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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2400
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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161.  1000日のアン 《ネタバレ》 
堂々たる大作ですけど、イングランドのチューダー朝時代のドロドロ劇は観ていて本当に疲れますね。アン・ブーリン役のジュヌヴィエーヴ・ビジョルド(それにしても日本人には発音しにくい名前です)はこれこそ一世一代の熱演でございます。この欧州史を大きく変えてしまった世紀のツンデレぶりをとくとご覧あれ、ですよ。彼女がごねなかったらヘンリー八世がバチカンから破門されることはなかったでしょうし、イングランドがプロテスタント国家にならなかったかもしれません。 アン・ブーリンと言えば『ブーリン家の姉妹』のナタリー・ポートマンが印象に残りますが、ビジョルドとポートマンは雰囲気が似ていますね。この役はやはり演技力だけでなく生来の強気を持った女優じゃないと務まらないじゃないかな。リチャード・バートンはヘンリー八世にしてはこれでもちょっと上品すぎる感じがしてしょうがなく、もしリメイクするならラッセル・クロウが自分のイメージにはピッタリなんです。実はこの作品にはノン・クレジットですけどエリザベス・テイラーがエキストラみたいな役で一瞬だけ登場します。仮面舞踏会の客なんですけど、仮面の隙間からチラッと見える横顔と豊満な乳はまさしくリズでした。 ちょっと冗長な感じもしましたが、この映画を観たら続けてケイト・ブランシェットの『エリザベス』を観ると良いでしょう。いや、その前に『クイーン・メリー/愛と悲しみの生涯』も観ないといけませんね。そういえばこれも監督がチャールズ・ジャレットでした、でも未だソフト化されていないレア作ですからムリです。TSUTAYAの発掘良品に期待するしかないですね…
[DVD(字幕)] 7点(2017-07-01 22:05:45)(良:1票)
162.  チャーリー・バブルズ 《ネタバレ》 
チャーリー・バブルズはロンドン在住の若き作家。けっこう売れてて著書は映画化されたり自身でもシナリオを書いたりで有名人、稼ぎも多くてオープントップのロールスロイスを乗り回す生活。二年前に離婚したけど自宅は執事夫婦が切り盛りする豪邸で、なぜか各部屋にモニターカメラが付いていて書斎からすべてを監視できるようになっている。同業者や友人たちからは一目置かれているけど、彼自身はそんな人も羨む境遇にもなぜか馴染めない様子、つまり幸せそうじゃないんだな。そんなチャーリーがレスターに住む別れた女房から息子をサッカーの試合に連れて行けと懇願され、同居しているセクシーな女子大生の秘書と一緒にロールスロイスでレスターへの旅に出る。 英国ニューシネマの輝ける星だったころのアルバート・フィニーが今まで唯一監督した珍品です。もちろん日本未公開、ありとあらゆる映画が載っている(と勝手に自分が思っていた)allcinemaにも登録されていないというからある意味凄い。で、内容はと言いますと、このアルバート・フィニーの演じるチャーリー・バブルスが別れた妻子に会いに行くだけの話で、恐ろしいほど映画的なことは何も起こりません。冒頭で高級レストランで出会った親友とバカをしでかして遊び惚けるところは確かにキャッチ―な撮り方をしているので「おっ」ときますが、あとは基本会話劇みたいな展開です。チャーリーと登場人物たちの他愛もない会話が多いんですけど、このチャーリーが誰に対しても疲れた表情で目を合わさないような感じです。でもなぜかわたくしにはアルバート・フィニーのこの演技には魅了されました。これだけ何もないお話しで共演者も含めて惹きつける演技ができるというのは、フィニーの演出力が非凡であることの証しじゃないでしょうか。なぜか野原に放置されていた熱気球に乗ってチャーリー・バブルスが去ってゆくラストは、いかにもニューシネマらしい終わり方かと思います。 フィニー以外は地味な共演者たちでしたが、なぜかそこにブレイク前のライザ・ミネリがいるところは必見です。彼女にしては珍しいロング・ヘアーで、これもなかなか似合うじゃないかと思ったら、実は設定上はそれはカツラでフィニーとベッドを共にするときは外しちゃってトレードマークのショート・カットに戻ってしまいます。たしかにあれだけ髪が長いと、アレするときに邪魔でしょうがないでしょうけどね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-04-23 23:39:18)
