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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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1.  セブン 《ネタバレ》 
さながら残虐行為のショウケースだ。映像的にグロいというより想像するだに痛そうな、精神的にきつい手口ばかりを並べたててみせる歪んだ想像力には、ある意味感心させられた。事前にネタがわかっているとそう衝撃的でもないが、後半の筋書きの秀逸さは確かで、自分だったらこんな脚本は逆立ちしても考えつかないだろうと思う。  ただ、ケヴィン・スペイシーの演じる殺人犯ジョン・ドゥにはあまり凄みを感じられなかった。ハンニバル・レクターよろしくカルト宗教の教祖的な性格を持った連続殺人犯だが、レクター博士の場合は徐々にこちらの精神を侵食してくるような底の知れない恐怖があったのに比べると、ジョン・ドゥは単なる誇大妄想狂としか感じられない。会話の通じないアホといってしまえばそれまでのような気がする(こんなやつにミルズ刑事のような一般人が操られてしまうからこそ怖いのかもしれないが)。  この手の殺人者が怖いのは、単純に危険だからというだけではなく、ノーマルな側であるはずの人々が、知らず知らずのうちにその異常性に惹きつけられている部分があるからだと思う。純粋な脅威としての殺人者を恐れているのではなく、殺人者のなかに自分自身を見てしまうからこそ怖いのだ。その点、ジョン・ドゥは完全に理解の範疇外にあり、怖いというか鬱陶しい。結局お前はなにがしたかったんだよ、と言ってやりたくなった。あるいはキリスト教圏の人であればまた受け取り方が違ったのかもしれないが。  ここでの高評価につられて再見してみたものの、自分としては繰り返し鑑賞したいと思えるほどではなかった。二人の刑事が胸毛を剃りながら「乳首を切り落としたら労災が下りるのか?」なんて話をする何気ないくだりのほうが、クライマックスよりかはむしろ楽しめた。ブラッド・ピットのかっこよさを再確認できたのが、最大の収穫だろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2009-12-25 15:34:06)
2.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
今も昔も情緒不安定な女が人の気を惹く方法は変わらないのだなあ、と変なところで感心。スワンソンの熱演はもちろん(もっとも、人間というよりモンスターにしか見えないきらいはある。悲哀の滲む演技、とは言い難い)、映画全体に漂う妙な生々しさが良い。女優が行動を決めるのにやたらと占いを重視する辺り、瑣末なネタではあるがとてももっともらしい。  実は狂った女優と同じくらい、寡黙な執事が怖い。元夫でありながら執事として仕え、現在の恋路まで援助する、その奇妙な愛情のあり方が薄気味悪かった。偽のファンレターをせっせと書き続けてもいずれ破綻の日が訪れるのはわかり切っていたはずで、ほんとうに女優を守ろうという使命感があるのであれば、鳥を駕籠に入れて飼うような支配的なやり方はありえない。この映画がこんなにもリアルなのは、単に一人の女が狂うのではなく、異常なほど依存し合う関係が狂気を培養する背景として描かれているからこそだろう。  死者を語り手に置くなど、失敗としか思えない試みもあるが、いくつかの欠点を差し引いてもやはり優れた脚本だと思う。そして特筆すべきは結末のおぞましさだ。グロリア・スワンソンの怪演も、映像が滲んでいく演出も強烈。おそらくラストシーンの衝撃度だけをとってみれば、映画史上でも屈指じゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-29 22:07:12)
3.  ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン! 《ネタバレ》 
