21. モンキー・ビジネス
気になって調べちまいましたが、本作の発表された1952年の前後は覚醒剤研究の揺籃期。 LSDの化学成分が明らかになろうとしていた頃で、つまり本作はドラッグ映画の先駆け的な位置付けにありそうです。 後の60年代ドラッグ・ムゥヴィーがとにかく内面、内面…と実体験に基づく幻覚と非論理を追求したのに比べ、ハワードホークスはこの(世間ではまだ認知されていない)《ハイ》という状態を他人の目で、冷ややかに、バカにするような視点で描き出してる。ここがまずポイントですね。 この冷た~い白~い視点に気付くと、コントラスト強めの色合いや、バリッと決まったパンフォーカスの画面の理由がわかるというか。これ、どう考えてもコメディにならないはずなんだけどなあ…何でスクリューボール・コメディ仕立てで企画したんだろうなあ…。 道具立てはかなり『赤ちゃん教育』に近く、ハワード・ホークスのこだわりが見え隠れする作品ではあります。でも壮年の夫婦を中心に据えた物語作りにはチョイと納得いきません。これが例えば、酒場を中心に展開する人情モノで撮られてたら、ネタのポテンシャルが活かしきれたんじゃないかと思うんだよねえ。 あ、でもあのモヒカンだけは腹がよじれた! あの一瞬のためだけに、ホントにやるか~ッ! …って感じです。(^O^、 ちなみにオイラにとっては初マリリン・モンロー作品(ケイリー・グラントに並んでキャスティングされてるから、彼女の映画と言ってもいいっすよね)。イマイチだなあ…これなら『黒い罠』でのザ・ザ・ガボールの方が可愛いなあ。 [DVD(字幕)] 6点(2009-03-08 17:22:59) |
22. 深く静かに潜航せよ
《ネタバレ》 潜水艦映画としては不朽の名作ですが、点数ちょい低めです。日本軍なんか頭良すぎ! いくらブンゴスイドーを死守するためとはいえ、海軍があんな作戦立案しないと思うんですよ。「そんな姑息な策で戦うのはけしからん!」とか幕僚本部怒りまくりそう(そんで巨大戦艦主義に奔走して負けちゃうわけだ)。これが謀略戦・情報戦のためなら何でもやったチャーチルや蒋介石の軍なら、すっごい説得力があるんだけどねえ。むしろクラーク・ゲーブル艦の方が、日本的な戦法をやってるような気がします。日本の歴史を知るが故に、この過大評価はちょっと背中がむずがゆい。そういや今、巨艦巨砲バンザイな映画が大ヒット中ですなあ。コッチと見比べてみると戦略の違いが見えてくるかもしれないっすねー。 [DVD(字幕)] 6点(2005-12-30 13:06:36) |
23. 死刑台のエレベーター(1958)
《ネタバレ》 最近話題の反日デモ報道を見ながら考えてみた。第二次大戦終結から半世紀あまり。極東はやっと本作を我が身の物語として見れるようになったんじゃないかな(もちろん日本はドイツ人の金持ち夫婦にあたる)。あらゆる世代のワルばっかを組み合わせ、戦後フランスの陥った「俺たちどーすりゃいいのさ」的状況を描き出したこの映画、そのまんま90年代の韓国に当てはまってたんじゃないかなーと思うんですよ(まあここでは北朝鮮に相当するファクターは出てきませんが)。「愛国心」という厄介な奴についても、けっこう考えさせられる。右派実業家が植民地を売っぱらって私腹を肥やしてたり。救国の英雄の取れる行動が、せいぜい不倫にケチな殺しだったり。公道レースでドイツ車に勝てなかったから(だけじゃないけど)って外国人殺しちゃったり。どこまでも醒めたカメラが、「戦後という時代には英雄とチンピラの間には何の違いもない」という事実を突きつけてきて、噛めば噛むほど味が出てきます。EUって奴ぁ、多分、この映画に描かれる苦い思いを乗り越えるために欧州が選んだ結論なんでしょう。 [DVD(字幕)] 6点(2005-04-16 15:06:22) |
24. グレンとグレンダ
4週間、ビデオショップをひたすら回って、とうとうエド・ウッド・コレクションBOX買ってきましたよっ(←バカ)。しかしまいったなこりゃ…メチャメチャ面白いやんこれ。金がない上にテクニックもない上に内容もないんだけど、巷で「唐突なトンデモ映像」と言われてるシーンは演劇的にはアリですよ。ベラ・ルゴシなんかちゃんと異化効果の役割果たしてるし(あちこちで神様だの精霊だの言われてるけど、彼の役どころは科学と科学者の象徴・抽象表現ですね)。映画じゃなく舞台の骨法で組み立てられてますね。この時期のエド・ウッドは、映画人である前に演劇青年だったんだろうな。本作の後、彼がどうして盆踊りするまで落ちぶれてしまうのかは、『怪物の花嫁』を観てから考えてみようっと。とりあえずこの映画については「凡作」を満喫できたので、この点数で。 (追記:モノローグの多さや唐突さ・安っぽさはキューブリックの処女作を思わせました。格は全然違うけどね…間違った方向じゃないと思うなあ) 6点(2004-04-18 23:42:01)(良:3票) |
25. 地球の静止する日