163.  日本暗殺秘録 《ネタバレ》 
これはもう血盟団事件と小沼正のことを描いた映画だとしか言いようがありませんね。聞くところによると、実際に小沼正のことをテーマにした映画を撮るために中島貞夫と笠原和夫が脚本を書いていたら、社長命令でオールスター方式の通史形式になったんだそうです。まあそこは140分の上映時間のうち100分が血盟団事件に尺をとっていることからもうかがえます。脚本は時代を反映しているというか全共闘世代に媚びているというかアジっているような過激さで、自民党筋から製作中止の圧力がかかったというのも頷けるアナーキーさです。ラストの226事件の首謀将校たちの処刑シーンなどは、ちょっとトラウマになりそうなぐらいです。でも小沼正を演じる千葉真一は彼のフィルモグラフィ中でも屈指の名演を見せてくれます。彼は同時代の黒沢年男みたいな激情的な演技が持ち味だったんですが、本作ではそれなりに抑えた演技を見せてくれて魅力的でした。彼と悲恋の関係になる藤純子も、博徒映画の姐御というイメージを払拭させてくれる好演です。脇を固める片岡千恵蔵の井上日昭もさすが千恵蔵という存在感で、多少セリフ回しに灘がありましたがその怪物的なカリスマは圧倒的な迫力があります。 桜田門外の変から始まって226事件までの暗殺事件を取り上げていますが、犯人が処刑もしくは自害で終わらなかったのは、血盟団事件とその影響を受けたこの映画では取り上げられていない515事件だけなんですね。小沼正にいたってはこの映画の製作時にはまだ存命で撮影を見学したっていうのだから驚きです。やはりこの事件が起きた昭和一桁のころは、日本の社会はテロに甘いというかまだまだ民度が低かったと結論付けるしかないでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-04-18 20:52:56)
164.  くちづけ(1969) 《ネタバレ》 
ライザ・ミネリの初主演映画で名匠アラン‣J・パクラの初監督作でもあります。もうこの映画では、ライザ・ミネリの初々しさを堪能して目に焼き付けるしかありません。当時のハリウッドでショートカット女優としてはジーン・セバーグが有名でしたが、私の中ではアメリカ映画史上もっともショートカットが似合った女優は文句なしでライザ・ミネリです。本作のようなちょっとメンヘラ気味な女の子キャラは、彼女の素の部分もあるのかと思わせるほど自然な感じがします。彼女の多彩な表情を観ているだけで楽しく、口に絆創膏でバッテンをした画像はこの映画のポスターにも使われていてけっこう有名です。 物語はアイヴィー・リーグのカレッジに入学した学生カップルの出会いと別れです。ふたりは別々の学校なんですが寮が道を挟んだお向かいです。寮生同士のバカ騒ぎやパーティなどはありますが、ヴェトナム戦争真っ盛りの大学が舞台にしては政治的・社会的なエピソードがまったく出てこないところが珍しいんですが、そこがまた心地よい気がします。ラブストーリーにそんな世相描写みたいなものは必要ないし、物語自体に時代を超えた普遍性が与えられると思います。ニューシネマ全盛期ですからこういうアプローチは珍しかったかと思いますが、さすがアラン・J・パクラだけあって良く心得ていらっしゃいます。バスに乗って故郷から大学に向かうところがファーストシーン、同じバスに乗ってライザ・ミネリが故郷に帰るのがラストシーンという安定したストーリーテリングで、氷が張っていないシーズンオフのスケートリンクやミネリの乗り回すオンボロなワーゲンなど印象深い映像も多々ありました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-24 23:16:18)
165.  肉体のすきま風 《ネタバレ》 
