マンダレイ の S&S さんのクチコミ・感想

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マンダレイ の S&S さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 マンダレイ
製作国デンマーク,スウェーデン,オランダ,,,
上映時間139分
劇場公開日 2006-03-11
ジャンルドラマ,シリーズもの
レビュー情報
《ネタバレ》 ドックヴィルの集落を住民もろとも地上から抹殺したグレースと父親およびその手下たち、どうしてか相変わらずアメリカ南部をキャラバンの様に彷徨っていて、アラバマでマンダレイという綿花農場を通りかかる。そこでは今だに黒人奴隷が存在しており“意識高い女”系の気の病が再発したグレースはマンダレイに入り込んで奴隷を解放し、黒人たちに彼女が理解している民主主義なるものを教えて啓蒙して元奴隷たちが自立できるコミュニティを築こうと奮闘するのだが… ローレン・バコールやクロエ・セヴィニーなど『ドックヴィル』から続いて出演しているキャストもいるが、肝心のニコール・キッドマンとジェームズ・カーンの父娘など半分はラース・フォン・トリアーのオファーを蹴ったというか逃げられちゃったみたいですね。逃げなかった面々にしても、ほとんどセリフもない影の薄い役だったのは可哀想。『ドッグヴィルの告白』というドキュメンタリーを観ると、キッドマンなんかはもうトリアーのことボロクソに言ってましたな。代わってブライス・ダラス・ハワードとウィレム・デフォーの父娘となったわけですが、とくにデフォーはジェームズ・カーンより良い味出してました。彼はその後もトリアー作品にはチョコチョコ出演しているし、類は友を呼ぶというか気が合ったみたいです(笑)。 この映画は『ドッグヴィル』よりも、アメリカ合衆国というある意味奇妙な国家の闇というか負の歴史を前面に押し出しているところは好感が持てます。意識高い系の女・グレースの思考原理は学校で教えてもらったデモクラシーの理想そのもので、砂嵐の件など現実を見ようとしない理想論の欠陥が皮肉たっぷりに描かれています。黒人たちにしても俗にいう奴隷根性が丸出しで、”しいたげられた者は清く正しい“というステレオタイプを徹底的にコケにしています。実は“天敵がいなくて食糧・水にも不自由しない環境ではネズミはどこまで繁栄できるのか?”という事を研究した“ユニバース25”実験のことを思い浮かべてしまいました。これは4ツガイのラットが最高で2,200匹まで増えたけど日も経たずに全滅してしまったという有名な実験で、ネズミと人間を同一視するのは不適切かもしれないが、まさにこの映画でのマンダレイはネズミの天国と似たようなものなのかもしれません。またグレースの行動原理とマンダレイの関係は撮影当時の進行形だったイラク戦争の縮図そのものとも言えて、やっぱ欧州人じゃないと撮れないテーマだなとしみじみ感じました。 ラストで完全にドックヴィルの様に父の助けを借りてマンダレイも地上から抹殺しようとしていたグレイスだけど、15分遅れていた唯一の時計のせいで虐殺は回避されます。この時計は劇中で多数決で時刻合わせしたので遅れていたわけで、けっきょく民主主義が住民の生命を救うことになったというわけです、でも決して住民たちはそのことに気づくことはないであろうというのがある意味で痛烈な皮肉ですがね。
S&Sさん [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-12-29 23:07:26)
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