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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

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41.  愛のレッスン
終わってみればある夫婦のドタバタとした恋愛事情を描いたコメディなんだけど、それぞれの愛人やら家族やら、はたまたそれぞれの過去への回想シーンが入り乱れ、最初の数分は何が何やらといった感じなのだが、わかってくるとこれが楽しい。とりわけ夫婦のなれ初めシーンの可笑しいこと。ヒロイン、エヴァ・ダールベックが実にイキイキと輝いていて、このなれ初めシーンは回想なのでちょっと若作りしてるんだけど、それがもう可愛いし、ぶっ飛んでるしで、それまでの倦怠感満々のシリアスな雰囲気が嘘みたいに晴れ晴れして夫婦の気持ちと同じように映画がパッと明るくなる。ベルイマンといえば神の沈黙やら不在やらをテーマにした60年代以降の映画群こそがベルイマンという印象があるが、私は男と女をテーマにした50年代映画群が大好き。『夏の遊び』とか『不良少女モニカ』とか『歓喜に向かって』とか。その中ではあきらかに興行重視の、いわばベルイマンらしくない作品になるかと思うが、男と女がそれぞれの立場でそれぞれの言い分があり、それぞれの事情があることをこんなにも楽しく見せてしまうってのはやっぱり凄いことなんじゃないかと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-18 14:47:17)
42.  花咲ける騎士道(1952)
もっともっとナンセンスなものを想像してはいたんだけど、コメディとしての筋がしっかりしているのでじゅうぶん楽しめました。主人公に死刑を宣告したルイ15世に刑の失効を嘆願する女。それは出来ぬと却下されてしまうコメディらしからぬ展開から二転三転するシナリオの巧さが目を見張る。とくに後半のテンポの良さは素晴らしい。大筋でも冒頭の占いがたんなる騒動の切欠に終わらず、ラストシーンにうまく繋げている。王をひっぱたいてしまい、それを聞いたポンパドール夫人が喜ぶってのも楽しい。駅馬車シーンは他のシーンから浮くくらい見応えあり。その前の修道院でのチャンバラもなかなかのもの。大団円はお決まりとは言え、えらい強引です。が、かえってこの作品の痛快さを際立たせているようにも思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-10 18:30:17)
43.  オードリー・ヘップバーンの モンテカルロへ行こう
赤ちゃんを介した嘘がさらなる嘘を呼び、登場人物たちのそれぞれの事情と策略が入り乱れたドタバタぶりが楽しいミュージカルコメディ。オードリー・ヘップバーンはコメディ映画らしいオーバーアクトでちょっとバカっぽいわがまま女優を演じているが、なんとも初々しい。見所はドタバタとしたストーリーの面白さと赤ちゃんを追いかけに出てしまった楽団に変わってエアーギターならぬエアーサックスやらエアードラムやらエアーハーモニカなど多彩な楽器のうそ演奏をするマネージャーの軽やかな身のこなし。最後の最後で赤ちゃんの本当の親を探すコマーシャルというカタチで長々とミュージカルシーンが続くのだが、これがダメ。長すぎてせっかくのドタバタとした軽快なリズムを断ち切ってしまった。締め方も唐突。もうちょっと気の利いた締め方がなかったものか。まあでも、楽しい映画だと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2008-06-27 13:44:17)
44.  ゴジラ(1954)
その後人気者になるとは到底考えられないほどゴジラは「怪獣」であり、核の化身であった。この映画は原爆を唯一落とされた国の悲痛なまでの叫びそのものだ。人が死に、街が破壊される描写をもって「反戦映画」とするなんて子供っぽい発想で終わらない。この映画は原爆を作った科学者たちをも許さぬと言っている。特撮もゴジラの造形もゴジラの鳴き声も、そしてゴジラのテーマもとんでもなく素晴らしいから「ゴジラ」がその後一人歩きしてゆくのだが、この第一作は作り手のメッセージというにはあまりに痛切な想いが詰まっていて、たぶんその強烈な思念が画面に漂っていて作品に風格をもたらしている。この異質ともいえる風格は、今後どんなに素晴らしいゴジラ映画が生まれてもけして真似のできない代物である。
