映画『残菊物語(1939)』の口コミ・レビュー(2ページ目)

残菊物語(1939)

[ザンギクモノガタリ]
The Story of the Last Chrysanthemums
1939年上映時間:143分
平均点:8.88 / 10(Review 25人) (点数分布表示)
公開開始日(1939-10-10)
ドラマモノクロ映画小説の映画化
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監督溝口健二
キャスト花柳章太郎(男優)尾上菊之助
森赫子(女優)お徳
高松錦之助(男優)尾上松助
高田浩吉(男優)中村福助
葉山純之輔(男優)守田勘弥
尾上多見太郎(男優)尾上多見蔵
南光明(男優)新富座の頭取
天野刃一(男優)新富座の女形
井上晴夫(男優)奥役
石原須磨男(男優)旅廻り太夫元
富本民平(男優)待合の客
保瀬英二郎(男優)旅廻りの役者
伏見信子(女優)芸妓栄龍
花岡菊子(女優)芸妓小仲
鏡淳子(女優)五代目の女中
大和久乃(女優)五代目の女中
河原崎権十郎[二代目](男優)五代目菊五郎
花柳喜章(男優)尾上多見二郎
志賀廼家辨慶(男優)按摩元俊
磯野秋雄(男優)若い者
嵐徳三郎(男優)中村芝翫
梅村蓉子(女優)五代目夫人里
中川芳江(女優)茶店の婆
原作村松梢風
脚本川口松太郎(構成)
依田義賢(脚色)
音楽深井史郎
撮影三木滋人
製作松竹(京都撮影所)
配給松竹
美術山岡荘八(美術考証)
水谷浩(美術監督)
その他花田三史(デジタル修復版画調監修)
あらすじ
芸道の道に生れ落ちた青年と、そこの家に雇われた女は恋に落ちる。しかし、身分の差による周囲の偏見もあり、それはやがて悲恋の形を辿っていく・・・女にとっての男とは?男にとっての女とは?時代を超えて、それらを観る者に強烈に訴えかけてくる日本映画史に残る傑作である。日本の巨匠監督の一人、溝口健二監督の初期代表作にして2時間を超える大作。
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💬口コミ一覧

5.ネタバレ 芸の完成そして広く認められること、それが愛する人との別れともなる。それを淡々と描くこの溝口映画。芸が認められることは、家柄を重視する、歌舞伎の世界では、お徳との別れともなる。それが分かっていても、お徳は亭主を世に出す。その最初の口火の公演のとき、舞台とそれを見守るお徳の両方をカメラは捉える。こんなに切ない場面ってあるだろうか?献身的に尽くしたあの人が見事に仕事をやってのけている。しかしそれが別れともなるのだから・・。そして世に出た亭主を東京に送り出して、お徳は実家に帰り、あんなつまんない男とは別れたとさらりと言ってのける。こんな見事な女性描写の映画があるだろうか?まだ数本しか観てない溝口映画だが、観るたびに色んな感慨を受ける。実に日本映画は色々観れば観るほど、鉱脈が豊かに流れてることに気づかされる。
トントさん [DVD(邦画)] 9点(2013-04-10 09:04:26)
4.ネタバレ 溝口健二監督という存在、「巨匠」とは呼ばれていても、どこか認知度が薄い気がする。代表作は「雨月物語」ということになっているけれども、それでいいんだろうか。そのあたりで、(決して「雨月物語」がダメというのではなく)認知度の低い原因にもなっているようにも感じる。‥‥溝口監督の作品には、どれもそれなりの欠点が内包されている、などと生意気なことをいいたくなってしまうところがあるのだけれども、十本ぐらいの監督の作品を観て、いちばんにバランスのとれた「傑作」は、この「残菊物語」ではないのかと思う。ストーリーは定型の旧社会の中での「メロドラマ」ではあるけれども、ヒロインはそれでも、いつも「前」を向いている。そこに「感動」のタネもある。みごとな長回し、ワンシーンワンカット、そして、ひんぱんに登場する「階段」の活かし方。ラストの簡潔な「対比」の効果。すばらしい。映画というものの演出の、ひとつの規範ではないのか。‥‥もちろん、西瓜のシーンとその反映は、あまりにすばらしいではないか。
keijiさん [インターネット(字幕)] 10点(2013-12-13 17:26:40)
3.ネタバレ 大根役者が親から自立し、歳月をかけて一流の役者に成長するという話。
主人公の菊之助は大役者の親の重圧、自分に才能が無いという板挟みの苦しみ。それを支える奉公女お徳。多少ズケズケとした物言いだが、嘘を付かずハッキリ言っては思いやるその優しさ。言わないことの厳しさよりも、いっそ言い放つ優しさの方が欲しい。それが人間の本音。その辺の描き方が良い。
まずファーストシーン。
歌舞伎のやぐらみたいな部分をぐるりと回し、舞台は歌舞伎の演目。
一場面が終わり、演目を終えた役者たちがゾロゾロ楽屋に入り愚痴をこぼす。
このショットと溝口の独特の間が、退屈を感じさせず観客を引き込む。でも祭りの席での会話は流石に字幕が無いと聞き取れん(最初字幕→次見る時は字幕なしで楽しめよ)。
そんな夏の熱い夜、スイカを食べ一時の至福を噛み締める二人の男女。赤ん坊に蚊帳をかける様子、スイカを斬る描写、口止めされた子供から駄賃で情報を聞き出す絵。
親はダメと言っても若い二人は止められない。太鼓もドコドコそんな二人を後押し。
物語は菊之助が軸であり、男心をじっくり描く、段々と女心も絡ませてくる。
親の心子知らず、子の心親知らず。菊之助のセリフが“溝口”の心を代弁する。
そんな菊之助を慕うお徳。
深まった中で“あなた”と優しく言う。二人の距離が縮まった事を、このたった一言で印象付ける。
しかし菊之助は中々芽が出ない。
5年の旅芸人生活で心が荒み始める菊之助。お徳の献身的な支えが、菊之助にかすかな良心と粘り強さを残す。苦よりも楽、失敗を恐れて現状に甘える菊之助。
そんな菊之助を、お徳は一計を案じてまで元の光の中に戻そうと努力する。こんなええ女何処にもおらんがな。人間一人じゃ生きられない、人の縁が人を活かす。
後に引けなくなった菊之助の覚悟と五年間の苦労が、大舞台の上で爆発する。
そんな姿を見て嬉しそうな表情と何処か哀しみを覗かせる顔をする。自分の運命を悟った上で。菊之助の成長を喜ぶ仲間たち、子の心を理解してくれた父親、だが菊之助の心は満たされない。動き出す列車、川を流れる船が運ぶのは菊之助の栄華か死にゆく者の魂か。菊之助の無言の苦しみがカメラワークだけで伝わって来る。
二人が黄泉の向こう、あるいわ生まれ変わって幸せに暮らせる事を心から願うばかりだ。
すかあふえいすさん [DVD(邦画)] 9点(2014-01-03 18:08:43)
👍 1
2.ネタバレ 何度目かの再見で、新たに気づかされるのは音響に対する作り手の意識の高さとその達成である音の豊かさ。
長門洋平氏の著作『映画音響論』での詳細な分析とユニークで斬新な解釈に触発されて見返したわけだが、
フレーム外から聞こえる物売りや行商人の掛け声、囃子など、その対比としての沈黙の用法・タイミングまでよく考え抜かれているのがよくわかる。

