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タイトル名 |
To Leslie トゥ・レスリー |
レビュワー |
Cinecdockeさん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-05-22 23:08:45 |
変更日時 |
2025-05-24 00:05:42 |
レビュー内容 |
でも、周りを見てごらん。 ここが本当にいたい場所なのかな?
中盤の酒場で流れるカントリー曲の歌詞の一節だ。 19万ドル(日本円で約2,600万円)の宝くじが当たるも全て酒代に消え、 住み家も家族も友人も失った女性はこの曲を聴いて何を感じたのだろうか?
酒を飲まないと約束しても、金をくすねて結局酒に使ってしまい、一人息子からも絶縁される。 かつての知り合いからも嘲笑され、救いようのない主人公に呆れながらもなぜか目が離せない。 100万ドル以下の低予算映画で大きな事件が起きることもないのに。 それは愚行だらけの中にまだ完全に諦めていない光を芯に宿している、アンドレア・ライズボローの説得力があってこそ。 あの夜から彼女は、与えられた居場所に胡坐をかくことなく、 幾度か酒に手を出しそうな危うさを秘めつつも、必死に自分自身を取り戻そうとする。 下手したら陳腐で嘘臭いメロドラマに陥りそうなものだが、終始乾いたタッチで最後まで惹きつけられる。 主人公の孤独にシンパシーを感じるモーテルの管理人が出過ぎない絶妙な立ち位置で、 彼女を信じ続ける監督の優しい視線と重なる。
己の弱さを受け入れ、真に切望しているものを、回り道しながらついに辿り着く。 もしかしたら振出しに戻るかもしれないと思いながらも、微かな光を見出す結末が尊い。 宝くじの大金を当初の生産的で利他的な方向に使っていれば、彼女の人生はまた違ったものになったかもしれないが、 失ったからこそ見えてくるもの、再び失ってはいけない大事な居場所がある。 |
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