テネシー・ウィリアムズの戯曲が原作です。テネシー・ウィリアムズというと登場人物のカップルが激しく刺々しいセリフをぶつけ合うというイメージがどうしても付きまといますけど、本作に限ってはとても彼の原作とは思えない落ち着いたストーリーをじっくり堪能できます。 家が隣同士の牧師の娘と医者の息子の、長すぎた春という風情の悲恋物語であります。この娘をジェラルディン・ペイジが演じます。ジェラルディン・ペイジと言えば『バウンティフルへの旅』でオスカー受賞したあのお婆ちゃんですが、彼女にも当然若い時があったわけで(失礼)、その落ち着いた美貌は牧師の娘という役柄にピッタリです。医者の息子はローレンス・ハーヴェイで、彼も親父の跡を継ぐべく医大に進むんですが、ギャンブルに目がない典型的なドラ息子になってしまいます。牧師の娘も、近所の娘たちに音楽を教えながら頭がおかしくなってしまった母親の面倒を見ているオールドミスというありがちなパターンの人生を送って三十路になってしまいます。どっぷり信仰に浸って生きてきたジェラルディン・ペイジの心を吹き抜ける“肉体のすきま風”がこの映画のテーマというわけですけど、この邦題はストーリーを暗示する優れものではないでしょうか。ここでぜひ注目していただきたいのはローレンス・ハーヴェイの存在感で、英国人の彼が南部のボンボンドラ息子を見事に演じ切っています。早世しちゃった人ですが、もっと長生きしていればきっと名優として記憶される存在になってたはずで、実に惜しいです。 パターン化したメロドラマじゃないかという見方もできますけど、俳優の演技がじっくり愉しめる映画でもあります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-19 23:29:44)
166.  みな殺しの霊歌 《ネタバレ》 
加藤泰が東映でやれなかったことを松竹でうっぷん晴らししたような凄い映画で、これが東宝では絶対に実現不可能だったでしょう。 佐藤允が演じる主人公が実に奇妙な奴です、邦画の歴史に残るようなヘンな殺人者かもしれません。のっけから女を拷問して犯して滅多突きにして殺す、そしてリストに書かれた女たちが順番に殺されてゆく。とくると『フレンジ―』のような変態殺人映画なのかと思いますが、佐藤允には彼なりの理屈で女たちに正義の鉄槌をくだしているんです。この殺人の動機となる自殺したクリーニング屋の少年と佐藤允の関係がもっともらしい映像で描かれますが、正直さっぱり理解できません。二人は実は同性愛関係だったとすれば、腑に落ちないこともないんですがね。じゃなきゃ、あんなことで飛び降り自殺したことに説明がつきません。またバーのマダムから呉服屋の女将までいる五人の女たちの関係も、何の説明もないので摩訶不思議としか言いようがありません。「おまえたちは寄ってたかって、一番きれいなものをめちゃくちゃに壊しやがって、おまえたちにその権利がどこにある」と佐藤允は怒るんですが、あんたにも人を殺す権利なんてないでしょ、ってお返しします。 というわけでとても奇妙な作品ですけど、カメラワークや雰囲気が独特でつい引き込まれてしまうのです。倍賞千恵子や太宰久雄そして松村達雄といった後に寅さんで常連となる顔ぶれがそろっているのも、山田洋次が脚本に関わっているせいかもしれません。実に救いようのないお話ですけど、これも考えてみると『男はつらいよ』の犯罪バージョンと言えなくもないです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2016-09-26 19:16:26)
167.  大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン 《ネタバレ》 
昭和ガメラ・シリーズの中では文句なしの最高傑作、というか思わず「どうしちゃったの?」と訊きたくなるほど他のガメラとはタッチが違い、それは東宝の『フランケンシュタイン』2作に負けないグル―ビーさです。「ガメラと言えば子ども(というかガキ)」がお約束なのに、本作ではエキストラ・クラスまで観ても子供が全然画面に登場しません。その分関西を舞台にしてるだけあってコッテコテの欲まみれ男ばっかり登場してくるのですが、これはこれで観ててちょっと鬱陶しい感じです。あと気がついたのは、ガメラ映画ではやたらとナレーションが多いんですよ、東宝の怪獣映画は対照的にナレーションはほとんど皆無です。