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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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141.  夢は牛のお医者さん 《ネタバレ》 
大学受験の合否通知であろう電報を郵便局員が高橋知美さん宅に運んでいくのを背後からカメラが追う。 緊張しているはずの知美さんを気遣って、クルーは家の外で郵便配達車をずっと待っていたのだろう。 獣医になった知美さんが実家の牛の出産に立ち会うシーンも、彼女が語るように「何日も辛抱強く待ち続けて、出産はあっという間」だが、 その感動的な出産シーンを撮るためにスタッフも粘り強く付き添ったのだろう。 勉学に勤しむ彼女に差し支えないように、撮影を控える場面も多々あったろう。 そうした画面に映らぬ部分・映さぬ部分にこそ、スタッフの誠実さを見る。地道な長期取材と関係づくりあっての「素」の表情であり、佇まいである。 正味86分にそれが結晶している。 合格の通知に突っ伏して歓びを噛みしめる姿のいじらしさ。彼女を支える父母と妹さん二人の働きぶり、祖母の朗らかな表情。 獣医師として成長し、暴れる牛にも動じることなく冷静に処置できるようになった姿の頼もしさ、それぞれに魅せられる。  元がテレビ素材ゆえに表情に寄りがちなのが玉に瑕でもあるが、その子供たちのまさに純真そのものの表情と涙を目の当たりにすれば グリフィス的クロースアップの欲求を抑えがたいのも無理はない。  画面の解像度もまた26年の歳月を感じさせるが、ラストはより映画を意識したのだろう。 土本監督の水俣シリーズが海の光で人々を包むように、牛舎から外へと凛々しく向かう知美さんを雪の白と輝く逆光で包ませる。  子牛を抱き寄せ、頬ずりして慈しむ幼い知美さんの印象深いショット。生きる姿勢の素晴らしさと共に、映画の被写体としても稀有の素晴らしさなのである。
[映画館(邦画)] 10点(2016-11-18 21:04:43)
142.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
キャラクターの描線の淡い色調が背景画とよくマッチして、柔らかなトーンで統一されている。 一時期のスタジオジブリのような極端な細密さではなく、ほどよい加減で省略を採り入れた美術も大らかでよい。 それでいて、道端の草なども当時の植生を細やかに再現しており、道行くエキストラの服装に至るまで妥協がないのが 画面作りに対する仕事ぶりから察知できる。  廃墟となった家の入口付近に重石をされた書置きがある。通りの端で子供ら二人がままごと遊びをしている。 背景に配置されたそんな細部から主人公家族以外の人々のドラマまでが立ち昇ってくる。 風に揺れる松の木の葉、米一粒一粒の白さ、風に舞うタンポポの白い綿毛一つ一つの動きの細やかさが タイトルと共に主題を浮かび上がらせる。
[映画館(邦画)] 9点(2016-11-15 20:00:15)
143.  ミュージアム 《ネタバレ》 
明度・彩度を落とした雨天曇天のルックにも早々に飽きる。結局はフィンチャーもどきにしか見えぬから。 車内の小栗旬のショットとか、雨だれの効果や音を画面に活かすなどの工夫がまるで見られないのはセンスの欠如である。 それもそのはず、後の種明かしで明らかになるように、これらの雨は物語に根拠を持つ設定に過ぎないからであり、雨という記号の配置こそが 眼目だとしか思えないからである。  クライマックスからの逆算で尾野真千子の苦悩のドラマも途中途中で必要と判断したのだろうけれど、結果的にはその回想交じりのパートが ことごとく中途半端な印象を与え、犯人追跡のドラマも停滞させる。  クライマックスも家を包囲する警官隊を中途半端にクロスカットさせては『ラストミニッツレスキュー』を保証しているようなもの。 サスペンスが散漫になってしまっている。
[映画館(邦画)] 4点(2016-11-14 23:30:57)
144.  オケ老人! 《ネタバレ》 
一つのジャンルとも呼べそうなフレームワークで、何ら想定を裏切らない。演奏会終了と共に万雷の拍手で、杏の晴れやかな笑顔がクロースアップされて ハッピーエンディングへと至るだろう流れも律儀なまでにパターン通りだ。  彼女の成長のドラマ、メンバーの団結と上達のドラマでバリエーションと独自性を作っていくわけだが、 ここも杏と笹野高史の関係に絞ってシンプルに徹している。 上達の過程は本来、練習シーンのモンタージュと反復によるべきところを季節変化と街の情景の早送りだけに頼っているのはかなり安直な印象だ。  コメディタッチに合わせて芦澤明子のカメラも明朗、杏の表情のクロースアップが頻繁過ぎるが、彼女のほどよくコミカルで豊かな表情と口跡の良さで 苦にはならない。下手な女優ならこれ見よがしのわざとらしい変顔を連発して白けさせられるところだが。