なんたるおバカ! 想像を絶していた。どんでん返しはコメディだからこそ許される力業だけど、普通にびっくりできたし、いいんじゃないでしょうか。短い時間に尋常ではない労力をかけ、ほんとうに丁寧に作られている。  さまざまなネタを片っ端からぶち込み、下手すると空中分解しかねないところを、二人の警官のシンプルな友情物語を軸に据えることで回避している。またいちいち伏線を張って確実に回収していくやり方ときたらほとんど偏執的で、ここまで来ると器用なんだか不器用なんだかよくわからない。『ハートブルー』はもちろん、白鳥やクロスワードまでそう、最後に医者が復讐にやってくるのだって銃撃戦での台詞を受けているのだろう(「医者だろ、自分で治しな」→自分で治すことができたので、逃走することも可能)。  欲をいうなら終盤のエピソードはもう少しだけ削れたと思う。最高に面白かったけれど、さすがにくどい。しかしながら一見優しげな老人達ががんがん撃ってくる絵や、スーパーマーケット内のアイテムで襲ってくる絵は最高にクールだった。  しかしまさかこんなにエグいとは……まったく覚悟してなかったので驚いた。シリアスにしたくなくてブラックユーモアを選んだのだろうが、前半を観た限りでは家族で観られるような作品だと思いかけていたので、ちょっぴり残念ではあった。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-08 01:40:05)
4.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
友人と深夜までお酒を飲んでいたりすると話題が妙に哲学チックになったりするものだ。異国で出会った二人の会話も日常生活とは違ったテンションで進み、自然と親密な空気に包まれていく。教会や墓地を巡りながら思い出話をするうちに、やがて生と死について語り合うようになる(この辺の何気ない展開が上手い!)。話題が生真面目になったと思ったら男がふざけ、ふざけすぎると女が引き戻す、まるで古い友達同士のように息が合っている。二人が打ち明ける悩みごとがまた真実味があって、とくに(自分の性別のためか)男性の吐露する心情には頷ける部分が多かった。相手が誰でもそうだが、会話が深くなるのは決まって夜明け前の、一日でもっとも静かな時間帯なのだ。  ここに描かれている出会いが永く続き得る真実の愛なのか、というと大いに怪しい。しかしまったくの偽物で、浮かれ気分に生じた勘違いでしかないと判断するのも寂しいし、フェアではないと思う。むしろ性格の異なる二人が非日常で会ったことで、本来なら成立するはずもなかった共感が生まれたのだとしたら、それはそれで素晴らしいことじゃないだろうか。「もし魔法があるとしたら、それは人が人を理解しようとする力のこと」という台詞があった。ロマンティック過ぎる言葉だけれど、自分は素直に感動してしまった。  二人が旅先ですれ違ったなんてことのない人たちが見せる、不自然ではない程度の優しさがまた良い(ただしあのエセ詩人は、自分が客の立場になったら「は?」ってなるかも)。素人俳優に占い師に詩人にダンサー、と冷静に考えると癖の強い人ばっかりだ。忘れてはならないのは初対面の旅人にツケでワインを出してくれるあのバーテン。旅先でああいう人が一人でもいると、思い出のつやがぐんと増すんだよね。  久々にいい恋愛映画を観た。それに実は、恋愛だけがテーマではないだろう。これは何よりも会話を楽しむ映画であり、言葉を交わすことの価値について、人と人のつながりについての映画だ。たとえ短い時間のことであっても、心が通い合ったことが嘘になるわけではないのだと、この作品は優しく教えてくれている。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-06 01:30:22)(良:2票)
5.  ダーティハリー 《ネタバレ》 
気の滅入るような陰惨な犯罪と、捜査のためなら手を汚すことも辞さない刑事の一騎打ち。人間の最も醜悪な部分に向き合わざるをえない刑事の悲哀が表れている。無駄を削ぎ落としたハードボイルドな作りで、かなりいい味出している。連続殺人犯スコーピオンを徹底的に卑小な男として描いたのは正解だろう。劇場型連続殺人犯としてはちょっと不自然なパーソナリティなのだが、時代を考えれば仕方がない。  事件は一応の解決を迎えるが、終始トーンは暗い。モデルになったゾディアック事件は映画以上の犠牲者を出し、迷宮入りした。当時のサンフランシスコを知っているわけではまったくないが、おそらくは陰鬱な時代の雰囲気を反映しているのだろうと思う。井戸から全裸死体を引き上げる描写など、生々し過ぎて驚くほどだ。  惜しかったのは最後にスクールバスの屋根に飛びついた場面。それまでストイックなアクションばかりだったのに、このジャッキー・チェンばりの行動で一挙にリアリティが薄まった。というか飛びついてどうする気だったんだろう?
