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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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481.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
いくら晩の19時といったって、パリのど真ん中であんなに明るい時分にロープでビルをロッククライミングしたら目撃者が続出でしょ。 というわけで“エレベーターに閉じ込められる”というプロットはあまりに有名で多数のフォロワーを生みましたが、サスペンス・スリラーの視点で観ると本作はあまりにユルユルな映画なんです。社長を自殺に見せかけて射殺するモーリス・ロネの計画も、同時刻に在社していることが社員にばれていてアリバイ工作にもなっていないなんて、犯罪としては雑極まりないところは否めません。というよりも本来は無関係な二組のカップルがひょんなことから接点ができ、それぞれが違う動機で殺人を犯して破滅してゆく過程をマイルス・デイビスの即興演奏がムーディに彩った映画だと言うのが正解でしょう。でもマイルス・デイビスの演奏は鳥肌が立つぐらい映像とシンクロしているし、この手法を考えたルイ・マルの才気には脱帽です。ルイ・マルはジャンヌ・モローの魅力・ポテンシャルを引き出すことにかけては名人で、モローは本作では単純な悪女ではなく最後までモーリス・ロネを追いかける情念の塊みたいな存在で、まさに彼女の本領発揮でした。ロネの車を盗みアホの限りを尽くすバカップルの無軌道ぶりは引いてしまいますが、ラストで同じフィルムから印画紙に焼き付けられる両カップルの画像には、社長夫人と戦争英雄のカップルにしても若いバカップルと同じ穴の狢だったんだよと語っているようでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-19 23:18:32)
482.  価値ある男 《ネタバレ》 
三船敏郎がメキシコ人農夫役で主演して当たり前だけど全編スペイン語で演技している(ネイティブ俳優に吹き替えされていますが)という珍品映画だと言えますが、これが良いドラマに仕上がっていてオスカーとゴールデングローブ賞の外国映画賞にノミネートされたというから凄いです。 三船敏郎の役どころはメキシコのド田舎の農夫、という風に見えますが実質家業は奥さんと子供がメインで、亭主は飲んだくれのバクチ依存症のダメ親父です。それがね~不思議なんですが三船がもうメキシコの田舎者にしか見えないんです、違和感が全然ないんです。これはマジで『黒い罠』のチャールトン・ヘストンなんか目じゃないです。この一家が住む村では年に一度のお祭りが盛大でみんなの楽しみ。その祭りでは司祭が “マヨルドーノ”というエグゼクティブプロデューサーみたいな男を一人任命します。マヨルドーノには祭りにかかる費用一切を自腹斬る責任を背負いますが、村人から“価値ある男”として尊敬される存在になれるのです。本邦で言えば神社のお祭りの氏子総代みたいなもんですかね。でも当たり前ですが財力がないといくら普段から信頼される人物でも務まりません。ダメ男で貧乏な三船には縁遠い話しののですが、なぜかマヨルドーノになることしか人生の意義を見出せないので、真面目に働くのではなく闘鶏などのバクチで一攫千金を狙って奮闘するのです。三船の演技はけっこうコミカルで、彼は考えてみれば器用な役者だったなと再認識させられました。このダメ男が大金を稼ぐのはバクチしかないと観てる方も判っているのでどっかで大勝するんだろうと思っていてもずっと負け続け、そしたら終盤で思いもよらないバクチじゃない幸運(?)で大金をゲットして宿願のマヨルドーノに指名されることができました。 三船の演技が冴えわたるのは祭りの当日のシークエンスで、晴れの舞台で行事の先頭に立っているのに村人たちはマヨルドーノを完全に無視。苦悩する三船ですが、友人から「この状況で自分を見つめ直せ」と忠告されても結局村人たちの真意というか自己の至らなさに思いが向くことはありませんでした。そして妻がとった思わぬ行動が、このダメ男の人生を変えることになるのです。 三船の女房も亭主に苦しめられててもやはり愛していて、子供には厳しいのに亭主を甘やかしてしまって結局ダメにする存在で、10歳ぐらいの息子だけが父親を冷めた眼で見ているところがリアルな家族関係でした。やはりこの作品が評価されたのは三船敏郎という国際スターをオファーできた監督の熱量によるところが、大きいでしょう。三船もその熱意に応えて、日本での配給権を貰う代わりに出演料はゼロ、つまり実質的にノー・ギャラだったということらしいです。でも日本ではほとんど上映されずカルト化してしまったのは、残念なことでした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-05-16 23:53:57)
