1.《ネタバレ》 美しく完成された画と、膨大な資料に基づく重厚な世界観がほんとうに素晴らしい。天才性と残酷さを併せ持つチェーザレの人物像と、複雑に入り乱れる陰謀にはわくわくさせられる。唯一気になるのは台詞がときどき説明的に過ぎる点で、緻密な取材の効果が悪い意味で出ている。この生堅さがもう少し薄れてくれればと思う。もっともそれは瑣末な欠点で、充分に秀作といえるだけのクオリティが保たれている。ミゲルやルクレチア、ダ・ヴィンチといった脇役の面々も巧みに描かれていて、みんな魅力的だ。画も設定も、細部まで気が遣われているのがわかる。
幸か不幸か世界史には疎いので、史実を調べたくなる衝動をあえて我慢したまま新刊を楽しみにしている。