[DVD(字幕)] 6点(2009-09-05 23:45:01)
6.  カリートの道 《ネタバレ》 
裏社会から足を洗おうとしているギャングが、時代遅れの仁義を通したがために破滅へ至る――そのまま日本の任侠ものに移し変えても通用しそうなお話。従来のマフィア映画に比べるとスケールはやや劣るものの、完成度は非常に高い。  監督が「アル・パチーノはとても美しい」、とメイキングで語っていて、普通なら笑ってしまうところなのだが、実際そう形容するほかない、尋常ではない雰囲気があった。ダンディとかセクシーとかいった表現では遠く及ばない、独自の空気を放っている。パチーノの他の出演作ももちろん良いが、この映画ほどその存在感が強烈に印象付けられたことはなかった。反対にショーン・ペンは髪型のせいもあって、アップでじっくり見ないとペンだということが納得できない(笑)。別人と見紛うほどのゲスぶりは、違う意味でお見事。  デ・パルマ節全開の駅の銃撃戦も面白かった。さして大掛かりなアクションがあるわけでもないのにサスペンスフルで、監督のキャリアの中でも最良の仕事ではないかと思う。『アンタッチャブル』でも同じく駅の階段を舞台にしたアクションがあるが、比べ物にならない出来だ。もう一つのクライマックス、パチーノがドアを破って恋人を抱くまでの下りも素晴らしい。  ただし深い感動までは至らず、7点に留めた。その理由の一つは、カリートの通そうとする義理が美学というにはあまりにも浅はか過ぎた点。つまらない意地を張ったとしか思えず、いまいち肩入れできない。もう一つは、物語そのものがあまりにも素朴に感じられたこと。わかりやすい単純な筋書きを、いかにも感傷的に描いている。お涙ちょうだいの演出は、悪い意味でも「任侠もの」的だ。だから悲劇であるにも関わらず、痛みが尾を引かない。切実さがない。  隙のない作りではある。だが自分の中では忘れ難い作品、とまでは言えない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-01 13:04:48)
7.  M:i:III 《ネタバレ》 
スパイものというよりは『ルパン三世』の実写版を観ているかのよう(途中カリオストロまで混ざってたような?)。橋での攻防戦までは、けっこう面白かったのに。ホフマンは爬虫類じみた不気味なオーラを放っていてさすがだが、脚本は彼の個性を充分に生かし切れていない。ヒーローが最強過ぎると安心して観ていられるのが難点だ。まさか脳に爆弾を埋め込まれて根性で立ち上がるとは……。  もっとも、「ポップコーンムービー」としては水準に達していると思う。マギーQのドレスがめくれた瞬間、多少の欠点には目をつぶろうと思った。
[DVD(字幕)] 6点(2009-08-27 22:44:15)(笑:1票)
8.  その土曜日、7時58分 《ネタバレ》 
凝った構成で、最後まで画面に釘付けにされたが、終わってみると大まかな展開としてはよくある破滅型ノワールなのだった。展開に意外性を持たせようというのでなく、薄皮を一枚ずつ剥ぐように犯人達の動機、背景にある捩じれた家族の関係を顕わにしていくための構成だと思われる。犯罪ものの三大興味は「犯人」・「方法」・「動機」であるとされるが、他の二つがどうあれ「動機」に焦点を絞ったのは手法としてはありだろう。このジャンルに家族関係を絡めてきたのはとても新鮮だったし、ただのサスペンスには終わらない厚みのあるドラマとなっている。  原題はおそらく最後に父親が息子を殺害するときの心情を指しているのだろうと考えると、ひどく痛ましい気持ちになる。光の中に消える父親の姿は、彼自身もまた自殺するか、あるいは半ば廃人のような余生しか送れないことを暗示しているのだろう。兄に銃口を向けられてもそれを受容してしまう弟の表情もまた切ない。家族間の葛藤というのはこういうものだ。憎んでも憎み切れず、かといって許したくとも完全に許すこともできない。  ホフマンが父親に「見た目が可愛かったから」弟を贔屓したんだろうと詰め寄る下りは、妙にリアルだ(まったく平和な家庭に育った人であればそんなバカなと思えるかもしれないが、実のところ児童虐待と子どもの容姿とは関連がないとはいえない)。殺人の描写もそうだが、この映画の中の暴力はシュールといっていいほどあっけなく、それだけに残酷さが際立っている。父親が車をパトカーにぶつける場面で思ったが、ルメット監督はもしかすると北野武の影響を受けたのかもしれない。