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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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141.  マタンゴ 《ネタバレ》 
東宝特撮にはいわゆる“変身人間シリーズ”というジャンルがありますが、本作はその作品とは明らかに違う独特なテイストを持つ異色作だと思います。これは星新一や福島正美が原案に係わっているところが大きいでしょう。「観客対象が大人なのか子供なのか判らん」という声も聴きますが、東宝特撮は『怪獣総進撃』あたりまでは(これでも)アダルトを想定して撮られているので、こういうダークなストーリーテリングは見受けられないことはない(変身人間シリーズも総じて暗いお話し)。この映画が他の東宝特撮とは決定的に異質なのは、「明るく楽しい」がモットーの東宝としては珍しく人間の闇というかドロドロの関係性を強調した脚本で、これは大映の初期ガメラにも相通じるところがあります。残念なのはやはりマタンゴ人間の造形センスで、誰が見てもキノコ雲のカリカチュアだと感じると思います。これはもともと製作側の意図するところでもあり、初期デザインはもっと露骨にキノコ雲に寄っていてこれでも修正されたものなんだそうです。 とは言っても久保明に始まり久保明で終わるストーリーテリングは、初見の時は凄まじい衝撃を受けましたよ。あの難破船の正体が最後まで謎のままで終わる不条理さがこの映画に深みを与えている感じがします。そして個人的にいちばんショックを受けたのは、あの小泉博がすました顔してヨットで単独逃亡しちゃったことですね。ふつう上手い俳優なら、表情なんかにこの艇長の人間的な弱さを伏線みたいに表現するでしょうが、役者としては不器用な小泉博なんでいつも通りの真面目キャラの演技で通し、それがかえってサプライズを強調させる効果があったのは皮肉です。そしてこの映画の最大の謎は、果たして久保明はマタンゴを食べたのか?ということになるでしょう。昔から自分なりの解釈は、彼は歯をくいしばって頑張ったのに島に君臨するスーパーナチュラルな作用で、結局マタンゴ人間化してしまったというところです。だからこそ、好きな女性と供にマタンゴ人間になって幸せに暮らすという人生の選択に失敗した結末が強調されるんじゃないでしょうか。 余談:こんなドロドロ人間関係の七人でしたが、水野久美がインタビューで語っているところによれば、ロケはキャンプ気分でみんなとても楽しかった思い出になっているとのことです。役に成りきらされるメソッド演技で撮影されなくて良かったですね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-03-18 20:37:35)(良:1票)
142.  眠狂四郎 炎情剣 《ネタバレ》 
このシリーズは五本目の鑑賞だけど、今のところ本作がいちばん面白かったかと思います。西村晃にしても中村玉緒にしても狂四郎の敵なのか味方なのか判断しづらい揺れ動くようなキャラなのが秀逸です。とくに玉緒はちょっと凄みを感じさせてくれる悪女ぶりが、50年後にすっとぼけた婆さんになっていることを知っている身には、不思議である意味新鮮な感じがするぐらいです。西村晃も完全に肩の力が抜けたような飄々とした悪役ぶりに人間臭さが出ていました。実は雷蔵は足腰が弱かったので殺陣が苦手だったそうで、チャンバラ映画で定番のぐるっと囲んだ雑魚敵を斬りまくる立ち回りには難があったようです。クライマックスの藤堂家の刺客たちを斬りまくるシークエンスでは、寺院の回廊や階段を使って一人ずつしか斬りこんでこれないシチュエーソンにしてその弱点をカバーし、映像的にも見応えを創ることに成功しています。ニヒルかつ無頼という狂四郎のキャラは一段と凄みが増してきましたが、最後には人助けをする桃太郎侍的な展開になってしまうのはこのシリーズの弱点かもしれません。でも多少なりともそういう要素を織り込まないと、ヒーローものとして成り立たないのでしょうがないのかもしれません。今回は海賊の生き残りの少女がキリシタンだと知ったのが狂四郎の善行の動機でもあり、悪魔崇拝に走って棄教した神父が父親というアイデンティティーが影響していると解釈していいのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-03-03 22:41:27)
