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1.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
 それまで怪獣バトルの映画シリーズとしてしか、ゴジラを知らなかった私は、今から約30年前、高校を卒業した頃にやっと、これを見て驚いた。怪獣映画ではあるが、一般のパニック・サスペンス映画として、たいへん優れていると。   発端の事故から、次第に事の真相が明らかになってきて、その正体を現す厄災。船なんか3回も沈められて、まだ姿を現さない。この焦らし方、ゾクゾクさせるやり方は、サスペンスの定石だ。どう結び付くのかわからないサイドストーリーが、解決に結び付くさま。そして、何と言ってもゴジラの銀座での大暴れ。俯瞰のショットを巧く使っているとはよく言われることだが、もう一つ、計算ずくなのかどうか不明だが、黒つぶれで、全てをくっきり見せるわけではない画面、それによる恐怖。実に見事なパニック映画だ。  そして、ゴジラが評価されている最も大きな理由、ゴジラの精神的柱とも言える、核兵器への批判、反戦・平和への主張。長崎から逃げてきた女や、戦争によってお父さんを失った家族などを巧みに描写して、戦争・原爆の記憶を引き出し、その恐怖とダブらせて、巨大生物を見せる手管。全く見事だという他ない。 【訂正】俯瞰ではなく仰観でした。
[DVD(邦画)] 9点(2012-10-31 22:54:00)(良:2票)
2.  水戸黄門(1957) 《ネタバレ》 
普段、テレビドラマなどあまり見ず「水戸黄門」も大昔の東野英治郎版を数回見ただけだ。 で、今作の黄門様は正体を明かす時の「どうだこのヤロ」というカタルシスが凄く薄い。そういったシーンはあるが、これが印籠ではなく自身の地味な説明で、相手も下っ端の役人風情で、しかも「このことは黙っていなさい」だって。それで事が進むのもすごい。最後の最後に高田藩士たちが、今まで敵と認識していた自藩の悪官僚の敵討ちとして、黄門たちと関根先生まで討とうとするのは、ちょっと理解できない。何か解釈し間違えているのだろうか? でもまあ、総じて面白い時代劇だった。ずっと見ていたい、勧善懲悪。ずっと作られ続けてほしい社会風刺の物語。そういったモノを最近見ていない気がする。
[DVD(邦画)] 8点(2018-08-04 15:14:58)
3.  地底探険 《ネタバレ》 
 たまにはこういう、荒唐無稽だけどなーんも考えずに見て楽しめる映画もいいものだ。  まあ、今考えるとコアだのマントルだの考える前に、地球の真ん中まで空洞が続いているってのが強引な発想だが、こっちはマグマライザーが地中を掘り進めるのを傍から見えるセンスで育っているので、問題なし。  それより、美しい鉱石の洞窟や、きれいな泉、謎のキノコの森(いきなり食うのは危険すぎるけどね)、地球の中心の海、果ては昔沈んだ古代都市など、唯々楽しい。  帰って来る時だけは、流石に突っ込みたくなるが(みんな炒まっちゃうだろ!)、最後の演説が素晴らしい。「証拠も記録も無いことを主張はできない」。正しい科学の精神である。
[DVD(字幕)] 8点(2017-11-02 12:26:42)
4.  七人の侍 《ネタバレ》 
 ちょっと長かったがその分、武士と百姓のそれぞれの事情や、いきさつなどの描写が十分で面白かった。実際の戦のシーンはちょっと長すぎる気もするが、侍たちが半分やられちゃうには、充分な時間をかけないと不自然だものな。意外だったのは、ポスターにも大きく描かれている菊千代が、大した手柄も立てずにやられちゃうことだが、これは重大な意味を持っていると、私は考えている。  ちょこっとだけ気になるのは、武士たちが村を守る事になってから、百姓たちが兵隊になるところが唐突に映る。結局は兵隊がいないと戦えないとか、自分たちで戦わなければ村は守れない、とか言うシーンはあって然るべきだと思う。   さてしかし、最後に志村喬が言ったように、本当の勝者は百姓たちだ、と言うのは興味深い。彼らは、自分たちでも少しは戦うが、戦いの主導と主戦を、侍たちに依頼している。  戦いを他人に頼んで安全を確保する。長老の知恵は、現在の日本の知恵だ。それは数百年先んじていた知恵だったのか、現在の政策が数百年遅れているのかは分からぬが、今日本は自ら侍になるべく動き出している。  菊千代の死の意味は重大と前述したが、百姓から武士になった彼のように、日本がならねばいいのだが……。