[映画館(邦画)] 5点(2016-11-11 23:20:53)
145.  続・深夜食堂 《ネタバレ》 
事前情報は一切抜きにして、新たに登場するゲストキャラクターと常連キャストのアンサンブルを存分に楽しむ。 前作で新たに加わった多部未華子が、新キャラの渡辺美佐子を部屋に泊め、新潟から送られてきた酒を酌み交わす。そんな何気ないショットが、 滋味を醸して心を和ませる。  ガードを潜って新宿東口に抜けていくオープニングは構図も繋ぎもナレーションも一緒だが、たぶん新規に撮ったものだろう。 「めし」の提灯が灯る食堂周辺の狭い路地や、落ち着いた雰囲気の店内のレイアウトなど、シリーズを担当する原田満生の美術が今回もレトロムードを 味わわせてくれる。 そして今回は焼うどんに蕎麦、焼き肉に豚汁定食がメインで、加熱調理の音と画面がシンプルながら相変わらずそそる。  郊外の高台の住宅地。タクシーの後部座席から息子の姿を遠目にみつめる渡辺美佐子。食堂のセットから離れてロケーションとなるこれらのシーン では、必ず風を渡らせて木々を揺らしエモーションを掻き立てる。松岡錠司はちゃんと心得ている。
[映画館(邦画)] 7点(2016-11-09 22:13:12)
146.  手紙は憶えている 《ネタバレ》 
老いと、いわゆる認知症の設定がサスペンスを一貫して持続させる。そこに銃社会という現在的テーマも巧みに絡ませながら戦後70年の時間を 浮かび上がらせる。ウェルズの『ストレンジャー』を思わせるこの題材、語り口を変えつつ引き継がれている。 大戦を生きた世代と戦後世代の対比を強く印象づけながら。 静かに、穏やかにピアノを奏でるクリストファー・プラマーのショット。そのイメージは、ラストの痛切なサプライズと共に 趣を反転させるだろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-11-08 23:26:13)
147.  ぼくのおじさん(2016) 《ネタバレ》 
確かに松田龍平は適役だし、甥っ子とのコンビネーションも良い。『まほろ』シリーズなどを始め類似した変わり者キャラクターをあてがわれながらも 作品ごとに微妙に演じ分けている。  狙った間延びとは云え、ハワイのパートでさらにダレ気味になってしまうの痛いが、東宝戦争映画を始めとする邦画が目を向けてこなかった 真珠湾攻撃によって苦難を被る日系移民や二世部隊についてさらりと言及するあたりの配慮がいい。 高台から望遠したパール・ハーバーの景観も1ショット、「家族」三人の背と共に慎ましく挿入されており感慨を沸かせる。  山下印の青い空に、風に揺れるコーヒーの木の緑と赤が映える。
[映画館(邦画)] 5点(2016-11-07 20:18:55)
148.  溺れるナイフ 《ネタバレ》 
菅田将暉と小松菜奈が初めて出会う入江の波立つ情景などは観る側の心もゾクゾクさせてくれるのだが、そのロングショットと 小松の視線、水面の菅田のカットバックが少々ぎこちなく感じられる。 土手のシーンなども、二人の位置関係が不明瞭で、高低差が活きていない。  劇伴や挿入曲も過剰に感じてしまう部分が多く、地方の映画なら尚のこと河川や水路のせせらぎや波音などをもっと活用して欲しいところだが、 ロケーションをロングショットのフレームの中で良く活かし、俳優らを良く動かし、彼らを幾度も水に浸らせて頑張っている。  森の中を風のように駆け、海に浸かり、炎と共に舞う菅田も小松もさすがに達者だが、 これだけ映画への露出が多いと食傷気味にもなるが、本作では重岡大毅がなかなか新鮮なバイプレーヤーであり、ナチュラルな口跡が素晴らしい。 彼絡みのシーンに長回しが多用されているのも頷ける。  バッティングセンターのショット、カラオケバーのショットなど、緩急自在の呼吸でロングテイクを活かしていて感心だ。 快活さとナイーヴさを体現し、一部で科白を噛んだりしているのも逆に自然体の魅力を生んでいる。
[映画館(邦画)] 6点(2016-11-06 08:38:18)
149.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 
赤いリンゴ、赤い車、吐血の赤とアクセントをつけつつ、ラストにはもう一発何らかのアイテムを用意しているのだろうと思いつつ観れば、 なるほどしっかりと情熱的でファンタジックな赤で期待に応えてくれる。  夜の人間ピラミッドや、宮沢りえの投石を始め、泣かせのシーンにもユーモラスな笑いをほのかに混ぜ込む加減が絶妙で、エモーションのほどよい バランシングが心地よい。  宮沢と松坂桃李の抱擁、伊東蒼と杉咲花の蹴り、篠原ゆき子への平手打ち、オダギリジョーに対する頭突きやパンチなどの 意表を衝く少々手荒なスキンシップによる親愛表現もよろしい。  勿論、杉咲花が披露する手話も感動的だ。身体で感情を表現させるべくして設定された属性である。
[映画館(邦画)] 7点(2016-11-02 00:02:44)
150.  インフェルノ(2016) 《ネタバレ》 
映画にブレーキをかけがちな謎解きを抑え気味にして、冒頭から一気に逃走劇に突入していく手際がいい。 記憶も不鮮明なまま事件に巻き込まれるトム・ハンクスが、ヒロインと共に複数の組織から追われる展開が主となり、なかなかにスリリングである。 そこにロン・ハワード的な落下や水のイメージが溢れ、観光映画の趣ともよく融合している。 が、アップのショットの多さは辟易するし、アパート裏口からの脱出や壁の乗り越えなど、危機突破の具体的描写が弱いと思う。 アイデアの貧しさ以上にアクションの撮り方の不味さである。  トム・ハンクスとシセ・バベット・クヌッセンが雨の中で見つめ合うメロドラマ的な回想パートは 水のモチーフとも相まって情感のあるシーンだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2016-10-28 22:45:26)
151.  光にふれる 《ネタバレ》 
背景をぼかし気味にした深度浅めのカメラは、主人公ホアン・ユィシアンの不自由な視力と同調させたのだと考えよう。 感知できるものと出来ないものが、カメラのフォーカスで仕分けされているように見える。 列車がトンネルを抜けていホウ・シャオシェン的ショットも光の主題を担いながら台湾映画の薫りを濃厚に伝えてくる。  耳を澄まし、事物に触れて大学の新生活になれていく彼の姿が丹念に追われるが、とりわけダンスと音楽を通して 外界と触れ合っていく描写が映画と相性よく馴染んでいる。  そして、激情を秘めつつ穏やかな表情を絶やさないホアン・ユィシアンの佇まいが素晴らしい。 ダンサーを志すサンドリーナ・ピンナが仏頂面と泣き顔から次第に笑顔の似合うヒロインへと変わっていくのも、彼の言葉と表情を通じてだ。 彼女が月光の差し込む夜の教室内でユィシアンの弾くピアノに合わせて踊るシーン、 彼の故郷の海辺で楽しげに戯れるシーンが美しい。  クライマックスは、それぞれが挑むコンクールとオーディションのクロスカッティングであり演奏とダンスが劇的にシンクロして盛り上げる。 寮の悪友たちもここでいいところを見せて、青春ものとしても爽やかに決めている。 映画のサントラが未だに絶版で手に入らないのが残念だ。
[DVD(字幕)] 8点(2016-10-24 23:29:39)
152.  スター・トレック/BEYOND 《ネタバレ》 
ソフィア・ブテラを起用したのなら、もっと彼女のアクションを増やしても良かったのでは。 狙撃シーンや格闘シーンで唯一サマになっていたのは彼女のシーンと、クリス・パインのバイクアクションだ。 この二人をもう少し絡ませておけば、乱戦のさなかに二人が手を取り合って転送されるアクロバティックなシーンは よりエモーショナルなものとなっただろう。 ひとたびアクションに突入するとカメラがひたすら落ち着きなく動き回るという癖があって、却って状況把握を難しくしている。  時代が許さないのだろうが、終盤は例によって『盗人にも三分の理』が登場。この「言い分の主張」、あるいは種明かしが始まると 必ずアクションが滞る。喋らずにはいられないから。 変則的な重力を利用した面白い舞台をクライマックスに用意しているのだから、着水してからタワー天辺までの追跡を途切れさせず 一連の流れとして身体アクション:活劇を見せて欲しいのである。 種明かしの作劇に頼ってしまうところが弱さである。  宇宙空間に鳴り響く音楽とドッグファイト。これはどう見ても日本製某アニメーションへのオマージュだろう。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-10-23 20:41:10)
153.  バースデーカード 《ネタバレ》 
登場するロケーションが基本的に見晴らしの良い高台。山の手である。よって生活感も希薄。メルヘンチックですらある。 が、開き直ってそれに徹しているところがいい。全編通して清潔感に満ちた映画だ。  風通しのよい坂道や勾配は、主舞台の長野、そして母親の故郷も小豆島に設定することで 徹底され、そこに必須アイテムである自転車滑走シーンを入れ込むことも抜かりない。 手紙の朗読、そして橋本愛の涙。その単調な繰り返しになってしまいそうなところ、そうした運動を取り込んで映画を維持している。  病院の屋上、車椅子の宮崎あおいに、ユースケ・サンタマリアが背後から優しく手を差し出すと、彼女がそれを握り返す。 同様の触れ合いが吉田監督の『旅立ちの唄』にもあったが、他にも頭をなでたり、CDを手渡したりというスキンシップを おろそかにしていないのがいい。 終盤に登場する結婚式のベールのエピソードが感動的なのは、回想ショットで宮崎あおいが心を込めて手編みする指の動きの美しさゆえである。 宮崎から橋本にベールが受け渡されるショット繋ぎの美しさと二人の表情の素晴らしさに打たれる。  クライマックスが『アタック25』出演というのも、なかなか大胆である。
[映画館(邦画)] 7点(2016-10-23 05:33:55)
154.  永い言い訳 《ネタバレ》 
本木雅弘の髪型の変化、季節の移り変わりのショットや子供たちの成長が画面を通して提示され、映画の中での時の流れや人の変化というものを実感させる。 その中で、夏の夕暮れに幼い妹が団地の庭でしゃがみ込み、力尽きていく蝉を見つめているシーンなどがさりげなく不意を衝く。  是枝的?子供たちの素晴らしい表情の捉え方、大人と共演する際のフレーミング・アングル・高さなど、子供の視点に対する配慮の細やかさも伝わる。 冒頭の散髪シーンの鏡、シャボン玉、坂道と自転車など、それぞれドラマに意味を為しつつ、なにより映画の見せ場として落とし込まれているのがいい。 16mmフィルム独特の粒子感覚は夏の海などで特に見事な効果を出している。  宵の列車のシーンにかかる『オンブラ・マイ・フ』も技あり、である。
[映画館(邦画)] 8点(2016-10-20 21:30:43)
155.  祝(ほうり)の島 《ネタバレ》 
毎週月曜日の上関原発反対デモや埋め立てに対する海上抗議行動、4年に一度の神舞と呼ばれるイベントなど、 鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリーとかぶる部分も多いが、こちらも現地に密着して島の人々の生活を丹念に記録している。  一本釣りの漁師の船に同乗しての取材。漁獲されたタコを浜で開いて天日干しの作業をする女性達の和気藹々とした姿。 時折インサートされる、高台から見下ろす島と「宝の島」と太陽の景観。それらのショットの寡黙さこそ、作り手のスタンスの明示である。  島の小学校の入学式が行われている。在校生二人と新入生一人の計三人は、どうやら長女・長男・次男だ。 来賓はご近所さん達なのだろう。校長先生、父親の挨拶が和やかな雰囲気の中で行われている。 新入生となる次男がお父さんそっくりなのも微笑ましい。 入学式が終わって下校する笑顔の三人を、子供たちの視線の高さに合わせてカメラが追う。  その3人兄弟である生徒たちが教室で仲良く合唱するシーンがとりわけ感動的である。 彼らの元気な歌声が、島の情景へと被さっっていく。  抗議行動の切実な叫びをラストに持ってくるかと思いきや、年越しの静かなシーンから続けて、生活音の流れる静謐なエンディングが慎ましい。 纐纈あや監督の美徳である。
[DVD(邦画)] 8点(2016-10-19 22:12:51)
156.  何者 《ネタバレ》 
携帯端末がキーアイテムであることからしてもあまり映画向きとはいえないが、様々な視覚化の苦心はうかがえる。 ルームシェアによって手狭な部屋。エリアを仕切られた喫煙ルーム。窓外の見えない地下鉄車両内。隔絶と閉塞のイメージが続く。 有村架純が下車した後に残った佐藤健の姿を、電車のドアとホームドアが二重に遮断するというショットも酷薄な印象を強める。  タクシー後席に座る佐藤と菅田将暉の微妙な距離と、二人を照らし出す赤いライティング、 沈黙のアパート内に遠く響く救急車のサイレンなど、じわじわと湧き上がる不穏なムードは ラスト近く、それぞれの液晶パネルを光源として向かい合う佐藤と二階堂ふみのシーンで陰影演出の最高潮を迎える。  無表情な観客達の拍手の中、有村は特権的に輝きを放ち、佐藤は自然光と共に開かれたドアへと向かう。
[映画館(邦画)] 6点(2016-10-16 22:02:47)
157.  GANTZ:O 《ネタバレ》 
クライマックスに至るも、助太刀頼りでさして活躍するでもない主人公。そこで実写では再現できない身体アクションを目一杯披露するため のCGキャラクターではなかったのか。それがあの程度なら、俳優が演じりゃよいのに。 『ガルパン』のあんな図柄の二次元キャラクターでも最後には思い入れが出来るものなのに、よりリアル志向に造形されたはずのこちらの人物達の生き死にに さしたる感慨も起きてこないのは何故なんだか。  クリーチャーの攻撃を間一髪で躱す瞬間のスローモーションや、被写体の周囲を縦横無尽に旋回するカメラが頻繁に使われるが、 そういう如何にも3DCGアニメですといった無駄なカメラワークが逆に安っぽさに拍車をかける。 アクションや特殊効果はふんだんに盛り込まれているのだが、それが活劇的面白さにはなっていない、というか。 クライマックスを盛り上げるべきタイムリミットのサスペンスも何ら機能せず。 おまけに交わされる対話は、「他人の為に」とか「生きのびるために」とかの観念論・精神論ばかり。 キャラクターに血が通わないのも、当たり前である。
[映画館(邦画)] 4点(2016-10-15 00:37:04)
158.  おかあさんの木 《ネタバレ》 
ただただ情緒に訴えるのみの反戦メッセージなど、タチが悪いのみ。 鈴木京香らの記号的・心理的表情と、饒舌な劇伴音楽、加えて無駄にミスリードを誘う語り部による ナレーションによって、ひたすら冗漫である。 ポスプロでの処理もいろいろと施されているのだろうけれど、ロケーションとオープンセットによる昭和初期の農村の再現は よく頑張っているのだが。 志田未来のつくったおはぎを、画面に登場すらさせないなどの無頓着も作品を貧相にしている。
[DVD(邦画)] 3点(2016-10-14 00:01:33)
159.  少女(2016) 《ネタバレ》 
本田翼の左手甲の傷は、まず終盤のさる事件とも絡む物語的要請としてあるが、加えてその不自由によって彼女が右手を以て 一心に鉛筆を走らせるという映画アクション的要請から来るものでもある。 これがノートパソコンのキー打ちではサマにもならない。授業そっちのけで文字を綴り続ける手と鉛筆の動き、紙面上に生まれていく肉筆の文字、 その硬質な音響、そしてその彼女を横から見つめる山本美月の視線。それらの要素が映画を形成していく。 手書きの文字だからこそ、ドラマとしても映画としても献辞の言葉が重要な意味を持つこととなるだろう。  前々作に続いてのコンビ、月永雄太の撮影が曇天や夜景を見事にドラマに反映させている。 夕陽の映える海岸沿いの歩道を二人の少女が駆け抜けていくスローモーションショットの反復。 計四人の少女たちの表情と走りが素晴らしい。  「夜の終わり」がモチーフであるからには、二人を明るく照らし出す朝陽が欲しいところではあるが。  終盤はありがちなパズル合わせと化してしまう。そこから逆算したのだろうキャラクター造形が随所に見られるのが難点か。  『しあわせのパン』、『ぶどうのなみだ』で悪い先入観を持ってしまっていたが、これは悪くない。
[映画館(邦画)] 7点(2016-10-10 01:00:37)
160.  お父さんと伊藤さん 《ネタバレ》 
食事シーンの沢山ある映画はいい。上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也の三人がテーブルを囲むフィックスのショットに流れる時間の 何とない気まずさとぎこちない対話、やがてドラマの進行と共にそこには温かみが感じられてくる。 出される料理はシンプルながらも上野の手料理で、柿を剥いたりフライを揚げたりの調理もさりげなく描出されているのが監督のセンスだ。 古屋敷で夜を明かすシーンも、酒を燗することから微妙に変わっていく場の空気がショットの中に捉えられている。 上野が一人で酒やビールを呷る、その飲みっぷりの良さや、リリー・フランキーがウスター派の藤の前で遠慮がちに 中濃ソースをトンカツにかける仕草なども微笑ましい。 食事や、家で寝そべってのくつろぎ、庭いじり、本屋でのアルバイトの描写。それら生活行為の丹念な積み重ねによって キャラクターが少しずつ肉付けされていく作劇がじんわりと楽しい。(伊藤さんの素性は謎のままだが)  ラスト、藤を追って走る上野はカメラ移動によって前向きのショットで捉えられる。素敵な笑顔と共に。
[映画館(邦画)] 7点(2016-10-10 00:35:13)
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