21. 赤い靴(1948)
《ネタバレ》 芸術に完璧を求めても、そこは神の領域。人間が近づこうとすれば、気もふれようというもの。どちらかというと、ヴィクトリア・ペイジよりも支配人レルモントフの方がマッドネスだった気もする。舞台に出て嘆く彼は、彼女そのものの死より、稀有の踊り手を失ったことへの哀悼に満ちている。絶命したヴィクトリアは彼の身代わりのような、悲しくも酷い芸術の代償。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-10-14 23:57:34) |
22. 天井桟敷の人々
《ネタバレ》 19世紀パリを再現したというセット、特に犯罪大通りの描写、雑踏がリアルに息づいているような人波の熱量には圧倒される。劇場の舞台裏、路地裏、酒場、丁寧に作りこまれた仕事ぶりに制作者の並々ならぬ情熱を感じる。加えてJ・ルイ・バローの至高のマイム。作品に芸術の香りを一段高く纏わせるほどに圧巻。 だけど、私は映画製作時の時代背景等を踏まえて作品を観賞することが苦手で。この名高い作品が公開されたのは70年も前。現在90歳前後のおばあちゃんが「あのころとても感動したのよ」と語るのなら、その思い出は尊重するけれど。現在の感覚から観れば、ガランスの男から男へと、けろりと渡る不誠実さは悲恋物語のヒロインに置くにはそぐわない気がして仕方ない。バティストを想ってるだなんてウソだろ、よく言うぜ。お気楽キャラの台詞俳優の立ち回りも中途半端な印象だし、悪漢ぶっている似非作家もやることなすこと唐突だ。こんなに尺が長いのに、人物の造形を掴みにくくて誰にも感情移入できなくて観ていて困った。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-06-19 00:20:54) |
23. チャップリンの殺人狂時代
後味が奇妙なことこの上ない、なんとも咀嚼し難い作品。コミカルな場面は真正喜劇、でも並行して恐い恐い企みも進行しているので、この男をどう捉えたらよいやら混乱しっぱなしでした。いろんなメッセージが窺い知れるけど、ストレートには伝わりづらいような。この程度で追放とは、当時のアメリカは赤狩りヒステリーの絶頂だったのだなあ。殺さずにいた彼女が軍需産業の豊かさにあずかっている皮肉な展開、このチクリとした感じはとてもチャップリンぽいと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-20 23:29:35) |
24. ローラ殺人事件
《ネタバレ》 なんか“こなれてない”感じの映画。人物が描ききれてないので行動の意味がわからない。顕著なのはあの刑事。捜査しろよ。現場に参考人連れてって会話劇をだらだら。アリバイ崩さない、証拠を探さない。現場の人ん家で酒飲んで寝てる始末。事件の真相を追う姿勢に必死さが感じられないのでサスペンスに必要な緊迫感に欠き、“ローラ生きて登場”の場面に至っては単に「役者Aドアから入る」のト書きが目に浮かぶ。 美女ローラをめぐって男たちが繰り広げる諍いも、作家と女たらしと刑事が口げんかし合ってるだけで愛憎劇とはとても呼べない代物。ジーン・ティアニーは確かに美人だけども、それだけで客呼べるかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-06-13 00:37:17) |
25. 市民ケーン
いつ震えるような感動が訪れるのかと期待しながら見てるうちに終わってしまった。あれ、これって かの市民ケーンだよね?評価が凄まじく高いのは時代を超越した撮影技法云々によるものらしい、と後で知った。孤独な男の人生の描き方も、謎のオチも後世の作品を散々見てきた身には手垢のついた展開にしか感じられず残念。(こっちが先なのにね)もはや映画史料として別枠で評価すべき作品なんだろうか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-08-17 12:48:52) |
26. フィラデルフィア物語
《ネタバレ》 コメディの傑作中の傑作って。そうなんですか?今の時代この作品で笑う人は何割くらいいるのだろう。私の感想は「豪勢な屋敷だこと。こりゃ戦争に勝てないはずだわ」であった。 やたら長台詞プラスワンシーン固定が多く、話もつまらない。妹役の子がひとり良い味出してるけど。もう眠くて眠くて。 ヘプバーンとグラントの気持ちが丁寧に描かれてるとは言い難いので共感も抱けぬまま。ラストシーンにはなんじゃそりゃ、となった。J・スチュワートは噛ませ犬かい?なんてこった。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-10-06 00:04:45) |