483.  トップガン 《ネタバレ》 
本年はいよいよ『トップガン マーヴェリック』が満を持して公開されます。トム・クルーズは今ではイーサン・ハントがパブリック・イメージですが、『ミッション・インポッシブル』シリーズが始まるまでは永らく“マーヴェリック”が彼の代名詞だったのが懐かしいですね。 本作の主役というとトム・クルーズなのかF-14トムキャットなのかちょっと悩みますが、まあ「両方です」ということにしとけば間違いないでしょう。そのトムキャットも米海軍を退役してすでに15年余りにもなり、現在運用しているのは米国の天敵イランだけだというのは皮肉な現実です。新作では使用機材はF/A-18スーパー・ホーネットになりますから、トムキャットがブンブン飛び回る映像は今となっては貴重です。見ればご理解いただけるように、トムキャットはとにかくデカい戦闘機です。そしてフェニックスという高性能ミサイルを搭載しているのでトムキャットは遠距離戦というかアビオニクス性能の優位が強みで、それなのにトップガンでドッグ・ファイトの技術を教育するとは米海軍は基本に忠実というか保守的なんですね。 これだけ存在感があるトムキャットにどうしても眼が奪われがちなのに、それに負けないオーラを放っていた若き日のトム・クルーズはやはり大スターになる片鱗を見せていたんじゃないでしょうか。あとこの映画の特長は、トムキャット以外の陸の乗り物アイテムがまた印象に残っているんですよね。トムが地上で愛用するカワサキGPZ900Rやケリー・マクギリスの愛車ポルシェ356は本作のアイコンの一つでもあります。マジック・アワーのサンディエゴのパームの並木道をカワサキGPZ900Rで疾走するトムのカットは、自分が本作を思い返すときに真っ先に浮かぶイメージになっています。“Take My Breath Away”や “Danger Zone”なんて当時のMTVでどんだけ聞かされたことか、これも懐かしい思い出です。 そういえば今回観直してマーヴェリックの三代目後席レーダー員がティム・ロビンスであることに気が付きました。ラストの空戦シークエンスでちょこっと登場するだけですが、空母甲板に立つとその異様な高身長が目立ちます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-16 23:50:34)
484.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
バーバラ・スタンウィックと言えば今じゃすっかり忘れられた女優ですが、本作の悪女フィリスはこれだけしかないという彼女の代表作、あの独特のヘアスタイルは今でも悪女のアイコン的な存在であります。ハロプロ有名グループの某アイドルがこのフィリスとよく似たヘアスタイル(しかも金髪)だったことが懐かしく思い出されます、そういやこのアイドルもけっこう強気なキャラでしたね。 ジェームズ・M・ケインの原作をレイモンド・チャンドラーが脚色してビリー・ワイルダーが監督したのですから、そりゃ傑作にならないわけがないじゃないですか。でもチャンドラーとワイルダーは撮影中は険悪な関係だったみたいで、『見知らぬ乗客』でもヒッチコックと揉めているし、このレイモンド・チャンドラーという偉大な作家は人づきあいが上手くなかったみたいです。 “フィルム・ノワール”には色んな定義がありますが、本作は間違いなくその最初期に位置していることは間違いないでしょう。そしてたぶん本作がワイルダー唯一のフィルム・ノワールなんでしょうけど、要はこの人どんなジャンルでも手を出せば軽々と傑作にしちゃうし、やっぱ天才なんでしょうね。この時代は、優れた脚本を書ける映画作家が存分に腕をふるえる黄金時代だったと思います。 ストーリーテリングはフレッド・マクマレイが冒頭からヴォイス・レコーダーに事件を順繰りに語るというオーソドックスなものですが、それがナレーションにもなるというハードボイルド小説の定石みたいなテクニック、ここら辺にチャンドラーの爪痕があるのかもしれません。その単調になりがちなスタイルをぐいぐいと引っ張るのがやはりエド―ワード・G・ロビンソンの力量なんでしょうね。ただ一つ残念だったのは、フィリスが最後に二発目を撃てなかったうえにそこで(多少)改心したような展開になったところでしょう。なんか中途半端でとことんサイコパスみたいなキャラを通して欲しかったところですが、時代を考えるとヘイズ・コードが猛威を振るっていた頃ですからしょうがないかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-16 20:56:35)
485.  エクステ 《ネタバレ》 
