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プロフィール
コメント数 3870
性別 男性
年齢 53歳

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101.  パニック・トレイン この映画、褒めたくないんです。と言ってもつまらない訳ではなくって、その逆、私は大いに楽しんだのです。しかしこの作品、決して派手な作品ではなく、どっちかというと低予算、いわゆる掘り出し物の類です。登場人物も少ないし、舞台も限られているし。なので、あまり期待を持たせるようなことは書きたくなくって。まちがっても何やら娯楽超大作であるかのような期待をもって観てしまうと、それはそれは失望するんじゃないかと思うのです(でも、DVDのパッケージを見ると、何だか派手そうに見えるわなあ)。えーと、まず断わっておくと、登場人物がとても少ないので「パニック」は起こりません、ハイ。とある父親と息子が乗った列車、夜がふけるに従って乗客も減ってゆき、ま、減り過ぎるくらい減っちゃうのですが(笑)、そのわずかな乗客を乗せた(しかもちょっとクセのあるヤツも交じってる)列車に異変が起こる。停車駅に止まらない。車掌も行方不明。何が起こったのか、この先どうなるのか。という訳で、事態がつかめないまま引っ張っていくサスペンスのうまさが、本作の見所。いいえ、この先意外な展開が待ってるなんていう変な期待をもってはいけません。「先」を期待するのではなく、「今」のサスペンスを楽しむ。何が起きているのかわからない不安、その気持ちをひたすら、開かないドアにぶつけ続ける焦燥感。映画終盤が近づくにつれ、何だか過去のアノ映画やらコノ映画を彷彿とさせたりして、その辺りからも色々ケチがつきそうな気もしますが、そういう失望するかしないかの危ういバランスも含め(笑)、この不安定感こそ、サスペンス。さあ、どうです、面白くなさそうでしょ。では、作品の方をぜひご覧くださいませ。[DVD(字幕)] 8点(2014-09-30 23:19:29)(良:1票)

102.  巴里の女性 コメディではないこと、自分は出演していないこと、というチャップリンの弁解めいた但し書きで始まる作品ですが、冒頭シーンでの、二階に幽閉された女と、通りに立つ男とのやりとり、まずここだけでもう、相当に気合いの入った演出に、引き込まれます。で、ここでは、貧しさと親の反対という障害を抱えた彼らは、強く惹かれあい、結ばれていたはずだったのに、ひょんなことから離れ離れになった彼らを、「ブルジョア社会」が切り裂いてしまう。富は、さまざまなチャンスをもたらすかも知れないけれど、ここでは、ひたすら辛口な視点でブルジョア社会が描かれ、二人のすれ違いは決定的なものとなっていきます。あの、投げ捨てた筈のネックレスを人に盗られまいと拾いに行く場面で付きまとう犬の皮肉な描写、マッドマックスのリンチシーンでも引用されていましたが(ホンマかいな)。実に見事な作品です。チャップリン作品を「どれだけ笑えたか」でしか語ってこなかったことへ、反省。[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-05-11 16:29:36)

103.  バイオハザードIV アフターライフ スロー映像の中で飛び散るコンクリ片、飛跡を引き摺る弾丸、滴る水滴。って、せっかくみんなマトリックスのこと忘れかかってたのに、何で今更、思い起こさせるのか。それもよりによって、アンダーソン君が。という点は御愛嬌だとして、最初の方で色々と前置きみたいなシーンがありますが、主な物語は、無数のアンデッドたちに取り囲まれた建物に立てこもった人々の脱出劇です。立てこもりってのは、映画においてとても魅力的な題材(だと思っているので、私の中では、巨大生物の島とか巨大クモ軍団の襲撃とかいった困った作品も、名作に分類されている)。なので、本作でも、もうちょっと一生懸命に立てこもって欲しいのですが、そういう泥臭さは本シリーズには似合わなのかな、とも。襲ってくるアンデッド、普通の人間の姿のままでは面白くないと思ったのか、口から妙なモノをニョロニョロ出して、どうだ、コワイだろ、と。しっかし、その襲ってる描写たるや、基本的に不意打ちばかり。襲ってくるまでの過程をもっとしっかりと織り込めば、サスペンスが持続してもっとハラハラさせられるものを、不意打ちでは単発に終わってしまい、ハラハラ感が続かない。それって、もったいなくないですか?[地上波(吹替)] 5点(2014-04-05 17:05:46)(良:1票)

