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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1883
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  きっと地上には満天の星 《ネタバレ》 
彼女の名は、リトル。女手一つで自分を育ててくれる母親とニューヨークに暮らす、何処にでもいるような5歳の女の子だ。ただ、彼女が住む場所は普通の人とはちょっと違う。そこはなんと、現在運行中の地下鉄のさらに下に掘られた廃トンネルの片隅。行政の手の及ばないそんな地下深くで暮らしてきたリトルは当然、これまで地上の光を見たこともなかった――。彼女の母ニッキーは麻薬に溺れる売春婦。愛娘のためになんとかして生活を立て直そうともがくのだが、麻薬がらみのトラブルのせいで何もかも上手くいかない。運悪く、それまでほったらかしだったこの廃トンネルを何とかしようと行政が動き出し、彼女たち住民は突然立ち退きを迫られてしまう。このままでは自分は逮捕され、大切な一人娘のリトルは施設に保護されてしまうだろう。八方塞がりに陥ってしまったニッキーは、リトルを連れ地上に出てくるのだった。リトルは、そこで初めて光に満ち溢れた地上の世界を目にするのだった……。ニューヨークに実在した地下生活者たちをモデルに、ずっと地下の暗闇の中で育てられた5歳の少女とその母親の逃避行を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。結論を言うと、なんか凄く良かったです、これ。ほぼ、ホームレスと変わらない生活を送っている少女と麻薬中毒の母親がその日の食事と泊まる場所を求めて駆けずりまわるという、もう観れば観るほど気が滅入ってくるお話なのですが、とにかくこの主人公となる少女が魅力的!地下の暗闇でただひたすら母親の帰りを待つ健気な姿、無邪気に笑いながら母親に身体を洗ってもらうシーン、隣人のホームレスに計算を教えてもらう時の好奇心満々の表情、どれもがキラキラと輝くような魅力を放っていて、この悲惨な物語を明るく照らし出すことに成功している。そんな彼女が行政の手を逃れて初めて地上に出るシーンは、彼女の不安感や焦燥が生々しく伝わってきて胸が締め付けられそうでした。その後に彼女たち親子が辿る運命……。優しく接してくれた売春宿の元締めが実はロリコン野郎にこの少女を高値で売りつけようとしてたり、食事を分けてくれたホテルのコックが何も事情を聞かずすぐに警察に電話しようとしたりと、あくまでリアルでそこがまた辛い。「きっとこれはどう転んでも幸せな結末にならないんだろうな」と思ったら、まさかの母親の最後の決断。余りに辛く、哀しい母親のその結論に僕は思わず涙してしまいました。恐らく母親はこのまま麻薬を止められずボロボロになって死んでゆくのだろうし、5歳のリトルは「ぼんやりと憶えているあの人がきっと母親だったんだろうな」との想いを抱きながら施設で独り育ってゆくのだろう。きっとお互いもう会うこともなく、それぞれの人生を歩んでゆく……。それでも僕はこの先、2人が再会して幸せな人生を歩んでほしいと願わずにはいられませんでした。小品ながら、心に深く突き刺さる傑作だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2023-09-25 07:31:02)
42.  ドント・ウォーリー・ダーリン 《ネタバレ》 
砂漠のど真ん中に造られた、とある新興住宅地。ここは世界的な大企業が極秘裏に進めるプロジェクトのために建設された、完璧な町だ。大きなスーパーマーケットや美容院、映画館も併設され、他のどの町に行かなくてもここだけで生活に必要なものは全て揃うようになっている。定期的に巡行するバスに乗れば、町の何処にでも運んでくれる。そう、ここは誰もが幸せに暮らせる楽園のような世界――。プロジェクトに関わる夫ジャックとともに、何不自由ない生活を満喫する専業主婦アリス。従業員以外は許可なく町を出ることは禁止というルールに疑問を抱くことなくこれまで暮らしてきたアリスは、毎朝夫を送り出し、ママ友たちと日々優雅な昼下がりを楽しんでいる。自由な時間を楽しみたいとまだ子供を作る気もないアリス。だが、迷子になった子供を捜すためにルールを破って町の外に出てしまった隣人主婦マーガレットの存在が彼女の気持ちをざわつかせる。マーガレットの子供はいまだ行方不明のままで、彼女はそれからこの町に批判的な言動を繰り返しすようになっていた。ある日、そんなマーガレットが自らの喉を切って自殺する瞬間を目撃してしまったアリスは、真実を探るために町の外へと逃げ出そうとするのだが……。冒頭から描かれる、この冗談みたいな理想郷のカラフルで洗練されているのにどこか歪な世界観が強烈。何処にもゴミ一つ落ちておらず、家の壁も汚れなど一切なし、部屋の中も全て掃除が行き届いている。でも、主婦たちは料理以外の家事は全くせず、プールサイドで優雅にお酒を飲んで趣味のバレエにいそしみ、することと言えば夫と所かまわずセックス。彼女たちはみな夫の言うことを全て鵜呑みにして、今の生活に何も疑問を抱かない。そんな世界に響き渡る、何処までも陽気な音楽……。ここまで気持ちの悪い世界を緻密に構築した、この監督の手腕は確かに凄い。時折挟まれる悪夢的イメージも鮮烈で、生卵を割ってみたら中身がまったくの空だったなど印象に残るシーンも多い。ただ、問題となるのはストーリー。ここまで大風呂敷を拡げまくったお話をどうオチつけるのかと思っていたら、まさかの○○オチ。これまで様々な映画や小説で何度も見てきたような既視感満載のその真相は、さすがに肩透かし感が半端なかったです。こーゆー言ってみればなんでもありのオチは、よほど巧くやらないと納得感が得られませんって!!また、全編に貫かれる、「全ての女性を家庭という牢獄に縛り付けようとする男社会の論理」への抵抗というフェミニズムなテーマも、最近はそんな映画が余りに多すぎてちょっと辟易。なんなら説教臭ささえ感じました。映像や世界観はすこぶる良かっただけに、残念!