ああ~、プロフィールで「DVD買ってきて観てみま~す」と約束してから、はや1年半。やっと買ってきました(980円に落ちるまで待ってたという話も…)。さて、草木も眠る丑三つ時に、DVDをプレーヤーに突っ込んで…うぁははは~! 宇宙服がバブルマンだよ~^^こうなると判ってて何でアメリカに着陸すんだよ~^^部屋ちゃんと片付けろよ~^^ワシントンが昼ならヨーロッパは夕方じゃないのかよ~^^『キャプテン・スーパーマーケット』の呪文の元ネタはコレかよ~^^!! …むぉほんッ、た、大変楽しい時間を過ごさせて戴きましたありがとうワイズ監督。 SF映画史に足跡を残す、大変貴重な作品だとは思います。そして、終戦直後のアメリカとソビエトと中国が陥った全体主義を批判するのにUFOを使うというアイデアは、当時画期的だったとも思います。そして、以後量産される宇宙人侵略SF(『プラン9・フロム・アウター・スペース』から『MARS NEEDS WOMEN』に至るまで…)の基本形の全てがここにありますな。『2001年宇宙の旅』が登場するまでの20年弱、SF映画のパラダイムを保ち続けたという意味では歴史に残る名作でしょう…その証拠というか、バートンとライミに思いっきり遊ばれちゃってますが…時代の流れは酷いのぉ…。 ●追記:いま気づきましたが、石井輝男監督・日本初の宇宙ヒーロー活劇スーパージャイアンツ第3~4話『怪星人の魔城』『地球滅亡寸前』は、本作の静止シーンが元ネタかぁ…あ、そもそも1話目からかぶってるシーンもあるし…つまり本作は、仮面ライダー系ヒーロー特撮の源流でもあるワケですなぁ。勉強になりますた。 [DVD(字幕)] 5点(2006-03-15 19:43:51)(笑:1票) |
26. 禁断の惑星
どーでもいーけどこの映画、レスリー・ニールセンが出てたのかあぁ~っ! たったいま知って、脳内で一気にコメディ化してしまったですよ! 作品自体は50年代の古典らしい大らかな味に仕上がっていて、安心して見る事ができます…ロボット目当てで見るには辛いでしょうが。 5点(2004-02-23 04:27:24) |
27. マックィーンの絶対の危機(ピンチ)
ブロブも好きだが原点も外せませんな。余談ですが私もマックィーンが出てたと言うのを映画見てから知ったクチです。このおばかストーリーを前に、大スターの力はいらないって事でしょう。わざわざ映画館を襲うシーンもバカだったけど、最終的な撃退方法もバカだったなあ。やはりモンスターにはひとつだけ弱点があるべき(しかも意外なやつ)で、昨今のパワーだけの殴り合いには風情がないと思いますナ。 5点(2004-02-18 05:54:00) |
28. 遊星よりの物体X
昔から思ってるんだけどね、ごめん、言っちゃうよ。「よし、みんな影の周囲に立ってみろ」…(氷上でみんなが輪になる)…ジャジャーン! ってなんだよ、全然ビックリしねーよ。科学者の解説は長すぎ(しかも中途半端なたとえ話ばっか)でウザいし、なんかみんな一致団結しちゃうし(それ全然原作と違うだろ)、SFをなめとんのかーっ! 台詞と演出を練れば、同じ予算・セット立てでもっと怖いのが作れたと思えて仕方がない。カーペンター、どうしてこんなのに惚れちゃったんだ? 2点(2004-12-08 23:53:34) |
29. 現金に体を張れ
とても『非情の罠』を作った後にこの映画を撮ったとは思えない! これはキューブリック映画とは思わないようにしてます。先の展開が読める読める。スターリング・ヘイドンも後の『博士の異常な愛情』での怪演を思うとなあ。 2点(2004-10-30 19:18:06) |
30. 宇宙戦争(1953)
この時代、この時期、なぜ『宇宙戦争』を映画化しなければならなかったのか。もちろん大戦が終わり、誰もが宇宙開発競争を予期していただろう。原作者H.G.ウェルズが46年に死んで、どんな片寄った脚色でも文句をつける奴もいなくなった。そして何よりも世界一有名なSF小説だ。そこでジョージ・パルはこの映画がタイムリーであり、新時代の幕開けに相応しい正統的なSFである事を、こんなナレーションに託して冒頭に飾った。 「二つの世界大戦は人類に多大な被害を与えて終わった。その間にも兵器は発展し続けている。やがて第三次世界大戦が起こるだろうが、その前に我々は宇宙との戦争に巻き込まれるだろう…」 映画を観ていて、一番イヤになる瞬間だ。ウェルズが描きたかったのは他民族を人と思わない精神が虐殺や戦争を生んだという、その原理だったのだ。パルは、やっとそういう精神世界が崩れて落ち着こうとしていた時代に、新たな仮想敵を探すのに躍起になっていた。ショービズに骨まで染まったそんな根性、くだらなくて涙が出る。 どうしてこの時期にウェルズ最後のSF『解放された世界』を映画化できなかったのか、問い詰めてみたい。あれは半世紀前の時点で世界大戦を予測し、核戦争を予測し、そこからプリサーゴ国際会議によって平和になる道を描いた「20世紀のシナリオ」だったのに。彼は国際連盟を提唱し実現させた。人権宣言書簡を書き、それがやがて世界人権宣言になった。SF作家をやめた後の彼は平和に至るまでの世界史を直接「書いて」いた。 戦後、パルの手で復活したウェルズは、ハリウッドで望まぬ「第二の人生」を歩き始める事になる。パルの視野がもう少し広ければ、その後の映画史は変わったかも知れないし、歴史だって違っていたかもしれない。新たな戦争ではなく、最終的な平和を謳うべきだったと思う。それが夢でも構わない。そもそも映画ってそういうもんじゃないのか? [地上波(吹替)] 0点(2006-05-05 11:43:20)(良:3票) |