[DVD(邦画)] 7点(2008-04-28 19:08:01)(良:1票)
45.  近松物語 《ネタバレ》 
構図だとかカメラワークだとか、かのコンビなんだから言うまでもないし、モノクロの画面は終始美しいことは美しいのだけど、どのシーンがってんじゃなく全部が当たり前のように美しいのでかえって画としての印象が弱かったりする。むしろこの作品は画よりも女優・香川京子の凄まじさに圧倒される。もちろんその凄まじさは溝口の演出なんだけど。香川はこれまで明るい娘役ばかりだったのが、この作品でいきなり女の色気を爆発させている。抱き合う姿は抱きしめるというよりも、何が何でも離れまいとしていると言ったほうがいいほどにその必死さと苦しさが漲っている。誰かが迷惑してようが構わない。離されることが耐えられない。苦渋の表情と叫びと嗚咽。二度と離されることのないという満足顔のラスト。愛に狂った女の色気。ここまで色っぽい香川京子はそうは見れない。
[映画館(邦画)] 8点(2008-04-17 16:50:59)(良:1票)
46.  海底二万哩
幼少の頃に観たときって、物語が楽しいというより、海の中のいろいろに、へえー、へえー、と感心しているという感じで、それはそれで楽しんでいるんだろうけど本当に楽しいのは「ウルトラマン」とかアニメなわけで、これはたぶん大人向きなんだと思ってた。で、大人になってから観ると、なんだろう、やっぱり子供向けじゃない。画面はなんとなく子供が喜びそうなもので溢れている(ノーチラス号の造形なんて最高!)んだけど、人間がいちいちその内面の葛藤を含めて実にリアル。ある意味すごくマジメに作られている。これを観る子供をガキ扱いしていない。だから単純にノレないところもあるんだけど、これはエイ!ヤー!と楽しむ作品じゃなく、感心したり驚いたり考えたり意味がわかんないところは悩んだり誰かに聞いたり時々興奮したりという子供向けの高尚な映画なのかもしれない。たぶん考えすぎですけど。とにかく誠実さは伝わる。その誠実さにおいてリメイク作は最悪なのでくれぐれも鑑賞する際はこの1954年版をよろしく。
[ビデオ(字幕)] 6点(2008-03-13 11:08:19)
47.  赤線地帯
女5人それぞれの全く異なるキャラクターを描き分け、5人ともがそれぞれのカタチで社会に翻弄されてゆく姿を見せてゆく。赤線が舞台というなかで、最も肌を露にする京マチ子にも人気ナンバー1の若尾文子にも艶っぽさは見当たらない。ところが病気の夫と赤子を抱えて疲れきった表情をして生活臭がプンプンのうえにあえてメガネをかけさせて艶っぽさを排除したかのような木暮実千代が妙に艶っぽい。『祇園囃子』のような艶っぽさじゃなくてもっと生々しい艶っぽさ。結婚を決意して赤線から逃げ出そうとする女に対し、木暮実千代の夫が「こんなところに帰ってくるなよ」と送り出すのはいいが「こんなところ」「最低の場所」といった言葉が執拗に繰り出される。自らの病気のためにその最低の場所に女房を働かせに行かせておいて。病気とはいえ、なんとも身勝手で情けない男。ラーメン屋のシーンでも二人の立場が象徴的に描かれている。5人ともに降りかかるそれぞれのドラマがきっちりと描かれ、その一つ一つが当時の社会と女性の立場を露にしているのだが、溝口監督はその中でも木暮実千代のシーンを重要視して撮っているような気がしてならない。それほどに木暮実千代は誰よりも不幸なドラマを持たずして誰よりも不幸な境遇にあり、誰よりも現実に生き、誰よりも強く描かれている。だから艶っぽくて美しいのだと思う。溝口健二の遺作。溝口の現代劇をもっと見たかった。
[映画館(邦画)] 7点(2008-03-05 12:57:30)(良:1票)
48.  サンセット大通り
過去にしがみつく往年の大女優を往年の大女優に演じさせ、その女優の執事をする往年の大監督を往年の大監督に演じさせるというキャスティングの惨さ!!たしかにこの二人だからこその真に迫った演技ということになるのだろうが。スワンソンの圧倒的な存在感が目を見張るが(正直、圧倒的にすぎて疲れる)、この作品をより深く濃密なものにしているのはシュトロハイムの存在だ。かつての偉大な巨匠は一人の女を大女優に仕立て上げ何もかもが自由に手に入るセレブへと変貌させる。サイレントからトーキーへと変わったとき女優に求められる演技もまた変わる。よってたかって持ち上げておいてサッとひく。しかし過去のあまりの優遇ぶりに威厳を捨て去れない女優と威厳を持つ女優の崇高さを愛してしまった男の心理が合致してしまう。男は愛情とともに責任を感じていたのかもしれない。そんな男と女の悲しいドラマが、一見本筋のように描かれる三流脚本家との色恋話を凌駕する。シュトロハイムの存在はハリウッドを皮肉った作品に変質的なメロドラマとさらなる皮肉をもたらしている。