[DVD(邦画)] 8点(2013-05-21 15:00:53)
5.  王様と私(1956) 《ネタバレ》 
 オリジナル版、各種再演版、サントラ版、、スタジオ録音版、はては日本公演版まで、様々な王様を聴き比べてみても、やはりユル・ブリンナーの王様は、ずば抜けている。個人的にはブリンナー再演版の、ラストの次世代王の誕生のシーンが大好きだ。   この映画を見て、白人優越主義などとは、思わない。アンナ先生はそんな事は言ってはいないし、制作側だってそう思っているとは思えない。彼女は「人は対等だ」と、直接は言っていないが、王様に対して他の家臣のようにひれ伏したりしない態度で示しているだけだ。一方、自国の近代化のために、教育から始めようと考えた王様もスゴイ。  そういう意味では、アンクル・トムの劇中劇が実に素晴らしい。奴隷制度という非人権的な制度を批判したこの劇は、同時に先生に習った知識のおさらいになっている。アンナ先生のもたらしたものの成果として、ここをゴールと目指した物語にしても良かったくらい。  だが、物語はもっと先へ進み、名曲『Shall we Dance?』を聴かせてくれた後、クライマックスへ。思えば、シャム国を近代化する、という手段に教育係を呼んだ意義が実を結ぶ瞬間だ。人が乗れるほどの氷、雨が凍って降る雪、それらを信じない子らを叱責した王様が、自身の考えと違えども、新しい王の考えを支持したこのシーンは、子供たちだけでなく、王様をも変えた、実に感動的な場面だ。これはシャム近代化に対する、アンナ先生のみならず、王様の勝利でもある。だから、私はこのシーンが大好きなのだし、だからこそ、様々な録音盤で、このシーンが収録されているのだと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-03 01:08:19)(良:2票)
6.  ベン・ハー(1959) 《ネタバレ》 
 ジュダ=ベン・ハーが、復讐を果たすまでの波瀾万丈なさまは、本当に面白かった。ガレー船による海戦も、馬車レースも迫力があり、手に汗を握った。そりゃあ、もう8点を付けるだけの面白さだ。  しかし、この物語はイビツである。ジュダは、復讐を遂げた後に、イエスの磔刑を目にして、その教えに心奪われたように描かれる。物語の主題もおそらくそこにある。だが我々はすでに、騎馬戦の勝利と復讐の成就に感情を移入し、大いに溜飲を下げた直後なのだ。ここから「汝の敵を愛せよ」に涙するには、相当な、それこそ宗教的な説得力がないと難しい。元々キリスト教の素地がない普通の日本人には、もっと、ジュダの考え方を根本から突き崩すような、そういうエピソード、そういった描写が必要だったろう。  イビツと書いたのは、ジュダの復讐の成就までと、その後のイエスの奇跡に涙するまでの物語のバランスの悪さと、彼の心の転換部分の判りずらさだ。しかし考えてみると、これは、聖書における旧約と新約のそれに近いのかもしれない。もしかして、これは、一人の人間の人生を使った、聖書そのものだったのだろうか。
[DVD(字幕)] 8点(2012-10-28 13:18:00)(良:1票)
7.  二十四の瞳(1954) 《ネタバレ》 
この映画を見ると、唱歌というものの美しさを、しみじみ感じる。  そして、浜辺の歌の歌詞がなんと物語に合っているかと驚いたものだが、今回調べてみて知ったのだが、この歌には3番目の歌詞があって、それがまた実に物語のラストに沿っている(*)。このみごとさは、童謡『赤とんぼ』のイントネーションと音階がちゃんと合っている凄さ、という話を思い出させる。  そして、映像的にも、美しい風景はモノクロでもちゃんと美しいんだなあ、とアタリマエのことだが思う。電車ごっこのシーンの桜の美しさは、後のカラー映画を含む、邦画の中でも屈指だろう。 *:(自分解釈)  