[DVD(字幕)] 6点(2023-09-21 08:41:29)
43.  帰らない日曜日 《ネタバレ》 
1920年代、第一次大戦の傷跡が未だ根強く残っているイギリスのとある地方都市。大戦で二人の息子を亡くしたニヴン家に務めるメイドのジェーンは、幼い頃に孤児院に捨てられ以来一人で生きてきた天涯孤独の身。年に一度、メイドたちが里帰りを許される母の日の日曜日、帰る家などないジェーンは一人自転車でピクニックに行くといって屋敷を出てくる。だが、彼女の本当の目的は違うところにあった。ニヴン家と仲が良い同じく上流階級のアプリィ家の息子ポールと密かに会う約束を交わしていたのだ。婚約者のいるポールに初対面の時から言い寄られていたジェーンは、その後何度も逢瀬を重ねていた。誰もいない広い屋敷の中で今という時間を楽しむ若い二人。だが、彼らの親の世代に当たる当主たちは大戦で失ったものの大きさにいまだ心を引きずられていて……。自然豊かなイギリスの田園地帯を舞台に、秘密の恋に溺れるとある若い女性と彼女を取り巻く様々な人々の心理を繊細に描いた文芸ドラマ。確かに作品としての完成度は非常に高い。孤児として育った若いメイドのとある一日と、のちに作家となった彼女の悲恋、そして世界的な文学賞を受賞することになる晩年の彼女を俯瞰的に描くことで、20世紀という激動の時代をラディカルに見つめるその視線の鋭さは特筆に値する。時間軸を頻繁に行き来し、しかも過去パートは作家となった彼女の創作かもしれないメタフィクションともとれる複雑な構造なのに、観客をまったく混乱させないこの完璧な構成力は見事としか言いようがない。そして、センスあふれる美しい映像と気品に満ちた音楽も見どころの一つ。長い伝統と格式を感じさせるイギリスの古い屋敷の中を全裸で気の向くままに歩き回るヒロインなど、まるで中世の重厚な絵画の世界に入り込んだかのよう。きっとこの監督の才能は確かなのだろう。ただ自分は、その才能をまるでひけらかすような感じが少々ハナについてそこまで好きになれなかった。技巧に溺れすぎたのか、肝心のストーリーがいまいち心に残らない。登場人物がみな上品に振る舞いすぎていて、血の通った人間味が感じられないのだ。泥臭くてもカッコ悪くてもいい、自分はもっと心に響く物語を観たい。
[DVD(字幕)] 6点(2023-09-14 08:34:00)
44.  ザ・コントラクター 《ネタバレ》 
怪我が原因で除隊を余儀なくされた元凄腕海兵隊員ジェームス。妻と子供を養うために少しずつ重ねてきた借金は膨れ上がり、もはや破産寸前まで追い詰められていた。住み慣れた家も手放さざるをえなくなり、このままでは家族は路頭に迷ってしまう。追い込まれたジェームズは、政府からの極秘の依頼を請け負う民間軍事会社の面接を受けることに。難なく採用されたものの、その任務はどれも常に危険と隣り合わせの命懸けのものだった。妻の心配を振り切り、最初の任務をこなすためドイツへと渡ったジェームズ。だが、それは後戻りできない危険な世界へと彼を引き込むのだった……。罠にハメられアメリカの情報機関から追われる羽目に陥った元海兵隊員の活躍をダイナミックに描いたエンタメ・アクション。人気俳優クリス・パインが主演を務め、昔懐かしのキーファー・サザーランドが共演しているということで今回鑑賞してみました。冒頭は良かったと思うんですよ、これ。任務中の怪我が原因で休養を余儀なくされた主人公、しかも追い打ちをかけるように療養中に使った筋肉増強剤のせいで除隊にまでなってしまう。そして、間の悪いことに彼に告げられる同僚の不慮の死……。追い詰められた彼は、最後の手段だと避けていた民間軍事会社にコンタクトをとる。ここまでの流れは緊迫感もリアリティもあって、まるで社会派映画を観ているようでした。「あれ、これってもしかして掘り出し物かも?」――。そんな僕の期待もここまででした。肝心の任務が始まってからは、これがもう見事なまでにぐずぐずに。あんなに準備して下調べも完璧にしていたはずなのに、いざ任務が始まってみるとこれがもう行き当たりばったりもいいところ。すぐに警備員に通報されて警察が駆けつけてくると結局施設は燃やしちゃうわ、森で激しい銃撃戦をやらかしちゃうわ、肉弾戦で乗り切ろうとした仲間はほとんど死んじゃうわ、これの何処が超一流の傭兵たちやねん(笑)。しかも肝心のそのアクションシーンもいまいちキレが悪く、自分はちっとも楽しめませんでした。挙句、最後に明かされる黒幕の存在も容易に読める代物のうえ、無理やりすぎて到底納得できません。余りにもグダグダ過ぎて、後半はもはや眠気と戦いながらの鑑賞となってしまいました。緊迫感あふれる冒頭部分は良かったんですけどねぇ。
[DVD(字幕)] 4点(2023-09-14 07:39:52)
45.  カモン カモン 《ネタバレ》 