104.  バスケット・ケース 関西地域ではヴィデオドロームの併映だったような記憶がかすかにあるんですけれどもね。記憶違いか夢マボロシか、まあ何でもいいでんすけど。安物系ホラーの代表的作品ですな。とある安ホテルにやってきた若者が小脇に抱えたバスケットケース。その中に入っていたものとは……ってな話で、いや、今更隠すようなネタでもなくって、中に入っていたのは、彼の双子の兄、ベリアル。元は二人は結合双生児であったが、今では分離手術を受け、兄は顔と手だけ、バスケットケースの中にひっそりと生きている。要するに『ツインズ』の先駆的作品とでも考えればよいのかな? 分離手術前の姿は、旧トータルリコールを思い起こさせますね。実に色々な作品に影響を与えた作品、という訳でもないんでしょうけれども。血糊ぶちまけるホラー作品、しかしちゃんと作れば実は結構、それなりに物悲しい物語になろうというところなんでしょうが、残念ながら、手作り感あふれるチープさが全面に出てしまいまして。いや、安いけれど、カットをそれなりに細かく割ってみたりして、コダワリはあるみたいなんですね。でも一番手をかけてしかるべきストップモーションアニメの部分で、もう少しガンバレなかったものか、と。脇役の設定もいいんです。仕切りたがりのハゲのホテル支配人とか、主人公の大金が気になって仕方ないオッサンとか。ただ肝心の、ストーリーの語り口が雑で、これも何とかならんもんか、と。何とかならんから、独特の雰囲気が出て、カルト作品とか呼ばれちゃったするんでしょうけどね。あと、兄ベリアルの造形。コレ、この手の作品の見せ場ですけれど。意外に男前でしたね。なのに便器に隠れたりするもんだから、ウ●コに見えちゃったりするんだよ。という訳で、ダメダメではありますが、愛すべき作品です。[DVD(字幕)] 4点(2014-04-05 16:41:31)

105.  パシフィック・リム 『大日本人』がハリウッドでリメイクされるとかいう噂がありましたけど、まさかそれがこの『パシフィック・リム』だったりして?と言いたくなるくらい、この作品も“カイジューごっこ”に特化した内容になっております。本作で怪獣と戦うのは冴えない巨大なオッサンではなくって、曲りなりにも巨大ロボ(あの“イェーガー”を最も端的に表現する日本語は“巨大ロボ”です)。その巨大ロボで戦う連中が一応は主人公とその周辺、ってなことになっているけれど、スターと言える俳優を中心には起用していないキャスティングを見てもわかるように、人間を描く気がさらさら無くって、ひたすら、巨大ロボvsカイジューの戦い。二人一組で巨大ロボを操縦したり、主人公のライバルがいたり、最低限のドラマのネタは用意しているけれど、申し訳程度のもの。だいたい、彼らが巨大ロボに乗り込んでいるのだって、操縦するために乗っているのやら、攻撃を受けるたびに中で操縦している人間が振り回される光景を描くために乗っているのやら(ロボがやられるたびに操縦する人間がこんなヒドイ目に遭うなんて、一体どういうシステムなのか。ダメージを負うたびにコックピットに火花が飛び散るレトロ感覚もまた)。という、ひたすらバトル、そこだけに力点を置いて作られた映画です。正直、ややクドイので、カイジューを一刀両断のもとに切り裂いてやっつけるシーンでは、むしろその手っ取り早さに少しホッとしちゃったりも。それにしても、二人で操縦するという設定、(いくら製作サイドに興味が無いとは言え)もう少し何か生かせなかったか、という気もするのですが、映画冒頭で主人公が兄とやたら気の合うところを見せるシーンでは、その見事な連携ぶりに、奈良・中谷堂の「高速餅つき」を連想してしまいました、ははは。あと、別のシーンで、操縦する二人がファイティングポーズをとったりしていると、“いつもここから”の「悲しいとき~」のネタを連想してしまいました。はははは。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-03-25 22:27:29)