[DVD(邦画)] 8点(2012-08-04 04:32:52)(良:1票)
8.  シェーン 《ネタバレ》 
 日本の昔が侍だけの世界でなかったように、アメリカの西部開拓史というのは、ガンマンだけの世界ではない。むしろ、農地開拓の歴史が、アメリカを西へ押し広げたのだという。この映画は、最後に悪漢をカッコよく倒して、颯爽と去ってゆくガンマンをヒーローとして描いているように言われるが、実はその大半が、自ら耕す農民の正義と、新旧の世代の戦いを描いている。  シェーンは自分が銃で物事を解決する時代の側の人間であることを自覚して、それから抜け出そうと農民の社会に生きようとするが、結局は辺境の治安維持の不備によって、力を行使せざるを得ない状況に陥る。  彼がカッコイイのは、自らを傷つけながらも、新世代を無垢のままに守ったからだ。スターレットを直接守ったのはもちろんだが、その目の前で人を殺してしまったジョーイ少年を、銃の世界に引き込まぬようにか、一家の前から去るその潔さ!  それにしてもライカー、インデアンから土地を守ったという、彼の言い分にも一理あると思ったが、やり方がダメすぎたな。  【追記】  何でもWikipediaによれば、ラストシーンに関して、シェーンの生死の議論があるそうで…。そう言われてみると、ラストのシェーン一人のカットは、モノクロかと思うほど色調も暗く、死を暗示させる。が、シェーンは馬を操っているし、何よりこれがシェーンの死を表現しているとしたら、わかりずら過ぎるし、悲しすぎる。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-24 01:43:29)
9.  情婦 《ネタバレ》 
 ラジオ番組で、戸田奈津子がオススメしていたので鑑賞しました。  弁護士が被告の無罪のために、妻を追い詰めていくのが、被告へのダメージになっている、という構図になっていて、皮肉で辛い裁判劇なのだな、なんて思っていた。その後の見事などんでん返し(しかも二重)で、気持良く騙されて、ミステリの醍醐味を味わった。戦時下に恋人を待つ歌で有名なデートリッヒが、ここで歌う歌のあまりの内容に苦笑。  そう言えば、妻を「名女優」と言っていたのに、回想シーンではタダの酒場の歌うたいだったのが、気にはなったのだが、それ以上の考えは及ばなかった、というのは、悔し紛れの言い訳か。  検察側の証人という題も、どんでん返しの後には、なんともひねりの効いたタイトルだと思った。そう考えると、もう一つ仕込まれたどんでん返しである「情婦」というタイトルもまた、見事な邦題だと思う。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-18 22:56:09)
10.  海底二万哩 《ネタバレ》 
 1868年という設定が凄い。南北戦争が終わってちょっとの頃の話。と思ったら、原作自体1870年の作品だそうで、まあ凄い先見性である。アメリカではリアルに西部劇の時代に、まさか原子力を予見していたのではないだろうが、科学技術の危険性と、それが愚かな人間社会の有りように掛かっていると、警鐘を鳴らす物語は、驚嘆すべきものがある。そういえば、BTF3で西部劇の時代の教師が、ジュール・ベルヌの話をしてたっけ。   映画自体は1954年作、原爆から9年後。原作の方は未読でよく判らないが、映画版ノーチラス号は、明らかに原子力船で、島の爆発もきのこ雲。ディズニー映画だけあって、さすがに核兵器を使いはしないが、この圧倒的に強大な技術を以って、軍艦を沈めている天才科学者・ネモ船長は、もはや神の立ち位置だ。  捕らえられたフランスの学者は、人を殺していることに変わりはない、と彼を責めるが、その技術を悪用させないと言い張り、それを欲する。この人を見てゴジラの山根博士を思い出した。学者って時として無自覚に罪深い。  「怪物」と思われていたノーチラスに、本当の怪物が襲うのは、興味深い展開だが、生き物が鉄の塊を襲うのは、リアリティにかけて、ちょっと萎える。この事件で、人の善意を知ったネモ船長だが、結局最後まで彼は、人類の善意を信じられずに、船と運命を共にする。