まるでヒロインの表情を見せまいとするようなフレームサイズ、構図、陰影。加藤幹郎氏を始めとして散々指摘されてきたことではあるが
その分、森赫子の済んだ声音はより際立って美しい。

長門氏によるラストシーンの解釈に全面的に首肯するわけではないが、冒頭シーンとの対照という意味でも、「ありうべかざるものを、
ありうべきものとして」描いたとするそのユニークな解釈はとても興味深い指摘である。

十分に分析されつくしたかに見えても、さらなる味わいと解釈を許容する傑作の奥深さを思い知らされる。
ユーカラさん [ブルーレイ(邦画)] 10点(2016-07-06 23:59:20)
1.ネタバレ 日本版『椿姫』とも言える内容であるが、二代目尾上菊之助の立身出世物語を表に備える本作の方が、総合的に話の内容としては上であるようにすら思える(同年代のグレタ・ガルボ版『椿姫』と比較してさえ、個人的には上回ると思う)。また、お徳さんの菊之助に対する献身には、もはや男女間の愛情を超えるものすら覚える。前時代の日本ではこれが当たり前だったとでもいうのだろうか(俄かには信じ難い)。

歌舞伎のシーンが多く挿入される本作であるが、特に『関の扉』のシーンは実に緻密で良く出来ていた(菊之助の芝居をはじめ、祈るお徳さん、芝居を見つめる福助の緊迫感漲る様子には引き込まれた)。ラスト、花開いた菊之助の晴れ姿と儚く斃れるお徳さんの対比も見事で、ここにはもう涙しかなかった。種々の場面で和の趣を湛える音の使い方も素晴らしい。個人的一、二位を争う屈指の名作邦画。
Yuki2Invyさん [DVD(邦画)] 9点(2020-02-04 21:34:05)
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【点数情報】

Review人数 25人
平均点数 8.88点
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
414.00%
514.00%
600.00%
700.00%
8416.00%
9936.00%
101040.00%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 10.00点 Review1人
2 ストーリー評価 9.50点 Review2人
3 鑑賞後の後味 10.00点 Review4人
4 音楽評価 10.00点 Review1人
5 感泣評価 9.50点 Review2人

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