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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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201.  YETI イエティ<TVM> 《ネタバレ》  所謂「アンデスの聖餐」を元ネタとした作品。  飛行機事故で雪山に取り残され、生きる為に仲間の死体を食すべきか否かという極限状況の中で、イェティが襲い掛かってくるというんだから、余りにも無茶な組み合わせです。  作中にて「遺体を食べ続けるなんて、ケダモノにも劣る行為よ」なんて具合に、史実の事件を揶揄するような発言も飛び出すものだから、観ているこちらの方が(えぇっ……そんな事を言って良いの?)と不安になってしまいましたね。  肝心のイェティの描写はといえば、非現実的なジャンプを移動手段としているし、襲撃シーンでは男女が棒立ちのまま悲鳴をあげ続けて逃げる素振りを見せなかったりするしで、どうにも緊張感に欠けるという印象。  同じ遭難事故を元ネタとした傑作「生きてこそ」を意識したと思しき「生きる為に禁忌を犯すべきか?」と人間同士で言い争いする場面は意外と面白かったのに、本作の目玉であるはずのイェティが出てくると途端につまらなくなるという、非常に困った現象が起きている形です。  隠し持っていたチョコを食べていた事が仲間にバレて責められるとか、そういうシーンだけでも楽しめたのに、そこにイェティが絡んできちゃうものだから「来なくていいよ……」なんて思ってしまいましたね。  二通りの魅力を味わえるお得な映画、と言えない事もないのですが、自分としては「生きる為の究極の選択」「イェティの襲撃」どちらかに絞った作品を観てみたかったところです。[DVD(吹替)] 4点(2016-12-21 10:44:00)《改行有》

202.  サタンクロース 《ネタバレ》  クリスマスにサンタが人を殺しまくる映画といえば「悪魔のサンタクロース 惨殺の斧」などの前例があります。  けれど、あちらが「サンタの扮装をした殺人鬼」という扱いだったのに対し、こちらは本物のサンタという設定なのだから、よりインモラルですね。  煙突から家屋に侵入し、室内にいた人々を殺しまくる冒頭のシーンから、もう「掴みはOK」といった感じ。  こうして文字に起こしてみると、如何にも残酷な映画であるように思えますが、実際はといえば、軽快なBGMに乗せてスピーディーに、しかも様々な小道具を用いて楽しそうにサンタが殺していくものだから、どう見てもギャグにしかなっていないというバランスでしたね。  サンタクロースの恰好をスタイリッシュにアレンジして、さながらダークヒーローめいた趣きさえ漂わせている辺りも、実に効果的だったと思います。  ただ、それだけに終盤では上着を脱ぎ捨てて「サンタクロースの恰好」から外れてしまっているのが残念。  結末も「主人公達はサンタを倒す事が出来ず、北極に追い払うのが精一杯だった」という形であり、ちょっとスッキリしないものがあります。  まだまだ精神的に未熟な若者である主人公が、可愛らしいヒロインと共に「また現れるだろうけど、次も追い払ってみせる」と決意してみせた空気だったのは、成長を感じさせてくれるけれど、一応サンタを倒して決着をつけて「もし甦ってきたとしても、再び倒してみせる」という形にしても良かったじゃないか、と思えましたね。  続編を意識したのか、あるいはラストの空港でのやり取りを描きたかったのか、作り手の真意は不明ですが、もっと綺麗に完結させて欲しかったところです。  空飛ぶトナカイからプレゼント爆弾を投下するサンタの姿は、それだけでも「観て良かった」と思えるものがあるし「図書館では静かに」などのギャグも面白い。  ミニオーブン、胡桃割り人形などのアイテムの使い方も上手かったですね。  主人公とヒロインのコンビも「良い奴ら」であり、ともすればサンタ側に感情移入しそうになるのを引き止めて、素直に彼らを応援させてくれるのに成功していたかと思います。  ラストにて二人が結ばれる事も併せ、デートムービーとしての魅力を備えている辺りも素敵。  何もかも理想通りとはいかないけれど、全体的には楽しめた時間の方が、ずっと長かったという、それこそ現実のクリスマスのような映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2016-12-13 20:00:18)(良:1票) 《改行有》

203.  ハウス・オブ・ザ・デッド2<TVM> 《ネタバレ》  前作からは一転、かなり真面目に作られているゾンビ映画。  こういった形で作風が分かれた以上「1の方が好き」あるいは「2の方が好き」という論調で語りたかったところなのですが、正直に感想を述べると「どっちも同じくらい……」という結論に達する為、困ってしまいますね。  分かりやすいところで比較すると、主人公に関しては、本作の方が圧倒的に好感が持てます。  如何にも有能そうなルックスに反し、作中の行動はドジが多くて頼りないのは玉に瑕ですが、観客としては応援したくなるタイプの人物でした。  キーアイテムとなる血液サンプルの価値を「売却によって齎される金額」でしか考えられない悪役に対し「それによって救える命の数」を語ってみせる辺りも、良い奴っぷりが伝わってきましたね。  作中にて、ユーモア部分も適度に取り入れつつ、それらは大体ゾンビ達に担当させて、主人公側の人間達は出来るだけシリアスな雰囲気を保てるよう配慮しているのも、良いバランスだったのではないでしょうか。  特に、図書館では静かにするよう「シーッ」と言い出すゾンビなんかは、自分もお気に入りです。  では、難点はというと……何だか根本的な話になってしまうのですが、緊張感が無いのですよね。  蚊に刺されただけでも感染してしまうという設定は非常に驚異的なのに、何故か主人公達は返り血ばんばん浴びまくって、口にも血が入っているはずなのに、全然平気で人間のままなのです。  (えっ? 感染しないの?)という混乱が先立ってしまい、折角真面目にゾンビ映画をやってくれていても、その世界の中に没頭出来ない形。  その他、暗闇の中の人影を「人間か」と思って近付いたら「実はゾンビだった」ってパターンが連続して発生するので(またかよ)とゲンナリしてしまったのも大きいですね。  序盤の段階で、こういう演出への不信感みたいなのが芽生えてしまうと、中々払拭するのは難しいみたいです。  極め付けは「大切な血液サンプルを失ってしまった」という展開を、終盤の短時間の内に二度も見せられた事で、これはもう、正直ガッカリ。  これまでの事は全部無駄骨だったなんて、観ているこちらまで落ち込んじゃいます。  主人公とヒロインの二人は生き延びる為、後味が最悪という事はなく、その点に関しては安心。  作り手は色々と頑張ったのは伝わってくるだけに、もう少し達成感というか、カタルシスを与えて欲しかったなぁ……と思わされた一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2016-11-21 10:07:37)《改行有》

