<ネタバレ> なんで・・・そんな事をするんだ、と男は端末が描写するドット .. >(続きを読む)
<ネタバレ> なんで・・・そんな事をするんだ、と男は端末が描写するドットの集合体に呻く。示された数値をもう一度呑み込もうとするが、どうやっても腑に落ちていかない。明日の夕食の献立位に色々がどうでも良くなると、席を立って洗面台に向かう。
墓標の様なパーティションの群を静かに抜けトイレのドアが見える壁に肩を支えてもらった。
生ぬるく感じたノブに手を掛け、ドアを開けるのまでの時間が永遠に感じられる。
ノウイングを見始めた二時間前、あの記憶が蘇った。新人の頃だ、同僚から聴いた話である。上司の不正経理の証拠が自分のデータの中にある。と言うか、自分がやった事になって居る。動揺を隠し、顔を洗うためにトイレに入ると電話中の上司が居たのだった。
「○○ちゃん?あの金額だけどマズイから部下の方と分割して発注しといたわ」
その現場に出くわした彼は、叱責を上司に抉りつけた。
「なんて事するんですか。あんな処理」
トーンを変えて、続けた。
「もっと上手くやって下さいよ~、あれじゃ芋蔓ですって。ばらけてなさ過ぎですよ」
ケケケと笑う二人であった。
それを僕はドアの前で立ち聞きしてしまった。上司がドアに手をかけるまで動けなかった。そうして出くわした彼はこう言った。
「あ、来週はキミに載っけとくね、悪い。今週はちょっとイレギュラー」
「載ってないから焦りましたって。一蓮托生っつったじゃないですか~今日は焼肉ですねこりゃ」
と、巻き込まれた人間が無力化と思ったら、なんかそこに居る全員いい加減だったみたいな二時間であった。
宇宙人とかパラレルゾーンの住人とか神様とか、そんなんで落ちてるし。これじゃせっかく死んだ人も宇宙人も作った人も等しく有罪である。
ニコラスデカの熱演が台無しであった。