21. 白夜(1971)
《ネタバレ》 一見無機質ですが観れば観るほど味わいが深まっていく映画。いわゆる、「ミニシアター系」が好きな人なら必見の非常に個性的で洒落た作品です。レオス・カラックスの「ポンヌフの恋人」もこの映画に影響された部分があるんじゃないですかね。 ポンヌフをはじめとするパリの街の映像が素晴らしいのが印象的でしたね。そして、感情を抑えたシンプルな演出でありながら、カメラワークや音楽、ストーリーのテンポ、テレコのような小物、リアルに響いてくる雑踏の音(ドキュメンタリー作品のようでした)等々を効果的に利用することで、人間の本能の生々しさを見事に描ききっています。 [映画館(字幕)] 8点(2012-11-11 01:08:59) |
22. (秘)色情めす市場
《ネタバレ》 日本映画史上に残る大傑作と言っても過言ではないですね。 高度成長から取り残されたかのような昭和の釜ヶ崎の姿がまず強烈に印象に残りました。取り扱っているテーマやストーリーは非常に醜悪で猥雑でありながら、様々な技法(特にペドロ・コスタもこの作品を参考にしたのではないかと思わせるような光の使い方)や小物を使い娯楽性と芸術性(非常に詩的)を両立させて、素晴らしい作品に仕上げてしまう田中登監督は凄いなと思いましたね。パートカラーの通天閣のシーンや希望を感じさせるラストも良かったです。 一番印象に残ったエピソードは、やはり使い込みで会社を首になった男の爆発ですかね。あれは当時の世相なのか、弱いものを食い物にする国家権力に対するテロリズムを暗喩しているようで興味深かったです。 こんな素晴らしい映画が「ポルノ」というくくりがあるために、映画マニア以外の目に触れることなく埋もれてしまうのは本当に勿体無いですね・・・・。 [インターネット(字幕)] 9点(2012-06-02 23:49:23)(良:1票) |
23. あらかじめ失われた恋人たちよ
《ネタバレ》 ゴダール作品のような印象を受けましたね。観念的で挑発的で若き名優たちのエネルギーを濃縮して爆発させたような作品でした。しかしながら、とにかく時間が長かったです。正直、途中からは退屈でした。内容的には中々興味深かったんですけどね。 [DVD(邦画)] 4点(2012-04-08 22:56:43) |
24. 化石の森(1973)
《ネタバレ》 結局は近親憎悪でした・・・ということなんでしょうね。 憎しみの感情をぶつけても何も良いことはないことはわかってるんですけれども、でもぶつけたくなるのが人間の感情の難しいところですね。 [DVD(邦画)] 6点(2012-02-19 13:45:36) |
25. 原子力戦争 Lost Love
《ネタバレ》 あの東日本大震災の後、この作品や「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」が初DVD化となったことが、いかに原発タブーの闇が深かったかを証明していますね。国策推進のためなら、平気で問題点を隠蔽し嘘もついてしまう国に我々は生きていることを、今回の震災は教えてくれました(まあ薄々は知ってましたが)。原発を今すぐ全てなくせとは言いませんが、安全管理と情報公開はしっかりとしてもらいたいですね。 ただ、この作品ははっきり言ってイマイチな出来でしたね。原田芳雄の原発突入は面白かったですが、そのくらいですかね。後はひたすら深みの無いチープな展開でテーマが原発でなかったら途中で観るのをやめてたと思います。無駄にワイルドな原田芳雄もやや鬱陶しかったです。 まあ、今となっては貴重な映像作品ではあると思いました。 [DVD(邦画)] 5点(2012-01-04 10:36:44) |
26. 帰郷(1978)
《ネタバレ》 結局戦争なんてものは人殺しであり破壊行為であるわけですから、いくら大義名分やヒロイズムで誤魔化そうとしても中々上手くいくものではないということなんでしょうね。しかも国のために戦った英雄といくら国が讃えても、実際は自分の国を守るわけではなく、他国の内戦に介入しているだけですからね。 そんな戦争がもたらす闇の部分を一人の将校の妻を通じてリアルに描きだした作品でしたね。あえてドラマチックに持っていかず、現実的な展開でストーリーを進めていくところがまた切なさを際立たせていましたね。 ローリング・ストーンズやビートルズ等の名曲をふんだんに使った音楽も非常に良かったです。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-23 22:13:55) |
27. ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー
《ネタバレ》 Ain't nothing gonna stop us ! まあ、人生なんてこんなものなのかも知れないなと思わせるようなストーリーでしたね。 常に何かを抱え、何かに追われ・・・・・。そして、そこから解放されるの死を迎える時のみ。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-11 22:02:35) |
28. さらば冬のかもめ
《ネタバレ》 刑務所までの護送という束の間の自由を描くことによって、自由のない軍隊・そしてアメリカという国家の息苦しさや理不尽さを描いたロードムービーです。途中から仏教(日蓮宗?)が重要なキーワードになってきたのが非常に興味深かったですね。 [DVD(字幕)] 7点(2011-12-01 00:21:09) |
29. ハロルドとモード 少年は虹を渡る
《ネタバレ》 モードの腕に刻まれた数字について、作品の中で具体的に説明されることはありませんでしたが、非常に大きな意味を持っています。過去に地獄のような経験をし、生き延びたモードが最後に、死に取り憑かれた少年に自らの死を持って生きることの重要さを教える姿に深く感銘を受けました。 全体的にユーモラスで洒落た作りになっていますが、中味のある良い映画でした。キャット・スティーブンスの音楽も非常に良かったです。 [映画館(字幕)] 7点(2011-11-22 00:21:49)(良:2票) |
30. 樺太1945年夏 氷雪の門
《ネタバレ》 樺太でこのような悲惨な状況になっていたことを知ることができただけでもこの作品を観た意味があったと思いました。ソ連の将校の「敗戦国に国際法など無い」というセリフが、戦争というものの本質を体現しているように感じましたね。 大空襲や原子爆弾で多くの民間人を虐殺しても、日本の無条件降伏後も戦闘・殺戮を続け、捕虜をシベリアで奴隷のように働かせて死に至らしめても、勝者であるが故に裁かれることは無く、敗者のみが徹底的にその罪を糾弾される・・・・・(まあ罪は糾弾されるべきなんですが)。非常に理不尽さを感じますね。 非常にいろいろなことを考えさせられる作品でした。 [DVD(邦画)] 7点(2011-07-20 00:36:20) |
31. 燃えよドラゴン
《ネタバレ》 まあ、見終わった直後であるにも関わらずストーリーを忘れてしまうようなB級映画なんですが、それだからこそブルース・リーの輝きが際立って印象に残ります。 [地上波(吹替)] 6点(2011-06-23 23:25:32) |
32. 水俣 患者さんとその世界
《ネタバレ》 のどかな漁村の風景の中で水俣病の患者たちとその暮らしが紹介され、それと並行して原因企業でありながら対応が鈍いチッソに対する怒りが徐々に盛り上がっていく姿を映し出した後世まで残すべき貴重なドキュメンタリーでしたね。 クライマックスのチッソ株主総会では、患者たちの激しい怒りと企業側の組織防衛本能(企業存続・補償金節減等)が激しくぶつかりあいフィクションでも中々作り出せないような凄まじい光景が記録されており圧巻としかいいようがありませんでした。この企業の組織防衛本能ってやつがまた厄介なものなんですよね。自営業では無い雇われ経営者は仕事として社員の生活・株主の利益等々を守っていかなければならないわけですからね。真面目に仕事をすればするほど患者にとって冷徹で頑なな存在になっていってしまうという状況になっていくわけです。 映像の力・ドキュメンタリーの力の強さを教えてくれる作品でした。 [映画館(邦画)] 8点(2011-06-05 10:11:52) |
33. 星空のマリオネット
《ネタバレ》 内容的にはひたすらやりきれないエピソードが積み重なり破滅へ突き進んでいく感じで、退屈さと絶望に満ち溢れた酷い作品なんですけどね・・・・(ケンちゃんのパパがまた凄いことになっていて見てはいけないものを見た気分です・・・)。作品全体に流れる虚無的なムードは嫌いではないです。 まあ、どうにもならないことにいつまでも囚われていては破滅するしかないんですよね。どうにもならないことはどうにもならないこととして割り切っていくしかない、そこから自分の人生を切り拓いていかなきゃいけないなんてことを考えてしまいました。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-05-25 23:50:02) |
34. ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実
《ネタバレ》 ベトナム戦争がまだ終わってない段階でこのような作品が作られていたとは驚きです。アメリカの東洋人蔑視がベトナムでの残虐行為に現れていること、政府が愛国心を煽るように国民を巧みに騙しながら戦争を続けたことがしっかりと描かれています。 そして何よりも戦場の生の姿がしっかりとフィルムに収められていて非常に興味深かったです。戦争という破壊活動そのものが映像として我々に提示されている本当に貴重な記録だと思います。 まあ、これを観たら確かに反戦運動は盛り上がると思いますね。ようするに欺瞞に満ちた大義名分の下で、兵士たちが「国のために」遠いアジアで不毛な殺し合いをさせられている訳ですから。 戦争というものは格好良いものでもなんでもないことを改めて思い知らせてくれる作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2011-04-17 15:57:07) |
35. ダイナマイトどんどん
《ネタバレ》 日本を代表する役者陣(まさにオールスター!)を贅沢に起用して、その個性を見事に生かしながらここまでむちゃくちゃで突き抜けた喜劇を作り上げることのできる岡本喜八監督は凄いですね。もう、ダイナマイトのような破壊力を持ったエネルギーに満ち溢れていて、まさに「これぞ娯楽映画!」と言える楽しい作品になっています。 野球のルールをよく知らなくても楽しめる作品だと思います。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-09-11 12:52:33) |
36. パーマネント・ブルー 真夏の恋
《ネタバレ》 とにかく切ない青春映画でしたね。取り返しのつかない罪を犯した「大人」の女性と、目の前しか見えない「子供」の少年のアンバランスな恋愛が、四国の美しい風景と共にほろ苦く描かれています。 秋吉久美子と佐藤祐介のコンビが良かったのはもちろんのこと、父親役の岡田英次の存在感も印象的でした。 [映画館(邦画)] 8点(2010-02-14 21:52:29) |
37. 赤い鳥逃げた?
《ネタバレ》 作品全体に漂う70年代前半の閉塞感と今の世相に相通ずるものを感じましたね。主人公達の鬱屈とした心情は今でも共感できる部分がありました。 しかしまあ、原田芳雄の格好良さが際立っている作品でしたね。破滅的なラストも非常に印象的でした。 [映画館(邦画)] 8点(2010-02-10 00:09:39) |
38. 小さな赤いビー玉
《ネタバレ》 ドイツ占領下のフランスに於けるユダヤ人迫害の様子を、ある兄弟の姿を通じて描いています。ユーモラスなシーンもところどころ交えながら、ナチスに協力的であったり、ユダヤ人に同情的であったり、全く無関心であったりというようにフランス人の中でも対応がバラバラであったことを冷静に映し出しています。 ナチス協力者と主人公の少年の会話の中での「またユダヤ人を作るかも・・・・」という少年のセリフが、非常に人間の業のようなものを鋭く指摘しているように感じて印象に残りました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2010-02-07 22:05:00) |
39. 男はつらいよ 寅次郎恋歌
《ネタバレ》 族のあり方、風来坊の哀しみ等々さまざまな市井の人々が抱える問題を描き出した傑作。 今回は、寅次郎が振られたというよりはむしろ自分の生き方へのプライドから相手を振った形であるように感じられ、非常に心に沁みましたね・・・・・・。 しかし森川信演じる寅次郎と対等な立場にあるおいちゃん役がこの作品で終わってしまったのが本当に惜しいですね・・・・・。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-01-23 01:25:05) |
40. 男はつらいよ 寅次郎春の夢
《ネタバレ》 この30年で日本人の国際感覚もだいぶ進歩したのだなと実感させられました。当時は大袈裟でなく外国=アメリカみたいな感じがありましたからね。でも、今のように進歩して本当に良かったのかどうかは何とも言えないですね・・・・・。 ハーブ・エデルマンもまるで「アメリカ版寅さん」という感じで中々面白かったです。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-01-04 23:17:04) |