[DVD(字幕)] 6点(2007-12-18 15:07:45)(良:2票)
49.  水の話
トリュフォーがパリの洪水を撮ったはいいが使えないと放棄したフィルムをゴダールが切り貼りして映画にしてしまったもの。全編を被うゴダールのナレーションはゴダールの他の映画同様に無視。字幕もあるけど無視。ゴダールの映画のナレーションは「説明」ではなく効果音なのだから。でも、この映画、あんまり面白くない。ドキュメンタリーとフィクションがムリヤリひっつけられたという感じ。ま、ムリヤリひっつけたんだけど。
[DVD(字幕)] 5点(2007-12-14 13:53:43)
50.  灰とダイヤモンド 《ネタバレ》 
ポーランドが経験した戦中戦後の悲惨な歴史を知るうえでも価値があるし、芸術的にも価値があることは理解しつつも、正直中盤に退屈感を覚えた。内容が内容だけに終始重苦しい雰囲気で描かれるのだが、さらに重苦しく描かれている『地下水道』のほうが引きつけて離さないパワーを感じた。皆様のレビューを読みながら映画を思い返すと、いろいろと印象的なシーンが蘇ってきて、しかもそんなシーンが多々あることに気づかされるのですが、それでも夜長繰り広げられるパーティの各エピソードのダラダラ感が、いくら主人公の残酷な葛藤を描くために存在するとしてもどうにも退屈に感じてしまいました。有名なラストシーンは壮絶な最期を壮絶な画で見せており、その容赦の無い悲劇性に愕然とするとともに、一人の青年の死の意味するものの大きさを噛みしめること必至の圧倒的な画に感動しました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2007-11-15 12:11:02)
51.  巨人と玩具
傑作かもしれない。このノリはちょっと凄い。公開当時に見たらひっくりかえったかもしれない。元気で明るい下品さを爆発させた野添ひとみも凄いが、やらせた増村監督はもっと凄い。こんなスピーディな映画は今でもそうはない。でもラスト付近で川口浩が高松英郎に啖呵をきるときの説明ったらしい長いセリフという増村ならではのくどさがやっぱりダメ。そこにいくまではぎりぎりセーフだったけど、あそこまでされるとダメ。あの部分さえもうちょっとトーンダウンしてくれたら増村監督の最高傑作と推してもいいくらいパワフルで魅力的な映画なのだが。もちろん私的な好みの問題なんでしょうが。
[DVD(邦画)] 6点(2007-10-23 12:30:29)
52.  愛と希望の街(1959) 《ネタバレ》 
へったくそな演技に辟易しながら観ていたのだが、採用試験に落ち、母が鳩を売らせたことを泣きながら謝ったときに「また鳩を売ろう」と少年が言う、その哀しい展開に惹き込まれてしまった。ラスト数分は壮絶ともいえる画が連なる。タイトルにある「愛と希望」をすっかり消し去る少年の確固たる目が印象的で、その後、鳩を撃つシーン、工場で働く少年の背中という具合に強烈に印象に残る画が押し寄せる。けして間違ってはいない富裕層の倫理観が貧困層を無視した倫理観でしかない社会の実像を炙り出す。女子高生の兄と教師の会話は、格差社会の問題点をわかりやすく説明しており、その説明過多な会話には残念至極なのだが、問題の根底をさらけ出したいゆえの説明は大島らしいともいえる。そしてやっぱりラスト数分が凄すぎる。
[映画館(邦画)] 7点(2007-10-01 13:55:57)
53.  くちづけ(1957)
一貫してハイテンポ。心情なんてそっちのけ。少々ムリを感じるくらいにポンポンと進む。これが新しい映画なのかと思ったら、このムリのあるテンポの速さも納得のお話であった。主人公はムリをしているのだ。かっこつけているのだ。素直じゃないのだ。だからやたらとクールを装い心情をけして吐露することなくポンポンとセリフが飛び出すのだ。だから最期にようやく自分をさらけ出す主人公にホッとする。増村保造のデビュー作はデビュー作らしい新鮮さがある。しかしどこか安っぽい。でもこの安っぽさはデビュー作ゆえではなく増村の味だったりする。
[DVD(邦画)] 6点(2007-09-11 09:49:33)
54.  お遊さま 《ネタバレ》 
ロケーションが素晴らしい。そしてその素晴らしいロケーションの中に人物が溶け込む。冒頭の新緑の中を歩く女たちといい、中盤の3人での旅行のこれまた新緑と小川を背景とした立ち姿といい、とにかく美しい。溝口×宮川が魅せる美。田中絹代はたしかに年齢的にもビジュアル的にもミスキャスト感を拭えませんが、この格調高い美への貢献は田中絹代にしか出せぬもののような気がする。そしてこの格調高さの中でその格調高さをけして濁さずに女二人と男一人のイビツな関係を描ききる。自らの意志を持ち得ない時代の中で明確に意志を見せる女を描いてきた溝口と谷崎文学の融合はそれが必然であったかのように違和感を感じさせない。キャラの設定上、存在感の薄い若き乙羽信子がまたいい感じで存在を希薄にしていて薄倖さを醸す。ちなみに新藤兼人の監督デビュー作『愛妻物語』で乙羽の最期のシーンが同じく乙羽で再現されております。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-27 13:52:25)
55.  悪魔の発明
この作品はカレル・ゼマンのことを何も知らない数年前に、レンタル店で古そうな色あせたパッケージのビデオを見て、こうゆういかにも古いビデオはいつ処分されるかわからず、なにかの拍子に傑作だとわかって借りようとしたときにはもう既に処分されていたりということもあるかもしれないと思い、実際どんな作品なのかも全く知らないままに借りた作品なのだが、見てびっくり。傑作である。絵と実写の融合なのだが、どこからどこまでが絵なのかわからない。それほどに絵がリアルであるというのではなく、実写のほうが絵に近づいているのだ。潜水艦や潜水服の造形、またお宝回収のシーンなどはコレよりも先に作られた『海底二万哩』に酷似しているのですが、よりシンプルなデザインとより細やかなディテールによって、こちらがオリジナルなのではないかとさえ思えてしまいます。 【ドラえもん】さんが“絵が動く”と書いておられるとおり、「アニメーション」という言葉は不似合いで、まさに「絵が動いている」という表現がぴったりな作品。「絵が動いている」、、「アニメーション」、、いっしょじゃないか!と思われるかもしれませんが、観ていただければ解かってもらえると思います。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-08-24 18:16:26)(良:1票)
56.  前世紀探険
三葉虫のいる時代へと順々に遡ってゆくだけで、はっきり言ってつまらない。子供にとってもたぶんつまらない。と思っていたが、最近うちの子供が実家から懐かしいものを見つけて持ってきてふと考えた。持ってきたものというのが、私が子供の頃に行った遊園地にあった「恐竜博」のパンフレット。パンフレットを見ながら当時のことを思い出したが、その「恐竜博」には本物のわけがない骨と、いかにも作り物の恐竜たちがいただけの陳腐なものだったはず。なのに何度も何度も足を運んだのをよく覚えている。その当時にこの映画を見たらどう思っただろう。やっぱり映画の中の少年たちと共にこの冒険を楽しんだんじゃないだろうか。目の前に生きた恐竜がいる、マンモスがいる、巨大なトンボがいる、と興奮したんじゃないだろうか。この作品にはストーリー上のドキドキとかワクワクは無い。ただずっと見たかったけど見ることができるはずもないものを見る、その「見る」ことの感動だけを伝えている。大人になるにしたがい失くすものって確実にあるのだなと、なんとなく寂しい気分になると同時に、子供たちに「見ること」「経験すること」の感動をこれからおもいっきり味わってほしいと思う今日この頃。まだ私には感動する子供たちを見て感動するという楽しみがある。
[DVD(字幕)] 6点(2007-08-23 10:48:13)
57.  キッスで殺せ! 《ネタバレ》 
リンチの『マルホランド・ドライブ』は間違いなくこの映画の冒頭シーンを引用してますね。探偵マイク・ハマーが活躍するハードボイルドものなのですが、40年代に代表されるハードボイルド探偵ものとの差異は暴力描写でしょうか。強烈なインパクトをもって登場する女との出会いから映画は始まるが、その鮮烈な印象が消える間もなく女は殺されてしまう。尋常ではない金の匂いと好奇心から、真相に迫ろうとする主人公とそのまわりの人間に容赦ない暴力が降り注ぐ。そしてその暴力の頂点ともいえる「マンハッタン計画」「ロスアラモス」「三位一体」から連想されるものを前にして、なんと主人公は真相追及を放棄する。探偵映画なのに探偵が事件を解決せずに逃げるのである。斬新であるとともに、人間の力の及ばないものが存在するという衝撃がそこにある。そして暴力を超えた暴力によってこの映画は終わらされる。より緊張感のあるハードボイルドにバイオレンスとポリティカル・アクションとSFを混ぜ合わせたら、とんでもないフィルム・ノワールが出来上がってしまった。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2007-08-10 16:32:20)
58.  暗黒街の美女
1956年デビューの鈴木清順(当時は清太郎)がこの58年製作の『暗黒街の美女』でなんと7作目。この頃のプログラムピクチャーってのはものすごい勢いで作られていたんですね。56年に作られた『悪魔の街』がキューブリックの『非情の罠』と『現金に体を張れ』を合わせたようなノワールだと思ったのだが、この作品でもマネキンが重要な小道具として登場するあたり、やっぱり見てるなと。それとも原作者のアイディアなのかな?ストーリーは、まあ無難な出来という印象だけどなかなかアイディアが効いてて楽しめる。裸をうまく隠すカメラワークやクライマックスで石炭をひたすら掻き出すシーンのカット割りが見事なリズムを作り出しているところなんか、見ていて楽しい。ただ『暗黒街の美女』というタイトルはおかしい。ぜんぜん暗黒街の美女ではなかった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2007-07-10 12:48:57)
59.  無法松の一生(1958) 《ネタバレ》 
美しいお話です。不器用で勇ましく素直で純粋で、そんな男の生き様にこぞって高評価が与えられていることにまず安心しました。時代が変わるにしたがい男の価値観もおそらく変わっているだろうに、こうゆう気骨のある男には例外的に普遍の憧れというか認めざるを得ない何かがあるのでしょう。そんな男をイメージぴったんこの三船敏郎が好演。(阪東妻三郎版は残念ながら未見。)ただ、好みの問題になるのだろうけど、お話が美しすぎて面白みに欠ける。軍人の未亡人を秘かに想う松五郎がとうとう我慢できずに遠まわしの告白をするシーン、そこだけが実に人間臭くていい。そう、人間くさいはずの松五郎がずっとそのことを隠し続けているところに男の美学があるのですが、未亡人のいないところ、つまり観客だけにはもっと人間臭さ、はっきり言うと下心的なものを見せてほしかった、、、いや、あったことはあったんですが描写が美しすぎるような、、。恋に苦しむ男の葛藤をもっと見たかったような気がする。
[DVD(邦画)] 6点(2007-07-03 18:34:39)
60.  めし 《ネタバレ》 
「夫婦三部作」(『めし』『夫婦』『妻』)の中で夫婦の溝が最も浅い。どの夫婦にもあるだろう表には出ない些細な不満。そんなどこにでもあるような話に魅入らせてしまう成瀬はやっぱり凄い。なにげない会話が画面に映されたときの人の動き、目の動きが、なんでもないシーンをとんでもないシーンにしてみせる。女だから、妻だから、当たり前のようにこなさなければならないこと、我慢しなければいけないことがある。男にだってある。それをちゃんと見ていてくれる人がいなければストレスになるのは同じ。当たり前のことを当たり前にこなす毎日の疲れ、その疲れを癒してくれる言葉もなし、そのうえ自由気ままな姪っ子に対する嫉妬、、、。居心地の良い東京へ逃げ帰る。ここで登場する杉村春子と杉葉子がまたいい。何もかも解かっている母に甘える。夫の仕事を手伝いながら活き活きと主婦をこなす妹を見る。またまた登場の姪っ子に、同じように現状から逃げているだけの自分を見る。そこに夫が迎えにくる。「迎えに来る」という行動をして言葉以上のものを伝える夫。最後のナレーションはたしかにこの時代特有の価値観なのかもしれないが、夫婦の物語は普遍に満ちていると思うし、なによりも画面は今観ても新鮮で上質なのである。
[映画館(邦画)] 8点(2007-06-21 12:57:48)
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