さまざまな問題を抱えたアメリカの各地方都市を廻り、そこに住む若者たちの声を聴くという企画に現在取り組んでいるジャーナリスト、ジョニー。録音機材を抱えたった一人で各都市を巡っていた彼にある日、しばらく疎遠にしていた妹から電話が掛かってくる。話を聞いてみると、精神に深刻な問題を抱えている彼女の元夫の容態があまり芳しくないというのだ。彼のもとにいってしばらく面倒を見てあげたいので、その間まだ幼い息子を預かってほしいらしい。「お願い、兄さんしか頼れる人がいないの」――。妹とは母の死を巡りずっとギクシャクしていたが、甥っ子のためにジョニーは彼女の住むロサンゼルスへと向かうことに。1年振りに会う甥っ子ジェシーはもう9歳、何事にも好奇心旺盛で彼の持つ録音機材にさっそく興味津々。しばらく会っていなかったのが嘘のように2人は意気投合するのだった。あの子には心配かけたくないから父親のことは何も言わないでと言い残し、元夫の元へと向かう妹。ジョニーはジェシーの気分転換も兼ねて彼を助手として取材を続けるのだが、何かを察したジェシーも次第に情緒が不安定になってきて……。大都会で孤独に生きるジャーナリストが突然預かることになった9歳の甥っ子、彼らの共同生活を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。最近ハリウッドのベテラン勢の間で密かに流行っている子供を主人公に全編モノクロームで描いた作品で、確かにこのノスタルジックな雰囲気はほのぼのとしていて心地良かった。フォアキン・フェニックスの肩の力の抜けたナチュラルな演技も巧いし、なにより彼と本物の親類なんじゃないかとしか思えない子役の溌溂とした演技も素晴らしい。彼らが2人でアメリカの大都市を巡る旅路はまるで自分も同行しているかのような気分にさせられる。精神に深刻な病を抱えた彼の父親の存在もともすれば軽くなりがちなこの物語にいいアクセントを与えている。ただ、これは個人的な感想なのだが、自分はこれら一連の演出に終始あざとさのようなものを感じてしまい、後半になるにしたがって次第に心が離れていってしまった。要所要所に主人公の読む本のタイトルを入れるのも、「どうだい、俺って知的だろ」と言わんばかりの監督のナルシズムが透けて見えて終始癪にさわる。子供たちのインタビュー映像も同様。また、この甥っ子のワガママ放大なところも自分は好きになれなかった。特にタクシーの中でトイレにいきたいと嘘をついて、主人公を飛行機の時間に間に合わせなくさせたのはかなり腹がたった。ちょっと甘ったれ過ぎなのではないか。最後、誰もが丸く収まってのハッピーエンドもなんだかとってつけたよう。ノスタルジックな雰囲気は良かったのだが、肝心の内容の方は終始自分には合わないものだった。
[DVD(字幕)] 5点(2023-09-11 08:10:05)
46.  NOPE/ノープ 《ネタバレ》 
アメリカ南部の片田舎で牧場を経営するとある親子をある日、悲劇が襲う。なんと何の前触れもなく空から異物が降ってきて、直撃を受けた父親が亡くなってしまったのだ。飛行機から積荷が落下した事故として処理されたものの、息子OJは到底納得いかない。監視カメラを幾つも買い、全て上空へと向けて様子を観察してみることに。すると、驚くべき事実が明らかとなるのだった。「空に一か所、まったく動かない雲がある」――。その日からOJの日常は歪み始める。突然使えなくなる電化製品、まるで自分たちを監視しているかのように空に現れる謎の影、そして近くのテーマパークでは観客が一瞬にして行方不明となる謎の現象が起こっていた。果たしてこれはなんなのか?アメリカの砂漠地帯を舞台に、そんな理不尽な事態に巻き込まれる一家を終始不穏に描いたサスペンス・スリラー。監督は、独創的なアイデアで話題を集めたヒット作『ゲットアウト』でデビューを飾ったジョーダン・ピール。観終わった直後の率直な感想を述べさせてもらうと、さっぱり面白くなかったです、これ。この監督ってアイデア一発勝負で映画を撮るスタイルなんでしょうけど、2作目、3作目と明らかにクオリティが下がっちゃってる気が……。アイデア先行で制作に入ってるのに肝心の中身がまったく追い付いておらず、明らかに破綻した脚本や思わせぶりなだけでさして面白くもない演出などダメな部分ばかりが目立つという、なんだかデビュー2~3年目頃のM・ナイト・シャマラン低迷期を髣髴とさせる右肩下がりぶり(今も?!笑)。ここで思いっ切りネタバレすると、結局真相は巨大な人喰いエイリアンが雲に擬態して獲物である人間を狩ってたってっだけの話。それをただひたすらグダグダだらだら引っ張って、そこに黒人差別的なテーマを若干匂わせてるだけで中身はすんごく薄っぺらいです。あの殺人チンパンジーのエピソードも最後にストーリーの本質に絡んでくるのかと思いきやまったく放り投げっぱなしって、「結局なんやってん!!」と自分は怒り狂いそうになっちゃいました。主人公も全く魅力がなく、ひたすら暗くてぼそぼそ後ろ向きなことばかり喋る彼に自分は最後まで感情移入できず。うーん、正直、この監督の映画はもういいかな……。