106.  バンク・ジョブ 銀行強盗、とは言っても銃突き付けての押し込み強盗じゃなくって、トンネル掘って狙うは貸金庫。普通なら、この強奪計画の華麗な手捌きを映画にするところ、しかし本作では、この計画に加わった連中というのが、どうも手際が悪く、素人丸出し。だもんで、果たしてこの作戦、うまくいくのかどうか、とまずハラハラさせられますが、さらにこの計画には、主人公の知らないウラがある。というにとどまらず、そもそも貸金庫なんてところにしまわれているモノといったら、それなりに訳アリのモノが多い訳で、ヤバいブツに手をつけてしまった主人公、ややこしい事態に。この事態をどう収拾させるか、にさらにハラハラ、だけどここで主人公がとる行動ってのが、事態の収束というより、さらに事態をかき回し、なるようになれ式のヤケクソな行動でして。で盛り上がったところに、舞台は駅。人々が集まりまた離れていく“駅”というところをクライマックスに持ってきたのがまた上手くって、ワクワクさせられます。[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-02-26 21:53:40)(良:1票)

107.  背徳の囁き リチャード・ギア演じる悪徳警官と、内務調査官アンディ・ガルシアとの対決。という訳ですが、この悪役、やたら女性に手が早いジゴロ風、奥さんへの色仕掛けという心理戦を挑んでくるというのがギア様らしいところ。しかし、どうもあまり悪そうに見えなくって、迫力が無い……。私服刑事ではなく制服警官、これでもう少し年季の入ったベテラン風だったら、何やら訳アリな感じも出るのだけれど、何だか普通に優秀な警官に見えてしまい、都合でルールを捻じ曲げていく姿にも、凄みというよりはクールさを感じてしまう。もうちょっと、得体の知れない悪の象徴のような人物として描けなかったものか、と。[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-31 10:37:18)

108.  ハンガー・ゲーム これは予想以上にヒドい・・・。一体何のためにカメラを揺らし続けるのか、「だって今ドキの流行りだしぃ、こうしないとプロデューサー納得しないしぃ」とでも言いたげに、義務のようにカメラを揺らす。そしてブチブチと短く切り刻む。最初っから「とりあえず」の揺らしまくり切りまくりなもんで、暴動シーンともなるとこれがさらに加速して、もう何が何やら。子供たちが互いに殺し合うという悲惨な設定にも関わらず、まるで悲壮感も無し。サバイバルな要素も希薄で、まさに単なる“ゲーム”に過ぎない語り口。しかし、主人公が戦うべき相手は、競争仲間というよりも、自らの運命に対してであり、すなわち自分をとりまくルールであるはずのところ、このルールがまるで不明確、というか行きあたりばったりも甚だしく、およそ“ゲーム”にすらなり得ていない。この作品のどこを見所として捉えればいいのやら。 (この映画、特に前半がやたらとクドく、さんざん待たされた挙句にようやく戦いが始まるのだけど、そこで挿入される曲が意表をついていて、スティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」。だからどうっちゅうこともないけれど、ライヒ作品の禁欲的なまでの秩序を、少し見習ってはどうか。)[CS・衛星(吹替)] 3点(2013-12-28 22:18:41)(良:1票)

109.  バファロー大隊 主人公は、黒人を中心に構成された騎兵隊の中尉。部下の黒人軍曹が強姦・殺人の容疑をかけられ、中尉自身が彼を逮捕するが、軍法会議では彼の弁護を買って出る。という訳で、西部劇ですが、法廷ミステリーでもあります。いや、この“法廷ミステリー”というのはあくまで形式上のことであって、やはりこれは“西部劇”なんでしょう、強固な意志たちと、その意志に挟まれ苦闘する主人公の姿を描いた作品なのだから。法廷での証言から過去が徐々に明らかにされていく形式、法廷での証拠のやりとり、意外な結末などは、いかにもミステリーらしい構成ではあります。しかし、証言から始まる回想シーンは、真相究明という点から見ればしばしば脱線もするし、証言者の主観に止まらず客観的な描写(証言者が実際には見ていない場面の描写)もあり、言ってみればこれらの証言で描かれているのは、謎ときゲームのための単なる手がかり、というよりもむしろ、登場人物たちの人物像、彼らの意志そのもの、とも言えるでしょう。信じるべき部下の軍曹、しかし主人公を容易には受け付けない強固な意志。軍曹の無実を信じ主人公を批難する、主人公の恋人の意志。時に人種差別をむき出しにする検察側の攻撃。そしてこれらに挟まれつつ、最後まで真相究明にもがき続ける主人公の姿こそが、本作の大きな魅力となっています(要するに、主人公がイマイチ頼りないから、盛り上がるんですな)。頑固者で強敵と思われていた判事が、意外にもグダグダになり、ユーモアをふりまいて物語の下支えをしているのも見逃せません。ラストはいささか唐突ですが、このあたりはミステリーとしてのサービス、ということで。[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-11-04 10:02:04)