先の学者も、記録を失った事について「これで良かったのかも」と、国家不信。直前に、仲間をも標的にした軍を、見たからかも知れないが、ちょっとダークな終わり方だ。これが当時の人々の世界観なのだろう。   特殊映像的にも、このあたりの時代は「日本の円谷特撮が世界をリードしていた」と、ずっと聞かされていた者として、「そんな事無いじゃん」と素直に思えた。カラー作品としては、この映画のほうがリアルで、同時期に東宝が作っていたのが「ゴジラ」で、初のカラー作品は2年後の、ミニチュア感丸出しの「ラドン」である事を考えると、結局総合的には、昔からハリウッドの方が、見せ方上手かったんじゃん、と思った。 
[DVD(字幕)] 8点(2011-10-22 03:31:58)(良:1票)
11.  真昼の決闘 《ネタバレ》 
 アメリカという国は、良くも悪くも、社会というものは治安も含めて市民が作るんだ、という事が基本なんだな。もちろん、実話ではないんだろうが、こういう精神構造が町を作り、州を作り、国を作ってきたのだろう。だから自衛のための銃所持も当然。まっ、それはそれとして。  そういった治安観から、西部の町では、犯罪者を自警団が私刑してしまう事もよくあったと聞く。この町の人達も、どうみても理不尽な悪漢の襲来という事態に対して、どう対処するか議論になるが、結局相手のターゲットが保安官一人なのを良い事に、我関せずを決め込んでしまう。社会の構成員が、社会の秩序維持を辞めてしまった瞬間だ。  保安官は、自身の問題として決着を付けなければ、先へ進めないため、これに立ち向かうが、事が終わった後には、バッジを捨てる。当然だ。町が町を守る意思を捨てたのだから、保安官も要らないはず。  蜘蛛の子を散らすという言葉があるが、その真反対を見るように、銃撃戦の後ワラワラと集まる市民を見ると、一見、保安官の正義と職責を貫く映画のように見えるこの映画が、私には、実はこの社会の有り様というものを描いているように見えて仕方がない。これでいいのか?と問いかけているように。  ところで、だれも味方のいない立場で悪に立ち向かわざるをえない、というシチュエーションは、アメリカ映画の大好物だったなあと、思ってみたりもする。 
[DVD(字幕)] 8点(2011-09-01 05:01:02)
12.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
 最初に事件について判っていることが、少年が父親をナイフで刺殺した。ということだけで、大事なことは、後から後から、出てくる。もし、この法廷を最初から見ていたら、随分この人達は議論が下手だな、と感じてしまうことだろう。まあ、そこがこの脚本のニクい所なんだろうが。  それはともかく。この人達は一体何に「怒」っているのか?移民者に、スラムに、暴力的な若者に、老人に。それらのはけ口が被告に向いてしまう、陪審員という制度の恐ろしさ。それらの怒りを抑え、冷静な議論による正しい結果をもたらすには、民主主義のシステムだけではダメで、それに誠実に向き合う気持ちが必要だという事が、よくわかった。途中、ぐちゃぐちゃの議論を象徴するように、土砂降りだった雨が、討論を尽くして結果が出た後に、すっかり上がっている様が何とも清々しい、良いラストシーンだった。   ところで、私の年代では、どうしても「優しい日本人」の方が先に接していて、舞台版を含めて馴染みがある。今回その元ネタを見てみて、正直、コメディにしたほうが、素材に合っていると思ってしまった。それは、議論している内容が実に机上の、「空論」とまでは言わないが、現実味に欠けること、論拠が実に弱いこと、あまりに非論理な主張をする人が、笑い話にピッタリだからだ。騒音がどんなものか、ドアまでの距離がどうなのか、実地調査すりゃ一発解決なのに、と思わざるをえない。ま、余計なことだけど。
[DVD(邦画)] 8点(2011-08-24 02:11:38)
13.  私は貝になりたい(1959) 《ネタバレ》 
