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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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21.  男はつらいよ 《ネタバレ》 
俺は「馬鹿まるだし」や「「馬鹿が戦車(タンク)でやって来る」」といった初期の山田洋次の方が好きだが、やっぱ「男はつらいよ」は外せないね。  一人気ままにテキ屋商売で旅を続けるこの男。祭りに飛び込むわ電車に飛び乗るわ船上で張り合うわ何かあるとすぐとっ掴み合いの喧嘩になるわ破天荒で傍若無人、そんな男が「続・男はつらいよ」以降どんどんまるくなっていく。 でも、その自分を偽らない正直さ。それは妹さくらを、家族を思うが故の暴走。もう恥ずかしくなるくらい。だがそれがいい。 それをなだめるかのような存在である志村喬の演技も良い。  「無法松の一生」の「松五郎(阪東妻三郎と三船敏郎)」と「男はつらいよ」の「寅さん(渥美清)」。 これほどまでに日本男児の血を騒がした江戸っ子はいない。 前者は戦前と戦後の日本映画黄金期、後者は日本映画の低迷のはじまりから斜陽の時代も支えた偉大なる江戸っ子。 戦前の小津安二郎の江戸っ子気質を、山田洋次がコメディのジャンルで受け継いでくれた。  勝新太郎の「座頭市」がドラマから始まったように、この「寅さん」もドラマの延長として始まった。 この映画はまさに「映画館で楽しむドラマ」。 ドラマの結末に視聴者からブーイング。 あまりの抗議にキレた山田洋次が「だったら蘇らせて映画で仕切り直したるわ!」とそれが気が付けば全48作品のロングラン作品に。 視聴者の願掛けで蘇ったキャラの元祖の一つである寅さん。 それだけ寅さんの下町人情が愛されていたという事でもあるのだろう。  行く先々で問題を起こしては美人に一目惚れでてんやわんや、結局結ばれずに旅の続きにすたこらさっさ。人々の心は掴んでも恋はいつでも破れて去っていく。この切なさ。  そんな馬鹿野郎な兄貴を親身になって叱ったり励ましたりと寅次郎を見守る真のマドンナ・さくら。 ドラマでは長山藍子、 映画は倍賞千恵子が渥美清と仲良く喧嘩。 脇を堅めるレギュラーやゲスト俳優も良い味を出す。  松竹映画特有のうっとおしいくらいにキッチリとした日本、その中で馬鹿馬鹿しくも儚い日本人の情緒を描いた映画の一つ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-15 21:44:31)
22.  史上最大の作戦 《ネタバレ》 
ダリル・F・ザナック総指揮の元、複数の監督による「ノルマンディー」を描いた大作。  ドイツと連合軍両方の視点で描いていく点が面白い。  最初1時間は淡々としたドラマが続くが、残りノルマンディー上陸の前哨戦をたっぷり描く。  「合図の音」が生む悲劇、暗闇ですれ違う敵軍、落下傘部隊の顛末、激しい銃撃戦は中々楽しめる。  豪華なキャストの共演も魅力的だが、戦争に振り回された男女のドラマも盛り沢山の映画だ。  ラストはちょっと「もっと見たい」という欲求不満になるのが残念。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-15 21:27:13)
23.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
本当に「悪い奴」は、電話の向こうで高いびき  冒頭の結婚式の場面。 華やかな場面の裏で、マスコミの陰口が交錯するシーン。表と裏、光と影。 花婿を脅しにかかる兄貴も面白い。照れ隠しだね。 謎のウエディングケーキ。ここから「復讐者」と「悪い奴ら」の戦いが始まる。 それで結婚式が終わった直後に次々と起こる汚職事件の顛末。 新聞紙の山、警察に引っ張られる役人たち、ある者はおとなしく捕まり、ある者は車にと・・・凄いな。 だがこの中に「復讐者」はいない。 意外な人物がソイツだったとはビックリ(まああの貫禄じゃあ「ああコイツだな」と思うけど。予告編なんか余裕でネタバレだよw) この映画は「復讐者」が誰か解らない所から始まるから面白いのに。 家庭では温厚な父親も、裏では悪事を引き受ける実行人だ。 互いの思い遣りが仇になっていく・・・残酷なもんだ。 ラストシーンは最高にバットエンドだが、何故だか納得してしまう。 やりきってるからな。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-14 21:30:09)