110.  薄桜記 「忠臣蔵外伝・丹下左膳ビギニング」みたいなお話で、その名前を少しもじった丹下典膳という人が主人公。高田馬場の決闘から吉良邸討ち入りまでの中山(堀部)安兵衛の姿と、そこにクロスする丹下典膳なる人物の運命が描かれ、物語運びの上手さ、巧みな演出に、さらに忘れ難きは雷蔵の美しくも悲壮な表情、これぞまさに出色の時代劇です。高田馬場の決闘をきっかけに、安兵衛と典膳とは互いに一目おく存在となり、武士道を通じた敬意による、信頼関係が生まれる。しかし同時にまた二人の運命の交錯は、それぞれにとっての波乱の始まりでもあり、道場からの破門、同じ女性への恋。そして典膳と妻に悲劇が襲いかかる……。安兵衛が見つめる川面に降り注ぐ涙雨。典膳夫妻の絆を象徴する紙人形。背景の暗転によって強烈に浮かび上がる肩口の血の深紅。決闘の場へとひた走る勝新の描写、あるいは俯瞰による殺陣の描写など、カメラの工夫にも溢れており、そして何と言っても、ラストの息も絶え絶えの(後の『大殺陣 雄呂血』でも見せたような)悲愴感溢れる雷蔵の死闘、そして表情。ああ、早く来てくれ勝新よ、と思わずにはいられないクライマックスが、もうたまりません。[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-26 10:28:16)

111.  バンテージ・ポイント さっき、テレビでやってたのを何の気無しに観て、ホントに何の気無しに観て、いやもうビックリ、儲けた気分、ニコニコ。ってったって、この映画、構成が構成ですから、それなりに警戒して観ちゃう。同じ事件を、「主役」を入れ替え何度も何度も繰り返し描く、群像劇。こんな同じコト繰り返して、この映画一体何がやりたいんだろう……「主役」が代わり視点が変わると、だんだん真相が明らかになってきて、ああナルホドとも思えば、それなりに味気無かったりもするのだけど。でもこの作品、どうやら、そういう“謎とき”路線にのみ走ろうって訳ではないらしい。むしろ、何かが判明するごとに、それを契機としてアクションが展開される。そして、事件の描写が途中で断ち切られ何度も繰り返される中で、明らかになっていくのは、事件の真相というよりは、事件の終着点。何だかワカランが、一連の事件がどうやらココに収束するらしい、というポイントが徐々に見えてくる。何度も時間を行き来し何度も視点を変えようと、また徐々に真相が明らかになり物語が広がりを見せていこうと、同一の事件である限り、絶対に回避不可能な、ある収束点。クライマックスのカーチェイスは激烈で爆発的なエネルギーを感じさせるけれども、それでも決してその収束点の枠から逃れることができない訳で、お釈迦様の手を超えて先に行けなかった孫悟空のごとし。カーチェイスってのは一般的には「突然のクラッシュ」すなわち必然性の欠落こそが喜ばれるところ、それを本作は、心理的な終着点を設け、必然性を備えたカタストロフを我々の前に突き付けることで、カーチェイスそのものををドラマとしても見せてくれた、いや実に見事です。参りました。[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-21 23:47:18)(良:1票)

