Menu
 > レビュワー
 > S&S さんの口コミ一覧。4ページ目
S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2402
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順12345678910
投稿日付順12345678910
変更日付順12345678910
>> カレンダー表示
>> 通常表示
61.  超音ジェット機 《ネタバレ》 
50年代はハリウッドでも “空軍御用達”映画が頻繁に製作されていた時期ですけど、さすがデヴィッド・リーン、その手の映画の中でもたぶん本作がいちばん出来が良いんじゃないでしょうか。記録上初めて“音速の壁”を破ったのはもちろん『ライト・スタッフ』でお馴染みのチャック・イェーガーですが、英国だってやればできるんだぞ、と国威発揚したかったみたいです(もっとも劇中での音速突破は世界初であるという描き方はしてません)。鬼のように音速突破を追求する社長を演じているのが名優ラルフ・リチャードソン、さすがに英国人らしい重厚なキャラです。 やはりこの映画の見どころは“スピットファイアのバレエ”で始まる実物機がふんだんに見せてくれる飛行シーンでしょう。とくに黎明期の英国ジェット戦闘機の飛行は、マニアには垂涎ものです。最初に出てくるスーパーマリン・アタッカー(スピットファイアをジェット化した機だけど、面影は皆無)なんて、ジェット機のくせに尾輪式という珍しい代物。ヴァンパイア機で夫婦で飛行なんて実に優美なシークエンスも有りますが、イギリスからカイロまで無給油で飛んでくなんて不可能でこれはご愛敬。そして超音速を目指す新鋭機“プロメテウス”、これは当時の英国空軍の最先端機であるスーパーマリン・スイフトを使っています。この機は実際には戦闘機としては使い物にならなかった大失敗作だったと言うのはきついジョークです(でも速度記録を作ったのは史実です)。とは言え、この機が飛翔する姿は躍動感にあふれていて、性能はともかくカッコいい飛行機だったのは確かです。 円谷英二はこの映画を見て「航空映画を撮りたい!」という強い願望を抱いたそうです。これは『空の大怪獣ラドン』の撮影で実現し、ラドンと自衛隊機の空中戦シーンには本作の影響が感じられるところが確かにあります。
[DVD(字幕)] 7点(2016-06-16 23:30:42)
62.  わが青春のマリアンヌ 《ネタバレ》 
この映画についてはマリアンヌは実在したのかなどの議論がありますが、私に言わせれば彼女はヴァンサンの母親の象徴みたいな存在だったと思います。ヴァンサンが学校にやってくる冒頭のシーン、車の中の母親は最後まで画面には登場しません。ここに監督のこの作品に対する考え方が現れていると思います。中盤ではやはり車に乗ったマリアンヌがのお祭りを見に来るシークエンスがありますが、ここではチラリとですが窓から顔を覗かせます。これは顔すら見せずに去って行った母親に対するヴァンサンの哀しみを、彼自身も無意識なんですけどマリアンヌが代替してくれた様に見えました。また男爵と望まぬ婚礼を強いられるマリアンヌは、息子の気持ちを忖度することもなく大尉と結婚する実際の母親と見事に裏表の関係になっています。こうやって考えると、この映画は幻想的な寓話じゃなくて理詰めで計算された心理学的な脚本だと思います。 また全篇に漂うホモセクシャルチックな雰囲気がまた独特です。寄宿学校の生徒たちが普通に会話しているシーンでも、互いを見つめる視線になんかヘンな雰囲気が感じられてしまうのです。そんな濃密な男の世界に紛れ込んだ娘リーゼがだんだんと疎外されてゆき、最後は鹿の群れに踏み殺されてしまったのは当然の成り行きだったのかもしれません。 あと気になった登場キャラは男爵の用心棒兼ドライバー役の男で、あの太いまゆ毛が繋がった容貌はコントによく見かける西郷隆盛のパロディにそっくりです。彼の着ている制服をどっかで観た様な気がするなと気になったんですけど、気が付きました。松本零士がこの映画からインスパイアされてメーテルを創造したという話は有名ですけど、実は『銀河鉄道999』の車掌はこの西郷さんがモデルだったんじゃないかと思います(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-22 21:23:47)
63.  脱走四万キロ 《ネタバレ》 