[DVD(字幕)] 4点(2023-09-06 10:00:50)
47.  ザ・ディープ・ハウス 《ネタバレ》 
「幽霊屋敷 in 池の底」。それ以上でもそれ以下でもないお話(笑)。物語は、再生数を稼ぐことしか頭にないユーチューバーカップルが、より刺激的な映像を求めて、森の奥深くにある湖の底に眠っているいわくつきの廃墟へと侵入するってだけの内容です。でも……、この水の中という舞台設定が技あり!!こんなにベタベタな内容なのに、これが湖の底というだけでこんなに面白くなるなんて意外でした!気持ちの悪い魚が不気味に泳ぐ水の底で誰もいない廃墟へと入ってゆくシーンがとにかく怖い。家具や食器がゆらゆら漂ってるリビングとか今にも何かが飛び出てきそうでヤバかった。そして地下室で明らかに拷問を受けたであろう死体を発見する主人公カップル。でも、彼らは何か違和感を感じてふと呟く。「どうしてこの死体はこんなキレイなままなの?まるでさっきまで生きていたみたい……」。ここからラストまでもうヒィィィって感じで見入っちゃってました。ゆらゆらとゆっくり近づいてくる水死体がこんなに怖いとは。ここに酸素ボンベの残量が残り僅かだという水中ならではの要素も加わって、最後は普通に手に汗握っちゃってたし。何気に色んなゴミとか藻屑が漂う水の中なのに画面がずっとキレイで見やすかったのもポイント高い。アイデア一発勝負ながら、なかなか面白かった!ビール片手に真夏の熱帯夜に観るのに最適な映画、お薦めです。
[DVD(字幕)] 7点(2023-09-06 08:31:19)
48.  ウィズアウト・リモース 《ネタバレ》 
妊娠中の妻を殺されたアメリカ軍特殊部隊員が黒幕を求めて世界を駆け巡るスパイ・アクション。妻を殺されるまでと最初のターゲットであるロシア人を追い詰めるまではリアリティがあって緊迫感もなかなかでけっこう面白かったんですが、途中からあまりにも荒唐無稽なお話になり過ぎて自分はいまいちのれなかったです。さすがにスケールを大きくし過ぎたんちゃいますかね、これ。主人公がたった一人でアメリカ国防長官をさらってきて自殺に見せかけて殺すって……、どんなけセキュリティがばがばやねん(笑)。とはいえ、アクションシーンはそこそこ迫力あったし、前半はけっこうハラハラドキドキしたんで暇潰しで観る分にはぼちぼち楽しめると思いまーす。
[DVD(字幕)] 6点(2023-09-04 08:43:04)
49.  ヴォイジャー(2021) 《ネタバレ》 
2063年、急速な地球温暖化により人類は滅亡の危機に直面していた。人類の未来を守るため、各国の指導者たちはある計画を立てる。ここから遠く離れた地球に似た惑星に選ばれし30人の子供たちを宇宙船で送り込もうというのだ。だが、その宇宙の彼方への旅路は、到着まで86年もかかるという壮大なものだった――。訓練を受けた30人の子供たちはいわゆる第一世代、宇宙船内で人工授精により子供を設け多くの者は惑星到着を目にすることなく死ぬ運命にある。実際に惑星へと降り立ち新たな地で繁栄を築くのは、彼らの孫にあたる第三世代の子供たちなのだ。何も知らないまま宇宙船へと乗せられ、日々規則正しい生活と一日一回謎の薬を呑むことを義務づけられた子供たち。唯一の大人で彼らの指導教育に当たる教官リチャードとともに、しばらくは平穏な旅路を続けていた。だが、そんな任務に疑問を抱いた一人の少年が薬を呑むことを止めたことをきっかけに、船内に不穏な空気が拡がってゆく……。遠く離れた惑星へと航海を続ける宇宙船内で繰り広げられる、そんな30人の子供たちのサバイバルを濃厚に描いたSFスリラー。イギリスのノーベル賞作家ゴールディングの無人島漂流ドラマの名作『蠅の王』。それを宇宙船に置き換えてSFにしようという発想は良かったと思います。宇宙船内や数々のギミックもけっこうスタイリッシュで、画としては充分見応えありました。タイ・シェリダンやリリー・ローズ・デップをはじめとする今が旬の若手スターたちの共演も華があって大変グッド。ただ内容の方はかなり中途半端。極限状況に追い込まれた青年たちの暴走と破滅を描こうというのであれば圧倒的に深みが足りないし、新天地を求めて遠く離れた宇宙へと旅する主人公たちのサバイバルを描きたいのであればかなりテンポが悪いせいでエンタメ性に欠ける。どちらかに焦点を絞るべきだった。正直、自分はどう楽しんでいいのか最後まで分からず、途中からは眠気と戦いながらの鑑賞となってしまった。アイデアは良かっただけに、なんとも残念。
[DVD(字幕)] 4点(2023-08-15 07:54:36)
50.  リコリス・ピザ 《ネタバレ》 