これはきっと本田猪四郎の拘りなんでしょうね。 バルゴンはニューギニアが産地ということですが、戦時中にニューギニア戦線に従軍した兵士がその卵を見つけたというのは、なんか有りそうなお話しの様で掴みはGoodです。たしかにあれはオパールと間違えても不思議じゃないです、まさかトカゲの卵とは誰も気がつかないでしょう。約40年ぶりに観直したのですが、バルゴンの造形は思いのほか良く出来ています。またこの映画ではローアングルからバルゴンを撮ることに拘っていて、怪獣としての重々しさが良く表現されていたと思います。でも「水に浸かると皮膚が溶ける」という弱点は致命的で、色んな奇天烈な武器も持あってますけど昭和の怪獣の中ではいちばん弱いかもしれません。なんせ人工雨を浴びせられるだけで中盤からはほとんど動けなくなってしまいますからねえ。これならもう少し頑張れば、ガメラに頼らなくても自衛隊が史上初めて怪獣を退治する快挙が達成できたかもしれません。 この様に本作はバルゴンと欲深男たちの物語で、実はガメラは脇役なんです。冒頭こそ派手にダムバスターしてくれますけどすぐにどっかに飛んで行ってしまい、中盤になってやっとバルゴンのいる大阪に登場します、しかも唐突に。でもすぐ冷凍液で凍らせられてお休み、ラスト10分を切ったところで再登場。自分の発した光線で自爆し瀕死の重傷を負ったバルゴンを咥えて琵琶湖に引きずり込んで息の根を止める、良く考えるとガメラがスクリーンに登場するのは30分弱しかないんです。 でもなんでガメラはバルゴンが水に弱いって知っていたんでしょうか?これも怪獣映画でお馴染みの便利なフレーズ「動物の本能」ってやつでしょうかね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-12-24 22:21:58)
168.  マンハッタン物語 《ネタバレ》 
ナタリー・ウッドのイタリア系はともかくとして、スティーヴ・マックィーンがギリシャ系(?)というのはちょっとムリ感がありますね、まあ映画の出来には関係ない話しですけど。 監督ロバート・マリガンが得意とする典型的な小品ですけど、良く練られた脚本なのでイイですよね。冒頭の無人のホールにだんだん人が集まって来て、実はそれは「ミュージシャン取引市場」だったと判るオープニングがイイですね。そこでいきなりマックィーンはナタリー・ウッドから「妊娠した」と告げられるんですけど、まあ撮影年代を考えればヒロインが中絶する展開になるはずもなく、ラストのオチはだいたい判るわけです。でもそこに至るまでの紆余曲折がなかなか秀逸で、走るぐらいしかアクションを見せないマックィーンの静かな演技が秀逸です。彼の出演作の中でもおそらくもっともアクションが少ないキャラだったと思いますが、「むく犬の様な眼」だと評された若き日の彼の演技が堪能できます。ナタリー・ウッドも良い演技なんですけど、あの人の良い若旦那をあて馬に酷使するところはいくらなんでも可哀想です。 観終わって気が付きましたが、けっきょく主要登場人物に悪人がひとりもいない映画でした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2015-10-10 21:31:23)
169.  不意打ち 《ネタバレ》 
善人がひとりも出てこない映画というのは、観ていてほんとに疲れるもんです。明らかな犯罪者もいれば他人に無関心な通行人、そして閉じ込められたオリヴィア・デ・ハヴィランド自身でさえラストでは「えー、こんな人間だったんだ」と幻滅させてくれます。強いて言えば「自殺します」と置手紙を残した息子は違うのかなと思うけど、彼については映画はほとんど語っていないので判断のしようがありません。 途中で止まってしまったエレベーターと言っても健常者なら多少怖いかもしれないが飛び降りれる高さだし、構造自体も密室性は皆無です。でもそこから逃れることが出来ないというシチュエーションは良く練られた脚本だと思います。日常の風景を見せながら不穏な雰囲気をかき立てるオープニングや時折挿入されるラジオの無意味なアナウンス、これらも逃げ出すことのできない不穏な社会情勢を暗喩している様な気がします。スーパーナチュラルな要素がいっさいなくてもホラー映画は撮れるという良い見本なのかもしれません。 余談ですが、オリヴィア・デ・ハヴィランドってまだ存命なんです、1916年生まれなので現在99歳!もちろんとっくに引退してますけど、『風と共に去りぬ』に出演した成人俳優でまだ生きている人がいたとはサプライズでした。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-14 17:48:26)