バトル・オブ・ブリテンで撃墜されて英軍の捕虜になったフォン・ヴェラ大尉の、まさに“脱走バカ一代記”といったところでしょうか。カナダにまで送られてそこで三度目の脱走に成功しオンタリオ湖を超えて合衆国にまでたどり着き、なんと本国にまで帰還して軍務に復帰したというんだから戦史に残る偉業です。これは当時まだ米国が参戦しておらず中立国だったから可能だったわけで、ドイツの大使館などがその後彼がメキシコやスペインを経由して帰国する手助けをしてくれたおかげでもあります。 映画ではもうフォン・ヴェラ大尉の三度の脱走以外の描写は極力省いていて、おかげで上映時間の四分の三近くが脱走と逃走の描写で占めるというストイックさです。脱走の仕方もいろいろで、トンネルを掘るオーソドックスなところから外出中に警備兵のすきを突いて塀を乗り越えるだけといった人を喰った方法とバラエティに富んでいます。二回目なんてもう少しで戦闘機を盗めるところまでいき、これがほぼ実話と言うんだからまさに“事実は小説よりも奇なり”です。彼がなぜここまで脱走に執着するのかは、そういう演出プランなのかもしれませんが、観る者にはさっぱり伝わってきません。でも演じているのがハーディ・クリューガーだから何となく納得させられちゃいます。こういうバカの次元にまで突き抜けちゃう様な行動をするキャラには、この人はピッタリなんですよね。 帰還後に英軍の尋問官に「俺は賭けに勝った、賞品の煙草をくれ」とだけ書かれた大尉からの葉書が届いてラストですが、これはたぶんフィクションだと思いますけどなんかヴェラ大尉という人物の本質を上手く表現しているのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-08-20 21:26:27)
64.  一刀斎は背番号6 《ネタバレ》 
原作は五味康祐の小説で、奇想天外な野球ファンタジーに下町人情喜劇を合体させた様な感じです。武者修行のために合気道の達人との手合わせを求めて紀州の山奥から出てきた武術の達人・一刀斎が、ひょんなことからプロ球団に入ることに。そのきっかけが、試合前のアトラクションで稲尾和久からホームランをかっ飛ばしたいうのだからふざけてます。この伊藤一刀斎という男、身なりははかま姿でいかにもな格好で天丼が好物でこればっかり食べているというのがこれまたふざけてます。大毎オリオンズに入団してから全打席ホームランで39打席連続本塁打の記録を樹立するというんだから、もうふざけ過ぎです。 まあこの映画は大映がプロ球団を持っていたから撮れたようなもんで、後楽園球場にエキストラを入れてグラウンドでは現役の大毎や西鉄の選手にプレーをさせて撮影するなんて、実に贅沢です。剣の極意で本塁打を量産するのはいいんだけど、野球の事を全然判っていなかった一刀斎は守備はどうしてたんだろう?まあそこはご愛敬ということで(当時まだ指名打者制は導入されてません)。 というわけで野球の描写自体はしごく適当なんですけど、一刀斎を取り巻く下町の人間模様がけっこういい味出してるんです。一刀斎が住んでいる旅館の経営者家族や芝大門の天ぷら屋の親父さん、みんな実にキレの良いセリフのやり取りが笑わせてくれます。監督は誰かと思えば『狸御殿』シリーズの木村恵吾じゃありませんか、彼ならではのスピード感が溢れるユーモアは絶妙です。 ラストのヤンキースとの日米対決戦は予定調和ですけど、余韻を残したラストシーンは清々しさを感じさせてくれました。ちょっとした掘り出し物です、この映画は。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-04 23:49:21)
65.  思春の泉 《ネタバレ》 
石坂洋二郎の小説『草を刈る娘』の映画化で、日活でも吉永小百合と浜田光夫が主演の同名映画がありますが、これは本作『思春の泉』のリメイクなんです。ややこしいことに新東宝版も再公開されたときに『草を刈る娘』に改題されていて、現在観れるバージョンはこのタイトルになっています。 さてこの作品ですがいかにも石坂洋二郎の原作という感じの農村喜劇なんですが、実は掘り出し物でかなり面白いんです。舞台は東北のどこかの山村で、年に一度秋になると近所の集落から集まって馬草用の草刈りが行われます。この草刈りが木の枝や草でテントを作って泊まり込みのキャンプみたいな感じなんです。どっちの集落も長老みたいな婆さんがリーダーで、毎年お互いのグループの男女をカップルにして縁結びするのが愉しみというわけです。