 こういう映画って、どうしても「反戦」のメッセージを読み取らないといけないと言うような風潮の中で、学生時代を学んだ。当然、その時代に自主上映会で最初に観た時には、「この映画は、反戦を訴えているんだ」と考えながら観た。しかし、今から見るとまだまだ戦後を引きずっていた、あの時から時間が過ぎ、"洗脳"も溶けかかってきた今、これを見ると、この映画の主題は「絶望」ではないかと思えてくる。  激しい戦闘シーンで殺し殺される恐怖を描くのでもなく、戦闘による重症や被爆などによる悲しみを見せるでもないこの映画が、かくも絶望を思わせるのは、表題にもなったこの「今度生まれ変わるときには、誰にも邪魔されることもない、深い海の底の貝になりたい」という言葉に現れている。直前に妻や子供に対して、もう一度会いたいという思いを綴りながら、来世にはもう何ものとも関わりないことを望む。すべてを拒絶する絶望感。「戦争」というよりは、理不尽に対する怒り。いや、怒りという能動的な力もない悲しさ。  同じように戦闘のない戦争を描いた映画、「戦場のメリークリスマス」のハラ軍曹も、同じように死刑になる。彼もまた、自分の行動は、日本軍の軍人としては当たり前の行動だと理不尽を嘆く。それでも彼は「メリークリスマス」と祝いの言葉を他者に与えた。   豊松の絶望感、いかばかりであったか。 
[DVD(邦画)] 8点(2011-07-20 15:09:22)(良:1票)
14.  星のない男 《ネタバレ》 
非常にシンプルで明快で爽快な話。  私は昔銃器マニアで西部劇関連であるムック本を読み、有刺鉄線が西部を開拓した、というような物を読んだことがあるが、本作を見るとやはりそう単純な話ではなく、こうやって無法に公地を我が物にしている事例もあったのかもと考え直した。  共有地を有刺鉄線で区切って隣接の牧場主と平和的に共存したい土着の牛飼いと、東部からやってきた資本主義者で法第一主義の女とぼ土地を巡る諍いに巻き込まれる男の話。  前述したとおり単純な話ではないのだが、牛にとっては迷惑な話だ。で、東部資本の女に対立することになった主人公は、最初嫌っていた有刺鉄線側につくが、最後にはそれをも捨てて放浪のたびに出る。カッコいい。 でも、欲を言うと主人公の実戦でのガンさばきをもうちょっと見たかったかも。
[DVD(字幕)] 7点(2020-03-10 16:41:07)
15.  太平洋の鷲 《ネタバレ》 
 「鷲」なんてタイトルだから、てっきり勇ましい戦闘機乗りの話かなんかと思っていた。航空機戦力の重要性を説いていたという山本五十六の事だったんだな。  終戦後たった8年の、東宝としては戦後初の戦争映画だそうで、個々の兵隊の話ではなく開戦否定論者だった五十六の自伝的映画。政権が次々と変わる話や時局・政治的な話のシーンが多く、ちょっと理解するのが大変だったりするが、当時に人たちには当然の知識だったのだろう。話は淡々と進むが、アメリカの資料映像の協力を得ながらそれと(比較的)違和感なくつなげられた円谷の特撮は迫力があって、スゴイ!でも好戦的な話ではなく、「ダメだダメだと思いながら立場的に戦争を指揮する五十六」の生涯を割とじっくりと見せてくれる良い映画だった。
[DVD(邦画)] 7点(2019-08-13 07:39:15)
16.  新吾十番勝負 《ネタバレ》 
今、TSUTAYAで借りられる「総集編」というやつ。  あまりにもはっきりと分かれているので、ああここから第二部なのだなと判る。第一部はとても面白かった。将軍吉宗の攫われた子にまつわる事件で、それに絡んだ老中職をめぐる陰謀と成敗の話。ありがちっちゃありがちな話のようにも思えるが、今から見るとちょっと大げさな感のある大川橋蔵の演技が良いな。歌舞伎由来なんでしょうかね。  第二部(の部分だと思う後半)はちょっと、見足りない思い。もうちょっと平民の事件に首突っ込んで色々と立ち回ってほしいが、お宮の警護をめぐる騒ぎは拍子抜け的に終わるし、大阪城代をやっつける話と多門先生の果し合いとその敵を誓う話がどっちつかず的で、どちらももうちょっと見たかった感じが残る。  最初の老中の成敗の時に「新吾の一番目の勝負」と言っていたのだから、その後も「〇番目の勝負」と続けた方がいいのでは?
