Menu
 > レビュワー
 > かっぱ堰 さんの口コミ一覧。6ページ目
かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1248
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334
>> カレンダー表示
>> 通常表示
101.  バトル・オブ・ヒーロー 《ネタバレ》 
1939年9月のドイツ軍のポーランド侵攻時に、自由都市ダンツィヒ(現在のグダニスク)で起きた「ヴェステルプラッテの戦い」を題材にした映画である。この戦いがポーランドでどう扱われてきたかは知らないが、当初は12時間しか保たないと思われていたのが7日間も健闘したことで賞賛されたということかも知れない。現地は第二次世界大戦の始まりを象徴する場所として、今も建物などが保存され記念碑も建っているらしい。 戦争映画としては、ポーランド陣地が散発的に攻撃される場面が続くだけで、大した盛り上がりもないので一般の期待には全く応えない。わずかに目立つのは序盤で、停泊中の戦艦が艦砲射撃したのと、街の方から水路を越えて急降下爆撃機が来襲した場面くらいのものである。なおこの場にいたドイツ戦艦「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」は1908年就役の前弩級艦で、当時すでにとんでもなく旧式なので浮き砲台の役目だけをしている。  登場人物としては、実在の人物であるヘンリク・スハルスキ少佐とフランチシェク・ドンブロフスキ大尉(劇中の「クバ」)のダブル主人公になっており、見る側の気分もこの2人の間で行ったり来たりさせられる。なお女性は出ない(写真だけ)。 当時の自由都市ダンツィヒは、名前の通りポーランド領ではなく住民もほとんどドイツ人だったようで(Westerplatteという地名自体がドイツ語だろうが)、そこにいたポーランド部隊には別に街の住民を守る使命はない(最初から敵方)。こんな場所に生命をかける意味があるかと正直思うが、国の尊厳を守るために抵抗してみせるという象徴的な意義はあったはずである。そのような条件のもとで、最初から引き際を探っている少佐と、徹底抗戦しかない大尉との対立を通じて、何のためにどこまで戦うのかを厳しく問う映画に思われた。 この戦いで攻撃側が多数の死者を出したのに対し、ポーランド側の死者はわずか14人だったとのことだが、その死者をたった14人と済ませていいのかは写真を燃やす場面で表現されている。一方で最後に国章の鷲を眺めてから歌っていたのはポーランド国歌だったが(現在と同じ)、国のためには死ねばいいのでなく、生きて命をつなぐことが将来にも役立つと諭す形になっていた。 さすがに現代の製作らしく単純な祖国バンザイ映画ではなかったが、単純に非戦を訴えて終わりでもないようで、当時や現代の人々の複雑な思いを詰め込んだ映画なのかと思われた。
[DVD(字幕)] 5点(2021-09-25 10:57:53)
102.  提督の艦隊 《ネタバレ》 
原題の「ミヒール・デ・ロイテル」は17世紀オランダの提督の名前である。 冒頭の場面で、ここはどこかと思っているといきなり海戦中だったのは驚かされたが、その後も全編を通じて帆船時代の戦列艦の戦闘場面がそれらしく作ってある。戦術的なことはよくわからなかったが、敵本国の港にいる艦隊を「海兵隊」(陸戦隊)で襲撃した場面と、オランダ艦の喫水が浅くできているのが映像化されていたのは印象的だった。ちなみに一般人の応援団が海辺で観戦するのがオランダ風なのかと思った。  ドラマ部分は複雑な政治史が背景にあるのでわかりにくいが、要は国内で敵味方を分断する政治闘争に巻き込まれながらも、主人公がいわば軍人としての分を守り(家族も守りながら)、党派を超えてオランダという国のために働いたことを顕彰する映画だったらしい。結果として、21世紀のオランダにも愛国心のようなものがあるらしいとは思わされた。 戦闘での無惨な場面はそれほどないが、劇中で最も残酷だったのは海戦ではなく、陸で民衆がやらかした虐殺だった(写実的絵画が残されている)。またどうでもいいことだが、最初の海戦の場所は字幕で「スヘフェニンゲン」と書いてあるが、これは「キンタマーニ」や「エロマンガ島」と並ぶ世界の珍地名として知られる「スケベニンゲン」のことである。  ちなみに自分がこの映画を見た動機は、トロンプとデ・ロイテルという、個人的に名前を知っていた数少ないオランダ人が出ていたことである。太平洋戦争の開戦当初、この2人の名前のついたオランダ軍艦が現在のインドネシアにいて、うち軽巡洋艦デ・ロイテルは昭和17年2月のスラバヤ沖海戦で日本海軍が撃沈したので日本でも知られているが、同じ名前はこれまで何度もオランダ軍艦の名前に使われており(今もある)、主人公がオランダ海軍で英雄扱いされてきたことが知れる。ほか劇中で主人公の盟友になった首相も、現代のドック型揚陸艦ヨハン・デ・ウィットに名前が使われているので、オランダではそれなりの偉人であるらしい。 この映画ではオランダとイギリスが戦争し、また第二次大戦ではどちらも日本とは敵味方だったわけだが、現代ではイギリスの空母とオランダの軍艦が一緒に太平洋に来て、海上自衛隊と共同訓練したりして(2021.8.25)、世界の枠組みも変わっていくものだという感慨がある。いわゆる昨日の敵は今日の友というようなことかと一応思っておく。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-09-18 09:58:13)
103.  それも恋 《ネタバレ》 
主演の仁後亜由美という人は他の映画でも見たことがある。別に好きでもないが、素っ頓狂な声を出す役者ということで憶えていた。 短い映画だが、何か社会派的な性格を持たせたかったようではある。制作が2016年とのことで、近年見られた爆買いの雰囲気を映すとか、常習的な偽造といった行動様式を見せておいてから「ウソばっかだね」などとあからさまに言わせたりしている。一方で、日本で稼いで国に帰れば金持ちだとかいうのは大昔の話のようで、相手の男の人物像もそういう時代のイメージになっている。 個人的には現在の池袋北口とか西川口といった場所の実態を知らないので何ともいえないが、どうも微妙な違和感と今更感のある映画という気はした。しかし相手の男にもそれなりの事情があったことは説明されていたので、それぞれの事情で理解と共感を寄せる人がいてもいいのではと思った。  それよりも、題名に示された主人公のドラマとしては思うところもなくはない。何もしないで終わるよりなら何かした方がいい、という意味だとすればその通りだが(確かにそうだが)、それでどこまで妥協できるのか、その結果を納得して受け入れられるかの問題だということか。できれば後悔しなくて済むといいわけだが。 なお相手の男の台詞が聞き取りにくいのは困った。「デイエル」とは何のことかと思ったが、英語字幕のsexual serviceで何とか察せられた。
[インターネット(邦画)] 4点(2021-09-04 10:29:44)
104.  ガーンジー島の読書会の秘密 《ネタバレ》 
イギリスに属するチャネル諸島のガーンジー島に関わる物語である。第二次大戦ではドイツ軍に占領されたとのことで、ノルマンディーのすぐ近くにも関わらず、連合軍が反攻に転じてからも占領されたままで大変な思いをしたらしい。 原作は読んでいないが映画で見る限り、島の読書会に関わることでなぜか住民が語りたがらない昔の事件があり、主人公がその真相を探っていくミステリー調の展開である。そこにラブストーリーが絡んで来て最後はちゃんとハッピーエンドになる。戦争関連の場面はあるがそれほど過激でもなく、安心して見られる穏やかな映画である。 ユーモラスなところもあり、序盤で出ていた前世と来世の話は、イギリス人もこういう発想をするわけかと笑った。また「あなたの心に住む人」というのも、登場人物の性格付けのためだろうが突拍子もない発言で失笑した。 ちなみにこの島は本来フランス語に近い言葉のはずで、そのことに触れた箇所が若干あったようだが(Bonne nuitに近い言葉)、この点について何らかの考え方なり立場なりがあったのかどうかはわからなかった。  物語の中心になるのは題名のとおり読書会だったらしい。一般論として、一人だけで孤立して考えるのでなく、多くの人々の考えを重ね合わせることで物事の本質が見えて来るということがあるはずで、それが文学なら読書会の場ということになるが、主人公が劇中でやっていたことを見れば、この物語自体が読書会のようなものだったとも取れる。 またラブストーリーに関しては、男連中の顔を見るだけでも結果が予想できる気はするわけだが、本当にその通りになってしまったのは出来すぎである。しかし島の読書会が作家の創造力の源泉になり、ここに住むこと自体が創作活動を支えることになったのならこの結末も正当化されなくはない。実際にフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーがこの島に15年間滞在したことがあるとのことで、それを背景にした物語だったようである。 ちなみに聖書が「愛の書」であるのに、「裁きと悪意」しか読み取らない者がいることを嘆く台詞があったが、これは聖書限定のことではない(映画も)だろうから自戒が必要である。逆にそういうのも自分の考えをまとめるためには反面教師的に役に立つといえなくもない。  登場人物はそれぞれ個性的で、自分としては編集者の男の立場も気になったが、そのほか酒を売っていた女の実像に意外性があって面白かった。一緒の布団で寝たところではもう主人公の親友になっていたようで、養豚業の男とその養女は別にして、主人公が島に住むのを最大級に歓迎したのがこの人物だったのではないか。主演女優はあまり好みの顔ではないが人物像としては悪くなかった。
[DVD(字幕)] 7点(2021-08-28 09:59:23)(良:1票)
105.  悪魔の奴隷 《ネタバレ》 
一部で知られた「夜霧のジョギジョギ(モンスター)」のリメイク版である。劇中年代が現代ではなく1981年なのはリメイクの本気度を示したのか、あるいは時代回顧的な意味もあるのかも知れない。 題名に関しては、前作の英題が”Satan's Slave”だったのに対し今作は”Satan's Slaves”になっているが、インドネシア語に複数形はないとのことで原題は同じ”Pengabdi Setan”である。邦題は前作のようなふざけた名前ではなく原題そのままであり、これは実際に見て感じる印象の表現になっている(あまり笑えない)。  リメイク版のため、「ラーイラーハイッラッラー」とか「トニー...」とか喘息気味の人物とかバイクの事故といったオマージュらしいものは結構見える。しかし前回の年代物映画とは違い、今回はちゃんと現代的なホラーになっていたのは感動的だった。 最初がいきなり無音で虫の声から入るとか、オープニングの物悲しい音楽が流れたあたりでまずは期待させられる。基本は家で何かに襲われるパターンだが、あからさまなドッキリで飛び上がるようなところもあって結構怖がらされた。個人的には屋内の水場(上下水を集約?)を使うのが特徴的に思われたのと、一神教の渡来以前からある邪悪な勢力の存在を感じさせたのも恐ろしげに見えた。 物語上は、神を信じない一家が悪魔に狙われる、という設定を踏襲したようでいて実はそれほど単純でもなく、信仰と家族とオカルトのどれが頼れるのかを迷わせながら進行する。少し手が込んでいると思ったのは、真相に関する劇中の発言はあくまでその時点の見解なり解釈または方便に過ぎず、最終的な結論はラストの場面を待つ必要があることだった。結果として「家族が見放さなければ」は正しかったらしい。また英題のslaveを複数形にしたのもそれなりの含みが感じられる。 登場人物としては主人公が変に肉感的な女性だったのと、その弟3人がかなり愛嬌のある連中なのが目についた。  なおこの映画で見た限り、現地ではイスラム教が絶対視されているわけでもなく、むしろ家族が大事というようでもある。終幕場面で観客を誘惑する目つきだった女性が前作の主人公と同じ名前らしい(Darmina/Darminah)のも、やはり信仰心が不足していたという意味か。 また前作で出ていた伝統的な呪術の代わりに、今回は少し現代的なオカルトを前面に出したらしい。劇中の「MAYA」は主人公に「低俗な雑誌」と言われてしまっていたが、これは日本の「ムー」のようなものかと思って笑った。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-08-28 09:23:25)
106.  きばいやんせ!私 《ネタバレ》 
九州最南端の南大隅町にある「御崎祭り」を題材にして、祭りの再興と、主人公である不倫女子アナの再出発を重ねた映画である。 冒頭の「大怪獣ガメラ」は笑った(「小さき勇者たち ~ガメラ~」(2006))が、あとは笑わせたいのか何したいのかわからない地味な雰囲気で進行する。抑制的に見えるのはいいとして、かなりの時間にわたってどの登場人物にも共感できない状態が続くのはつらい。中盤の展開もいい加減な印象だったが、そもそも女子アナの心情など思いやる気にもならず、最後の心機一転も当該個人の問題なので自分として喜ばしいとも思えなかった。  地元振興という面からいえば、劇中の安いTV番組など大した役にも立たないだろうと思っていたが、実は地元民もその程度の認識だったようで、結果的には和牛日本一の方が重く扱われていた。また自称映画プロデューサーの顛末を見れば、TVだけでなく映画なども当てにはできず、さらにいえばこの映画自体に関しても、一応まともに完成はしたが本質は同じと取れる。要は、TV番組や映画など何かのきっかけくらいにはなるかも知れないが、本当に大事なのは人間の底力だ、と言いたかったのなら確かにそうだと納得できる(主人公のドラマとしても同様)。よくある地域おこし映画のようでいながら、上辺を飾らず本音を通した点ではいい映画だった。 個別の場面では「責める価値もない」という突き放した言葉が出たところが好きだ。豚舎が臭いという正直な台詞も綺麗事排除でいいことだが、しかしそもそも外部の人間をやたらに入れるなとは言いたくなった。  出演者としては夏帆が出ているから見たわけだが、劇中人物としては最後まで嫌な奴だったので見た意味がない。一方で太賀という役者は、最初の場面ではこんな男だったか?と思ったが、最終的には外見的にも性格的にも人が違ったように見えたのが面白い。要は序盤の軽薄で上滑りする感じの態度は彼なりの防御姿勢の表現だったようで、個人的にはここが人物描写での見所だった。 なお南大隅町は食堂経営者役の愛華みれという人の出身地だそうである。自分も昔、佐多岬まで行こうとしたが遠いので途中で断念した覚えがあるが、映画の時点でもまだ現地にはコンビニもないとの話が出ていた。ただ少なくとも2021年現在では大手チェーンの店舗もあるようなので、東九州自動車道のおかげか何かで交通の便はよくなっているのかも知れない。
[インターネット(邦画)] 4点(2021-08-21 09:14:34)(良:1票)
107.  天空からの招待状 《ネタバレ》 
監督の齊柏林氏はもともと航空写真家で、自分が空から見てきた台湾の姿を紹介するため一念発起して空撮ドキュメンタリー映画の製作に取り組んだとのことである。それで大成功を収めたが、続編を撮影中の2017年にヘリコプターの墜落事故で亡くなったというのが痛ましい。 この映画も全て空からの撮影で、スケール感が失われて地形が模様に見える高度から、人々の表情がわかる低空での映像もある。自然景観や人々の暮らし、伝統的な一次産業は好意的に撮られており、水田らしき場所で水路に陽光が反射したのはキラリと光る一等地の圃場だというアピールに見えた。また人々が農作業をしている両側で、緑の植物が風になびいて流れるような構図は見事だった。 一方で否定的に扱われた人工物として、海に接する排水口(大潭発電所?)の映像は戦慄を催した。また土砂採取の現場が何本もの虫食い跡のように見えたのも気色悪い。  当然ながら単なる空撮映像の羅列というわけではなく、故郷の島を母親にたとえ、その子である人間が都合よく使うだけでなく労わることが大事だと訴えている。監督が長年空から見て問題だと思ってきたことが、地表の人々には見えていないという危機感が根本にあったらしい。 具体的な問題点としては、まずは山地開発による山崩れや土砂流出といったことが印象づけられる。また西海岸の養魚場で地下水を大量に使用するため地盤沈下が発生し、墓地も浸水して「土葬が水葬になった」というのは、「熱帯魚」(1995)の映像でも見えていた気がする。ほか水質汚濁や廃棄物処理など環境保全の基本的事項とともに、近年の時流に乗った形で石炭火力の問題を指摘するとか有機農産物への取組みを紹介していた。 日本人の感覚としては、今さらそれを言われても、というのもなくはなかったが、しかしさすがにこれはまずくないかと思ったのは、大都市近郊の急峻な山地で稜線を削って高層住宅などが建設されている場所だった。傾斜の度合いが多摩丘陵などと比べ物にならないわけで、今の日本でいえばメガソーラーによる環境破壊が危惧されていることにつながるかと思った。  なお今回初めてじっくり見たのが、台湾の最高峰である「玉山」(3,952m)の姿だった。いわゆる新高山(ニイタカヤマ)だが、ノボレと言われても険しいのでどこから登るかわからず無理そうに見える。しかしこの映画のために「台湾原声童声合唱団」の子どもらが登り、狭い主峯の上で揃ってパフォーマンスをやっていたのはご苦労様だった。マイナス2度だったとのことだがみんな笑顔で、若い人々が元気なのは大変いいことだと思わされた。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-08-14 09:33:09)
108.  青いソラ白い雲 《ネタバレ》 
主演女優はこれまで存じ上げなかったが、実は結構なお家柄の方だったようで、プチセレブどころかセレブそのものと思われる。劇中人物としては中等部から名門校に入っていたようだが、女優本人は幼稚舎から大学(文学部)までストレートで持ちあがりらしい。体型が非常に特徴的なため何の役でもいいわけではないだろうが(モデルが最適だが)、この映画に関してはまさに適役である。というか、本物がこういう役をやっていること自体が可笑しさを出している点でも適役である。   内容としては心地よい程度のブラックな笑いを含んだコメディになっており、当時の風潮を無遠慮に皮肉る台詞がユーモラスに聞こえる。人が死んだ場面でまで笑わせるのはやりすぎだ(笑)と思うが、しかし基本的にはウソっぽいものを全部引っぺがして地のままで出直そうという趣旨であり、最後にはそれなりの感慨を残す作りになっている。特に、ラストで題名の意味が劇的に明らかにされたのには感動した(笑った)。まるで天国にいるあのお方が、日本復興に向けてわれわれを導いてくれているようで嬉しくなる。 こういう不謹慎なものをその年のうちに制作していたというのは感心するが、自分としてもどうせならもっと早く見ておきたかった気がする。うちの地元でもこの年は春から好天の日が多かった気がするが、この時期に関する人々の記憶が薄れるほど、この映画の価値も忘れられていくかも知れないので、現時点でも自分としては素晴らしい映画に思えたということを証言しておきたい。これは見て本当によかった。   ちなみに、劇中で港区白金(植込み、地上1m)の放射線量として表示されていた0.06~0.07μSv/hは、同時期の自分の住所地における測定ポイントと同程度だが、これは日本国内で花崗岩が分布する地域での地中からの自然放射線量よりは低いようである(日本地質学会のサイトを参照)。
[DVD(邦画)] 9点(2021-07-24 08:11:57)
109.  デッド・シティ 《ネタバレ》 
南米ベネズエラで起きている深刻な難民問題について、世界に向けて告発しようとする映画である。この映画では500万人としているが、日本の外務省公式ページでも「これまでに約450万人のベネズエラ国民が近隣諸国(特にコロンビア,ペルー,チリ等)に流出」と書かれている(2020/6/6閲覧)。終盤のインタビュー場面では本物の難民の映像も使っていたように見えた。 その原因は、要は現政権の失政だと言いたいらしい(ハイパーインフレの影響が大きいとのこと)。冒頭で見えた「MADURO DICTADOR」という落書きは、現在も同国にいるマドゥーロ大統領(日本政府は支持していない)を独裁者として非難する言葉である。中盤のTV報道のテロップでは閣僚とともにいち早く国外へ逃げたことになっていたが、終盤でもまた「現政権の姿勢」に触れて、製作側の問題意識がどこにあるかを明瞭にしていた。劇中発生していた停電も現実の反映だったのかも知れない。 これは本物の国際的な大問題であり、単に権力者を揶揄して面白がるだけの映画にはなっていない。ちなみに劇中のWHOはまともな働きをしていたが、なぜか東アジアの強権国家らしきものの影も見えた(医師宅に掛け軸もあった)。次の事務局長がベネズエラから出たりすることもあるかどうか。  そのような背景がありながらも、この映画では難民の発生原因をゾンビに置き換えたことで、見た目はゾンビ映画になっている。またウイルス性ゾンビのため感染症映画としての性格もある(原題と英題もそうなっている)。 最初は断片的な事件を並べておき、ラジオ放送で少し緊迫感を煽ったと思ったら、いきなり次の場面で周囲がいわゆる阿鼻叫喚の巷と化していたのは驚きがあった。また当初、政権側が反政府勢力のせいにしていたらしいのは笑った。その後はロードムービー的にゾンビとの戦いが展開し、結末がどうなるか途中で気づく場合もあるかも知れないが、その通りになるので安心してもいい。 映像面では、邦題と違って都市的景観はわずかだが、地方の風景がけっこう印象的に撮れている。農村部での山脈の鳥瞰的な撮り方が、序盤の首都の空撮と似ていたのは意味不明だが面白かった。またエンドクレジットの背景で、南米イメージのアート調にアレンジした劇中場面の再現映像は個人的に好きだ。 以上のようなことで、どうせ軽薄なゾンビ映画だろうと思ったら全く違っていた。ちなみにいまこのご時世では、ラスト近くの「そのために国境がある」という言葉に非常に共感した…すぐ後で否定されていたが、要は主人公の義母と同じになってもいいのかということである。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-07-17 09:27:41)
110.  The Room 《ネタバレ》 
あまりにも平凡な題名なので検索すると同名映画が複数出てしまう。 恋人同士の2つの部屋をSkypeでつないだ会話が中心になるが、この頃はまだそういうのが珍しかったのかと思ったらそうでもないようで、独創性の面で特に評価できるわけでもないらしい。最初にいわゆるファウンド・フッテージである旨の説明が入るので、映画で見えているのは就寝中を含め、全て誰かが撮っていた/見ていた映像ということになる。  ドラマの面では、男女4人の愛憎関係でいろいろあったようだがあまり突っ込んで考える気にならない。途中までは映画紹介に書かれた通り単なるサイコホラーかとも思ったが、明らかに異常な出来事も起きるのでただでは済まない雰囲気もある。最後はそれなりのオチが付くので肩透かしに終わることはないが、結果的にはよくあるオムニバスホラーの一編のようでもあった。 個別の場面では、心霊ホラー的な怖がらせもあったがそれほど怖くもなく、あからさまなドッキリの場面があったのは趣味が悪い(笑った)。なお部屋に鏡(姿見)があって部屋の一部がずっと映っていたが、何らかの演出に使われていたかはわからなかった。  キャストに関しては、宣伝写真の通り伊藤歩さんが大映しになる場面が多い(全身像もある)。劇中人物としては面倒くさい感じで、こんなのと親密になりたいとも思わなかったが、見た目としては甘えた表情も嫉妬も激情も憤怒も戦慄も全部含めて可愛く見えるのはさすがである。とにかく圧倒的な伊藤歩映画だったというのが個人的には最大の効用であって、それだけ書けば他は何も書かなくてよかった。
[DVD(邦画)] 4点(2021-07-10 08:42:48)
111.  fuji_jukai.mov 《ネタバレ》 
昨年12月31日(6日前)に青木ケ原樹海の遺体映像を投稿したアメリカのユーチューバーが批判され、今年1月3日(3日前)に本人が謝罪したとの報道があったが、この映画は当然それより前の公開である。 吉本興業とTBSが共同制作した映画とのことで、TBS所属のディレクターが監督を担当し、吉本芸人も本人役で出演している。監督は本来バラエティのディレクターであって映画は「ど素人」だそうで、実際これは映画としてどうなのかという批評もありそうな感じだが、そこはあまり突っ込んでも仕方ない。 内容としては「スマホ系ドキュメントホラー映画」とのことだが、「90%リアル」とかいう説明を聞くと、カルト集団の部分だけでも1割を超えているのではないかと皮肉を言いたくなる(かつての上九一色村の教団施設になぞらえたにしても無理を感じる)。しかし現地関係者(レストラン店主、樹海探検家、寺の住職、民宿の女将)のインタビューはさすがに本物らしく真実味があり、それに比べて役者が演じる「樹海パトロール」は非常にウソっぽい。  見ていて非常に気に障ったのは主人公の同行者2人の行動様式である。自分としては人間扱いする気にもならない連中だったが、この映画の立場としては「子どもっぽい」という認識だったらしく、そういうクソガキのようなのに便利なツールを提供してしまっている現代社会への批判が込められていたようでもある。一方で主人公は心正しい人だったが、この人に対する世間からの綺麗事による非難を逸らすため、最後に悪人が「生まれ変わり」を果たす筋書きにしたのだろうと解釈した。 そういう物語面での不快さにかかわらず、風景映像の方は荘厳な美しさを感じさせ、またエンディングで現地関係者が樹海の自然の魅力を熱心に語っていたのも印象に残る。時々わざとらしく映っていたオーブのようなものは、人の霊魂というより自然界の精霊といった表現だったのかも知れない。樹海探検家の言葉として、樹海にある遺体の全てが自殺によるものとは限らないという見解も紹介されていたが、本来は他殺死体の隠匿場所でも呪われた場所でも無責任な動画投稿者やTV番組の悪ふざけの場でもなかったはずの樹海に、人間社会の暗黒面を投影するのはやめてもらいたいというのがこの映画の最終的なメッセージに思われた。 そのようなことで、意外に社会派っぽい気がしたのはTBSらしいといえるかどうか(バラエティのディレクターだが)。  出演者としては、自分が知っていたのは佐々木萌詠さんくらいのものだったが、今回はまたかなり変な役でどうも仕事を選ばない人らしい。ほとんど端役ながらも舞台挨拶にはきれいな格好でちゃっかり?出ていたのは意外だったが、女子高生役3人と並ぶと長身(公称168cm)で見栄えのする人である。
[DVD(邦画)] 6点(2021-07-03 09:46:36)
112.  ことりばこ<OV> 《ネタバレ》 
ネット発祥の著名な怪談を題材にした映画ということになっている。 冒頭に文章で延々と説明が入るので、元の話を下敷きにしているのはわかるが中身は別物になっている。元の話がかなりまともにできている(素人の創作とすれば秀逸)ので、その通りに映像化したものを見てみたいとは思うが、そのようにできない事情があるのかも知れない。 ホラー映画としてはどこかから既成のイメージを借りて来ただけのところもあるが、しかし見せ方や演技でけっこう雰囲気と迫力を出している。出演者も若年者らしく自然にふるまうべきところは自然に見せる一方、演技すべきところはそれなりに演技しているように見えており、主要キャストについての印象は悪くない。   物語に関して真面目に考えると、機能不全のおかげで(いわば代償として)生き延びたはずの主人公が、結局は逃れられずに終わったことで、やはり本当に怖いのは呪いよりも生きた人間だということが言いたかったのかと思われる。しかしそれが見る者の心情に訴えかけるかというとそうでもなく、やはりまず村人の演出に問題があって真面目に見る気がしなくなるのと、片思いの先輩がそれほど魅力的な人物でもないので、主人公の純な心情が素直に受け取れないというのが残念なところである。またその機能不全ということ自体も理屈先行という感じで、特にこの主人公をめぐるドラマがもう少しうまくできていればという気がした。 結果として、それなりに作ろうとしているようには見えたが惜しい映画だった。
[DVD(邦画)] 3点(2021-07-03 09:46:34)
113.  レミングスの夏 《ネタバレ》 
冒頭の川の風景は見栄えがしたので期待したが、その後は何の期待にも応えない映画だった。 まず序盤から図書館でのやり取りの茶番感には呆れさせられる。その後の「つまらない仲間割れをいちいち見せないでくれる?」との台詞などは見ている側の感想を代弁しているようだった。若い演者の演技に至らない所があるのは仕方ないとして、そもそも作文のような台詞を読ませること自体に無理がないか。ほかに名の知れた役者も出ているが素人くさく見え、いわゆる脇を固める感じでもないのは演者のせいともいえない。 物語に関しても、途中は何をやっているのかわからないながらも黙って見ていたが、結局最後は支離滅裂な行動のまま終わってしまい、少年少女がここまでやってきたことの目的も結果も不明になっている。かつての殺人者がその後にどうなったかの説明もなく、本来この件に関わるはずの単純とはいえない問題に決着をつけようともせず素通りしてしまった印象だった。 さらに困るのは、少年少女らの一人ひとりがどういう人物なのかが申し訳程度にしか見えず、この連中に心を寄せたくなるものが全くないことである。かろうじて美都という人は心優しい人物とわかって安心したが、特にリーダーの一途な思いが納得できるよう表現されていた気がせず、何でこの男が最後にこういうことになるのかわからないまま終わった。題名から想起される”あの夏”感も全く出ていない。  あまりに映画が不可解だったため原作を読むと、登場人物それぞれに独自の人格を備えた人間としての存在感があり(当然だ)、それぞれの思いを感じて泣かされる場面も多い。何よりこの少年少女らにとっての「新天地」とは何だったのかがちゃんと表現されており(当然だ)、結末には説得力があって感動的だった。改めて映画の方はやっつけ仕事のようなものかと思ったが、ちなみに映画でラストに2人しか出なかったのは年齢相応のキャストを揃えられなかったからかも知れない。 そのようなことで、原作なら8点くらい簡単に付けられるが映画は2点にしておく。ちなみに撮影に協力した某県某市のイメージも全く向上しなかった(芸大に用事で行ったことはあるが)。エンドクレジットで、個人の協賛はともかく地元政財界の名士のような名前を連ねるのは見ていて気分のいいものではない。
[インターネット(邦画)] 2点(2021-06-05 08:58:17)
114.  最上の命医 2017<TVM> 《ネタバレ》 
同名漫画を原作とする連続TVドラマ(2011年、10回)の後に、単発のドラマスペシャルとして2016、2017、2019の3回放送されたものの一つである。天才的な発想と技術を持った若手の小児外科医が主人公になっている。 深刻なドラマながら安っぽい展開やマンガ的人物も見えるのはTVドラマなので仕方ない。子ども相手なことや昨今の風潮もあり、失敗すれば身の破滅ということから「最上の命医は地獄に堕ちる」という言葉が真に迫る雰囲気は出ていた。  全体的には2話分をあわせて二部構成にしたように見える。第一部はTVドラマ「14才の母」(2006)のような話だが、低年齢出産と同時に致命的な病気への対応を迫られて、その上に悪天候で防災ヘリも飛べず、医療機器も不足する中で何とか乗り切るといった離れ業を見せており、これはさすがに話を作り過ぎに見えた。その場で手伝わされた地元住民の男は、血を見ると気絶するタイプでなくて幸いだった。 第二部は、全体テーマだったらしい「無限の樹形図」を強く印象づける話になっている。これからまだ多くの子どもを救えるはずの58歳の医師を助けようとする展開であり、見ている自分などは今さら何の役にも立たないので助けられるまでもなく死ねばいい的に皮肉な受け取り方をしてしまったが、まあ若い人ならこれを見てその気になって、自分も生きているうちに誰かに何かを伝えたいと思ってもらいたい。今回のエピソードに出たとおり必ずしも医療分野に限定されることではないはずである。 ちなみに、そもそも全盲の人はスマホを使えるのかと思ったが、サポート機能で使えるようユニバーサルデザイン的に作ってあるらしい。  キャストとしては、比嘉愛未さんは以前からのつなぎ的な登場だったようで、序盤で出て来たときは見とれてしまったが、あとはほとんど出番がなかったのは残念だ。 第一部の主役は若手(当時16歳くらい)の桃果という人で、賢そうだがきつい顔や皮肉な表情と、終盤の柔らかい笑顔の対比を見せている。とにかく第一部はこの人の熱演が印象的だった。 第二部では志田未来さんが重要人物である。「14才の母」(主演・志田未来)との関係で出たのかと思ったが、別に本人が出産する役でもなく、第一部の主人公を側面支援しているかのような印象だった。この人の演じる人物が自分の人生を肯定してみせる場面は感動的だったが、それにしても可愛い人だ。 そのようなことで、個人的には豪華キャストのドラマだった。
[インターネット(邦画)] 5点(2021-05-29 10:22:35)
115.  ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~ 《ネタバレ》 
いわゆるファストファッションが世界に及ぼす負の影響に関するドキュメンタリーである。序盤でブランドロゴを見せる場面では、ZARA(スペイン)、H&M(スウェーデン)の次にUNIQLOが出ており、これが実際の世界的な順位であるらしい。 この業界が悪い面で注目されるきっかけになったのは、2013.4.24にバングラデシュでラナ・プラザというビルが倒壊し、中の縫製工場にいた多数の労働者が死傷した事件と思われる。この映画では、サプライチェーンの中で低コスト大量生産のしわ寄せが集中する現場の労働者のほか、大規模な環境汚染や現地政府からの圧力と弾圧、またマスメディアによる意識操作も扱われている。「中流階級の衰退」といった構造的な問題にも若干触れて、最終的には現状の経済システムを変えていこうと人々に呼びかける映画になっている。 期待すべき事例としては「ピープル・ツリー」というフェアトレードの専門ブランド(日本にも拠点あり)を紹介している。  個別の場面では、バングラデシュの労働者がインタビューで途中までは元気よく話していたが、ラナ・プラザのところで感情を抑えられなくなってしまったのが心に残った。当然ながらどんな国の人々にも普通の人の情はあるわけだが、それがあると感じられないのがグローバル企業だという表現になっている。またテキサスの綿花生産者が、本人にとってのオーガニック・コットンが「重要」から「必然」になった契機を説明した場面は、編集が作為的かも知れないが印象的ではあった。 個人的感覚としては作中に出たような、物欲まみれで実店舗のセールに殺到する消費者像というのがいまの日本にそのまま当てはまる気はしない。しかしかなり前からの風潮として、低価格は絶対正義であって高いものを買わされるのはバカ、と言われ続けてきた気も確かにする。別にこの映画を見て世界を変えてやると息巻くわけでもないが、せめて自分の行動くらいは一般人の良心に従って制御していきたいものだとは思った。  なお自分がこの映画を見たきっかけは、2021.4.8にファーストリテイリングの会長兼社長が記者会見で、綿花に関わる強制労働についての質問に対し“政治的なことにはノーコメント”という趣旨の発言をして批判されていたことである。それ自体には突っ込まないとして(映画の範疇を超える)、関連する意見として“現地の人々の仕事をなくしていいのか”とか“もっと現実を直視しろ”といったような業界寄りの声も出ていたようだったが、この映画ではそういった反論を一応前提にした上での提言をあえてする形になっている。
[DVD(字幕)] 5点(2021-05-08 08:54:07)
116.  怪怪怪怪物! 《ネタバレ》 
ホラー映画の枠組みのもとで過酷な人間関係を描くダークな青春映画ということらしい。 内容的には俗悪低劣で見るに堪えないが、これによって例えば“善人の生きづらさ”を表現する意図があるとすれば、基本的に人は善人たるべきことを前提としているのだろうから良心的とはいえる。それにしても残虐性や暴力性自体に価値を見出す観客向けの興行価値で売る思惑もあるだろうが、まあ商業映画としては仕方ない。  一応いろいろ考えさせられる映画だが、まず“この世には悪人とバカしかいない”という発言は、人間社会の本質を端的に表現した言葉のようではある。実際は悪人かつバカというのもいるだろうから単純な二分割ではないだろうし、また自分を悪人と思っていない悪人とか自分をバカと思っていないバカとかもいるだろうから簡単ではないが、まあこれはいわゆる良心と知性が両立できない社会だと言いたいわけか。 それより字幕を見た限り、この映画ではバカ=他人の話を簡単に信じる者、という意味づけをしていたらしく、つまり悪人/バカの対立は、騙す者/騙される者の関係に置き換えられそうである。そうすると日本でいわれる「騙すより騙される方がいい」という言葉などは、万人に向けてバカであれと呼びかけるようなものということになり、お人好しの日本人には手厳しい指摘かも知れない。当然ながら本来は「騙さない+騙されない」のがまともな大人のやることである。 あるいは単に騙されないというだけでなく、むやみに世間の風潮に乗せられるな、ということだとすれば、学校内でも古いムラ社会でも現代の情報社会でも言えることになる。現実問題としては①強い同調圧力を受ける場合と②周囲に遠慮して自ら合わせる場合(日本的か)と③何も考えずに調子に乗っている場合がありそうだが、この映画としては最終的に③あたりを意識していたものか。 若い世代に教訓を語る映画のようでもあるが、または一般向けとして、今後何かと生きづらくなっていきそうな世界への警鐘とも取れなくはない。しかしさんざん気分が荒れた状態で終わるのであまり真面目に受け取る気もしない。  余談として、必然性不明で日本関係のものが時々出ていたのは苛立たしい。苛立ちついでに皮肉を書くと、親日国といわれる台湾も簡単に信用するなということになりそうな映画だが、しかし日頃の行動を見ていれば信用できそうな程度も見えるとはいえる。ちなみに自分としてはパイナップルの販路拡大には協力した。
[インターネット(字幕)] 5点(2021-04-24 11:29:21)
117.  幸福路のチー
題名の「幸福路」とは戦後に拡大した台北大都市圏にある通りの名前だそうで、ストリートビューで見てみるとけっこう賑やかな街らしい。 自分としては全体的に「おもひでぽろぽろ」(1991)のイメージかと思ったが、台湾現代史が背景になっているため重みがあり、また「先住民族」(字幕)やアメリカ人とのハーフといった登場人物の多様性も出している。1975年頃は台湾にも米軍がいたということだ。 簡単に海外へ移住するなどは基礎的な行動力が日本人と違うのか、または国境のハードルを低く感じているのかと思ったが、結局最後は主人公も自分の生きるべき国を改めて選ぶ機会が生じたようだった。  物語に関しては、幸福とは何かという問題提起に始まり、当初は食う・寝るだけだったのが時代の変化や主人公の成長で変わっていく。本人としては王子様→悪と戦う→社会正義と発想が展開したらしいが早々に挫折し、苦しまぎれにアメリカに渡ってみたが満足のいく結果でもない。アジア人なら誰でもいいのだろうという発言はかなり攻撃的だったが、これは主人公の方こそ白人なら誰でもいい(王子様だから)と思っていたことの裏返しではないか。意外にも最後まで残ったこだわりが王子様だったようである。 迷っていたが最後には、かつてお姫様のように思っていた親友の現在の姿に感化され、不惑を前にして、自分として最も根源的と思えるものを選んだようだった。離婚したら両親が悲しむと夫には言われたが、実際はそうでもなかったらしく、本人も自分の決断に確信が持てたようなのは他人事ながら嬉しい。 ただしこれは終着点ではなく新たな出発点であって、まだまだ主人公には先がある。ラストは「悲情城市」ほど暗澹とした感じではなかったが(最後は2014年頃)、これから世界がどう動くのかわからない不透明さはやはりある。しかし主人公もその都度自分の目で見て考えて、自分なりの幸福を一生追求し続けろという年長者の教えを自分のものにしていたようだった。  登場人物の中では、洋風美女の親友が和み系の人で好きだ。角を立てずに丸く収めようとする穏やかな人物のようだったが、その娘はあくまで筋を通そうとする強気の人物だったらしい。また幼い息子が姉を描いた絵には笑わされた。 ほかガッチャマンの絵や「永遠的朋友」といった子ども同士の素朴な友情、また家族同士が見せる自然な感情には少し泣かされた。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2021-04-17 08:50:43)(良:1票)
118.  今日も嫌がらせ弁当 《ネタバレ》 
高校生のために弁当を作り続ける映画は「パパのお弁当は世界一」(2017)も見たので、個人的にはまたこれかという印象だった。しかしこの映画も原作者に当たる人物の体験をもとにしており、映画としては二番煎じでも全く別の話ということになる。劇中に出ていた弁当を本当に一生懸命作っていた人がいたというだけで和まされるものがあり、嫌がらせというよりも、ふざけたことを大真面目にやってみせるのが好きな人物が娘にじゃれついていたようでもある。ちなみにこの後に「461個のおべんとう」(2020)というのもあったようで、なぜか弁当映画が乱立している。 八丈島は実際に原作者の居住地とのことで、彩度が高めの明るい色調で島の風景を見せている。特に説明はなかったが、結構しつこく八丈小島(今は無人島)を映しており、また「八丈島のキョン」(特定外来生物)らしきものも出ていた。船は主に東海汽船の「橘丸」が見えていたが、ほか何気に青ヶ島行きの「あおがしま丸」も映っていた。  ストーリー的なことは実はよくわからなかった。キャラ弁なるものに関して否定と肯定が繰り返される展開に見えたが、弁当だけでは本当に嫌がらせになってしまいそうなところ、それとは別に心を通わせる機会を持ったことで真意が伝わったと思えばいいか。 またシングルファーザーの存在も半端な気がした。途中段階では一人親が孤独に頑張ることの限界を語っていたようだったが、その上でのご対面は、この先母親が助言者からパートナーの立場に発展していく予感の表現か、または人生まだまだ何が起こるかわからないという程度の緩い期待感か(なぜか娘の就職先の近所にいた)、あるいは単なるサービスカットのようなものか。少々困惑するラストだった。 特に絶賛する気にはならなかったが、実物をもとにしたという独創的な弁当を見て笑っているだけでも一定の面白さがある映画ではあった。なおネット上に原作者の顔写真も出ていたが、なるほどこういう感じの人がやっていたのかと納得した。  出演者に関して、芳根京子という人は今どき高校生役かとは思ったが、もともと可憐なタイプなので高校生に見えなくもない。また友人筆頭役の山谷花純さんは、「劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(2018)で頭を丸刈りにしてから、少し髪が伸びてベリーショートの状態だったのがなかなかキュートで面白かった。
[インターネット(邦画)] 5点(2021-04-03 10:54:11)
119.  耳を腐らせるほどの愛 《ネタバレ》 
吉本興業のコメディ+サスペンス映画である。ジャンルに「ロマンス」が入っているが無視して構わない。 無人島の宿泊施設で起きた殺人事件の謎を解いていくミステリー調の展開で、ありがちな結末かと思わせておいて実は…という意外性はなくもないがそれほど感心もしない。なお東京湾で唯一の無人島とは、横須賀にある猿島(戦艦三笠から見える)がモデルのようで、空撮場面もこの島の映像がもとになっている。撮影場所はほとんど屋内で、個人的に馴染みのある「人狼ゲーム」シリーズのようだった。  コメディといっても終始笑いっぱなしでもなく、予告編に出ていたように、鈴木鈴吉という名前を「鈴木の二乗」と表現するあたりでレベルが察せられる。そもそも自分としては芸人の笑いというのをあまり面白く感じないので(ノリの悪い観客)、かろうじて「ゲストなしの回」のところで笑わされたのと、「何となくです」「180のサイズ」がかすかに可笑しいくらいのものだった。高速度撮影でないスローモーションの場面などは笑えるかどうか。 独自性があったのは「たとえ話サークル」という設定で、言っていること自体は大して面白くもなく早口で何だかわからなかったが、現実にこういう活動を真面目にやっていれば発想の自由度が高まって頭の回転も速くなるかとは思った。芸人らしい趣向かも知れない。 個人的にはクサい演出ばかりが鼻についてあまり満足感はなかったが、初めから「見終わった後に何も残らない映画」を作ろうとしたとのことだったので、それを信じて気楽に見るなら楽しめるかも知れない。題名の意味は何だったかなど考えなくても問題ない。  登場人物としては、脚本段階で意図したという通りそれぞれに見どころが作ってある。森川葵さんが可愛い女の子(あざとい系)だったのは大変結構なことで、この人のこういう役は好きだ。また山谷花純さんは序盤で芸人風のかけ合いをしていたのが特徴的だった。長井短という人は知らなかったが、本当にこういう感じの人物らしい。
[DVD(邦画)] 5点(2021-03-27 11:34:10)
120.  死命 ~刑事のタイムリミット<TVM> 《ネタバレ》 
先に原作を読んだがあまりいいとは思わなかった。このドラマもかなり原作準拠のようで、不自然だとかちょっと無理がある感じの設定は大体が原作由来である。ただしTVドラマ化に当たって、見てわかりやすいよう予告を入れたり言葉を足したりの工夫をしており、またラストに少し救われる場面も加えている。有名なクラシックの曲が使われていたのは別にいいとも思わなかったが、これは亡き妻のためのテーマということだったか。  登場人物には共感しにくいところがあるが、主人公に関しては仕事自体が妻への献身だったという事情、及び最終的に死への恐れを解消できた理由はわからなくはない。犯人の方は人格的に理解不能だが、主人公が死を恐れなくなった理由がそのまま犯人に死を恐れさせたということではあるらしい。過去を切り捨てようとしても結局いわば最後の審判があるということで、自分のこととして考えてもこれは実際に不安要因かも知れないと思った。一瞬ホラーのようで怖い場面もある。 犯人もそれなりの事情があったわけなので、嘘まで言って恐れさせる必要はあったのかとは思うが、しかし社会に一定数いると思われる「死ぬことさえ恐れていない人間」を強いて恐れさせることが本当の罰だという主張かも知れない。地獄が実在するとはいえないが、パノラマ視現象というのは実際あると言われているので、このドラマがオカルトに依存しているわけではない。  登場人物に関してはそれほど違和感がない。若い刑事はコミカル寄りでこの役者らしいいい味を出している。また主人公の娘については、ダンサー志望の印象が少し弱まっているのが残念なのと、目が大きいので両親には似ていなかったが、父親に対しては反発するだけでなく、ちゃんと親子であろうとしていることが表現されていた。原作のディズニーランドはみなとみらいの観覧車になっていたが、この場面での娘の様子には和まされる。終盤でもこの娘との関係で少し泣かされるところがあり、視聴者の目からはこの人が一番いい役に見えた。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-03-27 11:34:08)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS