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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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161.  チャイルド44 森に消えた子供たち 《ネタバレ》 
楽園に殺人など存在しない――。1953年、スターリン独裁体制下のソビエト、モスクワ。秘密警察のエリートであるレオ・デミドフは日夜、西側諸国との激しい諜報活動に忙殺されていた。密告、拷問、粛清と共産体制を維持するための嵐が猛威を振るうなか、レオはある〝事故〟の報告を受ける。親友でもある同僚の9歳になったばかりの息子が列車に轢かれ死体となって発見されたというのだ。検死結果は明らかに殺人。だが、「人類の楽園であるソビエト連邦に資本主義の病理である猟奇殺人など存在しない」という上層部の意向により、事件は事故として処理されるのだった。そんななか、レオの妻にスパイ容疑がかけられる。直後に始まった激しい派閥抗争に敗れた彼は、とある地方都市へと異動させられるのだった。ところがそこでも子供の変死が相次いでいることを知った彼は、同じく左遷させられた上司と共に独自に捜査を開始する。すると同僚の〝事故死〟した子供を含め、44人もの子供たちが広範囲で同じ状態で死体となって発見されていることが判明するのだった。果たして、楽園であるはずのソビエト連邦に連続猟奇殺人事件など存在するのか?東西冷戦の真っ只中、そんな不気味な事件に関わることになった一人の将校の姿を通してソビエト連邦の非人間性を炙り出すサスペンス・スリラー。ベストセラーとなったミステリー小説を原作に、トム・ハーディとゲイリー・オールドマンが主演を務めたということで今回鑑賞。あんまりよく知らないのですが、きっと原作は物凄く重厚な作品なんでしょうね。そういう長大な小説を原作にした映画の、悪い部分ばかりが目立つ作品だと僕には思えました。一言で表すなら、まさに散漫。たとえば物語の冒頭、主人公が孤児であることや、ナチスドイツ陥落間際のベルリンで武勲を挙げたことなどが示されるのですが、それが物語の中で重要な伏線となるのかと言うと最後まで特に意味など持ってきません。このように無駄なエピソードがたくさんあって途中から物凄く冗長に感じられるのです。さらには物語の重要な核となるものも、①子供ばかりを狙った連続殺人鬼を巡るミステリー②共産主義体制下、激しい権力闘争に巻き込まれた一人の男の悲劇③愛憎相半ばする夫婦の物語と、どれに焦点を絞って観ればいいのかさっぱり分かりません。長い小説を2時間強の限られた映画に纏めるならば、削るべき部分はきっぱりと削り見せるべき部分をしっかりと描く、監督は勇気を持ってそんな取捨択一をするべきでした。全編を覆う、当時のソビエト連邦を象徴するかのような閉塞感に満ちた雰囲気はとても良かっただけに残念と言うほかありません。
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-08 10:58:23)
162.  おみおくりの作法 《ネタバレ》 
彼の名は、ジョン・メイ。22年間、ケニントン地区の民生委員を勤めてきた真面目な男だ。その仕事は、管轄区域内で孤独死した身寄りのない人々の事後処理をすること。部屋に遺された僅かばかりの遺品を手掛かりに、身内が発見されれば速やかに連絡を取り、発見されなければしめやかに葬儀を執り行う。だが、多くの場合、彼らの身内が発見されることはなく、発見されたとしてもあからさまな拒否反応を示される。ジョン・メイは、誰からも気にされることもなく孤独に葬られていったそんな人々を見送っては哀しみを深めていくのだった――。40代も半ばに差し掛かった彼自身もまた、ずっと独りきりで生きてきた孤独な男。ただただ与えられた仕事をこなし、日々独りぼっちで食事をしてきた彼にある日、人生の転機が訪れる。それは、市の財政悪化に伴う突然の解雇通告。戸惑いながらも現実を受け入れた彼は、最後に廻ってきた仕事だけは責任をもって終わらせようと決意する。その仕事とは彼の自宅前のアパートで孤独死した独居老人、ビリーの〝おみおくり〟だった。一度も会ったこともないビリーという名の老人の経歴を探ってゆくうちに、そんな酒浸りで孤独に死んでいった彼にもちゃんと一人の人間としての過去があることが分かってゆく……。一度も会ったこともない人々をただ淡々と見送ってきた孤独な男を通して、人として誰もが避けては通れない生と死のドラマを静かに見つめたヒューマン・ドラマ。全編に流れるこの静謐な空気は確かに素晴らしいとは思うのですが、あまりにも淡々としすぎていて正直、僕にはちょっと合わなかったです。というのもこの主人公であるジョン・メイという人に、僕は全く共感できなかったんですよね。映画を観ている間、この人、いったい何が楽しくて生きてるんだろうって思って…。だって酒や女はもちろん、趣味らしきものも全くないんですもん。たとえば、夜な夜な熱帯魚を愛でるとか誰にも読まれることもない小説を書いているだとか、極端な話、覗き見を趣味にしてるだとか、そんな人間的な側面があったればこそ感情移入できるのに、それが彼にはいっさいないんですよ。まるでロボットみたい。なんだかいかにも作為的に作られたキャラクターのような気がして僕はちょっと感情移入できませんでした。でも、意表を突くあのラストシーンだけはけっこう良かった!そう来るか~って感じで。そこはちょっとジーンと来ちゃいました。という訳で、+1点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-05-04 13:24:19)
