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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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981.  孫悟空 前後篇(1940)
日中戦争下で、中国を題材にした物語を扱っているのに、全然時局に絡んだ気分がなく、全編圧倒的にバタ臭い路線。音楽もディズニーを含めアチラものが平気で鳴りまくる。中国風ではなくアメリカ風。三人の従者がいれば、時局がら「桃太郎」を連想させてもいいのに、これは「オズの魔法使い」のほうだ。衣装もキンキラのだったり、金角銀角はSF風。とにかく戦争の緊張とは遠く離れた世界が展開し、笑いもヒステリックではない。悟空が美女に変身しても声はエノケンのまま、なんてのがおかしかった。高勢実乗の魔ものたちの踊りもよかった。変身競争でカニになる。でフィナーレだ。美貌が戻った高峰秀子はニッコリと笑い、ハイホーハイホーに、ソードレミー、ファーラーレー、ソーシドレーミレ、ドーラーソーのメロディが重なって、賑やかに歌いつ踊りつの場になると、なぜかグッときてしまった。日本人てこんなにいい人たちなのに、と、これからの5年間の苦難を思ってしまう。山本嘉次郎監督はこの後『馬』を挟んで戦争三部作に向かい、エノケンとの映画はもう戦争中は作られない。
[映画館(邦画)] 7点(2009-04-18 11:58:06)(良:1票)
982.  動物、動物たち
博物館の建て替えの記録。剥製が補修され、新たに陳列し直される。それだけのドキュメントなんだけど、あらためて剥製というものを理科の学習とは違った視点で眺められるのが面白い。剥製の“動かなさ”を描くには、写真じゃ駄目で映画でなければ捉えられないんだな。写真だとそれが生きてる動物なのか剥製なのかが分からない、動く映像で初めてその動かなさが分かるという逆説。生き物たちのその停止させられた表情の不自然さが、もの悲しいようなユーモラスなような味を出す。剥製師の趣味によってか、変に擬人化された表情を持たされてるものもあったりして。剥製師にきちんと折り畳まれる皮も不気味。補修という化粧を施され、ビニールに包まれ、新しい展示場に並べられてるシーンが壮観。別々に生き、別々の場所で死んでいった彼らが、集合し隊列を組まされ行進をさせられる。動物園で死んだり、交通事故で死んだりと、たぶん動物としては不自然な死を死んだものたち。カンガルーの子どももおそらくその親ではない腹に納められているのだろう。ちょっぴりグロテスクな味が添う。博物館好きにとっては、舞台裏が見られるという意味でも楽しい映画。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-17 12:03:37)
983.  コーカサスの虜 《ネタバレ》 
個人が、その個人以外の要件で裁かれることへの絶対的ないらだち。全編緊張していた映画ではなかったが、ラストでこのいらだちに至るテーマがキューッと絞られていくところが見事で、こういう映画は印象強い。少女が鍵を渡し逃がそうとしてくれるが「それでは君が罰せられる」と言って虜の青年はうずくまる。個人と個人の対話。その彼を長老は逃がしてやる。これも個人と個人の交渉。そこにヌッと個人を識別する能力のない近代兵器がバランバランと現われてくる。この凶々しさと言ったらない。なにやら牧歌的ですらあった戦争に、不意に現代が顔を出し、この個人の顔を失った時代がとても悪い時代であることを証明する。ひなびたワルツが、その悪い時代に滅ぼされた何かを弔い続ける。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-08 12:00:41)(良:2票)
984.  スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー 《ネタバレ》 
原付をさっそうと走らせてると自転車に追い抜かれていく、などスケッチのみずみずしさはいいんだけれど、ちと若さに迎合し過ぎてやしないか、と半ば反発しつつ前半は見ていた。酒と煙草と恋の日々なんてけしからん、と若さへの嫉妬半分。少女のほうも、大人の美人を小型にしたようなヒロインで、少女ならではの妖しさに欠ける、と不満たらたらだった。ところがラストに至って、それまで背景の人物と思われていた少女のお父さんが急に前面に出てくる。どちらかというとベルイマン映画にふさわしいような偏屈なキャラクターで、それまでも男の子にギターに関して問い詰めるあたりの描写がすごかったんだけど、その彼が呪詛を吐き散らしながら湖畔をさまよい歩く。皆が彼を探し回る。角笛のような音楽(というか音響効果)も素晴らしく、このシークエンスの映画としての純度の高さに目を見張った。どんな嫌われ者も心配してくれる人がいる。これが前半の、ウブな恋人たちを心配して引き合わせてくれる仲間たちのシークエンスと呼応し合い、破天荒な構造でありながら、けっこうしっくりとまとめ上げているのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-07 12:00:45)
985.  ミクロコスモス
そこらの草原が実はワンダーランドであったという発見。隠れていたジャングルが姿を現わす。植物と動物が、さらには水や空気までが親密に通い合っている世界。ミズグモっていうのだったか、空気を採取してきて水中の藻の中に巣を作っていくの、クモによって抱え込まれた空気の不思議な質感が新鮮だ。雷雨のスローモーションによる水の表情もすばらしい。無機質であるものが虫たちと同等に生き物めく。僕らはみんな生きている、って気分を実感する。微速度撮影が植物の動物性を見せ、高速度撮影が動物の植物性を見せる。そしてこれらはフィルムの開発によって初めて目にすることが出来た世界であることに、感謝せずにはいられない。ヴィーナスの誕生のような蚊の荘厳。あくまで一日のドラマでこれだけの物語が展開する、ってことは、これに四季の変化が加われば、さらに豊かな物語が紡がれていることだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-06 11:59:13)
986.  花つみ日記
この時代の、夢見る少女の世界がたっぷり展開しているのに価値がある。吉屋信子調全開。舞台は大阪の花街で、東京から転校してきたミチルと花街の娘栄ちゃん(高峰秀子)の友情物語に、先生芦原邦子への憧れが絡む。ペギー葉山の「学生時代」のなかの“清い死を夢見た~”なんて、こんな感じなんだろうなあと思った。二人のイニシャルを織り込んだ刺繍もすれば、絶交よ、なんていじらしい喧嘩もする。外の世界で嵐が吹きかけている時代に、ひたすら乙女心の世界に閉じ籠もって、なにかしらか細いものを懸命に紡いでいる。世の中が、国とか民族とか大きなものを大声で叫びだした中で、吉屋信子は、ささやかなものに固執した。一応ミチルの兄さんの出征を入れることで、時局に対応してみせてはいる。意外とミュージカル的な演出があり、芸妓となった栄子とハイキングのミチルとが、こもごも同じ歌を歌いながら別々に描かれつつ出会うあたり、葦原の歌が窓の外の生徒らの合唱に受け継がれるあたり、冒頭の竹ぼうきで校庭を掃除しているあたりなど、石田民三ってこういうのもやるのか、と思った。ミチルを演じた清水美佐子って知らない俳優だったが、その影の薄さがこの作品に似合っててちょっと記憶に残ってたのだけど、後に中村メイ子の自伝を読んでいたら、メイ子の家に住み込むほど終生親しかった女性だった、と出ていた。
[映画館(邦画)] 7点(2009-04-03 12:08:44)
987.  化粧雪
この監督はほんの数本しか見てなくて、代表作と言われるものもまだ残ってるんだけど、見た中では『夜の鳩』っていうのとこれが気に入っている。『夜の鳩』は酉の市の飲み屋が舞台だったが、こっちは節分の寄席。どちらも寒い季節のさびれた場所。物語よりも、そのさびれた雰囲気の味わいが絶品なの。成瀬が撮るはずだったのが、回ってきたのだそうだ。ラジオからエンタツ・アチャコの「早慶戦」が流れている。寂しい寄席。新しいものに押されている古いもの。大阪弁に押されている江戸ことば。息も白い。全体に何かうずくまっているイメージがある。新しいものに抵抗するというより、しのいでいる感じ。ヒロインを支えているのは、意地と孝行。とにかくおとっつぁんが生きてるうちは寄席を閉じたくない。それは空しいことかも知れないが、でも元いいなずけの手切れ金をピシッと断わり、さっさっと場内を斜めに横切っていく山田五十鈴はやはり美しいわけで、ピンと張りつめた快感がある。時代の流れに反抗はしないが、うちひしがれもしない。金をせびる兄、鋳物工場で働いている弟なども絡む。俯瞰の構図がしばしば現われ、それは見下ろされている惨めさにも通じるが、肩を寄せ合っているニュアンスにもなる。下足番の藤原釜足との図、ライティングもいいのかも知れない、そこだけ明るく隅が暗くなってて。舞台に残る豆の描写など的確。もっとたくさんこの監督の映画を見てみたいのだが、なかなか機会がなくて。
[映画館(邦画)] 7点(2009-04-02 12:11:10)
988.  恋におぼれて 《ネタバレ》 
天文学者の恋。望遠鏡→覗く人、とつながっている。『裏窓』の構造をコメディにしたような設定。最初不鮮明な映像が壁を白く塗っていくにしたがって鮮明になっていくとこは、なかなか映画的なスリルだった。男のほうは未練たらたら、女はひたすら復讐に燃えている。アパートに忍び込んだときも、男は匂いを嗅いでトホホしてるし。猿に口紅つけさせたり香水の水鉄砲したりと、陰湿な仕掛けが楽しい。壁の映像に二人で並んでフキカエをする楽しさ。一緒に並んで映像を見ていると、心が通じ合ってきてしまうものなのだ。作戦が成功していくとこを、実際に見せないで、オバアチャンが聞いた“ラジオドラマ”として伝えるシャレっ気。終盤にもう一つ鮮やかな場面があればもっと良かった。骨折にジンマシンと弱り目のタタミ込みはいい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-03-25 12:11:33)
989.  モハメド・アリ かけがえのない日々
スポーツマンとしての魅力より、“喋る男”としての魅力。自意識過剰と言ってしまえばそれまでだけど、とにかく自分についてのみ語りに語る。そうやって鼓舞しているのだろうか、なんと言うか、過剰に社会と化学反応する体質、まあそれがエネルギーになっているのだろうけど、なかなか面白い。自分の素早さを言うために「部屋のスイッチを切って電気が消えないうちにベッドに入っている」とか。とにかく燃え盛っている男なのだ。黒人パイロットに感動するところは、74年でもまだそうだったのかと思った。威厳というモチーフが底にある。しかし黒人国家も独裁社会で、全然黒人の天国ではなく、何人もの処刑の上のリングで戦っているの。
[映画館(字幕)] 7点(2009-03-17 12:05:12)
990.  NY検事局
シドニー・ルメットは、このころだってもう峠を越したと思われてたんだけど、見ればやっぱりいい。この人は“正義を通すことの困難さ”ってことをずっとテーマとしてきて、これもそのモチーフを軸に職業としての警官の生々しさを見せてくれた。張り込みの会話から突入へ、別にどうということもなさそうだった事件から警官汚職へと、話のすすめ方の手堅さが心地よい。内部調査の場の光と影の効果など、あれ? こういう画面も作る人だったか、と思った。生きた民主主義は、場合によっては法よりも個人個人の倫理的判断を優先する、ってとこが、アメリカなんだろうなあ。微妙に危ない面もあるけど。マンハッタンの夜景を生み出すタイトルが洒落てた。 
[映画館(字幕)] 7点(2009-03-09 09:06:13)
991.  ジャンケン娘
チエミ・ひばりが高三の修学旅行ってところからして、感動的である。そこに芸者のタマゴのいづみが絡むことで、日本調とポップス調の対比という幅ができる。“人身売買”に憤然とする、ってのも時代なら、チエミのお父さんが、娘たちは世間知らずだからなあ、と微笑みながら見ているのも時代。日劇でそれぞれ夢を見るスターシーンがミュージカル的見せ場になっていて、ラストでさらに爆発するかと思っていたら、窮屈なジェットコースターの座席で、一人ずつ歌うだけってのは物足りなかった。つまりこの時代は、ショーよりもジェットコースターのほうが新鮮な魅力だったのだろう。この三人それぞれにかわいく(本当です)、昭和も30年代になって、何やら新しい時代へ入っていくんだ、という気分が感じられる。ギトギトしたカラーの発色も懐かしい。けっきょくいづみの貞操が救われるのも、大企業の息子の思いつきってところが、これ以後の日本を見通してもいたような。提供明治製菓。
[映画館(邦画)] 7点(2009-03-03 12:20:41)
992.  全然大丈夫 《ネタバレ》 
話の枠組みはいたって古風、でも登場人物たちの造形の誇張がそれぞれの俳優たちに合っていて、私はかなり楽しめた。荒川良々の、幼稚と言われて怒る幼稚ぶり。「上から目線で…」とブツブツ拗ね、「一億兆円払え!」なんて叫ぶ。ゾンビで驚かせてそれを隠し撮りする悪趣味の持ち主だが、なんか憎めない。岡田義徳は、いい人ぶりっ子って言われるとシュンとなってしまういい人で、荒川といいコンビ。ここに劇的に不器用な木村佳乃が絡む。ティッシュペーパーの箱も開けられない人(私も不器用だが箱は開けられる、ただし最初の一枚目は必ずちぎれる)。古本屋の店番してるときの、エロ本買いにきた客との場が笑えた。当然仮想三角関係の結末は第三者田中直樹の登場となり、顔にアザのあるその人物が、コンプレックスに悩んでいる人としてでなく、ごく普通の隣人として描かれているのが、気持ちいい。荒川・岡田のゾンビメイクの対照という意味があったのかもしれないけど。欝のお父さん蟹江敬三の休業広告、マジックインキが途中で出なくなり、細く薄い鉛筆文字に変わる、それが回復すると、筆文字の葉書を寄越してくるわけだ。みんなもうちょっとだけ宙ぶらりんのままでいたいんだよな、憩いまくらなくってもいいから。
[DVD(邦画)] 7点(2009-03-02 12:19:03)(良:2票)
993.  貸間あり
主人公は周囲に重宝がられることの心地よさに安住してしまい、隣人たちのしたたかさに利用されていく。そういう主人公を聖人化せず、映画はちゃんと彼をも裁く姿勢を取っているところがいい。だから人情長屋ものにはならず、人々の間にあるヒンヤリしたものを描いているわけだ。それにしてもこの脇役陣の豪華さはどうだろう。掛け持ち妾をやっている乙羽信子の別れの儀式のおかしさ。益田喜頓もまだ後年の“いいおじいさん”になってなくて、悪意あふれる陰湿な人物を演じる、それがまた似合っている。アァァいう妻を持つ骨董屋の渡辺篤。密造酒の清川虹子が室内で体操するシーンの迫力。酒場でトマトジュースのおかわりを頼む加藤武。そしてもちろん隣人たちのしたたかさを代表する受験生小沢昭一…。なんて豪勢なんだ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-02-26 12:11:26)
994.  ブレーキ・ダウン
荒野で高速道路を走っていると、自分が「誰でもいい一人」になってしまう怖さがあるわけだ。そういうものは、たとえば都会の群衆の中でもっぱら感じられるものと思われがちだが、そこは田舎のほうが怖い。都会では全員が無名同士になるが、田舎ではガッチリ組まれたチームの中に無名のよそ者として入っていくことになるわけだから。というわけで前半はへんにリアルでけっこう怖かった。通り過ぎた車が向こうでターンしてこちらを見てる感じ。食堂での田舎の人たちの無関心、無表情。このまま不安感が持続する田舎の迷宮に入っていくって展開だとハリウッド映画にならないから、直接的暴力が襲ってきてレベルが一つ落ちる。でも上映時間90分ちょっとという手ごろ感が好ましい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-24 12:13:48)(良:2票)
995.  つぐない 《ネタバレ》 
名作といわれるメロドラマがしばしば戦争を背景にしているのはなぜか、という疑問があったのだが、これはその一つの答え。メロドラマは鎮魂なんだな。戦争で恋を成就できずに死んでいった若者たちに代わって、スクリーンの上で恋愛をさせてあげてるんだ。また、恋愛とはその人がまさにその人でなければならない状況、戦争は逆に個人が誰でもいい一個の部品になる状況、その対比もドラマに効果をあげてるんだろう。ただこの作品のカップルの場合、不幸の原因として戦争よりも語り手の関与が大きいわけで、この“つぐない”で許せるかどうかは観客の度量の広さに左右される。話者の、裁かれたかった相手についに裁かれなかったことの後悔の深さ・重さは伝わったけど。唐突に出来事があってから少し巻き戻して説明していく話法が、ラストでもちょっとずるく使われた。あと、姉セシリアが水のモチーフで統一されたこと。タイプライターのリズムが、これが書かれた物語であることを強調していたこと。海岸での長回しは見事だったが、つい撮影の大変さのほうに気が行ってしまったこと。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-23 12:11:28)
996.  股旅 三人やくざ 《ネタバレ》 
どじょっこふなっこのコーラスで季節を分ける。「秋」が仲代達矢、股旅もののシルエットが土手を枯れ枝ごしに歩いていく典型的なカットから始まる、秋空から曇天へと。これだけで観客は股旅ものの世界に没入できる。桜町弘子の憎悪で噛んだ口が愛情を込め出す演出。ちょい役だが、人情家のまかない浪花千栄子がいい。「冬」は一転、志村喬・松方弘樹で室内劇のおもむき。一人もん同士、子を求めるものと父を求めるもの、が家庭を夢見かけ、松方の笑いが崩す。任侠道ってのは、己れの心のなかに幸せを求める気持ちを認めてはならないのだ。とストイックで渋い秋冬のあとで、明るく菜の花が咲く「春」、中村錦之助が自ら任侠もののパロディをやる。子どもの小便の下流で水を飲んだりして、錦ちゃんかっこいい役ではないと最初から分かる。腹すかせて農民に一宿一飯の恩義を受け、コロシを頼まれるの。「で、それどういう人?」なんてあたりの口調がうまい。相手のサッと蝶を斬る手腕に、錦ちゃんもカチャカチャッとまねるあたりも笑わせる。追いつめられれば意地を見せるってとこが、任侠ものの型で、いくじなしの主人公でも同じ、ワーワー刀を振り回し、奇跡の逆転に向かう。剣豪宮本武蔵演じた直後にこういう役をやらせる東映の洒落っ気も嬉しいじゃないか。
[映画館(邦画)] 7点(2009-02-22 12:14:41)
997.  シーズ・ソー・ラヴリー
お父さんのジョン・カサヴェテスのシナリオ。ひとことで言えば、愛は厄介だ、という話で、お父さんの映画と同じく、心にガラスの破片が刺さっているような人々が右往左往する。ヒロインの演技がちょっとオーバーで、若きジーナ・ローランズで見たかったな、と思うも、隣人のジェイムズ・ゲンドルフィーニが絶品だから、まあいいか。後半の10年後の部分が、私はいいと思う。さらりと、あなたも好きだけど、エディを愛してるの、と言う。そりゃ、トラヴォルタも怒るわな、でも受け入れる。子どもとビールをのみかわす。エディは、子どもと結婚したんじゃない、と子どもの前で叫び、二番目の友だちになろう、と言う。愛は周囲のみか、己れをも傷つけ走り去ってしまう、ってことだ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-21 11:58:47)
998.  白い馬の季節
温暖化で草地が減ったせいもあるんだろうけど、それよりも時代の変化、遊牧だけで暮らしていけなくなった現代の遊牧民の家族。近くをトラックが頻繁に走るほど、都市化も進んできている。アメリカ映画のカウボーイものと似ている。あれも遊牧が農業に追われていくことの挽歌みたいなものだった。定住するものが流浪するものを駆逐する。その自分たちを追い立てるトラックにヨーグルトを売って、かろうじて生計を立てていく。追い立てるトラックは赤く、追い立てられる遊牧民を象徴するのは白い馬に白いヨーグルト。この白を守ろうとして、夫はドン・キホーテを思わせる活躍をするのだけど、ついにドン・キホーテのような衣装に包まれて敗北する。話の枠はけっこう大味な配置(ディスコとの対比とか)、しかし一つ一つの画面にそれを越えて訴える力があった。馬のいるカットすべてに、それだけでもう遊牧生活への思いが、流浪への憧れが詰まっていた。追い立てる赤に、中国共産党を見るのは考え過ぎだろうな。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-19 12:16:17)
999.  ジャッキー・ブラウン 《ネタバレ》 
主人公を演じるパム・グリアーの、開き直った安っぽさに痛快味があり、でも実質上の主役はロバート・フォスターでしょうな。しがない中年男の味。サミュエル・L・ジャクソンが悪い人、イキがってる馬鹿だが、それだけに危険というところ。周囲の人間みんなが馬鹿にしているのに気づかない。デ・ニーロはあっさり殺される効果として適役。マイケル・キートンは、ま誰でもいい役。ヒーロー、ヒロインともに“しがなさ”を生きてる共通項があって、そこに互いに惹かれていく。ドラマが動き出すのは中盤からで、なにやら裏切りいうか、騙し合いの匂いが立ち込めてきてワクワクさせる。一番の見どころは試着室の場、三者の経過を繰り返して見せる。キューブリックもやってたけど、照らし合わせの妙味、主観と客観の交錯、映画ならではの面白味でした。ジャッキーの好きという曲をカーステレオで聴く中年マックスがいじらしい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-17 12:12:00)(良:1票)
1000.  ここに幸あり(2006) 《ネタバレ》 
フランス生まれではない監督なのに、ここにはフランス映画の伝統が息づいている。前半の政治家たちのドタバタはクレールを思い出すし、後半のグータラ万歳はルノアールの精神に近い。ブハッと笑うところはないが、たえずニコニコしていられる。思えば最近のコメディって、ブハッとした笑い狙いが多く、こういうのはなかった。なにもこういうのが高級でブハッ笑いが低級だとは思わないが、いろんな種類の笑いの映画があってほしいもんだ。あらすじだけを取り出すと、「忙しかった大臣が罷免されたら人生が楽しくなった」と陳腐きわまりないものになってしまい、あんまり見たくなくなるけど、全体にある洒落た感じの心地よさは筋とは関係なく、ああこういう映画ってもう絶滅寸前かも知れない、と思いながら楽しく見られた。どこがどうとうまく言えない。たとえば省略、ヒョウが運ばれていくだけで次の大臣も失脚したのか、と分からせるあたり、とか、彫像を運んでて割ったかと思わせて鏡を割っただけだったり、とか、もっといい例があったと思うんだけど、それほど強く脳に刻み込まれるギャグではなく、ノホホンとした笑いなので、心地よさだけが思い出されてあとはぼんやりしている。ここんところがつまりこの映画の特徴でもあるわけで。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-16 12:18:24)(良:1票)
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