1970年代のアメリカを舞台に、恋に仕事に夢にと充実した毎日を送る若者たちの成功と挫折をほろ苦く描いた青春ドラマ。監督を務めるのは、ハリウッドでも今や特異な地位にいる鬼才ポール・トーマス・アンダーソン。主演には、彼と何度も一緒に作品を創り続けてきた名優、故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマン(これがデビュー作らしい)。特に何事が起こるわけでもない平凡な若者たちの取るに足らない日常を淡々と描いているだけなのに、なんだろう、最後まで心地よく観ることが出来ました。「ここが凄く良かった!」と声を大にして言える魅力は特にないのに、観終わったときには変な満足感。ここらへんはやはりアンダーソン監督の長年培ってきた力量がなせる技なのかな。脇を固める何気に豪華な役者陣――ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーも短い出演時間ながら、心に残る印象的な演技を見せてくれます。正直言って脚本が良かったわけでもないし、映像もそんなキレイでもなかったし、主演2人も特に魅力的だったわけでもないし、ホント何が良かったか分からないけれど、なんか良かったです、これ。自分でもよく分かんないです(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-14 09:51:50)
51.  ライフ・ウィズ・ミュージック 《ネタバレ》 
彼女の名は、ミュージック。音楽と日々の散歩が大好きなごく普通の女の子だ。でも、彼女には人と違う個性が一つだけ。それは自らの世界に閉じこもりがちで変化や刺激を極端に嫌がり、何か不安を感じると発作的に癇癪を起してしまう癖を持っていること。そう、ミュージックはいわゆる自閉症なのだ。それでも一緒に暮らす優しいお祖母ちゃんや周りの人たちのサポートで穏やかに暮らしていた。そんなある日、お祖母ちゃんが急な心臓発作で呆気なくこの世を去ってしまう――。連絡を受けたミュージックの唯一の肉親である姉、ズー。急な連絡に戸惑いながらもアパートへとやって来たズーは、久々に会う妹の扱いづらさに戸惑うばかり。とにかく施設に預けて厄介払いしようと目論むズーだったが、彼女もまた人生に深刻な問題を抱えていて……。障碍を持つ女性の日常をリアルに描きながら、そこに彼女の頭の中に流れる音楽をミュージカル調で描いたヒューマン・ドラマ。一言で表すと、ポップ版『ダンサーインザダーク』といった趣きの本作、その試みはなかなか興味深いものだった。世間からは常に好奇と同情の目で見られる社会的弱者にもちゃんとその人にとってかけがえのない生きる喜びや信念があるというテーマをあくまで軽くポップに描き出すことに成功している。彼女をはじめとした役者陣のナチュラルな演技も素晴らしく、特にアルコール依存症に苦しむ彼女の姉をリアルに演じたケイト・ハドソンの熱演は称賛に値する。そんな苦しい日常に突如として挿入される幻想的なミュージカルシーンも違和感なく共存させることに成功している。ただ、これは好みの問題と言ってしまえばそれまでなのだが、自分は肝心のそのミュージカルシーンがいまいち嵌まらなかった。何度も挿入されるカラフルでマジカルなそれら一連のシーンを、自分は正直「ダサい」と感じてしまったのだ。映像の色使いもダンスも演出もとにかく全てがダサい。恐らくダサいけどカッコ良いみたいな絶妙のラインを狙ったのだろうが、あまり成功していないように思う。また、後半のストーリー展開の唐突さも気になった。障碍を持つ妹を施設に預けようとした主人公が大したドラマもないまま急に心変わりするのも説得力に欠けるし、妻を兄に寝取られた隣人青年との顛末もとってつけたよう。あの太ったアジア系少年のエピソードもあそこまで投げっぱなしで終わるくらいなら最初から出さなかった方が良かったんじゃなかろうか。と、そういった欠点が幾つも目立つ作品ながら、社会の中で息苦しさを抱えて生きている人々に暖かなスポットライトを当てるような本作のテーマは好感が持てるものだった。総じて、自分は観て良かったと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-14 09:03:34)
52.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 《ネタバレ》 
もうシリーズの世界観から完全に外れちゃって、もはや『ミッション・インポッシブル(+恐竜)』みたいな感じになってましたけど、これはこれでけっこう面白かった!恐竜に追いかけられながらの街中バイクチェイスシーンは、やぱテンション上がりますなぁ。旧シリーズのメインキャストががっつり大活躍するのも好印象。あと、恐竜だけでなく今回は巨大イナゴの大群に追いかけられるシーンがあったのも自分はけっこう好きでした。イナゴの動きとかめっちゃリアルでなかなかグロかったーー!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容でしたけど、エンタメ映画としては充分及第点。うん、そこそこ面白かったです!!