24.  サーカスの世界 《ネタバレ》 
監督はベテランで実力確かなヘンリー・ハサウェイ、 シナリオにベン・ヘクト、 原作ニコラス・レイ!?  というワケで超絶期待しすぎた感もあるが、それでも中々の見応え。  豪華客船の転覆、テント炎上のパニックも凄いが、一番驚いたのはロープ登りの緊迫感。  ただグルグル回ってるだえなのに、どうしてこう惹きつけられるのだろう。 芸人の演技もロングショットだが、凄い。 やはりサーカスは魅力的だ。  またドラマも良い。 父親として厳しくも優しさを滲ませるウェインも良いし、絶世の美女だったヘイワースを知る者にとって、同じく絶世の美女となっていくカルディナーレを思うと配役は完璧といってもいい。  クラウディア・カルディナーレとリタ・ヘイワースの新旧二大美女の競演。  デビュー仕立てのカルディナーレは毒気の無い可愛らしさ、オールドミスとなったヘイワースもまたスラリとした体系で健在振りを示す。これが彼女の最後の花かと思うと少し切ない。  事情があって深い溝のあった親子が和解していくストーリーも説得味があるし美しい。  ジョン・ウェインの父親振りはいつも以上に優しい。いざという時の頼もしさ!  クライマックスの親子競演の場面は必見。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-13 19:04:59)
25.  ネバダ・スミス 《ネタバレ》 
ハロルド・ロビンソンの「大いなる野望」が原作。  「拳銃無宿」や「荒野の七人」で大ブレイクしたスティーブ・マックィーンの名を轟かせた作品の一つ。 主人公の「マックス」は身内の仇を討つためにあての無い旅へと出る復讐劇。 白人の父とインディアンの女性との間に生まれたマックスは、屈託の無い毎日に安堵を感じながらも、退屈な日々に何か「起こらないかと」求めていた。 マックスにとっての復讐は「仇討ち」であり「大きなイベント」でもあった。 冒頭のマックスの手にベットリ付いた「惨劇の後」、銃を、持つことへの渇望が全てを物語る。。 一人一人確実に倒し復讐を遂げていくマックスだが、旅先で出会った者たちとの心の交流が、マックスの心に葛藤を生む。 起点を効かせて危機を脱する場面、 師匠となる「ジョナス」と出会い銃と銃で交わした絆、 牧場での決闘、 刑務所での脱走劇と騙し討ち(アンタよく捕まるなマックィーン)、 保安官と強盗団のやり取り、 ラスト7分の死闘とかなりの密度があり飽きさせない。 最後の最後におけるマックスの「判決」。 直接手を下すよりも残酷な「殺し方」である。 復讐に身を染めて気づいてみれば、自分もお尋ね者となり「これでは両親を殺めたコイツらと何も変わらないじゃないか」と思い知らされるマックス。 刑務所において軽蔑された女性、保安官に「犯罪者」と睨まれた事が、マックスの心をより揺さぶった。 「今からでもやり直せるのかな・・・またジョナスに会いたくなった。」 マックスは再び旅に出るが、今のマックスの心に復讐心は無い。 何故なら彼の心には生きる希望があるのだから。  そうだ、ハリッド行こう(原作の主人公が後にハリウッドに行ったので)。  そんな映画。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-11 04:30:02)
26.  座頭市千両首 《ネタバレ》 
この映画の見所と言えば、やっぱりあのシーン。  投げた賽銭の位置を耳と空気のゆらぎで把握し、落ちた瞬間一閃! 真っ二つ。  凄えよ・・・。話は相変わらずと言えばあいも変わらずだが、数を重ねるごとに勝新の居合抜きが凄くなってると感じるのは俺だけ?
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-08 23:41:09)
27.  ある戦慄 《ネタバレ》 
アメリカ社会の縮図を電車の中に詰め込んだサスペンス。こんな変な電車ジャック見たことねえよ。  ファーストシーンの長回しが面白い。DQNの男二人が路上で犯罪を犯す場面。 そしてオープニングの電車。  電車に乗り込む人々はそれぞれに虚栄を身にまとった男女ばかり。 家族、夫婦、バカップル、若者を嘆く老人、独身サラリーマン、軍人、黒人差別・・・アメリカ社会の光と闇が1本のレールに集う。  そこに乗り込んでくる冒頭のDQNコンビ。電車の中でDQNコンビはやりたい放題だ。  ただ、この二人は掴みかかりはするが直接的な暴力はほとんどしていない。代わりに「言葉の暴力」で電車に乗り込んだ虚栄たちを挑発し、引き剥がしていく。 現代社会にもありふれた生々しい人間模様。密室、力による抑圧が人々の本心を暴き立てる。 「俺たちが何した?言葉の暴力だけで手はまだ出してないぜ?」ホームレス?のオッサンへの放火未遂はあるがな。  二人のDQNコンビの目的はよく解らないが、とにかく「楽しめれば」何でもよいのだろう。罵られる彼らが黙って耐える姿を嘲るだけでいいし、耐えかねて“殺すか殺されに来る”ことも期待している。まるで子供にように幼い、純粋な発想。だがシンプルが故に人の心をえぐりやすい。 我々観客はナイフを突き立てられる乗客と一緒に恐怖に怯え、怒りを覚える。あるいわ、DQNの立場にたって人々を嘲笑う快楽に浸るか。貴方はどっちでしたか?  次々と化けの皮が剥がれていく人々だが、俺が唯一感動したのが黒人夫婦の時だ。 「誰が傷つけられようが知らんね」とほざいていたオッサンが、妻のために握り拳を抑える場面。腐っても夫婦だねー。悔しくて泣きじゃくるオッサンの顔がたまらん。  それを嘲笑うのではなく、黙り込んだDQNコンビには驚いた。嘲る・・・というよりは本音が聞きたかっただけなのか。それは解らない。  終点に向う間に行われる“決闘”。若き軍人は「先に手を出したら負けだ」と解っていた。いや脳味噌は解っていても、肉体と魂はDQNどもをブチのめしたくてしょうがない。怪我をした友人を侮辱されたから?違うね、本当にそう思うなら侮辱された時点で彼はDQNたちに殴りかかっていた筈だ。ナイフなど恐れずに。死ぬのが怖かったのか。逆に殺してしまうのではないかという恐れからか。とにかく、二人の男は覚悟を決める。向かい合い、ナイフをバチッと出す瞬間に奔る“ある戦慄”・・・。 電車から解放された人々の表情が何とも言えない幕引きだった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-08 21:55:13)
28.  西部開拓史(1962) 《ネタバレ》 
この映画は正に原点回帰。 南北戦争以前からアメリカ大陸に渡った開拓者たちの生き様を雄大に描いた歴史劇。 特に南北戦争以前の時代から西部開拓時代を描いた作品は貴重。 美しくも厳しき大地、 原住民インディアンとの交流と反発、 牧草地を駆け抜ける牛の群れ、 保安官たちの死闘・・・様々なドラマを詩情豊かに映していく。 2時間45分という長さだが、ストーリーは全5部、休憩を挟めば前・後編と観れるので区切りの良いところで休憩できるのがミソだ。 1,2,5部はヘンリー・ハサウェイの活劇精神、3部をジョン・フォードの戦争ドラマ、4部のジョージ・マーシャルやリチャード・ソープの演出など見所も盛り沢山。  ただ、西部開拓時代の負の部分の描写が少し物足りない。 五世代に渡る積み重ねでドラマの見応えはあるが、ラストの保安官のエピソードはもう少し見たいところ。 南北戦争で生き残り、そこからどの様にして保安官になったか・・・それとライナスとリリスの姉がいかにして結ばれたかもリリスの話と並行して見たかったかな。 そういう過程をもう少し描いても良かった気がする。もう40分話が観てえええっ! ほんのちょっとだけ出るジョン・ウェイン、二度目の出番が仏というジェームズ・ステュアートと扱いが少しぞんざいだった人物も少なくない。 しかし、長きにわたって力強く生きたリリスの存在は魅力的だ。 デビー・レイノルズの活き活きとしたエネルギーに満ちた演技は素晴らしい。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-07 15:58:02)