143.  眠狂四郎 円月斬り
第三作にして、題名に使われるぐらいで円月殺法がクローズアップされてきました。刀をグルっと一回りさせるだけの構えがなんであんなに無敵なのかは、私には剣道の嗜みがないのでさっぱり判りません。でも雷蔵が実演するといかにも凄い剣法みたいになるのは、さすがです。今回は冒頭から首が飛ぶは腕が斬り落とされるは、そして当時としては珍しく流血描写があるはでちょっとハードな路線です。狂四郎のニヒルさも徐々にダーク色を強めてきました。悪役は将軍ご落胤とその母親となりますが、それと狂四郎を取り巻く登場人物たちがけっこうキャラが立っていて、ストーリーに深みを持たせています。町場のセットやラストに炎上する橋などけっこう作りこまれていて、これぞ大映京都のスタッフの底力を見せられた感じがしました。肝心の円月殺法は劇中二回しか披露されなかったと思いますが、そこで一句。「狂四郎 雑魚は無視する 円月斬り」お粗末でございました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-01-03 22:32:14)
144.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
岡本喜八の作品としては『暗黒街の顔役』の方が有名ですが、どうしてどうして、本作の方が喜八らしさは濃厚で愉しめるかもしれない。お話し自体はハードボイルド刑事もの+任侠ものという感じです。三船敏郎の潜入刑事は、貫禄たっぷりの三船がストーリーラインはシビアなのにユーモア溢れる演技を見せてくれて、これが『用心棒』や『椿三十郎』より前の作品なのは興味深いところです。鶴田浩二はいつもの鶴田浩二で平常運転でしたが、お嬢様女優の司葉子がヤクザの情婦というキャラでヒロインというよりも汚れ役だったのは珍しかったです。この映画は脇役たちのキャラが立ちまくっていて、天本英世ら三人の殺し屋とミッキー・カーチスのコーラス・グループ、いわば元祖“キラーズ”みたいな連中が歌う“月を消しちゃえ”はもう抱腹絶倒間違いなしです。こういうところがいかにもな喜八節なんですよね。三船のトレンチコート姿は当時としては群を抜いたスタイリッシュだったと思いますが、残念だったところは彼は素手での殴り合いのようなアクションになると意外ともっさりしているんです。剣を握っての殺陣とは、やはり勝手が違ってくるんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-11-16 23:31:35)
145.  陸軍中野学校 密命 《ネタバレ》 
“日本の007”椎名次郎、その活躍が拝める中野学校シリーズの第四作目。冒頭でいきなり逮捕されて憲兵隊で拷問攻めにあう椎名次郎、これはけっこう意外な展開といえます。まあそれは拘留されている大物政治家と人間関係を作るための作戦だったとはすぐにネタバレするのですが、逮捕して同房に放り込むところまでは草薙中佐が仕組んだことは判りますが、椎名次郎がその作戦のことを全然知らないんだから政治家に信頼されるかどうかは未知数。そんなこと突っ込むのは野暮でしょうけど、市川雷蔵ならそつなく上司の期待に副えるであろう安心感が半端ないです。ストーリー展開はミステリー色が濃厚で、シリーズでは最上の脚本ではないでしょうか。市川雷蔵も“渋さ、ここに極まれり”という域に達しており、もう惚れ惚れです。ドジを踏んだ中野学校後輩の山下洵一郎に遺書を書かせて自決をせまるくだりなど、「まさか」とは観てる方は思うけど雷蔵の得体のしれない芝居にはすっかり翻弄されてしまいます。雷蔵ファンはとにかく観て損はないと思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-07-29 23:32:46)
146.  さらば友よ 《ネタバレ》 
戦死した戦友の名前がモーツァルト、検診の助手の女子大生がアウステルリッツちゃん、そんなファミリーネームのフランス人なんていますか?という突っ込みは置いといて、ストーリー自体はムリがありそうですが独特の雰囲気とドロンとブロンソン共演というマジックのおかげで印象深い仕上がりとなりました。金庫を破るためにクリスマス休暇三日間の間地下室にこもるというプロットには痺れます。まあこれは『死刑台のエレベーター』の有名なプロットの変形バージョンと言ってしまえば身も蓋もないですけれどね。