204.  赤毛のアン/アンの結婚〈TVM〉 《ネタバレ》  シリーズ三作目は、まさかまさかの「戦争モノ」で吃驚。  前二作の監督さんが制作と脚本を担当しているので、もしかしたら、元々こういうジャンルの品を作りたかったのかも知れませんね。  直接アンが人を殺めたりするシーンは無いし、戦争行為に参加していても目的は「行方不明となった夫のギルバートを探す事」「医薬品の購入代金にする為の宝石を運ぶ事」「乳児を無事な場所に送り届ける事」などに限られている辺りは、作り手の配慮が窺えます。  ただ、前作に続いてアンと男二人との三角関係が描かれており、これには思わず「またかよ!」とツッコんでしまいましたね。  不倫という要素もプラスされて、ますますメロドラマ的な色彩が濃くなっており、自分としては非常に残念。  終盤の夫との再会シーンなどは、それなりに感動的に仕上がっているし、戦地を慰問に訪れた女優二人組とのやり取りは中々楽しかったりもしただけに、勿体無く感じられました。  マリラおばさんが既に死去した設定なのは、時間経過を考えれば納得なのですが、死に際の台詞が作中で語られるでもなく、幻影となってアンに話しかけてくれる訳でもなく、回想シーンで過去作の映像が流れるくらいの扱いだった辺りも、寂しい限り。  そんな本作でさえも「上述の乳児を養子として引き取って、夫婦一緒に故郷に帰る」という、明るいハッピーエンドで〆てくれた事は、嬉しかったですね。  戦争という暗い影さえも、アンを決定的に不幸にする事は出来ず、少女期から培われてきた「周りを幸せにする力」に打ち払われてしまったのだな……と思えば、何とも痛快な映画でありました。[DVD(吹替)] 5点(2016-09-02 18:29:47)《改行有》

205.  百万円と苦虫女 《ネタバレ》  作中人物に「えっ? 何で?」と思わされる事が多く、残念ながら肌に合わない映画だったみたいです。  まず、主人公の弟が「僕は逃げない」「だから受験はしません」と言い出す理由が分からない。  怪我させた相手に許してもらうまで諦めないというなら、別に中学が変わっても会いに行けば良い話だし、結局は事件を起こして問題児となったから受験を諦めたという、後ろ向きな結論に思えてしまいます。  主人公の彼氏が「彼女にお金を使わせていた理由」を言えなかった事も不自然で、男の見栄がそうさせていたというなら、どう考えても食事を奢ってもらったり借金したりする方が、情けなくて恥ずかしいのではないかなと。  極め付けがラストの主人公の行動で、結局また引っ越すって、どうしても理解出来ない。  「色んな人から逃げていた」と反省したはずなのに「今度こそ次の街で、自分の足で立って歩こうと思います」って、それ典型的な「明日から頑張る」な先送り思考じゃないかと、盛大にツッコんでしまいました。  これまで「自分探し」という行いからも逃げていた主人公が、今度こそ自分探しの旅を始めるという事なのかな……とも思ったのですが「今回は引っ越すけど、次の街では定住してみせる」なんて考えているようなので、そんな解釈すらも不可能。  泣いてスッキリしたら、またまた仕事を辞めて旅立ち「引っ越さずに、この場所で頑張ってみる」「彼氏を信じて待つ」という事さえも出来なかった姿からは、どうにも成長を感じ取る事が出来ません。  そもそも物語の合間に挟まれる「弟がイジメられる光景」が、実に胸糞悪くて、そちらの方が主人公の悩みなんかよりも余程深刻に感じられる辺り、物語の軸がブレているようにも思えました。  監督さんとしては、あの「男女が再会出来ずに、すれ違ってしまう切ないラストシーン」を描きたかったがゆえに、多少の不自然さには目を瞑ってでも、こういうストーリー展開にしたのかなぁ……と推測する次第ですが、真相や如何に。  そんな本作の良かった点としては「かき氷を作るのが上手い」「桃を採るのが上手い」と褒められるシーンにて、こちらも嬉しくなるような、独特の爽やかさがあった事が挙げられますね。  こういった形で「働く喜び」のようなものを描いている映画は、とても貴重だと思います。  同僚の女性に「良いんですか? 誤解されたままじゃないですか」と、長台詞で「不器用な彼氏の真意」を種明かしさせた件に関しても、今になって考えてみると、良かったように思えますね。  当初は(ちょっと分かり易過ぎるよなぁ……)とゲンナリしていたのですが、曖昧なまま「もしかしたら、愛情ゆえにお金を使わせていたのか?」と含みを持たせるだけで終わるよりは、ずっと誠実だったかと。  主人公に「来る訳ないか」と言わせた点も含め、両者の恋愛模様に対し、はっきりと答えを出してみせた姿勢には、好感が持てました。[DVD(邦画)] 3点(2016-08-31 07:38:20)(良:2票) 《改行有》