アメリカの作品にしては驚くほどストイックな表現だ。  キャスティングが功を奏していて、名のある俳優陣でありながら皆いい意味でオーラを抑えていた。生活に行き詰った平凡な人間としての生々しい存在感を放っている。とくにフィリップ・シーモア・ホフマンは巧みで、そんなわけはないのによく似た無名の素人を引っ張ってきたんじゃないかと思えるくらい自然だった。唯一、マリサ・トメイが浮いていたかもしれない。美人過ぎるよ、この人(44歳?!)。   それにしても、必ずしもここまで入り組んだ構成にする必要はなかったのではないか、という疑いは拭い切れない。伏線が噛み合う下りも、つじつま合わせ以上の意味が読み取れない場合が多かった。パズルのピースが嵌るような感動がなく、単に混乱を避けるために描写をくどくしたという感じなのだ。サスペンスとして優れているのは事実なので小手先だけの工夫ではないと思うのだが、必然かといえば微妙なところだ。とはいえこれだけのものを観せてもらえたのだから、減点は控えておく。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-27 21:48:23)(良:1票)
9.  スペースバンパイア 《ネタバレ》 
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい! の一言で終わらせようかと思ったのだけれど、せっかくだからちょっとだけ真面目にレビューしておく。このタイトルに真面目にレビューした時点で負けのような気もしますが。  『エイリアン』の脚本家、原作コリン・ウィルソン、音楽にH・マンシーニと錚々たる面子を揃えながら、なぜにここまで安っぽい代物ができてしまったのか? (まあ問うまでもなく監督のせいかなって思うけど)。科学考証無視のおバカSFなのにおふざけで作っているという雰囲気でもなく、恐ろしく力が入っているのが異様な印象。根本的なアイディアがでたらめなのにすごく真面目に作られていて、ロンドンが壊滅する映像なんて無駄に迫力がある。  百歩譲って設定の緩さを許すとしても、これほど主要登場人物をないがしろにした脚本は珍しい。人間ドラマを描けとはいわないけれど、普通は申し訳程度にでもキャラ付けするなり、人間味を与えようという努力が見られるものだが、一切ない。しかも主要俳優陣が信じられないほど地味な顔ぶれ(マチルダ・メイを別として)。それでいて荒唐無稽な出来事が次々と起こる展開にはスピード感があって、案外退屈はしないのだから不思議なものだ。  加えてこれも独特だなと感じたのは、ユーモア感覚の欠如。普通なら作中でおちゃらけた脇役が「お前SF小説の読みすぎなんじゃねえの?」と突っ込むなりして相対化するのが定石だが、そうした台詞が一切ない。それどころかこの滅茶苦茶な事態を誰一人として疑わず、終始大真面目なテンションで乗り切っている。もちろんコメディにする必要はないのだが、これではかえって作品全体がギャグになってしまう。(唯一精神病院で女を尋問する際の「わたしは見るのが趣味なんだ」、という台詞がユーモアっぽかったが、その前の「この女は究極のマゾヒストだ…!」が意味不明すぎてそれどころでない。)  そしてなんといってもマチルダ・メイ。金髪碧眼のplaymate的なステレオタイプだったなら大して印象にも残らなかったろうが、彼女のような容姿はむしろ日本人向けと思う。皆さん冗談半分で言及していらっしゃるが、発表から四半世紀が過ぎたB級映画のヒロインがほぼ満場一致の支持を受けるというのは、それはそれですごいことだ。彼女の魅力がこの映画全体を食ってしまったのだから。ウィキで調べたらコンセルヴァトワールを首席で卒業した方だそうで、なんというか……出演作選べよマジで……。(他の出演作を確認したら『おっぱいとお月さま』だった。気の毒に、この映画でイメージが固定してしまったらしい。)  総じて、稀に見るアンバランスな作品だ。この映画では幼稚さと拙さと、成熟した技術と真剣な情熱、傑出した魅力の女優と地味すぎる出演者たちとが一緒くたになっている。真剣に論じるのは気恥ずかしいが、駄作といって斬り捨てられるのも多少気の毒な、なんとも困った作品。
[DVD(字幕)] 7点(2009-08-27 21:32:32)
10.  ジャージの二人 《ネタバレ》 