金庫を開ける7つの数字のうち3個が判っていて残りの組み合わせを手作業で探るという気の遠くなるような話、数学に弱い私ですがたぶん何万・何十万という組み合わせになるんじゃないですか、だれか詳しい人がいたら計算してみてください。どう考えてもそれを一人で三日間のうちに試すって無理なんじゃないかと思いますが、ドロンは地下室にこもる前に7個の数字の並びが持つ意味にうすうす気が付いていたということです。でもブリジッド・フォッセイのあだ名が“ワーテルロー”だと知ったのは事件の後ですから、この推理はちょっと苦しいですね(笑)。まあそんなことはドロンとブロンソンを上半身裸にしておけば、誰も気にしないだろうという製作者の作戦はまあ正解でした(笑)。この舞台となる広告会社(たぶん)の地下室がまたアヴァンギャルドな内装でイイ感じなんです。弾丸を一発だけ抜いた六連発リボルバーなど小道具にかけた伏線なんかも良く考えているなと感じました。 ラストのドロンがブロンソンの煙草に火を点けてやるシーンは有名ですが、そこで終わらず突然ドロンが「イエー!」と叫ぶカット、正直これは観るたびに「なんじゃ?」って感じになります。たぶん映画館で観ていたら椅子からずり落ちたと思いますよ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2019-07-11 23:45:16)
147.  エルマー・ガントリー/魅せられた男 《ネタバレ》 
テーマ自体が大多数の日本人には縁遠いというか嫌悪感を催すことなので、評価されにくいでしょう。この映画で描かれているのはプロテスタント信仰であり、同じアメリカ人でもカトリック信者はこういう狂信的な信仰を嫌うところは日本人以上かもしれません。伝道師のジーン・シモンズの言動には“危ない人”としか思えない部分もあり、とてもじゃないけど感情移入しがたいです。その半面、バート・ランカスターが演じるエルマー・ガントリーは過剰なほど人間味があふれるキャラです。本作でのランカスターの驚異の弁舌力はもう圧巻です。彼がその能力を活かして宗教界の大立者になってゆくストーリーだと思っていたら、実はそう単純なお話しではなかったというのが、この映画のひねったところかもしれません。脇で新聞記者らしからぬ冷静な視点でシモンズとランカスターを追ってゆくアーサー・ケネディもなかなか良い味を出していました。シモンズが奇跡らしきものを起こした途端に失火で教会が焼け落ちるラストの展開も、「お前、調子に乗るんじゃないぞ!」という神様の怒りが爆発したみたいに感じませんかね?そう考えると信仰に対するけっこうシニカルなニュアンスも垣間見られる気もしますし、もっと評価されても良いんじゃないかと思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2019-05-08 23:38:12)
148.  タイム・マシン/80万年後の世界へ 《ネタバレ》 
偉大なるH・G・ウェルズの有名な『タイム・マシン』の初めての映画化ですが、実はこの小説は本作の他にはガイ・ピアースが主演した2002年版の二作しかないというのはちょっとしたサプライズです。 ストーリーテリング自体は原作とほぼ一緒ですが、原作が発表されたのは1895年ですから近未来のエピソードについては当然ウェルズが知る由もないことが追加されています。1966年に核戦争が起きていったん文明が滅びることになりますが、もちろんこんなことはウェルズの原作にはありません。原作では社会階級制度の極端化によって知識階級のイーロイと労働者階級のモーロックに人類が分化したとあり、イーロイは見た目も現生人類とはちょっと違い言語も当然英語ではない。見せ場優先の映画化ですからそこら辺は改変されて当然ですけど、さすがにイーロイが英語を話して「政府」とか「法律」なんて言葉を認識しているというところは違和感が半端ないです。タイムトラベルを科学者たちが議論する冒頭のシーンで「四次元は時間だ」という理論でタイムトラベルを説明してますが、まあこれはアインシュタインの相対性理論が発表する前の小説ですから致し方ありません。でも「過去は変えることができるかもしれないが、未来はもはや変更することはできない」というセリフは、単純ですが自分には目から鱗でした。もちろん特撮はオスカー受賞したといっても時代掛かった代物ですけど、センス・オブ・ワンダーを今の眼で観ても刺激してくれるのはさすがです。 話はそれますが、「1900年が20世紀の最初の年」というセリフがありましたが、これって字幕の誤りでしょうか?「新しい千年紀の始まりの年」なら判りますけど…