この草刈り合宿が実に大らかで好いんです。今年の縁結び候補は宇津井健と左幸子、宇津井はこれが映画デビューでさすが早大馬術部にいただけあって、裸馬をらくらく乗りこなしての初登場シーンはさっそうとしてました。左も本格的な主演はこれが初めてだったそうですが、やはりこの人は天才女優ですね、瑞々しいながらも農村の娘を生き生きと演じきっています。また性に大らかな農村の風俗がまた良いんですよね。左幸子の演じる娘も男性経験はないにしてもヤル気は満々で、「おら一生懸命子ども創るだよ、そして枯れた婆さんになりたいだよ」なんてセリフもあり、よく聞いたらとても生臭いことをこれだけカラッと言える女優は滅多にいないいんじゃないでしょうか。 監督は中川信夫で、朝日新聞で本作が好評だったのを観た森岩雄から東宝復帰のお誘いがかかったそうです。新東宝と言えばレベルの低いエロ・グロというイメージですけど、大蔵貢が来る前はこういう良質な文芸的なエロも撮ってたんですね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-03-25 20:26:48)
66.  現金に体を張れ 《ネタバレ》 
キューブリックという映画作家が撮った映画は13本ありますがどれもジャンルはバラバラで、その中で犯罪ミステリーはこの一本です。中期以降のキューブリックでは考えられないナレーションの多用がこの映画の特徴のひとつですが、そのナレーション自体はキューブリックらしい乾いて即物的なもので、このナレーションを使ったストーリー・テリングは、ロジャー・コーマンが『聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ』で真似してますね。登場人物の視点を変え時系列もいじくる手法も一緒で、『マシンガン・シティ』は本作のオマージュと言っても良いかもしれません。 出ている俳優たちもスターリング・ヘイドンはじめひと癖ありそうな顔つきばかり、おまけにフィルム・ノアールの悪女と言えばこの人しかいないマリー・ウィンザーまで出ているんですから、さすがキューブリックは良く判ってらっしゃる。カネを横取りしようとする一味の中にジョセフ・ターケルがチョイ役で出てます。彼はこの後『突撃』『シャイニング』にも出演しているんですが、実はキューブリック映画に三作品も出演したのは彼だけなんです。『シャイニング』のバーテンダーでは強烈な印象を残していますが、彼こそがキューブリックのお気に入りだったみたいですね。 競馬場のレースのシークエンスも徹底してドキュメンタリー・タッチで撮っているので緊迫感ありますね。有名なラスト・シーンを含め、小品ながら後世の犯罪映画に与えた影響は大きいと言えるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-02-04 22:04:10)
67.  初春狸御殿 《ネタバレ》 
いわゆる「狸もの」と呼ばれるジャンルがかつて邦画で隆盛を極めたということは知っていましたが、今回その「狸もの」を初鑑賞させて頂きました。監督の木村恵吾という人は「狸もの」の創案者で戦前から「狸もの」を撮っていて、本作がシリーズ初のカラー作品なんだそうです。 もう何本も撮られてきたので観客には周知している様なお約束ごとがあるみたいで、マキノ正博の『鴛鴦歌合戦』のような奔放な荒唐無稽さとは違った様式化された破天荒さが感じられます。なんせ何かあるたびに「さあ、狸祭りだ」と豪華絢爛な民謡ショーになっちゃうんですからね。それにしても、高倉健もそうでしたけど昔の映画スターの歌唱力はハイレベルですよね、でも鴈治郎の歌だけは放送事故級のひどさでしたけど(笑)。なぜか勝新が出てくると必ず登場するカッパ娘、実ははじめは自分にはカッパだと判らなかったのですが(だって頭にお皿が載ってないもん)、この二人のゆるーい踊りにはツボを刺激されました。 雷蔵と若尾文子の絡みも衣装を換えまくって見せてくれ豪華絢爛の一語です。エアー羽子板やらいろいろ優雅な舞いを見せてくれて、さすが雷蔵・若尾コンビです。でも梨園出身の雷蔵に言わせると、若尾の踊りは「なんかデンマーク体操やってるみたい」なんだそうです(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-01-19 20:14:59)
68.  戦艦シュペー号の最後 《ネタバレ》 