206.  気球クラブ、その後 《ネタバレ》  青春の「その後」といっても、続きではなく終りの話であった訳ですね。  気球クラブ「うわの空」にて、情熱を抱いて気球を飛ばしているのはクラブの創設者である村上しかいない。  その他のメンバーは、主人公の二郎を含めて「本当は、気球なんかどうだって良い」と考えているような奴ばかり。  序盤は、この設定に対し(それって、村上以外のメンバーは楽しいの?)と疑問を抱いてしまい、今一つ映画に入り込めずにいたのですが「花見」という喩えが出てきた場面で、ようやく納得する事が出来ました。  頭上に美しい桜が咲いていても、集まった連中は殆ど見ていない。  ただ酒を飲んで、騒ぐ口実が欲しいだけ。  気球を飛ばす事に「夢」を見出している村上の存在は、酒の肴であり、宴の名目であり、単なるシンボル以外の何物でもなかったのだなと、微かな寂しさと共に理解させられました。 「気球クラブの部屋に一人でいる時に、誰かが入って来て、こう言うの」 「なんだ、まだ誰も来てないのって……私がいるじゃん」  という台詞なんかは、凄く印象深かったです。  クラブのメンバーが求めるのは「個人」ではなく「集団」であった事が窺えるのですが、それよりも何よりも、単純に発言者の女性が可哀想で仕方ない。  そういう場合は、せめて「他の皆は来ていないの?」と言ってあげたいものですね。  村上の死を契機に、気球クラブのメンバーは再び集まって、昔のように気球の中で、最後の宴会を開く事になる。  そこで「もう二度と会わないから」と、互いの携帯番号やメールアドレスを抹消する訳ですが、それが非常に爽やかに、明るく描かれているのも驚き。  けれど、その明るさは決して前向きなものではなくて、どこか後ろ向きであるように感じられるのです。  この映画の主人公が、夢追い人の村上ではなく、傍観者の二郎である点も含め、伝えたかったテーマとしては「夢を抱き、追い続ける事の素晴らしさ」ではなく「夢を抱かない人間の虚しさ、夢を諦めてしまった人間の切なさ」であるのかな、と思わされました。  その後の「ボクは社会人の振りをして生きるのがうまくなった」という独白。  忙しない日常の中で、空飛ぶ気球を見つめて、淡い笑みを浮かべる登場人物達の姿。  ここで終わっていれば「爽やかな青春映画」と評する事も出来たのですが、そうさせてくれない辺りが、園子温監督。  時間軸を巻き戻して「村上と、彼の恋人である美津子が、気球クラブを作った頃の話」を描き、映画に深みと苦みを与えてくれているのですよね。  このエピローグによって「誰が電話しても繋がらなかった美津子が、二郎の恋人からの電話は受けた理由」が明かされる形となっており、それには感心させられたのですが、最後の最後で「村上が風船に託した手紙の中身」を明らかにしなかった事は、大いに不満。  こういった謎を残す形の方が、余韻が生まれて良くなる場合もあるのは分かりますが、完璧に謎のまま終わらせた訳ではなく「主人公の二郎は手紙を読んだのに、観客に内容は明かさないまま」というのが、何とも意地悪に思えたのですよね。  それなら手紙を拾っても開封しないまま、秘密は秘密のままで、再び空に浮かべてあげる形にして欲しかったなぁ、と。  仕方ないので、以下は自分なりの推理。  気球で二人きり、空を飛びながら村上に求婚された際「地上で、これ(指輪)を渡して欲しい」と応えた美津子の台詞からは「もっと地に足を付けて、立派な社会人となってから求婚して欲しい」というメッセージが窺えます。  そんな美津子の提案を、村上は受け入れられず、地上で指輪を渡す事は出来ないままで、二人は別れてしまいました。  そして「僕の気持ちは変わらない」という村上の台詞。  別れた後でさえも村上が「手紙の中身」を明かせなかった理由。  二郎が手紙を読んだ際の、全く驚きが窺えない表情。  他の誰にも内容を明かさず、再び手紙を空に浮かべるという選択。  以上の判断材料からするに、そこに書かれていたのは「既に皆が知っている事」「今更明かす必要も無い事」であったと考えられます。  つまり、手紙の内容とは「いつか空の上でプロポーズさせて下さい」だったのではないか、と推測する次第です。[DVD(邦画)] 7点(2016-08-15 06:08:52)《改行有》

207.  ちゃんと伝える 《ネタバレ》  映画の最後にて表示されるメッセージから、本作が監督の実父に捧げられた品である事が分かります。  そういった経緯を踏まえて考えると、とても真面目に作られていた事には納得なのですが、園子温監督特有の力強い魅力が伝わって来なかったのは、何とも寂しいですね。  役者さんの演技に関しても、妙にわざとらしく感じられたりして、残念。  「余命幾ばくも無い父との別れを惜しんでいたら、実は自分の方が重度のガンであった」という設定は面白いのですが、今一つ効果的に作用していないようにも思えました。  結局、主人公の死までは描いていないし「ヒロインがプロポーズを受け入れてくれる事」くらいにしか影響が窺えません。  それにしたって、彼女に関しては「理想の恋人」以外の個性が窺えなかったりするものだから、短命なのを承知で結婚してくれても、それが当然の流れであるように思えてしまい、観ていて感情が揺さ振られないのです。  また、全体の流れを眺めてみても「父親の死と、約束の釣り」という泣かせ所の後に「主人公がガンである事を恋人に告白する」という泣かせ所が続いて、観ていて疲れてしまう形であり、しかも明らかに前者の方に比重を置いた構成だったりするものだから、どうにもチグハグな印象。  良かった部分としては、劇中の音楽が挙げられますね。  静かな旋律の中に、優しさを感じられます。  主人公の母を、いつも病院まで送り迎えする形となり、すっかり顔見知りになっていたバス運転手が、無人のバス停を見つめて、寂しそうにバスのドアを閉じるシーンなんかも印象的。  監督さんの力量は確かでしょうし「こういうタイプの映画も撮れるのか」と感心させられる気持ちはあったのですが、それが感動にまで繋がらなかった事が、寂しく思えてしまう一品でした。[DVD(邦画)] 4点(2016-07-27 05:55:55)《改行有》

208.  ヤッターマン(2008) 《ネタバレ》  元々アニメ版においてもドロンジョ達が主役だった印象があるのですが、実写映画版では、それが更に顕著な作りとなっていますね。  ではヤッターマン達の出番はどうするのか、という問題に対し「ドロンジョが一号に恋をする」という設定を持ち出して、三角関係という形で解決してみせた辺りが上手い。  深田恭子さんは意外な程のハマり役で、当初こそ「おばさんっぽい色気が足りないのでは?」と思っていたはずなのに、終盤に至る頃には、完全に心奪われていました。  ちょっとロリータな魅力も秘めていたりして、背伸びして悪役ぶっているような感じが、実に可愛らしかったのですよね。  「夢は、お嫁さんになる事」と判明するシーンなんかは、特に素晴らしくて、思えばあそこから画面に釘付けになっていたような気がします。  作中のギャグに関しては「うわぁ、下らない……」と笑ってしまうか、呆れてしまうか、半々といったところ。  ラストにて親子が山を降りていくシーンや、ヤッターキングを大きく作り過ぎてしまったシーンは前者。  バージンローダーが攻撃に悶えたり、消えてはならないものが消えたりする件が後者でしょうか。  「助けるだけが正義じゃない。誰だって自分の力で乗り越えなければいけない時がある」などの台詞はシリアスで良かったと思うのですが、その後にあからさまなギャグ(阿部サダヲの一人芝居)に繋がる辺りは、ちょっと好みとは違っていたかも。  シリアスで決めるところは決めて欲しかったなぁ、と思わされました。  アニメで印象的だった「三人組が解散し、それぞれ別の道を歩いていくも、結局その道は再び一つに合流するようになっている」場面が再現されていたのは、嬉しい限り。  エンドロール後に流れる次回予告も、中々に興味深い内容でしたね。  観客に楽しんでもらおうという気持ちが伝わってくる、サービス豊かな映画でありました。[DVD(邦画)] 6点(2016-07-06 08:16:15)《改行有》

209.  シーズンチケット 《ネタバレ》  この映画はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、それを読ませないバランス感覚が、非常に優れていたと思います。  正直に告白するならば、銀行強盗を企てる直前までの流れにて、少年二人の破滅的な最後も覚悟していただけに、あの心温まる結末には意表を突かれましたし、安堵もさせられましたね。  本来望んでいた通りの形では無かったけれど、彼らなりの「シーズンチケット」を手に入れる事が出来た……というのは、凄く良い終わり方だと思います。  奉仕活動が十二ヶ月という期限付きなのも、上手いなぁと感心。  その一方で、少し気になったのは、作中で一番悲惨な境遇だと思われる主人公の姉、ブリジットの顛末が語られず仕舞いだった事でしょうか。  彼女の行方が不明のままだったので、ラストの爽快感も薄れてしまった印象があるのですよね。  意地悪な言い方をするならば、意外なハッピーエンドに繋げる為に不幸な要素を数多く盛り込み過ぎて、それを回収しそびれたという印象も受けてしまいました。  主人公達が悪事を働いているのを誤魔化すかのように、父親や教師などの「もっと酷い悪役」を登場させてバランスを取ってみせたかのような部分も、あまり好みとは言えません。  チケットを買う為の貯金を、最悪な父親に奪われてしまうのは確かに可哀想なのですが、あんまり同情的に描かれてしまうと(それって、元々は悪い事して貯めた金でもあるんだよね?)と、疑問符も湧いてきました。  でも、やっぱり全体的には「良かった」と思える部分の方が多かったですね。  特に印象的なのは、主人公が父親と一緒にサッカー観戦した思い出を語る場面。  (へぇ、あの親父さんも昔は良い人だったのかな……)などと感じていたところで、実はそれが主人公本人の思い出ではなく、親友から聞かされた思い出話を、さも我が事であるかのように語っていただけなのだと明かされる件なんかは、とても切ない気持ちに襲われました。  チケットを「二人分」手に入れるのではなく「一人分」だけ手に入れて、それを交互に使ってはどうかと親友が提案するも、主人公が首を振って否定するシーンなんかも良い。  二人で観戦しなければ意味が無いんだよ、という友情が伝わってきて、犯罪者であるはずの彼らを、ついつい応援したくなってしまいましたね。  焚火を前にして、一度はチケットを手にするのを諦めた親友が「結構、楽しかったよ」「最低の暮らしの中で見た、一つの夢さ」と語る場面なんかも、忘れ難い味わいがあります。  その後、銀行強盗で捕まり、夢破れた後も奇妙に満足そうにしていた彼の姿が、何だか象徴的。  結局、この映画ではラストにて夢が叶った形なのだけど、夢を叶えたという結果以上に「夢を叶えようと頑張る」過程にこそ、本当に大切なものがあるのかも知れないな、と思わされました。[DVD(吹替)] 7点(2016-06-15 07:10:52)《改行有》

210.  隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 《ネタバレ》  映画をリメイクするというのは、勇気のいる事だと思います。  それが原作小説や原作漫画の存在しない「オリジナル」の映画であり、しかも名作と呼ばれる品であるならば、尚の事。  本作に関しては、元ネタである1958年版の後に、立て続けに観賞する形を取ったのですが、中盤以降の展開を大胆にアレンジしているのが特徴ですね。  最初、主人公の名前は「武蔵」で松本潤が演じると聞いた時には「えっ、何それ? 全く新しい人物を主役に据えるの?」と思ったものですが、蓋を開けてみれば「太平」の名前を「武蔵」に変えただけ、と言っても差し支えない程度の変更でした。  アイドルに疎い自分でも知っているようなビッグネームが主人公とヒロインを演じている訳ですが、ちゃんとある程度「汚れた」デザインを心掛けており、役者当人の顔立ちの違いはあっても、全体的なイメージはそれほど離れてはいなかった事も好印象。  特に男性側に関しては、美男子であるにも拘わらず髭ぼうぼうで小汚い乞食のような格好で終始通した事には、思わず感心。  「追っ手を欺く為に」とか何とか理由付けして、途中で髭を剃って髪を整えて、小奇麗な身なりに変身するのも可能だったでしょうからね。  その点に関しては、オリジナル版の下層階級と上層階級の対比を守ろうとしたのだろうなと、誠意を感じました。  女性の肌の露出度が下がっているのは、残念といえば残念ですが、まぁコレは元々がサービス過剰というか「ちょっと黒澤監督、助平な観客に媚び過ぎじゃないか?」と思っていたりもしたので、肌を晒さない衣装にした気持ちも分かります。  他にも、色々と小ネタも盛り込まれているし、スタッフはオリジナル版を愛し、リスペクトした上で真面目に作ったのだろうなと思いました。  ただ、どうしてもある程度は比較しながら観てしまうので、気になる点も多かったですね。  まずは、演出が物凄く分かり易くて、大袈裟な点。  六郎太に斬られて死んだと思われた武蔵が、実は生きていたと分かる場面なんかも、勿体付けてさも驚きの展開みたいに描いているのですが、いくらなんでもそれは生きてるって分かるよと、ついつい苦笑してしまったのですよね。  こういう万人向けの演出は好ましいと思っているのですが、本作は流石に分かり易過ぎたのと、その頻度が高過ぎるように感じられて、食傷気味になってしまいました。  また、一本の映画として観た場合には意味不明に感じられる「オリジナル版のパロディ演出」も多くて、好きで盛り込んだのは分かるけど、何もそこまでしなくても……と思ってしまいましたね。  武蔵と新八が籤引きをするシーンなんて、オリジナルと違って目の前で姫様が無防備な寝姿を晒している訳でもないのに、道端で急に始めるものだから、唐突感が否めない。  極め付けは「裏切り御免」の使い方で、いやいや今までそんな喋り方してなかったじゃない、オリジナルにあった台詞を無理やり真似させてるの丸分かりだよ! と、冷めた気持ちになってしまいました。  でも、リメイクならではの長所も幾つかあって、関所をオリジナル版と同じ手法で通過出来てホッとした後に、突然呼び止められてドキッとさせられるサプライズなんかは、素直に驚かされて、嬉しかったですね。  阿部寛演じる六郎太も貫録があって良かったし、兵衛さんが元ネタと思しき悪役の鷹山なんかも、面白いキャラクターだったと思います。  何より興奮したのが、オリジナル版でほぼ唯一の不満点だった「クライマックスでの主役不在」が解消されている事。  ちょっとそこの「姫を助け出す」パートが長過ぎるよ! と思ったりもしたのですが、それでもやっぱり、喜びの方が大きかったです。  民を信じて金を預けた姫様が裏切られる事なく、笑顔で出迎えられた結末も、それに伴う主人公との別れなども、良かったと思います。  その他、友人から「ダースベイダーのそっくりさんが出るよ」と聞かされていたもので、覚悟して観賞していたら「これ、蒲生氏郷じゃん!」とツッコまされたという余談もあったりして、何だかんだで楽しい時間を過ごせた映画でした。[DVD(邦画)] 5点(2016-06-08 20:56:34)《改行有》

211.  俺たちステップ・ブラザース -義兄弟- 《ネタバレ》  主役の二人が十歳と九歳であったなら、微笑ましいファミリームービーだったのだろうなと思います。  それぞれの父と母が再婚する事になり、義兄弟となった幼い二人が喧嘩しながらも絆を育んでいくという形。  新しい母親が自分をどれだけ甘やかしてくれるか確かめたり、二段ベッドを作っても良いかと両親に提案したりするシーンなんて、きっと可愛らしかったでしょうね。  それを四十歳と三十九歳の中年男にやらせているというギャップが本作の面白さなのでしょうが、自分としては少々観ていてキツいものがありました。  どちらかというと、主役の二人よりも二人の両親の方に感情移入させられましたね。  この「真っ当な社会人である両親」と「社会不適合者の息子達」の二つの視線を作中に用意している辺りのバランスは、作り手の巧みさを感じます。  そんな訳で、善良な両親が離婚する事になる終盤の展開はショッキングだったし、そこから二人の息子も奮起して社会復帰を果たしてくれる流れだった事には、心底ホッとさせられましたね。  就職すれば嫌味な上司に敬語を使い、苦しい思いもしなければいけないという部分を、キチッと描いている事には感心。  その一方で「働く喜び」のようなプラス面がオミットされていたのは気になりましたが、それに関してはラストの「二人が会社を辞めて起業家として成功する」オチに繋がるのだから、仕方のないところでしょうか。  クライマックスにて、二人がコンビを組んで演奏してみせる場面にはテンションが上がりましたし、それによって周囲の人々が主人公達を認める事になる流れも、王道の魅力がありましたね。  特に好きなのは、ウィル・フェレル演じる兄と、アダム・スコット演じる実の弟が、互いに不器用なハグを交わすシーン。  今では不仲となってしまっていたけれど、幼少期には仲の良い兄弟であった事が回想シーンで描かれていただけに、笑いの中にも微かな感動を覚えたりもしました。  ただ、最後の最後で意地悪な子供達に復讐する主人公コンビに関しては「なんて大人げない……」と感じてしまい、今一つカタルシスを得る事が出来ず、残念。  それでも、両親も無事に復縁し、主人公達も再び「兄弟」に戻れたハッピーエンドという形だった事は、良かったなぁと思えました。[DVD(吹替)] 6点(2016-06-06 19:18:14)(良:1票) 《改行有》

212.  プルート・ナッシュ 《ネタバレ》  黒幕が主人公のクローンであるという展開には意表を突かれましたし、二人が殴り合う場面なども面白かったです。  でも、悪役側に対しては「見分ける方法くらい用意しておけよ!」とツッコまずにはいられない。  そういった、何処か間の抜けた感じが本作の魅力なのでしょうか。  時間を損したという訳では決してなく、観ている間は退屈しなかったけれど「ああぁ、良い映画だなぁ……」と思える瞬間が訪れなかった事は、非常に残念。  主演がエディ・マーフィで、監督は「トレマーズ」と同じ人、という事で期待値が高過ぎたのかも知れませんね。  もっと肩の力を抜いて、リラックスした状態で観るべき映画だったのだと思われます。  そんな本作で目を引くのは、やはり脇を固める豪華な出演陣。  バート・ヤングが冒頭にチョイ役で顔見せしていたりして、自分としてはそれだけでも嬉しかったりしましたね。  特にランディ・クエイド演じるロボットのブルーノは、とても愛嬌があって、本作最大の癒しキャラ。  そして、主人公の母親としてパム・グリアが登場するのには驚いたし、クスッとさせられました。  何せ彼女が出てくる場面って、特にストーリー上は必要無かったように思えますからね。 「出したいから出したんだ、文句あるか」  という作り手側のメッセージが伝わって来るかのようで、少々呆れながらも、妙に微笑ましくて憎めなかったです。[DVD(吹替)] 5点(2016-05-28 14:36:13)《改行有》

213.  ザ・インタープリター 《ネタバレ》  ニコール・キッドマンという人は、本当に美しい女優さんだなと、しみじみ実感。  主人公二人が共に悲劇的な過去を背負っている為、互いに慰め合っている内に恋愛感情が芽生えていく流れかな……と予想していたら、それを裏切ってくれたのが気持ち良かったですね。  冒頭のサッカー場での、少年達による銃殺シーンも衝撃的でしたし、中盤に起きるバス爆破シーンの迫力も見事。  実は一連の暗殺事件は、大統領側による狂言だったというオチも面白いと思います。  ただ、そういった要素の一つ一つは魅力的だと思うのですが、映画全体として考えた場合、少し贅沢過ぎたようにも感じました。  それというのも、立て続けにスケールの大きい事件が起こってしまうものだから、何やら置いてけぼり感覚があったのです。  なまじリアルな作風で、主人公達の能力も等身大であるがゆえに 「こんな事件、本当に彼女達で解決出来るの?」  という疑問符が浮かんでしまい、どうも画面に集中する事が出来ませんでした。  ニコール演じるシルヴィアが、大統領に銃を向けるクライマックスに関しても 「ここまで感情移入させて描いてきた主人公に、要人殺害の罪を背負わせたりはするまい」  と、何処か冷めた目で見つめてしまう事になったのが、非常に残念。  ラストにて読み上げられる死亡者リスト。  そして「誰も待っていない、思い出だけが残る故郷」に帰ると告げるシルヴィアの姿は、とても印象的で良かったですね。  自分にとっては、少し歯車が噛み合いませんでしたが、丁寧に作られた真面目な映画だと思います。[DVD(吹替)] 5点(2016-05-27 12:00:02)《改行有》

214.  スティック・イット! 《ネタバレ》  女子の体操競技には、あまり興味が無かったような自分にも分かりやすく、楽しめる内容となっていましたね。  編集のテンポが良く、音楽もノリノリで、観客を飽きさせません。  レオタードがズレるのを防ぐ為に、滑り止めのスプレーを吹きかける場面などの 「詳しい人なら知っているので、ついつい説明を省いてしまいそうな部分」  を、きちんと映像化して教えてくれた形なのも嬉しかったですね。  主人公ヘイリーの皮肉っぽいモノローグによる 「体操競技って、こんな感じ」  という解説も、初心者に親切な作りとなっていて、ありがたい。  一見すると優雅で美しい世界に思えるかも知れないけど、その実は血が滲む程に厳しいトレーニングを行っているんだぞ、と分からせてくれる辺りも好みでした。  ただ、終盤の展開には少し疑問というか、観ていて呆気に取られてしまい、最後まで一緒にノリ切れなかったのが残念。  そりゃあ主人公の主張が間違っているとは思いませんし、ブラが見えた程度で減点の対象になるのは納得いきませんが、だからって周りの選手達も揃ってサポタージュしてみせるだなんて、流石に無理があるように思えました。  最後の床運動に関しても、本来なら型破りで痛快なシークエンスなのでしょうが、上述の展開にて興醒めしたせいもあり、どこか距離を置いて眺めるような形になってしまった次第。  気持ち良くハッピーエンドで終わってくれた事も含めて、素直に「面白かった!」と言いたいところなのですが……  やっぱり、クライマックスで不満を感じた以上は、それをやると嘘になってしまいそうです。  何だか自分が劇中の意地悪な審査員になってしまったようにも思えて、心苦しい限り。  それでも、実際に観ている間は、心地良い気分に浸れる場面が幾つもあった映画でした。[DVD(吹替)] 5点(2016-05-16 07:57:22)《改行有》

215.  グリーン・デスティニー 《ネタバレ》  この作品が、後世の武侠映画に与えた影響は大きいのでしょうね。  ただ、それゆえに、現代の目からすると斬新どころか、陳腐にさえ見えてしまうのが残念なところ。  それだけ模倣されてきた画期的な作品という事ではないか、と頭の片隅では感じているのですが、観賞中「これは凄い!」と唸らされる場面には遭遇出来ませんでした。  とはいえ、終始退屈だったという訳では決してなく、壁走りや竹の上を走る場面、剣を使って敵の剣のギザギザ部分を一気に削ぎ落とす場面などは面白かったし、テンションも上がりましたね。  今時はこんなシンプルな、分かりやすい引っ張り上げ方のワイヤーアクションには中々お目に掛かれないという事もあり、何やらストップモーションで動く怪獣を見るような、時代が違うからこその目新しさもありました。  ではストーリーはどうかというと、残念ながら好みとは言い難い内容。  まず、主人公であろうイェンの立ち位置が「悪い事をしてしまって大人に追いかけられている子供」という印象なのです。  善人とは言い難いし、かといって格好良い悪党でもない。  作中の雰囲気からしても、いずれ彼女に罰が当たるという事は随所から感じ取る事が出来るので、彼女に感情移入して物語を追いかけると、酷く居心地の悪い感覚を味わう事になるのですよね。  じゃあ俯瞰で楽しもうと距離を置いて観賞すれば、何だか家出娘が引き返せずにどんどん深みに嵌っていくのを見守るだけのような気分になって、やっぱり楽しめない。  結末もハッピーエンドとは思えず、スッキリしない後味となってしまいました。  好みの映画ではない、と断言出来たら気持ちも楽なのですが、上述のアクションの数々など、面白かった部分も確かに存在しているのが、悩ましいところですね。  著名な竹林での攻防シーンも、非常に緑が印象的で、白い着物が幻想的で、美しさすら感じました。  とかく知名度が高く、エポックメイキング的な作品という事もあり、何とも判断が難しい。  この映画は面白いかと問われたら、素直に頷く事は出来ませんが、そういった諸々を含めて、観る価値はあった映画だと思います。[DVD(吹替)] 5点(2016-05-07 07:53:24)《改行有》

216.  あるいは裏切りという名の犬 《ネタバレ》  ダニエル・オートゥイユといえば「メルシィ!人生」などのコメディ映画の印象が強かっただけに、今作には衝撃を受けました。  とてもシリアスであり、それ以上にシンプルな力強さを備えた刑事ドラマ兼犯罪ドラマであったと思います。  邦題は格好良いけれど、そこまで「裏切り」に重点が置かれた映画とも思えなかったので、観賞後には少し違和感を覚えましたね。  けれど自分のように、このタイトルのお蔭で興味を持つ方も多いでしょうし、プラマイゼロ、あるいはプラスの方が上、といった感じでしょうか。  主人公レオの存在感も素晴らしかったのですが、個人的に圧倒される思いがしたのは、悪役であるクランの方。  このキャラクターは、一概に「悪役」とは言い切れないくらいの深みがあるんですよね。  元々は主人公の親友だったのに敵対してしまう事になるとか、主人公の妻も交えた三角関係だとか、よくよく考えてみれば王道で、ありがちな設定ばかりなのだけど、観ている間は凄く新鮮な気持ちを味わえました。  理由を分析してみるに、恐らくは演じている役者さんの「うわぁ、こいつぁ如何にも悪そうだ!」という風貌と立ち振る舞いに、単純な「嫌な奴」であると思い込んでいたところで、少しずつ「善人」の名残を見せてくれるというギャップに、すっかり参ってしまったのでしょうね。  特に唸らされたのが、囚人となった主人公が娘を抱きしめられるように、そっと手錠を外してみせる場面。  そこには確かに善意や友情を感じられる一方で、同時に主人公の怒りを和らげるのが目的の罪滅ぼし、醜い誤魔化しといった負の感情も伝わってきて、非常に味わい深いものとなっています。  この映画で、最も印象に残るシークエンスでしたね。  こういった物語では、単なる背景設定だけで終わってしまう事も珍しくない「今は争っている二人だが、元々は親友でありパートナーであった」という要素を、実に上手く活用していたと思います。  そして出所した主人公が裏切り者に制裁を加えるべく動き出す終盤で、映画は最高の盛り上がりを見せる……と言いたいところなのですが、あまりにも展開が早過ぎて、あっさりと決着を付けた印象があり、少々残念でした。  確認してみたら、映画が始まって「主人公の逮捕」に至るまでが約一時間。  そこから二十分ほどで「主人公の出所」。  そして残り二十分で結末まで辿り着く訳だから、どうしても後半が駆け足に感じられます。  もう少し、主人公が刑務所に入る前と後のバランスを考慮して、多少上映時間が伸びるのを覚悟の上で前後の尺を同じくらいにしても良かったんじゃないかな、と思う次第。  ラストシーンに関しては「これって主人公も死ぬんじゃない?」と予想していた中で、娘と共に和やかなハッピーエンドを迎えてくれて、嬉しかったですね。  あぁ、そうか、だから主人公に復讐の引鉄をひかせなかったのか……と、しみじみ納得させられました。  亡き妻の仇に対して、自ら手を下す姿だって、そりゃあ絵になるかも知れませんが、残された娘の事を思えば、やはり主人公の決断は正しかったのでしょう。   静かなエンディング曲も相まって、ノワール映画とは思えぬほどに、優しい余韻を与えてくれる映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2016-04-25 21:34:13)《改行有》

217.  ルームメイト2 《ネタバレ》  続編というよりはリメイクに近い印象を受けました。  1で印象的だった「髪型を同じにしてルームメイトとの同一化を図ろうとする女性」というシークエンスなども、ほぼそのまま再現されていますね。  ただ、長い黒髪を短い茶髪に変えた前作に比べると、今回は髪色を変えた程度の変化に思えて、インパクトは弱かったように感じられます。  「良い子」だと思っていたルームメイトが、卑猥な店で働いているのを見かけて衝撃を受けるシーンなども、今作の女優さんに関しては失礼ながら「そういう店で働いていても驚かないタイプ」という印象を受けたので、意外性という点では不利かと。  序盤は前作とは違う展開だっただけに、新しいストーリーを見せてくれるかと期待していたところだったので、中盤以降は「結局、同じ話になるのかよ!」という落胆を感じてしまった……というのが、正直なところですね。  2から先に観ていれば印象も変わったかも知れませんが、この辺は後発の作品の辛いところ。  結末に関しても大体同じなのですが、彼氏が生き残っているのでハッピーエンド色が強まっている一方、ヒロインは死んだルームメイトに憑りつかれているような描写もあり、一概に後味が良いとは言い切れないものがありました。  相手を殺して一緒に死ぬ事が愛情表現であった彼女に対し、ヒロインは殺すだけで自分も死んであげる事は出来なかったという形で「彼女の愛には応えられない」という事を示した点に関しては、中々味わい深くて好みです。  最後にヒロインが見せた笑顔は、過去を吹っ切ろうという決意の表れにも、殺したルームメイトと同化するのを受け入れたようにも思えましたね。  それまでは予定調和な展開ばかりだった中で、初めて「この後どうなるの?」と身を乗り出した途端に、スタッフロールが始まってしまうというオチ。  何とも残酷な映画でした。[DVD(吹替)] 5点(2016-04-17 19:40:06)《改行有》

218.  スティーブン・キング/ドランのキャデラック 《ネタバレ》  クリスチャン・スレーター主演という情報を元に観賞してみたら、まさかの悪役。  元々善玉だけでなく悪党も器用に演じきる俳優さんという印象がありましたが、今回もハマっていましたね。  彼が演じた役柄で一番好きなのは「フラッド」の主人公なのですが、この映画のドラン役も、それに次ぐインパクトを与えてくれました。  特に終盤、自慢のキャデラックの中に閉じ込められてしまうシーンでの焦燥感や、息苦しさを伝えてくれる演技なんかは、必見です。  そして、そのキャデラック。  映画のタイトルになっているだけの事はあり、魅力たっぷりなアイテムとして描かれています。  完全防弾、背後を追跡してくる車を観察出来るカメラ、車内用パソコンに、緊急時の酸素吸入器(?)まで付いているという至れり尽くせりっぷり。  劇中では悪役が乗り回している代物であり、主人公にとっての復讐の対象となる車なのですが、妙に男の子心を刺激され、憧れてしまう存在でした。  原作がキングという事もあってか、主人公に妻の亡霊が見える設定もあるのですが、こちらに関しては必然性があったのか、少々疑問。  妻が妊娠していた事を悟らせる効果があったのでしょうが「それって幽霊経由でなくとも良かったのでは?」という疑念を抱いてしまいましたね。  映画後半では主人公とドランとの一騎打ちとなって、妻の幽霊は全く姿を見せませんし、決着が付いた後に、何か一言残して天国へと旅立ってくれる訳でも無し。  よって、幽霊の存在が途中から立ち消えする形となり、何だか宙ぶらりんに感じてしまうのです。  超常現象などを絡めずとも、純粋に復讐譚として楽しめるクオリティがあるじゃないかと思えただけに、そこが気になってしまいました。  映画終盤「主人公が行動を起こさずとも、いずれドランは逮捕される運命だった」と判明する件に関しては、実に皮肉が利いていて良かったと思います。  逮捕のキッカケとなった児童売買についても、ドランは決して乗り気ではなく、むしろ苦悩すら垣間見せていた辺りなんかも、好みのバランス。  主人公側だけでなく、ドラン側にも感情移入させてくれて、両者の対決の行方がどうなるのかに注目させてくれました。  全てが終わった後に、空を見上げて、乾いた高笑いを響かせる主人公。  そこには達成感が多分に含まれていたのでしょうが、それと同時に、復讐の空しさも感じていたのではないかな、と思えます。  独特の後味を与えてくれる映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2016-04-13 17:26:03)《改行有》

219.  トランスポーター 《ネタバレ》  これは度胆を抜かれた映画ですね。  「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」でお馴染みの顔だったジェイソン・ステイサム。  彼が主演の映画という事で、軽い気持ちで観賞してみたら、予想を遥かに上回るアクション濃度。  特に終盤の上半身裸になっての格闘シーンは圧巻で 「えっ? この人こんなに強かったの!?」  と、画面の中で躍動する彼の姿に、呆気に取られ、次いで笑みが込み上げてきたのを覚えています。  序盤に繰り広げられるストーリーや、主人公とヒロインの設定に関しては 「あぁ、リュック・ベッソンだなぁ……」  としか思えず、完全に油断していただけに、今作で明かされた「強さ」というステイサムの強烈な個性に、痺れてしまいました。  今は日本でも気軽に購入出来るようになったジュースのオレンジーナを、作中でヒロインに飲ませてあげるシーンなんかも印象深いですね。  ラストも囚われの人々を開放するのと同時に、スパっと切れ味良く終わるのも好印象。  エンディング曲も好みでしたし、気持ちの良い時間を過ごせた一品でした。[DVD(吹替)] 7点(2016-04-12 08:06:17)(良:1票) 《改行有》

220.  模倣犯 《ネタバレ》  森田芳光監督の作品は、好きなものが多いです。  この映画も、監督のセンスを感じさせる場面は幾つかあるのですが、全体的に考えると「面白かった」とは言い難いですね。  原作小説に比べると、犯人であるピースを妙に大物扱いしているというか、感情移入させようと描いているような意図が窺えて、そこに違和感を覚えました。  勿論、それはそれで映画独自の魅力とも言えますし、犯人のプライドを刺激して自白を引き出す件など、原作で(いくらなんでも性格が子供っぽすぎる……)と感じられた反応が、比較的落ち着いたものに変わっている点は好み。  けれど、総じてマイナス面も大きいように感じられて、ラストの爆発シーンや、その後の「子供を託す」オチには流石に唖然。  全編に漂う独特の悪ノリ感、そして時折垣間見せる緊張感の緩急は決して嫌いではないのですが、ギリギリで「好き」と言える領域に踏み込んできてくれない、そんなもどかしさを感じた映画でした。[DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 11:29:35)《改行有》

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