112.  八甲田山 新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」の息詰まる迫力というのは、克明な描写がもたらす“記録文学っぽさ”に大いに由来しているだけれど、その一方で、作家の想像による補填というだけではない明らかな創作も多々含まれていて、実際の事件に取材しているとは言え、登場人物の名前は皆、実在の人物から変えられていたりするのですな(その前に書かれた短編「八甲田山」ではまだ、それこそ作家の人生観を反映させるような創作は目立たず、雪山の恐怖を描く事自体に主眼があったものの、この時点ですでに名前の変更が行われている。一部の名前は「八甲田山死の彷徨」でさらに変更されている)。で、まあ、この映画もあくまで、小説「八甲田山死の彷徨」の映画化作品なワケです。青森第五聯隊と弘前第三十一聯隊の運命を、やや残酷なまでの対比をもって描かれるのですが、一方で、やはり役者が身をもって演じる“映画”ならではの、同情というか優しさのようなものも感じさせます。何しろ、雪山ロケの、どこまでが演出なのか(それとも演出など有って無いようなものなのか)わからぬトンデモナイ過酷な光景が延々と続くのですから、「ちょっとイイ話」的なセンチな要素も、映画に入れたくなるってもんでしょう。そのくらい、この映画は、やり過ぎです(笑)。カメラのレンズにまで雪が積もってませんでしたっけか。本当に撮影中に死人が出なかったのだろうか、なんぞとついつい心配してしまう、猛烈に我々に訴えかける力のある映画(映画の完成度とか何とかはそっちのけで)。そんな訳で、必ずしも記録文学とは言えない原作に基づいて、ある意味“記録映画”な作品が出来ましたとさ。[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-09-11 22:29:34)

113.  バレッツ いや素晴らしい。我々をシビレさせてくれる映画がまたここに一本。悪の道から足を洗い平和な生活を望む主人公を、突如銃弾の嵐が襲う。全身蜂の巣となった彼は、一命を取りとめるが、仲間が殺害されるに及んで、ついに彼は復讐を開始する……で、もしこの作品が、リアリティ重視で行くんだったら大怪我をおった主人公が後遺症で苦しんだり、リハビリに励んだりする場面を脚本にたっぷり盛り込んでシタリ顔をするところなんでしょうけれど、本作はそういう枝葉末節にはこだわらない、なぜなら、雰囲気を描く映画だから。主人公は冷静に宣戦布告をし、着々と復讐を進める。そのシブさといったら、もうタマランのですね。その過程では、重要な登場人物である主人公の子供たちとの関係の描写すらも、グッと抑えちゃう。心配ご無用、映画の最後で家族愛はしっかり描かれるから。この作品は、主人公が過去を清算する物語。それなりの過去を持つ人間は、それなりの清算が無ければ、ささやかな平穏すらも得ることはできない。その姿を、その雰囲気をじっくり描けば、映画は映画になるのです。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-17 10:54:16)

114.  白熱(1973) 弟を殺害された主人公が、悪徳保安官への復讐を誓い、刑務所を脱走……とくれば、何やら殺伐とした暴力映画を想像してしまうのですが、さにあらず。ノンビリした映画です。まあ、主役がバート・レイノルズですし、この主人公、あまり“復讐”に一生懸命という訳でもなく、ノンビリまったり、楽しそうにやってます。そもそも、酒密造の罪で服役していた主人公、弟の死を聞いて、刑期残り僅かなのに脱獄を試みる、そこまではカッコいいのだけど、アッサリ捕えられてしまう、というのがなかなかイジワルな脚本です。で、当局の捜査に協力することを条件に正式に保釈されるのだけれど、両親のもとに帰った主人公、更生したことを褒められるのかと思いきや、逆に「密造仲間を売るなんてとんでもない奴だ」と親からなじられる始末。筋金入りの密造一家なワケですな。これがどうにも可笑しい。可笑しいけれど、なるほど、この件に限らず、この映画には、多様な価値観が渦巻いているのですな。だから、一本気に見えた主人公も、ひたすら復讐に燃えてる訳じゃなくて、もっと活き活きとした存在として(復讐アクション映画の主人公としては頼りない存在かも知れないけれど)、すべてを楽しんでいる。そうは言っても、一応、保安官との対決となる訳だけれど、そしてまた、クレジットに「ハル・ニーダム」という名前がある以上、カーチェイスとなる訳だけれど、これといってクラッシュシーンもない、これまたノンビリしたカーチェイスが、のどかに展開されてゆきます。保安官との対決の結末、これがまた実にスバラしくて、爆笑してしまいました。[DVD(字幕)] 7点(2013-08-12 14:10:13)

115.  パリの灯は遠く 私も、カフカを思い起こしました。ドイツ占領下のフランスで、自分と同姓同名の人間の行方を追い求める主人公。なぜその人間を探すことにそこまで執念を燃やすのか、その理由は語られず、ただその姿が克明に描かれている点、そしてそれが徒労に終始する点、はたまた、残されたかすかな希望が絶望の裏返しである点、カフカの不条理世界に通じるものがあります。しかし、理由がはっきり語られない「同姓同名探し」が、必ずしも不条理なばかりではなく、不気味さを伴いつつもどこか切実さをも感じさせるのは、それがまるで「自分自身の影を追い求めている」ような行為として描かれているからでしょう。その点、つげ義春の『ゲンセンカン主人』のもつ怖さをふと思い出したりもします。舞台で歌われるマーラー「亡き児をしのぶ歌」と観客たちの空疎な笑い。この無責任で乾いた笑いは、ユダヤ人への弾圧という悲劇の時代における、醜悪な一場面ではあるけれども(そういやマーラーもユダヤ人だった)、それと同時に、人の生死があまりにも理不尽に、紙一重の差で決められてしまう、という滑稽さと恐ろしさに対する引きつった笑いのようにも思えてきたり。キザ過ぎる邦題とは無縁の、絶望と不安の映画です。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-07-22 21:32:28)

116.  馬上の二人 『捜索者』と同じく、先住民族に誘拐された人々を巡るオハナシで、類似した辛辣さを含んでいる部分もありますが、映画全体の趣きはいくぶん異なってます。そしてこちらも傑作だと思うのです。何かといい加減で調子のよいところのある保安官をジェームズ・スチュアート、彼の友人で、武骨でやや堅物な軍人をリチャード・ウィドマーク。この二人の絶妙なコンビぶりが、まずもって作品にユーモラスな色合いを添えています。二人だけのやりとりの場面では長廻しのカットが適用され、川べりで葉巻をくゆらすシーンが4分弱、リングル氏との会話の後のシーンが2分弱。二人の独特の関係が象徴づけられますが、二人の関係の描写に止まらず、この映画全体のテーマが、「人と人との絆」というところにあるように思われます。登場する数々の脇役たちがみな特徴的に活き活きと描かれ、主人公二人とこれらの人々のやりとり一つ一つがまた、「絆」でもあるのですが、その一方で、これらの人々は、かつて先住民に誘拐された身内を取り戻すこと、「失われた絆」の回復を望んでおり、その任務を主人公二人が請け負うことになります。しかし歳月によって失われてしまった「絆」は、もはやそう簡単に取り戻せるものではない、という厳しい現実。いやそれ以上に、この作品では、過去の「失われた絆」に対比して、「誘拐されていた女性に対する人々の冷たい視線」という、現在進行形の「絆の不在」をこそ、糾弾しているように思えます。そしてとどめを刺すように描かれる、「失われた絆」の象徴としてのオルゴール。そのオルゴールは今、目の前にあり、実は「絆」は失われていないかも知れないのに、人々の不寛容がその目前の「絆」を拒絶する、という現実。ラストではまたユーモアを取り戻した締めくくりとなっており、ホッとさせてくれるのが、本作の本作らしいところ、ではあるのですが、なかなかに手厳しい作品でもあります。[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-07-06 09:45:17)

117.  パブリック・エネミーズ 《ネタバレ》 確かに、物語性のある起承転結はここには無いかも知れないし、その点は本作の弱みとも言えるもかも知れませんが、これは明らかに確信犯的なもの。事件と事件の連関をオハナシとして描くのではなく、ジョン・デリンジャーの生き様そのものを物語とする。そういう意味では散文よりも詩に近いかも知れません。そしてそこにクリスチャン・ベール演じるメルヴィン・パーヴィスの生き様、というか執念が交錯する。むしろこの作品におけるジョン・デリンジャーは、悪の自由を満喫する“民衆の敵”としての姿よりも、パーヴィス捜査官に追われ追いつめられる不自由な姿の中でこそ、その孤独さの中でこそ、光っていたようにも思います。そして、何よりも印象的なラストシーン。涙を流す女の瞳をのみ映し続けるそのシーンでは、もう女の目には現実の何も見えていない、ただ過去のみを見つめるその視線が、たまりません。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-06-09 12:33:10)(良:1票)

118.  ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場 《ネタバレ》 邦題はスペクタクル作品を装ったようなサブタイトルがつけられており、そういう期待をもって観ると肩透かしですが、でもまあ、嘘でも無いかな(と配給会社の片棒を担ぐ)。歴戦を戦い抜き生き延びた猛者たる主人公も、今では、出世しそびれヤサグレてしまった老下士官。勲章は山ほどもらってるけれど、戦っているうちに軍の価値観が変わっちゃったんだから、しょうがない。当時の日本で言うところの、新人類。こんなヤツらには負けておれぬ、と軍のなかでは一本筋を通し続け、初老の割に強過ぎちゃうキャラなのが、観てて痛快に思える人もいれば、「クリント氏、何だかカワイくないぞ」と思える人もいるかも知れない。でも軍を離れれば何かと弱いところがあるのが、やっぱりこの主人公の愛すべきところ。自分の居場所は自分で何とか切り開く。お国のために戦うんじゃない、自分のために戦う。自分のために戦おうと思えば、周りに働きかけていくしかない訳で、ポンコツどもに囲まれていても、ポンコツ集団なりに何とか形になっていくもの。クライマックスでは突如、グレナダ侵攻という実戦に立ち向かうことになるのだけれど、あくまで皆、精鋭集団としてではなく、必死なポンコツ集団として戦いに臨み、小粒といえど勝利をおさめれば、ひと仕事終えた充実感がそこにはある。自分の居場所に対する実感がある。という、戦争スペクタクルなんぞではなくてこれはあくまで人間臭いドラマ。ただ、部下に戦死者が出てしまったことについて、もう少し丁寧な描き方が無かったものか、とは思うのですが…。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-03-10 08:49:14)(良:2票)

119.  発情アニマル 主演のオネエチャンは、バスター・キートンの孫でしたっけか。映画のために体を張る、というDNAは健在。「健全」ではありませんけどね。レイプされた女性の復讐譚、という以下のものではあっても決して以上のものではない作品です。4人の男たちに順番に襲われる場面と、順番に復讐する場面が、段階を追って順序良く続くので、正直100分ほどの映画でも少々長いなあ、と感じてしまう部分はあります。チ○コ切られても気付かないなんてユルミ過ぎやろ、と思っちゃうのですが、映画そのものがユルんでますから。でもそこが魅力だったりもします。題材の凄惨さとはうらはらに、静かな川面の光景、虫の声、鳥の声、ノンビリした雰囲気。この気の抜けた弛緩ぶりは、絶妙です。珍味です。そして野獣と化した男たちの、四人四様の襲い方も、ユーモラスというかマヌケというか(特に2人目のヤツが…あはは…スゴかった)。主演のオネーチャン、前半は汚れ役に徹しているものの、後半の復讐の段になると、悟ったような無表情になるのが、ドロドロし過ぎず良。作品にアクセントをつけており良。感情と感傷だけで突っ走るのが映画ではないのだ、と非常に勉強になりますね、ハイ。映画に全編を通じてしつこく登場する、オトコの裸、オンナの裸。その数々のハダカのシーンが、映画前半から後半への大きな転調によって、全く違う印象となるのが、こういうヘンテコ作品ならではの面白いところ。これも勉強になります、ハイ。そしてクライマックスの、「斧ふりかざしてモーターボート」のこれまた何とカッチョよいこと。あれ、しまった、なぜ自分はこの作品をホメているのだろうか。[DVD(字幕)] 6点(2013-03-02 09:47:03)(良:1票)

120.  バトルシップ(2012) 正直、宇宙人が出てくるまでのどうでもいい冒頭部分がアホラシくて一番楽しめちゃったりしたんですが……。この映画、ボートゲームを下敷きにしているとのことですが、むしろ完全にテレビゲーム。普通なら「何やねんこれは」と怒りたくなるところを、怒るヒマもなく映画は進み、そのまま突き進んで終わっちゃったらやっぱり怒るかも知れないところを、クライマックスに素敵な展開は待っていて、やっぱり怒るどころか、「あーそう来る訳か」と嬉しくなっちゃう。宇宙人と戦うのは、老戦艦であり、障がい者であり、そしてあの何とも頼りなかった主人公であり。それにしても、かつて地球に攻めてくる宇宙人と言えば、とてつもなく高度な文明を誇り、地球人が最高の武力で戦っても歯が立たなかったものだと思うのに、最近の映画に出てくる宇宙人は、J2に陥落したかのごとく、引退した老戦艦やら、カウボーイやら、何ともレトロな戦力と戦わされてますが……人類よ、そんなに宇宙人をナメてていいのだろうか~~[ブルーレイ(字幕)] 8点(2013-01-05 00:32:01)(良:1票)

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