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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2400
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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101.  黒い十人の女 《ネタバレ》 
船越英二が演じる風松吉のキャラは、実はいろんな女優たちと浮名を流していた市川崑がモデルなんじゃないかな。それを奥さんの和田夏十が脚色しているところが、ある意味この映画で一番恐ろしいところかもしれません。とはいえ市川崑の死後雑誌に載った有馬稲子の赤裸々な手記などからすると、市川崑自身は風松吉みたいな優しさを武器にするタイプのプレイボーイではなかったようです。 物語自体はかなりブラックでちょっとシュール、冒頭から普通に演技している宮城まり子が実は幽霊だなんてこの時代の邦画にしてはかなり洒落た演出です。実質的にストーリーに絡むのは五人の女というわけですが、どの女優も芸達者なのが素晴らしい。とくに山本富士子と岸恵子の、決して荒々しいセリフを使っていないけどバチバチ火花が散るような演技対決は見ものです。船越英二のいかにも業界人らしい無責任な世渡りは秀逸、「彼は誰にでも優しくするけど、実は誰にも優しくないのよ」というセリフもありましたが、これはこの男の本質を鋭く突いています。ただ忙しくしているだけで決して仕事に情熱があるようには見えない船越英二が、会社を退職させられて岸恵子に軟禁されると急に「男の対面がつぶされた」と泣くわけでここにはなんか「お前キャラ変したのか」と突っ込みたくなりますが、実はここに高度成長期のサラリーマンの心理が良く出ています。実際は大して重要な仕事をしていないのに、脚光を浴びる業界にいるとそのこと自体に自分のアイデンティティを見出す、現代のサラリーマンにもあてはまるんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-02-28 00:11:28)
102.  陽動作戦 《ネタバレ》 
サミュエル・フラーの戦争映画は戦争を個人の目線で追うストーリーテリングがその特徴なんだけど、本作はそういう彼の作劇術とはちょっと外れたある意味普通の戦争映画と言えます。 世界中で戦争に明け暮れた大英帝国が「戦争するには世界で最悪の土地」と認めたのはビルマです。雨季の降雨量は半端じゃないし、地勢のほとんどはジャングルで高温多湿となれば西洋人にはそりゃ耐え難いでしょう。そのビルマで戦い抜いた米軍志願兵部隊の史実を基にした映画です。その部隊の創設者というか親玉が、フランク・メリルという准将で、当初三千人規模だった彼らの俗称が“メリルの匪賊たち”でこれが原題です。もっともこの俗称は、戦後メリル自身が話を盛ってでっち上げたもので、これもよくある手柄噺の一つでしょう。ストーリーはメリル率いる部隊が日本軍の後方に侵入して戦闘を続けて激戦地ミートキーナにまで苦労して行軍し先頭に参加するまでを、コンパクトに描いています。メリル准将は部下とともにミートキーナまで行軍して攻撃中に心臓病で倒れますが、実は史実ではかなり初期に発作で戦場離脱していて指揮をとっていないそうで、話しは大盛りになっているわけです。まあそれじゃ映画としたら面白くもなんともないし、そもそもこの映画には特殊部隊の存在を一般世間に宣伝したい米軍が協力していますから、これはこれでありでしょう。 ジャングルを徒歩で移動する軽装備の米軍と戦車も持たない日本軍ですから、戦闘シーン自体は地味です。でも米軍は“弾を撃てば必ず中る状態”なので日本兵はバッタバッタとやられてしまい、「いくら何でもそこまでヘボじゃないだろ」と突っ込みたくなります。それでも駅の操車場でのシーンでは、場内に沢山設置してある三角形のコンクリート・ブロックの隙間で繰り広げられる戦闘シーンは実に不思議な絵面で、この映画でサミュエル・フラーらしさが唯一出ていたところかもしれません。 最後のナレーションにもあるように“メリルの匪賊たち”は結局八割が戦死傷してしまったわけで、これは軍事的には全滅したということです。ビルマでは日本軍も米軍もお偉方の無茶な命令で兵士は大損害を強いられたのですが、最終的に戦争の勝敗によってかたや犬死かたや英雄と後世の評価が分かれてしまうのが、悲しいところです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-01-19 20:52:20)
103.  殺しの烙印 《ネタバレ》 
これは正真正銘のコメディですよ、それも日本映画では他に類を見ないスタイリッシュ・コメディです。 “コメが炊きあがるときの香りフェチな殺し屋” という宍戸錠のキャラは、別に深い哲学があっての設定ではなくなんとパロマガス炊飯器とのタイアップのおかげなんだそうですが、それを知ったときは思わず「まじか…」と絶句してしまいました。そして何度も見返してようやく確認できたのは、宍戸錠演じる花田と組織の中ボス薮原の両者の女房を小川万里子が演じていることです。もちろんメイクや髪形を変えているし彼女自身があまり特徴のない地味な面相(失礼)なので気づきませんでした(お前注意力散漫だと突っ込まれそう)。でも宍戸錠だって薮原に電話したら女房が出てきたことに気が付かないんだから(というか亭主が電話してきてるの女房が平気というのが凄過ぎる)、私と似たようなもんです(笑)。要は冒頭のクラブのシークエンスで薮原と女房が出会って出来ちゃったということなんでしょうが、普通の監督ならこんな演出ぜったいしません。 そしてこの映画のコメディ要素が大爆発するのは、宍戸錠と殺し屋NO.1が不思議な同居対決をするところで、これはもう抱腹絶倒するしかないです。身動きできない状況で尿意を催したら殺しのプロはどうするか?その場合は尿を放出してズボンを通して靴の中に溜める、これをまじめな顔で実演する殺し屋NO.1のプロフェッショナルぶりには大爆笑しました。 まあこれで鈴木清順が日活をクビになったというのは、トップの経営判断ですからしょうがないでしょう。むしろ深刻な問題だと思うのは、こんな才能ある映画作家がその後10年も映画に関われず生活が困窮したという当時の日本映画界の情けない状況でしょう。ハリウッドで現在巨匠と呼ばれる人たちで、若いころ製作者と対立してクビになったけど順調にキャリアを積んできた監督なんてゴロゴロいるのにねえ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-01-13 00:01:44)
104.  荒野の七人 《ネタバレ》 
これが黒澤明のあの傑作のリメイクでなければ西部劇としてはかなり面白いということができますが、比べるなというほうがムリというものです。まあ端的に言えば舞台を開拓時代のメキシコに置き換えたオリジナルの短縮版というところでしょうか。 ユル・ブリンナーが志村喬、スティーヴ・マックイーンが稲葉義男、ホルスト・ブッフホルツが三船敏郎(と木村功)などオリジナルのキャラが投影されていますが、みんなオリジナルの泥臭さが消えてスマートすぎるのが私には不満です。ブリンナーには志村喬の持っていた侍も百姓も引き付けるカリスマ性が全然感じられないし、ブッフホルツには三船=菊千代が体現した爆発的なエネルギーが決定的に欠けています。存在感のあるイーライ・ウォーラックを盗賊のボスとして前面に出して、村人が七人を裏切って盗賊に内通するなど元ネタを進化させたなと感じるところもあります。ラストも全然違いますけど、いったん追放された七人が村に戻るくだりがかっこよすぎて説得力がない。ラストであの有名なセリフを使って辻褄を合わせた感は否めなかったです。 とは言ってもあまりに有名なテーマ曲は何度聞いても気分が良くなるし、スティーヴ・マックイーンは痺れるほどカッコよいし、観て損はさせない一編ではあります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-16 23:13:26)
105.  戦争プロフェッショナル 《ネタバレ》 
これぞまさしく元祖・傭兵映画と呼べるんじゃないでしょうか。監督は名カメラマンでもあるジャック・カーディフ、この人がメガホンをとった映画は少ないけれどどれも一癖も二癖もある異色作ばかり、監督としてもいい腕しています。『戦争プロフェッショナル』とはこれまた凄い邦題ですけど、原題も訳すと『傭兵たち』なんだから傭兵=戦争のプロということであながち間違ってはいません。 お話し自体はコンゴの大統領に命じられて反乱勢力包囲下を突破してダイヤモンドを回収に行くという割と単純な展開。でも傭兵側の登場キャラが濃いというか癖が強いのばっかなんで面白いです。ロッド・テイラーと組む原住民出身の軍曹役ジム・ブラウンがいい味を出していて、二人の絡みがいわくありげだけど深みがないテイラーのキャラが持つ弱点を薄めてくれてます。子供でも容赦なく殺す元ナチ将校はいかにもな悪役ぶりだし、ほとんどアル中の軍医ケネス・モアも殺されると判っていても逃げない最期はある意味カッコいい。ダイヤが入っている金庫にタイムロックがかかっていて開くまで脱出できないというサスペンスも、捻りがあって良かったです。後味の苦いラストも含めて、こういう下手にヒューマニズムに逃げずに紛争を情け容赦なく描く映画は、ハリウッドでは到底撮れないと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-11-22 21:00:57)
106.  けんかえれじい 《ネタバレ》 
むかし観たときは「なんじゃ、こりゃあ」というのが正直な感想でしたが、観直してみると清順映画の中ではバランスがとれている撮り方で、中期までと区切ると本作が彼のベストじゃないかと思います。ケンカに明け暮れる高橋英樹が実はクリスチャンだという設定が妙な可笑しみを呼んでいまして、若さゆえの煩悩と信仰の板挟みで悶々となる姿は可笑しくてしょうがありません。硬くなったイチモツでピアノの鍵盤をたたくところは抱腹絶倒でしたが、それにしても若いってうらやましい(笑)。会津に舞台を替えた後半になると麒六の硬派ぶりが一段と激化するのですが、これが清順映画にしては珍しい純愛・悲恋ものになって幕が閉じたのはちょっとしたサプライズでありました。なにが彼女を尼寺(修道院)に行かせたのかはイマイチ判りませんでしたが、もっと判らないのはこの浅野順子を「ウッシッシー」の大橋巨泉がものにしちゃったことです…彼女に最期を看取ってもらえたなんて、巨泉は幸せな人生だったと思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-11-20 21:32:45)
107.  空飛ぶ戦闘艦 《ネタバレ》 
ジュール・ベルヌの小説『征服者ロビュール』と『世界の支配者』をリチャード・マシスンが足して二で割って脚色しています。おなじみのモネ船長みたいな科学者が高速で飛行できるまるで戦艦のような飛行船を開発、世界中の軍備を放棄させるために地球を飛び回って列強の兵器(おもに戦艦)を爆撃して破壊してまわります。この飛行船アルバトロス号の船長がヴィンセント・プライス、調査に向かってプライスに拉致されてしまう面々には無名時代のチャールズ・ブロンソンがいて、彼が善玉側のリーダーといった感じです。もっともリチャード・マシスンは「ブロンソンは致命的なミスキャストだ」と怒っていたそうですが。このアルバトロス号は飛行船の背中にヘリコプターみたいなローターが林立するレトロな形態、まるでカレル・ゼマンの『悪魔の発明』に出てくるような、というかデザイン自体がかなり影響を受けていると断じます。原作ではこの戦闘艦は地上では戦車の様に走行し戦艦の様に海上を進みなんと潜水艦の様に潜航できるというスーパー・ウェポンなんだそうですが、さすがにそこまで凝ったマシーンを再現する根性は製作陣にはなかったみたいです。 この映画の最大の弱点は、製作したのがディズニーやユニバーサルではなく、AIPというロジャー・コーマンと組んでドライブインシアター向けのC級映画を量産していたプロダクションだったことでしょう。とにかく特撮と合成が驚くほどチープ、冒頭の噴火シーンなんてただの書割ですから唖然とします。どうもこの映画で実際にプロップを製作したのはアルバトロス号のシーンだけみたいで、米英の戦艦を撃沈するところは他の映画の特撮シーンの使いまわし、19世紀後半の時代設定なのに英戦艦に至ってはどう見てもナポレオン戦争時の戦列艦ですからねえ。あとなぜかエジプトに飛んで陸戦中の勢力を爆撃するのですが、これは39年の『四枚の羽根』のシーンをまるまる使っていて、この流用をしたいがためにエジプトに行かせたことはバレバレでした。でもこの『四枚の羽根』の戦闘シーンが大迫力でしかもカラー、皮肉にもここがいちばん盛り上がるシークエンスです。 チープなところはどうしようもないけれど、ドラマ部分は意外とよく撮れています。それはヴィンセント・プライスの好演というか存在感に帰するところが大だと思います。最初に米艦を撃沈するときにはすごく躊躇を見せるのに、エジプトになるとまるで殺戮を愉しむかのような壊れっぷり、理想に走りすぎた人間の狂気がよく出ています。ラスト、部下たちが退艦命令を拒否してプライスとともに死を選ぶところなんか、思わずジーンとしてしまいました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-11-06 13:27:10)(良:1票)
108.  東京流れ者 《ネタバレ》 
物語自体はベタな任侠もので、それ以上でも以下でもないです。ただ舞台の一つとなる東京のクラブのセットは、白を基調にした清順らしいアヴァンギャルドな異空間となっています。60年代の鈴木清順の作品はモノクロというイメージが強いんですが、カラー作品を撮れば彼の天才的な色彩感覚に魅了されてしまいます、でも彼のカラー映画は勢いが失われてきた晩年に撮られたものが多いのが残念。佐世保のクラブは造りからして西部劇のサルーンそのもの、大乱闘もウェスタンお約束のパロディです。だけど映画自体は思ったよりはるかにまともで、『殺しの烙印』みたいなハチャメチャさは影を潜めています。まあ若き日の渡哲也はいかにも不器用そうな感じで、宍戸錠のようなはっちゃけを期待するのが無理ってもんでしょう。そういう観点からは、私には期待外れの一編でした。 余談ですがヘアドライヤーのメーカーとタイアップしていたみたいで、二か所不自然にドライヤーに言及するセリフやシーンがあります。松原智恵子が楽屋でセットしているシーンでは壁に貼ってあるそのドライヤーのポスターが大写しされますし、ほとんど五分刈りの渡哲也がドライヤーを髪にあてていたのには、そのわざとらしさに爆笑してしまいました。この映画で唯一の笑えるところでした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-11-03 23:24:00)(良:1票)
109.  豚と軍艦 《ネタバレ》 
唐獅子みたいなご面相で決して美人とは言い難い吉村実子、でも不思議とこの人には引き付けられる魅力があるんです。まして本作が17歳のデビュー作、とても高校生の新人とは思えない溌溂とした演技が素晴らしい。数年前に『徹子の部屋』に出演しているのを見ましたが、すっかり魅力的なおばあちゃんになっていて感慨深かったです。 今村昌平の最高傑作と言えば、やはり本作になるんでしょうね。この映画が若き日のマーティン・スコセッシに衝撃を与えたという逸話は有名ですが、確かにピカレスクものとしては『グッドフェローズ』に通じるところがあるかもしれません。今村昌平らしく“敵はアメリカ”“悪はヤクザ”という徹底的に冷徹な視点、ヤクザ業界とズブズブな東映じゃないのでヤクザ組織のクズっぷりをこれでもかと突き付けてくれますが、ここもマフィアに厳しいスコセッシと通じるところがあるのでは。でも長門裕之と吉村実子のカップルはまさに「どぶの中の青春」という感じですけど、まだ少年の面影が残る長門裕之の弾けっぷりが見ていて愉しいです。印象良かったのは兄貴分の丹波哲郎で、肩の力が抜けた軽やかなコメディ演技ができたとは意外でした。丹波が横須賀線の電車に飛び込もうとするシーンで線路際に建っている大きな日産生命の看板、強烈なブラックユーモアでした。でもよく見るとタイトルロールに「協賛 日産生命」と出てました(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-12 23:08:36)
110.  荒野を歩け 《ネタバレ》 
時代が1930年代のニューオリンズで高級娼館が舞台とくると原作はテネシー・ウィリアムズかなと思いましたが、別人の小説の映画化でした。 ぶっちゃけて言うとこの映画の見どころは、カッコよすぎるソウル・バス謹製のタイトルとジヴァンシィ・モデル出身のキャプシーヌのクールな美貌、そしてデビュー間もないジェーン・フォンダのダイナマイト・ボディといったところでしょうか、はい。ストーリー自体はテネシー・ウィリアムズの戯曲の劣化版といった感じです。時代が30年代の南部地方なんですが、なんか映像の雰囲気にはそれらしさが感じられないのがいまいち乗り切れない要因なのかもしれません。冒頭でローレンス・ハーヴェイがヒッチハイクするトラックがもろ1950年代以降のタイプなので引いてしまいました、でもこの後に登場する車はちゃんと30年代風だっただけに首を捻らされました。このローレンス・ハーヴェイがなかなか間抜けな奴でして、探し当てた元カノがどう見ても高級娼館としか見えないところに住んでいるのに、彼女の現在の職業が判らずにプロポーズするという鈍感さには笑うしかありません。このハーヴェイのキャラも判りにくくて、テキサスの田舎農夫には見えないので感情移入もできません。フォンダのほかにも、アン・バクスターとバーバラ・スタンウィックと脇を固める女優陣は豪華なので、結末は見え見えですがメロドラマ好きにはお勧めかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-09-05 23:57:10)
111.  恐竜グワンジ 《ネタバレ》 
職人レイ・ハリーハウゼン御大、相変わらずイイ仕事してますね。ストーリー自体はこの手の恐竜映画の王道というか皆様ご指摘の通り『キングコング』の焼き直しでお目当ての恐竜も一時間近く経たないと登場しませんが、そこまでの本編ドラマが予想以上によく撮れています。舞台はメキシコ、時代は19世紀末、登場キャラはワイルド・ウェスト・ショー一座のカウボーイたちというプロットがなかなかな秀逸です。おかげで恐竜を投げ縄で捕獲しようとする面白い映像を見ることができました。主役のグワンジ君は現在の恐竜映画では主流のティラノ型ではなくアロサウルス・タイプなのが時代を感じさせますが、背丈が三メートル弱のアフリカ象ぐらいの大きさというのが、実写との合成を考慮されたちょうど良いスケールになっています。というかこれは『地球へ2千万マイル』の金星竜イミールともほぼ同じサイズで、ハリーハウゼンが好きなスケール感なのかもしれません、ちなみに競技場から大聖堂のラストへの流れはほぼ『地球へ2千万マイル』の再現と言えます。この映画はハリーハウゼンがリキを入れたにもかかわらず全米ではヒットしなかったそうで彼の最後のモンスター映画になってしまいましたが、数ある恐竜映画の中でも珠玉の一編と呼べるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-09-01 23:30:35)(良:1票)
112.  明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史 《ネタバレ》 
当時まだこの世にいた阿部定本人を出演させたというのがウリ文句の作品ですが、それ以外はなんの見どころもないというのが正直な感想。その阿部定は短時間の路上インタビューをドキュメンタリー・タッチで撮っただけ、同じ阿部定事件を題材にした大島渚が『愛のコリーダ』で使った手法の方が遥かにインパクトは強いと思います。いちおうオムニバス形式になってますが、とりあえず阿部定事件の企画があってその他は付け足しという感じで撮影されたような気がしてなりません。だいいち、『明治・大正・昭和』と銘打っておきながら『大正』の事件がないといういい加減さ、これぞ「看板に偽りあり」そのものです(笑)。 いちおう“女性が犯人の殺人事件オムニバス”という形式になっていますが、その中に小平義雄の事件が入っています。これは有名な女性連続殺人事件でもちろん女性が被害者なのですが、「この事件は女の魔性が誘発したものなのか?」なんていうナレーションを入れてごまかしてますが、これはちょっとひどすぎでしょう。こんなソフトポルノまがいのネタにされて、遺族から抗議はなかったんでしょうかね。現在の若者には想像つかないでしょうが、60年代の日本なんて民度の低い何でもありの時代だったんですよ。 吉田輝雄が狂言回し的な役柄の監察医として出演してますが、冒頭で自殺した妻の検死解剖をするところから始まり「なぜ妻は自殺する羽目に陥ったのか、犯罪に巻き込まれたからではないか?」と過去の事件の資料を検証するというストーリーテリングになっています。妻の自殺の謎を解明するのになんで過去の女性犯罪を調査するのかが謎ですが、そっちの解明は全く忘れられてラストの「けっきょく妻の自殺は謎のままだ」というナレーションで閉める、これぐらいいい加減な脚本もちょっと珍しいぐらいでした。石井輝男、酔っ払って脚本かいたのかな?
[CS・衛星(邦画)] 2点(2018-08-07 23:01:13)
113.  アメリカ アメリカ 《ネタバレ》 
「私の名前はエリア・カザン、血はギリシャ生まれはトルコ、伯父の移住でアメリカ人になった」というカザン本人のナレーションで始まります。原作は自身が執筆した長編小説、紆余曲折がありながらもここまでキャリアを重ねてきたところでの自分のルーツ探索をテーマにする、どの分野の人でも頂点から坂を降りだしたときに見られるパターンですが、カザンもこの罠から逃れられず、本作が米国で映画賞をもらった最後の作品となりました。 主人公の若き日の伯父が移民として合衆国に上陸するまでの紆余曲折・波乱万丈のストーリーですが、とにかく長いお話なので気持ちの準備が必要です。主人公がトルコの内陸部の故郷から首都イスタンブールにたどり着くまででも、たっぷり40分はかかるんですからね。この旅はお人好しの田舎青年が狡猾なトルコ人無頼漢に身ぐるみはがされ無一文にされてしまうわけですが、けっきょくこの無頼漢を殺してしまうという大罪を犯してしまいます。治安が乱れ切っていたオスマン帝国ですから、その後に警察が捜査している様子はないのですが、彼の「何がなんでもアメリカに行きたい」という執念を支えるのにこの罪の意識が影響を与えていることは間違いないでしょう。港の荷役労働で旅費を貯めようとしてもうまくゆかずテロリスト・グループに間違われて銃撃されて重傷を負う、もう悲惨の極みです。イケメンなところを見込まれて金持ちの絨毯商人の娘の婿になる幸運をつかみますが、ここからがいけません。嫁は器量の方は並ですが気立てが良いし義父も実の息子のようにかわいがるのですが、それでも青年は婚約破棄してでも単身で渡米しようとします。ここが見る人には最大の?で、確実な幸せを放棄してまでしてなんでこの青年が渡米に執念を燃やすのかが理解できないと思います。殺人の罪の負い目があったのかもしれませんが、とても普遍性がある行動とは思えませんし、この映画の最大の欠点とも言えるでしょう。それでも多民族国家で被支配民族が味あわされる悲哀はひしひしと伝わってきます、これは日本人には決して実感できないことでしょう。 オスマン帝国のギリシャ人は第一次大戦後の混乱期に虐殺されたりして大変な目に遭いますので、結果的にはカザンの伯父の選択は正解だったことになります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-06-29 23:01:05)
114.  わらの女 《ネタバレ》 
この映画が撮られた64年は、ジェームズ・ボンドのイメージが定着してしまうことに危機感を持ち始めたショーン・コネリーが非007映画に出演しだしたころで、同年には『マーニー』なんかにも出ています。つまり『ゴールドフィンガー』と同時期のコネリーだったというわけですが、劇中でほとんど笑顔を見せないリヒルで冷徹なキャラを見事に演じ切っています。もっとも彼がこの映画に出演した理由が名優ラルフ・リチャードソンと共演できるからだったそうですが、さすが名優サー・ラルフだけあって怪物的な大富豪で強烈な印象を観る者に残してくれます。ヒロインは原作では虚栄心の強いつまり嫌な女というキャラ付けですが、ジーナ・ロロブリジーダが演じる看護婦はイタリアの田舎娘でコネリーの計画に乗せられるが、(それが愛なのかはともかくとして)非情な大富豪の心を開かせるほどの魅力を待った女性として描かれています。 原作はカトリーヌ・アルヌーの有名な推理小説ですが、この傑作の映像化としてみると本作は大いに問題があると言わざるを得ません。なんせ原作は史上初めて完全犯罪が成立する推理小説として有名ですが、この映画はそれをハッピーエンド、つまり犯人の目論見が外れて完全犯罪に失敗するという結末にしてしまったんですから、何とも況やです。ハリウッドには「犯罪が成功する映画を撮ってはいけない」という不文律があったことは有名ですけど、英国映画界でも同じだったんでしょうね?でも肝心の結末を改変(改悪?)しちゃったら、この原作を映画化する意味がなくなっちゃうんじゃないでしょうかね。
[CS・衛星(吹替)] 5点(2018-06-06 22:37:40)
115.  893愚連隊 《ネタバレ》 
なんでも、この映画は東映が初めて製作した現代ものヤクザ映画なんだそうです。つまり、『仁義なき戦い』の偉大なるルーツというわけですね。撮影はモノクロで、この後東映のお家芸になる隠しカメラを使ったゲリラ撮影を交えたオール・ロケ、音楽はジャズっぽいサントラで東映京都撮影所では確かに撮ったことのない類の映画だったわけです。主演の松方弘樹だってまだ新人同然、荒木一郎や近藤正臣など中島貞夫がチョイスしてきたキャストが、キャラに見事にはまっています。任侠ものとは一線を画したピカレスク・ロマンなわけですが、主人公たち愚連隊がやってることは感情移入できないエグい悪事に過ぎず、それを明るいサバサバしたタッチで見せてくれるので、なんかヘンなテイストでもあります。ヤクザと愚連隊の違いは親分・子分の関係ではなく売り上げ(?)は平等に分配、「愚連隊は民主主義やで!」というセリフはまさに迷言です。そんな連中に古いタイプの天知茂が加わってから彼らの運命が狂いだすのですが、そこはなかなかバランスの取れた脚本かと思います。参謀役の荒木一郎がまた上手くって、後年のあまりセリフがない演技しか知らなかったけど、この人喋らせたら凄いんです。もっとも愚連隊内の会話は、きつい関西弁に隠語だらけで半分ぐらいしか理解できませんでしたけど。 考えてみると、同じ松方弘樹が主演の『恐喝こそ我が人生』と主人公と仲間のキャラ設定がそっくりなんですよね。『恐喝こそ我が人生』は舞台を東京に変えた本作の後日談なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-05-31 22:29:37)
116.  女王陛下の007 《ネタバレ》 
自分でも意外なことに、今回生まれて初めて『女王陛下の007』を観たことに気が付きました。公開当時はジェームズ・ボンドがショーン・コネリーじゃないということに強烈な違和感があったのですが、観てみるとこれは子供が観ても理解できない、大人になって観て初めて真価が判る種類の映画です。まさか007シリーズでホロリとさせられるとは、想定外でした。正直、本作は今まで自分が観た007シリーズの中でもトップクラスの出来で、近年になって世間の評価が高まってきたというのは納得です。 まずサントラが抜群にイイ。サッチモが歌う「愛はすべてを越えて」はもちろん知っていて好きな曲ですが、本作の主題歌だったとは迂闊にも知りませんでした。このアレンジが全編に流れるだけでエモくなります、あの騒々しい“ジェームズ・ボンドのテーマ”がオープニング以外では上映2時間を過ぎてからほんのちょっとだけ流されるにとどまっているのも、ナイスです。イオン・プロが関わっていないジョン・ヒューストンの『カジノロワイヤル』を除けば、本作のサントラはシリーズ中で最高なんじゃないでしょうか。アクションも抑制気味なのも良かったです。アルプス山中が舞台なだけあってスキーに始まってカーリング(現在行われている競技とは細部がだいぶ違ってました)そしてラスト・チェイスはボブスレーと、まるで冬季五輪とタイアップしてたみたいです。今回の悪役ブロフェルドもシリーズ恒例の“何がしたいのか良く判らん症候群”が重症です。「ウィルスばらまくぞ」と国連を脅迫した見返りが自分の恩赦と引退後の爵位の保証って、えらいみみっちい、金正恩の方がはるかに器がでかい(笑)。それにしても、ブロフェルド、スキー上手すぎでしょ(笑)。 そしてついにジェームズ・ボンドが結婚、それも欧州でNO.2の犯罪組織のボスの娘!結婚式でベソをかいているマネーペニーおばちゃんが、抱きしめてあげたいほどいじらしい。そしてご存知悲劇の幕切れとなるわけですが、ボンドよ、なんでブロフェルドの死体確認をしなかった?テレサの死にはお前の責任が多々あるぞ! でもやっぱ本作のボンドはジョージ・レーゼンビーで正解だったのかもしれません、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアだとだいぶテイストの違う映画になってしまったでしょうね、悪い意味で。
[DVD(字幕)] 8点(2018-05-29 22:53:03)(良:1票)
117.  追跡(1962) 《ネタバレ》 
監督ブレイク・エドワース・音楽ヘンリー・マンシーニの黄金コンビでモノクロ撮影の犯罪サスペンスを撮っていたとは意外や意外、だいたいコメディじゃないシリアスな映画をエドワースが撮っていたことにもびっくりです。 銀行員のリー・レミックはある日自宅ガレージで顔を見せない男に脅迫されます。要求は、勤め先から10万ドルをくすねて持ち帰れ、成功したらお前にも2割分け前をくれてやる、もちろん警察にばらしたら妹ともどもあの世行きだ、ということです。ところが彼女は速攻でFBIに電話しちゃうんですが、なぜか部屋に隠れていた犯人に昏倒させられ「やると思ってた、でも二度目は許さん」と捨て台詞を残して犯人は消えてゆきます。 シャープなモノクロ撮影で序盤は雰囲気満点なんですけど、なんか脚本が甘いんですよね。もちろんすぐにFBIが捜査に乗り出して来て姿を見せない犯人とヒロインの攻防になるわけですが、彼女が通報してFBIが動き出していることに犯人が気づいていないというストーリーテリングが、なんかおかしいと思います。中盤では犯人の中国系の愛人親子が登場して話はぶれるし、けっきょくこの愛人は中途半端にフェードアウトするから余計にイラっとします。知能犯だと思わせるべき犯人像も、途中から画面に登場させてしまい単なる粗暴犯ですということが、バレバレになってしまいます。でもこの犯人のキャラ自体は不気味かつ変態チックで、女装して女トイレに現れるシーンは「うわっ、なぜか樹木希林が出てきた!」とびっくりさせられることは必定です(笑)。 SFジャイアンツが試合中のキャンドル・スティック球場がラスト・シークエンスになり、これを『ダーティハリー』とのかかわりを指摘する向きもありますが、確かにそういう雰囲気は感じられました。そうそう、リー・レミックの妹役が懐かしい『探偵ハート&ハート』のステファニー・パワーズだったことも忘れてはいけません。ほとんどデビュー仕立てのころだったみたいです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-04-29 22:38:11)
118.  一万三千人の容疑者 《ネタバレ》 
冒頭で、当時の東映社長である大川博の前口上が流されます。まあこれは「この映画は義展ちゃん事件を再現していますが、このような悲惨な事件が二度と起こらないことを願って製作いたしました」というような趣旨ですが、さすがに「ヒット作が欲しくて撮りました」とは言えませんよね。こんな興行側の言い訳はどうでも良いんですけど、犯人が逮捕されてから一年余りしかたっていない時点で映画化しちゃうところに、当時の日本映画界がまだ持っていたバイタリティを感じさせてくれます。それに比べて現在の日本映画界のだらしなさは眼を覆うばかり、なんせあのオウム真理教事件ですら正面から取り組んだ作品が未だに製作されていないんですからねえ。 私らの世代には義展ちゃん誘拐事件といえばいまだに誘拐事件の代名詞のように記憶に刷り込まれていますが、こうやって丁寧に事件の推移を見せられると、いろいろなことが改めて見えてきます。これは史実通りなんですけど、身代金受け渡し時の警察の失態・無能ぶりには驚くべきものがあります。そして犯人逮捕まで2年以上もかかったとは知りませんでした。逮捕の突破口になったアリバイ崩しの攻防戦もまるで推理小説みたいな展開で、まさに“事実は小説よりも奇なり”です。 わたしの中で「ベテラン刑事を演じたら日本一」の称号を与えられているだけあって、芦田伸介はハマり役でした。これも多分に幼いころTVで観ていた『七人の刑事』からの刷り込みがあるんでしょうね。でも、のらりくらりとウソをついて刑事たちをはぐらかす犯人役の井川比佐志が予想外の好演で、この人は善人役だけが持ち味だったんじゃなかったんだな、って再認識させられました。また音楽担当があの伊福部昭で、この救いようがない悲惨なお話しにピッタリのサウンドを聞かせてくれます。 尺は短いんですけどあまりに救いのない事件なので、ダウナーな気分にさせられること間違いなしです。やはり恩地日出夫が監督した泉谷しげる主演のTVドラマ版の方が出来は上かなと思います。そういや、このTV版も刑事役は芦田伸介でしたね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-04-26 00:08:28)
119.  野獣の青春 《ネタバレ》 
原作は未読ですが、どうも大藪春彦の『人狩り』をかなり翻案した内容みたいです。大藪春彦の小説は独特の文体にはまって昔よく読んだんですけど、映像化されると凡作・失敗作になった映画が多いという印象が強いですね。この映画はその中でもましな方だという感じですが、鈴木清順が撮っていますから原作はあくまでモチーフと思った方が良いでしょう。 モノクロ映像の殺人現場の室内で、テーブルの花瓶に活けられた花だけが真紅の色彩を放っている、初っ端から清順ワールド全開です。でも清順の持ち味であるアヴァンギャルドな映像はどちらかというと控えめな印象であります。アヴァンギャルドとハードボイルドとは相性が良いと思うので、もっとぶっ飛んでも良かったかもしれません。それでも小林昭二と川地民夫のボス兄弟の変態っぷりをはじめ、登場キャラたちの妙な作りこみ具合は訳が判らなくて面白かったです。そう考えると、主役が宍戸錠というのがミスキャストだった気がしてなりませんでした。この人はどう見たってハードボイルドが似合うタイプじゃないでしょう。 余談ですけど、現金強奪のシークエンスで発煙筒をダイナマイトに見せかけて発煙させますが、これって後に起こる三億円強奪事件と手口が一緒なんですよ。あの犯人ももしかしてこの映画を観ていたのかも…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-04-21 23:38:49)
120.  恐怖(1961)
ご存知クリストファー・リーが出演しているのでお分かりの通り、ハマー・フィルム謹製でございます。“オール・ユー・ニード・イズ・ホラー”がモットーのハマーにしては珍しい、ホラー風味ではあるが本格的なスリラーです。「ヒッチコックが撮りました」と言っても通るぐらいのストーリーテリング、なかなかやるじゃないか、ハマー。邦題の『恐怖』というのはちょっと大げさかとも感じますが、原題の方も“Fear”を強調してるしポスターからしてホラー映画と間違われることを期待しているようにもとれます。主演はスーザン・ストラスバーグ、アクターズ・スタジオの創設者の娘がハマー映画に出演していたとは知らなんだ、です。 ラストのどんでん返しが売り物の映画なのでレビューを書くのは難しいんですけど、スーザン・ストラスバーグの最初の登場シーンでの会話で「これは、ひょっとして…」と頭によぎるものがありました。そして見事に予感が当たりました。いつもぼんやりと映画を観る私でも判っちゃったぐらいですから、気が付いてしまう人はたぶん多いと思いますよ。「そんなこと、あり得るか?」と首を傾げたくなるかもしれませんが、ミステリーはやはり雰囲気が愉しめるかが大事な要素です。シャープなモノクロ撮影とサクサクしたストーリーテリングの効果もあり、私は十分に愉しめました。難を言えば車椅子に頼るしかないヒロインというプロットがいまいちストーリーに反映していなかったところで、ヒッチコックならここを巧みに料理しただろうな、と感じてしまいました。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-04-09 22:47:35)
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