29.  戦争と平和(1965-1967) 《ネタバレ》 
レフ・トルストイの長編を映像化したセルゲイ・ボンダルチュクの超大作。余りの長さと重苦しさは、ロシア映画随一の退屈さを誇る。原作の恋愛要素も大分薄れてしまったし。  だが、実際のソ連軍の兵士を動員して撮影した超ド迫力の戦闘シーンは圧倒的だ。「ワーテルロー」も凄いぜ。  ピエール、アンドレイ、ナターシャの3名を始め、クラーギンやドローホフ、クトゥーゾフ、ナポレオンと原作を意識させる個性に富んだ登場人物が沢山出てくる。  戦闘までの貴族のいざこざや日常の、それぞれがしっかり結末へと流れていくのでどの場面も見逃せない。  この映画は戦争映画に徹した部分が多く、戦場の悲惨さが如実に描かれていく。  ヤケクソになって戦場に飛び込んで行ったピエールも、修羅場をくぐり抜ける事で傷心と成長を繰り返して行く。  全ての戦いが終わり、ピエールを静かに迎え入れる者は果たして・・・という感じの大作。  長時間かつシリーズものという取っ付き難い映画だが、レフ・トルストイに挑戦、あるいわ小説の世界を映像で堪能したいという人。 挑戦しがいのある内容なので、是非とも挑んで貰いたい。
[DVD(字幕)] 8点(2014-12-02 22:41:10)
30.  オーソン・ウェルズのフォルスタッフ 《ネタバレ》 
オーソン・ウェルズは傑作が多いが、俺の一番好きな作品はコレだ。 大酒飲みでほら吹きな巨漢の男フォルスタッフ。大嘘つきで狡賢い存在なのだが、何処か憎めないというか、愛嬌たっぷりで可愛気さえ感じるくらい。 冬の森から小屋へと入っていく中年の男と、ずんぐりむっくりな巨漢の老人。二人が何やら怪しい算段をたてている場面から物語は始まる。 愉快な会話のやり取りの多さ、物語がサクサク進む小気味良さ。舞台劇をそのまま映画のスケールでダイナミックに演じてしまう面白さ!いや、フォルスタッフにとって人生そのものが一世一代の舞台なのだろう。 特に宿における膨大なセリフのやり取りは面白すぎる。酒蔵でのやり取りも、ウェルズに絡んでくる若い二人の男とのやり取りも、珍妙な面接風景も、ウェルズの詭弁で何処に行ってもお祭り騒ぎ。フォルスタッフに絡むジャンヌ・モローも色気ムンムンです。 秋の林の中で馬を“手に入れる”シーンのやり取りもイチイチ面白い。あれだけ大口を叩いていた男が、その巨躯を必死に動かして逃げ惑うのである。 「マクベス」で引き締まった肉体と共に勇ましく戦っていたウェルズとは大違いだ。 それは戦場に勇みよく出陣した場面でも同様だ。中盤のおよそ10分に渡る騎馬同士の壮絶なぶつかり合い!泥に、血にまみれる戦場。 それを高みの見物、漁夫の利をあげようと茂みに潜む姑息というべきか、狡猾というべき姿。 彼について行く子供の従者すら騙して。 そんな男の人生も、もう一人の主人公というべき後のヘンリー5世となる皇太子・ハルが終止符を打つ。 最初はフォルスタッフと共に放蕩生活を送っていたハルだが、戦場での戦いが彼を誇り高い戦士に、王として身も心を変えていく。 戦いの後はまだ固い絆があって別れを惜しんだ二人だが、いざ王が死に次の王になるともう“嘘つき”と友情を結ぶワケにはいかなくなったのかも知れない。 ハルは、国の、それを支える人々のためにあえて友情を捨てる事を選んだのだろう。それはフォルスタッフのためでもあったのだろうが。 だがフォルスタッフにとってこの事ほどショックを受ける事は無かった。 底抜けに明るく始まった物語は、少し寂しい締めくくりを迎えてしまう。それでも、あのあっけないくらいの最期が逆にじんわりと心に染み込む傑作。
[DVD(字幕)] 10点(2014-11-30 08:45:15)(良:1票)
31.  日本のいちばん長い日(1967) 《ネタバレ》 
岡本喜八の最高傑作を1つ挙げるとすれば何か。それは意見が別れると思うが、日本人として最高傑作を挙げるならやはりこの作品になるだろう。 映画は日本列島を映した地球儀、鳴り響く爆撃音と共に始まる。20分に及ぶ“プロローグ”が。ドキュメンタリー映画のような映像がしばらく続くが、短いショットと殴りつけるように放たれるセリフは一切の退屈を許してくれない。 空襲で焼かれる都市、焼け焦げた遺体の惨たらしさ。それを何度も見せられ“くどい”と感じる者もいるだろう。だが、実際にあの日を生きてきた日本人は、ああやって何度も地獄を見せられ“慣れてしまう”現実が存在していた。どんなに嫌でも、眼を背けられないような現実に耐えるしかなかった。 20分に及ぶプロローグが終わり、そこからが本番。 戦争を終わらせようと人々が動き始め、歯車が回り、映画としての面白さも動き出す。彼らが流す涙の中には、本当に懺悔している者もいるだろうし、敗北した事への悔しさ、これから日本が辿る未来を絶望視して泣いている者、様々な人間がいただろう。 「日本の国民を生かすも殺すも」ってやり取りが強烈だぜ。 本土決戦だの特攻だの頭のおかしいトチ狂った言葉を並び立て、一体コイツらは何人同じ日本人を“見殺し”にしているのか。まだ殺し足りないのか貴様ら。 この瞬間にも、母親が丹精込めて作ったであろう握り飯を美味そうに食べ、守る者のために出撃していく漢たちがいる。死を覚悟して。ああ、早く、早く降伏してくれ・・・そう思ってしまう。 様々な人々の主義主張やイデオロギーのぶつけあい、口舌の刃による斬り合い。 それが本当に刃を抜き放ち、銃を突き付けて殺し合うまでに発展してしまう。実際にこんな事があったのだから恐ろしい。 自転車をこいで行き来するシーンの何と狂気地味た事か。本当に何を言っているのか解らないわめき振り。 斬られた首はイスに隠されても、事件そのものは隠蔽しきれない。 官邸に一人残っていた女性の胆力に恐れ入る。或る意味、今回唯一クレジットのある女優・新珠美千代が一番強烈だったかも。 複数の玉音版による撹乱、放送室で軍人を睨みつける放送員の加山雄三、そして力尽き、自らに“ケジメ”を付ける軍人、軍人、軍人たちの散り様。 男たちは走った。走って、走って、走り尽くした。でも一体誰がために?何のために?そんな虚しさが、画面を包み込む。
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 03:05:24)
32.  俺たちに明日はない 《ネタバレ》 
ボニー&クライド物はフリッツ・ラングの「暗黒街の弾痕」の方が粋で好きなのだが、アーサー・ペンのこの作品も大好きだ。 街でバッタリ会ったボニーとクライドが次から次へと銀行を襲っては逃げ、そして滅んでいく様を描く。 実際に起きた連続強盗事件を元に描くが、前科のあるクライドはカタギでやっていくには辛い身の上であり、何よりも銃を片手に強盗に興じる日々に充実感を得ていた。 そんな時に出会ったボニー。 彼女は退屈な毎日から抜けるため、クライドの危険な日々に惹かれてしまう。 ボニーはホームシックになりながらもクライドを愛し、クライドもそんなボニーを元気づけながら硬い絆を結んでいく。 後半から登場する運転手のC・W・モス、クラウドの兄貴バック、兄貴のヒステリーな妻ブランチ。デコボコな3人が加わり益々騒がしくなる面々。 同時に滅びの足音も静かに聞こえて来る。 直接的な性描写をせずに、キスと事後の所作だけを描いた点が良い。 匂わせるだけで二人が互いを受け入れた事がよく解るのが凄い。 ボニー&クライド一味はワイルドバンチ強盗団の如き八面六臂の大暴れ。 何処に行ってもトラブル続きの毎日。 死を覚悟するような日も稀になってくる。 俺たちは何処で何を間違えたのか。 俺たちに明日はあるのか、ないのか。 ボニーの母親たちとの別れ。もう二度と会えないとも知らずに・・・。 ラストは強烈な光景だが、妙な静けさが画面を包んでいく。 因果応報な幕引きではあるが、世の中に縛られずに好き勝手に生き、好き勝手に死んでいった者たちの無言の哀しさが伝わって来る。 罪を犯してきた二人は、真っ赤なリンゴに祈りをささげる。 一つのリンゴを互いにかじり「あの世に行っても結ばれような」という願掛けか。 車に残ったボニー、外に降りてしまったクライド。 史実では二人っきりで車ごと、映画で離れた瞬間に二人の運命は決してしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-27 21:33:20)(良:2票)
33.  ニュールンベルグ裁判 《ネタバレ》 