同じ英独の海戦をとりあげていても『ビスマルク号を撃沈せよ!』の様な悲壮感や滅びの美学といった要素は薄いですね。海戦が始まると英国側の視点だけになってしまうところはちょっと考えものです。予算や尺の関係かもしれませんね。 でもこの映画の凄いところは、4隻の英国とニュージーランドの巡洋艦のうち2隻は実際にラプラタ沖海戦に参加している実物で、他の2隻も艦形が良く似た準同型艦を使って撮影していることでしょうね。海戦映画は数あれど、その海戦に実際に参加した艦が出てくる映画って他にないんじゃないでしょうか。対するシュペー号は、もちろん現物は海の底なのでしょうがないですけど、米海軍の重巡セ―レムが演じていますがこれが全然シュペー号に似てない。セ―レムは重巡なのにポケット戦艦であるシュペーより大きいんですから困ったものです。ポケット戦艦という艦種は、巡洋艦より強武装だけど戦艦には太刀打ちできないというベルサイユ条約の制限下で建造されたドイツ独特の艦なので、艦隊戦をするには弱すぎて海賊みたいに行動して通商破壊戦をするのが精いっぱいだったんです。 この戦が第二次世界大戦での英独の初戦になるわけですが、双方とも正々堂々と戦ったというのがよく判ると思います。それが大戦が終わるころには互いに国際法を無視した壮絶な殺し合いになっていたというのは、実に皮肉なことです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-12-22 20:46:11)
69.  くちづけ(1957) 《ネタバレ》 
これが増村保造の初監督なんだけど、これがほんとに増村保造の撮った映画かと思うくらい瑞々しいタッチの作風なんですね。大人になりきれない子供といった感じの川口浩のキャラがまた良いんです。若いころの彼はセリフ回しに独特の歯切れの良さがあって、とくに増村作品でその傾向が顕著。これは増村監督の演出手腕の賜物と言えるかもしれません。川口浩が演じる大学生の、なんというか焦りに急かされている様な心情は良く判る気がします。野添ひとみも初々しくってイイなあ、じっとりしそうな役柄なんだけど、そこをあっけらかんとした明るさを前面に出して乗り切っています。そして、彼女が歌うちょっとレトロなんだけど情感たっぷりの主題歌がとても印象的なんです。 実は川口浩が川口松太郎の息子だと今回初めて知った次第ですが、母親の三益愛子まで共演していて“川口ファミリー劇場”みたいな様相です。川口浩は映画界で活躍したのはわずか五年余り、その後はご存知TV『川口探検隊』の人となってしまったのは有名ですが、個人的には同時代の裕次郎なんかより引かれます。演技力は川口の方が上だったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-08-28 21:34:48)(良:2票)
70.  攻撃 《ネタバレ》 
製作されてから60年近く経っているのですが、このジャック・パランスの死にざまを超える映像は未だにスクリーンに登場していないんじゃないでしょうか、まさに顔芸の極致です。大映のスタッフは、このコスタ中尉の死顔を参考にしてあの大魔神の表情を造形したのかもしれません(笑)。 これ観るたびに私は感じるんですけど、どうも最後のウッドラフ中尉の行動が物語から浮いている様な気がするんです。リー・マーヴィンが上手く立ち回って丸く収まるという終わり方の方が皮肉が効いていて良いと思うんですけどね。それじゃああまりに反軍的だということで、天の声がかかったのかもしれません。この映画が撮られたのは朝鮮戦争が終わったばっかりでベトナム戦争なんてまだ影も形もなかった頃ですから、これだけ軍隊内の恥部をさらしただけでも意義は十分にあったことは確かです。 そして私が好きなのはエディ・アルバートの卑劣漢ぶり、アルドリッチの映画に出てくる彼はいつもこんなキャラですけどね。アルドリッチ映画の華は卑劣漢キャラです(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-08-04 00:54:13)
71.  巨人と玩具 《ネタバレ》 
