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プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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61.  ユー・ガット・メール 《ネタバレ》  去年最後に観た映画が「めぐり逢えたら」である以上、今年最初の映画には、これが相応しかろうと思い観賞。  元ネタの「桃色の店」では文通だったのをEメールに変えた事に、ちゃんと意義があったというか「Eメールでのやり取り」ならではの魅力を感じられる作りだったのが流石でしたね。  一度書きかけた文章を消す為、キーを連打しちゃう主人公の場面なんて、特に印象的。  「ペンを使って手紙を書く」という動作では出せない「キーを叩いてメールを書く」という動作だからこその面白さだったと思います。  二作続けて観賞した為か「めぐり逢えたら」同様「他に恋人がいるのに、惹かれ合ってしまう主人公とヒロイン」という設定だった事には(またかよ)と思ってゲンナリしちゃったけど……  まぁ、それに関しては(そういう設定の方が喜ぶ人もいるから)と納得するしかないんでしょうね。  「オマケ程度にクリスマス要素がある」「子供がキッカケになって二人が出会う」という共通点に関してはクスッとしちゃったし、この辺は「二作続けて観賞した」という事がプラスに働いたのか、それともマイナスに働いたのか、微妙なところです。  そんな中「プラス」と言えそうな部分としては「かつての恋人との別れ方が、ずっと円満で納得のいく形になっている」って部分が挙げられそうですね。  お互いに、他に好きな人が出来たんだと分かって双方ホッとして笑い合う場面なんて、見ているこっちまで釣られて笑顔になっちゃったくらい。  エレベーターに閉じ込められ「自分が本当に望んでいる事を悟り、別れを切り出した」というのも、説得力があって良かったです。  ヒロインがマスコミを利用し、商売敵に「悪いキツネ」というイメージを与えようとする件とか(やっぱり、この監督が描くヒロイン像って好みじゃないな)と感じる場面もあったんですが……  とにかくヒロイン演じるメグ・ライアンがキュートなものだから、不快感が尾を引かないんですよね。  主人公に「ファイト」と励まされ、シャドーボクシングを始める場面なんて、もう最高に可愛らしい。  たとえ脚本が肌に合わなかったとしても、演じる役者さん次第で、こんなにも印象が変わってくるんだなって思えるし、ラブコメの女王メグ・ライアンの凄さを、改めて感じる事が出来ました。  「よく出会うわね」「土曜の昼に、また偶然に出会わない?」って会話も印象深いし「すべて35%オフ」のフォックス書店に対抗心を抱いていたヒロインが「閉店セールの40%オフ」で、ようやく価格争いに勝利する事が出来たという顛末も、悲しい皮肉が伴っていて良かったです。  主人公がパソコンから離れた後(どうせ戻って来て、彼女のメールに返事しちゃうんだろうな)と思っていたら、本当にそうなる流れなんかも、実に微笑ましい。  二人が結ばれた後「THE END」の文字を、さながらメールで打ち込む時のように表示して終わるのも、小粋な演出でしたね。  なんだかんだ言っても、やっぱり自分はノーラ・エフロン監督の映画が、そしてトム・ハンクスとメグ・ライアンの映画が好きなんだな……と思わされた一本でした。[DVD(字幕)] 6点(2020-01-16 00:13:51)《改行有》

62.  めぐり逢えたら 《ネタバレ》  さて、今年のクリスマスは何を観ようかと本棚を眺めていたところ (そういえば、これも一応クリスマス物だったな……)  と思い出した為、本作を観賞。  結果的には殆ど「クリスマス要素」が無くてズッコけた訳ですが……  観た後に幸せな気持ちになれるという意味では、非常にクリスマスらしい映画だったと思います。  なんといっても、恋のキューピット役となってくれる主人公の息子が良かったですね。  可愛らしい子供キャラを配し、ファミリー映画的な側面を備えているのは、元ネタである「めぐり逢い」(1957年)には無かった魅力。  なんせ本作の主人公カップルときたら、出会って話すと同時に映画が終了しちゃうくらいなんだし、作り手としても意図的に「二人を結び付けようとする子供が主軸の映画」として完成させたんじゃないかな、って気がします。  そんな息子くんには、同世代の彼女もいたりして、ちょっぴり憎たらしい感じだったのに……  エンパイアステートビルに一人ぼっちになった時は、心細げな顔を見せたり、パパと再会出来た時には、喜んで抱き付いたりと(なんだかんだ言っても、まだ子供なんだな)と思わせてくれた辺りが、実に可愛かったです。  個人的には、ここの「父子の再会」の場面が、映画の白眉だった気がしますね。  「めぐり逢い」(1957年)同様、やはり主人公カップルは約束の場所で会えない運命なのかなと思わせておいて、息子が置き忘れたリュックのお蔭で会う事が出来たという脚本も、非常に凝っていて素敵でした。  翻って、悪かった点はというと……これが結構多かったりもして、困っちゃいます。  まず、メグ・ライアン演じるヒロインに共感を抱けない。  主人公の住所を調べて会いに行く件とか、どう考えてもストーカーそのものだし、彼女の恋路を応援しようって気になれなかったのですよね。  作中にて彼女が昔の映画を鑑賞し「この頃は、みんな本当の愛し方を知っていたのよね」なんてウットリする場面がありましたが、二十年以上前の映画を観ている最中な自分からすると(この頃は、まだストーカー的な愛し方が肯定されていたんだなぁ……)と、皮肉気に考えちゃいました。  そもそも婚約者がいるのに「運命の出会いに憧れ、恋に恋している女性」って時点で、どうしても拒否感が出ちゃうんですよね。  彼女も浮気な自分を悔いて「許せない裏切りだと思うわ」と嘆く事になるんですが、観ているこちらとしても(ホンマやで)とツッコむしか無かったです。  トム・ハンクス演じる主人公も、ヒロインが強烈に恋い焦がれるほど魅力的には思えなかったという辺りも、辛いところ。  「ラジオ番組で話した時の声が素敵」「話す内容が素敵」というくらいで、手紙が殺到するほどの人気者になるというのも、ちょっと無理があった気がしますね。  二人とも好きな役者さんであるだけに、その辺は観ていて辛かったです。  結局「僕は君が妥協して仕方無く選んだ男には、なりたくない」と告げ、ヒロインを約束の場所へと送り出してくれた婚約者のウォルターこそが、作中で一番「いい男」だったんじゃないかと思えちゃうし、どうもスッキリしませんでした。  そんなウォルターと、主人公の恋人候補であったヴィクトリアが完全に「恋の当て馬」ポジションに収まっており、救いが描かれていなかった辺りも、残念なポイント。  上述の通り「観賞後は幸せな気持ちになれる映画」だったのですが、当て馬組にも優しい描写がもっと盛り込まれていたら、より好きになれた気がします。  ちなみに、この映画を基にしたとんねるずのコント「めぐり逢えたら スペシャル版」では、主人公の息子がラジオ番組に再び電話を掛け「パパが結婚する事になったんだ!」と嬉しそうに報告して終わるという形になっており、元ネタ以上に爽やかなハッピーエンドだったりするんですよね。  個人的には、そちらの方が好みな終わり方でした。[DVD(吹替)] 6点(2020-01-10 20:24:45)(良:1票) 《改行有》

63.  アフリカン・ダンク 《ネタバレ》  「才能」を発掘する喜びを味わえる映画ですね。  冒頭、生意気な新人選手と対決する件では主人公を応援したくなるし、舞台をアフリカに移してからの敵となる「町の顔役」も憎たらしいので、勝利の瞬間には大いにカタルシスを得られるという形。  「ディフェンスは息するより大事」などの台詞も印象深く「身体能力は高いが、粗削りなメンバーを磨き上げる」楽しさが、しっかり描かれていたと思います。  第二の主人公と言えるサーレが一度わざと下手な振りをして、落胆させた後に本気のプレイを披露し「やっぱり駄目かと思ったのに、本当に凄かった!」と歓喜させてくれる流れも上手いですね。  観ている側としても(アフリカの奥地に物凄い才能を持ったバスケットプレイヤーがいるだなんて、そんなに上手い話があるのか?)という疑いの念を抱いてしまうのは避けられない訳で、それを逆手に取っている。  「嘘みたいなストーリー」だからこそ出来る、気持ち良い展開でありました。  実はサーレーの兄もバスケが上手いという点に関しては、もうちょっと伏線が欲しかった所ですが……気難しい父と和解し「ウィナビに戻す」と宣告される場面が凄く良かったので、あんまり気にならなかったですね。  アメリカ人の主人公と、現地の部族が交流し「水道を作ろう」「それじゃあ、皆で一緒に水を運ぶ事が出来なくなる」という会話を交わす件も、現代人の価値観に違う方向から光を当てる効果があり、良かったと思います。  部族の仲間入りを果たす為、チャンピオンリングを空に捧げる場面も、雄大な自然を感じられて心地良いし「振り回し」のテクニックが、主人公からサーレーに受け継がれた事を証明して、試合に勝利する流れも素敵。  展開が王道、お約束に沿っている為、意外性や斬新さには乏しいかも知れませんが、その分だけ安心して楽しめる一品でありました。[DVD(吹替)] 8点(2019-12-15 20:48:44)(良:1票) 《改行有》

64.  海がきこえる<TVM> 《ネタバレ》  昔、男友達と二人で観た際には「何だ、この女は!」と意見が一致し、女性と観た際には「結構リアルだね」と言われたりして、戸惑った記憶がある本作。  そういえば一人で観た事は無かったなと思い、再観賞する事にしたのですが、特に評価が変わったりする事は無く、残念でしたね。  (大人になった今なら、ヒロインの言動も可愛らしく思えるかな?)という期待もあったりしたのですが、多少理解出来る面は発見出来たものの、やはり拒否感の方が大きかったです。  そもそも問題の発端となる「ヒロインの両親の離婚」は、父親の浮気が原因なのに 「ママが馬鹿だと思ってた」 「見過ごしていればいいのに、ワーワー騒ぐから」  なんて言い出す時点で、彼女に肩入れ出来なくなってしまうのですよね。  (結局、自分が東京から離れたくないものだから、その為に母親を悪役にして憎んでいるだけじゃない?)と思えてしまうのですが、この予想が当たっているなら「嫌な女」としか評しようがない訳で、どうにも困ってしまいます。  自己憐憫に浸って 「私って可哀想ね」  と泣く姿にはゲンナリさせられたし 「あの人って馬鹿ね。付き合ってる頃は良く気の付く、優しい人だと思ってたんだけど」  と元カレの悪口を言うシーンで、決定的に幻滅。  この映画の後、主人公とヒロインは結ばれるのが示唆されている訳だけど、また何年か経ったら主人公も「元カレ」になってしまって、似たような悪口を言われているんじゃないかと思えてきます。  主人公の親友が告白してきたら 「私、高知も嫌いだし、高知弁を喋る男も大嫌い。まるで恋愛の対象にならないし、そんな事言われるとゾッとするわ」  と言い放つのですが、この頃にはもう慣れているというか、感覚がマヒしてしまって(あぁ、やっぱりそう思っていたんだ)という感想しか浮かんで来ないのだから困り物。  後の台詞からすると、この時の言葉は強がりの嘘だった可能性もあるし、彼女自身が反省もしているそうなのですが、それを直接描かずに伝聞で済ませるものだから、ちっとも真実味が無いのですよね。  終盤、同級生の女子達に糾弾される彼女が同情的に描かれているのも(自業自得じゃないの?)と白けてしまうし、立ち聞きして助けようとしなかった主人公が彼女に頬を叩かれ、その後に親友にも殴られる展開には、唯々呆然。  主人公は良い奴だとは思うのですが「ヒロインに惚れるのが理解出来ない」という意味で、徹底的に感情移入を拒む存在であり、それがエピローグで更に強調される形になっているのだから、非常に残念。  恐らくヒロインに惚れたのは、東京への同行を申し出た際の 「本当? 本当にそうしてくれるの?」  と喜ぶ笑顔がキッカケじゃないかと思えるのですが、何だかココの演出も、あざとい可愛さアピールに感じられたりして、ノリ切れなかったのですよね。  第一ヒロインは美少女って設定のはずなのに「同級生の小浜さんや西村さんの方が可愛いじゃん」と思えてしまうのだから、作中でヒロインが散々その美貌を絶賛されていても、ちっとも共感出来ない。  この辺りの感覚は、昔観た時と全く同じだったりして、そういう意味では、とても懐かしい気分に浸れました。  本来は感動すべき「高知城を見つめながらヒロインの台詞の数々を思い出す場面」でも「ろくでもない事ばかり言っているなぁ」と冷ややかな気持ちになってしまうのだから、とことん自分とは相性の悪い映画なのだなと、再確認。  「紅の豚」を絡めた遊び心など、クスッとさせられる場面もあったし「お風呂で寝る人」という形で、遠回しにヒロインから主人公への告白を描く演出は、御洒落だなと思います。  所々に、好きと言えそうなパーツは見つかるだけに、全面的に楽しむ事が出来なかったのが、実に勿体無い。  「海がきこえる」というタイトルにも拘らず、最も印象的な「海」の場面が主人公とヒロインではなく、主人公と親友の二人きりの場面というのも、何だか変な感じでしたね。  帰郷した際に二人が仲直りする流れには和みましたし、共に海を眺める場面は本作における白眉だとは思うのですが(ココで終わっておけば友情の映画として綺麗に纏まったのに……)なんて、つい考えてしまいました。  残念ながら、自分には海がきこえなかったみたいです。[DVD(邦画)] 3点(2019-11-28 06:36:01)(良:1票) 《改行有》

65.  忠臣蔵(1990)〈TVM〉 《ネタバレ》  数ある忠臣蔵の中でも一番好きなものは何かと問われたら、本作を挙げます。  王道ではなく、かなり捻った作りとなっている為「忠臣蔵に初めて触れるなら、これが一番」なんて具合にオススメ出来ないのは残念ですが……  それでもなお「一番面白い忠臣蔵はコレだ!」と叫びたくなるような魅力があるんですよね。  もう三十年近く前の作品なのですが、今観ても斬新だし、若々しいセンスに溢れていると思います。  何せ、始まって十分も経たぬ内に「斬り付けたのは浅野の方で、吉良は被害者でしかなかった」とズバリ結論を言ってしまうのだから、恐れ入ります。  小説ならば菊池寛の「吉良上野の立場」舞台ならば井上ひさしの「イヌの仇討」という先例もありましたが、ここまで長尺の映像作品で「浅野が悪い」と断定しているとなると、寡聞にして他の例を挙げる事が出来ないくらいです。  しかも吉良側がそう主張する訳ではなく、浅野の家臣である大野が「乱心ですよ」「殿中で刀を抜けば、三百の家臣と、その家族二千が路頭に迷う。その事を弁えずして、これを乱心と言わずして何と言いますか」と主君である内匠頭を糾弾しているのだから、本当に徹底しています。  観ている側としても(これは従来の忠臣蔵とは、全く違う物語だ……)と感じる場面であり、そこからは襟を正して観賞する事が出来ました。  本作は「昼行燈と呼ばれ、平素は無能扱いされていた」という大石の側面に踏み込み、仕事中に居眠りして笑い者になったり、趣味の絵ばかり描いて妻に詰られたりする姿をコミカルに描いているのですが、その一方で「いざとなったら有能だった大石」という、シリアスな魅力を描く事にも成功しているんですよね。  特に、討ち入りを決意した後「非情な軍人」に徹して、冷静に作戦を主導していく大石の恰好良さときたら、もう堪らない。  一人が敵一人と対している時、味方二人が背後から斬り付けるようにと指示し「それは卑怯ではありませんか」と仲間に反発された際に「物見遊山ではありません、戦です。戦は必ず勝たなければならない」と諭す姿は、歴代の大石内蔵助の中でも最も凛々しく、頼もしく感じられたくらいです。  見事に吉良を討ち取った後「上手くいきましたね」と能天気に騒ぐ堀部安兵衛に対し「本当に、そう思うか?」と、自分達が死ぬ未来を予見したように呟く姿も、非常に哀愁があって、味わい深い。 ・赤穂浪士も決して一枚岩ではなく、互いに見下し合ったり憎み合ったりしている。 ・仇討ちは純粋に主君を想っての行いではなく、赤穂浪士が名を挙げて再士官する為の就職活動という側面もあった。 ・生類憐みの令をはじめとして、独断専行の多い将軍綱吉の人望の無さも事件に密接に絡んでいる。  などなど「吉良邸討ち入り事件」の動機や背景を、多方面から描いている点も良かったですね。  そんな本作の欠点は……「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」「話せば分かる」など、その後の天皇やら首相やらの有名な台詞を大石に吐かせ「悲劇の人物」として重ね合わせるかのような演出があったのは、ちょっと微妙に思えた事。  終盤に出てくる侍女かるの存在は、わざとらしくて浮いているように思えた事とか、そのくらいでしょうか。  とはいえ、冒頭の筑紫哲也の解説にある通り、これらの欠点すらも「平成の忠臣蔵を、当時の人々はどんな願いを込めて作ったのか」という目線で観れば、非常に興味深く、一概に「余計な要素」とも言いきれなくなってくる辺りも面白い。  自分としては「敗戦で背負い込んだ挫折感」「軍人への不信感」「若くて自由奔放な女の子に癒されたいという、中年男特有の欲望」などを感じ取った訳ですが、そういった負の感情が込められているのも、また忠臣蔵の魅力なのかなと思ったりしました。  一人討ち入りに参加せず、生き延びてしまった大野が「良い奴だった」「だから、死なせたくなかった」と、英雄でも忠臣でもない「友人」としての大石内蔵助に対する想いを語る場面も、実に素晴らしい。  ラストシーンでも「刃傷事件が起こる前の、楽しそうに笑う大石と大野の姿」が描かれており(二人は、この頃のような平和な日常を取り戻したい一心で、あんなに頑張ったんだ……)と、観客に感じさせるような終わり方になっているんですよね。  「忠誠心ではなく、奪われた日常を取り戻したい一心で行動した赤穂浪士」というのは、本当に独特だと思うし、現代に生きる自分としても、非常に共感を抱く事が出来ました。  これが「最高の忠臣蔵」であるかどうかは分かりませんが……  「特別な忠臣蔵」である事は間違い無いんじゃないかな、と思います。  オススメの一本です。[地上波(邦画)] 9点(2019-11-11 18:20:15)《改行有》

66.  パッセンジャー57 《ネタバレ》  85分という短い尺の中で、主人公が悪人退治してハッピーエンドという、非常にシンプルな映画。  年代が近い事もあってか、そこかしこに「ビバリーヒルズ・コップ」の影響が窺える作りにもなっていますよね。  特に中盤、わざと情けない男の振りをして犯人一味を騙す件なんて、ウェズリー・スナイプス的というよりは、如何にもエディ・マーフィ的な感じ。  飛行機で隣の席になった老婦人から、主人公が「誰かさん」に間違われてしまう件も、そこら辺を踏まえてのネタなんじゃないかなって思えました。  そんな訳で、遊園地でのアクションパートも「ビバリーヒルズ・コップ3」(1994年)を意識したのかなと思ったのですが……  確認してみると、本作は1992年公開であり、これに関してはむしろ先取りしている形だったんですね。ちょっと吃驚。  果たしてジョン・ランディスは「3」を撮る前に本作を観賞済みだったのかどうか、気になるところです。    気になるといえば、脚本にも色々と粗が多くて……  主人公も敵役も「有能な男」という設定にも拘らず、それがあんまり伝わってこなかった辺りは残念でしたね。  特に主人公は「ハイジャック対策のスペシャリスト」って設定のはずなのに、犯人との交渉にはアッサリ失敗して乗客死なせちゃっているし、これなら「偶々飛行機に乗り合わせた刑事」で、ヒロイン格のスチュワーデスから飛行機の情報を色々聞きながら事件解決するってストーリーでも、充分に成立していた気がします。  犯人側も犯人側で「主人公を撃つよりも、無能な部下を撃って殺すのを優先した結果、肝心の主人公を逃がしてしまう」なんて醜態を晒しちゃっているし、どうも二人して詰めが甘い感じ。  犯人組と妙に仲が良い描写があって、その後に絡んでくるんじゃないかと思われた金髪少年のノーマンが、放ったらかしのまま終わるとか、保安官から貰った銃を主人公がアッサリ落として使わず仕舞いとか、肩透かしな場面が多かった辺りも、ちょっと寂しかったです。  ……とはいえ、それらのアレコレも「気になる」程度で済んでしまい、決定的な失望に至らなかったのは、スピーディーな演出でグイグイ物語を動かしてくれる力強い作りゆえ、なんでしょうね。  「車で並走して飛行機に乗り移る」とか「飛行中に扉が開いて機内がパニックになる」とか、この手の映画ならお約束の描写を、きちんと盛り込んでくれる辺りも嬉しい。  友人役のトム・サイズモアに、美人スチュワーデスのエリザベス・ハーレイと、味方側と敵側、両方に魅力的な脇役が揃っていた事も、画面を引き締める効果があったと思います。  最後は主人公とヒロインが結ばれて、予定調和な結末を迎える辺りも心地良い。  「期待以上」ではないにせよ「期待通り」の満足感は得られた、良質なアクション映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2019-11-01 00:49:18)(良:1票) 《改行有》

67.  ジングル・オール・ザ・ウェイ 《ネタバレ》  毎年クリスマスが近付く度に観返したくなる映画。  正直、色々と粗も目立つ作りなのですが、何となく好きなんですよね。  仕事では有能だけど、そのせいで忙しくて、家族との間に溝が出来てしまっている主人公。  そんな彼が、幼い息子と約束したプレゼントの「ターボマン人形」を求めて、クリスマスイブの街を駆け回る事になる……という、そのプロットの時点で、もうハートを鷲掴みにされちゃう感じ。  主人公は、ちょっと感情的だし、息子の為とはいえ色々とマナー違反を犯す事になる訳ですが、演じているシュワルツェネッガーの愛嬌ゆえか、ちゃんと感情移入出来るようになっているのも上手いですね。  象徴的なのが「隣家の子供のプレゼントを盗もうとした場面」で、観ている側としても、これまでの交通違反やら行列の割り込みやらと違い(それだけは、やっちゃいかんだろう)という気持ちになるんです。  で、そんな場面では主人公も思い止まり、良心に従って、盗んだプレゼントを返そうと引き返す事になる。  そういった「やり過ぎない」バランス感覚が、絶妙だったと思います。  作中で「不人気」扱いされているブースターが、可哀想になってしまう事。  そして「クリスマスプレゼントを貰えなかった子供は、将来ロクな大人にならない」というメッセージが感じられる事などは気になりますが、どちらもコメディタッチで明るく描かれている為、後味が悪くなるという程じゃなかったです。  「一番のお客様」という仕事相手に対する決め文句を、妻に対しても言ってしまい焦る場面とか、寝室の灯りを消した後の顔芸とか、ちゃんと「シュワルツェネッガーがコメディをやっているからこその魅力」が感じられる辺りも嬉しい。  回る車輪と、時計とを重ね合わせる演出も好きだし、喧嘩したトナカイとの間に友情が芽生える場面なんかも、ベタだけど良かったですね。  そして何といっても、紆余曲折の末、主人公がターボマン人形を手に入れた時の達成感が、実に素晴らしい。  その後、人形を受け取った息子が、自分以上に人形を欲しがっている人を見つめ「メリークリスマス」という言葉と共に、笑顔で人形を譲る結末となるのも(うわぁ、良い子だなぁ……)と思えるしで、ここの流れが、本当に好きなんですよね。  何ていうか、凄くクリスマスらしい気分に浸れる感じ。  プレゼントを贈るという行為は、受け取る人だけでなく、渡す人をも幸せにするんだな、と思えます。  映画のラスト「息子のプレゼントに感ける余り、妻へのプレゼントを忘れていた」というオチは弱いようにも思えますが、この後に再び主人公が奔走する姿を想像すると、実に微笑ましいですね。  今度は息子の為でなく、妻の為にプレゼントを探し歩く続編映画が、頭の中で上映されるかのよう。  そんな素敵な妄想、映画が終わった後もまだまだ楽しめるという余韻こそが、本作からの最大のプレゼントであったのかも知れません。[地上波(吹替)] 8点(2019-10-18 01:19:09)《改行有》

68.  免許がない! 《ネタバレ》  「あの舘ひろしが、実は運転免許を持っていない」という、出オチのようなアイディアだけで撮られたとしか思えない映画。  こういうネタである以上、やはりクライマックスでは主人公が実際の事件か何かに遭遇し、映画的なカーチェイスを繰り広げるのでは……と期待してしまうのですが、そこを外してくる惚けっぷりが、如何にも森田脚本らしく思えましたね。  全体的にユル~い空気が漂っており、退屈さも感じる一方で、何処か心地良さもあるという、不思議な作風。    作中で飛び出す駄洒落「クリープ現象。ミルクじゃないよ」も、最初はツマンなかったはずなのに、二度言われると少しクスッとしたりするんですよね。  映画全体もこんなノリであり、観賞中は(面白くないなぁ……あっ、でもここの場面は、ちょっと良いな)という反応を繰り返す事になりました。  大前提として、主演が舘ひろしでなければ成立しない話なのですが、序盤に変装して教習所に通う姿が、本当に「冴えない中年のおじさん」にしか見えない事には、驚きましたね。  それが正体を現すと、ちゃんと恰好良くなって、映画スターのオーラをビンビンに感じさせる立ち居振る舞いになるのだから、やっぱり凄い人なんだなぁ……と、感嘆。  ちょっぴり気障で、嫌味っぽいところもあるんだけど、フッと渋い笑みを浮かべるだけで色気と愛嬌が漂うもんだから、憎めないんですよね。  作中で観衆にキャーキャー言われているのも当然だなと、自然に納得出来ちゃいます。    踏切の前では窓を開けて音を確認するようにと教官に注意され「一般車で、そんな事やってるの見た事ねぇ」と反発するも「教習所では、そうすんだよ」と諭される件も皮肉が効いていて面白かったし、ミスを犯した後、教官に減点されちゃう嫌ぁ~な雰囲気なんかも、上手く表現されていたように思えますね。  特に、仲の悪かった教官が妻と復縁出来るようにと、主人公が手伝ってあげる場面なんかは、本作でも一番のお気に入り。  ……でも、その後の展開にて「純粋に合格した訳ではなく、借りを返す為に教官がハンコを押してあげた」と思える形になっているのは、それこそ大幅減点です。  そりゃあ教官だって感謝はするだろうけど、仕事に私情を挟んだような描き方をしているのは、ちょっと違うんじゃないかと。  あれだけ真面目に努力する主人公を描いておいたくせに、最終的には「映画スタッフが色々と助力して、反則まがいの方法で免許を取らせた」というのも、何とも納得し難い結末。  そこはやはり、実力で合格出来たんだと、スッキリ納得させて欲しかったところです。  中盤にて、やたらとお色気シーンが多くてウンザリさせられた事も含め、どうにも「好きな映画」とは言えそうにない本作。  とはいえ、憎み切れない愛嬌も備えているし「ここの場面は、結構好き」と言えるような部分も幾つかはあった為、何だかんだで観ておいて良かったと思えるような……そんな一品でありました。[DVD(邦画)] 4点(2019-06-08 14:21:45)(良:1票) 《改行有》

69.  ディアボロス/悪魔の扉 《ネタバレ》  「都会に引っ越すと、周りの人が悪魔のように見える」という寓意的な御話なのかと思いきや、さにあらず。  本当に悪魔が出てきて、しかもそれが主人公の父親だったというオチには驚きました。  「何時かは負ける日が来る。人間ならね」「父の事は知りません」などの台詞によって、序盤から伏線が張られていたとはいえ、非現実的過ぎる展開なのですが、それでもさほど戸惑わず観賞出来たのは、やはりアル・パチーノの存在感ゆえなのでしょうね。  ジョン・ミルトンという名前、天国で仕えるより地獄を制した方がマシという行動理念からするに、その正体は恐らくルシフェルなのだと思われますが、それだけの大物を演じていても、まるで違和感が無いのだから凄い。  息子相手に熱弁を振るうシーンなんて、凄く楽しそうに演じているのが伝わってきました。  「彼女を看病してやれって言っただろう?」などの台詞により、あくまでも選択したのは自分、悪いのは自分と相手に思い込ませるやり口なんかは、正に悪魔的。  近親相姦で子を作るようにと薦める辺りも「悪魔とは、人を堕落させる存在である」と実感させられるものがあり、印象深かったです。  それでいて、息子の事は彼なりに愛しているのではと思わされる一面もあり、そんな人間的(?)な部分も含めて、魅力あるキャラクターに仕上がっていたと思います。  冒頭で無罪を勝ち取ってみせた数学教師が、殺人犯として逮捕されたと知らされる件。  そして妻が実の父親にレイプされた後、自殺する展開など、主人公にとっては悲惨な展開が続く訳ですが、最終的には「夢オチ」「もう一度最初の場面からやり直し」という着地をする為か、後味も悪くなかったですね。  夢オチっていうと、何だかそれだけで拍子抜けというか、評価が下がりそうになってしまうものですが、本作は最後にもう一捻り加える事で、夢オチならぬ現実オチとして成立させている。  「悪魔が存在するのも、そいつが父親であった事も、全て事実だった」という形で終わらせているのですよね。  今度こそ善良な道を選び、上手くやってみせるという主人公の決意を嘲笑うような悪魔の笑みが、非常に印象的でした。  もしかしたら、本作で描かれたのは「初めての父子の出会い」ではなく、こんな風に何度か出会いと別れを繰り返しているのかも知れないな……と思わされる辺りも、面白かったですね。   父と子、どちらかが完全な勝利を収めるまで、無限に続く輪となっているのかも知れません。[DVD(吹替)] 6点(2019-05-02 23:34:11)(良:1票) 《改行有》

70.  ディープ・カバー 《ネタバレ》  潜入捜査を題材とした映画は好みなので、充分に楽しむ事が出来ました。  何といっても、主演を務めたローレンス・フィッシュバーン(ラリー・フィッシュバーン)の目力が素晴らしい。  冒頭、潜入捜査官を選抜する為、黒人警官達に面接を行うシーンがあるのですが、何の予備知識も無いと、ここで「んっ? こいつが主人公?」と思わせるような潜入捜査官候補が、次々に登場する形になっているんですよね。  でも、幾つかの面接が不首尾に終わり、フィッシュバーンが画面に現れた途端に「間違いなく、この男が主人公だ!」と納得させられてしまう。  それほどまでに、その精悍な顔付きと、鋭い眼差しには、独特の存在感が漂っていました。  父親が麻薬中毒であった為に、厳しく自己節制し、酒も飲まずにいる主人公。  そんな彼が、潜入捜査で麻薬の売人として振る舞い「悪」になりきろうとする内に、段々と自らの内面に眠っていた「悪の素養」とも言うべき一面と向き合う事になる脚本が、実に秀逸。  終盤、彼が酒を飲み干し、麻薬にも手を出してしまう場面では「とうとうやってしまったか……」という、人が堕落する瞬間の、後ろ向きなカタルシスさえ感じられましたね。  仮初めの生活を行う裏町のアパートにて、近所の少年を可愛がる主人公に対し、その子の母親から「あの子が好きみたいね。二千ドルで売ってあげる」と提案されるシーンなんかも、潜入した先の闇の深さが窺えて、印象深い。  また、売人としてコンビを組む事になった、ジェフ・ゴールドブラム演じるデビットとの、奇妙な友情も良いんですよね。  主人公に正体を告げられた後も「デカでもいい」と答え、一緒に悪党としてのし上がっていこうと誘い掛ける姿なんかも、忘れ難い魅力がありました。  あえて不満点を挙げるとすれば、主人公が最後の最後で「正義」を選ぶキッカケとなる「牧師さん」の出番が少なめである為、その決断に今一つ重みを感じられなかった事。  そしてラストシーンにて、上述の少年の母親の墓に、手向けの花と現金を添える行為によって、主人公が少年を引き取った事を示す演出が、ちょっと即物的に思えてしまったくらいでしょうか。  隠れた傑作と呼ぶに相応しい、もっと多くの人に観賞してもらいたくなるような、そんな一品でありました。[ビデオ(字幕)] 7点(2019-02-19 21:02:25)《改行有》

71.  ぼくのプレミアライフ 《ネタバレ》  姉妹編「2番目のキス」に比べると、何処か真面目で、御洒落なセンスすら漂わせている本作。  「趣味」か、それとも「愛する女性」かと、世の男性に対し二択を迫るような内容となっており、観賞後は色々と考えさせられるものがありましたね。  結論から先に言えば「一番大切なのは愛する女性、趣味は二番目」という、ごく真っ当な答えを出したエンディングとなっているのですが、主人公はアーセナルの優勝決定の瞬間には「趣味」であるサッカー観戦の方を優先させている為、ちょっと中途半端な印象も受けてしまいました。  あるいは、長年の宿願であるアーセナルの優勝を目に出来たからこそ、スッキリとした気持ちになって、一歩進んで、大人になれたという事なのでしょうか。  この辺りの心理に関しては、劇中で必要以上に説明しない演出となっている為、解釈が分かれそうなところです。    スタジアムに連れて行った父親も引いてしまうくらい、サポーター活動に熱中していく主人公の姿は、何処か微笑ましくて、好印象。  「大人が何かに夢中になって、何故悪い?」という主張にも、大いに共感を抱きましたね。  このくらい強烈に没頭出来る趣味があるというのは、羨ましい事だな、と思えます。  優勝出来なかった時の失望が怖くて「どうせ無理」「絶対に負ける」なんて悲観的な事を呟き、自らの心に予防線を張っておく主人公の気持ちなんかも、同じスポーツファンとしては、実に良く分かりますね。  それだけに、優勝決定のゴールが決まる瞬間には、完全に気持ちがシンクロして、大いに興奮する事が出来ました。  その一方で、彼とは正反対な現実的思考のヒロインに関しても、きっちりと描かれていたんじゃないかと。  一定の理解は示しつつも「父親になるのだから、もっと落ち着いて、大人になって欲しい」と訴える姿は、説得力満点。  これだけしっかり者の奥さんがいてくれるなら、多少子供っぽい旦那さんでも、家庭は安泰だな……なんて、男目線で無責任に考えてしまったくらいです。  ラストシーンにて、二人は明確に「結婚」というワードを口にした訳ではありませんが、寄り添いながら歩く姿を見ていると、無事に夫婦になれたのじゃないかな、と思えますね。  生まれてくる子供は、父親に似てアーセナルファンになってくれるのかどうかも、気になるところです。[DVD(字幕)] 7点(2019-02-08 02:22:35)(良:1票) 《改行有》

72.  ホーム・アローン3 《ネタバレ》 「悪い大人と、家に仕掛けた罠で迎え撃つ子供との攻防戦」を楽しみたいのであれば、本作がシリーズ中で最も適しているかも知れませんね。  主人公の少年が科学好き、機械好きという事もあって、仕掛けも非常に凝っている。  敵側も銃を持った殺す気満々の連中なので、彼らを可哀想と思ったりする事もなく、純粋に少年側を応援出来た気がします。  ……ただ、自分が1と2を好きだった理由はそんな攻防戦にあるのではなく「一人ぼっちになった子供が、親を気にせず好き勝手にやって楽しんでみせる」「偏屈な大人と心温まる交流をして、幸せな結末に導いてみせる」部分にあったもので、その二つが希薄な本作に関しては、どうしても楽しめず仕舞いでした。  一応、後者に関しては「意地悪なご近所のヘスさんを救出して、感謝される」という形で描かれているのですが、主人公が一方的に彼女を助けて、それで仲良くなって終わりってだけなので、如何にも寂しい。  空港にて、袋を間違えて持ってきたのはヘスさん当人なのに「どこかの馬鹿に袋を間違えられてね」と発言するシーンがあるなど、ヘスさんに対しては「嫌な人」という印象しか抱けず、最後までその印象を払拭出来なかったのも痛かったです。  やはりこの辺に関しては「怖い大人、嫌な大人かと思ったけど、実は良い人だった」という、ギャップの魅力を感じさせるような場面が欲しかったですね。  他にも「主人公の少年が登場するまで十分近く掛かるので、感情移入し難い」「悪党にトドメを刺すのがペットのオウムという形なのは、カタルシスに欠ける」など、細かい不満点ばかり目についてしまうのも、全くもって困りもの。  主演のアレックス坊やに関しても、カルキンとはまた違った可愛らしさがあって良かっただけに「意地悪な兄と姉がいる」「悲鳴を挙げる仕草が似ている」など、前作までの主人公と同じ属性を盛り込んでいる形なのが、残念に思えちゃうんですよね。  これなら、もっと「機械が好き」って属性を強調して、前作までとは全く違った主人公像にしても良かったんじゃないかな、って気がします。    あえて言うなら「敵が銃を持っており、過去作よりも遥かに危険な存在」「美女のアリスもいるので、視覚的に楽しい」って部分が本作独自の長所と言えそうなんですけど、前者に関しては「銃を持ってるなら、さっさと撃てばいいのに」と思えちゃうし、後者に関しても「別に敵は全員男でも問題無い展開だったな」と思えちゃうしで、イマイチ褒めきれないんですよね。  せっかく敵役に女性がいるなら、それを活かし「彼女が母性に目覚め、寝返る事になる」とか「主人公の父や兄に色仕掛けして、篭絡しようとする」とか、もっとやりようがあったんじゃないかと。  「泥棒を目撃したのに、周りの大人が信じてくれない」→「見事に泥棒を退治し、周りに認められる」って流れは、起承転結がしっかりしていて良かったですし「アレックス・プルイットの科学実験」のシーンなど、ところどころ好きな部分も見つかっただけに、勿体無かったですね。  「観て損した」「失望した」って程に酷い訳じゃないけど、自分としては物足りない一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2019-01-09 01:20:35)《改行有》

73.  プリシラ(1994) 《ネタバレ》  冒頭のシーンにて、主人公の衣装や化粧よりも「えっ、口パクなの!?」と、その事に吃驚。  男性が女性の扮装をしている事も併せ「本当は女性の歌声を出したいけれど、出せない切なさ」を表現しているのかも知れませんが、自分としては (たとえ下手でも良いから、自分の声で唄って欲しいな……)  と思ってしまい、作中の口パク歌唱ショーに対して「凄い!」と感じる事が出来ず、残念でしたね。  せっかくクライマックスのショーは盛り上がっていたのに、何だか映画を鑑賞している自分だけが、置いてけぼりを食らったような気分。  脚本に関しては、非常に凝っており、観客を油断させない作りになっていたと思います。  例えば…… 1:酒場で主人公達が白眼視される。 2:飲み比べに勝利したりして、何とか友好的なムードになる。 3:ところが翌朝になると、主人公達の車には「エイズ野郎」との落書きが……  という三段仕掛けになっている場面なんて、意地悪だけど上手い。  その他、移動中の車内にて生い立ちについて話す際にも「幼児期に性的悪戯を受けていた過去がある」と思わせておいて、実は「悪戯しようとした不埒な大人をこらしめてやった」痛快譚だったと種明かしする流れにも、大いに感心させられました。  また、同性愛者を過度に美化しておらず、等身大の「ズルい」人間として描いている辺りも好印象。  母親に対し「旅に出たら異性愛者になれるかも」と騙す形で、一万ドルの車を買ってもらった件は流石にどうかと思いましたが、仲間が過去に女性と結婚していたと知って「気味悪い」と言い出す辺りなんかは、非常にリアルであるように思えましたね。  アジア人女性の「ピンポン玉」の芸を下品と思って嫌がる描写があったのも「主人公達は迫害される側の人間ではあるが、そんな彼女達だって下品なものを嫌う感覚は、当然持ち合わせている」と悟らせる効果があり、非常に人間らしい存在である事が伝わってきました。  終盤「キングスキャニオンにハイヒール姿で立つ」という長年の夢を叶えた後に、真っ先に思う事が「うちへ帰りたい」というのも、何だか切なくて良かったですね。  あそこの件は「夢を叶えてみせた達成感」と同時に「夢を叶えてしまった喪失感」とも言うべきものが感じられて、実に味わい深いものがありました。  ガイ・ピアース演じるフェリシアが、幼い少年に懐かれて兄貴分(姉貴分?)のようになっている姿も、とても微笑ましくて好み。  この組み合わせが終盤にしか登場しない事が、寂しく思えたくらいです。  最初の内は、登場人物達への戸惑いが大きく、距離を感じていたはずなのに、エンドロールが流れる頃には愛着が湧いてしまって、彼らと離れ難い気持ちになる。  そんな切なさを秘めた、不思議な映画でありました。[DVD(字幕)] 6点(2018-10-28 11:19:36)《改行有》

74.  アラクノフォビア 《ネタバレ》  冒頭の南米でのパートが、ちょっと長過ぎた気がしますね。  巨大な滝など、壮大なスケールの自然を拝ませてもらってテンションは上がりましたが、そこを舞台に二十分近くも引っ張ったのは、バランスが悪かったんじゃないかと。  (そうか、これは秘境を舞台にした冒険物だったのだな……)と感じ始めた矢先に、都市部の物語に移行する形なので、観ていて(えっ、そっちだったの?)と戸惑っちゃいましたからね。  物語の導入部に過ぎないなら、南米の件は十分以内に収めた方が良かったのではないかな、と思います。  そんな具合に、序盤で作品への不信感が芽生えてしまったせいか、以降も殆ど楽しむ事は出来ず仕舞い。  丁寧に作られた、真面目な映画だとは思うのですけど、その真面目さが「面白みに欠ける」「退屈」という印象に繋がってしまった気がします。  日常生活の中で、知らぬ間に小さな毒蜘蛛が脅威として迫っている……という描写にしても、子供が本を落とし、その上に足を乗せるだけで踏み潰せちゃう程度の脅威な訳だから「怖い」とは思えなかったりしたんですよね。  主人公家族が都会の生活に戻り、田舎を馬鹿にした台詞を口にして終わりっていうのも、ちょっと後味悪い。  蜘蛛の巣が我が家にあると気が付き、主人公が戦いを挑む終盤の展開は中々に面白かったですし、観賞中ずっと退屈だったという訳では無いのですが、正直「良かった」と思える部分が少ないですね。  そもそもタイトルからして「アラクノフォビア」=「蜘蛛恐怖症」なのだから、蜘蛛に対して怖いというイメージを全く持っていない自分が観たのが間違いだったのかも知れません。  肌に合わなかったのが残念な一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2018-10-22 12:39:49)《改行有》

75.  顔(1999) 《ネタバレ》  喪服のままで強姦されて、純潔を散らす事となった主人公の正子。  そんな彼女が相手の男に対し「これ、あげる」と香典を渡すシーンが印象的でしたね。  流石に気味が悪かったのか、突き返そうとする男を罵倒するように「取っとけ!」と啖呵を切る姿なんかも、妙に格好良くて、惚れ惚れする思い。  美しい妹を殺してしまったがゆえに、逃亡犯としての旅に出る事となった正子だけど、本当の意味で「生まれ変わった」「旅する決意をした」のは、この瞬間であったように感じられました。  その妹との確執に関しても、短い尺の中で巧く描いており「お姉ちゃんの存在が恥ずかしかった」と言わせた辺りなんかは、大いに感心。  他人ならば何ともないのに、家族だからこそ「その存在が恥ずかしい」という感情が湧き出てくる訳で、それを的確に表現している台詞ですよね。  全体的に、暗い作風とも明るい作風とも言い難いものがあって、暗いというにはあっけらかんとしているし、明るいというには陰鬱過ぎるという、不思議なバランス。  この独特の空気感を心地良く感じる人もいそうですが、自分としては、ちょっと苦手だったりもしました。  妹殺害のシーンなども「直接殺した光景は描かないで、まず主人公が風呂場で自殺未遂を起こす姿を描く」→「その後に旅支度を始める主人公の足元で、妹が死体となって倒れているのを、サラッと映し出す」という演出になっており、上手いなぁと感心する気持ちと、ちょっと回りくどいよなと思う気持ちが半々になったりして、どうも素直に褒められない、肌に合わない部分が目に付いてしまったのです。  作中で最も悲劇的に描かれていた「流産」に関しても、主人公が信じる「輪廻転生」に共感が持てなかったりしたもので「あぁ、彼女なりに妹を愛していたんだなぁ……」と冷静に考える程度で終わってしまい、感動にまでは至らず、残念でした。  その代わりのように、主人公が成長するロードムービーとしての魅力は感じ取る事が出来て、そちらに関しての満足度は高め。  旅の中で、周りの人達と交流し、自転車の乗り方を習い、泳ぎ方を習い、それが結果的に「土壇場で逮捕の手を逃れる手段」に繋がるストーリーが、実に皮肉で面白いんですよね。  主人公のモデルになった、ホステス殺人事件の犯人と思しき女性と、喫茶店で会話を交わしていたと判明する瞬間なども、観ていて驚かされ、印象的な場面でした。  また、本作においては、実際の事件と違って「整形」という要素を用いなかった辺りも、良い判断だったかと。  何せ主演の女優さんが演技巧者なものだから、最初は生気を失った顔だった主人公が、段々と生き生きして魅力的になり、まるで別人のような「顔」に変わっていく様を、説得力満点に演じてくれているのですよね。  全体のストーリーラインをなぞれば、非常に胡散臭い話であるはずなのに、不思議なくらい真実味を帯びて感じられたのは、やはり彼女の存在が大きかったからなのだろうな、と思えます。  お世話になった女性の律子さんに電話を掛け 「ごめんなさい」「ありがとう」  という想いを伝える件なんかも、凄く良かったですね。 「死ぬぐらいやったら、逃げて」「お腹が減ったら、ご飯食べて」  という励ましの言葉を、手首に傷のある律子さんが口にするのだから、何とも切なくて、情感溢れる名場面。  恐らく、本作の主人公は「逮捕されてしまえば罪悪感に耐え切れず、留置場や刑務所で自殺してしまう」と分かっているからこそ、懸命に逃げ続けているのだと思われます。  そんな事情を加味したとしても、現実逃避、罪から逃れるという行いは、間違いなく悪い事なのでしょう。  それでも、たとえ悪だとしても死よりはマシだ、前を向いて走って、逃げ続けて生きるべきなんだ、というメッセージが窺える、味わい深い映画でありました。[DVD(邦画)] 6点(2018-10-12 00:25:36)(良:1票) 《改行有》

76.  U.M.A レイク・プラシッド 《ネタバレ》  数あるワニ映画の中でも、最も好きな一本。  「面白い」ではなく「好き」なタイプの映画である為、感覚的なものを伝えるのは難しいのですが……とにかく定期的に観返したくなる魅力があるんですよね。  監督さんが「ガバリン」や「ハロウィンH20」「フォーエヴァー・ヤング」という、自分好みな品を色々手掛けている人なので、波長が合うのかも?  何気ない場面や、ちょっとした音楽にも(あぁ、良いなぁ……)と感じてしまうんだから、とことん自分とは相性の良い作品なのだと思われます。  典型的な「誤解を招く邦題」である事。  作中での牛の扱いが可哀想である事。  メインとなる登場人物達が皮肉屋揃いで「良い子ちゃん」とは掛け離れている事。  などなど、欠点と呼べそうな部分は幾らでもあるんですが、それより長所の方に注目したい気分になるんですよね。    雄大な自然を捉えた空撮画面が美しくて、それを眺めているだけでも楽しいし、川辺でキャンプして焚き火したりと「レジャー」「アウトドア」的な魅力を味わえる辺りも嬉しい。  一応、作中で死人も出ているんだから、シリアスな空気になっても良さそうなものなのに、どこか皆ノンビリしていて「楽しいワニ釣り」めいた雰囲気すら漂っている。  それは「緊迫感が無い」という短所でもあるんでしょうが、自分としては「そこが良いんだよ」って思えました。  巨大ワニが実は二匹いたというオチにして「殺さずに捕獲出来た達成感」「ミサイルで派手に吹っ飛ばした爽快感」を、それぞれ一匹ずつ味わえる形になっているのも良いですね。  (そりゃあ無事に捕まえられたら一番だけど……保安官が持ち込んだ小型ミサイルの伏線もあるし、どうせ殺すんでしょう?)と予想していただけに、適度な意外性を味わう事が出来ました。  そして何といっても、最初は喧嘩ばかりしていた主人公四人が、一連のワニ騒動を通して仲良くなっていく姿が微笑ましいんですよね。  それも、物凄く強固な友情が生まれるとかじゃなくて「病院に付き添う」「一緒に飲みに行く」程度に留めているのが、程好いバランス。  最後も「まだまだ赤ちゃんワニが沢山いた」というバッドエンドのはずなのに、妙に明るく〆ているのも良かったです。  ワニを飼ってるお婆ちゃんは、そりゃあ道義的に考えれば「悪」なんだろうけど、彼女にとってワニは「可愛い子供達」な訳だし、それが全て奪われずに済んだという、一種のハッピーエンドにも感じられました。  この後、続編映画が色々と作られて、最終的には「アナコンダ」とクロスオーバーした「アナコンダ vs. 殺人クロコダイル」なんて品まで生み出す事になる本作品。  シリーズ化されるのも納得な、確かな魅力を備えた一品でありました。[DVD(吹替)] 7点(2018-06-18 16:01:19)(良:2票) 《改行有》

77.  タイムクラッシュ・超時空カタストロフ<TVM> 《ネタバレ》  なんたる後味の悪さ。  普通、こういった歴史改変を扱ったタイムマシンネタでは「より良い未来に変わる」「結局は元通り」のどちらかになるのですが、本作では徹底して「主人公の行いによって未来がどんどん悲惨になる」という内容になっているのですよね。  飛行機や地下鉄の事故から人々を救った英雄的行為が「億単位での人口の変化」「原発事故によるカリフォルニアの消滅」などの未来に繋がってしまうという、皮肉過ぎる展開。  しかも息子を救う事が出来てハッピーエンドかと思われた空気の中で「歴史を変えた大犯罪者」と主人公が断罪される形で幕を下ろすのだから、本当にもう「そこまでやるか」と呆れちゃうくらい。  細かい矛盾点というか、気になる点も沢山あって、例えば冒頭で重要人物かと思われた「黒服の時間旅行者」が中盤にてアッサリ死亡する場面なんかは「えっ、何でもっと抵抗しないの?」「何で暴走する列車の先頭車両に立ち尽くしたままなの?」と感じるし、リセット云々の作中の専門用語の説明が足りていないように思えるしで、観賞後にモヤモヤが残ってしまうのは残念。  それでも「過去にあった災厄の数々の現場写真に、いつも同じ顔をした男が映っている」という不気味な導入部、事故を止めようと奔走する主人公の姿など、観賞中は飽きさせない魅力と勢いがあり、不満よりは満足度が高い内容だったと思います。  正直、こういう後味の悪い映画は苦手なのですが、ここまでやられると「参りました」と脱帽する気持ちも大きいですね。  九十四分という上映時間の分だけ、しっかり楽しめた一品でした。[DVD(字幕)] 6点(2018-06-15 11:15:53)《改行有》

78.  同居人/背中の微かな笑い声 《ネタバレ》  これ、元々はTV映画だったんですね。  確かに画面作りが安っぽいし、劇場で流す程のスケール感は無いかも知れませんが、個人的には中々楽しめました。  主人公である殺人鬼が「妊娠」の事実を聞かされてショックを受ける描写に「他人とは思えなくて」という台詞など「狙われた一家の婦人と、この主人公とは、実は母子である」という伏線が、キチンと張られているんですよね。  こういったタイプの映画だと、インパクト重視で唐突なドンデン返しオチを用意する事も多いだけに、本作には感心させられるものがありました。  幼児期に性的虐待を受けていたという過去に関しても(あぁ……冒頭に出てきた養父、如何にもそういう事やりそうな雰囲気だったなぁ)って思えて、妙に納得。  始まって五分程のエレベーターのシーンで「相手を陥れる為に、自分から壁に顔をぶつけて出血する主人公」を描き(コイツは危ない奴だ……)と、早めの段階で観客に分からせてくれるのも良かったです。  気になったのは、ドナルド・サザーランドの扱い。  エンドロールでも真っ先に表記されているし、実際自分も途中までは「被害者家族の中での主人公格」と認識していたんですけど、終わってみれば一家三人の中で、最も出番が少ないくらいだったのですよね。  しかも終盤に焼死して途中退場という形なのだから、何とも消化不良。  作中で一番の大物俳優であるだけに「撮影時間を確保出来ず、出番が少ない形になってしまった」「でも大物なので序盤に主役っぽく描き、エンドロールでも優遇して誤魔化しておいた」という大人の事情が窺えて、流石に興醒めしちゃいました。  後は、ラストに主人公が死んで直ぐに終わってしまう為、余韻もへったくれも無いのも困りものですね。  あそこは、もうちょっと時間を掛けて「殺人鬼とはいえ、色々と可哀想な奴だった……」と思わせるような、寂寥感のある描写が欲しかったところ。  そんな訳で、完成度が高いとは言い難いものがある本作。  でも、ウィリアム・マクナマラの端正な容姿、純真さと狂気とを内包させた眼差しは「異常殺人者の青年」としての魅力を、確かに感じさせてくれましたね。  彼の存在だけでも、一見の価値ありかと。[ビデオ(吹替)] 5点(2018-05-04 20:36:49)《改行有》

79.  ルームメイト(1992) 《ネタバレ》  思っていた以上にレズビアン的要素が強い内容で、驚かされました。  同性愛とは「自分と違う存在」を愛せないがゆえの、自己愛の延長なのだという説を思い出しますね。  確か中学生くらいの頃、クラスメイトの女子が髪型を変える際に「同じにしても良い?」と友達に訊いたり、筆箱を買う時に「同じの買っても良い?」と確認を取ったりしている場面に遭遇して(女子って変な事するなぁ、特許がある訳でもないんだから、勝手に髪切って勝手に買えば良いのに)なんて思っていたものですが、この映画を観た後では、とてもそんな呑気な考えは浮かんでこなくなります。  それくらい「ルームメイトが同じ髪型になる」シーンには、精神的にゾクリと来るものがありました。  ジェニファー・ジェイソン・リー演じるヘディに関しては、とことん病んだ女性なのですが、恐怖だけでなく同情も感じさせる辺りが、女優さんの上手さなのでしょうね。  ブリジット・フォンダ演じる主人公のアリーに対し、歪んだ形ではあるけれど、確かに愛情を抱いているのが伝わってきました。  相手を縛り付けておきながら、退屈はしないようにとテレビを付けて、リモコンも手元に置いてあげるという彼女なりの優しさ。  それが仇となって計画を狂わせてしまうのが、何とも皮肉です。  愛する相手を殺してしまったと悲しみ、別れのキスを交わすシーンも印象深かったのですが、個人的に感心させられたのが、その後のヘディの行動。  「死体」となったアニーを運ぶ姿には、先程までの悲しみなど全く窺えず、後始末しなければいけない腹立たしさゆえ、忌々しそうに死体を引きずっているように見えたのですよね。  一応、上着で顔を隠すという配慮(?)もありましたが、その後に実はアニーが生きていたと分かった際にも、喜びではなく混乱をきたしている辺りに、異常性が窺えます。  彼女なりの愛情は存在したのだろうけど、それは決して真っ当な形ではないし、報われるようなものではないのだな、と自然と納得させられるものがありました。  その後の主人公アニーの逆転劇に関しては、本来は盛り上がるところなのでしょうが……少々アクロバティック過ぎて、違和感を抱いてしまいましたね。  アクション的な見栄えの良さを重視したのかも知れませんが、別にヘディの腕っぷしが強い訳でもないはずですし、もう少し大人しめの演出でも良かったのではないかな、と思えます。  クライマックスと呼べる部分であるだけに、そこで映画の世界から現実に引き戻される気がしたのは、とても残念。  ラストシーン、たった一人で部屋の中に佇むアニーの姿からは、彼氏のサムだけでなく「友達」のヘディを失ってしまったという悲しみも感じられました。  双子の姉が死んでしまったトラウマゆえに「生きている自分が許せなかった」というヘディに対し、アニーは「死んでしまった彼女を許す」という形になっているのも興味深い。  そしてヘディと同じ道を辿らぬよう「生きている自分も許そうと思う」というアニーの独白で、物語が終わる。  綺麗に纏まった映画です。[DVD(吹替)] 6点(2018-04-05 06:12:56)(良:2票) 《改行有》

80.  ニルヴァーナ 《ネタバレ》 「私達は水槽の金魚さ。水槽を海だと思い込まされている」 「そこも現実っていうゲームの世界じゃないの?」  などなどの台詞に痺れてしまう身としては、観賞中、とても楽しい時間を過ごせました。  現実と虚構の境界線が曖昧になってしまう作風はフィリップ・K・ディックの面影を感じさせる一方で、後代のサイバーパンク映画に与えた影響も大きいように思えますね。  モノクロ世界の中で一部だけカラーを用いて、その存在を際立たせる手法については、幾つかの映画で目にしてきましたが、この作品は、その使い方が凄く好みなんです。  特に、色が流動的に変化する口紅とドレスの演出などは、全体に漂うオリエントな猥雑さと、それに伴う色っぽさを引き立ててくれていましたね。  湯気を浴びただけで、すぐに曇って調子が悪くなってしまうカメラアイなんかも、妙に説得力があるというか「本当にそんな機械が存在しそう」というSFマインドを、大いに刺激してくれます。  主人公を手助けしてくれる仲間のジョイスティック、ヒロイン格のナイマも魅力的なキャラクターで、三人でハッキングを行うシーンには、実にワクワクさせられるものがありました。  はてさて、こんな映画を撮ったのは一体誰なんだ? と調べてみたら「ぼくは怖くない 」と同じ監督さんだと分かって、大いに納得。  あちらも素晴らしい傑作でしたからね。  上述の通り、全体的に好印象の映画なのですが、気になる点としては、もう一人の主人公とも呼ぶべき存在であろうソロが、作中であまり活躍してくれなかった事が挙げられそう。  彼は仮想世界にいる「囚われのお姫様」ポジションであるのだから、現実世界の主人公ジミーの行動原理でさえあれば良いのだ、という解釈も可能でしょう。  ただ、それにしてはラストシーンにて 「私達は勝ったのか?」 「あぁ、勝ったよ」  という小粋なやり取りを交わす件など、まるで二人が共に戦った相棒であるかのように描かれているのが、少し不自然に感じられたのですよね。  それならば、終盤にてソロも「ニルヴァーナ」の消滅に役立つような見せ場が欲しかったな、と思ってしまいます。  ソロと別れを交わした後、ジミーがドアに向かって発砲した後のシークエンスに関しては、色々と解釈の分かれるところでしょうね。  自分としては「ジミーの死後、ナイマの中に挿入された記憶チップという形で、二人は一つになれた」という一種のハッピーエンドなのだと考える次第。  その方が、勝者となった主人公には相応しい顛末かと。  劇中にて印象的に語られていた「降りながら消える雪の一片」が、スタッフロールにて描かれる終わり方なども、とても良いですね。  こういったビジュアルセンスって、凄く好き。  素敵な余韻を与えてくれる映画でした。[DVD(吹替)] 8点(2018-03-17 06:16:27)《改行有》

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