冒頭での栗山千明登場シーン、延々と状況セリフを呟きながらの自転車通勤はまるで大林宣彦映画を観てるような錯覚を覚えます。この映画をどうとらえるかは人によって違いがあるでしょうけど、私には別に大して怖くはないけどとても不快というのが正直な感想です。園子温は怖がらせるより観客を不快にさせる方が得意というか芸風なんですよね。たしかに髪の毛が人の色んな穴から生えてくるシーンはぞわぞわさせられる悍ましさがありますが、つぐみ演じるクソ女が幼児虐待に血道をあげるところが溜まらなく不愉快でした。自分は映画で幼児虐待が出てくるともう観るのを止めたくなるぐらい嫌で、佐藤未来がけなげな口調でクソ女に謝るシーンはもう涙が出そうでした。考えてみれば大杉漣のド変態オヤジも相当なレベルで、彼は気持ち悪いキャラをコミカルに演じさせたらピカイチだったんですよね。園子温の映画はたいていどこかでタガが外れて辻褄が合わなくなる傾向を持っていますが、栗山千明のストーリーと大杉漣のストーリーが無関係なところから徐々に交差してゆく語り口は園子温らしくなく丁寧だったかなと思います。それでもラストの大杉漣の最期は子温節が全開で、自分はこういうのは好きだけど、これを見せられて怒っちゃう人も多いんだろうな。 考えてみれば、あくまで冒頭の展開だけですけどプロットは『ジェーン・ドウの解剖』に通じるものがあるんですよね。でも監督が違うと月とスッポンぐらい違う映画になっちゃうところは面白いです。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-05-13 21:56:16)
486.  ダイナマイトどんどん 《ネタバレ》 
野球映画というジャンルが不毛の地である邦画界ではありますが、この映画はチャーリー・シーンの『メジャーリーグ』に匹敵する快作じゃないでしょうか。とは言っても、これは野球映画と呼んでいいのかはちょっと首を傾げるところですがね(笑)。中谷一郎や岸田森といった岡本喜八組の常連が再集結しているだけでなく『独立愚連隊西へ』以来のフランキー堺まで顔を見せてくれるのは嬉しいところです。「チッキショー」でおなじみの佐藤允が出ていなかったのはちょっと残念でしたけど。おまけに菅原文太と北大路欣也という東映実録シリーズの巨星が主演とくれば、ますます野球というよりもヤクザ映画って感じです。文太はお馴染みの広島弁ではなく小倉弁でセリフを捲し立てるわけですがこれが実に様になっていまして、彼ほど西国訛りが似合う俳優はいないんじゃないでしょうか(本人は東北出身ですけどね)。気になったのが岡源組の留吉役の俳優で、巨人の左投手で現コーチの宮本和知にそっくりで最初は本人かと思いましたよ。実はこの人は松竹新喜劇がホームの小島秀哉という方だということを後に知りましたが、今回再見してもやはり似てますよ、賛同してくれる人いますかね? というわけで野球+ヤクザ映画なのかは確かですが、任侠映画の強烈なパロディであることは間違いないです。クライマックスの決勝戦にまで持ち込んでゆくエネルギッシュな撮り方は痛快そのもの、とくにラストの大乱闘のカオスぶりはまさに岡本喜八の本領発揮としか言いようがない痛快さでした。ストーリーテリングとしてもふつうは嘉助と銀次は途中で何らかの和解が成立して友情を育むというのが定番ですが、ほぼ最後の一球までずっといがみ合い続けるという展開が面白かったです。北大路欣也のキャラも三振とる以外は打者にぶつけるだけ(それも頭!)、一つ間違えば殺人マシーンになりかねないシャレにならない男です。でももちろんカット割りしますけど欣也の投球フォームはなかなかのカッコよさで、この人野球選手経験があるんじゃないかと思いました。 まあ一つ言えることは、頭をカラッポにして愉しめる映画だということですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-04 23:08:53)
487.  眠狂四郎 多情剣 《ネタバレ》 
『女妖剣』に続いて、またもや将軍家の問題児・菊姫が登場でございます。今回は狂四郎への復讐に狂った完全なる主敵キャラとして再来です。そういや、あの越前屋徳右衛門=稲葉義男はどうしちゃったんでしょうかね、絶対シリーズでの狂四郎の宿敵的存在になると自分は踏んでいたんですがねえ。本作では音楽担当は何故か伊福部昭大先生なんですよ、緊迫したシーンの背景に低く流れる音色はまさしく東宝特撮、ていうか大先生これって使い回しじゃないでしょうか(笑)。監督はシリーズ初の井上昭です、ロング・ショットが効果的に使われていてこの人がこんなに映像派だったとは意外でした。ストーリーではけっこう登場人物は多いけど中谷一郎の正体を含めてすべてのキャラが一点に集中してゆく展開、狂四郎よ、お前の周りは敵ばかりかよ。今回のゲストスターはいちおう中谷一郎ということになるでしょうが、本家・円月殺法に自己流・円月殺法で挑むも秒殺されるというのはちょっと斬新でした。個人的にはシリーズ中でも脂がのった時期でもありけっこう愉しめたかなってのが感想です、脚本上の細かい繋がりはちょっと破綻気味でしたけどね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-05-01 22:24:08)