主人公たちの会社が必死になって売っているのが、自動車でも半導体でもなくキャラメルだと言うのが今の眼で見るととても奇異に感じることでしょう。1950年代とはいえ大手製菓メーカーが単品販売のわけがなく、これは高度なカリカチュアだと思った方が良いのでは。とは言え何とかして子供たちにキャラメルを買わせようとする涙ぐましいまでの景品商法を見ていると、“ヴァレンタイン・デーにチョコレートを送りましょう”なんて言うのは誰が考えついたか知りませんが天才的な販促キャンペーンですよね。 増村保造らしいモダニズムに溢れた映像で、21世紀の私たちからは判りにくいところですが、街並みや風俗は5年から10年は先取りした雰囲気になっています。日本初のグラビア・ガールが実際に登場したのはこの映画の10年あとだったそうですから。 強烈な印象を残すのは高松英郎の宣伝課長で、彼がまくしたてる宣伝理論は的を射ているけど恐ろしいまでの大衆蔑視に満ちていて、高松英郎の姿がナチスの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッべルスとオーヴァーラップしてしまうほどです。どの登場人物にも感情移入出来ない様な撮り方は上手いなと思いますが、安易なストーリー・テリングに走った部分も観られ、とくに川口浩の親友がいつの間にか野添ひとみのマネージャーになっているなんてちょっとクサ過ぎました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-06-01 17:10:36)
72.  何故彼女等はそうなったか 《ネタバレ》 
エログロ路線に突入する直前の新東宝映画で、こんな良心的な佳作を製作していた会社があんな風になっちゃうなんて何とも皮肉としか言いようがないです。『しいのみ学園』の清水宏が再び香川京子を起用して撮った作品です。もうこの映画はひたすら香川京子を愛でるのが正しい観かたです。ストイックに生徒の少女たちに愛情を注ぐ先生というキャラは、もう彼女以外には考えられない当たり役です。更生施設で彼女の愛情に守られてきた少女たちが出所するやいなや厳しい家庭環境から悲惨な運命に翻弄される、清水宏の脚本はエミール・ゾラの小説を思わせる冷徹さです。いったん世間に戻ってしまった少女たちの現実にはなんの助けも差し伸べられない無力な存在として香川京子を描く視点は、この映画を単なるヒューマニズム賛歌にすることなく余韻を残してくれます。 まだ辞書に“人権”という言葉が載ってなかったかの様な時代ですから、出所した少女たちに対する家族や世間の偏見がひどいことと言ったら無残なものです。昭和30年代は牧歌的な時代だったという幻想をふりまくのが最近の流行りですが、現実にはこういう残酷な世相の貧しい時代だったというのが正しいところでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-03-14 00:00:26)
73.  亡霊怪猫屋敷 《ネタバレ》 
医師が結核を患う妻の療養のため、九州の片田舎へ引っ越してくる。地元では幽霊が出ると噂されている江戸時代に建てられた古い屋敷を改装して医院を開業するが、妻は不気味な老婆を何度も目撃し首を絞められて殺されかける始末。困った医師は近所の住職に相談したら、彼から江戸時代に屋敷でおきた恐ろしい事件の話を聞かされる… 事件が解決した6年後東京の大学病院に戻った医師の回想という形式で映画は進行するのですが、冒頭のこの大学病院の描写が薄気味悪くてゾッとします。停電で真っ暗な廊下を懐中電灯の灯りを頼りに歩いていると、死んだ患者が看護婦に担架で運ばれているところに遭遇するんですが、ただ通り過ぎるだけなのに実に怖い。しかもこれはストーリーには全然関係ないカットで、さすが中川信夫、恐怖のマエストロです。 現代編はモノクロ、住職の語る時代編はカラーという使い分けもなかなかいいアイデアだったと思います。化け猫女優と言えば入江たか子が有名ですが、この五月藤江の老婆化け猫と言うのもなかなか味があっていいです。入江化け猫と違ってお歳ですから派手なアクションは見せませんが、化け猫映画お約束の念力女中操縦はバッチリやってくれました。ただあの髪の毛が猫耳になるのはちょっと、でしたね(笑)。障子に映る影を上手に使った映像は、ドイツ表現主義の影響を感じさせてくれて見事でした。 中川信夫の怪談映画は、絶望の中にも希望の光が射して終わるのが特徴で、本作もそんな彼らしく、可愛いオチがありハッピーエンドでした。 いやー、やっぱり中川信夫の怪談映画はいいですね~ 
[DVD(邦画)] 7点(2013-09-20 22:07:43)
74.  ケイン号の叛乱 《ネタバレ》 