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-02 22:18:05)
149.  黒い十人の女 《ネタバレ》 
船越英二が演じる風松吉のキャラは、実はいろんな女優たちと浮名を流していた市川崑がモデルなんじゃないかな。それを奥さんの和田夏十が脚色しているところが、ある意味この映画で一番恐ろしいところかもしれません。とはいえ市川崑の死後雑誌に載った有馬稲子の赤裸々な手記などからすると、市川崑自身は風松吉みたいな優しさを武器にするタイプのプレイボーイではなかったようです。 物語自体はかなりブラックでちょっとシュール、冒頭から普通に演技している宮城まり子が実は幽霊だなんてこの時代の邦画にしてはかなり洒落た演出です。実質的にストーリーに絡むのは五人の女というわけですが、どの女優も芸達者なのが素晴らしい。とくに山本富士子と岸恵子の、決して荒々しいセリフを使っていないけどバチバチ火花が散るような演技対決は見ものです。船越英二のいかにも業界人らしい無責任な世渡りは秀逸、「彼は誰にでも優しくするけど、実は誰にも優しくないのよ」というセリフもありましたが、これはこの男の本質を鋭く突いています。ただ忙しくしているだけで決して仕事に情熱があるようには見えない船越英二が、会社を退職させられて岸恵子に軟禁されると急に「男の対面がつぶされた」と泣くわけでここにはなんか「お前キャラ変したのか」と突っ込みたくなりますが、実はここに高度成長期のサラリーマンの心理が良く出ています。実際は大して重要な仕事をしていないのに、脚光を浴びる業界にいるとそのこと自体に自分のアイデンティティを見出す、現代のサラリーマンにもあてはまるんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-02-28 00:11:28)
150.  殺しの烙印 《ネタバレ》 
これは正真正銘のコメディですよ、それも日本映画では他に類を見ないスタイリッシュ・コメディです。 “コメが炊きあがるときの香りフェチな殺し屋” という宍戸錠のキャラは、別に深い哲学があっての設定ではなくなんとパロマガス炊飯器とのタイアップのおかげなんだそうですが、それを知ったときは思わず「まじか…」と絶句してしまいました。そして何度も見返してようやく確認できたのは、宍戸錠演じる花田と組織の中ボス薮原の両者の女房を小川万里子が演じていることです。もちろんメイクや髪形を変えているし彼女自身があまり特徴のない地味な面相(失礼)なので気づきませんでした(お前注意力散漫だと突っ込まれそう)。でも宍戸錠だって薮原に電話したら女房が出てきたことに気が付かないんだから(というか亭主が電話してきてるの女房が平気というのが凄過ぎる)、私と似たようなもんです(笑)。要は冒頭のクラブのシークエンスで薮原と女房が出会って出来ちゃったということなんでしょうが、普通の監督ならこんな演出ぜったいしません。 そしてこの映画のコメディ要素が大爆発するのは、宍戸錠と殺し屋NO.1が不思議な同居対決をするところで、これはもう抱腹絶倒するしかないです。身動きできない状況で尿意を催したら殺しのプロはどうするか?その場合は尿を放出してズボンを通して靴の中に溜める、これをまじめな顔で実演する殺し屋NO.1のプロフェッショナルぶりには大爆笑しました。 まあこれで鈴木清順が日活をクビになったというのは、トップの経営判断ですからしょうがないでしょう。むしろ深刻な問題だと思うのは、こんな才能ある映画作家がその後10年も映画に関われず生活が困窮したという当時の日本映画界の情けない状況でしょう。ハリウッドで現在巨匠と呼ばれる人たちで、若いころ製作者と対立してクビになったけど順調にキャリアを積んできた監督なんてゴロゴロいるのにねえ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-01-13 00:01:44)
151.  荒野の七人 《ネタバレ》 
これが黒澤明のあの傑作のリメイクでなければ西部劇としてはかなり面白いということができますが、比べるなというほうがムリというものです。まあ端的に言えば舞台を開拓時代のメキシコに置き換えたオリジナルの短縮版というところでしょうか。 ユル・ブリンナーが志村喬、スティーヴ・マックイーンが稲葉義男、ホルスト・ブッフホルツが三船敏郎(と木村功)などオリジナルのキャラが投影されていますが、みんなオリジナルの泥臭さが消えてスマートすぎるのが私には不満です。ブリンナーには志村喬の持っていた侍も百姓も引き付けるカリスマ性が全然感じられないし、ブッフホルツには三船=菊千代が体現した爆発的なエネルギーが決定的に欠けています。存在感のあるイーライ・ウォーラックを盗賊のボスとして前面に出して、村人が七人を裏切って盗賊に内通するなど元ネタを進化させたなと感じるところもあります。ラストも全然違いますけど、いったん追放された七人が村に戻るくだりがかっこよすぎて説得力がない。ラストであの有名なセリフを使って辻褄を合わせた感は否めなかったです。 とは言ってもあまりに有名なテーマ曲は何度聞いても気分が良くなるし、スティーヴ・マックイーンは痺れるほどカッコよいし、観て損はさせない一編ではあります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-16 23:13:26)
152.  けんかえれじい 《ネタバレ》 
むかし観たときは「なんじゃ、こりゃあ」というのが正直な感想でしたが、観直してみると清順映画の中ではバランスがとれている撮り方で、中期までと区切ると本作が彼のベストじゃないかと思います。ケンカに明け暮れる高橋英樹が実はクリスチャンだという設定が妙な可笑しみを呼んでいまして、若さゆえの煩悩と信仰の板挟みで悶々となる姿は可笑しくてしょうがありません。硬くなったイチモツでピアノの鍵盤をたたくところは抱腹絶倒でしたが、それにしても若いってうらやましい(笑)。会津に舞台を替えた後半になると麒六の硬派ぶりが一段と激化するのですが、これが清順映画にしては珍しい純愛・悲恋ものになって幕が閉じたのはちょっとしたサプライズでありました。なにが彼女を尼寺(修道院)に行かせたのかはイマイチ判りませんでしたが、もっと判らないのはこの浅野順子を「ウッシッシー」の大橋巨泉がものにしちゃったことです…彼女に最期を看取ってもらえたなんて、巨泉は幸せな人生だったと思いますよ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-11-20 21:32:45)
153.  アメリカ アメリカ 《ネタバレ》 
「私の名前はエリア・カザン、血はギリシャ生まれはトルコ、伯父の移住でアメリカ人になった」というカザン本人のナレーションで始まります。原作は自身が執筆した長編小説、紆余曲折がありながらもここまでキャリアを重ねてきたところでの自分のルーツ探索をテーマにする、どの分野の人でも頂点から坂を降りだしたときに見られるパターンですが、カザンもこの罠から逃れられず、本作が米国で映画賞をもらった最後の作品となりました。 主人公の若き日の伯父が移民として合衆国に上陸するまでの紆余曲折・波乱万丈のストーリーですが、とにかく長いお話なので気持ちの準備が必要です。主人公がトルコの内陸部の故郷から首都イスタンブールにたどり着くまででも、たっぷり40分はかかるんですからね。この旅はお人好しの田舎青年が狡猾なトルコ人無頼漢に身ぐるみはがされ無一文にされてしまうわけですが、けっきょくこの無頼漢を殺してしまうという大罪を犯してしまいます。治安が乱れ切っていたオスマン帝国ですから、その後に警察が捜査している様子はないのですが、彼の「何がなんでもアメリカに行きたい」という執念を支えるのにこの罪の意識が影響を与えていることは間違いないでしょう。港の荷役労働で旅費を貯めようとしてもうまくゆかずテロリスト・グループに間違われて銃撃されて重傷を負う、もう悲惨の極みです。イケメンなところを見込まれて金持ちの絨毯商人の娘の婿になる幸運をつかみますが、ここからがいけません。嫁は器量の方は並ですが気立てが良いし義父も実の息子のようにかわいがるのですが、それでも青年は婚約破棄してでも単身で渡米しようとします。ここが見る人には最大の?で、確実な幸せを放棄してまでしてなんでこの青年が渡米に執念を燃やすのかが理解できないと思います。殺人の罪の負い目があったのかもしれませんが、とても普遍性がある行動とは思えませんし、この映画の最大の欠点とも言えるでしょう。それでも多民族国家で被支配民族が味あわされる悲哀はひしひしと伝わってきます、これは日本人には決して実感できないことでしょう。 オスマン帝国のギリシャ人は第一次大戦後の混乱期に虐殺されたりして大変な目に遭いますので、結果的にはカザンの伯父の選択は正解だったことになります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-06-29 23:01:05)
154.  893愚連隊 《ネタバレ》 
なんでも、この映画は東映が初めて製作した現代ものヤクザ映画なんだそうです。つまり、『仁義なき戦い』の偉大なるルーツというわけですね。撮影はモノクロで、この後東映のお家芸になる隠しカメラを使ったゲリラ撮影を交えたオール・ロケ、音楽はジャズっぽいサントラで東映京都撮影所では確かに撮ったことのない類の映画だったわけです。主演の松方弘樹だってまだ新人同然、荒木一郎や近藤正臣など中島貞夫がチョイスしてきたキャストが、キャラに見事にはまっています。任侠ものとは一線を画したピカレスク・ロマンなわけですが、主人公たち愚連隊がやってることは感情移入できないエグい悪事に過ぎず、それを明るいサバサバしたタッチで見せてくれるので、なんかヘンなテイストでもあります。ヤクザと愚連隊の違いは親分・子分の関係ではなく売り上げ(?)は平等に分配、「愚連隊は民主主義やで!」というセリフはまさに迷言です。そんな連中に古いタイプの天知茂が加わってから彼らの運命が狂いだすのですが、そこはなかなかバランスの取れた脚本かと思います。参謀役の荒木一郎がまた上手くって、後年のあまりセリフがない演技しか知らなかったけど、この人喋らせたら凄いんです。もっとも愚連隊内の会話は、きつい関西弁に隠語だらけで半分ぐらいしか理解できませんでしたけど。 考えてみると、同じ松方弘樹が主演の『恐喝こそ我が人生』と主人公と仲間のキャラ設定がそっくりなんですよね。『恐喝こそ我が人生』は舞台を東京に変えた本作の後日談なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-05-31 22:29:37)
155.  一万三千人の容疑者 《ネタバレ》 
冒頭で、当時の東映社長である大川博の前口上が流されます。まあこれは「この映画は義展ちゃん事件を再現していますが、このような悲惨な事件が二度と起こらないことを願って製作いたしました」というような趣旨ですが、さすがに「ヒット作が欲しくて撮りました」とは言えませんよね。こんな興行側の言い訳はどうでも良いんですけど、犯人が逮捕されてから一年余りしかたっていない時点で映画化しちゃうところに、当時の日本映画界がまだ持っていたバイタリティを感じさせてくれます。それに比べて現在の日本映画界のだらしなさは眼を覆うばかり、なんせあのオウム真理教事件ですら正面から取り組んだ作品が未だに製作されていないんですからねえ。 私らの世代には義展ちゃん誘拐事件といえばいまだに誘拐事件の代名詞のように記憶に刷り込まれていますが、こうやって丁寧に事件の推移を見せられると、いろいろなことが改めて見えてきます。これは史実通りなんですけど、身代金受け渡し時の警察の失態・無能ぶりには驚くべきものがあります。そして犯人逮捕まで2年以上もかかったとは知りませんでした。逮捕の突破口になったアリバイ崩しの攻防戦もまるで推理小説みたいな展開で、まさに“事実は小説よりも奇なり”です。 わたしの中で「ベテラン刑事を演じたら日本一」の称号を与えられているだけあって、芦田伸介はハマり役でした。これも多分に幼いころTVで観ていた『七人の刑事』からの刷り込みがあるんでしょうね。でも、のらりくらりとウソをついて刑事たちをはぐらかす犯人役の井川比佐志が予想外の好演で、この人は善人役だけが持ち味だったんじゃなかったんだな、って再認識させられました。また音楽担当があの伊福部昭で、この救いようがない悲惨なお話しにピッタリのサウンドを聞かせてくれます。 尺は短いんですけどあまりに救いのない事件なので、ダウナーな気分にさせられること間違いなしです。やはり恩地日出夫が監督した泉谷しげる主演のTVドラマ版の方が出来は上かなと思います。そういや、このTV版も刑事役は芦田伸介でしたね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-04-26 00:08:28)
156.  ズール戦争 《ネタバレ》 
ロルクズ・ドリフトの戦いは、世界で最も受賞基準が厳しいヴィクトリア十字章が、一回の戦闘で11人に与えられたというレコードを作っています。139VS4,000の兵力差になりますといくらライフル対槍の戦いと言っても圧倒的に英軍が不利ですが、史実ではズールー側の死者350人、英軍の方はなんと戦死13人負傷者17人だったそうです。この映画を観てると英軍の半分は戦死している感じがありますので、こういう英雄譚にはありがちですけどけっこう話を盛っているところがあるんでしょうね。この守備隊はウェールズ人が主体だったみたいで、ジョーンズという名字の兵隊が多くてジョーンズさんはみんな番号で呼ばれているというエピソードが興味を引きます。この戦いは今でもウェールズ人の誇りになっているそうで、ウェールズ出身のスタンリー・ベイカーには製作者になってでも撮りたかった題材だったんでしょうね。 南アフリカの現地でロケをしていることもあり、その雄大な風景には眼を見張らせるものがあります。丘の頂に地響きを立てながらズールー族が現れるところは、自分がこの映画で特に好きなシーンです。戦の歌を歌いながら攻めてくるズール―族と、合唱好きなウェールズ兵士との対比もなんかニヤリとさせてくれます。 この映画は英国版ウェスタンのようなものかなと思いますけど、「大英帝国万歳!」というメッセージは清々しいほど伝わってきます。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-20 22:48:14)
157.  戦艦デファイアント号の反乱
ピーター・ウィアーの『マスター・アンド・コマンダー』が撮られるまでは、もっともリアルな帆船戦争映画とファンの間では人気が高かった作品だそうです。ナポレオン戦争真っただ中の英国VSフランスの帆船同士の戦いとくれば、やはり『マスター・アンド・コマンダー』と被るところは大ですね。 紳士的な艦長(アレック・ギネス)と有力なコネを持つサディスティックな副長(ダーク・ボガード)の対立と、劣悪な環境と過酷な体罰に耐えられなくなって反乱を企てる水兵たち、というこのジャンルの要素は漏れなく盛り込まれていて、『戦艦バウンティ号の反乱』を彷彿させます。もっともアンソニー・クェイルたち水兵が企んでいるのは、反乱というよりはストライキと強訴みたいなソフトな反抗なんですけどね。 この映画の優れたところは、イングランド海軍の悪習をリアルに映しているところです。特に冒頭の強制徴募のくだりはびっくり仰天です。これは水兵が足りなくなってくると街でぶらぶらしている若い男を捕まえて無理やり軍艦に乗せて水兵にしちゃうという驚くべき制度で、もう拉致以外の何物でもありません。そしてロイヤル・ネイビーお得意の恐怖のむち打ち、これもほんとにつまらないことで課せられる刑罰なのが、この映画でもよく理解できます。戦闘シーンもリアルで、敵艦に横づけして乗り込んで剣で斬りあうなんてまるでカリブの海賊です。まあ大英帝国海軍と言ってもその起源は勅許海賊ですから、その気質はこの時代でも色濃かったのかもしれません。戦闘シーンはもちろんミニチュア撮影ですけどかなりレベルが高い特撮で、普通に航海しているシーンでは本物の帆船を使っているのも素晴らしい。 結末はあまりにきれいごと過ぎるところが鼻白みますが、時代を考慮すればなかなかの佳作と言えるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-28 18:24:15)
158.  大侵略 《ネタバレ》 
はぐれものを集めた特殊部隊が砂漠を突っ切ってドイツ軍の基地を襲撃するというプロットは、『トブルク戦線』とまんま同じ、作戦を命じる上官を演じるのがどっちもナイジェル・グリーンというのは、実に紛らわしい。でもあの大味な戦争アクションと違って、こっちはいかにも英国製戦争映画らしい諧謔味にあふれたくせ玉です。まさに原題通りの“Play Dirty”なストーリー展開であります。 マイケル・ケインが隊長なんですけど、その部下たちが彼の言うことを聞かないことに関しては、数ある特殊部隊もの戦争映画の中でも屈指の曲者ぞろいです。なんせ筆頭部下がナイジェル・ダヴェンポートですからねえ、この人は初代ジェームズ・ボンドの候補だったぐらいで、その男くささはマイケル・ケインを圧倒しちゃってます。他にも部下には異常に仲が良いアラブ人コンビ(つまりホモ達)がいたりして、いくら何でも捻り過ぎだろ!苦労して燃料基地にたどり着いたのに、実はそこは…(ネタバレ過ぎるので以下自粛)つまり『マッドマックス2』みたいなお話しだったわけです。そこでめげずにマイケル・ケインはみんなをベンガジまで引っ張って行って大暴れを図るけど部下は全滅、ケインとダヴェンポートの二人は生き残るけど実に皮肉な最期です、こんな結末ハリウッド映画じゃ絶対あり得ない! ということで、自分的にはスマッシュ・ヒットだなと思うんですけど、『大侵略』という邦題だけは許せません、チンギスハンの映画じゃないんですからねえ。でもこの映画ユナイトが配給したみたいだし、ひょっとして邦題の名付け親はあの水野晴郎だったのかも?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-24 23:38:09)
159.  鬼戦車T-34 《ネタバレ》 
いろんな意味でこれはとんでもない映画であることは、間違いないです。 まず、フルシチョフの時代にはスターリン時代とは打って変わってかなり自由な映画製作が可能になりましたが、それにしても捕虜が主人公でヒーローとなる映画は前代未聞だったことでしょう。第二次大戦のソ連では投降して捕虜になることは明確な犯罪行為とみなされており、帰還できてもほとんど全員が処刑か強制収容所送りになりました。そんな“裏切者にして社会の敵”がたとえどんな形であろうと映画の主人公になるなんてことは絶対あり得なかったわけです。でもその捕虜が戦車を奪ってドイツ国内で大暴れするというのは、痛快な逆転プロットの傑作だと思います。 次にこれほど実物の戦車が走り回る映画も滅多にないということです。使われているのは有名なT-34ですが、今でも現役で使っている国もあるぐらいの長砲身の後期型ではなく、珍しい中期型です。この型は丸いハッチが砲塔に2個並んで配置されていて、両方を開けるとまるでミッキーマウスの耳みたい見えるのが特徴です。捕獲されて研究に使われていた車両という設定なので、車載機銃は外され大砲はあっても弾薬がない、つまり走り回るしかないわけです。でももともと機動力がウリのT-34ですからスピードは出るし、中戦車とはいえ体当たりすれば家なんか軽く突き破るし車なんかでもぺっしゃんこにしちゃいます。撮り方自体もソ連映画界がお得意のアヴァンギャルドなモンタージュが多用されていて、逃げるT-34とドイツ軍の追っかけっこを見せるカット割りは斬新の極みです。 でもラストだけはソ連映画らしいというか、「赤軍兵士はヒューマニストです」という演出なのは臭いところです。強制労働させられているロシア女性たちがT-34を見て助けに来てくれたと歓喜するといった胸が締め付けられるような素晴らしいシーンもあったので、この締め方は残念でした。
[DVD(字幕)] 7点(2017-12-02 22:49:01)
160.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 
追悼ジョージ・A・ロメロ。天寿を全うしたのかもしれないけれど、もう少し長生きしても良かったのかな。ほんとにメジャーな映画賞とは無縁な人でしたが、あと10年ぐらい生きていればオスカー名誉賞ぐらいは貰えたかもしれなかったのに、ロジャー・コーマンですら与えられてるんですからね。星の数ほどいる映画人の中でも、彼のように若くして一つのジャンルが確立されるような映画を撮って、その後50年近くそのジャンルだけで飯を食ってきたという人は、他に見当たらないです。ゾンビもの以外のロメロ作品はほんと駄作ばっかりですけど。 さてその原点となったのがこの『リビング・デッド』というわけです。正直今の眼で観れば怖いという感じは全然しませんけど、その全編に漂う禍々しさと不条理感は半端じゃないです。登場人物たちはすぐにゾンビたちに囲まれてしまうんですけど、この登場人物たちがみなキャラがえぐいというか鬱陶しいやつばかりです。ヒロインと思った女性は冒頭でゾンビに襲われてからはショックでほとんど痴呆状態、正気に戻ったらあっという間にゾンビたちの餌食。カップルさんはうっかりミスでガソリンをこぼして車ごとまる焼けにされてしまいます。仲の悪い夫婦は、夫はその卑劣な性格がたたって黒人青年に射殺されゾンビ化した娘に妻とともに喰われてしまいます。この人たちが交わす会話は、身の上話や感情的なところはほとんどなく、ただお互いに「上に行け、下に行け」といったセリフばっかりなんですが、聞いているとほんとに鬱陶しい限りです。 本作がその後のゾンビ映画と決定的に違うところは、原因はともかくとしてもほぼ一晩でゾンビたちが制圧されてしまうところです。ゾンビの出現とそれに対する社会の対応は、ロメロにとっては当時の米国の社会問題や人種問題を暗喩する材料だったんですね。ラスト近くで鳥獣よりも簡単に銃で狩られてゆくゾンビたちなんかは、実に象徴的な映像です。風刺の道具だったゾンビが大うけしてジャンルというか記号の様な無敵の存在になるとは、さすがのロメロも予想すらできなかったでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-22 23:39:46)
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