488.  女優霊(1996)
なるほどこれが中田秀夫の監督デビュー作なんですね。尺も短く低予算を逆手にとってほぼ撮影所内限定という舞台設定も良いアイデアです。主人公も初めて劇映画を撮る新人監督というわが身を置き換えたようなキャラ設定ですが、そこに柳“ユーレイ”を起用するというダジャレというか出落ち感があって面白い。撮影現場も古き時代の職人気質の現場という感じが良く出ているし、大杉漣を始めとするスタッフたちの自然な演技がまたリアル、ホラー的な要素を別にしてもこういう基本的な演出がキチっとできたというところにも、中田秀夫は並みのルーキーじゃなかったことが判ります。ホラー度は、まあ『リング』以前としてはかなりのレベルなんじゃないでしょうか。主演した女優が事故死したことでお蔵入りになって放映されなかったドラマ、その一般人が観てないはずの映像を主人公が記憶しているという不条理、やはりホラーの神髄は不条理にあるのですよ。 余談:脚本の高橋洋によると、この主人公が小3のときに観てあまりの怖さにTVが嫌いになった番組の元ネタは、あの有名な『シェラ・デ・コブレの幽霊』なんだそうです。かつて日曜洋画劇場で一度だけ放映された幻のホラー、私も放映された予告編を観ただけ震え上がってしまい、もちろん本編放送は観れませんでした。公開時に街頭に貼られた『恐怖の足跡』のポスターを見たことと『シェラ・デ・コブレの幽霊(の予告編)』は、私の生涯の二大トラウマ・ホラーです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-04-30 00:11:30)
489.  REDリターンズ 《ネタバレ》 
同じアメコミ原作物でも『キックアス』の続編が妙に真面目になっていて正直つまらなかったので全然期待しないで観たんですが、どうして、このキレキレぶりは自分としては前作を凌ぐ面白さだったと思います。劇中にいろいろな過去作のセンスの良いパロディが盛り込まれているところもツボで、カーチェイスのシーンでのジェイソン・ボーン・シリーズのパロディにはニヤリとしてしまいました。嬉しいのは前作を凌ぐヘレン・ミレンのはっちゃけぶりで、彼女この映画の中でまったく笑顔を見せないポーカーフェイスで押し通しているのに痛烈なコメディ演技が成立しているところがまた凄い。まるでバスター・キートンみたい、さすが英国が誇る大女優です。またそれに負けないのがマルコビッチの怪演ぶりで、もうこうなるとブルース・ウィリスの影が薄いですね。アンソニー・ホプキンスも、あの当たり役をの高度にパロった様なキャラを嬉々として演じているのがまた愉しいところです。 こうなると次作も期待してしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-04-29 23:17:37)(良:1票)
490.  マッカーサー 《ネタバレ》 
第二次世界大戦における有名な米国の陸軍将軍を三名あげると、それはアイゼンハワー・パットン・マッカーサーとなることは間違いないでしょう。アイゼンハワーは軍人としての能力よりも政治力・外交力が秀でていて、パットンはその正反対で根っからの実戦型ファイターで政治力はゼロ、この二人の特性を兼ね備えていたのがマッカーサーということになるでしょう。ある意味この三人中でもっとも複雑な人間性を持ちドラマチックな人生で映画の素材としては申し分ないのですが、凡庸な脚本のおかげで退屈超大作となってしまいました。ジェリー・ゴールドスミスを起用したりして『パットン大戦車軍団』を意識しているのは明瞭ですけどその出来は比べ物にはならないレベル、そりゃ『パットン』の脚本はフランシス・フォード・コッポラの傑作ですから分が悪いですね。演じるグレゴリー・ペックはジョージ・C・スコットのパットンほどではないにせよそれなりに雰囲気は出ていました。ペックは尊大で傲慢な人物を演じさせたら間違いはない俳優だったと感じます。ストーリーテリングはマッカーサーの言動をただなぞっただけで、映画としての見せ場は乏しかったと思います。原爆投下で日本が降伏したので日本進攻作戦がなくなり「原爆は悪魔の兵器だ、使う必要なかった」と毒づいたのに朝鮮戦争では「満州に原爆50発落とさせろ」と主張したり、フィリピン時代は人種偏見が(アメリカ人としては)ないように見えたのに“I shall return”のためにはフィリピン民間人がどれだけ死のうが意に介さなかったり、ボンヤリ観ていると矛盾した言動ばかりでさっぱり人物像が伝わってこないでしょう。そりゃあ「俺は戦争が死ぬほど好きだ」の単純なパットンの方が理解させ易いでしょうが、マッカーサーのより複雑な人格に斬りこめないのだったら映画化した意味はないです。 米国は伝統的に功績のあった軍人や大統領の名前を軍艦名や兵器の愛称に使いますが、アイゼンハワー(原子力空母)パットン(戦車)と違って未だにマッカーサーの名は使われていません。ここら辺に米国政界や軍の彼に対するある意味冷ややかな評価が垣間見れるのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2020-04-27 21:09:25)
