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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1181.  リトル・ブッダ
画調はちゃんとストラーロで格調高いんだけど、展開していることは、ときにセシル・B・デミルだったりして、いっそおとぎ話ならおとぎ話に徹しフェリーニ的に造形してくれれば、まだなんとかなっただろう。そりゃね、西洋人に東洋は分からん、なんて言うつもりはないよ。私だってブッダとの距離は、たぶん平均的西洋人とさして違わない。でもあちらの映画に出てくる東洋的なるものって、なんか引っかかるんだよね、東洋の売りは「精神」だけなのかなあ、とか。非合理的である、ってだけで尊重されるのは困るんだ。あちらの人が、合理合理でいって疲れたときの、いっときの椅子がわりに東洋を持ち出されているみたいで。シッダルタが町へ出ていくあたりは嫌いじゃない。善きもののみを見ていた世界に厚みが加えられるところ、奥行きと言うか。少年が迷い込んでいくところで繰り返される(ロクロ台まわし)。西洋人がオリエンタルの中へ迷い込んでいく雰囲気は『シェルタリング・スカイ』の流れ。東洋と西洋、男と女と、うまく分担して再生していくわけ。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-21 10:11:09)
1182.  地下室のメロディー 《ネタバレ》 
初老のギャングは、最後に一発当てたいと思っている。青年は、現在の惨めな境遇から抜け出したいと思っている。それぞれに鬱屈があって、しかし一人では現金強奪はできない。冒険には若さが必要よ、と妻にたしなめられている。若さのある青年には、計画がない。補い合って立てられた計画。それが危うくなっていくのは、青年の方が豪奢な世界に浮き足立ってしまうから。義兄が自分のこととして心配していた事後の不安が、計画の最中に浮かんできてしまう。シャルルにとっては金に目的が集中していたが、フランシスにとっては、こういう暮らしをしてみたい、だもんだから、真剣味が弱かったんだろうなあ。フランス映画は、途中いささかモッサリしてたり「よく考えるとヘン」があっても、ラストをピタリと決めてくるので印象に残るのが多い、これなんかその典型。刑事たちの話し声とゆっくり歩き回る足だけで、キリキリと縛り上げるように緊張を高めていく。犯罪映画のラストなのに、主人公たちは走らない・どならない・しゃべりさえしない・もちろん銃も撃たない。ボーイの驚きの声が聞こえてくるだけ。二人は、あと鞄を渡すだけの距離であったプールをはさんで向かい合い、自分が手にできなかった大金をただ見守っている。ゆっくりと花が開くような札束の動きのなまめかしさ。手の届かない高慢な女のような花が次々と開き、二人の間の隔たりを花畑に変えていく。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-20 10:25:25)
1183.  ピノキオ(1940) 《ネタバレ》 
無生物と半生物と生物の描き分けが、芸の見せどころ。『白雪姫』で滑らかな動きを見せた後で、こういうギクシャクした人形や時計をやってみたくなったのだろう。星の女神の動きなんかは、モロ白雪姫の線。人形小屋のシーンなんか、ピノキオと人形の動きを絡ませてなかなか憎い。でもこの映画の目玉は、玉突きしている仲間がロバになってしまうホラーシーンだ。後ろ向きで耳が飛び出し、尻尾が生え、顔が変わり、気づいた本人がピノキオに助けを求める手がヒヅメになっていく。これはそうとう怖い。アニメならではの成果。鼻が伸びるのもそうだな。あれ、嘘をつくといつかこのように覆い隠せなくなってしまうという、教訓比喩付だったのね。そして怪物クジラの量感。はたしてピノキオは今度は学校へ行けるのだろうか。
[映画館(吹替)] 8点(2010-12-19 09:47:01)
1184.  日の名残り 《ネタバレ》 