H・ボガートは、ヒーローよりもクイーグ艦長の様な器が小さい小心者の悪党を演らせた方がはるかに存在感あります。不安感が強くなると眼が泳いできて、無意識に手の中ででかいパチンコ玉みたいな金属球をカチカチこすり合わせる演技、実に上手いですよね。あの音が彼の精神状態を象徴する演出でもあります。 映画化に際して原作をどこまで改変したかは判りませんが、海軍が協力してくれたってことは結末あたりをかなりいじったんじゃないでしょうか。でもF・マクマレイやH・ファーラーは彼らの個性にあった巧みな使い方だと思います。ラスト、H・ファーラーがおいしいところをみんな持って行ったと思ったら、実は意外な人が登場して締めてくれるところなんか一種のどんでん返しでした。 けっこう有名な映画の割には地味な印象でしたが、観てみるとなかなか楽しめる良作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-13 23:00:53)
75.  戦場にかける橋 《ネタバレ》 
ニコルスンと斎藤、両大佐の意地を賭けた文明の衝突はなかなか見応えがあります。斎藤や日本軍を描く東洋趣味は、ちょっと変だがまあ許容範囲でしょう。ただ昔から自分が理解できないのは、「将校は何で労役させてはいけないの?兵士はOKなのに」というジュネーブ協定の捕虜規定なんです。もちろん十分な食料を与えずにこき使うなんてのは論外ですけどね。たぶんこれには階級社会だったヨーロッパのモラルが色濃く反映していると思います。だからあんなにボロボロになっても秩序正しい英国捕虜たちの姿は、鉄壁の階級社会である大英帝国の皮肉な隠喩でもあるわけです。 面白いことに、太平洋戦争では日本軍捕虜は収容所に入れられると、将校と兵士の絆が綺麗にバラバラになってしまったそうです。捕虜教育ということを全くしてなかった旧日本軍の体質も一因でしょうが、日本人の国民性を考えるには良い材料かもしれません。 だからラストでクリプトン軍医が呻く“Madness!”という言葉には、単純に戦争の狂気だけを指しているわけじゃないと私は感じます。
[映画館(字幕)] 7点(2013-08-12 21:46:20)
76.  怪談累が渕(1957) 《ネタバレ》 
脚本やプロットがちょっと狂っているケースが多い新東宝のプログラム・ピクチャーですが、怪談噺は古典が原作なので秀逸な作品が多いのです。この映画は圓朝の『真景累ヶ淵』の前半部を脚色した中川信夫の初怪談映画です。深見新左衛門に斬り殺されたあん摩宗悦の娘お累が、知らずに新左衛門の息子新吉と恋仲になります。お累は三味線のばちが当たって出来た傷が化膿して顔半分がふた目と見られない醜い姿になってしまいます。これは仇の息子と出来ちゃった娘に宗悦の怨霊が呪いをかけたと解釈してよいかと思います(なるほど、罰が当たったというわけですね、落語らしい駄洒落です)。このお累の顔のメイクがなかなか凄くて、楳図かずおの怪奇漫画に出てくるような感じです。お累はばあやから新吉の素性を知らされたうえに傷が悪化して悶死してしまうのですが、新吉は最後まで自分の親が何をしたかも知らずに物語が終わってしまうのがミソなんです。この新吉という男が絵に書いたような色男で、奉公先のお久というお嬢様からもモーションをかけられてお累を見捨ててしまいます。この噺は大村陣十郎という悪徳浪人はいますが、お累・新吉・お久の三人は特に悪いことをしたわけではないのに、三角関係のもつれからみんな死んじゃうところが哀れを誘います。お累がお久への嫉妬に苦しむさまや優柔不断な新吉のだらしなさ、怪談噺の枠を超えてドロドロした愛欲劇として観ても面白いです。新東宝ピカイチの怪談女優である若杉嘉津子の妖しいまでの美しさをご堪能ください。
[DVD(邦画)] 7点(2012-12-06 20:57:11)
77.  暁の追跡 《ネタバレ》 
先ほど亡くなられた新藤兼人が脚本を書き市川昆が監督した警察もの映画です。新人警察官の池辺良(そういやこの方も先日鬼籍に入られましたね)が、新橋駅前の交番勤務をしながら、警察という組織になじめない自分に折り合いをつけつつ犯罪と対決すると言うストーリーです。ドキュメンタリー的な語り口を交えた撮り方は明らかにジュールス・ダッシンの『裸の街』の影響が感じられます。実際の新橋駅前交番にカメラを据えて撮ったところなどは当時としては斬新だったと思います。この交番、てっきり低予算ででっち上げたヘタなセットだと思いました、それぐらい汚くてボロボロなんです。思えば当時はまだ昭和25年、日本はまだ進駐軍に占領されていてマッカーサーが東京にいた時代なんですよね、復興途上だった日本の貧しさが垣間見えます。新藤兼人の脚本は丁寧に書き込まれていて、池辺良は勤務の合間に転職活動に必死だし同僚警官たちもキャラが良く描かれています。その中で光っているのは拳銃を暴発させてしまってクビになる伊藤雄之助で、ほんと若いころから味がある演技ができた人です。 随所に市川昆らしい才気あふれるカットが観られるなかなかの佳作です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-06-28 21:19:07)
78.  果てしなき蒼空 《ネタバレ》 
ハワード・ホークスの撮った西部(というか北西部)開拓物語。この映画を観ての感想は、「いやー、アメリカって広い国だわ」というところでしょうか。インディアンと毛皮取引をするためにミズーリ川を3,000キロも船で遡ってゆくのがお話しですので、西部劇でお馴染みの乾燥した土地ではなく、うっそうとした森と川の風景が堪能できます。登場人物が大きく分けて英語を喋るアメリカ人、フランス語を日常使っているフランス系アメリカ人(ケイジャンと呼ばれる)、そしてインディアンとなりますのでこの三者の言語ギャップがなかなか面白い。アーサー・ハニカットがフランス語で喋る船長に、「英語を使え!」と怒鳴るシーンが10回近くあった様な気がします。 なんせ大河を上流に向かって進むのですからそりゃ大変で、船員がロープで船を引っ張って進む有様です。ホークスは雄大な自然を背景にしてまだ素朴だったアメリカ人たちとインディアンとの交流をゆったりした詩情で映像化していて、そこはかとないユーモラスな雰囲気があってなかなか良いですよ。カーク・ダグラスもいつもと違ってギラギラしてなく、ちょっとのんびりした田舎者のキャラを好演しています。ダグラスが指を怪我して切断されるシーンは傑作です。
[DVD(字幕)] 7点(2011-02-08 23:46:05)(良:1票)
79.  禁断の惑星 《ネタバレ》 
製作されたのが昭和31年だと思うと、そのセンス・オブ・ワンダーのレベルの高さにはただ驚くばかりです。確かに映像はそれなりで今の視点で観ればショボいのですが、科学的な設定やディティールは当時ハリウッドで量産されていた他のSF映画とのレベルの違いは、ほとんどオーパーツ並みです。ただ宇宙船がモロ円盤なのはさすがに「?」ですが…。 まあそれ以上にびっくりしたのは、紅一点アン・フランシスの着ている衣装のスカート丈の短いこと! 生まれてから父親の博士しか人間を知らない彼女を乗組員のスケベ男たちがキスから始めて“女の歓び”を教えようとするのには笑ってしまいます(お父さん、ちゃんと性教育してください!)なるほど、これぞ“禁断の惑星”というわけですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-15 23:44:29)(良:3票)
80.  トコリの橋 《ネタバレ》 
むかーしTV放映で観た印象はあまり良くなかったけど、今観直してみると結構ていねいに撮られた作品だなと再評価しました。空母からの発艦シーンは結構細かく描かれているし、橋を攻撃する場面はもちろん特撮ですが当時としてはレベルが高い映像です(オスカー視覚効果賞とってます)。米海軍全面協力の割には、軍務や空母内の人間関係がシニカルに描かれているところは意外です。 入港するシーンで、甲板に並べたプロペラ機のエンジンを回して空母の位置を微調整するのですが、こんなこと本当にやっているのかとびっくりしました。そりゃエンジンが痛むと飛行隊長が怒るのは無理ないですよ。 最後に主人公があっさり戦死しちゃうところは、同じM・ロブソンが監督した『脱走特急』のF・シナトラを思い出しましたが、この監督はこういう無常観が好きなんですねえ。朝鮮戦争がテーマの映画ではお馴染みの日本風景ですが、まあこんなもんかなというレベルで収まっています。あの「ショウ・ボート」という米軍専用キャバレーは、いかにも国辱ものという雰囲気ですが、新橋に実在していたそうです。 G・ケリーが出演していますが、さすがクール・ビューティぶりは圧巻です。この映画、戦争映画にしては珍しく衣装がE・ヘッドなんですが、なるほど、G・ケリーが出ているからなんですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-07-28 21:57:14)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS