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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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241.  コードネーム U.N.C.L.E. ナポレオン・ソロ役には当初トム・クルーズが予定されていたものの自前の企画『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』を優先して降板し、代わってジェームズ・ボンド役の最終候補にまで残った経験のあるヘンリー・カヴィルが登板ということで、スパイ映画って意外と少ない人数で回してるのねということが印象的だったのですが、カヴィルのハマり具合は素晴らしく、次期ボンド役は彼でいいんじゃないかと本気で思ってしまいました。高級スーツがよく似合うし、スーパーマンも演じる肉体派だけあってアクションをやる時の身のこなしには説得力があります。さらにはユーモアのあるセリフをサラっと言えるため、どんな時にも涼しい顔をしていられる超人的な役柄にピタりとハマっているのです。 また、相手役のアーミー・ハマーは190cm超の巨体を活かしてソ連の堅物役になりきっているし、アリシア・ヴィキャンデルは『黄金の七人』のロッサナ・ポデスタのような魅力があって、60年代のおしゃれなアクションコメディの雰囲気を身に纏っているかのようです。『オースティン・パワーズ』や『オーシャンズ11』など60年代の娯楽作の復活を目指した作品はいくつかありますが、時代の雰囲気の再現度という点では、本作がベストではないでしょうか。 時代の再現度、それが本作の問題でもあります。いま時のスパイ映画に慣れてしまった身としては、結局事態は解決するのだろうという予定調和な雰囲気の中でいつでもヘラヘラと笑っていられる安心感により、スパイアクションに期待される緊張感を奪われている点が残念でした。主演二人は自らスタントをこなしており見せ場のクォリティは高いものの、それが見る側の高揚感には繋がっていません。ダウニーJr版『シャーロック・ホームズ』でも感じたのですが、ガイ・リッチーの作品は雰囲気ものの領域を出ないように感じます。他方、リッチーの元パートナーにして、元祖ナポレオン・ソロを演じたロバート・ヴォーンの息子だと言われていた(後にDNA鑑定で否定されましたが)マシュー・ボーンは、『X-MEN/ファーストジェネレーション』や『キングスマン』にてレトロな様式美と現代風アクションの折衷に見事成功しており、本作もその領域にまで達して欲しいところでした。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-08-12 18:48:16)《改行有》

242.  ザ・ガンマン 《ネタバレ》 これまで娯楽作への出演を避けてきたショーン・ペンが、突如ジョエル・シルヴァー製作、ピエール・モレル監督というコッテコテのアクション映画に主演。しかも自分で脚本を書くほどの熱の入れようということで、事前にはどんな映画になっているのか見当もつかなかったのですが、雰囲気だけはメチャクチャによくできています。『ブラッド・ダイヤモンド』や『ザ・バンク』のような重い社会性を帯びた娯楽作であり、本編はB級アクションらしからぬ重苦しい雰囲気に覆われています。また、ひとつひとつの仕草にまでこだわり抜いたと思われるほどアクションシーンにおける主人公の行動は洗練されており、きちんとプロの傭兵に見えるだけの説得力があります。それを演じるショーン・ペンの肉体改造は凄まじく、体脂肪率の低そうなバッキバキの肉体を披露。『エクスペンダブルズ』の面々ですらここまで体を作ってきている者はおらず、御歳55歳にしてアクション俳優としてのキャリアが開花しそうな勢いなのです。 ただし、お話しの方がまるで面白くありません。主人公は8年前の暗殺事件を発端とした国際的な陰謀に巻き込まれて命を狙われ、その黒幕を探し始めるのですが、イマイチ観客の興味を引くような流れを作り出せていません。怪しい奴を捕えると、こちらが聞きもしていないことまでベラベラと話してくれる。本編はこれを何度か繰り返すのみなので、面白いわけがありませんね。ラストの展開などは噴飯もので、主人公が持つ証拠動画と、敵に囚われたヒロインを交換しようという取引がなされるのですが、いくらでもコピーできる動画ファイルをわざわざ受け取りに現れる敵一味が間抜けにしか見えません。また、犯罪を首謀した行為の隠蔽がそもそもの目的だったにも関わらず、追い込まれたラスボスは公衆の面前で銃を振り回して女性を追い駆け回すというアホな行動をとり始める始末であり、仮に過去の犯罪行為を隠蔽できたとしても、新たな罪状で逮捕されるだろと呆れてしまいました。 主人公とヒロインの悲しい恋愛や悪人との三角関係、主人公の重病設定も本筋のサスペンスを盛り上げることには貢献しておらず、無駄な枝葉になってしまっています。ショーン・ペンを含めてオスカー受賞者が3人もいるにも関わらず高いレベルでの演技合戦を楽しむことはできず、専ら不自然な展開を誤魔化すために彼らの演技力が費消されているという点も残念でした。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-08-10 20:36:34)《改行有》

243.  バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生 IMAX3Dにて鑑賞。 世間的に評判の悪い『マン・オブ・スティール』の大ファンである私としては、ザック・スナイダーが続投する本作も期待いっぱいで鑑賞したのですが、本作は「期待を上回る大傑作!」というわけにはいきませんでした。ザック・スナイダーの手腕をもってしても、あまりにポテンシャルの違いすぎるスーパーマンとバットマンを無理なく共演させることは難しかった様子であり、各々のヒーローの良い部分を出せないまま終わってしまったという印象です。 スーパーマン対バットマンとくれば、盆対正月のやけくそみたいな大バトルを期待するところですが、中盤はチンタラと腹の探り合いをして、あまり見せ場がありません。ようやく見せ場が始まったかと思っても、実は夢でしたというオチがついたりと、この企画に期待されるだけの熱量がありません。 そもそも、両者は活躍の場が異なります。大空を自由に飛び回るスーパーマンに対して、暗闇を駆け回るバットマン。本作では主人公であるバットマンに合わせて舞台となるのはもっぱら夜であり、スーパーマンは完全に割を食っています。爽快感が皆無なのです。人助けをする場面はあるものの、これがまさかのダイジェスト処理。スーパーマンの雄姿については『マン・オブ・スティール』を参照してねという姿勢で作られているようです。また、クラークがうじうじと悩む様は『スーパーマン・リターンズ』以来の定番ですが、望まぬ能力とどう向き合うかというテーマが明確だった前作と比較すると、今回は一体何に悩んでいるのかがよく分からないので困ったものです。彼のドラマのハイライトは公聴会に出席したところだと思うのですが、何らの意見も表明しないままこれが中断したため、彼の考えは分からず仕舞いです。 バットマンはバットマンで、なぜあそこまでスーパーマンに執着するのかがイマイチ伝わってきません。ゾッド将軍戦で破壊されるメトロポリスに居合わせたことで(なんと、ゴッサムシティとメトロポリスは隣町であることが判明)スーパーマンのパワーの危険性を身をもって知ったとはいえ、まともにやりあえば到底勝てるはずのないスーパーマン打倒に命をかけようとした理由がよく分からないのです。さらには、スーパーマンとの和解にも唐突感があり、総じてドラマがうまく回っていません。クリストファー・ノーランが脚本から外れてしまうと、作品の質がここまで落ちるものかと驚かされました。 そんな中で良いところを持って行ったのが、ワンダーウーマンでした。登場場面の絶妙なタイミング、それまで重苦しかったBGMが突如民族音楽風の派手な音楽に切り替わり、千両役者登場!という空気を盛り上げます。彼女が思いの外強かったことも爽快感に繋がっており、これぞヒーロー映画という醍醐味を味わわせてくれます。彼女が出るのであればジャスティスリーグは安泰ではないか、そう思わせるほどの存在感でした。[映画館(字幕)] 6点(2016-03-26 01:05:24)(良:2票) 《改行有》

244.  トランセンデンス(2014) 《ネタバレ》 生命倫理の問題や、テクノロジーが神の領域にまで達しようとすることの是非、環境問題など、この映画にはとにかくいろんなトピックが盛られています。監督と脚本家は恐らくこれら全部を語りたかったんでしょうけど、キャリアの少ない彼らではこれを扱いきれず、ただのひとつも観客の興味を引くことなく終わっています。難解な題材を華麗に調理するクリストファー・ノーランという天才の下でしばらく働いてきた撮影監督が、「ノーランほどではなくても、それに近いものは自分にも撮れるのではないか」と考えてしまったことは致し方ないところですが、もっと地に足のついた、まずはワンイシューで勝負するところから始めていれば、映画としてはきちんとまとまったのではないかと思います。 監督はあまりに多い構成要素を捌くことにいっぱいいっぱいで、血の通った物語にしきれていません。元は人質として囚われていたポール・ベタニーにどんな心変わりがあってエコテロリストの参謀を務めているのかが不明だったり、一貫して自己中の悪人にしか見えないエコテロリストのケイト・マーラが途中から正義の扱いになることの違和感、モーガン・フリーマンの存在意義など、キャラクターの動かし方が総じておかしいのです。何より問題なのは、誰がどう見ても怪しさ全開の行動をとるAIウィルが、実は良い人でしたというオチに納得感が薄いこと。超越的な知能を持ち、文明社会の森羅万象を動かす力を持っているのだから、人類から猜疑心を抱かれないよう、もっとうまくやれよと思ってしまいました。これと併せて、遠隔操作可能な改造人間を作り始めるに至って、ようやく「最近のウィルって何だか気持ち悪いわ」と感じるようになったエブリンの異常な鈍さにも付いていけず、バカ夫婦の起こした珍騒動という印象が強くなっています。 そんな感じでトピックの扱いでも、人間ドラマでも失敗している本作ですが、救いはビジュアルの美しさで観客の目を楽しませることには成功していること。ノーランの映像美を最前線で支えてきた監督は、ここではきっちりと仕事をしています。 また、脚本レベルでは中盤以降、FBI、民間セキュリティ会社、エコテロリストの連合軍がウィルの要塞に攻めてくるという何とも燃える展開を準備してきますが、この下世話な部分が面白かったので、本作は憎めない作品となっています。人類側は「ハイテク兵器ではウィルに乗っ取られるから、旧式の銃火器で乗り込むぜ!」とやってくる。対して、ウィル側は障害者を改造して作り上げた不死身の強化人間軍団で陣地防衛。前半の真面目な雰囲気をぶち壊すこのバカさ加減には、私の中のB級魂が騒ぎました。また、結構真剣にテクノロジーを扱ってきた作品なのに、このパートではナノマシーンがほぼ魔法の道具扱いになっていて、このヤケクソ加減も私のツボでした。キューブリックの脚本をマイケル・ベイが監督したかのような歪さを楽しめるかどうかが、本作の評価を分ける点なのでしょう。私は嫌いじゃありません。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-01-28 19:24:07)(良:1票) 《改行有》

245.  ブリッジ・オブ・スパイ 視覚的な見せ場が売りの作品ではないものの、それでも時代の再現度は壮絶なレベルに達しているし、U2偵察機撃墜場面やベルリンの壁構築場面の迫力は凄まじく、スピルバーグはスペクタクルの巨匠であることを再認識させられました。 他方、肝心のお話しの方はイマイチでした。正義漢でもない主人公が、なぜ汚名を着せられてまでソ連のスパイの弁護を引き受けたのか。命の危険を冒してまで東ベルリンへと飛んだのか。その辺りが明確に描かれないため、掴みどころのないドラマとなっているのです。 また、法廷闘争や人質交換交渉においては、目的に対して何が問題になっているのか、そしてそれをどうクリアーするのかという形で論点が整理されていないため、そこにスリルやドラマを醸成しきれていません。主人公があっちからこっちへと動き回って、何人かの人と話しているうちに何となく問題が解決していくという流れであるため、感情的な引っ掛かりが少ないのです。この辺りは、もっと引き締まった作りにして欲しいところでした。[映画館(字幕)] 6点(2016-01-09 02:44:50)《改行有》

246.  エベレスト 3D IMAX3Dにて鑑賞。 邦題に3Dを冠した作品だけあって3D効果には素晴らしいものがあって、エベレストの美しさと恐ろしさを存分に味わわせてくれます。急斜面から下を見下ろすショットが何度か出てくるのですが、これが高所恐怖症ではない私でも脇汗をかかされるほどのド迫力であり、『ゼロ・グラビティ』にも匹敵するライド映画となっています。その視覚効果の凄さは、設備の整った映画館で見なければまったく無意味と断言できるほどであり、もし迷っているならすぐに映画館へ足を運ばれることをオススメします。 他方、ドラマの方はかなり淡泊です。比較的最近の事故であるため存命中の関係者が多く、さらには生存者間でも事実認識が割れている点がいくつかあることから、脚色にあたって相当な制約を受けたことがその原因のようで、いろいろと無難に収められています。登山ガイドの隊長、顧客の医師、なけなしの金を持って参加した郵便局員の3名が物語の中心となるのですが、これら中心人物達ですら背景の描写は最小限にとどめられており、その豪華キャストから『ポセイドン・アドベンチャー』のような濃いドラマを期待すると、少なからずガッカリさせられます。 また、登場人物が多いことに加えて、吹雪の中では顔の判別が付きづらいこと、途中からパーティーがいくつにも分割してそれぞれの位置関係の把握が難しいこともあって、誰が何をやっているのかの把握が非常に困難であり、内容を正確に理解しようとするとかなり混乱します。ラスト30分で突如救助隊の中心人物となるサム・ワーシントンなんて、「あなた、いましたっけ?」と言いたくなるほどの唐突感だったし、総じて登場人物の交通整理はうまくいっていません。「少々のことはわからなくても大丈夫」と早めに割り切り、登山の追体験に専念することが正しい鑑賞姿勢だったのかもしれません。[映画館(字幕)] 6点(2015-11-09 15:34:13)《改行有》

247.  メイズ・ランナー 《ネタバレ》 ハリウッドで年に数本製作されるティーン向けSFですが、外に待ち受ける迷路が大人社会の暗喩で、状況打破のためそこに切り込んでいこうとする者と、現状維持のため内に籠ることを望む者が対立するという構図や、記憶喪失からスタートして「自分とは何者か」を探るという物語はティーンの成長過程を作品に取り込んだものであり、「結構ベタベタですなぁ」と思いながら鑑賞しました。自分もいい年になったので、残念ながらこういう話にストレートに感情移入しながら見ることはできなくなったようです。 ただし、ストーリーテリングは型破りで、いい意味で裏切られました。三部作構成を謳いながらも、本作単独でも話を成立させようという配慮があり、主人公たちが迷路から脱出して世界の謎を暴くというところまでやってくれたので、ストレスなく鑑賞することができました。迷路の脱出過程にしても、中盤にてランナーのリーダーが「実は迷路の隅々まで把握はできている。ただし、最後の壁の突破方法が分からない」と告白し、迷路の攻略過程を大幅にカットしています。この大胆なリストラによって、迷路攻略に係る知的なやりとりは大幅に減ってしまったものの、その一方で、迷路に入っては出ることを繰り返してその内部構造を探るという視覚的に地味な作業が省略され、最後の壁の突破という一点のみに物語の焦点が定まったことから、作品全体に勢いが出るというメリットがありました。私はこの取捨選択を支持します。 気になったのは、細かい部分で設定を煮詰めきれていないということでした。思春期の男ばかりの集落に、突如かわいい女の子が放り込まれれば何が起こるのか。作品の性質上、展開が生々しくなりすぎてはいけないということは承知しているものの、それでも性欲全開の時期の男子を集めておきながらセクシャルな問題にまったく触れていないことには違和感を覚えました。そもそも、あの状況でおかしくなったり自暴自棄になったりする者が皆無で、みんな秩序正しく生きていることが不自然だったし、ボロを着ている割に髪型だけはバッチリ決まっていることもヘンでした(エレベーターで整髪料も届けられてるのか?)。些細なツッコミでも積もれば山となるわけです。その辺りのどうでもいい疑問を抱かせないような方便があれば、より良い作品になったと思います。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-10-14 15:42:36)(良:1票) 《改行有》

248.  フォックスキャッチャー 《ネタバレ》 憎まれ役たるジョン・デュポンが最高すぎます。そもそも根性がネジ曲がっている上に、自分は権力者だから何をやっても許されるという妙な自信もあって、やりたい放題が止まりません。デュポン本人に似せるためのガチガチの特殊メイクによりその顔は能面のように固まり、表情が読めなくなっていることもこの人物の恐ろしさの表現に貢献しており、莫大な富と権力を持つ異常者が何にキレるか分からないという緊張感が全編を貫いています。 よくよく考えてみれば、ジョン・デュポンは気の毒な人です。セレブパーティーでの立ち居振る舞いや、選手に向けての演説を見れば、決してバカではないことはわかります。普通の家に生まれついていれば程々に生きることもできたのでしょうが、彼は全米屈指の名門に生まれてしまった。最高でなければ許されない環境に生まれついてしまった凡人。上からはバカ扱いされ、下からは心にもないおべんちゃらばかり言われて50年も生きていれば、おかしくなっても不思議ではありません。 そんな中で出会ったのがマーク・シュルツでした。兄のデーブばかりが持て囃され、金メダル獲得という最高の結果を残しているにも関わらず金銭的にも人間的にも恵まれない境遇にいる孤独なアスリート。人間的な欠陥を抱えるジョンとマークは、出会うや否や、共依存の関係となります。ジョンによる破格のオファーは、「自分は能力と実績に見合った評価を受けていない」というマークの不満を解消するものだったし、そんなマークがスポーツ振興を掲げるジョンの主張に心酔したことは、ジョンの自己承認欲求を満たしました。もしかしたら、ジョンが心からの尊敬を受けたのは人生で初めてのことだったのかもしれません。 しかし、ダメ人間の二人では厳しい競技の世界で勝ち続けることができませんでした。スポーツファンの域を出ていないジョンは指導者になれなかったし、マークは自発的に物事を考えることができず、指導者不在でトレーニングが進みません。どうしようもなくなって呼ばれたのが兄・デーブですが、デーブはすぐにマークの支えとなり、ジョンとマークの依存関係は崩壊します。これがデーブ殺害のきっかけとなったようです。 問題は、映画としての面白みに欠けていたこと。存命中の関係者がいるため事実関係への配慮が随所に感じられ、映画としてのイベント作りが不足していました。雰囲気作りは良かっただけに、もう少し面白ければ。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-09-25 18:38:10)《改行有》

249.  ジュピター 当初よりフランチャイズ化を目論んで作られた作品であるため一本の娯楽作としては過剰なほど設定や伏線が多く、大して難しくないはずの物語がゴチャゴチャしすぎているために直感的な面白さを感じづらくなっています。また、宇宙規模の物語ながら、すぐにワープ移動してしまうために舞台の広さを実感できず、基本設定とは裏腹にこじんまりとした印象を受けました。肝心の物語にしても、スペースオペラの皮を被りながらも、その実態は金や相続の問題というギャップに面白みを感じるべきだったのでしょうが、そこも、それほど面白くありません。総じて、ディズニーが『ジョン・カーター』でやらかしたのと同じ失敗をしています。 ただし、ウォシャウスキー姉弟の作品だけあって美術やVFXの作り込みはハンパではないし、ギリギリで救援が駆けつける際のタイミングの取り方もよく、娯楽映画としては一定の水準に達しています。シリーズ化を見越していただけあって主要登場人物はほとんど死なず、鑑賞後の印象もスカっと爽やか。チャニング・テイタムとショーン・ビーンはカッコいいし、ゴチャゴチャした物語はこの際無視し、悪い奴からお姫様を救い出す冒険談と割り切って鑑賞すれば、それなりに見られる映画にはなっています。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-08-29 00:06:05)《改行有》

250.  誰よりも狙われた男 《ネタバレ》 何の予備知識もなく鑑賞したので、フィリップ・シーモア・ホフマンはドイツ駐在中のCIA職員か何かだと思っていたのですが、途中でドイツの公務員であることに気づいてビックリ。ドイツ訛りの英語を話すアメリカ人俳優をドイツ人とみなすというハリウッド式の無茶設定は、そろそろやめてもらえませんかね。その他、主要登場人物は設定上の国籍に関係なくアメリカ人が演じているのですが、これまたややこしいのがロビン・ライト演じるCIA職員の存在であり、ドイツ人役を演じているアメリカ人俳優と、アメリカ人役を演じているアメリカ人俳優が同時に出てくるため、なんとも妙な気持ちにさせられます。 内容は地味です。007やミッション・インポッシブルのようなカーチェイスも銃撃戦もなし、主人公は中年太りのフィリップ・シーモア・ホフマンだし。テロの黒幕の正体を暴くといった類の謎解きもありません。怪しい奴はすでに分かっており、人権や法律といった社会的制約条件、さらには監督省庁間の縄張り争いもある中で、これをどうやって追い込むかという点が本作のハイライトとなっています。同じくジョン・ル・カレ原作の『裏切りのサーカス』もそうでしたが、手続きがじっくりと描かれているのです。アクション映画のような瞬発力はありませんが、「ほ~」と納得しながら見ることはできました。 また、「テロリストを捕らえる」という命題に向かってどのような方法をとるのかについて、アメリカとヨーロッパとの違いが描かれている点も興味深く感じました。正常な範囲内でのナショナリズムや愛郷心を刺激されてテロ協力者にはなっているが、本人に反社会性はないというケース。ヨーロッパ当局は彼らをターゲットとはせず、真の悪党を捕まえるための協力者としてこちらサイドに取り込み、成功の暁には元の社会生活に戻してやるという方法をとります。これはテロ協力者に対する温情ではなく、当事者の本質を見極めた上で、もっとも効率的と考えられる方法なのです。一方でアメリカはこれら悪意のないテロ協力者でも片っ端から捕まえて回り、その結果、第一目標であるテロ首謀者にはたどり着けないわ、本来悪人ではない人間を本当のテロリストに変えてしまうわと、即効性があるように見えて実は物凄く非効率な方法をとっています。こんなことしてれば、いつまで経っても対テロ戦争は終わらないわなと、妙なところで納得してしまいました。[DVD(字幕)] 6点(2015-07-28 16:05:27)《改行有》

251.  her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 前妻がルーニー・マーラで、エイミー・アダムスが元カノ兼親友で、友人からの紹介で渋々会ってみたらオリヴィア・ワイルドとか、どんだけ恵まれてるんすか、お兄さん。これだけの女性に囲まれたリア充の主人公がOSとの恋愛にハマるという設定がよく飲み込めなかったので、お話がなかなか頭に入ってきませんでした。もっと孤独で情けなく生きてる男が、やむにやまれず辿り着いたのがOSとの恋愛だったという設定の方が今日的で、より多くの独身男性の心に届いたと思います。 そもそもの問題として、OSが人格持ってたらウザイでしょ。メールの内容も通話の内容も筒抜け、何を検索したかも丸分かりで、夜な夜な増えていくエロ画像コレクションも全部お見通し。私だったら耐えられません。そんな感じで基本設定が弱すぎるため、核心部分にまで私の興味・関心がたどり着かないということが難点でした。SFというよりも寓話に近い作品なのでリアリティを追求する必要はないのですが、そうは言っても2時間は観客を納得させておけるだけの設定は準備しておくべきでした。 そんな感じで全体としてはイマイチだったものの、基本的には甘い作りの作品ではないので、部分評価が可能な点はいくつかありました。例えば、長年連れ添ったエイミー・アダムス夫妻が、ものすごく些細な理由で離婚してしまうこと。男女関係って、確かにそんなものだったりします。相手の明確な欠点や弱点については了承済なので意外と破局の理由にはならず、本当にどうでもいいことが火種になるものです。また、主人公とOSが破局に至った原因も、男女関係というものの一側面を的確に捉えているように感じました。リアルで何人かの女性から拒絶され、自分を肯定してくれる相手を欲していた主人公と、人間についてもっと知りたいと思っていたOSが、タイミングの一致もあって交際を開始。しかし、交際によって双方ともに変化が起き、誰が悪いでもなく交際が終了してしまうという呆気ない別れ。リアルの恋愛もこんなもので、♪寂しさゆえに愛が芽生え、お互いを知って愛が終わる~と長渕剛が歌っていた通りです。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-07-09 01:19:51)(良:2票) 《改行有》

252.  アンダー・ザ・スキン 種の捕食 《ネタバレ》 捕食対象だった人間に情が移ったために弱くなってしまったエイリアンの物語。溺れた夫婦を助けようとして自らも力尽き浜辺で気絶した青年を石で殴り殺す、その夫婦の赤ちゃんを浜辺に残して去るなど、非情の限りを尽くしていたスカヨハエイリアン。この頃の彼女は無敵だったが、絶望的な孤独の中で生きるプロテウス症候群の青年(特殊メイクかと思いきや、本物の患者を起用している)の姿を通して自分の孤独を認識したことから、人間への同情を抱いてしまいます。そこから彼女(女性かどうかは不明ですが)は防戦一方となり、最後にはレイプ魔に焼き殺されます。悲しいかな、人間の世界は依然として力により支配されており、他者への共感は躊躇を生み、それが弱みになってしまうという、非情な真理を描いた作品と私は解釈しました。 エイリアンを演じるスカヨハは、まさに体を張った名演技を披露。これまで多くの映画でセックスシンボルを演じながらも脱ぎの仕事はやってこなかった彼女が、この低予算映画でアッサリ脱いでしまうという気前の良さ。また、女優さんであれば美しい体を撮って欲しいと願うものですが、彼女はあえてタルんだ体に仕上げてきています。肌の下”Under The Skin”に本体が隠れているという設定を再現するためには、贅肉を落とした美しい体ではなく、ダボダボの体が必要だったのです。ここまでやってしまう女優根性には恐れ入りました。 また、独創的かつ美しい映像にも見ごたえがあり、総じて見所の多い作品なのですが、その一方で緩急のない語り口が曲者であり、途中で飽きてしまうという点が問題でした。映像のコラージュだけでいくなら90分以内で収めるべきであり、それ以上の上映時間でやるならもっと饒舌な語り口とし、娯楽性への目配せも必要だったと思います。[DVD(字幕)] 6点(2015-07-02 00:52:41)《改行有》

253.  ケープタウン(2013) 《ネタバレ》 差別主義者に父を焼き殺され、自身も犬に局部を食いちぎられて性的不能者になったズールー人・アリと、差別主義者を父に持つ白人・ブライアンがタッグを組むバディムービー。随所に南アフリカの難しい現実を投影したと思われるアイコンが登場するのですが、同国の情勢に詳しくない私にとってはイマイチ伝わらない点が多かったことが苦しかったです。フランス人が監督し、ハリウッドから俳優を呼び寄せて作った国際色豊かな作品なのだから、世界中の人が理解可能な内容にすべきだったと思います。 そんなわけで、作品に込められた裏の意味を理解できなかったので、あくまでバイオレンスアクションという表層部分に絞っての評価としますが、これがなかなかエグイ内容でビビりました。アリの父が殺害される場面から映画は始まるのですが、これがただの焼死ではなく、タイヤネックレス(ガソリンをかけたタイヤを首から被せ、そのタイヤに火をつけて焼き殺す。顔は炎に焼かれ、溶けた高温のゴムが体にまとわりつくという凄惨極まりない処刑方法)だったのでゲンナリ。本編がはじまると撲殺された女性の死体が登場するのですが、これがまた死ぬまで殴られましたということが一目で分かるほどのひどい傷み具合で、本作はハンパなバイオレンス映画ではないなと腹を括りました。 ソフトなイケメンというイメージの強いオーランド・ブルームが、本作でははみ出し刑事を熱演。ハリー・キャラハンとマーティン・リッグスを合わせたような狂犬ぶりを見事モノにしており、意外と良い役者さんだったのねと感心しました。他方、フォレスト・ウィテカーはブレない安定感。ブルームと違って強烈な演技は見せていないものの、難しい部分は彼が引き受け、縁の下の力持ちとして作品の土台部分を担っています。この二人のコンビがなかなか良くて、バディムービーとしては上々の仕上りでした。 残念だったのは、謎解きの答えに面白みがなかったこと。死体やアクションの見せ方等、ディティールにはリアリティへの目配せがあるのに対して、本筋部分には荒唐無稽な部分があって(黒人抹殺兵器ってのはさすがに…)、そこのバランスの悪さが気になりました。「アフリカではこういう酷いことが現実に起こっているのかもしれない」と思わせるような内容であればよかったのですが。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-07-02 00:48:33)(良:2票) 《改行有》

254.  ファーナス/訣別の朝 ウディ・ハレルソンのキ〇ガイ演技が素晴らしすぎて、彼が出ている場面には目が釘付けになりました。次の瞬間に何をしでかすか分からない怖さは『グッドフェローズ』のジョー・ペシに匹敵するレベルであり、製作陣もこの男の底知れぬ魅力に気付いていたのか、その登場場面を作品の冒頭に持ってくるという大盤振る舞い。これまたすごいのが、この登場場面が本筋にまったく影響を与えていないという点であり、作品の冒頭が一人の脇役を紹介するためだけに存在していたことには二度驚かされました。脇役をここまでフィーチャーした映画が他にあるでしょうか。 その割を食ったのが主人公であり、強面俳優がひしめく本作において、主人公は空気同然の存在感となっています。クリスチャン・ベールはいつも通りの深刻な顔で、演技に変化がありません。このままいくと、ハリソン・フォード並みのワンパターン演技の俳優となってしまう恐れがあります。 作品全体の空気はなかなか良くて、こういうガサガサした映画は私好みなのですが、前述した通り脇役が強烈すぎて、相対的に主人公の出ている場面がつまらないという点と、作品の要となるような強烈な場面を一つも作れておらず、結局は雰囲気もので終わってしまっているという点が残念でした。[DVD(吹替)] 6点(2015-05-08 00:55:25)(良:1票) 《改行有》

255.  ダラス・バイヤーズクラブ 《ネタバレ》 ガリガリに痩せたマシュー・マコノヒーの姿を見た時にはお涙頂戴の難病ものかと思ったのですが、実際には多層構造のよくできた物語でした。もちろん映画の中心にあるのは難病だし、主人公がいつ死ぬか分からないという危なっかしさがドラマ性を高めているのですが、それだけに寄りかかっていない脚本・演出の姿勢は大いに評価できます。これは、ゲイを差別していた主人公が差別される側へ回るという逆転の物語であり、脱法手段で金を稼ぐ主人公の成り上がり物語であり、アウトローが巨大な権力と戦う物語でもある。そして、叶わぬ恋に生きる者の物語でもあります。愛する人と一緒にいられる幸福感と、その人は永遠に自分には振り向いてくれないという絶望感を同時に味わいながら生きるレイヨンがかわいそうで。命を縮めるとわかっていても麻薬依存から抜け出せないことに彼の苦悩が表れているのですが、それでも表面上は常に明るく振舞っていることとのギャップで泣かされます。。。 ただし、本作にはアメリカ映画の悪い点もドバっと出ています。それは、過度の単純化。作品内の対立構造をわかりやすくするために、既存の治療薬AZTをまるで毒のように扱い、これを販売する製薬会社は金目的で副作用を隠蔽し、これに認可を与えた役所は製薬会社から賄賂を受け取っているという、何とも酷い描写が続きます。ただし、事実は映画ほど単純ではありません。80年代にはエイズは社会問題であり、この難病によって人類が滅ぼされるのではないかという不安すらありました。そんな中、HIVウィルスを殺せるAZTは世界中から受け入れられていたし、当時から副作用の存在も知られていました。もちろん、薬の認可スピードが遅いというお役所体質は問題だったし、ロンのような活動家がこれに風穴を空け、受けたい治療を受ける権利の獲得に貢献したことは大きな功績ですが、それにしても本作の描き方はあまりに一面的すぎるように感じました。。。 薬や治療の認可とは難しいものです。患者側に多様な選択肢があることは一見すると良いことに思えますが、それは素人である患者が、自分の責任で治療法を判断せねばならないということでもあります。そんな中で、学術的な裏付けのとれていない治療法が溢れかえれば、適切な治療を受ければ助かっていた命が失われる危険があります。本作は過度の単純化によって、そうした社会的な切り口を失っている点が残念でした。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-10-04 01:54:40)(良:3票) 《改行有》