人は自主独立でなければならない、という現代の空気の中で、でもけっこう「執事願望」ってのもあるんじゃないか。選んだり考えたりする責任を逃れた、歯車の安楽。もちろんそれは孤独という裁きを受けるのだけれど。父の死のとき、足にマメをこさえた客のもとへ医者を連れて行くことで、その場を逃れることが出来る。立派な執事として気分も高揚できた。ユダヤ人女中解雇で少し抵抗しかけたりもするが、でも押し切ることはしない。「主人の命令」という逃げ道がある。客に社会情勢について尋ねられる(ちょっと『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』で、運転手がワインのよしあしを試されるシーンを思い出す、ヨーロッパの上流社会の陰湿さ)。これやっぱり彼の心に引っかかってたんだよね、のちにパブで、歴史に関心を持ってた、と言う。ここらへんの二重三重に隔てて感情を確認させるのが、実にうまい。けっして無感動ではない内面を、チラチラと見せていく。センチな恋愛小説を読んでいる。「語彙を多くするためです」って。ミス・ケントンが意地で婚約した晩、ワインを持って(一度階段で割ってしまう)彼女の部屋に至る。泣き崩れている彼女。ほこりが残っていた、とだけ告げてワインも置かずに去っていく。こうして彼はまた「自分の人生」から逃げる、「無感動の執事」に逃げ込む。そしてあっさりした再会、彼女は孫の面倒と、確実に外の世界に自分の場を作っている。20年目に彼は裁かれる。アンソニー・ホプキンスとしては、某博士よりもこっちで名を残したかっただろうなあ。己れの心の動きに戸惑い、それを抑える感じが実にうまいんだなあ。
[映画館(字幕)] 9点(2010-12-18 10:15:13)(良:2票)
1185.  ジェロニモ(1993)
基本は友情が交錯し青年が成長する話。前半、保留地の暴動のあたりがイキイキしている。発砲の瞬間、フィルムに白いコマをはさんでいるみたい。ただ後半はちょいと演説的になってもたれる。難しいところだ。インディアンの扱い。ちょうどアメリカ映画史において西部劇がたどった苦難をなぞるように、この映画も後半停滞していってしまう。スカッとはいけない。こういうときアメリカは、すべての集団の中に、イイヤツと悪イヤツがいる、ということで処理していく。しかし追い詰められるアパッチ族の悲壮感が今ひとつ湧かず、平和を説く古老なんかを配置するのは、段取り過ぎて鬱陶しい。切り捨てられる斥候インディアンのほうに、悲惨を感じた。西部劇は荒れた土地があればだいたい撮れちゃうから、時代劇よりいいね。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-17 09:56:11)
1186.  チャップリンの独裁者
あんなにもトーキーに抵抗しパントマイム芸の優位を説いていたチャップリンが、ただ顔のアップだけでしゃべり続けること。そのことの衝撃も、広い意味での「芸」であろう。おどおどしたものが勇気を出す、という、キートンやロイドとも共通したアメリカ理想の型を使って、演説に持っていった。なにより感心するのは、このときアメリカはまだドイツと戦争していないのだ。そしてドイツは一番威勢のいいときなのだ。もしこのままドイツがヨーロッパを圧伏したら、アメリカはドイツと外交交渉によってその後の世界を探っていく可能性もあった。そのときこんな映画を作っていた作家は、困難な立場に追い込まれたことだろう。それでも発言した勇気、これは開戦後に「安心」して量産された反ナチ映画と一緒にしてはならない。この勇気の前には、作品としてどうこう言うのもはばかられ、とにかく映画史が持った偉大なフィルムであることは間違いない。ただ映画芸術史の流れで捉えると、なんか、音楽史におけるベートーヴェンの「第九」に相当するんじゃないかと思うことがある。純粋な律動を楽しむ芸術であった西洋の器楽曲、しかし第九のラストに演説のように登場する合唱で、不純な言葉=意味が入り込んできた。そしてバロック・古典派という、天上の世界を写し取って頂点に達していた音楽史は、ロマン派という作曲家個人の心の内面を歌う地上の世界に下降してくる。映画史も、このラストの演説を切り替えどきにしたように、天上のパントマイム芸から地上のセリフ芝居へと移ろっていく。もちろんそれでいいのだ、歴史とはそういう変化を受け入れ展開していくものなのだから、それでいいのだけれど、あの無垢な無声の時代がやたら懐かしくなるときも当然あるわけで。
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-16 10:03:43)(良:1票)
1187.  山の焚火 《ネタバレ》 
家族のものがみんなで少年の性の目覚めを恐れている感じがいい。社会と隔絶した清澄な山の家で、生臭いものをギリギリでカバーして生きている緊張。祖母が豚のいななきを聞いて獣姦の疑惑を抱いたりする。この家族の中でただ一人、山を下りてもやっていけそうだった姉が、自ら焚火に促されてタブーをおかし、山の上のほうへ心を向けてしまい、妊娠という最も生臭い結果を導いてしまう。聖と俗の対比という下手するととても陳腐になってしまうものを、うまく料理した。この小屋がどれくらい麓から離れているか、は見せてくれないので、完全に隔絶した場所と思っていいのだろう。登場する他者はヘリコプターのみ。春から冬へかけての季節の移ろいがあり、水のイメージ、鏡のイメージも作品を貫き、拡大鏡や双眼鏡の覗く感じが秘密の匂いを強めている。どんなに社会から断たれても、無邪気な時間はいつかは終わるのだ。