170.  絞殺魔 《ネタバレ》 
リチャード・フライシャーの実録犯罪もの映画は本作と『10番街の殺人』の二本だが、どちらも怖い。職人監督としてあらゆるジャンルを手掛けた彼だけど、実は犯罪ものがいちばん得意だったんじゃないかな。 前半はスプリット・スクリーンを多用(乱用とも言える)して斬新な撮り方をしていますが、正直あまり効果があったとは思えません。ところが上映時間のほぼ半分あたりでやっとトニー・カーチスが登場してからはスプリット・スクリーンは使われなくなります。そしてヘンリー・フォンダの尋問が始まると前半の小細工感が満載だった撮り方はどこかに吹っ飛んでしまいます。とくにラスト20分、長回しを多用してトニー・カーチスに密着してゆき、カーチスもそれに応えるように彼の生涯一の演技で観る者を引きつけてしまいます。 実際の事件と比べると経過も単純化されアルバート・デサルヴォのことも家庭的な人間として若干美化していますが、事件を再構築して映画化するにはデサルヴォが二重人格だったというのは合理的で最良の脚本だったんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-28 20:49:09)
171.  セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転進 《ネタバレ》 
誰もが一度は「過去に戻って人生をやり直したい」という願望を持つものですけど、それはタイムマシンが実用化されない限りは不可能。そこで本人は事故か何かで死んだことにして全身整形よって顔から指紋まで別人に造り変えて過去と訣別してしまえばこの夢は実現できる、新しい人生や職業は我が社が完璧に準備いたします、そのための費用は3万ドルでございます。 職人監督と言われているジョン・フランケンハイマーのフィルモグラフィの中でおそらく唯一のカルト映画。長い間幻の映画でしたが、このたび目出度くソフト化されました。 銀行支店長として傍目には申し分のない生活を送っているアーサー・ハミルトン、彼を整形して別人に造り変えるサービスを提供する企業の活動がとてもシュールです。アーサーがその会社からアプローチを受ける様になった経緯からして不気味で、精肉工場の中に隠された会社にたどり着くまでのサスペンス・タッチがジェリー・ゴールドスミスの音楽の効果もあって怖いんです。撮影監督ジェームズ・ウォン・ハウが得意とする深いピントのモノクロ映像と、当時としては斬新だったと思われるカメラワークが素晴らしい。動き回る俳優の前後にカメラを固定させて撮った映像は、映像が誰の主観かが混乱した不思議な効果と不気味さを出していて面白い。アーサーは全身整形で画家トニー・ウィルソンに生まれ変わるのですが、このウィルソンを演じるのがロック・ハドソン。当然アーサーは別の俳優が演じている訳ですが、主演なのに始まってから30分以上たって登場と言うわけです。けっきょくハドソンは画家としての人生になじむことが出来ず会社に文句をいって別の人生を用意しろとごねる訳ですが、それが恐ろしい結末に繋がってしまうわけです。 一応この映画はジャンルとしてはホラーになると思いますが、不安心理を逆なでする様な種類の映画だと思います。とくに手術されるシーンにはなにかゾクゾクする様な不思議な感覚を味合わされ、手術を控えている人にはお奨め出来ないですね。あと中盤にあるワインのお祭りのシークエンスがヘンな味わいを与えてくれます。66年製作だというのに全裸の女性が樽に入ってブドウを踏みつぶすシーンがあるんです、それもヘアーまる出しで。弱まったとはいえまだヘイズ・コードが健在だった時代ですから驚きました。祭り自体にも異教的なテイストが濃厚で、そう『ウィッカーマン』のお祭りみたいな感じです。 興行的には惨敗だったそうですけど、脂の乗り切った時期のジョン・フランケンハイマーだけあって観る者を画面に釘付けにする様な力を持っていて、実に不思議な余韻を残す作品です。
[DVD(字幕)] 7点(2015-07-13 21:50:26)