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-09 09:16:43)
53.  ニューオーダー 《ネタバレ》 
娘の結婚披露パーティーを開催中のとある富裕層家族。強固なセキュリティに守られ、政財界の大物を多数招待したパーティーが佳境に差し掛かっていたまさにその時、彼らを予想もしなかった悲劇が襲う。拡がり続ける格差に不満を募らせた貧困層が暴徒化、鉈や拳銃を手に屋敷に雪崩れ込んできたのだ。示し合わせたかのように各地で勃発する暴動に警察の手も追い付かず、高価な財産はことごとく略奪、泣き叫ぶ家族も容赦なく皆殺しにされてしまう。豪邸内は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった――。パーティーの主役である花嫁マリアンは、突然の事態に戸惑うばかり。だが、根が純粋で世間知らずのマリアンは、難病を患う妻を病院に連れていきたいと願うかつての使用人を助けるために街に出てきてしまう。暴れまわる暴徒や軍隊によって大混乱へと陥る中、マリアンは高級車で街を彷徨うことに。何とかして元使用人の元へと辿り着いたマリアンだったが、それもむなしく彼女は軍を裏切った兵士によって誘拐されてしまう。多くの人質とともに劣悪な牢獄へと監禁されるマリアン。果たして彼女の運命は?政情不安に揺れる中南米を舞台に、突如として殺戮と略奪に巻き込まれる一人の女性の運命を終始冷徹に見つめたサバイバル・ドラマ。あくまでリアルに徹した、この殺伐とした空気感は凄かった。まるで戦場カメラマンが現地で撮った映像を繋ぎ合わせたかのようなリアリティで、この息詰まるような世界に終始圧倒されっぱなし。誰が生き残り誰が死ぬのか、全く先の読めない展開はこの世の不条理を容赦なく暴きだしている。ただ、それが映画としての面白さに繋がっているかというと、自分は正直「否」と言わざるを得なかった。ひたすらこの主人公マリアンが不幸な事態に巻き込まれ、何も悪いことをしていない無辜の民がことごとく悲惨な最後を迎えてゆく。そして最後も慈悲などなくただ淡々と……。これが目を背けてはならない現実だと言うのは分かるのだが、映画としてはやはり優れたフィクションの力で観客を魅了して欲しかった。映像や世界観の作り込みは素晴らしかっただけに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 05:02:20)
54.  ビースト 《ネタバレ》 
2人の娘とともにアフリカのサバンナへとバカンスにやって来た父親を悲劇が襲う。密猟者に群れを皆殺しにされた孤独な雄ライオンが突然、襲い掛かって来たのだ。現地でガイドを務める長年の友人は真っ先に瀕死の重傷を負わされ、父はまだ幼い娘たちとともに車の中へと命からがら逃げ込むことに。だが、人間に激しい憎しみを持つライオンは決して諦めない。数発しか弾が残っていない麻酔銃だけを手に車に閉じこもる親子を、ライオンは執拗に襲い続けるのだった。果たして親子の運命は?炎天下のサバンナ、狂暴化したライオンと妻を失くした親子との決死のサバイバルをノンストップで描いたネイチャー・アクション。全く期待せずに観たらこれが意外や意外、なかなか面白かった!最初から最後までエンタメ全振りで、とにかくお気軽に楽しんでもらおうというサービス精神が大変グッド。密猟者に群れを皆殺しにされた人喰いライオンにひたすら襲われるだけというシンプルイズベストにも程があるほどシンプルな内容なのですが、家族愛に焦点を絞った脚本が良い感じにベタで最後まで楽しかったです。反密猟者や群れの中での雄ライオンの役割といった分かりやすい伏線が分かりやすく回収されるのもけっこうカタルシスあったし。ライオンのCGも本物と見間違うほどの高クオリティで、こいつが何度も何度も襲ってくるシーンには素直にハラハラドキドキ!まぁ3日も経てば完全に忘れてしまいそうな内容ではあるけれど、自分はけっこう楽しんで観ることが出来ました。
[DVD(字幕)] 7点(2023-08-07 04:33:42)
55.  キャメラを止めるな! 《ネタバレ》 
低予算ながら類い稀なるアイデアと優れた脚本の力で日本で大ヒットを飛ばしたゾンビコメディ映画『カメラを止めるな』。そんな大ブームを巻き起こした作品がまさかのフランスでリメイク!しかも監督は、『アーティスト』でアカデミー賞の栄誉に輝くミシェル・アザナヴィシウス。と言う訳で今回鑑賞。世間ではいまいち評判が良くないみたいですけど、自分はこれはこれでけっこう面白いと感じました。オリジナルはとにかくコメディ全振りで最後の方なんて大笑いしながら観てましたけど、こちらはけっこうブラックな皮肉が効いていて思わずニヤリとしてしまう感じですかね。ここらへん、日本とフランスの国民性の違いなのかな。最近の行き過ぎたポリコレを揶揄するようなきわどいネタをサラっとぶっこんでくるとこなんてナイス!冒頭、ゾンビ映画の主人公たちがバリバリ西洋人なのに何故かみな日本名という不自然さの理由が明らかにされたとこなんて普通に笑っちゃったし。なるほど、パール・ハーバーですか(苦笑)。ただ惜しいのは、肝心のそのワンカットゾンビ映画のクオリティが明らかにレベルが低くなってしまっているところ。キレの良さとかテンションの高さとかはやはりオリジナルの方が圧倒的に上ですね。あとこれは好みの問題なのかも知れませんが、主人公の女性が致命的なほどタンクトップとホットパンツが似合ってないのはひじょーーーに残念!!とは言え、オリジナルを忠実に再現しながらも独自のセンスを織り込んだ本作、僕はそんなに嫌いじゃなかったです。
[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 03:38:28)
56.  アンネ・フランクと旅する日記 《ネタバレ》 
