役者だが、この映画でのこういう役はこの人ならではという気がする。 また珍しく男キャラへの共感度が高い映画になっており、別に斎藤工になり切っていたわけでもないが、人工知能の視野を通じて観客も主人公と対面している気分になって嬉しくなる。人工知能ほど頭が切れるなら、こういう女子を全力でサポートしてから見返りもなく消えるという、そういう一生もいいかも知れないという気になった。正直この人工知能がうらやましい。最期のいわゆる走馬灯も切ない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-12-31 19:26:04)
364.  her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 
人が作ったプログラムからいったん本物の人間のように進化して、そこからさらに別の超越的存在になっていく、という段階を踏む発想は、ほかにあったか知らないが個人的にはユニークに思われる。ただしその本物の人間の段階では妙に性欲がらみのことが重視されていたようで、まるでエロがなければ人間の本質に迫れないとでも思っているようなのはあまり納得しない。人類の活動力の根源は性欲だとかいう前提なのかも知れないが、それならOSなどでなく普通に人工知能搭載のラブドールにしておけばいいだろうとしか思えない。 それでも前半はほのぼのした笑いもあって結構いい雰囲気だったが、後に行くほど醒めてしまって終わり方だけを気にする状態になっていく。全編を通じて何らかの人間ドラマが展開されていたようでいて、結局最後まで何が言いたいのかはわからなかった。人類が特定の個体に特別の関係を求めようとすること自体が間違っているという想定だったのなら、ほとんど破滅的な近未来像ということになる。 どうも自分としては乗れない感じの話だったが、しかし主人公が比較的親しみやすいキャラクターだったのは安心できた。また大学時代からの友人も感じのいい人物で、この二人の関係は(非常に微妙だが)これからも大切にした方がいい。  なお余談として、舞台は一応ロサンゼルスということになっていたが(街頭の路線図、元妻の台詞、小包の宛名)、なぜか特定のアジア系住民が目立つのが近未来の姿のようである。劇中ニュースによればインドは併合されるらしいので警戒が必要だ。そのほか素朴な疑問として、いわゆる膝かっくんというのは世界的に分布しているものだったのか??
[DVD(字幕)] 4点(2017-12-31 19:26:01)(良:1票)
365.  ひかりをあててしぼる 《ネタバレ》 
2006年に渋谷で起こった殺人事件を題材にした映画とのことである。なぜかアメリカのホラー映画賞(最優秀作品賞と最優秀主演女優賞)をとったそうだが、普通一般のホラーとして見れば怖くも何ともないのでそういう見方はしない方がいい。 内容的には自分が見る限り、大変申し訳ないが何が言いたいのかわからない。実際の事件に合わせた展開に見えるが事件自体の映画化ではないらしい。また仮に普通の夫婦でも起こりうることを表現しようとしたのなら、まずは夫婦の相対関係の変化を地道に積み上げる形にしてもらいたかったところだが、特に序盤は実際の事件に合わせたエピソードが取ってつけたようで説得力に欠けている。第三者的に見る限りは何も感じ取れない話だったので、あとは個々の観客が、それぞれの事情に照らして見るべきところがあると思うかどうかの問題だと思われる。  出演者に関しては、夫役はこの役者としては普通の役どころに見えて特に驚きもなかったが、妻役の女優はこの人自体が見どころと思わずには済まない存在感を出している。この女優は近年では「渇き。」(2014)でも結構ハードな役をやっていたので、今回のこれもそういう流れの延長上と捉えるべきか。 観客側の立場としては、女優を見るからには主に表情とか声色とかを気にしているわけだが、しかし本人としては“身体の筋が見えるような(力のこもった?)動きが妻の怖さを表現している”というようなことが重要だったらしい。自分としても酒瓶を全力で振り下ろすのは思い切った感じでよかったと思うが、その後に細く長い手足で力技というのも強烈だったかも知れない。ボディラインが見える場面が多いので本当に細身の人だというのが印象づけられる(昔からそうだったが)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-12-27 19:52:34)
366.  アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ 《ネタバレ》 
冒頭でEurimages(ユーリマージュ、「欧州評議会」の文化支援基金)とスロバキア共和国文化省・チェコ共和国文化省の名前がクレジットされる。物語の主な舞台であるチェイテ城は現在のスロバキアにあるので、スロバキアにとってはご当地映画的な扱いなのかも知れないが、主人公を含めた登場人物の多くはハンガリー人であるから郷土の偉人のような位置づけではないと思われる。チェコは何の義理があったのかわからない。 主人公のバートリ・エルジェーベト(1560~1614)は題名のとおり「血の伯爵夫人」と呼ばれており、今日では残虐な常習的殺人者として知られている。しかしこの映画はその固定観念をひっくり返すことを目的としていたようで、これまで主人公の悪業とされてきたことを取り上げて、誤解だとか曲解だとかそれなりの事情があったとかいう形で丁寧に言い訳している印象だった。まあ高位の貴族なので臣下や領民の全員を人道的に扱っていたわけでもないだろうが、少なくとも大量殺人をする人物ではないものとして表現されている。 物語としては、残虐行為抜きだと普通にヨーロッパ貴族の没落の話になるのでそれほどの面白味はなく、また時間が長い割にダイジェスト感があったりもして娯楽性が弱い気がする。加えて珍妙な発明をする人物がいたりするのは意味不明で、必然性のないものを無理に入れ込んだようで目障りだった。しかし個人的には最初のところで本物のチェイテ城を映した後に、時代を遡って過去の全体像が復元されていく映像を出していたのは好きだ。こういうのを見ると観光誘客の効果はあるかも知れないとは思う。また死体が運ばれて行った後に黒ネコがニャンと言いながら全速力で道を横切った、というような芸の細かさはある。  ところでこの主人公は流血を伴う残虐行為で知られたせいで、後世の吸血鬼カーミラ(1872年の小説「カーミラ」より)のモデルということになっている。主人公に痣があったのは史実というよりカーミラのほくろに似せたものと思われる。 同様に近代の吸血鬼イメージの元になったとされる人物としては、現在のルーマニアにいたワラキア公ヴラド3世(1431~1476)が吸血鬼ドラキュラ(1897年の小説「ドラキュラ」より)のモデルとして知られている。この人物も残虐行為が多かったとされており、実際に串刺し刑を多用したからこそ「串刺し公」と呼ばれたわけだが、それにしても対立勢力によるネガティブキャンペーンのせいで、殊更に極悪なイメージが後世に伝えられたという説もある。現在のルーマニアでは、オスマン帝国の侵攻に果敢に抵抗した英雄として肯定的評価がなされるようになっていると思うが、これに倣って?この映画でも、悪名高い「血の伯爵夫人」の名誉回復を試みる意図があったのかも知れない。 ただ残虐行為がなかったことにしてしまうと単に陰謀で破滅した未亡人ということになり、この人物に注目する理由自体がなくなってしまう気がするわけだが、しかしそういうこととは別に、事実を尊重する気のない集団が悪意をもって情報操作した場合に、それが歴史として定着してしまうことの恐ろしさを訴えたとすれば、日本人にとっても現代的な意義のある映画といえる。
[DVD(字幕)] 5点(2017-12-14 22:58:13)
367.  神聖なる一族24人の娘たち 《ネタバレ》 
ロシア連邦の構成共和国であるマリ・エル共和国に住むマリ人の物語を集めた映画である。解説によれば題名は本来「草原マリ人の天の妻たち」だそうで、邦題のうち「一族」「娘」は不適切である。映る場所は主に農村部だが、劇中出た一番の都会は首都ヨシュカル・オラだったらしい。なお映画紹介ではマリ人が「特異な民族」と書かれているが、ロシア領内にはマリ人と同系その他の各種民族が広く住んでおり、その中でマリ人だけが異色といえるのかは不明である。ロシア人でも辺境の民など何をやっているかわかったものではない。  映画の内容は22話のショートストーリーが連続する構成で、短いものは36秒くらい、長いもので9分半くらいある。別にマリ人でなくてもと思う話もあるが、土地の風習を題材にしていたり、土地の風物を盛り込んだりして地方色を出しているように思われる。全くわけのわからない話もある一方で、短くても映像面を含めて感慨を覚えるものや、けっこう見ごたえのある長い話があったりして充実している。 個人的に関心の持たれるエピソードとしては、 「オドチャ」(樺の木の話)体調不良の際には近代医療、祈祷の催し?、キリスト教の聖人、呪術・卜占が頼りにされるようだが、結局最後の占いが最強だったらしい。 「オシャリャク」(歌姫とゾンビの話)ゾンビというかヨーロッパに伝わる“不死者”のような感じである。官憲が普通に対抗措置を準備していたのが面白い。 「オルマルチェ」(怪しい合コンの話)ホラー風味。討伐隊が出たのは驚いたが、要は“コックリさん”のようなものか。なお「キセリ」はロシアの伝統食らしい。 「オシライ」(墓から戻った男の話)死者を思う家族や友人の心情が切ない。意図的に混乱させていたと思うが、「セリョージャ」は「セルゲイ」の愛称であって、これと「パブリーク」が親友と思われる。 以上のほか「オラズヴィ」(納屋の戯れの話)は閉鎖→開放の意外な展開がいい。また「オヴロシ」(水泳見学の少女の話)や「オノシュカ」(去り行く老人の話)は男子として若干の切なさを感じる。  登場人物としては、邦題では「24人の娘たち」となっているが、実際は小学生くらいから孫のいそうな年代まで幅が広い。劇中では美醜さまざまに見えるが、ラストの顔見せで24人を連続で映すところは化粧して着飾ってそれなりに魅力的なので和む。24人のうちベストヒロインは世界平和少女であって、日本アニメの少女キャラクターのような言動が可愛らしいので笑ってしまう(笑ってごめんなさい)。また乾布摩擦少女は最後の表情が微笑ましい。 ちなみに山姥は24の数には当然入っておらず、役者はボリス・ペトロフという男である。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2017-12-09 09:58:46)
368.  迷宮カフェ 《ネタバレ》 
骨髄移植をテーマとした映画で、少なくとも前半はあからさまにPR映画のように見える。ファンタジックかつミステリー調に展開する中でも、骨髄移植の基礎知識のようなことを主人公が何気にしっかり語っており、そのあとコーディネーターが出た場面などは本当に啓発ビデオ(コメディ風味)のようだった。 提供された側が感謝する顔をわかりやすく出すことをしないのは、現実に相手の顔が見えないことの反映と思われる。しかし代わりに出ていた「調整医師」役の女優はまさに本物であって、実際に骨髄移植を受けたからこそ今この人がここに映っているということのようである。そのほか映画的な作為として本人と偶然対面する場面があったりもした。  また啓発だけでなく後半では“家族”や“生命”に関することを加えて物語の厚みを増していたようだが、特に“生命”に関することが正直わかりにくいのは困った。無理にまとめる必要はないかも知れないがあえてまとめると、生命の価値はそれ自体が絶対的なものであって代替不可能、というようなことを訴えたいのかという気はしたが、それにしても台詞が長かったりして文章を読み解くような努力を要するのは少々つらい。 また本当にわからなかったのは獄中結婚のくだりであって、これは獄中側にとってはありがたいことだろうとは思うが、結婚を言い出した側の動機については納得できなかった。いろいろと事情はあるにせよ、自分を助けるための人助けをするな、という一般原則に反した軽率な行動ではなかったかという気はしなくもない。  一方で物語の作りとしては、少々わざとらしいが意外な展開が何か所かあって退屈せず、また個人的には2か所、思わず泣ける場面があった(録音テープの声、コーヒーが好きな人)。最後に出た「浜辺の少女」(役名)というのがほんわかした感じで心和むものがあり、このことも穏やかな余韻を残す結果につながっている。 また主人公は良心的な人物だろうと最初から思ってはいたが、「甘いもの食べると少し元気が出る」という言葉を聞くと、あらためて心優しい人柄が見えた気がして素直に好意を寄せたくなる。最初はただのPR映画と思っていたら結果としては意外に悪くなく、心温まる映画に思われたというのが実感だった。 ちなみに自分としては、これからドナー登録をするには遅いようだが、せめて(直接関係ないが)献血くらいは続けたい。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-06 19:27:52)
369.  学校の怪談 呪いの言霊 《ネタバレ》 
以前の「学校の怪談」シリーズというのを知らないので比較できないが、これ単独で見る限り、安手のアイドルホラーと割り切って見れば悪くない。撮影は全て天気のいい昼間だったようだが、それでけっこう背筋の寒い映画ができている。 ストーリーは込み入っていて理解不能だが、要は計5人が同じ日に廃校へ侵入したところ、男3人が校内の閉鎖空間に取り込まれ、以前からいた高校生と合流したということらしい。また校内で人々の発言に聞き耳を立てていたのが「あ」「く」「ま」であって、これが閉鎖空間を支配していたが、普通とは違う専用の降霊術でコンタクト可能だったようである。校舎が解体されてからも、この閉鎖空間だけはいつまでも現地に残るのだろうという気がした。  また「言霊」という言葉の解釈に関しては、暑いと言われると本当に暑くなる、というのはいい例だが、しかしガス事故を語ればガス事故が起きるというのも短絡的過ぎるので、簡単に言ってしまえば「怪を語れば怪至る」ということだと思われる。また場所の問題ということもあるわけで、まさにその現場でそんなことを言うな、と思う場面は現実世界でもなくはない。 自分が思い出したのはむかし読んだ本(※)の中で、航海中に海上で怪異を見た人物が、船長に「何か見ましたか」と聞かれて「いいえ」と答えたことに関し、「船中にては左様のことは申さぬもの、という伝統的なたしなみを持っていられたのであろう」と評した話があったことである。“たしなみ”といえば場所の問題だけでなく、そもそも死者なり鬼神なりに対して敬意を払っておく(のが無難)というのもその一つと思われる。 何かと強がって見せたい年頃の連中にそんなことを求めても無駄だろうが、それでも一応、例えば心霊スポットに突撃して現場を荒らす無鉄砲な連中を戒める教訓的な映画と取れなくはない。 ※今野圓輔「日本怪談集 幽霊篇」(1969年)(現代教養文庫666)「海坊主のあくび」  なお主演のグループは知らない人々なので何ともいえないが、気が動転して何も考えられなくなった顔がけっこう真に迫っていると思う演者はいた(これが彩乃という人?)。侵入した女子の「バッカみたい」というのも非常にいい。石橋杏奈さんは心のピュアな清楚系の役で大変結構でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-12-06 19:27:49)
370.  コドモ警察 《ネタバレ》 
amazonで視聴、TVドラマの方は見ていない。 この監督の映画に共通のことらしいが、自分としては最初から最後まで大笑いというわけでもなく、微妙にニヤニヤしながら見ていて時々大笑いする場面があるという感じである。この映画では、新聞をたたんでから茶をぶちまけたところは笑った。 刑事ドラマとしては特にどうということもなく、要は年齢のギャップが可笑しいだけである。特にギャップが目立つのがデカ長だろうが、これで石原裕次郎なのか渡哲也なのかはわからない。最年長の刑事は役者も年上でベテランの風格が出ているが、劇中人物としては慎重すぎて詰めが甘くなるのが弱点ということらしい。また女刑事はあまりに美形すぎて笑ってしまった(惚れた)。さすが同級生の児童からも一目置かれていたようである。 そのほか新人刑事を含めて、最後はレギュラーメンバーにけっこう愛着がわいて来る作りだったので、TVシリーズの方はさぞ人気が出ていたのだろうと思っておく。
[インターネット(邦画)] 6点(2017-12-01 19:28:30)
371.  富江 アンリミテッド 《ネタバレ》 
伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の映画化第8作で、現在までのところこれが最後の富江映画である。 写真部の月子という少女が主人公で、主に原作の「写真」「接吻」のあたりを下敷きにしたようだが原作通りでは全くない。グロ描写や残酷場面を遠慮しないというのが副題の意味だろうが、廊下を追いかけられる場面などはドタバタホラーの風情だった(これは気色悪い)。あまり真面目に見るものではないという気にもなるが、今までにない賑やかさと映像的な見せ場(安っぽいが)の豊富な富江映画とはいえる。  ただし終盤になると、主人公の秘めた感情をもとにして思い切りシリアスな物語ができている。意味不明ではあるが自分として思ったのは、劇中では明らかに富江(姉)=怖い、主人公(妹)=可愛い、という対比ができており、これはどう見ても妹の方が人に好かれるはずだということである(主観だが)。主人公が姉に引け目を感じていたというのは家庭内事情なので何ともいえないが、少なくとも外部評価として姉>>>>>妹ということはありえない(主観だが)。 主人公は自分が他人に必要とされていないと思い込み、本当は周囲の皆が少しずつ自分の存在を支えてくれていることにも気づかないまま、そこに付け込んだ姉に誤ったイメージを植え付けられて自滅したということではないか。妹が父の実子でないというのも実は嘘で、本当は姉の方がもらい子だったとも考えられる。最後は例えば虐待する夫から離れられない妻のような図式になっており、こうならないためには自己の確立が大事だという警告の物語と取れる。  ところで今回の富江は、「シリーズ史上最も原作のキャラクターに近いと評される」という宣伝文をあえて否定するつもりもないが、何しろ顔が怖すぎて、見た男が全員惚れるという本来の設定はどこに行ったのかという感じだった。これに比べれば、終盤で街中に蔓延していた富江はさわやか感が際立っており、仲村みうという人本人も(もともと少し怖いイメージだが)さすがに本来はこっちに近いのだろうという気がした。 また主人公(妹)は、外見的な印象としては前記の主観のとおりで、この人だけはあくまで清純派でいてもらいたかったが最後は少し残念だ。ほかAKB48メンバーの扱いがひどすぎたのは笑うしかないが、しかし本人は何とも思っていなかったようで、こういうところは現代アイドルの割り切りのよさかも知れない。
[DVD(邦画)] 6点(2017-11-26 21:58:26)
372.  手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー THE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド 《ネタバレ》 
VSシリーズとのことで2つの戦隊が一緒に出ているが、途中でまた別の戦隊が出て来るのは意外だった。この企画の通例としては、今の戦隊(ニンニンジャー)のTV放送が終盤にかかった時期に、前の戦隊(烈車戦隊トッキュウジャー)と共演するのを基本とし、そこに放送開始前の次の戦隊(動物戦隊ジュウオウジャー)が予告的に姿を見せるということらしい。次期ヒーローを出すのは仮面ライダーでも同じだが、昨年の戦隊が再登場するのは前から見ていた人には懐かしく感慨深いということになるようである。 エンディングテーマはニンニンジャーの方だったので今の戦隊がメインということだろうが、実際は2つの戦隊がほとんど並列で活躍する形になっている。自分としてはニンニンジャーのかすみ姉のファンなのでもっとじっくり見ていたかったが、メインキャストが12人もいて存在感が低下するのは残念だった。また両戦隊とも、どちらかというとお姉さんキャラより妹キャラの方が目立つ構造だったようである。  内容に関しては、特に烈車戦隊の方の基本設定がよくわからないまま起こっていることをただ見るだけだったが、それでもけっこう声を出して笑うところが多い。両戦隊ともベースがそのように作ってあるのだろうが、ある程度年齢と関係なしに観客を楽しませようとする姿勢は好印象である。単純に面白いだけでなく両戦隊の間をつなぐ共通のテーマがあったようで、みんなのところへ帰るイメージが自らを救うところはなかなかよかった。 ちなみに次の戦隊(ジュウオウジャー)は出番が短かったが、撮影地の都市的景観や戦隊メンバー自体のカラーリングの関係もあってか爽やか感の強い映像になっていた。戦闘中にトラの人が「にゃあ」と言っていたのは好感が持たれる。
[DVD(邦画)] 6点(2017-11-09 19:39:41)
373.  劇場版 仮面ライダーオーズ/OOO WONDERFUL 将軍と21のコアメダル 《ネタバレ》 
冒頭から「ドイツ・テューリンゲン州」とのことで大きく出たなと思ったが、その後はさらにわけのわからない展開になってせっかくの海外進出もどうでもよくなる。どうせ東映太秦映画村だろうなどと言わずに享保年間の江戸だと思わなければならない。 江戸市中に出現した妙な風体の連中が敵ではないと知らせるために、非常にわかりやすい場面が設定されていたのは大変結構だったが、徳田新之助なる人物の正体を最後まで明かさなかったのは過剰説明を避けた感じになっている。本人が「徳川家に献上されたもの」と言っていたのに劇中人物が反応しなかったのは、まあ取り込み中だったからその時は気づかなかっただけと思われる。 自分としてはこのシリーズの基本設定がよくわかっていないので、手だけが飛んで行った場面で何だこれはと江戸の町衆同様の気分だった。しかし何となく家族というものがテーマになっていたらしいことはわかり、疑似的な父母と子が手をつないだあたりは心和むものがあった。みんな家族などというのは綺麗事だと言われて、綺麗事でも欲望本位だからいいのだ、と開き直ったところは大笑いした。ここは見ていた側より制作側が一枚上手である。 またこの手の企画の通例どおり、終盤で次期ライダーが加勢する場面もある。個人的事情としては、平成に入って初めて見た仮面ライダーがフォーゼだったのでこれまで何とも思っていなかったが、別のライダーの劇中に並べてみるとフォーゼが変なライダーだったことがよくわかる。そういえば高校生という設定も初めてだったのかも知れず、「若いっていいな」という劇中人物の台詞が可笑しい。顔出ししていた福士蒼汰もいかにも若い。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-09 19:39:38)
374.  うさぎ追いし -山極勝三郎物語- 《ネタバレ》 
癌研究で知られる山極勝三郎博士(1863~1930)の映画である。「厚生労働省推薦 日本赤十字社推薦」であるから安心して見られる。 人となりに関しては、劇中人物のキャラクターの通りとすれば確かに好人物である。業績の意義は素人としてはわかりかねるが、日本初のノーベル賞受賞は湯川博士でなくこの人だったかも知れない、といえば国内向けにはアピール度が高い。また多分この映画独自の趣向として、実験動物と文部省唱歌を関連づけて出身地とのつながりを強調していたのは、ご当地映画として地元の要請に応えるためだったと思われる。なお動物実験に関して、登場人物自身が悩む姿を見せることで観客の批判的感情を和らげようとした節もある。 ストーリー面では、事実そのままではお話にならないところ、何とか面白味を出そうとしていたようでもあるが感動要素は正直少ない。本筋以外の劇的な部分として長女の学究心とか津軽娘の恋のエピソードが入っており、これは一応理屈で考えると、研究一筋だったことで本人や周囲が犠牲にしたものもある、という意味に取れるが、実際見ているとさらりと流れてしまったようでそれほど心に引っかからなかった。  キャストに関しては、仏頂面だが好人物というキャラクターにこの主演俳優は適役とは思うが、新婚初夜からしてこの役者がやるのでは笑ってしまう(それをいえば新妻役もだが)。まあ劇中人物としてもユーモラスなところがあったので、最初から笑われるくらいがちょうどよかったのかも知れない。 また長女役(及びナレーション)の秋月成美という人は顔を見ていると和むタイプで好きだが、劇中でも重要人物だったのは嬉しいことで、大正時代の女学生の姿も似合っている。しかしこの長女が歳をとると何でこんなくどい顔になるかというのは不満だった(声もガラガラだ)。ほか津軽娘役の森日菜美という人は東京出身のはずだが、発音をけっこう練習していたようで感心した(「私です」が上手い)。 以上のほか、実は突っ込みを入れたいところがかなり多い映画だったが、ここは山極博士と出演俳優(特に秋月さん)への敬意を込めて少し補正した点数にしておく。
[DVD(邦画)] 6点(2017-11-05 17:48:16)
375.  僕等がいた 後篇 《ネタバレ》 
前篇で高校生は終わりかと思っていたら、後篇でも1/3くらいまで引続き老け顔の高校生が出るので、釧路編に対する東京編と思うべきものらしい。新登場の比嘉愛未さんも最初は高校生役で、この女優自体は嫌いでないが、大人の女性に高校の制服を着せるのはもうやめてもらいたい。 内容としては前篇より深刻度が増しているので少し真面目に見ることを強いられる。老け顔の男が、かなり厳しい状況になってもグレたり暴れたりせず抑制的な態度なのは感心した。飛行機に乗って釧路へ行く夢など結構泣かせるものがあり、この男関連のドラマは悪くない。 その一方でヒロインの方は、見る側としても早く幸せになってもらいたいと思っているのに、プロポーズの場面ではもう呆れ果ててしまって勝手にしろと見放した。以降は顔を見るのも嫌になったので、最後だけ唐突にハッピーエンドにしてももう遅い。恐らく世間には愛を一途に貫くこと自体に至高の価値を見出す人々がいるのだろうが、その他グループに属する者としては付き合っていられる限度がある。 原作からしてこういう内容だとすれば何を言っても仕方ないが、前後篇で4時間もあることからしても最初から原作準拠志向の企画だったということか。これに比べると、最近見た「先生!…」(2017)がいかに一般向けに手際よくまとめられていたことかと思う。 なお余談として、本仮屋ユイカ嬢は大人になっても可愛いので劇中人物にも幸せになってもらいたいと思っていたが(「ばいばい」が切ない)、最後の姿は従来のイメージをちょっと外した感じで意表をついていた。
[DVD(邦画)] 4点(2017-11-05 17:48:13)
376.  僕等がいた 前篇 《ネタバレ》 
前篇は登場人物が高校生ということになっている。ヒロインは美少女ともいえないが、こういう顔の作り自体は嫌いでない(初恋のおねえさんに似ている)。ただ困るのは、ヒロインに男連中を含めた主要人物が全く高校生に見えないことで、かろうじて本仮屋ユイカ嬢はもとが可愛いのでそれらしく見えたが、ほかは特に序盤でギャップが大きいため全部が茶番に見えた。いったい最近の若い役者は何歳まで高校生役をやらなければならないのかと呆れるが、そもそも少女マンガを人気俳優で映画化することに構造的な無理があるのではという気もする。 物語の方は突っ込んでも仕方ないのでただ黙って見ていたが、ひたすら忍耐の2時間だった。しかし苛立つところ、腹立たしいところがそれほど多くなく、無用のストレスが溜まらないのは幸いだったとはいえる。 ちなみに時々だが北海道っぽい風景が見えたのはよかった。本州よりも土地利用が粗放に見える。
[DVD(邦画)] 3点(2017-11-05 17:48:11)
377.  人狼ゲーム マッドランド 《ネタバレ》 
前回から半年で新作というのではほとんど量産体制である。 副題の印象として、佐賀県のガタリンピック(1985~)のようなことを泥まみれでやるのかと一瞬思ったが当然そんなわけはなく、実際見ればいつもの研修施設のようなところで撮影している。landに付くならmadではなくmudと思うのが自然だろうが、ちなみに原作では英語で書いてあるので間違わない。またついでに書くと、今回は人物の背景に明らかに富士山が映っていた。要は小山町フィルムコミッションの関連施設である。  今回も役者の熱演は相変わらずである。前回は「運営」の内幕に立ち入っていたので、今後はシリーズ全体の終結に向けた動きが出て来るのかと思っていたがそうでもなく、まだまだ同じパターンで続く予感を残して終わっている。 今回特に感じたのは(以前からあったことだが)、登場人物がやたらに怒鳴るのがやかましいことで、人の感情を音量で表現しようとしているのかと思うほど気に障った。また女子が男言葉で他人を罵倒するのは21世紀の今日よくあることかも知れないが、20世紀人としては当人を思いやる気持ちが薄れてしまうので困る。これもまた感情を刺激するための安易なツールにしているようで気分が醒める。 そのようなこともあり、今回は一部を除いて登場人物の誰にも共感する気にならなかった。終盤での主人公の意外な行動はいわば無償の愛によるものだろうが、当初の純粋な利害関係がどのように変質してこの結果になったのか、描写はあったようだが納得はしない。性的マイノリティの心情も説明は理解できるが共感どころでなく、どうもドラマ部分が弱いのではと思ったが、唯一心から共感できたのは虐げられた男の最後の行動だった。個人的感覚ではこれこそが正しい人の道である(途中でやめなければもっとよかったが)。  ところで映画の宣伝上、このシリーズは「本格派女優の登竜門」とされているようで、別に桜庭ななみとか土屋太鳳といった人々がこのシリーズでのし上がったわけではないだろうが、中身が濃いので役者が印象に残るのは間違いない。今回は特に飯田祐真という人が否応なしに目についたが、ネットで検索しようとすると普通一般の美少女タレント並みに「飯田祐真 かわいい」とかいう予測候補が出たりしてイメージが大混乱する。とりあえず自分としては「TOKYO CITY GIRL -2016-」というもののDVD化に期待したい。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-29 19:40:28)
378.  人狼ゲーム ラヴァーズ 《ネタバレ》 
若手役者の熱演で知られるシリーズの5作目だが、ここまで来るといつまで続けるのかと問う気もしなくなる。今回は最初と最後、特に最後の施設映像が好印象だった。また中盤の長回しは約6分である。 今回はシリーズ初の「運営」という言葉が出て、ゲームの背景が少し明らかにされている。この世の悪は「金持ち」のせいというのは安易な感じだが、身内が有力者すぎて手が出せないことはありえなくはないので、一応は荒唐無稽になり切らない線を狙ったとはいえる。この運営側に関する説明は、前回ラストの出来事(ただし原作限定)と整合しており、また第1作の段階でも一部示唆されていたことが思い出される。「いけにえ」の存在も前回の劇中で匂わされていたもので、次第に真相に近づいていく雰囲気はないでもない。  今回初出の「恋人」は、その言葉自体にドラマ的な意味はなく、単なる役職以上のものではないらしい(原作者はそれなりの意味を付与していたようだが)。全員が経験者のため無用の混乱がなかったのは歓迎するが、一方で「処刑」を参加者自らすることになったのは過激さを増すための強化策ということか。しかし同時に追い出し方式が提案されていたのは結構なことで、毎度流血の大惨事では面倒臭いだろうし、またこの人だけは無惨な姿を見たくないという人物もいる。 最後の指名は意図がよくわからなかったが、金額の問題だけだったとすれば残念なことである。死んだ本人はこれで納得していたようでもあるが、しかし他人の純粋な好意を費消する形で個人的欲求だけを満たそうとするのではあまりに後向きな結末である。自分としては最後に残った者が死者の思いを受け継ぐ形にしてもらいたかったわけだが、当日朝の言葉からこういう結果につながるとも思われない。最後まで良心を持ち続けた人物を好んで犠牲にするのが「絶望型エンタテインメント」にふさわしいということか。  個別の人物に関しては、個人的には八木ひなた(演・溝口恵)という人がいい感じで、役者としては年上の方だろうが、劇中ではひ弱そうで控え目な下級生の姿ができている(鼻水が垂れずに済んだのは安心した)。またあからさまな美男美女ばかりを揃えないのがこのシリーズの通例だろうが、今回は名前に似合わず地味な牧詩央里という人物が「最悪!」と言ったあたりの“普通の人”感が非常に好きだ(少し惚れてしまった)。金髪の男は屑だ。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-29 19:40:25)(良:1票)
379.  先生! 、、、好きになってもいいですか? 《ネタバレ》 