原作が好きだったのもあってちょっと敬遠していたのだけれども、ちゃんと面白かった。筋書きを忠実に辿るだけだけでなく、原作に漂う独特の空気感までもがきちんと再現されている。これは案外難しいことだと思う。二人の俳優の力、気を使われているが凝り過ぎてはいない映像、どこを取っても絶妙の匙加減だ。  真横で暮らしていても人のことはわからない。しかしまったくの孤独というわけでもなく、緩やかに繋がっている。各々で好き勝手しつつ、縛り合うわけではないが、たまになんとなく歩調を合わせてみたり。濃密で親しい間柄よりも、これぐらい緩い方が心地良く、自然なのかもしれない。  特定の場所に行って妙ちくりんなポーズでも取らない限り着信しない携帯電話、あれがこの作品を象徴しているように思う。しかし『二人』が『三人』になっただけでちょっとがちゃがちゃしてしまうのだから、人間関係というのはどうにも煩わしいものだ。『一人』でも割かし居心地が良い。だからこそ『二人』にも成れる。  心配が的中して地味なわけですが(笑)、大満足です。長嶋ファンである分贔屓目に見ているかもしれないけれど、それにしてもよくできていると思う。
[DVD(邦画)] 8点(2009-08-17 21:10:31)(良:1票)
11.  ウォレスとグルミット/ペンギンに気をつけろ! 《ネタバレ》 
よくできている。ただし可愛いと感じるツボと微妙にずれていたのと、クレイアニメにさして思い入れもなかったのもあってか、めちゃくちゃ面白いとまではいかなかった。他のレビュワーさんがおっしゃっているようにシリーズの初めから追っていれば、もっと楽しめたのかもしれない。憎めない悪党ペンギンを動物園に閉じ込めておしまい、という結末は大変微笑ましい。  それにしても英米の漫画やアニメの主人公って、クライマックスが近づくとかなりの確率で敵の策略にはまって孤立しますね、ひどいときは無実の罪を着せられたりして。あとで盛り返すとわかっていても可哀そうで、この手のパターンはちょっぴり苦手です。
[DVD(字幕)] 6点(2009-08-17 20:08:23)
12.  ユンカース・カム・ヒア
よくできてはいるけれど、飛び抜けたところがない。可もなく不可もなく、というのは言い過ぎかもしれないが、いかにも文部省選定といった感じの無難な内容。  もっとも、地味なお話をここまで完成度の高いアニメーションに仕上げたのは確かな実力の証だとは思う。両親の不和に悩む女の子の心情描写には説得力があって、これといった捻りや目を見張る工夫は無いのにも関わらず、それなりに感動させられた。犬も愛らしく、記憶に残る。  しかしいかんせん、物語に拡がり、奥行きがない。とくに脇役が薄っぺらく、お手伝いさんのとってつけたようなおとぼけキャラといい、人物配置の卒のなさが鼻についた。小学校の授業で観せられたいくつかのアニメーションと同じで、まずまず面白いのだけれども、お気に入りの作品にはなりえない。そうなるには、お行儀が良すぎる。  一流のコックが二流の素材を使って料理して、できあがったのがこの作品だと思う。非常に惜しい、佳作。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2009-08-16 23:16:40)
13.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
入念に作りこまれた映画だと思う。構成は徹底的に考え抜かれていて、情報量も多い。夫婦の生活と有名事件の裁判を交互に語る形式で、微視的・巨視的に90年代を切り取ってみせたのはちょっとあざとくも思えるけれども、確かに成功している。年代もきちんと提示されるが、女性のファッションを見るだけで時代がわかる描写の細やかさはさすが。風呂場で椅子から落ちてごつんと音がするところとか、リアリティうんぬんというかもう、生々しくて肌に伝わってくるようだ。  女は子どもを失った罪悪感から会社を辞め、男はなにごとにも辛抱強く、自分を納得させるための涙は絶対に流さない。英題を見ると「ぐるり」は二人を取り巻く周囲の状況を指しているようだが、逃げそうで逃げない、遠回りしているようで実は真摯に現実と向き合っている二人の生き方もまた「ぐるり」なのではないか、と感じる。というか安易な答えに飛びつかずに(あのうさんくさいベストセラー作家に抱きつく変人みたいに)、生きることに真摯でいようとするとするなら、回り道せざるをえないのかもしれない。  ただ、これほど見応えのある作品も珍しいが、正直いって内容を消化し切れなかった部分もある。割と爽やかに終われそうだったのに「継母ぁ!」を入れてきたのにはびっくりした。それに巧妙な構成が仇となって、ときどきものすごく冷静になったり、展開そっちのけで考え込んだりしてしまい、肝心な夫婦のドラマを遠巻きに眺めていた感がある。なのですごい作品とは思うけれど、感動の度合いを正直に書くと7.5点くらい。繰り返し観れば、いろんなことが腑に落ちるのだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-09 22:38:00)