256.  マイティ・ソー/ダーク・ワールド ケネス・ブラナーが『エージェント・ライアン』に乗り換えたことを受け、監督はアラン・テイラーに変更。この人はTV界のベテランであり、現在、私がどハマリしているドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』では重要回を担当している人物だけに、その演出は実に安定しています。登場人物たちの愛憎関係を簡潔に提示したり、程よい笑いをとったりと、軽いフットワークでドラマパートをまとめる一方で、アクションパートでは重厚なスペクタクルをものにしており、初の大作ながら素晴らしい手腕を披露しています。2015年公開のリブート版『ターミネーター』の演出も務めるようですが、この監督ならば期待できるのではないでしょうか。。。 しかし、この監督の手腕をもってしても、映画全体を救うことはできなかったようです。アイアンマンとキャプテン・アメリカが続編の舞台を小さく設定し直し、パワーのインフレが起こることを回避したのとは対照的に、ソーは舞台を大きくしすぎて取り留めのないことになっています。わかるのは、正義の味方・ソーが悪い奴らと戦っているということだけで、悪人たちの目的は何で、彼らが勝つとどんな悪いことが起こるのかがピンときません。どうやら宇宙が滅びるらしいのですが、そんなことをして悪人たちに何の得があるのかが分からず、このお話にはポカンとさせられるのみでした。さらには、エーテルだのダークエルフだの、マーベル作品が出る度に追加される固有名詞を覚えることにもそろそろ嫌気が差してきており、肝心のお話自体に興味が持てませんでした。。。 キャストはとても豪華。一連のマーブル作品の中でも、もっとも多くの演技派俳優を揃えているシリーズだけに、演技の質は非常に高いです。ただし、前述の通りバカバカしい固有名詞が入り乱れる内容なので、オスカー俳優達との食い合せはよくないですが。アンソニー・ホプキンスやナタリー・ポートマンが真剣な顔をしてマンガチックなセリフを言う度に、何とも言えない居心地の悪さを感じました。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-09-30 23:35:17)(良:1票) 《改行有》

257.  るろうに剣心 京都大火編 《ネタバレ》 原作未読につき思い入れのある作品ではないため、前作はブルーレイで済ませたのですが、本作については1ヶ月後には完結編が控えていることからソフトのリリースを待つ余裕がなく、劇場での鑑賞としました。。。 感想は前作と同様で、アクションはとにかく凄まじいし、役者のなりきり具合も素晴らしいが、肝心のお話が見せ場に追い付いていないという印象を受けました。映画を見る限り、製作側は一見さんにも理解可能なお話を目指していたように思うのですが、それでもやはり原作未読者にはよくわからない点が多々あります。特に、前作より大幅に登場人物を増やした結果、行動原理が不明な人間が何人も現れたことは痛かったです。全体的に、私怨なのか大義なのかの説明が不足しているんですよね。特に御庭番衆にはその思考がわからない人物が多く、この集団そのものを切ってしまった方がよかったように感じます。。。 また、本筋とは無関係なサブプロットもいくつか目に付きました。剣心が刀を折られた後、錬治の家族の元を訪れて新しい刀を手に入れるというくだり、及び、その刀を巡る金髪の敵(名前を忘れました)との攻防戦は、明らかに不要だったように感じます。なぜなら、このくだりの前後で、剣心の心境や人となりに変化がないからです。本筋と無関係な上に、キャラクターの成長を描くために不可欠なパートというわけでもないのだから、これはスッパリと落として、志々雄軍団との攻防戦に専念すべきでした。その志々雄にしても、明治新政府を打倒するという壮大な計画のまさに実行段階にあるにも関わらず、神谷薫を誘拐して剣心をおびき寄せるという合理性を感じられないことをチマチマとやっており、その優秀さを疑わざるをえなかったことは残念でした。藤原達也による演技には大変な凄みがあっただけに、脚本上のこの落ち度は勿体ない限りです。。。 以上、いろいろと文句をつけてきましたが、それでもアクションの出来は超一流。日本映画界におけるマンガ原作映画はハリウッドの猿真似ばかりで、その出来を誉められないものが多いのですが、本作は日本映画界にしか作れない題材を選び出し、その方向を深彫りしたことで、唯一無二のシリーズとなっています。こうした作品が作られ、映画館にお客さんが入っているということは、日本映画界にとって非常に良いことだと思います。[映画館(邦画)] 6点(2014-08-25 01:27:37)《改行有》

258.  リベンジ・マッチ 本作を見てわかったことは、豊富な人生経験は、時に才能をも凌駕するということです。主演2人のうち、役者としての能力が高いのはデ・ニーロの方なのですが、映画の中で自分がやるべきことをきちんと理解できているのはスタローンの方でした。スタローンは、90年代に『オスカー』と『刑事ジョー/ママにお手上げ』を大失敗させた経験からコメディに向かないことをよく自覚しており、本作ではあくまで受け身に徹しています。あらゆるタイプの映画への出演経験のあるアラン・アーキンを脇に置き、コメディパートは専らアーキンにお任せしているのです。アーキンの下ネタのキレは絶好調であり、おかげでレーザー側のドラマはそれなりに笑いながら見ることができました。他方、デ・ニーロはコメディ演技全開でスベりまくっています。演技派として不動の地位を持ち、目立った失敗をしてこなかったデ・ニーロは、演技をやりすぎてしまっているのです。デ・ニーロが笑わせる気マンマンでオーバーアクトをしてくる度に、とても残念な空気が流れていました。キッド側のドラマはあまり面白くありませんでしたね。。。 以上の通り、本作で笑えたのはアラン・アーキンが出ているところだけであり、コメディ映画としては残念な出来だったと言えます。だからと言って完全にダメな映画かと言えばそうでもなく、往年のスターが顔を揃えたセルフパロディ映画としては決して悪くない仕上がりでした。1976年のオスカーを争ったスタローンとデ・ニーロを競演させ、その間にはキム・ベイシンガーを挟むという気の効きすぎたキャスティング、その3者に均等に見せ場を与えた演出バランスの良さなど、スター映画としては堅実な作りとなっています。また、スタ×シュワの『大脱出』に期待したが得られなかったものが、本作にはちゃんとあります。設定や役名は違うものの、観客の側でジェイク・ラモッタvsロッキー・バルボアと脳内変換して見られるよう、気の利いた小ネタをいくつも挟んできているのです。70歳のデ・ニーロを裸にし、現役のアクション俳優であるスタローンとのファイトをやらせたことも大きなポイントだし、さらにはエンドロールにとんでもない大ネタを仕込んできたことにもお得感があり、その溢れんばかりのサービス精神には素直に感動しました。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-08-23 00:40:03)(良:1票) 《改行有》