491.  マックィーンの絶対の危機(ピンチ) 《ネタバレ》 
タイトル・ロールでもちろん主役はスティーヴ・マックイーンだが、“Steven”マックイーンとなっていてアレっと感じますが、“Steven”が本名なんだそうです、まあどうでも良いことですけど。それより驚かされるのはそこで流れるキューバン・スタイル(?)の妙にノリノリの主題歌で(実はバート・バカラックが作ったという説あり)、まるでエルヴィス・プレスリーの映画を観ているような気にさせられます。マックイーン当時28歳で初主演、でも役柄は高校生で友人の級友たちと大活躍(?)するという内容なのでまあ製作者としては青春映画のノリだったのかもしれません。いちおうパラマウントというメジャーが関わっていますが配給関係だけだったみたい、プロデューサーのジャック・H・ハリスは典型的なB級映画屋だったからドライブインシアターなんかで上映するために製作されたのかな。おまけに低予算ですから手を抜けるところは徹底していて、肝心の人喰いアメーバがお食事するところやダイナーが炎上するシーンはどこにもなし、最初観たときは放映時にカットされたのかと思いましたよ。最後のオチも「えっ、ほんとにそれでいいの?」と愕然でしたが、ラストの“?”マークはまさか製作側の自虐ネタなのかもしれませんね。けっきょくこのお話しは一晩の出来事だったわけで、映画史上もっとも短時間で撃退されたモンスターという称号が与えられるんじゃないでしょうか。 ちなみにラストが“?”マークで終わる映画を他にも観た記憶があって「なんだったかな~」と頭をひねったら、思い出しました、ピーター・イエーツの『大列車強盗団』でした。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-04-24 17:20:12)
492.  見知らぬ乗客 《ネタバレ》 
ヒッチコック映画の殺人シーンと言えば『サイコ』のジャネット・リー刺殺がもっとも有名だけど、実は彼のフィルモグラフィ中で刺激的で登場回数が多い殺人手段は絞殺ではないかと思います。やはりファーリー・グレンジャーが出演した『ロープ』は絞殺がファースト・カットだったし、『ダイヤルⅯを廻せ!』でのグレース・ケリーが絞殺されかけるシーンのねちっこさは官能的ですらある。そりゃ極めつけは『フレンジー』ですが、ここまで来るとヒッチコックの変態性がもうバレバレです。本作でもブルーノがミリアムやカニンガム夫人の首を絞めるときの表情や演出には時代を感じさせない凄みがあるし、個人的にはノーマン・ベイツよりブルーノ・アントニーの方がよっぽど怖い。演じたロバート・ウォーカーは実生活でも酒乱で奇行がひどかったそうで、撮影終了直後にそれが原因で急死しているという事実もまたゾッとさせられます。プロット自体はヒッチコックお得意の“巻き込まれもの”であるけどそこに“交換殺人”というこれまた推理小説のテーマとしてはありふれた要素をぶち込んでいるのに飽きさせない見せ方、凡庸だったパトリシア・ハイスミスの原作を見事に再生しています。偶然入手したガイのライターを殺害現場に残しておくのが普通ですが、交換殺人のつもりだからガイが疑われてしまっては意味がないので持ち帰ってしまうブルーノ。ところが思惑が外れて今度はガイを逮捕させるために現場に戻ってライターを置きに行くのに大変な苦労をしてけっきょく破滅する、なんとも見事なストーリーテリングであります。映像的にも有名なテニス場観客席のシーンやワシントンで豆粒のような遠景でガイを見つめるところなど、ブルーノの異常性が強調される絵造りが上手い、やはりブルーノ・アントニーはヒッチコックが産み出したキャラでもトップクラスのサイコ野郎です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-04-21 18:17:57)
493.  第十七捕虜収容所 《ネタバレ》 
舞台劇の映画化ではありますが、「今まで捕虜収容所が舞台の映画なんて撮られたことがなかった」という冒頭のナレーションの通り、本作がハリウッドで戦後初めて製作された捕虜収容所映画みたいです。捕虜収容所ものというと普通は“脱走”がテーマですが、この映画は“スパイ・裏切り者”がコンセプトということになります。どちらかというと陰湿になりがちですが、そこを思いっきりコメディ仕立てにしてるのがビリー・ワイルダーらしいところです。この映画ではキャスティングなどに小ネタを仕込んでいて、収容所長にドイツ系だけどユダヤ人である映画監督オットー・プレミンジャーを引っ張て来ています。この人は名匠ですけどその現場でのパワハラ親父ぶりは鬼レベルで、キャスト・スタッフから恐れられていました。いわばセルフ・パロディみたいなキャラなんですが、彼に「どういう風に演技したらいいんだ?」