14.  ロスト・チルドレン 《ネタバレ》 
すごい。大勢のサンタクロースが現れる悪夢のプロローグから一気に惹き込まれた。ちょっとやそっとの秀逸な発想がある作品は珍しくないが、本作は最初から最後まで、散りばめられた小さなアイディアのひとつひとつが光っている。  おそらく作り手は、長い年月をかけてコレクションしてきた心のなかのおもちゃ箱をひっくり返して、「ほらほら面白いでしょ」と自慢してみせたかったんじゃないだろうか。それは独りよがりなマニアの自慢に近いものだが、そのコレクションがほんとうにユニークで素晴らしいものだったなら、自慢された側としても文句のつけようがない。  最大のピンチを幸運で乗り切るくだりには笑わされた。普通の作品なら怒るところだけど、ここまで確信犯だともはや突っ込みようがない。イメージを優先して内容を充実させることははなから放棄した、おとぎ話のようなでたらめさ。こんな片寄った方法論で充分以上に楽しませてくれるのだから、逆にすごい。これほど個性的な才能は稀有だろう(なので、趣味が会わない人はとことん合わないはず)。それでいてストーリーはテンポがよく、アート志向が強すぎて退屈ということもない。役者は最大限に個性を発揮しているし、ラストシーンは洒落が効いていて鮮やかだ。  とりわけ個人的に感銘を受けたのは、ミエットが夢の世界で敵の親玉と対決し、急速に老いていく容赦の無い映像。ミエットをあれだけ魅力的に描写しておいてのあれだ。居心地がいいだけのファンタジーに終わらず、美しさと隣り合わせの残酷さ、絶望を垣間見せる。けっして後味の悪い話ではないが、物語の舞台となる世界には犯罪が横行し、映像は常に暗みを帯びている。ディズニーのような真っ当な明るさとはまた違う、陰鬱な美しさのある作品といえるだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2009-08-08 16:59:56)(良:1票)
15.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
やはり宮崎駿作品は、なにはなくとも絵を見てるだけで面白い。細密な海の生き物たちの描写から、一転して絵本のように単純で素朴な絵が出てきたりする、手書きならではのダイナミズムが楽しい。ワーグナーの音楽(『地獄の黙示録』……)とともにポニョが津波の上を駆けてくる場面は戦慄ものだ。冷静に考えると嵐の夜に女の子が海上を走って追いかけてくるのだからちょっとしたホラーだが。半魚人状態のポニョはクトゥルー神話の住人にしか見えなくて、けっこう怖い。  また津波シーンと並んで感じ入ったのは、ポニョが宗助の家を訪れた際の一連の牧歌的なやりとり。ごはんがおいしそうなのはいうまでもないが、安全に保護された状況で、幼い子どもが日常のささやかなことごとをたっぷりと享受する、あのぬくもりに満ちた情景の描写が素晴らしい。  ジブリがプロの声優を起用しないのは話題作りというよりは素人俳優を使いたがる映画監督と同じで、演技らしくない生っぽさを狙っているんじゃないだろうか。単に宣伝目的ならもっと旬の人気者を採用するはず。声優って上手いけれど割とオーバーアクトだし、人によっては人工的過ぎる声音だったりもするから。本作の芸能人の声優起用がすべて成功しているかどうかはともかく、ポニョと宗助を務めた子役陣は文句なしに良かったと思う。前の木村拓哉だって良かったし、個人的にはそこまで目くじらを立てて批判しようとは思わなかった。
[DVD(邦画)] 8点(2009-07-28 23:20:21)(良:1票)
16.  殯の森 《ネタバレ》 
以前真夏のある日に、神社の脇の林に囲まれた広場に入ったことがある。木の枝が広場全体を天蓋のように覆う、嘘のように涼しい場所だった。一陣の風が通り過ぎて草木がいっせいにざわめいた瞬間、なぜか鳥肌が立った。スピリチュアルなんとかの類は苦手なのだが、あのときばかりは深遠な雰囲気というか、何か得体の知れない存在に対する畏怖のようなものを感じずにはいられなかった。  この映画にはそんな気持ちを呼び起こす森林の風景が捉えられている。それも単に映像を撮っているというだけでなく、澄み切った空気の味や、植物や土の匂いまで伝わってくるような、生々しい臨場感がある。現実に疲弊した女性が認知症の男性を案内役に森を彷徨い、やがて言葉を超えた境地に辿り着く。わかりやすくオカルト的な要素は登場しないが、アニミズムやシャーマニズムを体現している稀有な映像作品だ。原初的な宗教体験、悟りの瞬間を説得力をもって描き出している。自然のなかの神様を感じさせる作品といえば宮崎駿監督の『となりのトトロ』ぐらいしか思いつかないが、あれとも全然違う。類のない作品じゃないだろうか。  ただ、海外でこういった作品が評価されるのは素晴らしいこととは思うけれども、欧米の方は日本文化について極端な評価をしがちなのも確かだと思う。日本人からすると深みが足りない、安っぽいと感じる部分があっても、あちらでは異文化万歳といった感じで簡単に見逃されてしまう。ありがたいことではあるけれども、ときには「その漢字Tシャツ変ですよ」と言ってあげたくなることもある。たとえば本作でいえば前半の日常描写がぎこちないし、服を脱いで肌を寄せ合う場面などにはあざとさを感じてしまう。リアリティを出そうという意図がみえみえで、リアルを超えて無骨な感じがする。  実は鑑賞直後は4、5点にしようと思っていたのだが、観て損をした感はなかったので点を上げた。普通の意味では退屈だが見入ってしまう、なんとも不思議な作品。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-26 19:02:49)
17.  ゆきゆきて、神軍
これ、私刑ですよね? この奥崎という人の行為は犯罪ですし、暴力を制止せずに撮影するのも普通に罪だと思うのですが……私の感覚がおかしいのでしょうか??   おそらく作り手は撮影対象に手出しをしないドキュメンタリー精神みたいなもので自分達を正当化しているのでしょうが、現実に人間を傷つけるのが許されるほど、表現の自由って尊いものですか? ムーアがこの作品を好きらしいのですが、やはり目的のためなら手段を厭わない人なのでしょう、残念です。ほんとうに危険なのは左翼でもなく右翼でもなく、己の正しさを信じて疑わない傲慢さにあるのだと思います。  奥崎氏に同情する向きもあるようですが、いくら悲惨な戦争体験があったとしても、それで犯罪が正当化されるわけではありません(大量殺人者はたいてい幼児虐待の過去があるがそれで無罪にはならない)。パチンコで天皇を狙うなんてくだらないパフォーマンスでしかないし、この映画の出演後には殺人事件も起こして、出所後はなんとAVに出演している。ある意味ではとても気の毒な方ですが、こんなヤバイ人を美化しないでほしい。  実はこの作品の本質は、狂人の放つ異様なエネルギーが観る者を惹きつけているだけで、戦争映画うんぬんは付け足しに過ぎないんじゃないか、という気すらします。  あと、同じ題材の小説(古処誠二の『アンノウン』)を読んだことがあるのですが、そちらの著者は犯罪を犯していませんが、充分衝撃的で、非常に重い作品でしたよ。それどころか著者は実際の従軍経験者から感謝されていました。わざわざこんなキワモノ映像を撮る必然性はまったくなかったのです。  たとえば『バトルロワイヤル』のようなフィクション内の残虐な殺人は批判されるのに、ノンフィクションの地味な暴力が見逃されるのって、とてつもなくバカげてると思うのですよ。これは現実の暴力。盗撮映像を利用したAVが許されないのと同じ理由でありえません。基本的に0点は付けないことにしているのですが、これに関しては採点放棄の意味で0点です。表現の自由以前の問題でしょう。
[ビデオ(邦画)] 0点(2009-07-23 14:30:16)(良:3票)
18.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 
「数奇な人生」とは逆説的な題名のつけ方で、実際にはとてもありふれた人生の悲喜を描いているように思う。より正確にいえば、特殊な人生だからこそ普遍的な人生の意味合いが象徴的に浮き上がって見える、といったところだろうか。  体が幼くなるとともに認知症が進行し、人の世話を受けなければ生きられなくなるのは、なにも赤ん坊の姿にならなくともありふれたことだ。老いるに従って身も心も子どもに近づいていくベンジャミンが「なにも思い出せない」と嘆くのを、デイジーは「それでいいのよ」と抱きしめる。人は死ぬと生まれた場所に帰っていく――と言葉にしてしまうと陳腐だけれども、“老い”というものを描くのにこんな手法があったのかと非常に感心させられた。  デイジーが事故に遭う直前の状況の推移を丁寧に追っていたのも良い。「あそこでああしていれば今頃は」という誰でも抱いたことがある後悔の念を、丹念に、繊細に拾い上げていく。ささいなことの積み重ねで人生は決定的に変わる。ときには知らないうちに選択がされていて、あとから取り返そうとしてもどうにもならない、大きな流れがある。もっとも映画全体を通して感じられるのは一瞬一瞬をいとおしむ穏やかな慈愛の気持ちであって、けっして負のトーンが強すぎるということはない。  ラストに登場人物をさらりと振り返って、なにか教訓めいたことをいうのかと思いきやそのままエンドロールに突入する、あの控えめさがまたいい。終始美しい映像だが、わざとらしい作り込みもなく、押し付けがましいドラマもない。いわゆる“泣ける映画”ではない分、切なさがいつまでも後を引く。
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-22 14:14:11)(良:2票)
19.  隠し砦の三悪人 《ネタバレ》 
明確に色分けされたキャラクターといい冒険の旅に出る物語といい、まるで現代の少年マンガのようで、リメイクされた理由がわかったような気がした。プロットよりまずキャラクターの魅力ありきの展開で、その意味ではとても現代的なのだ。雪姫なんかは演技がどうこうではなく印象に残るし(あの声!あの太もも!)、真壁六郎太は文句なしにかっこいい。百姓二人組が少しでも山場で貢献していればプロットとしてはもっときれいだったと思うが、ここまでダメダメだとかえって忘れ難い。  尺は明らかに長すぎ、しかも強引すぎる。けれども冒頭の大脱走シーンの力のこもりよう(本筋とは直接関係ないのに)から、瓦礫の山登りや長時間に渡る槍での決闘など、最近の映画なら絶対ありえないような描写が、なんだかとても楽しい。とくに馬を使った見せ場のスリルは類を見ない素晴らしさだ。三船敏郎の殺陣のかっこよさは知っていたけれど、これほど力強さを見せつけられたのは初めてかもしれない。脚本は洗練されていないが、その分でたらめにエネルギッシュで、なんとも野蛮な魅力があることは否定できない。『七人の侍』や『椿三十郎』に比べてしまうとどうにも苦しいけれど、充分面白い作品だと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-21 01:31:03)
20.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
ラストシーンで絶句。けっして暗い話が嫌いなわけではないが、これほど突然にまったく救いのない結末を差し出されるとは思いも寄らなかった。クラクションの音が響き渡り、遅れて少女の金切り声が響くあの流れは文句なしに劇的であるとしても。  若き日のジャック・ニコルソン演じるギデスの、レトロではあるけれど頭の切れの良さを感じさせる捜査方法が面白い。回転の速さとすぐさま行動に移る決断力が凛々しくて、美形俳優とはまた違った渋味がある。くしゃみに被せて紙を破く音を隠したのには痺れた。賢いというよりは狡猾という表現が似合っている。  好きか嫌いはともかく、ハードボイルドものの映画としては知る限り最高の水準だと思う。ロス・マクドナルドを思わせる陰惨な雰囲気で、オリジナル脚本だというから感心した。  でも、狙いがあってのこの結末なのだろうとは思うけれども、感じ入るより唖然としてしまったというのが率直なところ。これほど邪悪な敵役が登場して、しかも完全に勝利するとは……。結末の衝撃が鳴り止まないクラクションのようにいつまでも尾を引いている。それが監督の狙い通りだとしても、なんだか得心が行かない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-14 08:38:59)
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