スタンリー・クレイマーは「渚にて」や「真昼の決闘(フレッド・ジンネマン)」がダメだったけど、この映画はとても見応えがあって面白かった。  冒頭でナチスのマークを吹き飛ばすシーン!ここからもクレイマーの凸精神?を感じられる。  物語はナチスの首脳陣を裁いた後、残った法律学者やナチスと関わった複数の人間の関与する占領した側と占領された側の法廷“闘争”。連合国にとっての残党狩り、ナチスいやドイツ人にとっての最後の抵抗戦。  アーネスト・ラズロのカメラは短いショットを繋げた映像で法廷特有の緊張感を生み、退屈を感じさせない。 でも、360度パンはちょっとクドいと思った。  同じく密室劇の傑作「十二人の怒れる男」が面白いのも、ボリス・カウフマンのカメラが退屈を感じさせないショットだったからだろう。  ドイツ本来の法を捻じ曲げて国民を苦しめた罪、だがそれを防げず逆に服従を選んだドイツ国民にも罪があるという意見のぶつけ合い。 その理由となる「ホロコースト」の惨状をドイツ国民も、ナチスの人も“心”に焼き付いているからだ。 ホロコーストの映像は人間の眼、耳、そして魂に訴えかける。 それに顔の表情の細かい変化や夕食のジョッキから法廷のハンマーへと繋がる演出、終身刑を言い渡される時に銃声のように響くハンマーが印象的だった。  リチャード・ウィドマークの、マクシミリアン・シェルの、そしてバート・ランカスターの叫び、叫び、叫び。 まるでヒトラーが演説するように時にはオーバーな叫びをあげてまくしたてるシェルの様子は恐怖すら感じさせる。 あっと言う間に過ぎ去っていく時間は3時間という長さを感じなかった。傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 22:10:34)(良:2票)
34.  バルタザールどこへ行く 《ネタバレ》 
「少女ムシェット」以上に残酷な映画だ。 ロバのバルタザールは、美しい野原の光景と共にやって来る。 マリーやジャックに可愛がられたバルタザールは、不幸が重なって別れてしまう。 再会したバルタザールは、美しく成長したマリーに“惚れて”しまう。 だが、同じくマリーに好意を見せる不良のジェラールに“嫉妬”されてしまう。 マリーがジェラールに襲われる場面で、バルタザールは虚ろな瞳で傍観するしかなかった。痛めつけられるバルタザールの無力さ。バルタザールは、黙って見守るしかない我々観客でもある。 マリーは何処に行ってしまったのか。バルタザールの瞳は、彼女の行方を知ってか知らずか、ただただ虚空を見つめるのみ。 とても悲しい映画だが、悲惨さを優しく包み込む美しい原風景には癒される。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 18:41:01)
35.  アラバマ物語 《ネタバレ》 
グレゴリー・ペックの演技がとにかく最高。 ジョン・フランケンハイマーの「I Walk the Line」やラオール・ウォルシュの「艦長ホレーショ」「世界を彼の腕」に並ぶベスト・アクト。  個人的には「拳銃王」や「廃墟の群盗」「無頼の群」「白昼の決闘」のようなアウトロー役も好きだが、ペックはやっぱり冷たいようで本当は根が厚い正義漢が一番。 「ローマの休日」みたいな王女のスキャンダルを書いてやろうと思っていたら、何時の間にかその人柄に惚れて助けたくなってしまった・・・そんな感じこそ俺にとってのペックなんだ。  「大いなる西部」のようないかにも正義感の塊というペックは好かない。   この「アラバマ物語」は、ホームドラマとしても、一つの法廷劇としても見れるこの映画。 前半は弁護士の父親と家族の団欒、父親が扱う事件を巡ってのトラブルなどなど、実にアメリカらしい社会背景が詰まっている。 そして子供たちの小さな冒険譚。 内容はてんこ盛りだが、ストーリー自体は淡々と事を運んでいく。  裁判のシーンは少し長め。 事件の真相を探っていく内に、差別や貧困といった問題も絡んでくる。  最後まで戦い抜いた父親だが、待ち受ける顛末は残酷なものだ。  ただ、ラストでちょっとした奇跡が待っている。  心の暖かい人間ドラマです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-08 19:07:22)(良:1票)
36.  男の顔は履歴書 《ネタバレ》 