163.  サベージ・キラー 《ネタバレ》 
地獄で彷徨え――。ニューメキシコに拡がる広大な砂漠を年代物の古い車が疾走している。運転するのは、ゾーイという名の耳が不自由な若い女性ただ一人。近々結婚を控え、順風満帆な人生を約束されていた彼女だったが、ハイウェイで偶然出会った荒くれ男たちによってその運命は一変する。彼らに捕まり小屋に監禁されたゾーイは、有刺鉄線によってベッドに縛り付けられ何度も何度も輪姦されるのだった。隙をみて逃げ出そうとするものの、無情にも男どものナイフによってその命まで奪われてしまう――。だが、神はそんな彼女を見捨てたりはしなかった。砂漠に放置されたゾーイの遺体を発見したのは、なんと魔術を使いこなすアパッチ族の呪術師だったのだ。彼女を殺した男がアパッチ族伝来の地に住み、同胞たちをも惨殺してきた殺人鬼であることを知った呪術師は、古代の秘術を駆使して彼女を復活させる。伝説の英雄マンガス・コロラダスの魂と共に復活したゾーイは、その冷酷非情な野生の血を滴らせながら復讐の鉄槌を下してゆくのだった……。超荒唐無稽な設定ながら勢いとセンスだけを武器に最後まで突っ走るB級ジェットコースター・バトルホラー・ムービー。序盤からそのお話の無茶苦茶ぶりにけっこう面喰らってしまったのですが(だってほとんどゾンビと化した主人公が、バーで男の腸を笑いながら引きずり出すんですもん!)、意外と細部がしっかりしていたり脚本がなかなかよく出来ていたりで、中盤からぐいぐい見入っている自分がいました。いやー、けっこうな掘り出し物ですよ、これ。何が面白いって、なんといっても主人公のゾーイ!復活した彼女が屈強な男どもを血祭りにあげていくわけだけど、ほとんどゾンビと化しているせいで、腕はもげるわ、内臓は飛び出るわ、傷口に蛆虫は湧くわで大変なことになりながら頑張るんですよ。で、途中から彼女の婚約者がやってくるのだけど、そんな醜い姿になってしまった自分を婚約者に見せたくない、でも彼には会いたいから鏡越しに一瞬だけ会ってみたりと、こんなグロ切ないヒロイン初めて見ました(笑)。そして、さんざん血みどろグッチャグチャバトルを繰り広げながらも、最後はめちゃ切ない感じで幕を引く監督のこのセンス!素晴らしいと思います!ヒロインの耳が聞こえない設定は正直なくてもよかった気がしなくもないけど、うん、面白かった!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-04 13:12:48)(良:1票)
164.  カイト/KITE 《ネタバレ》 
近未来――。経済が崩壊したアメリカはもはや無法地帯と化していた。実質的に地域を支配するのはギャング集団である「ナンバーズ」。次々と子供をさらい人身売買組織に売り捌くことで豊富な資源を得ている彼らは、人々から最も恐れられている。組織のボスの名は、エミール。絶大な力を持つ彼には、警察ですら手出しできない。だが、そんな彼に密かに復讐を誓う少女がいた。幼いころに彼に両親を殺された彼女の名は、サワ。辛い過去を忘れたいがために麻薬に溺れながらも、今日もサワはその真紅に染められた髪を揺らし、男どもを密かに葬り去ってゆく……。日本の成人向けアニメをサミュエル・L・ジャクソン主演でリメイクしたスタイリッシュ・ハードボイルド・アクション。と、言えば聞こえはいいのだけど、まぁなんとゆうか、ぬるーい映画でしたね、これ。とにかく脚本が穴だらけ。「そこ、けっこう重要なトコですやん」っていう映画の見せ場になりそうなところをことごとくナレーションやテロップで説明するものだから、全く物語が盛り上がりません。最大の突っ込みどころは、敵であるギャング集団がどいつもこいつもアホばっかりで、サワという女の子に簡単にやられまくるところでしょう。もう最後のラスボスであるエミールまで、びっくりするくらいあっさりとやられちゃいます。サワが過去に超人的な力を手に入れたという設定でもあればそれでもいいんですけど、そーゆーのんは一切ないんで後半見事なまでにグダグダになっちゃってます。「あ、ここまで簡単にいくってことは、これは最後にどんでん返しがあるなぁきっとあいつが真犯人で最後はああなるんやろうなぁ、でもまさかそんなベタベタな展開って今どきないよね?」って思ってたら、びっくりするくらいその通りの展開に(笑)。期待のエロ要素もサワちゃんが下着姿でくねくねするだけだし、かなり拍子抜けでした。うーん、完全なる凡作です。主役のサワを演じた女の子がヒットガール時代のクロエ・グレース・モレッツにちょっぴり似ていたので、+1点で。
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-04 12:40:27)
165.  カリフォルニア・ダウン 《ネタバレ》 
アメリカ西海岸を中心にマグニチュード9.5の大地震が発生。各地に甚大な被害が出る中、主人公のレスキュー隊員・レイが家族を救うために大活躍する姿を描いた大災害パニック・ムービー。こういういかにもベタベタなディザスターものって、映像6割・人間ドラマ4割くらいがちょうどいいバランス配分だと思うのですが、本作はそのバランスがかなり悪いような印象を持ってしまいました。まあいかにもお金掛かってそうな迫力満点の映像は充分鑑賞に耐えうるレベルだとは思うのですが、いかんせん人間ドラマがあまりにもお粗末。こういう頭空っぽにして観るべきエンタメ映画でも、最低限押さえておかなければいけないツボっていうのがやっぱりあると思うんです。でも、本作ではこのツボをことごとく外しているから、一向に面白くないんですよね、これが。以下、この映画の駄目な点を思いつくままに挙げてみました。①主人公である父親と娘の仲が最初からかなりうまくいっている。気難しい年頃の娘と頑固な父親が最初はいがみ合っていたけれど、困難を乗り越えるうちに絆を取り戻すというお話にした方が盛り上がると思うのになんでこんなのっぺりとした展開にしちゃったんでしょう?②別居中の妻の現在交際中の男が、あり得ないほどの大金持ちでリアリティ皆無。大都会に高層ビルを幾つも持つ大富豪が、多少美人で巨乳とはいえ、なんで子供つきで旦那つきのオバハンをいこうと思ったのでしょう?普通、もっと若くてきれいなピチピチギャルをいくでしょうに。③けっこう重要な役どころである地震学者が「地震が来るぞ!!」と警告するだけの役割でしかなく、ドラマの中でほとんど意味をなしていない。きっと、こういうディザスタームービーは群像劇にしなきゃいけないという監督の固定観念があって、だから群像劇にしたいがために無理やり作り上げた人物としか思えないんですよね。④主人公をはじめとする全キャラクターに全く魅力がない。特に娘を助けることになる兄弟の弟なんか、ほとんど居る意味がありません。⑤レスキュー隊員である主人公が大災害を目の前にして、家族を最優先して職場放棄するばかりか先々で窃盗行為を繰り返す。この点に関しては改めて言うまでもないでしょう。結論。映像はそこそこ迫力があったけど、肝心のドラマ部分がこれではね~。ぎりぎり暇潰しにはなるかなぁってくらいの凡作でありました。4点。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-01 14:02:45)
166.  パージ 《ネタバレ》 
パージ(浄化)法、それは一年に一度、12時間だけ殺人を含む全ての犯罪が合法となる法律――。2022年、社会に蔓延する犯罪を抑止するためにそんな法律が施行されたアメリカ社会。富裕層向けに高度なセキュリティシステムを販売する営業マン、ジェームズ・サンディンはその日、街中を忙しく走り回っていた。何故なら今年もパージの夜が近づいているから。「それじゃ安全な夜を」。職場や隣近所にいつものようにそう挨拶し、愛する家族が待つ家へと帰ってきた彼は、今年もいつものようにセキュリティシステムの電源をオンにするのだった。外の世界では、放火・強盗・殺人が横行し、道路が真っ赤な血で染まるなか、サンディン家は完璧なバリケードで守られた家の中で平穏な夜を過ごすはずだった。そう、一人のホームレスが家の中に逃げ込んでくるまでは……。年に一度、全ての犯罪が許される夜、安全なはずの家の中で繰り広げられる家族の戦慄のサバイバルをノンストップで描いたバイオレンス・スリラー。そーゆー設定を聞いただけでB級感満載な本作、でもイーサン・ホークが出ているということで今回鑑賞してみました。いやー、予想に違わず、完全にB級映画でしたね、これ。イーサン・ホーク、最近けっこう色んな映画に出てるけどちょっとは選べよ(笑)。でも、最初からB級だと割り切って観ればそこそこアリなんじゃないでしょうか。僕はぼちぼち楽しめました。まあストーリーの突っ込みどころなんて無限に湧いてきそうですけど、最初からあり得ない設定の話なんで細かいところがあんまり気にならなくなるのは監督の狙いなんでしょう。自分たち家族が救われるために家に入り込んだホームレスを捕まえ、外に居るサイコパス集団に引き渡そうとする主人公なんて、なかなかイカれてて面白いじゃないですか。このまま、観客の道徳心や倫理観を逆撫でするようなぐちゃぐちゃソーゼツ展開を期待してワクワクしながら観ていたのですが、途中から主人公家族が変に道徳心に目覚めてしまい、後半からいたって普通のサバイバルものになっちゃったのが残念。自分たちだけが助かればいい家族とただ人を殺したいだけのサイコ野郎たちと何の罪もないホームレスが最後、一大血みどろバトルを繰り広げてくれたらもしかしたらカルト作として一部で伝説になれたかも知れないのにね。残念!
[DVD(字幕)] 6点(2023-05-01 13:43:28)(良:1票)
167.  アリスのままで 《ネタバレ》 
この瞬間も私は感じるの、私の頭の中で脳細胞がどんどんと死んでいくのが。人生をかけて築いてきたことが何もかも消えていくのが――。今年で50歳になる、アリス・ハウランド博士。コロンビア大学の言語学の教授にして、3人の子供たちを立派に育て上げた母親でもある彼女は公私共に充実した日々を過ごしていた。ところがそんな彼女をある日、悲劇が襲う。度重なる物忘れ、唐突に出てこなくなる言葉、毎日過ごしているはずのキャンパスで迷子…。戸惑いつつも受診した神経科でアリスは驚きの診断結果を聞かされる。若年性アルツハイマー。しかも50%の確率で子供たちにも発症する遺伝性のものだった。急に発覚した重たい現実に、当然アリスも彼女の家族たちもおろおろとうろたえてしまうばかり。だが、そんな家族の狼狽などおかまいなしに、アリスの病状は急速に悪化してゆく……。50歳にして重い病に犯された一人の女性とその家族の葛藤と闘病の日々を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。アリス役を演じたジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞を受賞したということで今回鑑賞してみた。結論から言うと、非常にオーソドックスな闘病もの。これまで幾度となく映画やドラマ、小説などで取り上げられてきたテーマをただこぎれいに纏めただけのもので、それ以上でもそれ以下でもない。こういう手垢にまみれた題材を扱う場合、もっと新しい視点や独自のテーマがあってしかるべきだと自分は思うのだが、本作にはそれが一切ない。病に犯された一人の可愛そうな女性がただ単に不幸になっていくのを延々と見せることで、観客の誰もが持っている善意に安易に訴えただけとしか僕には思えなかった。ジュリアン・ムーアも確かに熱演ではあるが、なんだか病に犯された一人の女性を演じる場合の模範的な教科書のようにしか見えない。こういう極限状況に追い込まれた家族にはもっと醜い諍いがあってしかるべきだし、最後の自殺未遂にしてもあれでは偶然が重なってたまたま未遂に終わっただけに過ぎないのではないか。母親を自死という究極の選択にまで追い詰めてしまったことを知った家族の、その先の物語をこそ僕は観たかった。勇気をもって言わせてもらえば、本作は総じてきれいごとに過ぎるのだ。最近、感動ポルノ(障害者や不治の病に犯された人を極端なまでに感動的に描くことで、人々の安易な涙を誘うこと)という言葉がクローズアップされているが、本作などその典型ではなかろうか。辛辣な評となってしまったが、残念ながら自分は本作及びそのテーマを受け入れることは出来なかった。
[DVD(字幕)] 4点(2023-05-01 13:28:34)
168.  デッドプール 《ネタバレ》 
ちょい悪ヒーロー、デッドプールが好き勝手に悪態をつきながら、画面狭しと大暴れするアンチ・スーパーヒーロー・アクション。冒頭から、一癖も二癖もありそうな自己中ヒーロー・デッドプールが爽快に敵の皆様をぶっ殺しまくる超かっちょいいアクションシーンの連続に、見ている僕のテンションは否が応にも高まってゆくのでした。いまやハリウッドを席巻する勢いの寡黙に悪と戦うスーパーヒーローたちを徹底的に茶化すかのようなデッドプールの軽快なノリに、「お、これはもしかしたら傑作かも」と僕は終始ワクワクしっぱなし。うん、途中まではね…。と言うのも、デッドプールが敵と戦う理由が明かされてからはその悪ノリぶりがどんどんと失速し、中盤以降はいたって普通のヒーローものになっしまって僕の期待はものの見事に外れてしまいました。だって、「愛する人を救うために悪と戦うヒーロー」って全然ふつうですやん。このちょい悪ヒーローというナイスな設定が全然活かされてませんやん。最近観た『キングスマン』が、最高にぶっ飛んでたいい意味での悪ノリ映画の傑作だったけれど、これはかなり中途半端。王妃とア○ルセックスしたいがために世界を救うヒーロー(キングスマン)くらいのぶっ飛んだ悪ふざけが、こういうノリの映画には必要でしょうに。なんだか、普通の人が頑張って悪ノリしようとしたものの、持ち前の良い人ぶりが邪魔をして、ちょっとスベッちゃったパターンですかね、これ。こーゆー悪ふざけものはもっと性格ねじくれた人が撮った方がいいと思います(笑)。アクションシーンのクオリティはかなり高かっただけに残念!
[DVD(字幕)] 5点(2023-05-01 12:53:57)
169.  クリムゾン・ピーク 《ネタバレ》 
いつかその時が来たら、“クリムゾン・ピーク(深紅の丘)”に気をつけなさい――。19世紀末、アメリカ。幼いころに母親を失くし、以来裕福な父親の元で大切に育てられた少女イーディス。幼いころから何不自由なく暮らしてきた彼女は、ちょっぴり世間知らずで夢見がちな女の子だ。年頃の美しき女性へと成長したある日、彼女はイギリスからやってきたトーマスという名の準男爵と出会う。どこか胡散臭い彼に父は警戒心をあらわにするが、何処か影のあるトーマスにイーディスは次第に心惹かれていくのだった。そんな折、父が浴場で謎の死を遂げる。天涯孤独となってしまったイーディスは、トーマスと結婚し彼の故郷であるイギリスへと移り住むことを決意する。子供のころから姉と二人きりで過ごしてきたという彼の館は、寂れた郊外にひっそりと佇み、年代物の家具調度品や古びた芸術品で溢れ返る大豪邸だった。だが、イーディスはまだ知らない。そこが、冬になると真っ赤な赤土が染み出し、降り積もった雪を真紅に染めてしまう禍々しい地であることを……。古びた洋館を舞台に、そんなうら若き女性が迷い込むことになる淫靡で怪しげな世界を妖艶に描いたゴシック・ホラー。僕のこよなく愛するダーク・ファンタジーの傑作『パンズ・ラビリンス』を生み出した鬼才ギレルモ・デル・トロ監督の最新作にして、『パンズ~』の系譜を色濃く受け継いだ本作をもうワクワクしながら鑑賞してみました。いやー、いいですね~、いかにも彼らしいこのおどろおどろしい世界観。蟻が蝶の死骸を食い漁る様をアップで映し出したり、廊下の暗がりから骸骨のような幽霊が迫ってきたり…。ミア・ワシコウスカが身に纏う衣装の美しさも相俟って、そんなモダンで壮麗な世界に僕はもうどっぷりと浸かりきってしまいました。圧巻はやはり、彼女が移り住むことになるシャープ家のその細部まで造り込まれた美術でしょう。何かが潜んでいそうな暗い影がいたる所に存在し、廊下には何処に連れていかれるのか分からない古びたエレベーター、天井に穿たれた大きな穴からは常に埃が雪のように舞い落ちる…。もう見事としかいいようがない。ただ、そのように世界観は確かに素晴らしかったのですが、肝心のストーリーの方がちょっと弱かったのが残念。物語の随所に繰り返される母親の警告がいまいち効果的に使われていないし、幽霊の扱い方もなんとも中途半端。うーん、惜しい!とはいえ、クライマックスでの真紅の血や土がそこかしこに迸る血みどろ展開はまさにデルトロらしい残酷な美しさに満ち満ちていて(頬にナイフとかもう痛々しいったらありゃしない!笑)、そこらへんは大変満足でございました。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-01 12:40:20)
170.  ブラック・スキャンダル 《ネタバレ》 