と尋ねられたワイルダーは「あなたが撮影現場でやってる通りでいいんですよ」と答えたそうです(笑)。所長の出番は意外と少なかったですが、けっきょく尊大ではあるけどどこか愛嬌も感じられるキャラで、ちょっと拍子抜けでしたが。他にも元俳優でハリウッド・スターの物まねが得意という捕虜もいましたが、この物まねは当時の観客にはウケたんでしょうね。ウィリアム・ホールデンの商売熱心な捕虜役は彼の生涯の当たり役みたいな感じで、後の『戦場にかける橋』でも本作を彷彿させるような捕虜キャラを演じていました。ちょっと不満だったのは誰がスパイかのネタ晴らしが少し早い感じがするところで、これは原作舞台劇があるのでしょうがなかったかもしれません。できればもっと引っ張って『情婦』みたいなどんでん返しのような展開もアリだったかなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-04-18 20:22:39)(良:1票)
494.  アンドロメダ・・・ 《ネタバレ》 
みな様ご存じ、最新科学的知見を取り入れたハッタリを書かせたらピカイチのマイケル・クライトンですが、彼のフィクションは映像化するのには意外とハードルが高いところがあります。本作で言えば、ニューメキシコのド田舎の住民を全滅させた宇宙から衛星が持ち込んだものが何なのか、という謎を純科学的に解明してゆくプロセスを映像として再現するところでしょうね。そこはベテランのロバート・ワイズですから、地下深くに構築された研究施設のディテールに徹底的にこだわった演出でストーリーテリングして成功しています。当時では最先端のコンピュータシステムの画面なんかは今の眼で観ちゃうと微笑ましい限りの代物ですが、執拗に描かれる殺菌プロセスなんかは現代でも通じる絵作りだと思います。このストーリーで地味だが斬新なところは、人々に死をもたらしたものが細菌でもウィルスでもなくアミノ酸を持たない地球上では考えられない生命体だったというところで、「微生物やウィルスのようなサイズや構造の知的生命体が地球外に存在するかもしれない」というセリフには目から鱗という感じでした。 この映画では結局匂わすだけで終わった感じでしたが、衛星を打ち上げて回収する“スクープ計画”なるもの自体がなんとも怪しげです。宇宙から細菌や微生物を採取してBC兵器を開発するのが目的だったと暗示しているようですが、まあフィクションですから目くじら立てることはないですけど荒唐無稽ではあります。でも製作時期を考えると“コロナ・ウイルスBC兵器説”に代表されるような陰謀論の元ネタなのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-04-15 22:13:29)(良:1票)
495.  さらば愛しき女よ 《ネタバレ》 
ハンフリー・ボガード、エリオット・グールド、ロバート・ミッチャム、フィリップ・マーロウを演じた代表的な三人ですけど、個人的にはロバート・ミッチャムがいちばんイメージに合っている感じがします(原作読んだことないけどね)。ナレーションを多用していることには賛否両論がありますが、レイモンド・チャンドラーはヘミングウェイと並ぶ独特な文体なんだそうで、これで正解なんじゃないでしょうか。それにしても架空の人物とはいえこの三俳優のマーロウはそれぞれ独特で、とても同じキャラだとは思えませんね。 ミッチャム版マーロウの特徴は、とにかく疲労感と厭世観に満ちているところでしょう。「探偵止めて違う人生送りたい」とまで取れるようなセリフまであり、カッコよいヒーローからはほど遠いくたびれた中年大男という風情がイイんです。殴り返しはしましたが、娼館の女将のこれまた大女に凄まじいビンタを喰らうところが笑わせてくれます。この時のミッチャムの表情が絶妙なんですが、意外とあれは素のリアクションだったのかも。そしてシャーロット・ランプリング、ストーリー中盤からの登場ですが出てきた途端にオチが判ってしまうその存在感、やはり彼女の起用はボガード版のローレン・バコールのオマージュなんじゃないでしょうか。そういやシルベスター・スタローンも娼館のボディーガード役で顔を出してましたね。けっこうアクションもあるのにセリフは一言もなし、というのは彼の当時の立ち位置から考えると妥当な扱いだったのでしょう。彼は翌年には『ロッキー』でハリウッドで天下を獲るのですが、本作で同じく用心棒役で出ていたジョー・スピネルを『ロッキー』でも起用しているところは、いかにもスタローンらしいイイ話です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-04-12 21:29:14)(良:1票)
496.  世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す 《ネタバレ》 