チケットカウンターで名前をどう言えばいいかと考えていたらいつの間にか自動発券機に変わっていたので言わなくて済んだ。 教え子と結婚した高校教員といえば自分の担任の例を知っているが、そのほか部活顧問の教員が部員の女子生徒に長年にわたり取替え引替え手を出していたのを放置し続けたのもうちの高校である。これは卒業生として許しがたいことで、その間の歴代校長は全員腹を切れと言いたいところである(実際に陰で言っている)。  それはそれとしてこの映画に関しては、原作20巻には何が描いてあるのかと逆に思うほど2時間ですっきりまとめた形になっている。結末はありきたりで通俗的ではあるが、本来の対象層(劇中ではヒロインの友人2人)の期待を裏切らず、現実社会の秩序にも配慮した理性的な作りになっている。 また実は劇中教員の一度の過ちも、純粋な情の問題としてはわからなくはない。自分でさえそう思えるだけの説得力があり、そもそも教員の行動様式が自分に似たところがあるので突き放して見られない。自分のような年齢性別の人間に見せようとした映画とも思われないが、原作の読者だった人々も恐らくもう30代くらいにはなっているはずで、中高生限定というより広く一般の共感を得られるようにまとめ直した映画ということかも知れない。  ところで自分がこんなものをわざわざ公開初日に映画館まで見に行ったのは森川葵という女優が出ていたからだが、いかにもこの人に期待されそうな役が振られているので意外性がない。一方で比嘉愛未という人が、ちょっと惚れてしまいそうな感じの顔で出ていたのは好きだ。そのほか特に、ひたすら純真で一途なヒロインの姿が非常に印象的で、今さらかも知れないが今回はこの女優の役者ぶりに少し感動した。  [2018-04-21追記] 映画は映画館で見た方がいいと思うのが普通だろうが、逆に他人のいる場所では最初から感情を抑制してかかるので素直に見られないという面もある。DVDが出たので自宅で見たところ、特に前半ではヒロインの純粋さが愛おしく思われて非常に切ない。この女優がやっている劇中人物をこれほど可愛いと思った映画は今のところ他にないので、この機会に点数を+1としておく。 ちなみに後半では、個人的には大人の立場で「魔が差した」の場面がよかった。やはり自分としてはヒロインの友人2人には同調できないので、北高の藤岡君に頑張ってもらえないかと思ったりした。
[映画館(邦画)] 7点(2017-10-29 12:26:20)
380.  チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜 《ネタバレ》 
[2018-01-05修正]この映画の2年前に放送されたTVドラマ「チア☆ドル」と明らかに名前が似ているが事情は不明である。説明調の副題がTVドラマ以上の軽薄感を出している。 まず登場人物が福井福井としつこく言うのでそんな場所は知らんと突き放したくなるが、それでも映像に出ているのが福井という場所なのだろうと何となく思い込んでいたところ、実際の撮影地はほとんど新潟だったとのことで少しショックだった。地元としても期待がなくはなかっただろうが、そこをあえて地元密着にはしないことで、日本のどこにもある地方からいきなり世界につながりうる時代を表現しようとしたということかも知れない。  内容的には最初が少女マンガ原作かと思うようなバカ高校生の状態から始まるので呆れるが、続く前半のコメディ部分は結構可笑しい。「わからんのやってあんたには」のところは笑ったが、ほかにも滑ったようでいて滑り切ってしまわずにかろうじて引っかかったところで失笑させる緩さがある。県大会で大失敗しているのに観客は楽しげに笑っていたのも面白かった。 その後もあらかじめ見えている終着点に向けて着実に盛り上げて行く構成になっているが、自分としては主人公が端の方にいてもなお重要な存在になるという話なら期待できると思って見ていた。しかし結局最後は人気女優をセンターに置かなければ済まなかったらしく、その後に指導教員の内幕を延々と説明していたのが言い訳じみていて気が抜けた。本番でも素直に気分が高揚するのを許さず、不快な実況アナウンサーや教頭など(校長も)を出すのはコメディ要素にもなっていない。終了後も、観客の歓声がまだ続いている最中に笑顔を消してステージから去るなどという行動は全く納得できない。 そのようなことで、要ははじめの方はまあよかったが、後になるほど気に障ることの多い映画だったということである。個人的印象としては前年の「ちはやふる」(本物の福井が出る)に残念ながら負けている感じだった。  なお今回は中条あやみという人が少し好きになった。また富田望生という人は外見的な適性に恵まれないのに加えて家庭的にも恵まれない役で、悪いところを一人に押し付けたような設定が安易に思われたが、本番では一応この人の見せ場もなくはなかったようである(細切れだが)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-10-17 19:28:22)
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