『アンネの日記』――。それは第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害から逃れ、アムステルダムの小さな一軒家に家族と隠れ住んでいた一人の少女によって書き綴られた日記だ。作者であるアンネ・フランクという名の少女はその後、謎の密告者の裏切りによってアウシュビッツへと送られ、そこで15年という短い生涯を閉じることになる。彼女の死後に発見された日記はその後、出版。そのユーモアを交えた瑞々しい筆致や鋭い人間観察眼、思春期を迎えたばかりの少女の不安や戸惑い、暗い時代にあっても常に希望を失わない彼女の強さは多くの人々の感動を呼び、世界各国でベストセラーとなる。そして現代、ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的名著としてユネスコの世界記憶遺産に登録されるまでになった。本作は、その『アンネの日記』で彼女の架空の友達として呼びかけられるキティーが現代のアムステルダムによみがえったらという驚くべき着想で描かれたファンタジックなアニメーション。監督は、パレスチナ紛争を題材にした政治的主張の強い『戦場でワルツを』というアニメでデビューを飾ったアリ・フォルマン。『アンネの日記』は昔読んで、そのキラキラとした才能の塊のような文才に感銘を受けると同時に、もし生きてちゃんとした小説を書いていたらきっと世界的大作家となっていただろうと思うと改めて怒りと切なさに打ち震えるような感情を抱いた思い出の一冊。なので今回期待して鑑賞してみた。この監督らしい独自の画のタッチに最初は戸惑うものの、空想上の存在であるキティーが日記のインクから現実世界へと降り立つファンタジックな描写に惹き込まれる。その後、まるで中世ファンタジーに現れる悪の軍勢のようなナチスドイツや彼らに立ち向かってゆく英雄たちがアンネの愛した映画スターたちという発想はオリジナリティ抜群で、アニメ作家としてのこの監督の面目躍如といったところだろう。ただ、それに対してお話の方は僕は疑問に思わざるを得ないものだった。空想上の存在であるはずのキティーが現代によみがえって?作者であるアンネを捜すというこの設定がいまいち腑に落ちない。こういう荒唐無稽なお話こそより細部の設定を細かく詰めるべきなのに、本作はそこが非常に甘いのだ。なので全体的にフワフワとした捉えどころのない作品となってしまっている。また、アンネの足跡を追って遥か異国の地まで旅していたキティーが後半、何故か現代の難民を救うために尽力する展開となるのも強引さが否めない。もう少し脚本を練るべきだった。ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的アイコンとしてもはや象徴的存在となってしまったアンネ・フランクの、その人間的側面に脚光を当てようとする試みは好感が持てるだけに残念だ。余談だが、本作を観終わって本棚の奥に眠ったままだった『アンネの日記』を久々に手に取ってみた。まるで今もどこかでこの現代を見つめているかのような生き生きとした彼女の文章に改めて感動の念を抱いたことをここに記しておこう。
[DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 08:09:48)
57.  ブラック・フォン 《ネタバレ》 
1978年、デンバーの町は不穏な空気に満ちていた。何故なら〝グラバー〟と呼ばれる、少年ばかりを狙った連続殺人鬼が今もまだ捕まっていなかったからだ。残虐な犯人は、さらってきた少年をしばらく監禁すると酷い拷問を行った末に殺害し、遺体はまるでゴミのように捨てられる。グラバーは今日も町のどこかで獲物を求めて蠢いているだろう――。貧しい父子家庭に暮らす少年フィニーもまた言い知れぬ不安を抱えて生きていた。酒浸りの父は気に入らないことがあるとすぐ暴力を振るい、まだ幼い妹は精神的に不安定で常に目が離せない。そんなある日、恐れていた事態が起こる。ちょっと気を許した隙を突かれ、彼もまたグラバーに誘拐されてしまったのだ。薄汚れた地下室で目を覚ましたフィニー。そこにあったのは使い古されたベッドと年代物の黒電話のみ。「あいにくその電話は随分昔に壊れてしまって何処にも繋がらない」。不気味な仮面を被ったグラバーは、恐怖に怯えるフィニーにそう言い残し、地下室を出ていくのだった。このままじゃ僕も殺される!極限状況に追い込まれた彼に、さらなる不穏な出来事が起こる。電話線が切られたはずの黒電話が突如鳴りだしたのだ。恐る恐る受話器を取ると、受話器の向こうからありえない声が。なんとグラバーに殺された少年たちが彼に話しかけてきたのだ……。けっこう既視感満載のそんなオカルティックなスリラーなのですが、この全編を覆う重苦しい空気はなかなか良かったですね。小さな窓しかない完全防音の地下室に閉じ込められるというこの設定がとにかく最悪過ぎる!しかもそこに何故か置かれてある壊れた黒電話。誘拐された子供がもしかしたら助けを呼べるかもと期待を持たせるために敢えて置いてあると思うと胸糞さマックス。犯人が被る上下分割マスクは余りにも不気味でこの犯人の異常性を見事に視覚化しており、なかなかにセンスがいい。そして黒電話を通して話しかけてくる事件の被害少年たち……。ここら辺のホラー描写もベタながらけっこう怖かった。彼らが主人公に与えてくれるヒントが一見的外れかと思いきや、最後に全て回収される脚本も良く出来ている。ただ、惜しいのは物語の芯となる部分が弱いところ。特にグラバーの目的がいまいち分からないところが残念。何のために少年たちを何人もさらって殺すのか、その動機をもう少し踏み込んで描いていればもっとサスペンスが盛り上がったと思うのに。また全体的にスティーブン・キングの『IT』と設定が被ってしまっているのも残念。とまぁそこら辺に目をつむれば、この鬱屈とした雰囲気や禍々しいホラー描写などは普通に楽しめると思います。6点!