いきなり主人公の科学者カップルが車を運転しながらイチャつきますが、この手の50年代ハリウッドSF映画のとはちょと設定が違って二人は前日に結婚したばかりのアツアツ・カップルでこれはナンパでも不倫でもないのでご安心を(笑)。このお熱い車にいきなり空飛ぶ円盤が急接近してきて「おおっ」とさせられます。ハリーハウゼンお得意のコマ撮りUFOですけど、ちょっとカクカクした動きはなんか味があります。この映画のエイリアンはバリアを張ったりロボットみたいなスーツを着用したりで時代的には進んだ映画表現かなと思いますけど、チラッと見せるエイリアン本体はちょっと前に話題になったあのインチキ・エイリアン解剖フィルムのエイリアンとそっくり、というか本作のエイリアンこそが元ネタなんでしょうね。 ストーリー自体はお約束の好戦的な“アメリカ万歳!”なわけで、特に語るような要素はありません。戦闘シークエンスでは実写フィルムが多用されていますが、編集は雑です。UFO迎撃にB29が出動してきますが、時期的にはとっくに退役してるけどまだ州空軍あたりにはストックされていたかもしれません。ところが次の撃墜されるシーンになるとB17に変わっちゃってます、それも大戦中に撮影された有名な映像です。ジョージ・パルがオール特撮で『宇宙戦争』を何年も前に世に出しているというのにこの体たらく、ハリーハウゼン特撮の無駄遣いと言いたくもなります。こういう志の低い製作者が駄作を量産してくれたおかげで、ハリウッドのSF映画の進歩が停滞してしまったのは残念なことです。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-04-09 20:04:16)
497.  プレデターズ(2010) 《ネタバレ》 
そんなに数をこなしたわけではないけれど、今まで観たプレデター派生作品の中では、いちばん観れたという感じがします。 それまでシュワちゃんやらダニー・グローヴァ―といった人間離れしたキャラが主人公だったところに、優男キャラ専門かと思っていたエイドリアン・ブロディを引っ張ってきたのが最大のサプライズかな。それでもハードボイルドなキャラはそれなりに嵌っていたし、なにより、役作りで鍛えたんでしょうけど筋肉ムキムキの上半身は驚きました。他の七人の猛者はそれぞれが王道のキャラ付けなのですが、やはり登場するなり靴をぬいで裸足になったヤクザ・ハンゾーがインプレッションが強いですよね。途中で都合よく日本刀を見つけてプレデターと真剣決闘をするところなんか侍と極道を混同してるんじゃないかとお叱りも受けていますが、ロバート・ロドリゲスがプロデューサーですからこれは確信犯だとお見受けします。考えてみればこの映画に登場するプレデターの数はは人間より少なかったような気がしますし、『プレデターズ』とは実は登場する八人の人類のことだったんじゃないかと思います。 何のために出演したのか意味不明のローレンス・フィッシュバーンや、プレデターと話をつけて宇宙船を操縦させて脱出(しかも大失敗)というトンデモな作戦などツッコミどころも当然あります。でも脱出作戦はすべて水泡に帰して状況は絶望的なのに前向きなセリフで閉めるブロディには、なんかカッコよさを感じてしまった自分でした。あの二人には、フィッシュバーンがうちた立てた前人未到の10シーズン・サバイブの記録を破ることを期待します。 どうしても気になるところ:フィッシュバーンがブロディたちを殺そうとしたのは、食料として活用するのが本当の目的だったのでは…肉なんてハリネズミ風猟犬ぐらいしか見当たらない土地なのに、あんなに肉付きが良いガタイなのはヘンだ(恐)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-04-07 02:12:15)(良:1票)
498.  地球へ2千万マイル 《ネタバレ》 
ハリーハウゼン御大が生み出したモンスターの中でも最も怪獣・特撮ファンから愛されているのが、この映画の主役・金星竜イーマだろうと思います。たしか自分が子供のころには“イミール”という表記だった記憶もあります。頭部を除く上半身は生物学的には人類というか猿人に近い構造を持ちながら異様に長い尻尾を持ち、半魚人よりもさらに魚類に近い顔つきのまるで神話世界の創造物といった感じです。まさにハリーハウゼンのイマジネーションが産み出した傑作造形なわけですが、これが金星に生息する生物で押し通しちゃうところはご愛敬です。変な卵から孵化したと思ったらどんどん成長して巨大化してゆくイーマ君、初期のころは怪異な容貌ながらも実は温厚そうな性質なのに地球の生き物と人間から虐められてどんどん性格が悪くなる感じが上手く表現されています。やはりラストのゾウとイーマ君のガチンコ勝負は、これがコマ撮り撮影とは信じられないまさにハリーハウゼンの匠の成せる技と言えるでしょう。ただ、ちょっとゾウのサイズが大きすぎるように感じるところもありましたが。 と褒めてきましたが、イーマ君以外の特撮とドラマ部分はもうメロメロです。