259.  300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ IMAX-3Dにて鑑賞。 「もはや300って数字は関係ないじゃん」というツッコミはさておき、ザック・スナイダーのビジュアルを完全移植した見せ場の出来は素晴らしく、特に、冒頭とクライマックスにおいて主人公・テミストクレスが披露する、雑魚を斬りながらラスボスへ近づいていくという流れるような殺陣の迫力と美しさは、前作をも上回っていたと思います。ただし、やたらと畸形を登場させたり、忍者軍団や妖術軍団といった訳の分からん敵が続々現れたりした前作と比較すると、本作にはマンガ映画ならではの遊びが少なかったように思います。多少ビジュアルに凝った史劇という印象であり、この生真面目さは『300』の続編にはそぐわないと感じました。。。 生真面目と言えば、本作の主人公・テミストクレスも同様です。前作において、精神論を大声で叫ぶだけのレオニダス王の脳筋ぶりは見ていて実に楽しめたのですが、他方、テミストクレスは現実的な解決策を模索する良心的な指導者であり、破天荒さに欠けていました。交渉のためにスパルタを訪れたテミストクレスがスパルタ式の過激な新兵教育を見てドン引きしたり、兵士たちに「死ぬな」と言って聞かせたり(レオニダスは「戦死こそ名誉」と部下に説いていた)、彼が率いる軍隊は、前作でレオニダスが鼻で笑っていた素人の寄せ集めだったりと、あらゆる点でレオニダスとの差別化が図られているわけですが、そんなテミストクレスならではの強みが分かりやすい形で打ち出せなかったために、主人公ながら影が薄く感じられるのです。。。 そんな主人公の弱さを補ったのが、敵のボスであるアルテミシア。悲惨な生い立ちゆえに人間性が失われ、ギリシアへの復讐のためなら手段を選ばぬ鬼と化した女戦士ですが、悪人顔のエヴァ・グリーンが、脱ぐわ、暴れるわの大怪演でこれになりきっています。小粒のテミストクレスではなくレオニダスと対決させたいと心から思う逸材であり、彼女の存在により、映画はかなり救われていました。。。 3D効果については、血飛沫や槍の切っ先といった定番の飛び出し効果や、見下ろしたり、飛び降りたりする場面での高さの表現などにおいて素晴らしい3D効果を体感できる反面、クライマックスの戦闘場面では3D効果がほとんど追求されておらず、その謎のペース配分には驚かされました。3Dで見て損はありませんが、2Dで見ても情報量はそれほど変わらないと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2014-06-22 02:18:25)《改行有》

260.  スノーピアサー 《ネタバレ》 ポン・ジュノが監督し、それをパク・チャヌクがプロデューサーとして援護するというものすごい体制で製作された作品だけあって、映画には終始ドえらい気合が満ち溢れていて、一瞬足りとも目を離させません。ハリウッド製SF映画の外面を持ちながらも、中身にあるのはバリバリの韓国製バイオレンス。銃ではなく斧やナイフを武器に殺し合いをするという点に本作の個性があります。また、アクションに入る前の「溜め」の演出も素晴らしく、さらには殺し合いの途中に新年を祝い始める等のパンチの効いたユーモアも楽しく、少なくとも前半部分は、1年間に数本出会えるか出会えないかレベルの面白いアクション映画として仕上がっています。。。 問題は後半部分。「あんたらが起こした革命は、我々が考え出したシステムの一部だったんだよ」と、創造主・エド・ハリスから『マトリックス/リローデッド』みたいな告白を受けた辺りから、映画は訳のわからん方向へと走り出します。今までバイオレンス映画としてやってきた映画が、ここからいきなり宗教的・SF的方向へと舵を切り始めるのですが、SFをやるに足る素地がこの映画にはなかったので、これを眺める観客はポカーンとさせられてしまいます。。。 この映画の基本設定はボロボロです。スノーピアサーが永久機関を持つにしても、休みなく走っていれば車輪や車体は摩耗するし、何年も野ざらし状態の線路だって走れる状態にはないはず。そもそも、スノーピアサーが地球一周旅行を続けてることの理由もよくわからないし(どこかに停車している方が安全なのでは?)、疑問は尽きることがありません。それでも前半部分では、この映画において設定とはあってないようなもので、出てくる画を楽しめばそれでいいのだと納得しながら見ることができたのですが、エド・ハリスが分かったような分からんようなことを言い始める後半部分になると、設定の弱さが一気に気になり始めます。だいたい、あのカースト社会自体が意味不明。最後尾の人間は過酷な労働をさせられているわけでもなく、ただマズイ飯をもらって生かされているだけ。スノーピアサーという世界において、彼らの生にはどんな意味があるのかがよく分からないので、エド・ハリスが世界を語り始めると、途端に設定の抱える弱さが露呈してしまうのです。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-06-09 01:31:47)《改行有》

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