映画『別離(2011)』の口コミ・レビュー

別離(2011)

[ベツリ]
A Separation/Nader and Simin, a Separation
(Jodaeiye Nader az Simin)
2011年イラン上映時間:123分
平均点:7.80 / 10(Review 45人) (点数分布表示)
公開開始日(2012-04-07)
ドラマミステリー
新規登録(2012-04-03)【ESPERANZA】さん
タイトル情報更新(2024-08-18)【にじばぶ】さん
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監督アスガー・ファルハディ
キャストペイマン・モアディ(男優)夫 ナデル
レイラ・ハタミ(女優)妻 シミン
シャハブ・ホセイニ(男優)ホッジャト
メリッラ・ザレイ(女優)ギャーライ先生
落合弘治夫 ナデル(日本語吹き替え版)
岡寛恵妻 シミン(日本語吹き替え版)
小林さやか〔声優・1970年生〕(日本語吹き替え版)
脚本アスガー・ファルハディ
撮影マームード・カラリ
製作アスガー・ファルハディ
あらすじ
シミンとナデルは結婚して14年になる夫婦。もうすぐ11歳になる娘デルメーとナデルの父親の家族4人で、テヘランのアパートで暮らしている。シミンは、娘の将来を考えて、国外移住の許可を1年半奔走して取った。しかし夫ナデルの父がアルツハイマー病になったことで、計画が狂う。父親介護のため国を出ることはできないという夫、娘のためにはたとえ離婚しても国外移住を望む妻。しかし事態は別方向へと発展する。
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💬口コミ一覧

45.ネタバレ 人ごとではないだけに,重いテーマの映画だろうな,という期待?を裏切らない映画でした。2時間緊張がとぎれない,完成度の高いお薦め映画です。主な登場人物は,みんな,いっぱいいっぱいです。ゆとりがないため,悪い方へ,悪い方へ事態が進みます。ゆとりがない,と書いたのですが,主人公夫妻は父の介護の問題を除けば,全く何も問題ない家庭ですね。夫婦とも仕事をしているし,娘もしっかりしている。経済的にはゆとりがある。だれかが上手く調停できればよかったのに。あまり上手でない調停人でも,解決できたのではないか。映画のお話なのに,残念な気持ちになりました。それだけリアリティーのある作品だった,ということだと思います。宗教や制度など欧米映画にないところも面白かったです。
昭和26年生まれのtakaさん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-15 19:56:21)
44.数々の映画賞を得た「別離」がとうとうイラン映画初となる米国アカデミーの外国語映画賞に輝いた。前作「彼女が消えた浜辺」で、人間の心理を描くのがうまい監督だと思っていたが、今回はそれ以上。イランの社会的・政治的な側面、宗教や階級問題などが根底に人間関係を見事なまでに表現している。
ESPERANZAさん [映画館(字幕)] 8点(2012-05-06 17:59:16)
43.ネタバレ 冒頭ファーストシーンのタイトル入りまでのカットは、夫婦2人のカメラ目線によって観客には見えない“第三者”に向けられていますが、話が進むにつれてあのシーンが「観客に投げかけている」意思だったことに気付きます。その意図は、ラストカットのワンカット前とほぼ同じ状況、同じようなテーマで繰り返されます。それがつまるところ単純に、観客への「質問提起」と「答案回収」なのです。というのは観客に、「この夫婦のどっちなら信頼できますか?そしてできましたか?」という物語構造に捕えることができるのです。そして、それと表裏して社会への強烈なメッセージが込められた作品であることが如実にわかります。ラストカットのエンドロールの入る数秒前、夫婦の間を通るのは2人の娘です。「説明」はされていませんが、あの衣裳、あの背丈、あの仕草を見ればわかりますし、もしエキストラだとしても、誤った誤解を生むようなミスを監督がするとは到底思えません。そんな娘は終始、身勝手な両親に翻弄され、傷つけられても決して両親を思う事を止めませんでした。その健気さは、簡潔に言えば「世界中全ての子ども」の普遍的な親への願いであり、そうあることの“正しさ”を強く解いているように思いました。少女は節々で選択を求められ、その都度、答案を返し続けた末、両親はまた身勝手に離婚決めます。そんな両親に対して少女が決めたのは「どちらも選ばない」という「両親が元に戻る最終手段」だと思いました。巧みなミステリー構造の根底に流れる強いメッセージに、ぼくは心震えました。宗教的に嘘の許されないイラン社会で嘘をつく人間がいる現代イラン。離婚の許されなかった社会で法律が変わり、離婚が増加している現代イラン。イランに住んだこともなければ、イラン人に出会った事すらない。それなのに、イランで生きる人々の私生活とそこにある問題とそれに対する祈りを、まるでそれを知っているかのような感覚でそれについて真剣に考える事ができている。映画は人種や文明、時代を超えて全ての人間に届くものだということを強烈に考えさせてくれた。これだから映画は素晴らしい! 最後に、観客にさえ、あなたなら気付いてあげられたか、という嫌みな問いをも残した監督。凄過ぎる。
ボビーさん [映画館(字幕)] 9点(2012-05-22 21:26:42)
👍 3
42.ネタバレ 決してどこかに「悪」がいるわけではない。一人一人のちょっとした巡り合わせや仕方がなさそうなことの積み重ねで事態が悪い方向へ向かう。このことは冒頭の離婚の話から暗示されていて、最後までずっとそれで進む。

■一人一人それぞれ筋は相応に通っている。でもそれを全体として組み合わせようとするとうまくかみ合わない。そして、そういう翻弄の中で最も口実にされあおりを受けるのが子供や老人といった立場のものである。両親は「娘が・・・」と口々に言うが、本当のところは娘を口実に自分の思いを(悪意はないにせよ)すり合わせているところが多そうに思った。

■ラスト。ずっと出てこないままエンドロールとなったが、そこで暗示されていることは、娘は「どちらにもついていかずに、自分は一人で生きる」ということなのではなかろうか。振り回されるのはもう嫌だ、自分で生きていけるだけの力はある、少なくとも映画ではそれだけの力があるように描かれていたが。
θさん [映画館(字幕)] 9点(2012-05-24 22:09:49)
41.ネタバレ 高校生の頃、トルコ映画「路」を観た時に、ガツンとカルチャーショックを受けた事をふと思い出した。今回は齢40いくつにして、人生初のイラン映画である。そしてまたまた別の意味での強いショックを受けてしまった。ここに描かれている内容自体は、アメリカでも日本でも世界共通どの国でも充分起こり得そうな、非常にわかりやすいごくフツーの中流家庭のオハナシだったから。もちろんお国柄上、宗教価値観の違いで、一筋縄ではいかない展開になっているのが非常に興味をそそられるわけだが。この映画にはいくつかの「?」が観客に提示されている。その「?」によるサスペンスで、中盤からは観客をグイグイと半ば力技的に引っ張っていく。そのうちの幾つかは最後までに明らかにさせ、また幾つかは最後まで種明かしれないまま終わらせてしまう。あまりに説明過多な映画が多い中、観客の想像力に訴えかけさせるような映画は昨今貴重だと思う。しかも決して難解な描き方などしていないのがミソ。「?」を提示する描写も、序盤からさりげなく描かれていて演出的にも巧み。ずっと無表情だった娘が途中から感情をあらわにしたあたりから、映画は加速度的に面白さを増していきましたね。鑑賞後、この映画の中には「食事シーン」がひとつもなかった事に、食いしん坊の私はハタと思い当たる。殆どが屋内シーンだったから、あってもおかしくないはずなのに。これもなんだか考えたらすごく不思議。イラン映画では食事するシ-ンは御法度なんだろうか?すべては観客の判断と想像力に委ねさせるという、この映画の主旨に沿った形でのラストシーンの締め方も自分は好きですね。このラストで1点加算させて頂きます!
放浪紳士チャーリーさん [映画館(字幕)] 8点(2012-06-01 16:25:52)
👍 1
40.ちょっと、難しい。
枕流さん [映画館(字幕)] 6点(2012-07-02 20:34:23)
39.・・・で、あなたなら、どうしますか?
longsleeper21さん [映画館(字幕)] 9点(2012-07-08 23:09:16)
38.ネタバレ これは面白い!!完全に惹きこまれて、見入ってしまった。
認知症と流産というずっしりくる問題が、事件の発端となるため、内容はとてもシリアス。
それぞれに思惑があり、事情があり、打算があるため、話はこじれにこじれる。(こじれる系好きです)
イランの役者の切迫感は、ひと味違う。
そして、すかっとしないというか、グダグダな結末を迎えるのも、ある意味リアリティがあって良い。
巻き込まれた格好になった互いのお子さんが大変不憫で、今後、健やかに育つことを願わずにはいられません。
すべからさん [映画館(字幕)] 8点(2012-07-09 23:17:31)
37.日常生活で起こりそうな事をこんなにもサスペンス風に描けるのかと思いました。とにかく最初から最後まで画面にくぎ付けで堪能しました。あとこの映画に出てくる登場人物は宗教上の事とかあるかもしれませんが、皆さん本当に頑固者だなぁーと思ってしまいました。
バナナシェイクさん [映画館(字幕)] 9点(2012-09-26 23:50:28)
36.ネタバレ ●ミステリーとして見た場合は、証拠の現実感が素晴らしい。扉の位置関係、階段の汚れ、病院到着の際のやりとりなど、どちらに有利な証拠もそれなりにある。目撃証人も2人ほどいるが、どっちに有利な結果になるのか、どちらの結論にも転びそうである。見ている側も、行きつく先が見えないまま否応なく巻き込まれるという仕掛け。●ドラマとして見た場合は、各登場人物の心理のぶつかり具合が見事。どこかでバランスが壊れて破綻しそうになりながら、元に戻ったり、また別の問題が起こったりして、解決した部分とそうでない部分を残しながらラストに収束していく。その設定に応えた役者陣の演技力も特筆すべき。●伏線を随所で撒いていながら、回収しているものもいないものもある。その手法がもたらす先の見えなさが、日常生活の中での生々しい不安定性を表現することに成功している。
Oliasさん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-07 01:46:50)
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35.ネタバレ まるでヨーロッパかアメリカのような、イランらしくない家に住む若い家族。最初はどこの国も異文化が混じると、こんなことが起こるんだろうなって思って観てた。「新しい」文化にかぶれた人も、今までの文化を大事に思う人も、事件が起こると、「自分」に正直に反応して、事態がぐちゃぐちゃになる話。日本にもあるよね~。でもこの映画、およそ今までのアジア映画らしくなく、映画的な計算もされている。最後15分前に意外な事実が被害者のお母さんの口から聞かされる。あちゃ~、これはアジア映画ですのん?て言いたくなるほどの演出。そして最後のエンドロールの流れる時の映像の意味するもの。なんと垢抜けてることか!そう、この映画、一番大事な娘にこんな選択をさせる若い夫婦に疑問を感じさせる場面で、こんな「垢」抜けた演出をしてくれるのだ。身勝手な夫婦に疑問を感じながらも、誰も裁けない、と言っているのだろうか?う~ん、それにしてもアジア映画も変わってきたね・・・何とも複雑な気持ち・・
トントさん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-16 02:19:35)
34.夫婦の別居が引き金となり、次々と起こる苦難を描いた物語..予備知識無しで観てしまったので..家族愛がテーマの 善行、美談、を期待していたら..エゴイズムむき出しの、どろどろとした人間模様が展開..予想とは全くの別物でした..映画としては、よく出来ているし、リアルと言えばリアル..でも、わざわざ映画で観る必要があるのか..と私的に思ってしまう..反面教師的に観るのであれば、教訓となる作品かも..後味の悪さに、ご用心!..

コナンが一番さん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-19 16:31:27)
33.ネタバレ 人生の中で、イラン製作の作品なんてほとんど観たことありませんが、非常に完成度が高い。日本の得意とするどろどろの人間関係を上手く表現しています。それに加え日本にはない男尊女卑、宗教、貧富の差等も絡めており、観客を飽きさせない内容。両者とも自分を守りたいだけなんですが、ほんと問題が山積みで終始口論。エンディングもなかなか渋い。気になるのは家庭裁判の行い方です。あのスタイルは日本ではまったく受け付けないでしょうね。ただ、処理は速そう。外国映画として話題になった作品ですが、レンタルショップには1本だけとあまり力を入れていないようなので、一見さんは手に取らない作品なのかも知れない。
マーク・ハントさん [DVD(字幕)] 7点(2013-04-28 12:27:18)
32.ネタバレ 一見我々日本人よりも生活水準が高いと思わせるアパートメントから話が始まる。車社会のようで、夫婦二台で乗っている車もそこそこの高級車。物質的にはそこそこ恵まれているが、非イスラム圏の社会と決定的に違うのはイスラム教の戒律の厳しさである。
日常生活は日本と同じでもイスラム教がさまざまな制約を持ち、これが同じ地球の社会なのかとさえとも思えてくる。ただ、作者は一方的にイスラム教の批判をしている訳でもなく、イスラム教によって助けられる部分も描いている。結局、この作品はイスラム教と特有さを描いているのか、宗教全般に関して言及しているのか監督は明確な答えを出していないが、私は後者かなと思う。いずれにしろ、イスラム社会を理解するための一助になるという意味でも非常に重要な作品である。
rosebudさん [映画館(字幕)] 8点(2013-05-03 10:03:36)
31.ネタバレ この映画のラストシーンは非常に良いですが、あのシーンは、娘の決定した答えを想像しなさい、と言っているのではなく、単純に娘の考えた結論は、この物語には必要がないからカットしたのでしょう。つまり、「別離」で言いたいことは、別離した後の結論ではない、そのことを強調するメッセージだと思います。親といえども、男女関係です。だからなぜ別離するの?という問いかけも意味を持ちません。テーマは別離だけではなく、裁判の行く末にも重点が置かれています。ドストエフスキーの名作「カラマーゾフの兄弟」のように泥沼系の裁判描写が延々と続くので、ドロドロ系好きの私にはたまりません。ただし、もちろん盗まれたお金はどうなった?ということを追求する目的ではありません。裁判というのは、アメリカや日本では、勝つか負けるかという戦略的な戦いの場です。しかし宗教に身を置く人々の一部では、かりに証拠不十分などで法律的な罰を免れても、神様から罰を受けると、本気で恐れている。てっきり私は流産した女性が、嘘をついて、慰謝料をふんだくる気でいるのかと思っていましたが、彼女は最後になって、嘘をついてお金を貰うと、神の罰が当たると恐れていました。日本人では「後ろめたい」という感情はあるかもしれませんが、見えない罰を真剣に怯える人は少ないでしょう。つまり性悪説の立場に立てば、宗教は犯罪防止の1つの抑止力になりえるのかもしれません。まあしかし、DV夫や、娘に嘘を連発する父親をみていると、信者のなかでも、神の罰を恐れるイラン人は一部しかいないのかもしれませんが─。「アルゴ」というイラン人を悪魔扱いしたハリウッド映画の後に観ましたのですごく良い映画に見えました(笑)「アメリカ人よ、これが映画だ」と言いたい気分です。

花守湖さん [DVD(字幕)] 8点(2013-05-06 16:03:43)
30.ネタバレ 誰かと一緒に観れば、ラスト、11歳の娘は「どっちを選んだんだろうね」という会話になるだろうと思います。どちらかというと娘が心理的なやり取りが多いのは父親なので、私的には、始めは父親だろうかとも思えましたが、涙というものが悲しみを表しているなら、父親への別れなのかなという気分にもなりました。
男と女の違いをはっきり表している映画だと思います。
流産した女性の旦那と女性を押した旦那は、どっこいどっこいですね。
ストーリー展開も真実が2転3転して面白く作られています。
それにしても、流産した女性が「コーランに誓って証言してくれ」と言われ、やはり誓うことはできないと言ったことに、なんだか宗教の重さを感じました。
どんな宗教でも、こういう人を一番信用しなければいけませんよね。
よくアメリカ映画で聖書に手を乗せておきながら、嘘ばかり言ってる証言者に見せてやりたいものです。
コーランを信じるイランの人の心の重さが一番伝わった素晴らしい映画でした。
おじいちゃん、あんまり関係なかったですね(笑)。
クロエさん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-06-12 04:29:06)
29.ネタバレ めんどくさい人達が次から次へと登場する。
観ていて何度「こいつ、うぜぇー」と思ったことか。
そういう意味では役者の演技はみんなとても上手なのだろう。
11歳の娘は11歳にはとても見えない・・・大学生(男)みたいな顔してる。
結局はあの女(流産)がウソついてたのが悪い。
あれだけ熱心に信仰しててあの程度なのか?
最後の最後には誓えなかったが、そうなる前に真実を言えてこその信仰ではないのか。
女性はずっ~と布かぶってたり、宗教ってめんどくさいね。
ホントこの世界に要らないと思う。ここが無宗教の許される日本で良かった。
神も悪魔も所詮は、か弱き人の心が作り出す幻なり。
虎王さん [DVD(吹替)] 6点(2013-06-25 01:04:14)
👍 1
28.ネタバレ 認知症を患う父親の介護と13年も連れ添った妻との離婚問題を抱えるナデルは、少しでも生活の負担を減らそうと訪問介護ヘルパーとして、妊娠している女性を雇うことに。しかし、そのヘルパーが仕事中に父親を放り出して出かけたことを知ったナデルは激高して彼女を突き飛ばしてしまう。その後、流産してしまった彼女を巡って愛憎渦巻くドロドロの人間ドラマが展開されてゆく。もう最初から最後までひたすら口論に次ぐ口論で描かれた、閉塞感漂うイラン社会のリアルな描写にはほんとゲンナリさせられたけど、ちゃんと最後まで緊張感を途切れさせずに見せきるところはさすがアカデミー外国語映画賞受賞作。どんな世界であれ大人たちの身勝手な理由に翻弄される子供たちの姿は見ていて本当に切ないです。ドキュメンタリーならまだしも、これを映画として見ることにちょっぴり疑問符を感じるところもあるけれど、核開発や反米イスラム国家という先入観の向こう側で必死に生きる市井の人々がいるという事実をあらためて思い起こさせてくれました。
かたゆきさん [DVD(字幕)] 6点(2013-10-31 12:38:54)
27.ネタバレ 誰も悪くないような、誰もが悪いような…。
描かれているのは善と悪というステレオタイプではない、どこにでもいるリアルな人間の不幸。
相手を責め、自分の責任逃れをするエゴイズムは、誰でもこうなる要素を内在しているのかも。
愛する者を守りたいがための嘘が絡み合って、どうにも解けなくなってしまった糸のような状態。
認知症の親の介護、事故による流産、リストラによる生活苦など他人事とは言い切れないことだし、一つ歯車が狂えばなかなか元には戻らない。

イランが舞台ということで、貧困と宗教が絡んだリアリティに圧倒される。
敬虔なイスラム教徒のコーランへ誓うことの重さは想像以上で、物語のキーにもなっている。
神に誓っても嘘がつけるところでは成り立たないストーリーで、イスラム社会の特性がうまく生かされている。
チャードルで妊婦がどうかわかりにくくなっているのもそう。
街並みも含めて異国情緒や文化が色を添える。

互いに傷つけあう裁判や夫婦の諍いは、醜さと痛みがびんびん伝わってくる。
夫婦ともに娘をとても大切に愛していながら、それでも夫婦間を修復できずにその大切な愛する者を傷つけてしまう。
一番の被害者は子どもで、なす術のない様が哀れを誘い、後味の悪さが尾を引く。
ラストシーンでは、娘の審判を待つ夫婦は廊下の両サイドに分かれて無言、開かれたドアの向こうにいる相手に目も合わせない。
そのドアを何人もの人々が通り過ぎていく。
ほんの少し歩み寄れば簡単に通れるのに、その距離は永遠に届くことのないほど離れて感じられるという見事な演出。
脚本も兼ねたファルハディ監督の才能がうかがえる。

娘が両親のどちらを選んだか明らかにされていないが、娘の涙は両親の修復をついに諦めた惜別の涙に思える。
父の元にいたのは母に戻ってもらいたかったからで、修復不可能だと悟ったなら母のところにいくのだろう。
父を守るために心ならずも偽証までした優しい娘だから、父を見放してしまった自分を責め続けることになるかも。

判断を観る人に委ねる曖昧な描き方はずるくて好きではないけれど、この作品の場合は描く必要がなくこうしたラストがふさわしい。
緻密に構成された完成度の高い作品だが、残念なのは娘が11歳の設定なのに全然そう見えないこと。
どうしてそんなキャスティングをしたのか不思議だったが、娘役が監督の実娘だったとは…。
飛鳥さん [DVD(吹替)] 9点(2013-11-12 18:00:15)
👍 2
26.触れ込みとしては、旧制度と世俗的な新制度のはざまで、家族関係が揺れる中の決断は?みたいな感じでしたが、単なる家族の問題を扱った作品で、どこの国でも起こりうることに思いました。これ自体、特定の宗教であるとか、両者において、どうしようもない障壁がある、という風には全く思いません。その辺、宣伝担当も内容をしっかりとらえていないように思います。映画は終始、熱のこもった沸騰した演技で非常に疲れます。正直これを2時間やられると、結論はどうでも良くなります。はたして当事者間にゆだねることが良かったのか?冷静に判断できる第三者を間に入れれば?などと考えます。しかし、ラストに向けて、娘の学校へ相手が乗り込んでくるあたり、これはもう犯罪です。
たかちゃんさん [ブルーレイ(字幕)] 5点(2013-12-12 19:58:43)
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【点数情報】

Review人数 45人
平均点数 7.80点
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
412.22%
524.44%
6511.11%
736.67%
82146.67%
91226.67%
1012.22%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.00点 Review3人
2 ストーリー評価 8.33点 Review3人
3 鑑賞後の後味 7.33点 Review3人
4 音楽評価 8.00点 Review2人
5 感泣評価 8.50点 Review2人

【アカデミー賞 情報】

2011年 84回
脚本賞アスガー・ファルハディ候補(ノミネート) 
外国語映画賞 受賞 

【ゴールデングローブ賞 情報】

2011年 69回
外国語映画賞 受賞 

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