これぞ、役者がそこにいるだけで絵になる魂が躍るような映画だ。  加藤泰の、そして俳優としての伊丹十三の「偽大学生」「家族ゲーム」「草迷宮」に並ぶ最高傑作。  戦後の闇市における日本人と朝鮮人の対立を正面から描いた極太の作品。  左頬に刻まれた疵。安藤昇の存在感は黙っていても映える。 一方の伊丹も言葉という極太の“刃”を持って社会に切り込もうとしている。  静と動の鮮やかな対比、そして「何故みんなは黙っていられるだ。誰も動かんなら、俺がやってやらあっ」とタブーにズカズカ踏み込む勇気と危うさ。  それは映画を愛するが故に「誰も撮らんなら、俺が撮ってやらあ」と数々の傑作や問題作を残して謎の死を遂げた十三の未来を暗示するようでゾッとしてしまう。  劇中では戦場の辛い記憶や戦後の混乱、愛する女のための行動などが彼を死に急がせる。 クライマックスにおける怒涛の展開も彼の生き様を物語るようだ。  父親の伊丹万作も、その友人の山中貞雄も志半ばで早逝してしまった。 天は何故素晴らしい人間から命を奪っていくのだろう。 これが神の仕業とでもいうなら、神なんてクソ喰らえだ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-10-23 18:09:34)
37.  サウンド・オブ・ミュージック 《ネタバレ》 
ロバート・ワイズは「罠」といったフィルム・ノワールやSF、戦争映画と傑作・力作揃いだ。 だが、やはりミュージカル映画が最も評価の高いジャンルなのだろう。 この作品は「雨に唄えば」に並ぶミュージカル映画の最高傑作だと思う。  雄大な自然を捉えた美しいキャメラワークと撮影。 誰が撮ったのかと思ったらジョン・ヒューストンの「黄金」やエリア・カザンの「エデンの東」を撮ったテッド・マッコードではないか!道理で雨のシーンや山々の幻想的な映像が際立っているワケだ。   教会で修道女をやるような器では収まらないマリア。 他の修道女はマリアが歌う事を咎めるが・・・ってアンタらも歌っているじゃないか。  送り出されたマリアは絶倫トラップ大佐の元に。 トラップ大佐の家族は腕白な一個正体(5姉弟)。 マリアにとっても、子供たちにとってもヤッた事のない“冒険”のはじまりだ。  マリアは自分に言い聞かせるように歌う。 やがてその歌は子供たちの心も動かしていく。 聞き覚えのある名曲たちが子供たちの、トラップの、そして我々の心を満たしてくれるのだ。  「私は犬ではありません大佐(少佐)」 「さきの奥さんの記憶が辛いのでしょう」 「イキすぎたのよ(子作り)」・・・意味深なセリフの数々。 家政婦が(メッサー)シュミットときたもんだ。 奥さんの死因は絶対トラップ大佐のピスト(ry  まつぼっくりの“あいさつ”、 雨の中のダンスの可憐さ。雨にしっとり濡れた感じが色っぽい。 アシダカ軍曹、お疲れさまっす。 「稲妻に返事をする雷」とはマリアらしい考えだ。  辛い時、泣きたい時は楽しい事を考えてしまおう!  歌で心が通う感動。  伯爵夫人も悪い人じゃない。相性の問題さ。自ら身を引いていく潔さ!  迫るナチスの影、だがマリアたちは諦めない。 「隠れても問題は解決しません。立ち向かうの。自分の道を探すのです」 トラップもまた男。潜水艦の艦長は溺れねえぜ。 垂れかかったナチの旗は破っちまえっ!   終盤におけるナチス将校たちとの緊迫したやり取り。 大佐(少佐)が本当カッコイイ。  ロルフよありがとう。そして生きろよ!  ラストの山々の風景が最高だった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-14 17:30:49)(良:2票)
38.  乱れる 《ネタバレ》 
この映画は「君と別れて」を思い出す。あの映画の水窪澄子のような眼差し、表情をする高峰秀子。二人の男女の距離と目的地への距離を縮めながら進む列車、それを支え道となる橋。 特に終盤、列車で徐々に距離を縮めていくシークエンスはドキドキさせられる。列車は絶えず動き続けるし、止まる駅でも乗客の乗り降りで運動は続く。 最初は他の客がいて弟が立ち続け、次第に背中越しに、やがて向かい合う。姉の横で転寝中のオジサンにヤキモチめいた気持ちを覗かせるのが面白い。 物語は軽トラックがスーパーの宣伝を高らかにする場面から始まる。新しい時代を象徴するスーパーの波、戦後のバラックから店を守り過去の亡霊に魂を繋がれたかのような人間たち。特に義姉のヒロインを演じる高峰秀子は。 義弟の加山雄三も出前のソバを食べても帰れば姉の手料理を食べたくなる。本当に食べたいもの、欲しいものはそれなのだから。 この頃からパチンコや麻雀だけで生計たてちゃう奴がいるのね。それすら出来なくなった人間は家族を残して簡単に首をくくってしまう。 冒頭で何かを心配そうに見つめていた義姉は、そんな義弟が無事に帰って来るのを毎日待ち続けているのだ。ちょっとくたびれた表情も見せる義姉。 