ハリーハウゼン特撮は生物以外の円盤やロケットなどもすべてコマ撮りで表現するのが特徴ですが、これが生物の様には上手く表現できないのが欠点なのです。本作でも冒頭の金星探査船墜落のシークエンスでは、ちょっと粗が目立ちすぎでした。そして、これはハリーハウゼンには責任ないのですが、ストーリーがあまりに酷い。いくらアメリカが超大国だった時代といっても、世界に内密に宇宙船を建造して金星探検だなんて、そんなことあり得るか!強いドルにモノを言わせてイタリアでロケというのは判りますが、あまりにイタリア人をバカにした設定は酷いと思いますよ。イーマ君が地球で誕生してしまったのは一人の悪ガキのせいということになりますが、せめてガメラ・シリーズみたいに最後までストーリーに絡ませて汚名挽回させても良かったんじゃない?また50年代ハリウッド怪獣映画の約束の主人公(大抵は科学者か軍人)がひたすらヒロインのナンパに励むというパターンを本作も踏襲していますが、それすらも中途半端な取ってつけたようなストーリーテリングとは、処置なしです。監督しているのが『妖怪巨大女』のネイザン・ジュランだから、まあしょうがないか(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-04-06 22:58:15)
499.  眠狂四郎 魔性剣 《ネタバレ》 
シリーズ六作目ではあるが、これは今まで観た中ではもっともツッコミどころが満載の問題作でした。唐突に「私を一晩買ってください」と夜鷹の様に迫った女が武家の出と見破られて狂四郎からニヒルなセリフを浴びせられて自害する。この手の捨て台詞は今まで散々女たちに吐いてきた狂四郎でも、さすがにその言葉で死に追いやるとビビっちゃうんでしょうか、あんがい普通の人間じゃんどこがニヒルなんだよ!そこから岩代藩の世継ぎの少年に出会うまでが怒涛のというか超ご都合主義の脚本には失笑させられます。ご都合主義と言えば嵯峨三智子と仲間たちが繰り出す狂四郎抹殺作戦のデタラメぶりで、毒蛇に提灯爆弾そして尼の色仕掛けと笑わせていただきました。どれも狂四郎にはハナからお見通しだったわけですが、「喰える女はとりあえずいただく」という本性には狂四郎も逆らえないみたいです(笑)。本作から円月殺法を披露するシーンでは刀の残像を見せる演出が始まったみたいですが、太陽の光を反射させて相手の眼を眩ますのが奥義としか思えないのはどうしたことだ。まあ円月殺法はウルトラマンのスペシューム光線みたいなものだと納得するしかないですね。やたらと流血シーンがあったりチラッとですが女優の全裸カットがあったりというアダルト指向を感じさせてくれますが、まるで同じ大映のガメラ・シリーズみたいに少年というか子供を前面に出したストーリーテリングはチグハグの極みです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2020-04-03 23:46:17)(笑:1票)
500.  教祖誕生 《ネタバレ》 
監督は北野組の助監督だった人だから、絵面というかストーリーテリングはほぼ北野武映画風味で、たけしが監督していると言っても通るぐらいです。原作小説も書いているたけしは脇に回っていますが、これがまた飄々としたいい演技なんだな。萩原聖人に接するときの肩の力が抜けた温和な男と、玉置浩二とやりあってボコボコにしちゃうヤクザ風味がアンビバレントであるけど頗るリアルです。でもあのたけしお得意のヤクザ・キックって、畳の上で靴を履かないでやったら足の指が折れちゃうんじゃないかな(笑)。このストーリーの今から考えると凄いところは、製作されたのがオウム真理教事件の起こる前、やたらマスコミが宗教団体をアンタッチャブル視というかビビっていた時代だったということでしょう。宗教ビジネスの基本というか本質を判りやすい視点で説くたけしの視点はさすがです。この映画を観て考えさせられたのは、神がいるかいないかは別にして(たぶんいないでしょう)、神と教祖だけでは単なる危ない奴の妄想でしかなく、信者がいてその人たちが団体を形成した時点ではじめて宗教が成立するんだなということです。その団体の運営者が有能であればその宗教は広まるわけで、教祖の手腕は関係ないというわけです。キリスト教がまさにこのパターンの宗教で、この映画の宗教団体に当てはめると萩原聖人はイエスでたけしはパウロという感じですかね。イスラム教は教祖が有能で、自分で教団まで作っちゃったというパターンですね。 映画は五年後たけしがクビにした初代教祖とふたりでまたインチキ宗教を始めているというのがオチですが、萩原聖人が教祖になった方の教団の五年後も見てみたい、岸部一徳が牛耳っているのか覚醒した萩原聖人がヤバい存在になっているのか、どっちなんでしょうかね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-03-31 22:16:33)
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