1970年代から80年代にかけて、南ボストンを中心に、恐喝・麻薬密売・売春・殺人とありとあらゆる犯罪行為にかかわり、裏社会を牛耳ってきたマフィア、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー。犯罪組織のみならず政界やマスコミ、果てはFBIにまで幅広い人脈を有する彼は、その生まれついての無法者の血と類まれなカリスマ性でギャングたちを支配してきた。そんな彼の鉄の掟。それは、「密告者は誰であろうと絶対に許さない」――。警察にひとたび口を割った者には残さず血の制裁が待っているのだ。彼を擁護し助けてきたのは、いまや上院議員となった兄とFBI捜査官として働く幼馴染みのコノリー。だが、勢力が拡大するにつれ、鉄の結束を誇った彼らの絆も徐々に綻び始めて……。実話を元に、長年警察の手から逃げ延びてきた伝説の犯罪者の半生を重厚に描いたクライム・ドラマ。実在したカリスマ犯罪者役をジョニー・デップが好演しているということで今回鑑賞してみたのですが、いやはやこれがなかなか手堅く造り込まれていて僕はけっこう楽しめました。ジョニー・デップのハゲ頭もなかなか様になっており、普段の静かな態度から豹変し突然狂犬のように感情を暴発させる所なんてかなり怖い。コノリー家での夕食の席で披露される我が家の秘伝レシピの話やその後、コノリーの妻に対する不気味な言動など、なんとも真に迫っていて凄かった。これが、チョコレート工場で白塗りおかっぱ姿で踊っていた彼と同一人物だとはとても信じられないですね(笑)。ただ、とても手堅く創られている反面、実話を元にしたから仕方ないのかも知れませんが、新味が一切ないのが本作の弱点。マーティン・スコセッシが過去に何度も手がけてきた実話を元にした作品群と印象がとてもよく似ているのです。もう少し、この監督ならではといった独自の味が欲しかったですかね。とはいえ全編を覆う重厚な雰囲気は見応え充分。この手の作品が好きな人はもちろん、単にジョニー・デップが好きというだけの人も観て損はないでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-01 12:15:51)
171.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 
昔の船乗りは世界の淵から落ちるのを恐れていた。だが、俺たちはあのとき正気の淵にいたのだ――。19世紀、アメリカ。閉店間際の場末の宿屋に、とある男が亭主に会うために訪ねてくる。男の名はハーマン・メルビル、後に『白鯨』という米文学史上に残る屈指の名作を書くことになる新進気鋭の作家だ。目的はその酒浸りの亭主が遥か昔まだ青年だったころに経験した、ある航海についての話を聴くこと。最初は頑なに拒んでいた亭主だったが、メルビルの情熱にほだされ、今まで誰にも話したことのないその苦難に満ちた航海の記憶を呼び覚ましてゆく。ウイスキーをくゆらせながら彼はその重い口を開き、静かに語り始めるのだった。船長ポラードと一等航海士チェイスの元で、何人もの男たちとともに何百日にもわたって経験した想像を絶する日々を。それは、白い肌に覆われた巨体を大海原にうねらせ、ちっぽけな人間など一瞬にして海の藻屑に変えてしまう恐ろしい白鯨との生死を懸けた闘いの物語だった……。名作『白鯨』誕生の裏に隠された真実の物語を、エンタメ映画の名手ロン・ハワードが真に迫った映像でもって描き出す一大海洋スペクタクル。いかにもロン・ハワードらしい、この抜群の安定感はもはや匠の域に達してますね。分かりやすいストーリー展開、個性豊かな登場人物たち、迫力満点のCG映像…。画面の中の男たちとは裏腹に、観客である僕はまるで豪華客船で心地よい船旅へと繰り出すかの如くこの安定のエンタメ・ワールドに身を任せておりました。昔は鯨をこうして狩っていたのかとか、鯨油はこんな方法で取り出していたのか(鯨の頭の中に入るシーンの生々しいことといったら!)などなど。最初は対立していた正反対の2人の男が極限状況に追い込まれたとき…なんて、思いっきり前作の『ラッシュ』とかぶってるベタベタな設定だけど、やぱアツいっすね。中盤における肝心の白鯨とのバトルシーンなんて、さすがの大迫力でハラハラドキドキ。だったんですが……、そんな僕のハイテンションもその白鯨との一大バトルまで。原作がそうなので仕方ないかも知れませんが、後半からは画的にもかなり地味な普通の海洋漂流ものになってしまい、幾分か水準が下がってしまったのが残念でした。食料も水も底を突き、極限状況に追い込まれた男たちが取ったある行動など、さすがに既視感が否めません。白鯨との手に汗握る闘いを、僕はもっともっと見たかった。6点。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 12:21:40)
172.  ピクセル(2015) 《ネタバレ》 
パックマン、ドンキーコング、ギャラガ、テトリス、アルカノイド…。80年代、テレビゲーム黎明期を彩ったそんな名作ゲームのキャラクターたちが、地球侵略のために空から降ってくる――。原因は、その昔、テレビゲームの世界チャンピオン大会で行われたイベントで宇宙に向けて送信されたゲームデータをエイリアンたちが宣戦布告と勘違いしたから。突然降って湧いた世界の危機を救うために集められたのは、かつてその大会で優勝を競った精鋭ゲーマーたちだった。妻に逃げられたしがない電気技師、デブで童貞の怪しげな陰謀論者、口だけは達者な女好きのチンケな犯罪者…。彼ら人生の負け犬たちが、今までの人生で何の役にも立たなかったゲームテクニックを駆使して、世界を救う英雄になる…。はっきり言ってストーリーなんてあって無きが如し。もう徹底的にバカバカしいこのノリ、僕はけっこう嫌いじゃないです…てかむしろ好きなんですけど!!スーパーマリオや悪魔城ドラキュラ辺りからゲームにどっぷりハマッた僕ら世代のちょい上くらいのゲームがメインなんですけど、あのドット絵キャラが大量に攻めて来るシーンなんてやぱ普通に萌えますもん。CGが如何にリアルに近づけるかを競っている昨今、このカラフルど派手なチープ・キャラクターがピコピコ攻めてくるアクションシーンなんてなかなか新しいかも?!しかも、触れられたものや人が次々とドットになってポコポコ崩れていくなんて……。このポップだけどちょっぴりブラックな世界観に自分はけっこうセンスを感じたんですけどね。世間的にはいまいち評判がよくないみたいですけど、僕は楽しかったです。うん、なかなか面白かった!7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-04-26 11:55:10)
173.  ザ・ウォーク 《ネタバレ》 
1974年、ニューヨーク。完成間近の世界貿易センタービル、通称ツインタワー。当時世界最高の高さを誇ったこのビルで、誰にも成しえない偉業を達成した男がいる。男の名は、フィリップ・プティ。自称・世界最高の綱渡り師だ。そう、彼はその2つの超高層ビルの屋上にワイヤーを張り、命綱なしで横断することに成功したのだ。本作は、彼とその仲間たちによる狂気と紙一重のそんな無謀な挑戦をスリリングな映像で描いた超一級のエンタメ映画だ。ストーリーは極めてシンプル。エンドロールを迎えるまでの2時間強、この世界最高の危険な綱渡りを彼が如何にして成功させたのか、そこにどんなドラマがあったのか、ただその一点のみを描いている。偉業と言えば聞こえがいいが、彼らがやっていることは完全に犯罪行為。成功したからよかったものの、もし仮に彼が転落したりワイヤーが切れて窓硝子を割ったりでもしたら下手をすれば死人だって出たかもしれない。ただでさえ忙しい警察の業務を妨害したことも当事者にとってはたまったものじゃないだろう。でも、僕はそれでも彼らに成功してほしいと応援せずにはいられなかった。決行当日、様々な困難に出遭い一時は失敗を覚悟しながらも不屈の闘志でもって2つのビルにワイヤーをかけようとする彼らに、「それだけの情熱があるなら、もっと社会にとって有意義なことに活かせよ!!」という突っ込みなどまるで風に流される青空の白い雲のように霞んでしまう。ただ自分を待ってくれている人に心の底から楽しんでもらえたらそれでいい――。彼の無謀な情熱は、どこか映画作りのそれと似ていないだろうか。一人の男の馬鹿げた挑戦を最新の映像技術を駆使して何ヶ月、時には何年もかけて一本の映画に仕上げてしまうスタッフ及び監督の情熱とそれは根本的なところで繋がっている。フィリップと、稀代のエンターテイナーとして常にハリウッドの第一線を走ってきたロバート・ゼメキスの思いがオーバーラップするからこそ、観客である自分は思わず心揺さぶられてしまうのだ。クライマックス、ビルとビルの屋上にかけられた1本の弱々しいワイヤーの上へとフィリップが最初の一歩を踏み出すときの緊張感は、きっと映画が公開される直前の監督の緊張感と通じている。まさに、エンターテイメント・ショー。お金を払って観に来てくれた観客に最高の時間を過ごしてもらいたい、そんなゼメキス監督の表現者としての矜持に僕は最大限の賛辞を贈りたいと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2023-04-26 11:46:16)
174.  PAN/ネバーランド、夢のはじまり 《ネタバレ》 
名作童話『ピーターパン』のその知られざる誕生秘話を最新のCG技術を駆使して描いたファンタジー大作。まあまあこんなもんじゃなかろうか、といった感じの作品でした。可もなく不可もなく、そこそこ楽しめる万人向けのエンタメ映画としては充分合格点。こんなごりごりのファンタジー作品で、まさかニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を聴けるとは夢にも思いませんでした。あのシーンは何回も観たいくらい好き。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 11:24:33)
175.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
正直、このシリーズには何の思い入れもなかったのだけど、最近観た『キングスメン』というスパイ映画がすこぶる面白かったので、同監督がメガホンを取った本作をあらためて鑑賞してみました。うーん、確かに面白かったのだけど、やはりこのシリーズを好きかそうでもないかで評価が分かれると思います。僕は後者なので、評価は若干厳しめです。やはりマシュー・ヴォーンの才能はこういう真面目なヒーローものより、もっとぶっ飛んだ悪乗り系の作品の方が映えるんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 11:16:58)
176.  メイズ・ランナー 《ネタバレ》 
ここは天高く聳え立つ巨大な壁に囲まれた荒地。ある日、そこに記憶をなくした少年が古い昇降機に載せられて運ばれてくる。そこには先にやってきた何人もの少年たちが独自のコミュニティを形成している。「三日も経てば君も名前を思い出せるよ」。先輩たちのそんな言葉通り、自らの名前を思い出した少年トーマス。彼はその地が巨大な迷路に囲まれていることを知るのだった。しかも迷路は日に日にその行路を変え、さらには夜になると恐ろしい怪物たちが徘徊し、少年たちを狩りはじめるという。仲間たちとともに新たな生活へとなじんでゆくトーマスはやがて迷路からの脱出を図る〝メイズ・ランナー〟となり、仲間たちからも信頼を得ていく。そんな中、これまで少年しか運んでこなかった昇降機が初めて少女を運んでくる。彼女の手には「これで最後だ」というメモが握られ、さらにはトーマスのことも知っていたのだった……。果たして彼女は何者なのか?迷路はいったい誰が築き、誰が操作しているのか?そして、トーマスたちは無事に迷路を攻略し、外の世界へと脱出することが出来るのか?ティーン向けのジェブナイル・ノベルを原作に、最新のCG技術を駆使して描いた脱出型SFアクション。というよくある設定勝負のワンアイデア映画なのだけど、迷路内や蜘蛛のような怪物たちの造形が意外にしっかりしていたり、脚本がそこそこ練られていたりでけっこう面白いじゃないですか、これ。『ハンガー・ゲーム』や『ダイバージェント』といった同系統の作品で散々失望させられていた僕としては意外にも楽しめました。まあ同ジャンルの名作『キューブ』をお金をかけてただスケールを大きくしただけと言われればそれまでなんですけどね。隔離された少年たちが迷路の謎を巡って「脱出派」と「現状維持派」に分かれて対立するなんて、『蠅の王』や『漂流教室』のテイストもちょっと混ざってますかね。と、いろいろベタではあるけれども、エンタメ映画としては別に問題ナシ。最後、「脱出派」の少年たちが自由を求めて危険な迷路を疾走してゆくとこなんかけっこう格好良かったですし。ただ…、最後に明かされることの真相があまりにも無理があり過ぎたのが僕的にはちょっと残念でした。まぁこのシチュエーションではこういう強引なオチを持ってくるしかないのは分からなくもないけれど、さすがにこれは話を大きくしすぎちゃいますか。次作を観るかどうかは悩むところですね。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 11:11:33)(良:1票)
177.  ラスト・ナイツ 《ネタバレ》 
いつの時代のどこにあるのかすらも分からないとある国。辺境の地を治める君主に絶対の忠誠を誓った騎士ライデンは、仲間からの信頼も篤い誇り高き男だ。ある日、彼の主君が皇帝陛下の執政により賄賂を収めるよう強要される。それに反発した主君が最後まで抵抗した結果、執政の策略により死罪を言い渡されるのだった。しかもその執政により、ライデンは主君の刑の執行人に任命される。苦渋の思いで主君の首を刎ねたライデン。騎士としての地位も剝奪され、さらには愛する故郷の地が皇帝の兵士によって蹂躙されるのを目の当たりにするのだった――。一年後、失意の末に酒に溺れ自暴自棄へと陥ったライデン。だが、そんな彼をよそに以前の仲間たちは密かに復讐の計画を練っていたのだったが……。忠臣蔵を基に、日本人監督がハリウッド俳優を多数起用して制作したという本作は、そんなストイックなまでの騎士道物語だ。あまりいい評判を聞かないこの監督の作品を観るのは今回が初めてなのだが、確かにエンタメ映画のセオリーをことごとく外した演出はどうかと思う。例えば冒頭、主人公のライデンたち騎士がよくわからない敵と戦うシーンから始まるのだが、これが映画の本筋とほとんど関係がない。やはりここはモーガン・フリーマン演じる主君にどうしてそこまでの信頼を寄せるようになったのか、そのエピソードをまず描くべきだろう。それがないため、主人公の行動に説得力が感じられず、見せ場であるはずの処刑シーンもいまいち心に迫るものがない。悪役である執政との因縁の描き方も弱く、どうしてそこまでライデンに怯えて過ごすことになるのかもしっくり入ってこない。だいいち、これは忠臣蔵をある程度知っているという前提ありきの作品であって、原典を知らない人に全てを理解するのは難しいのではなかろうか。ただ、そんな弱点ばかりが目につく本作ではあるが、誉めるべき点が一つだけある。それは映像で名を成してきた監督だけあって、その細部にまで拘ったであろう美しい映像だ。特に後半、夜の城を舞台に繰り広げられるアクションシーンはスタイリッシュでなかなか見応えがあった。細かな雪が舞い散る中、名誉を懸けて無言で剣を振るう男たちの姿は熱い。監督が日本人で、日本的美意識に貫かれた古典を基にしていることもあり、そこに日本的もののあはれのようなものを感じたのは自分だけだろうか。我ながら少々言い過ぎのような気がしなくもないが、多少甘めに6点としておこう。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-26 10:46:16)
178.  ディーパンの闘い 《ネタバレ》 
戦火を逃れ、故郷であるバングラディシュから難民としてフランスへとやってきたディーパン一家。郊外のマンションの管理人となり貧しいながらも家族水入らずの平穏な暮らしを手に入れた彼ら。だがその正体は、出国寸前に難民として認めてもらうため即席で一緒になった疑似家族だった。そう、彼らはそれまで口を利いたこともない全くの他人同士だったのだ――。イギリスに住む従妹の元へと向かいたい〝妻〟と何も知らずにただ連れてこられた9歳の〝娘〟とともに、ディーパンは強制送還させられないために偽りの家族生活を続けていた。そんな折、同じマンションに住む麻薬密売人たちの間で抗争が勃発する。平穏な暮らしの中で微かな絆のようなものを感じ始めていたディーパンたちの生活に再び、暴力の影が差してくるのだった……。難民問題に揺れるフランスを舞台に、そんな過酷な運命に翻弄されるとある疑似家族を淡々と描いたヒューマン・ドラマ。カンヌでパルムドールを取ったということで今回鑑賞してみたのだが、残念ながら、自分には何がいいのかさっぱり分からない作品だった。とにかく演出が一本調子で、主人公であるディーパンも魅力に乏しく、一本の映画として退屈極まりない。ドラマがようやく動き出すことになる終盤まで、僕は終始眠気と戦いながらの鑑賞となってしまった。映像もとても計算されて撮られたとは思えないほど粗悪なもので、これは本当にプロの仕事なのかと疑ってしまうくらいだ。無駄としか思えないシーンが幾つもあるのに、僕が本当に観たいと思ったシーンはバッサリとカット。編集もいちいち繋がりが悪く、場面場面がぶつ切りにされるので終始イライラさせられる。最近、カンヌがらみの作品を何作か観てきたのだが、どれもこれも残念なものばかりで、一時に比べ相当レベルが落ちていると言わざるを得ない。同じくヨーロッパの難民問題を扱った、巨匠ベルナルド・ベルトルッチの佳品『シャンドライの恋』における芸術性の高さを少しは見習ってほしい。
[DVD(字幕)] 3点(2023-04-26 09:36:39)
179.  黄金のアデーレ 名画の帰還 《ネタバレ》 
1998年、ロサンゼルス。長年この地で小さなお店を営んできた平凡な老婦人マリア・アルトマンが、オーストリアという国を相手にある訴えを起こす。それはこの国で長い間国宝として大事にされてきたクリムトの名画『黄金のアデーレ』が第二次大戦中ナチスによって不当に奪取されたもので、本当の所有者である自分に速やかに返還すべきだというもの。まだ駆け出しの弁護士を専属で雇い、巨大な国家権力を相手に無謀ともいえるそんな戦いを挑んだマリア。それでも彼女には決して負けられない理由があった――。幼い時に亡くなった彼女の叔母アデーレこそがその名画のモデルだったからだ。つらい過去を忘れるためにずっと足を踏み入れたことのなかった祖国の地にまで足を運び、マリアは煩雑な手続きの壁に立ち向かってゆく。同時に、それはナチスに蹂躙された彼女の激動の半生をも甦らせてゆくのだった……。世界的な名画の裏に隠された、時代の荒波に翻弄され続けたとある女性の真実を描いた大河ドラマ。興味深い題材ではあるし、主役である老婦人を気品豊かに演じたヘレン・ミレンの魅力も相俟って、なかなか堅実に創られた歴史ものとして最後まで面白く観ることが出来ました。時代考証もしっかりしていたし、ドラマとして過不足なく演出出来ていたと思います。なのだけど、正直に自分の感想を述べさせてもらえれば、「何かが足りない」。全てに対して何処か踏み込みが甘いような気がしてしまうのです。クリムトの名画に隠された真実、国家権力に戦いを挑んだ市井の一市民、ナチスに蹂躙された家族の物語と、どの題材も魅力的であるのにそのどれに対しても表面的なアプローチしかなされていない。なので、本作は結果的に薄味な印象を観客に与えてしまう。題材が良いだけに、「惜しい」と言わざるを得ません。監督には、破綻を恐れずもっと踏み込んだアプローチをしてほしかった。そうすれば、より多くの観客の心に残る「名画」となれたであろうに。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-19 12:26:43)
180.  ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 
舞台は南北戦争終結から数年後、ワイオミングのとある雪山。かつてないほどの猛吹雪が吹き荒れる中、一軒の寂れた山小屋に4人の男女が逃げ込んでくる。3人の指名手配犯の死体を街へと運んでいた黒人の賞金稼ぎ、マーキス。捕まえた女指名手配犯を生きたまま連行していたのは、通称首吊人と呼ばれる賞金稼ぎの大物、ジョン。そんな彼に手錠で繋がれ、所かまわず悪態をつくのは女犯罪者、ドメルグ。偶然、彼らと同行していたいかにも小物の自称次期保安官クリス。そんな彼らを迎えるのは、この山小屋の所有者から留守を預かっていると主張するメキシコ人、ボブだ。一方、彼らより先に山小屋を訪れていた先客が3人いる。英国紳士風の装いをしている絞首刑執行人のオズワルド。小屋の片隅で自らの物語の執筆に夢中になっているカウボーイのジョー。暖炉の前で我関せずとチェスに明け暮れるのは、かつての南北戦争の英雄だが今や老いさらばえたスミザーズ将軍。一癖も二癖もありそうなそんな〝ロクデナシ8人〟がともに一夜を過ごすことになったのだから、当然、無事に朝日を拝めるわけはなかった。騙し合いに腹の探り合い、主導権争いに明け暮れているうちに、突発的に密室殺人が行われるのだった――。犯人は誰か?その真の動機とは?そして、この凄惨な争いを生き抜き、無事に朝日を拝めるのはどの〝ロクデナシ〟なのか?タランティーノ監督が新たに仕掛けるのは、いかにも彼らしいそんな息詰まるような緊張感に満ちた密室劇でした。唯一無二の彼の才能はもはや円熟の域に達しているといっても過言ではなく、個性的でアクの強いキャラクター、脱線に次ぐ脱線で時に暴走する饒舌な会話劇、下世話でエネルギッシュなエピソードの数々、全編を彩る軽快でノリのいい音楽……。デビュー作である『レザボア・ドックス』からぶれることなく、自らの世界を発展・進化させた彼の一つの完成形がここにはある。自分は存分楽しませてもらいました。アカデミー賞受賞も納得。ただ、難点が一つあるとすれば、それは自らの世界を追求するあまり、映画としていささか予定調和に終わったように感じるところでしょうか。もう少し彼の新たな世界を見たかった気がしなくもない。とはいえ、円熟期を迎えたであろうタランティーノの中期を代表する佳品として記憶に残ることは間違いない。
[DVD(字幕)] 7点(2023-04-19 12:05:49)
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