21. 水滸伝(1972)
《ネタバレ》 ごくごく当たり前のことを言うようですが、元となった物語が膨大な原作の一部なので、原作未見者としてはどうもシックリ来ないというのが正直な感想です。 冒頭は酒飲みシーンは梁山泊の英雄たちに扮したおなじみのスターがズラリ。その顔ぶれの豪華さを眺めるだけでも嬉しくなったり。 続いて首領が殺され、話し合いの結果、盧俊義の助けを請うということに…と、ここまでは結構ワクワクして見ていたんですが。物語はその後、盧俊義が下男・李固の裏切りによって捕まり、梁山泊の連中が盧俊義を助けようという話に突入。こっからは「危ういところで救出→結局捕まる→危ういところで救出」の繰り返しで単調さを生んでしまっております。 結局のところこの映画は“盧俊義救出作戦”。 ただそれだけに終始しており、原作未見者としてはこの部分だけ見せられても「?」になってしまい、中途半端な印象を持ってしまってもそれはしょうがない。(そもそも原作見ていない私が悪い) となれば、ここはひとつ思い切って見方を変えるしかない。 黒沢氏曰く「感心するどころか逆に呆れた」というくらい贅沢にしっかり作ってある(作りすぎている?)セット・衣装。ズラリと並ぶ豪華なスターの顔ぶれ。流麗な剣戟アクション。豪華な作りの映画なので、とにかく純粋にそれを堪能したいところ。 クライマックスには“梁山泊の英雄VS史文恭率いる軍隊”という見せ場を持って行き、しっかり盛り上げてくれる上、丹波哲郎と黒沢年男が剣を交えるという何やら奇怪な見せ場がメインとして用意されており、“やらされている感”が見え隠れするんですけど、日本人としてはなんか嬉しくなったり。 また、全体的にウエスタンを意識した画作りをしているらしいので、今の目で見てもユニークで斬新な演出が多いのも、この作品の捨てがたい魅力のひとつであります。 特に真剣なシーンに、エレキギターや女性ボーカルのハミングが飛び交うという奇抜な選曲センスは必見でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-28 13:36:33) |
22. 拳精
フム。今にも「アイ~ン!」とか「だっふんだぁ」とか言い出しそうなおっさんの精霊と戯れてれば、それだけで拳法習得出来るのか。 製作側が意図したと思われる“ファンタスティックカンフー”という狙いは、「肝心の精霊が気持ち悪い」ということで見事に失敗に終わっておりますが、五獣拳の精霊というアイディアはなかなか秀逸ですね。 それだけに惜しいのは、根幹を成す物語がえらくシリアスタッチなところ。 ゆえに土台喜劇向きの風貌をした精霊が入り込む余地は無く、出番は必然的に少なくなってしまっております。 これが非常に勿体無い。 精霊中心にストーリーを構成したらもっと面白くなったと思う。 ということで個人的には惜しくも5点。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-12-28 13:31:27) |
23. ドラゴン危機一発
《ネタバレ》 そもそも麻薬組織の諸君。お前らがバカだ。凄まじくバカだ。 チェンの不手際によって危うくバレそうになった麻薬売買の事実をそのまま黙っていれば良いものを…わざわざ工場員二人を呼び出し「アレは麻薬だ」と暴露した挙句、二人を組織に勧誘するという不条理さ。 断られるやいなや(当然だ)、手下を使い惨殺するというこの「もうちっと後の事考えんかい!」的な傍若無人さ。 結局この理不尽な殺人が引き金となり、リーの怒りが爆発し組織は壊滅の道をたどるわけだから世話無いわ。 ボロ出しすぎで犯罪組織として…いや映画の悪役として失格。てか、かなりアタマ悪い。 そして「喧嘩はするな」という母との約束を「戦うな」と取り違えるチェンもものすごーくアタマ悪い。 結局のところリーのアクションが凄い!!…という作品です。 リーに対するあらぬ誤解を受けかねることになってしまうと思うので、本作をリーのファンになろうという方に鑑賞させるのはあまりお勧めできません。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-12-27 03:10:40) |
24. カンニング・モンキー/天中拳
他の拳シリーズと違って主人公が最後まで半人前のままというのがポイント。 実はこれジャッキー初のコメディ映画に当たる作品です。 今となっては空回りしてサブく感じるギャグも多々ありますが、全編に渡って何とかコメディ初挑戦の彼が笑わそうと四苦八苦している姿が目に浮かぶじゃないですか。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-12-21 14:20:57) |
25. 燃えよドラゴン
カンフー映画のレビューとなると余計なことをダラダラ書き連ねる私も、この作品については多くを語る必要なぞ、かけらもありません。 ただ単に、観る。 燃える。 そして、讃える。 それだけで十分です。 [DVD(字幕)] 7点(2005-11-15 21:12:59)(良:3票) |
26. ブラッド・ブラザース/刺馬
《ネタバレ》 映画の冒頭。デビッド・チャン演じるチャン・ウェンシャンの不敵な笑顔に引き込まれてしまったあなたはもうこの映画の虜。チャンが語りだす清朝を震撼させた清朝四大奇案のひとつ『マー提督刺殺事件』の裏に隠された衝撃の真実。それは義理兄弟の契りを結んだ3人の男の悲しくも残酷な物語。ストーリー自体は安易に先が読める展開ではあるし、やや釈然としない部分もあるにはある。しかし、スローモーションを多用したクライマックスのカンフーファイトやどこか陰りをみせる役者たちの屈託に満ちた表情(特にデビッド・チャン演じるチャン・ウェンシャンがチン・リー演じるミランに時折向ける疑惑の眼光)など見所は実に多く、それを中だるみ一切無しで描くテンポのよさには見上げたものがあります。ゴジラの伊福部サウンド風の陳永煌のスコアも各場面場面を盛り上げるのに一役買っていて非常に秀逸。 役者の演技はどれも見応えたっぷりの素晴らしいものであったが、矢張り自らの野望を果たすためには手段を選ばない冷酷非情なマー・シンイに扮したティ・ロンが問答無用に素晴らしい。理想に燃える顔の下に魔性を隠した敵役をうまく演じきった。第19回アジア映画祭・第11回台湾金馬奨で主演男優賞ダブル受賞も伊達じゃないその名演を見るだけでも本作を見る価値は十分にあると言えよう。ただ、個人的には張徹監督の最高傑作とは思わないけどね。 ・・・・・・・・・ところで例のゴロゴロ転がるシーンですけど、ワタクシ初めはてっきりその奇想天外かつ怪奇な出来事を目の当たりにして「こうやって打撃の痛みを体現しているのだ。なんと斬新な表現法なんだ!」とわけのわからない納得の仕方をしていたのですが、他の張徹作品を見てみるとそんなに転がっていなかったので、これが彼の作風じゃないことが分かってホッとした。(これが張徹作品初体験作品だったので) [DVD(字幕)] 7点(2005-10-28 14:21:03) |
27. 英雄十三傑
《ネタバレ》 唐の時代。ここに“十三太保”と呼ばれ、世に恐れられた十三人の義理兄弟がいた。彼らには素晴らしい才能があった。大勢の兵を率いることも出来た。兄弟の結束も絶対であった。進むべき道はすでに見えていた。天下の統一、即ち皇帝・黄巣の首を討ち取ること。それは彼らにとって容易い事のはずだった。 しかし、彼らの進む道を光が照らしたのはほんの一瞬だけ。 矢を放とうにもそれは外れ、そして二度と見えてこない。 絶対であったはずの兄弟の絆。光を見失い、憎悪や嫉妬という心の闇が彼らを蝕み始めたその時からそれは脆くも崩れ、彼らは“天下を統一する”という大きな争いから“手柄を立て兄弟の王になる”という小さな争いに身を投じて行く。 広大な中国。その全てを統一するということ。敬思や存孝ほどの才能に溢れた人物でさえもそれは果たせず、それ以前の小さな争いの前に尊い命を散らしてしまった。勝ち続けること、それは才能だけではなく、大勢の軍隊だけでなく、あらゆるものが揃っていなければならないのかもしれない。天下への道のりはそれほどまでに険しい。 映画を見終わり、邦題を読み返した。 『英雄十三傑』 なんと皮肉な・・・。 真の英雄などここにはいない。 この物語は“英雄になり損ねた者たち”がいるだけなのだ。 [DVD(字幕)] 8点(2005-10-08 11:23:25) |
28. 片腕ドラゴン
最近世間では“ありえねーカンフー映画”が漫画的とか奇抜だとか話題になっているそうだが、ちょっと待てゴルァ!誰に断ってモノ言っとるんじゃ!カンフー映画ファンにとってこの『片腕ドラゴン』こそ未来永劫に“ありえねーカンフー映画”の金字塔なんだよ!この映画抜きにして「これが史上最強のありえねー戦いだ!」とは無礼極まるじゃないか!そうそう、『燃えよドラゴン』に続け!とばかりに日本上陸を果たした亜流ドラゴン第一号だということも付け加えておこう。そのストーリーは「ありえねー」ほど奇想天外で、「ありえねー」ほどに革新的!・・・というわけでもなく、カンフー映画にありがちな実にシンプルでシリアスな復讐もの。しかしこの映画。どこかおかしい。イヤ、明らかにおかしいです。そのおかしさ(怪しさ?)は敵の道場が世界各国から武芸者を集めるところから徐々に頭角を現してきます。集まったのは、上体ガードガラ空きのムエタイボクサー。腰入っていないのに軽々と対戦者をぴゅぃーんと投げ飛ばしてしまう柔道家。空気吸い込んでぷくーっと膨らむラマ僧。手技オンリーで相手をノックアウトするテコンドー使いetc。どいつもこいつも胡散臭さと妙な味わいがある超個性的な奴ら。そんなおかしな奴らに仲間を皆殺しにされ、悔しくてたまらないジミーは修行を開始!その修行ってのが、“残った片腕の神経をすべて焼き払って腕を強化する”っていうのは凄い。そんなムチャクチャな修行であっという間に(ホントあっという間・笑)強くなったジミー。決戦の時は来た!道場の門弟誰一人として敵わなかったバケモノどもを、唯一つの拳と不気味な技で次々ブチ殺しまくる狂乱のジミー!悪夢かこれはッ!?この、あっ!と驚く(噴出す?・笑)驚愕の激闘の模様については、実際に本作をご覧になってからのお楽しみということでここでは書かないことにしておきます。いやしかし「ドラゴンボール」「北斗の拳」「ストリートファイター」すら誕生していない72年にこんな破天荒な格闘映画を発表したジミーさんってやっぱ凄い。こんなケッサクは是非とも続編『~空とぶギロチン』同様に“これが元祖ありえねー戦いだ!”のキャッチコピーと共にリバイバル上映して頂きたいですな。もちろん豪華仕様のDVD化も頼みますぞ! [ビデオ(字幕)] 8点(2005-09-22 09:32:30)(良:2票) |