義弟はそんな彼女を尻目に毎晩遊んだり警察の世話になっている。 後の若大将も劇中では筋金入りのニートな馬鹿大将。そんな男が、いつしか愛する義姉のため自分なりに働き始める。義弟を動かすのは家族を想う愛だけでなく、元々血の繋がらない“異性”に対する愛も強い。義姉も弟としてでなく、いつしか異性の“男”として心を許すべきかと悩みはじめる。前の夫の面影が、そんな彼女に中々ふんぎりを付けさせてくれない。 わざわざ寺に呼んでおいて「明日」などと言って焦らす。それを言うためだけに待ちつ待たせての寺での会話。 あれだけ焦らしておいて二人きりの旅館では「ああやっぱり」的な。霧の中を走る列車から、あえて時間のかかるバスや宿での宿泊を選んでおいてだ。 でも、その理由は弟が姉の本名ではなく最後まで“姉さん”と呼び続けたからでもあるのだろう。もし弟が姉を名前で呼び、彼女を本当に“女”として受け入れていたのなら・・・そんな事も考えてしまう。 諦める心、最後の電話、失って初めて“愛していた”と思い知らされる後悔。女はようやく愛しはじめた男を探しに駆けていく。身も心も、髪も乱して。
[DVD(邦画)] 9点(2014-10-11 01:52:11)
39.  ラ・ジュテ 《ネタバレ》 
クリス・マルケルによる傑作SF映画。  近未来の廃墟となったパリ。その地下で拘束される男が過去(観客から見た“現在”)と現在(観客から見た“未来”)を時間旅行する物語。 何処かディストピア小説を思わせる構成は、後の「12モンキーズ」にも受け継がれている。  「フォトロマン」と呼ばれる白黒のスチールを連続して映す手法(要は紙芝居(ry)は、後のゴダールや押井守の「紅い眼鏡」など様々な映画に影響を与えたという。  冒頭の空港と女性の記憶、目覚めればそこは戦争で廃墟と化した街。  実験が繰り返され己を失いそうになる主人公。彼は世界を救う救世主となるのか、それとも時の奴隷のまま終わるのか。  別の時代から来て出会う男女が見つめるセコイアの木。 このセコイアの木が「めまい」と「12モンキーズ」を繋げていく。 「12モンキーズ」では劇中の映画の中に「めまい」が出てくる。それぞれに共通する事は、全員脳味噌の中をぐるぐる掻き回されているという事だ。  鳥の膨大な鳴き声と共に目覚める女性・・・あのシーンにはどういう意味があったのだろうか。  博物館の幻想的な雰囲気・・・“凍った太陽とある女”の記憶で締めくくるラストは切ない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 19:35:16)
40.  天使ガブリエルと鵞鳥夫人 《ネタバレ》 
イジー・トルンカによる聖職者が欲望に負け身を破滅させる様を描いた作品。  オープニングのアートアニメーションによる「お盛ん」な始まり方してヤる気満々です。  トルンカのアニメーションは恐ろしく滑らかであり繊細だ。 人形の表情はほとんど変わらない。だが、光の変化や効果的な音楽によって人形はまるで生物のように画面を縦横無尽に動き、観客が受け取る表情は千差万別に変化していく。  しかしトルンカもスゲエよなあ。何せ聖職者を天使の格好にしてまとめて“堕落”させちまうんだから。ガブリエルもとんだとばっちりだ。  股間のモザイク(笑)  聖職者が天使のマネで審判を下していく。 そんな聖職者が豊満なナイスバ(ry ・・・麗しい鵞鳥夫人の虜となる。男は禁欲を捨て、情欲へと奔る。しかし夫人のおっぱいは卑怯だ。もっと驚いたのは見開いた眼は本当に鳥みたいな眼!でも眼を閉じるとやっぱりスゲエ美人。  夜這いのシーンは面白い。 猫が発情する中、羽付けた天使が梯子をイソイソと登るんだもの。 夫人もなんてスケスケのエロい寝巻きでお出迎え。受胎告知(物理)。  美しい音楽が余計に笑いを誘う。  だが、情欲に溺れた天使を“天”は見逃さない。 家政婦は見た。  やがて天使は翼も衣類も捥がれ地の底に墜落する。この辺はヤケにサスペンスフルだ。  “天使”を匿うじいさんが策士&赤ん坊LOVEで憎めない。つうか赤ん坊ww  夫人が“天使”の羽を見てうっとりする中、肝心の“天使”は・・・なんてラストがお気に入りです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 19:33:59)
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