[DVD(邦画)] 7点(2018-11-04 21:08:46)
17.  手錠のまゝの脱獄 《ネタバレ》 
 『網走番外地』など、多くの映画にそのシチュエーションを真似される、ユニークな状況設定が見事。そして、それによって人が繋がっていく様を、感動的に描いている。  この映画は、そこに人種差別というテーマを与えて、逃走途中で出会う人たちとのドラマを含め、黒人差別への批判を描いているように見えるが、実はその本質はそんなところを超えた、人のつながり(友情と一言で言っちゃうとチンケだが)を描いているのだと思う。  実際、終盤にあらわれる「繋がっているんだ」のセリフには、泣かされた。が、ホント言うとこのセリフ、列車から下りた後に出てきたら、号泣していたと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2013-02-09 23:39:34)
18.  拳銃王 《ネタバレ》 
 アメリカは州を超えると、犯罪者を逮捕・訴追することが出来ないとは、よく映画で見る事だ。このやり直せる社会というのは、人にやさしい仕組みだが、それはあくまで法律上の話。彼を撃ち殺して名を上げたいと思っている、多くのチンピラたちにとっては、そんな境界も決まりもない。  人は、どこまで罪を背負うべきなのか、過去の罪と呪縛から逃れられるのか?なんて言うと大仰だが、そういった問題をはらんだ物語は、最後に若いチンピラに撃たれて終わる。罪は償わなければならない、という訳だ。だが、その時の主人公が若者に仕掛けた意趣返しは、考えてみると、ちょっと意地悪で怖い。復讐の連鎖ならぬ、「拳銃王の宿命」の連鎖が始まる。   ところでジミーのモデルは、あのジョニー・リンゴーだそうで、ワイアット・アープの名が出てきて、彼を「子供のようなもの」と揶揄する所はちょっと笑う。あの牛泥棒たちの仲間も、見方を変えるとそれなりに好人物になるという事か。まあ実際、辺境の土地での倫理観なんて、今の日本人に伺う知ることは出来ないんだろうけど。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-06-22 03:17:34)
19.  眼下の敵 《ネタバレ》 
 潜水艦と駆逐艦、それぞれの武器の特性、船の性能、海中・海上の戦闘の特異性による制約などによって、頭を使って勝負する、いわばゲームを見ているような、”ゾクゾク感”が面白い。  潜って何分、潜望鏡深度へ何分、確認に何分って所が、巧くいき過ぎなキライはあるが、ここを納得させて、後々の長期に亘る攻防の「予想し、裏をかき、さらに隙を見つける」という頭脳戦の、細かい描写をしないでも、納得させることに成功している。本当はもっと、艦の位置関係の具合とか、詳しく説明して欲しい気もするのだが。自分の頭が悪すぎかな?  理念の見えない戦争に嫌気のさしている潜水艦の艦長が、「人間同士の戦闘」を戦いあった相手に、遂に敬礼し、駆逐艦の艦長がそれに答えるのが、イイ。松本零士の漫画なんかだと、潜水艦の艦長は敬礼しつつ、艦と運命を共にするのだろうが、そこはアメリカ映画だ。死者は最小限、駆逐艦の軍医が見つけた希望のように、最後は明るく終わっている。観終わって嫌な気分には、ならないな。 
[DVD(字幕)] 7点(2012-03-24 04:19:47)
20.  アニーよ銃をとれ 《ネタバレ》 
 実在の女性曲撃ち名人のラブコメディ・ミュージカル。作曲は膨大な名曲を残したアーヴィング・バーリン。本作は全体的に私の好みとはちょっと違う作風だが、それでも作中で一番有名な「ショーほど素敵な商売はない」は、楽しい楽曲だ。今回調べたら、ホワイトクリスマスやアレキサンダーズラグタイムバンドもこの人の曲だと知り、ビックリ。それでも、もしこれが当初の依頼通り、リチャード・ロジャースが書いていたら、という妄想も楽しかったりする。  物語は、ガール・ミーツ・ボーイと言ってしまえば単純だが、女性曲撃ち名人の成功譚を中心に、相思相愛だが曲撃ちに関して互いに譲れない二人、を描いている。「銃じゃ男は捕まらない」のに、意地をはって愛する男と射撃競争になってしまうアニー。普通なら、男のほうが折れるのが、紳士的な気もするけど、ずっと思ってきた想いのために、銃を(と言うより勝負を)捨てるアニーが良い。  ところで、英語で見れる人には判るのかも知れないが、銃が二人を近づけさせないのに、何故、タイトルが「銃をとれ」なんだろうか? 
[DVD(字幕)] 7点(2011-10-14 11:49:03)
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