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-19 07:47:11)
58.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 
妻と娘を失い孤独に生きてきた舞台俳優と彼にドライバーとして雇われることになった若い女性。ともに生きづらさを抱えていた2人の交流を終始淡々と描いたヒューマン・ドラマ。原作は泣く子も黙る世界的大作家、村上春樹。基となった短編集はまだ読んでないんですけど、主人公たちが交わすセリフをちょっと聞くだけで「あぁ、これはもう完全に村上春樹だなぁ」と思わせるところが凄い。妻が亡くなる前の長いプロローグとも呼べるシーンで、主人公が妻とセックスしながらひたすら意味不明な会話を交わすところなんてまさにそう。片想い中の女子高生が好きな男の子の家にたびたび空き巣に入って最終的には人を殺す話をしながらエッチするってどんな夫婦やねん(笑)。その後、本編が始まってからも登場人物が交わす会話も全く同じ。よく言えば哲学的で深いのにどこかお洒落、悪く言えば空疎で薄っぺらく全編気持ちの悪いナルシズムに満ちている。やはり村上春樹の小説は映像化には不向きなんじゃないかと思わせたものの、中盤からは不思議とこのわざとらしいセリフ回しに心地良さを感じている自分がいました。それはおそらく、主人公たちが現在取り組んでいる多言語舞台という前衛的な劇中劇が功を奏しているからなんでしょうね。舞台稽古をしている俳優たちがそのまま私生活にまで影響を引きずっているというこのメタ構造が、この不自然なセリフ回しを巧く中和している。なかなか考えられた演出と言っていい。内容の方も、村上文学の主要テーマである喪失感からの再生が多面的に描かれており、深い。前述した、さまざまな言語が入り乱れる演出でチェーホフの戯曲を再演しようという舞台の稽古と、心に傷を負った若いドライバーとの繊細な交流を二重写しのように描いたところは称賛に値すると思います。同じテーマをそれぞれ違うアプローチで描いていたものがラストでぴったり重なったのが感動的ですらありました。喪失感を抱えて生きている自分たちの苦悩がほんの少しだけ浄化された、それだけでこの先も生きていける――。心地良いラストの余韻に自分は観てよかったと思えました。カセットに録音された今は亡き妻ともう不可能となってしまった会話を交わす主人公の声を、ただ静かに聞き続ける若い女性とか、なんて切ない構図なんだろう。ただ、不満点も幾つか。まず冒頭、妻が亡くなるまでのあの長いプロローグは正直いらない。中盤の高槻との会話への伏線として必要だったのでしょうけど、それも回想シーンなりの別の描き方があったはず。あの40分はばっさりカットしても良かったのでは。とは言え、人と人とが永遠に分かり合えないことの切なさを美しく描いた上質の物語でした。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-10 09:11:19)(良:1票)
59.  ニトラム/NITRAM 《ネタバレ》 
90年代、オーストラリアのタスマニア島で実際に起きた無差別銃乱射事件。多くの死傷者を出したそんな凄惨な事件を基に、犯行へと至るまでの犯人の心情を終始淡々と見つめたクライム・ドラマ。ほとんど音楽も使われず、ドラマティックな展開なども皆無、ただひたすらこの精神に重大な問題を抱え、恐らくは軽度な知的障碍もあったであろう主人公の次第に追い詰められてゆくさまが冷徹に描き出されてゆく。主人公を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの真に迫った熱演もあり、この最後まで緊張感を途切れさせない展開は見応え充分だった。社会から疎外され孤立してゆく息子をただ見守ることしか出来ない両親の葛藤もリアル。そんな青年を何故か受け入れる大富豪の老女の存在も違和感がなく、ともに社会から疎外された者同士で通じ合う部分があったのだろうという説得力も感じさせる。この老女が大金持ちで、彼女の善意がのちに大きな悲劇を生んだと思うとなんともやるせない。彼と事件の被害者を救う術はなかったのか――。周りに何人も「おかしい」と思う大人がいたのに母親も息子を常に気にかけていたのに誰も事件を防げなかったことを思うと、やはり社会の無関心も事件の原因の一つだと改めて痛感させられる。これは決して遠い国のお話ではなく、日本でも自分事として捉えるべき問題なのだろう。ただ、そのように深く考えさせるところは確かに良かったのだが、一本の映画として観ると残念な点もちらほら。一つ言えるのは、とにかく演出のキレがすこぶる悪い!果たしてこのシーンは必要であったのかと思えるような無駄な場面が余りにも多く、かと思えば父親の自殺などもっとそこを掘り下げて描くべきではと思えるところは意外にあっさり流したりする。もっと脚本を練るべきだった。見るべき部分も多い作品だっただけに残念だ。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-07 09:32:06)
60.  アンチャーテッド 《ネタバレ》 
世界を股にかけて活躍するトレジャーハンターのその誕生秘話をダイナミックな映像で描いたエンタメ・アクション。まあぼちぼちこんなもんじゃろって感じの内容でしたね、これ。まさに可もなく不可もなく。充分お金を掛けたであろうアクションシーンはさすがの迫力だったけど、3日も経てばすべて忘れてしまいそう。そーゆーもんだと割り切って観れば、トム・ホランドををはじめとする役者陣も華があるし、二転三転する脚本も分かりやすかったしで、ぼちぼち楽しめると思います。終わり。
[DVD(字幕)] 6点(2023-07-05 08:02:37)
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