172.  謎の要人悠々逃亡! 《ネタバレ》 
まず邦題が最高の優れもの!誰のお仕事かは存じませんが(水野晴郎ってことはまさかないでしょう)、これほど映画の内容を的確に伝える邦題は滅多にあるもんじゃないです。 ヒッチコックが脱走ものを撮ったらこんな感じになるんじゃないかと思える洒落っ気が楽しいところですが、これも主演にジェームズ・ロバートソン・ジャスティスを使ったのが勝因でしょう。この人『ナバロンの要塞』などの主に60年代の戦争映画で良く見かける髭面のいかにも英国紳士という風貌の俳優ですが、主役を演じている映画となると非常に珍しいです。劇中で空軍将校に化けようとすると「空軍の規則では髭はNG」と言われて海軍将校に変更するエピソードがありますが、これは一種の楽屋落ちでしょう。実際この人の髭を生やしていない顔は映画では観たことないですから、髭は完全に彼のトレードマークなんでしょうね。 この映画で実行される脱走は『アルゴ』の作戦とほとんど一緒です。まさかCIAの担当者が本作を観て考えついた計画ではないでしょうが、まさに“事実は映画よりも奇なり”ということですね。ラストの敵味方の戦後の再会も微笑ましいし、こういう登場人物が誰も死なない戦争映画というのもまた良いもんです。
[DVD(字幕)] 7点(2014-10-12 20:45:18)
173.  好色一代男 《ネタバレ》 
市川雷蔵はイイですね~、眠狂四郎やってる人と同一人物とはとても思えない明るい演技です。長大な井原西鶴の原作を上手に脚色してあり、勘当された世之助が女を漁って日本をひとめぐりすると言うゴージャスさです。ほとんど江戸時代のポルノグラフィと呼べる西鶴オリジナルに、武士に抑圧される町人の悲哀を織り交ぜてくるところは、監督が増村保造ならではです。ホンワカしたテーマ音楽と雷蔵のしゃべくりが見事にマッチしておりまして、世之助が愛した女子がみな死んだり殺されたりしちゃうのに不思議と観終わって爽やかさが残ります。女優はいろいろ出ていますが、やっぱり若尾文子が飛び抜けて輝いていました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-04-19 23:57:39)
174.  斬る(1962) 《ネタバレ》 
三年や二十年があっという間に経過する驚くべきスピーディーな映画。上映時間71分ではまあ致し方ないでしょうが、その分様式美に凝りまくった映像に集中出来て良かったかと思います。「人間が縦に真っ二つ」という衝撃シーンがあります、といううたい文句ですが、遠景でしかも一瞬のカットですからなんてことはない。流麗な雷蔵の殺陣が見どころなのに、このシーンだけは妙に浮いてしまっているので監督の意図はちょっと?ではあります。三隅研次は後年に『子連れ狼』シリーズで人体破壊殺陣をさんざんやっているので、もうこれは彼の趣味の問題としか言いようがないでしょう。この当時はすでに黒澤明が殺陣に斬撃音をとりいれていましたが、こういう斬撃音のないチャンバラはかえって新鮮な感じがするのが不思議です。どっちがリアルなんでしょうかね。
[DVD(邦画)] 7点(2014-04-12 19:33:39)
175.  殺しの分け前/ポイント・ブランク 《ネタバレ》 
ファーストネームのない男ウォーカー、こいつは生きている復讐の鬼なのか死してもなおこの世をさまよう亡霊なのか、謎は深まるばかりです。『81/2』や『2001年』なんか眼じゃない60年代に撮られた中でも屈指の難解さです。最近ではこの映画を、ウォーカーが死に瀕してみた夢なんだと解釈するのが流行りみたいです。 裏切り者のペンションに侵入するシークエンスでは、良く観てると警備のボディガードたちにはウォーカーの姿が目に見えていない様にも感じられ、やっぱり彼は亡霊なのかなと思えます。面白いことにウォーカーの女クリスにはファミリーネームがなく、これは何を暗示しているのか首を捻りますが、彼女もやはりこの世の人ではないということでしょうか。ジョイスやプルーストの小説テーマの『意識の流れ』をそのままクライム・ミステリーに導入した様な脚本は、とても先鋭的で時代を超越しています。 個人的には、リー・マーヴィン主演映画の中では本作がベスト、彼のカッコよさも頂点に達していると思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-04-06 23:05:44)
176.  フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) 《ネタバレ》 
傑作『サンダ対ガイラ』の前日譚というかオリジナルという位置づけになるのでしょうか。数ある東宝怪獣映画の中でも、ゴジラもの以外で本作と『サンダ対ガイラ』だけが怪獣対決映画なんですね。もっともフランケンシュタインは怪獣と言うよりは“怪人”に近く、純粋な怪獣対決とは言い難いところはありますが。フランケンシュタインの決して死なない心臓というモチーフは良い意味でセンス・オブ・ワンダーを刺激するところがあります。このプロットは良く考えるとips細胞などの現代の細胞再生医療に繋がるところもあって、科学の進歩がSFにやっと追い着いてきた感じがします。また三人の科学者の中では高島忠夫のキャラが突出していて、なんかとても腹黒い感じがしていかにもいそうな人物だったと思います。 この映画で東宝怪獣映画としては初めて怪獣の肉食性が描かれる様になったことは特筆すべきことでしょう。直接描写はないですがバラゴンは人間まで喰っちゃいますし、口から喰ったニワトリの羽根が溢れる描写なんてなかなかエグいです。バラゴンは怪獣造形としては屈指のデザインですし、妙に敏捷な動きを見せるところもリアルです。やはり難点はバラゴンの存在がストーリーに有機的に活かされていないところでしょう。自衛隊の存在がまた妙に薄く、藤田進や田崎潤といった面々がみんな警察の幹部として配役されているのも原因でしょう。フランケンシュタインが掘った落とし穴に戦車が落っこちるというみっともないシーンまであります。 そして有名な海外バージョンでの大タコ登場のラスト、初めて観たときはホントびっくり仰天させられました。タコの造形自体は非常に良く出来ているんですけどねえ。オリジナルの“フランケンシュタインが風穴に落ちる”というバージョンも観たことがありますが、これはこれでただ穴に落ちるだけという唐突感にあふれるラストだったと思います。投げやりな終わり方をするのは東宝怪獣映画の伝統芸みたいなものですね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-22 00:03:50)(笑:1票)
177.  飼育(1961) 《ネタバレ》 
大江健三郎の芥川賞受賞作の映画化。のっけから“大宝映画”なんて初耳の映画会社のマークが出てくるのですが、これはたった6本映画を配給しただけで消えていった、新東宝破たん後に製作部門を分社化したもの。なんでもこの会社が製作した映画で現在鑑賞出来るのは本作だけなんだそうです。大島渚もこの映画が独立後の処女作になります。大江健三郎の小説を大島渚が監督するなんて、大蔵貢時代の新東宝では絶対あり得ないお話しです。 太平洋戦争末期、山奥の部落に落下傘降下してきた黒人航空兵を部落の住民たちが監禁します。B29爆撃機に黒人搭乗員がいるなんて当時はあり得ない話なんですが、そこは寓話と考えてスルーしておきましょう。実はこの黒人兵はあまりストーリーには絡まない存在で、部落の長である三國連太郎とその小作人たちが、捕虜を媒介にして人間関係を崩壊させてゆく過程が実はテーマなのです。捕虜も村民たちとの接触はほとんどなく、物語の中盤であっさり殺されてしまいます。そうなるとなんでわざわざ黒人という設定にしたのか腑に落ちませんが、そこは原作通りなんで仕方ないでしょう。“異文化同士の対立”みたいなものを予想していましたが、描かれているのは今村昌平の映画の様な土俗的でドロドロした世界でした。 皮肉にも捕虜を殺したとたんに終戦となり責任のなすり合いになりますが、すべてを一人の厄介者に押しつけてみんなでお囃子を踊って目出度し目出度し、というあっさりした終わり方でした。でも村民たちが集まってくるシーンになると固定カメラによる長回しを多用するなど、大島渚の才気は十分に感じることは出来ました。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-01 18:47:17)
178.  カトマンズの男 《ネタバレ》 