[映画館(字幕)] 7点(2010-12-15 09:58:10)
1188.  遊星からの物体X 《ネタバレ》 
真っ白な世界を犬が走っていく。どういう行きがかりでそうなっているのか説明はまだないけど、いたいけな小動物がヘリコプターという近代兵器によって迫害されてる、という印象を与えられ、つい、逃げよタロ! 力一杯走るのだっ! と見てしまう。そう観客に刷り込んでおいてから、引っ繰り返していく仕掛けがニクい。その犬が基地内を歩き回っている。変に擬人化されてなくて、まさにペットのように、しかしそう思って見ると観察して回っている不気味さ。観客が思わず目を凝らしたくなるところで、目をふさがれるようにフェイドアウトになる。このじらされるリズムに乗って、だんだん不安感が募っていく。この序幕の入りがまず楽しい。正体を現わしてからは、疑心暗鬼の人々ってのがポイントになって、血液検査のあたりがヤマか。ただメンバーの個性がもうちょっと出ていたほうが、そういう場面では楽しめただろう。外はバイキンも生きていけないという南極の清潔な白、その死の清潔に封鎖された中でグチャグチャした赤黒いものがヌメヌメチュルチュルしている対照の妙。ノルウェー基地が焼き捨てようとしたものを、わざわざ運び込むなよ、とか思いはするけど、あのテラテラした赤黒さを放置しておくには忍びないまでに、南極の清潔な白色は暴力的に圧迫してくるんだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-14 10:13:42)
1189.  マンハッタン殺人ミステリー 《ネタバレ》 
これなんか別にテーマを掘り下げるとか言うんじゃなく、ほんとに軽く作った感じなんだけど、うまいよね。D・キートンの倦怠主婦のイキイキぶりが眼目で、「巻き込まれ型」ならぬ「強引な自分からの巻き込ませ型」ミステリー。現代生活における最大の謎は「隣人」ということで、『裏窓』の匂いもある。忍び込んでしまうあたりの、やり過ぎによるイキイキぶり。眼鏡をベッドの下に忘れる、いうオチもついて。死んだはずの夫人を目撃してから第二幕。エレベーター、追跡、溶鉱炉というトントン拍子の展開も何かおかしい。この人の映画では「4人」というのが一番安定するみたい。男2女2で、それぞれ線が引かれあう。そして最後に『上海から来た女』のスクリーン裏で、さらに鏡を使ったシーンで、視覚的なポイントを作っている。
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-13 10:09:23)
1190.  ストレンジャー・ザン・パラダイス 《ネタバレ》 
これ「鬱陶しいのはごめんだよ」という若者たちの物語ね。親戚づきあいは鬱陶しい。「横丁の向こうまで行っちゃいけないよ」と忠告されるのも鬱陶しい。一人、大いに結構、という若者たち。でもエヴァに覚えてもらってると、エディは喜ぶわけ。第一、わざわざ一年たってからクリーブランドまで行くんだもん。内に閉じながら、ビクビクと触角を伸ばしている感じに、現代っ子を見ている。ロッテおばさんがいい。ドシーンと椅子に座っているとこ。ハンガリー語だけで押し通して暮らしてきた重み。湖を見に行くシーンがおかしい。何かハンガリー語で非難を続けるロッテおばさんを残してフロリダへ。不意に大金が転がり込んでくるところも実におかしい。黒味があることで、ワンカットワンカットを三人がそれぞれの場所で回想しているような感じになって、奇妙な叙情が出てくる。何かまたすぐに会えるんじゃないか、この連中、って気がするのは、その回想的であることと関係があるんだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2010-12-12 09:28:46)(良:1票)
1191.  トゥームストーン 《ネタバレ》 
西部劇映画の祖である大列車強盗で始めて、ワイアット・アープの葬儀に西部劇俳優が涙したというナレーションで終わる。西部劇と西部劇史を重ねたような気分があり、そこらへん徹底すれば面白いものができたかも知れない。なんか尻すぼみ。神父をあっさり殺すリンゴの登場のさせ方なんかもいいんだけど(生まれてきたことに復讐しようとしている男)、変に湿っぽくなったりもする。阿片中毒や銃規制や女性の地位の問題とか、なんか現代に色目を使っているようなとこが露骨で、不純感。「酔ってて二人に見えるだろう」「そのために二丁持ってるのさ」。ワイアット・アープものではドク・ホリデーが大事で、西部劇常連のキャラクターの中でも、魅力的な存在。肺病やみで医者くずれで賭博師と、ロマンの要素をたっぷり持っている。この黄金のコンビが出れば、それだけである程度は見せてしまうとこがある。撃ちながら前方に走っていく姿勢というのは、誰がやってもかっこいいなあ。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-11 09:58:16)
1192.  戦場でワルツを
アニメ技術のことはよく分からないんだけど、不思議な動きをする。東南アジアの影絵のような、関節だけ留めてある人体パーツを動かしているような、でも滑らかという動き。口の動きも変にリアルで、全体新鮮な世界だった。その影絵的な感じが、記憶を探るストーリーとうまくマッチしている。話としては、ベトナム後のアメリカ映画のあのトーン。生き残ったものの後ろめたさと、心の傷。戦車の中にいるときの万能感と外に出たときの無力感、とか、カメラ越しでなくなったときの戦場の生々しさ、など兵士の証言が痛々しい。悪い映画ではなく、こういう兵士個人の心の記録が積み重なって大きな証言になればいいと、心から思う。でもかつてのアメリカもあれだけ「心の傷映画」が作られながら、ひとたび同時テロが起こると「やっつけろ」の大合唱に呑み込まれていった。個人の「私」の証言は、ひとたび「われわれ」の怒号が起こると、あっという間に掻き消されてしまう。正直、あんまり希望は持てなくなっている。もひとつこの作品が弱いのは、虐殺の本体をファランヘ党という極右組織だけに押しつけている感じがあって、もちろん黙認したイスラエル軍も非難はしているが、ちょっと逃げ腰。でも常時戦時下のあの国でこれだけ言うのも、大変だったろうとは思う。ワルシャワ・ゲットーの記憶を、イスラエルの免罪符としてでなく持ち出したのだから、そこからもひとつ、人間集団が狂う普遍的な分析にまでいってほしかった。
[DVD(吹替)] 7点(2010-12-10 10:42:31)(良:1票)
1193.  パリ、テキサス
この人の映画は、その映画に必要とされる時間よりいつもちょっと長すぎるみたいな気がして若干苦手、ロードムービーとして風景を眺めている時間が長いからなんだろうか。曇天に夕陽のシーンなんか、実に美しいけど。話としては、父を演じ直そうとする男の物語。フワフワと歩いていってしまう男、飛行機には乗れず、同じナンバーのレンターでないと駄目、という人。靴はいつも磨いて揃えておく。子どもがだんだんなついていくところに一応スリルがある。8ミリもいい。かつての良かった時。息子は水槽の脇から画面と父を観察している。銀行から赤い車を追うサスペンスもある。ナスターシャ・キンスキーが出てきてからダレたか。それぞれの嘆きが、分解してバラバラに散っていってしまうようなテキサスの風土。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-09 10:32:15)
1194.  昭和残侠伝 血染の唐獅子 《ネタバレ》 
ドラマの型としては、もう「忠臣蔵」パターンで、いじめられて仇を討つって芯。それを脇筋として山城新伍が膨らませている。これも考えてみれば「仮名手本忠臣蔵」の勘平、ずいぶん三枚目な勘平だけど、恋のため一家に不義理をし、その負い目から死んでいく役割りなわけ。昔からあるドラマの型を応用していく日本文化の伝統に則っている。相手の染次(牧紀子)がまた話を膨らませてくれて、自分に惚れた男に対する女の義理を果たす役どころ。さらにここには自分になびいてくれない秀さんに対する微量のアテツケも感じられ、自分の操を男気のシンボルである纏と交換し、秀の心に残ろうとする哀切もにじみ、まったく女優冥利に尽きる役どころだろう。そしてこれは、ただただ秀さんのことしか考えない藤純子のまっすぐな役どころと一対になっていて、それは複雑な池部良とまっすぐな高倉健の一対と同じ。こういう構造は一朝一夕に生まれるものではなく、長く大衆文化の中で練り込まれてきたものだから、安定感がある。いつもちょっと疑問だったのは、知的善玉やくざである池部がモロ悪人の組に入っちゃってる、ってのに無理があるんじゃないか、ってことだったが、今回思った。きっと昔は、河津清三郎も、池部が心服するような立派な任侠の徒だったんだ、世の中の変化に乗って組をやっていく上で、金に執着しなければ勝ち残っていけなくなり、そして歪んでいったんだろう。だからシリーズのタイトルも、時流に乗れない「残」侠伝なんだ(シリーズ1作目は戦後が舞台でその「残」の感じはさらに強い)。ラスト、健さんを包み込むように木遣りが流れるが、まるで近代に置き去りにされ滅ぼされていったすべてのものを弔う御詠歌のようにも聞こえてくる。
[DVD(邦画)] 8点(2010-12-08 10:15:06)
1195.  第9地区
エイリアンの存在が日常と化している、その設定のみ評価。今まで宇宙人は『宇宙戦争』みたいに対立するものにしろ、『未知との遭遇』みたいに友好的なものにしろ、なんというか、敵とか神とか非日常的な「目覚ましい」存在だった。ここでは被保護者として日常的に存在している。『E.T.』も被保護者ではあったが、ああいう特定の狭い環境下ではなく社会そのものでそうなっている。もっぱら宇宙人もので国家が介在してくると、「国防」問題としてだったのが、ここでは「治政」問題として登場する。そういう状況をスケッチしていった冒頭が楽しかった。まあ結局、世界にあふれている異民族間の軋轢を(あるいは狭く南アの問題を)、難民としての宇宙人に置き換えて描いただけじゃないか、ということだが、でもそうやって置き換えることで新鮮に見えてくるものもある。苛酷な植民地支配を徹底的に受けた大陸を舞台にして生まれた発想だろう(でも後から入ってきた白人がエイリアンになぞらえられてるわけではなく、意図的なのか無邪気ゆえなのかは分からないけど、微妙なネジレがある)。今まで宇宙船がもっぱら北半球に訪れたこと自体に、宇宙の偏見(!)があったのかも知れない。ただドラマとして展開していくには、既製の北半球的物語を利用するしかなかったのが弱点で、冒頭でワクワクした分、物足りなかった。でも晴れ渡った・影のくっきりしたゴマカシのない世界像はいい。
[DVD(吹替)] 6点(2010-12-07 09:56:49)
1196.  続・忍びの者 《ネタバレ》 
私なんか山村聡っていうとテレビでの「ホームドラマの穏和なお父さん」って印象が強いので、昔の映画で暗い役やってるのを見ると最初は意外な気がしてた。煩悶したり自殺したり、ものごとを悪い方へ悪い方へと考えがちな、知的で暗い人物の役が多く、監督やらせると『蟹工船』だったり。だもんで、光秀=戦国史上一番暗い男=山村とすんなりキャスティングされたんだろう。まだ私はホームドラマのお父さん気分が抜けきれてないもんだから、ちょっと戸惑った。若山富三郎の信長体型もかなり違和感だったし(こっちの方がよっぽど石川五右衛門)。でもそれらは見てるこちらの問題。忍者映画にしては忍びの者が無力すぎないか。本能寺で何をしたかっていうと、トドメは刺したものの、追い詰める手段としては床下で火を焚いてるだけなの。個人的な子の仇なら、光秀を離反させるなんて遠回しな政治力学に加担するより、好きなときに自分で忍んで寝てるとこ刺せばいいじゃないか、そんな簡単に忍び込めるんなら。人に使われることが染みついた下忍根性のフガイなさ、ってテーマに集約されてるわけでもなく、なんか無力感ばかりが募る(本能寺で学んで、次の聚楽第では前向きになったってこと?)。そして左翼監督の悪癖、弾圧されるシーンでの悲壮感への陶酔。なぜ敗北したのか、と建て直しに向けた論理的な検証はなく、弾圧されたこと自体が自分たちが正義である証明だとでも言うように酔ってしまう。弾圧された死者たちは、ただの記念碑になってしまう。これ左翼に限らず、日本において野党的なるものに共通している心情。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-12-06 10:29:28)
1197.  おそいひと 《ネタバレ》 
分かりませんでした。「作品の意図」とか「作者の言いたいこと」とか以前の問題として、そもそも話の展開が分からない。なぜ通り魔になったのか、という大事なポイントのとこで、思わせぶりな映像になってしまい、分からせようとしていない。全体としても無意味なアップや、なに映ってんだか分からないカットが多すぎ。最初の殺人はどうも嫉妬ゆえらしいんだけど、そこから殺人鬼にジャンプしたのは、女学生との問題だけなのか。階段の手前で進行を阻まれる電動車椅子のシーンはあり、それが階段の下で酔っ払いを待ち伏せる行為につながっていたのか、よく分からない。からかわれたり馬鹿にされたりするような、分かりやすい動機がないのはいい。でも彼の動機を納得させるだけの「彼の心の気分」は、せめて欲しい。それには電動車椅子から見た世界がどういうものかを、もっと描くべきだったのではないか。介助されることの苛立ち、よってたかって親切にされることの鬱陶しさを、車椅子の高さから見せるべきだったのではないか。介護されるほど募る孤独を描写で見せるべきだったのではないか。たぶんこの作品は、主人公を本物の身障者が演じているということに寄り掛かり過ぎている。でも私たちはそのことを、マスコミの情報なりレンタルDVDのパッケージなり、フィルムの外の回路を通じて知って観ているわけで、健常者の俳優が演じていると思って観てもいいわけだ。そう観てもこの作品は自立できるだろうか。たしかにドラマで障害者がいつもかわいそうな善人の役になるのは差別の一種だろうが、だからといって現実に実行できそうもない通り魔をやらせるのも、障害者が持つ夢や希望に対する侮りが感じられてしまうのだ。
[DVD(邦画)] 4点(2010-12-05 10:07:01)
1198.  ストリート・オブ・ファイヤー
みなに慕われてたミコ的存在の歌姫をさらわれる、修行を終えて帰ってきた主人公、クノイチ風の脇役もいてラストにはちゃんとチャンバラがある、とそのまんま時代劇にもなれる活劇の原型。そのロックンロール版。まあイキがいいですな。歌姫のメロディに乗って、ワルたちがオートバイでやってきて、ドアを開ける影、悪玉の顔にだんだん光が当たってくる。主役のアンチャンにもうちょっと魅力があるといいんですが。だんだんチームが膨らんでくる楽しさ。群衆シーンの中に、ややお年寄りはいたものの、子どもの姿はなかった。若者の街に子どもっつうのは、世帯の重さが出ていけないのだろうか。夢がシラけちゃう存在なんだろう。そこが弱さと言えば弱さで、展望のない夢、未来へ広がっていきそうもない閉じた若者だけの夢どまりになった。時代劇で言えば、カタギの町人が出てこない町って感じになってる。それが原型ってことなんだから、別にいいんだけど。
[映画館(字幕)] 7点(2010-12-04 11:10:31)
1199.  愛と精霊の家
長編の映画化は本当に難しい。総集編になってしまう。弟たちをカットして女系の線でまとめたのは仕方あるまい。それでもエステバンという人物の複雑さは出せなかった。いっそエステバンだけに絞るという手もあっただろう、「『愛と精霊の家』より」、として。メリル・ストリープは、まったくの死に役、グレン・クローズに負けた。風土は南米でも監督の北欧の気配がところどころある。空気の濃密さが感じられないとか、少女たちは北欧っぽいとか。大河ものってのは忘れたころに人物が再登場するところにドキドキがあるんだけど、この時間だとそのタメが足りなくて、ドキドキにまで至らない。私生児はまだしも、あの娼婦なんかオッという感じがまったく出ない。まあ豪華配役陣を眺め回す楽しみはあった。
[映画館(字幕)] 6点(2010-12-03 10:27:10)
1200.  ポリス・ストーリー/香港国際警察
この泥臭い騒々しさには、どうしても馴染みきれないものがあるのだが、格闘シーンには心底ホレボレする。どの国のアクション映画の格闘シーンより、香港では接近して争ってるように見えてしまう。ほとんど組体操、高度なダンスのよう。戦う者の間の空隙を、一生懸命手足で埋めているような感じ。たとえば日本のチャンバラがしばしば主人公一人の日本舞踊であるのに対し、あちらはちゃんと、格闘というものの複数性を生かしている。そのキビキビした直角的動き。ラストのデパートなんて、うっとり見とれてしまった。ただショーケースがあるものだから、どうしてもやたらガラスが割れることになり(そうい売り場を選んでる)、あのハデな粉砕感は音楽で言えばシンバルの一打ちなわけで、あんまりやりすぎると効果が薄れる。見せどころのふきぬけの落下を反復するのも逆効果。見せどころは一回こっきりで、あとは観た者の脳内で「すごかったなあ」と夢のように反復させるものだ(でもこの3回繰り返すサービス過剰ぶりに、きっと香港映画の中国料理的しつこさの濃ゆ~い味わいがあるんだろうな)。車の崖下りやバスでのぶら下がりなども見せ場だけれど、アトラクション気分が強く、かえって電話番しているときのコント的エピソードのほうにアクションの楽しみを感じた。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2010-12-02 10:18:38)(良:1票)
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