『リオの男』はスピルバーグの『レイダース』の元ネタだったけど、本作も『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に見事なまで雰囲気が似てます。邦題こそ“カトマンズ”ですが、ヒマラヤの麓で撮られているのはほんの少しで、ほとんど舞台は香港です。『ホンコンの男』じゃカッコ悪いと思ったのかしら、配給会社の人たちは。でもヒマラヤのシーンは、こんなドタバタ・コメディのために良くあんなところまでロケに行ったものだと、素直に感心しました。 『リオの男』以上にドンドンとヒートアップしてゆくスラップスティックなギャグは、なんだか狂気の様なものさえ感じさせられます。ベルモンドを仕留めようと集まってくる殺し屋の数がどんどん増えてゆき、終いには戦争やってるみたいになってくるのがとてもシュールで傑作です。ベルモンドの“前髪クネ男”くんスタイルがまた妙に可笑しいし、一緒について回るジャン・ロシュフォールの執事がまたとぼけた味わいが有りまして良いんです。個人的にはベルモンドとウルスラ・アンドレスが大真面目に演っている『サンダーボール作戦』のパロディがとってもツボでした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2014-01-09 20:50:37)
179.  荒野の用心棒 《ネタバレ》 
セルジオ・レオーネの映画は長尺というイメージがあるが、この映画は例外的にふつうの尺に収まっています。もっとも本作以降の彼の作品で2時間未満の上映時間は皆無ですけど。 ほんと良くここまでと感心するぐらい黒澤の『用心棒』をパクってますねえ。もっとも私らの世代では、『用心棒』より先にTVで本作を観たという人の方が多いことでしょう。でも『用心棒』自体がウェスタンを意識したプロットだったから、見事にレオーネは換骨奪胎して見せたわけです。 とにかく若くて渋いイーストウッドを愛で、モリコーネの口笛のメロディーに酔いしれるのが正解でしょう。ラストの鉄板を腹に仕込んでのガンファイト(これはイーストウッドがアイデアを出したそうです)は今観ればなんかバカバカしくて、素朴に子供のころはなんで頭を撃たないんだろうと不思議でした。西部劇で頭や顔を撃っちゃいけないという規制があったことは後に知りましたが、マカロニ・ウェスタンも初期の頃はそんな不自然なルールを踏襲してたんでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-01 00:18:37)
180.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
岡本喜八の愚連隊三部作シリーズの中でももっとも切れた脚本と言ってよいでしょう、この映画は。この三部作はそれぞれのプロットはバラバラですが、共通する登場人物はもちろん佐藤允で、とくに本作で彼は最高のキレ味を見せてくれます。彼と藤田進や加山雄三のやり取りは、粋で軽妙の極みで聞き惚れてしまいました。惜しむらくは、サミュエル・L・ジャクソンの決め台詞“Mother Fucker !”と並ぶインパクトがある「ちっきっしょー」が、前二作ほど聞けなかったことでしょう。 藤田進がまたいい味出してるんですよね。坊さんが召集されて中国戦線に派遣されてきたという、いかにもと言うキャラを大らかに演じております。婚礼シーンの火踊りを観ても判る通り、この映画は『隠し砦の三悪人』のパロディみたいなところが有り、その中で彼が嬉々としてセルフ・パロディに興じるとは微笑ましい限りです。ラストなんか、有名な「裏切り御免!」へのオマージュになってますからね。 加山雄三も結局意外な役どころだったわけですが、この人はヒーローよりも脇に絡む役の方が上手いんじゃないでしょうか。もっとも砂塚秀夫の抱腹絶倒ぶりには大負けしますが(パントマイムで見張りを翻弄するシーンはもう最高です)。 あと今さら言ってもしょうがないことですけど、中国人とはちゃんと中国語(たぶん)で話すのは善いんですが、昼のシーンなんかは白文字を使っているので字幕が全然読み取れないことです。これは当時の東宝映画に共通する欠点なんです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-27 19:51:22)
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