映画『アラビアのロレンス 完全版』の口コミ・レビュー

アラビアのロレンス 完全版

[アラビアノロレンスカンゼンバン]
Lawrence of Arabia
1988年上映時間:227分
平均点:7.22 / 10(Review 46人) (点数分布表示)
アクションドラマアドベンチャー戦争もの政治もの歴史もの実話もの伝記もの小説の映画化
新規登録(2004-03-07)【マムゲン】さん
タイトル情報更新(2017-06-08)【イニシャルK】さん
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監督デヴィッド・リーン
キャストピーター・オトゥール(男優)T・E・ロレンス(エル・オレンス)
オマー・シャリフ(男優)アリ
アンソニー・クイン(男優)アウダ
アレック・ギネス(男優)ファイサル王子
ジャック・ホーキンス(男優)ロード・エドマンド・アレンビー将軍
アーサー・ケネディ(男優)ジャクソン・ベントリー記者
クロード・レインズ(男優)ドライベン
ホセ・ファラー(男優)トルコ軍将校
アンソニー・クエイル(男優)ハリー・ブライトン中佐
ドナルド・ウォルフィット(男優)アーチバルド・マーレイ将軍
マイケル・レイ(男優)ファラジ
I・S・ジョハール(男優)ガシム
ジア・モヒーディン(男優)タファス
ロバート・ボルト(男優)ロレンスに同行したイギリス軍上官(ノンクレジット)
バジル・ディグナム(男優)(ノンクレジット)
デヴィッド・リーン(男優)スエズ運河付近で自転車に乗っている男(ノンレクジット)
山寺宏一T・E・ロレンス(エル・オレンス)(日本語吹き替え版)
磯部勉アリ(日本語吹き替え版)
坂口芳貞アウダ(日本語吹き替え版)
瑳川哲朗ロード・エドマンド・アレンビー将軍(日本語吹き替え版)
小川真司〔声優・男優〕ハリー・ブライトン中佐(日本語吹き替え版)
永井一郎ドライベン(日本語吹き替え版)
池田勝ジャクソン・ベントリー記者(日本語吹き替え版)
中村正[声優]トルコ軍将校(日本語吹き替え版)
滝口順平アーチバルド・マーレイ将軍(日本語吹き替え版)
稲垣隆史(日本語吹き替え版)
長島雄一(日本語吹き替え版)
千田光男(日本語吹き替え版)
遊佐浩二(日本語吹き替え版)
阪口大助(日本語吹き替え版)
伊藤隆大(日本語吹き替え版)
水野龍司(日本語吹き替え版)
手塚秀彰(日本語吹き替え版)
佐々木梅治(日本語吹き替え版)
田原アルノ(日本語吹き替え版)
田中正彦(日本語吹き替え版)
桜井敏治(日本語吹き替え版)
落合弘治(日本語吹き替え版)
原作トーマス・エドワード・ロレンス「知恵の七柱」
脚本トーマス・エドワード・ロレンス
マイケル・ウィルソン〔脚本・1914年生〕(オリジナル脚本)
ロバート・ボルト
音楽モーリス・ジャール
撮影アーネスト・デイ(カメラ・オペレーター)
フレデリック・A・ヤング
ニコラス・ローグ
製作マーティン・スコセッシ
ジョン・デイヴィソン
サム・スピーゲル
スティーヴン・スピルバーグ
デヴィッド・リーン
特撮ウォーリー・ヴィーヴァーズ(特殊効果)
美術ジョン・ボックス
衣装フィリス・ダルトン
編集デヴィッド・リーン
アン・V・コーツ
あらすじ
第一次世界大戦中のシナイ半島。砂漠の民アラブ人は、民族国家の建設と近代化をいち早く達成したトルコによる侵略を受けていた。アラビアの言語や文化に精通したイギリス軍のロレンス少佐は英国の敵ドイツと組むトルコをアラビア半島から駆逐するため、英土両軍が思いもつかない奇襲作戦でトルコの手に落ちたアラブ人の都市を奪還していく。ロレンスの行動の目的は単にイギリスの権益を守ることではなく、アラブ人に自信を回復させ、さらにはトルコ勢力一掃後のダマスカスを中心にアラブ民族の統一国家を樹立することだった。
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💬口コミ一覧

46.ネタバレ 映画という表現形式を芸術にまで高めた大作であり、間違いなく映画界の最高峰に位置する。とりわけその映像美には感嘆を禁じ得ない。
毀誉褒貶相半ばする歴史上の人物、ロレンスが主人公。非嫡出子で、考古学者で、軍人で、独創家で、反抗的で、アラブ贔屓でと一言では言い表せない複雑な人物だ。
そのことを冒頭、記者に「詩人であり、学者であり、偉大な戦士だった。同時に恥知らずな自己宣伝家だった」と言わせ、それに軍人が抗議するするが、実は彼は、過去にロレンスをアラブ人と間違えて平手打ちしているのだ。実に巧みな技法だ。英国からも、アラブからも、誰からも理解されなかったロレンスの孤独な半生を表象している。
彼は砂漠に放たれたとき嬉々として、「運命など無い」と吠えた。アラブ人を仲間に迎え、アラブ開放を理想に掲げ、戦闘で数々の武功をあげ、名声をもたらすが、それは彼の空回りでしかなかった。運命の皮肉により、彼の希望の象徴だったガシムと、無邪気さの象徴だった二人の少年の一人を我が手にかけなけれならなくなる。仲間の死、戦争の残虐さ、 野放図で勝手気侭でロレンス理想を理解しないアラブ人、部族間の対立、政治の欺瞞と老獪さ、理想と現実の狭間で、彼は人間性を失ってゆき、彼自身を恐れるようになった。映画はその変遷を服で表現している。アラブ式白衣はロレンス自慢のものだったが、徐々に汚れてゆき、血に染まり、汚濁にまみれ、遂には脱ぎ捨て、身丈の合わない軍服を着る。見事な表現方法だ。
全編を通じて映し出される砂漠は神がかっている程美しい。監督が砂漠に魅入られているのだ。砂漠は潔癖で人間を拒む。血も流れるがすぐに乾く。苛酷な砂漠の前では、人間は矮小な生き物でしかない。伝統的暮らしに埋没し、目の前の生活に汲々とする人達にとって、アラブ独立国家樹立等という理想は蜃気楼に過ぎない。そのことを映画は繰り返し、砂漠の大景の中の点景として人間を見せるで表現している。
それでも歴史の影は容赦なく忍びこんでくる。第一次世界大戦を戦う大国の前では、アラブ民族は、利用され、征服される存在でしかない。一石を投じたロレンスも歴史の淵に沈んでいった。一人の人間の力では、燐寸の火は消せても、灼熱の太陽は消せない。悲劇の歴史の一齣を、冷徹な眼でもって芸術的な抒情詩として描いて見せた点が、本作品の真骨頂である。
よしのぶさん [DVD(字幕)] 10点(2014-08-31 19:19:04)
👍 2
45.ネタバレ 私を映画ファンに仕立たのは間違いなく「燃えよドラゴン」と「雨に唄えば」、そしてこれ。この作品は間違いなく全ての芸術作品もひっくるめて後世に残すべき文化遺産である!と声を大にして訴えたい。「清潔な」砂漠を愛した一軍人が歴史と民族の諍いに巻き込まれ英雄となり、その手を血に染め敗残者として記録から姿を消す。歴史の記録/記憶の作られ方や人間(民族)の倫理観や行動について考えさせられただけでない、自分にとってこの映画は「個の確立(砂漠を越えた後のあの『Who are You?』は深い)のあり方」そして強い意志を持って未来を乗り越える事の素晴らしさ(逆に今になってみるとそういった希望はなかなか叶わない難しさも感じる)を教えてくれた。なおかつこの映画は絶対にCGでは再現不可能な、人間の息づかいがスクリーンからあふれている!役者も音楽もなにもかも素晴らしいがやっぱりここは名匠デビット・リーン(=この人の作品に流れる「異文化コミュニケーション」の取りあげ方は現代の社会でも十分議題に挙げられるべきテーマでまったく古くさくない)のテクニックに堪能しよう。何回見ても飽きないし毎回新たな発見があるこの映画、ぜひ機会があればスクリーンで堪能ください。テレビ画面ではこの映画、多分7点くらいでしかない!
Nbu2さん [映画館(字幕)] 10点(2012-06-16 09:50:36)
👍 1
44.砂漠は、偉大だった。
たいがーさん [映画館(字幕)] 10点(2010-12-21 01:22:31)
43.先日「午前十時の映画祭」のおかげで念願のスクリーンで鑑賞。
とにかくその 砂漠 砂漠 砂漠 。
圧倒させられました。
モーリス・ジャールの雄大なスコアと果てしなく続く砂漠、ピーター・オトゥールの一世一代の名演技。
大作職人監督デヴィッド・リーンの凄さを実感しました。

最初TVで見た人間が言うのもなんですが、この作品は絶対に劇場で見るべきです。
恥ずかしながら僕はスクリーンの前で泣きました(笑)




せかいのこどもさん [映画館(字幕)] 10点(2010-12-11 19:55:26)
👍 1
42.ネタバレ 念願叶った。今日から一週間の限定公開が私の住んでる所でというわけで見てきました。これは絶対に映画館の大きなスクリーンで観たい。観るべき映画である。この映画が好きな人は絶対に映画館で観るべきだと声に出して言いたい。オープニングのロレンスが亡くなる所を見せることでロレンスとはどんな人物なのだろうか?という想像をかきたてる。この何とも心憎い上手さ、そして、あの壮大な音楽によって映し出される砂漠のシーン、あの映像なんて、絶対にCGなんかじゃ無理な素晴らしさ、まぶしいほどのギラギラした太陽と砂、躍動感に満ち溢れた映像の力、砂漠をらくだに乗って歩く男達、走る馬、素晴らしい撮影とが見事に融合し、ただただその素晴らしさの前に圧倒させられぱなしの3時間半を過ごすことが出来たことが凄く幸せです。冒頭でバイクの事故により亡くなってしまうロレンスが見終わった後、そうえばというようなものを思わせる上手さもこの映画の素晴らしいところであり、何から何までとにかく素晴らしくて、しつこいようだけど、この映画は絶対に映画館で観たい映画であり、観る映画である。それにしてもこれほどまでに見事な砂漠の映像を映し出した映画を私は他には観たことがない。
青観さん [映画館(字幕)] 10点(2010-02-27 23:10:47)
41.Nothing is written(運命など無い).
ロレンス。
マイヒーロー。
脚本・映像・音楽・人物造形・台詞回し。全てにおいて秀でている神映画。これを観だしたら、4時間が一瞬です。
枕流さん [DVD(字幕)] 10点(2007-12-01 00:43:16)
40.そういうわけで(どういうわけ?)、やっぱり、結局、何だかんだ言っても、とどのつまり、この映画、なんですねえ。わたしゃ実話の映画化ってのにどうもヨワイんだけれども、ロレンスが実在の人物とかいうことより、あの砂漠が実在の光景、ってことの方がはるかに重要。壮大、広大、圧倒の世界。こうなりゃ当然、そこに騎馬隊、騎ラクダ隊(?)でも疾走させて、膨大なるマスゲームでも展開させたくなるのが、スペクタクル映画。しかし砂漠はビクともせず、すべてを飲み込む。アラビアの独立のため、なんぞという「個人の」野望なんぞ、当然ひと呑みにされるわけで。この砂漠という、すべてが取り払われた世界では、建前なんぞ通用しない。ロレンスは挫折する。アンソニー・クイン演じるアウダというキャラクターがユニークで、一見、単なる俗物のようでいながら、最も冷静に世界を眺めている。彼の存在の前で、理解と対立を繰り返す、ロレンスとアリ。映画史上屈指の名コンビの苦悩をさらに冷静に見つめるのは、砂漠そのものに他ならない。そして、<完全版>なるこの映画そのものもひたすら長く、すべてを包み込み、最後には、挫折したっていいじゃないか、という気分にさせてくれる。こういう長さもまた、いいもんだ。
鱗歌さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2007-10-14 11:06:45)
39.ネタバレ 

実際政治とはそんな簡単なものではなく、この時代の歴史背景も難解で、
特に2巻目はほとんどそのことで冒険的な面白さはありません。
正直たいくつだと感じていたあの長い長い砂漠の出会いや、
旅の場面が2巻目になると恋しくなるのに気づいた。
それはロレンスがイギリスに戻ると飼い猫のような変わりようで、
また砂漠にもどりたくないと言いつつ、
戻るのはアラブと決まっている。

主役の気持ちがなんだかわかるという、
最初の長いショットが忘れかけたころに生かされる映像の力。
1巻目にはこれでもかと大げさな音楽が雄大に流れる。
それがもっと戦いが大きくなった2巻目では、音楽はないに等しい。
もしかしてこれが現実なんだと知らされているような・・

誰しも自分の欲望はあるし志もある。国のため名誉のため自分のため。
一番自分に正直だったのは盗賊の頭だったのかもしれない。
政治の現実に嫌気がさし去っていくロレンスを、
最初に出逢ったアリが止めるがそれを諭した盗賊のアウダは、
こうなることも本能で知っていたのかもしれない。
アラブ人になろうとしてなれなかったイギリス人は、
どうみても滑稽だが笑えない苦悩がそこにはある。

助けた仲間を処刑し助けそこねた仲間を思い非情になっていく。
だが戦地から離れまたイギリスに帰れば称号はあれど雇われ兵だ。
アラブを独立させる神にもなれず、大英帝国の駒にされただけなのか。

ぶつ切りになったような終わり方も妙な余韻を残し、
さらにバイクとすれ違う幕切れはオープニングと繋がっているようで、
この主人公のその後にリンクさせているようで不気味な後味です。

気になって仕方なくなり、DVDを購入することにしました。
こういうタイムスリップ的な感覚の映画は気になるのです。
回想から繋げる手法が特にうまいですよね。
主役のピーター・オトゥールは昨年度のアカデミー賞の名誉賞を辞退、
最終的には周りの説得もあり授与されました。

アルメイダさん [DVD(字幕)] 10点(2005-05-07 08:22:19)
38.この作品では、とにかく砂漠の広大さが伝わってきます。俯瞰の画面で、人間がごく小さくポツンと描かれることがよくあります。また、人が画面のずっと奥から手前に向かってくるシーンで、初めは豆粒のように小さなものが、徐々に徐々に大きくなっていく。こういう映像は砂漠でのロケだからこそ撮影できたのでしょうが、だからこそその砂漠の広大さが実感できるのです。そして、戦闘シーンもCG全盛の今観ても充分迫力があります。スペクタクルな映画が好きな人は是非見るべきでしょう。音楽もとってもスペクタクルです。
デュークさん 10点(2004-06-02 19:40:38)
37.映画ファンなのにまだ観ていなかった本作、配信されていたので早速観ることに。
1962年は私が生まれた年、こんな豪華な映画が製作されていたとは。
スケールの大きさ風景の美しさには感動した。

序曲も名曲でしばしうっとり。
しかし、今見るとなかなか進まない丁寧な作り、時代を感じる。
アラブの歴史もほとんど知らず、途中で背景などネットで調べつつ観進めた。
一気に鑑賞したら理解しないまま終わっただろうが、勉強しては少し巻き戻して観る事で理解を深めた。
配信での鑑賞の利点だと思う。

ロレンスの猛進と挫折を隠さず描いた事に共感。
人間らしい生きざま。

脇役のアラブ人も名優、名演技。
お話しに深みをもたらし、リアリティを感じさせた。
アレック・ギネスさんアンソニー・クインさんオマー・シャリフさんに拍手。

そして動物好きには見どころいっぱい。
らくだたちの頑張りにはもう脱帽です。
水無しで砂漠を横断、足の速いこと速いこと。
なんと言っても顔が可愛い。
くちびるがびろーんとして時々歯が見えちゃう。
従順な姿を見て、私もらくだに乗りたくなりました。
馬やロバも頑張っていましたね。

らくだあってこその砂漠、アラブの国々、の印象を受けました。
たんぽぽさん [インターネット(字幕)] 9点(2022-12-12 16:48:55)
👍 2
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36.ネタバレ 英雄になれず、運命を否定しても大きな波に飲み込まれる、アラブ人としてもイギリス人としても生きらない。彼ははずっとアウトサイダーだった。
長谷川アーリオ・オーリオさん [DVD(字幕)] 9点(2011-06-06 03:29:37)
35.ネタバレ  4時間弱の長編で、アカデミー賞7部門受賞という大作という予備知識だけを持って、よし頑張って観るぞという意気込みで観てみた。
 まず壮大な、そして長い序曲から始まり、ああ大作に手を出してしまったなと思い知らされる。観たのはデジタルリマスター版ということもあり、とにかく映像が綺麗で驚いた。そして次に思ったのが、これは中東問題の予備知識がないとダメだ、という事。そこで一旦停めてWikipediaを開きながら鑑賞することに。1962年、CGもドローンもモーションキャプチャーも無い時代に、よくもまあこんなスケールのでかい題材で映画を撮ろうと思ったもんだ、とまた驚く。それは、もともと考古学者で軍用地図の作成をしたり、その語学力を活かしカイロの陸軍情報部で連絡係を務めていた実在の人物トーマス・エドワード・ロレンスの壮大なストーリーだった。
 一介のイギリス軍将校に過ぎないロレンスが、オスマン帝国に対して、アラブ軍を率いてアラブ反乱を起こす。更にダマスカス占領ではアラブにアラブを与えようと一足早く到着し、町中をアラブの旗で埋めたという。そんなまさか、と思った。どこまでが真実でどこからが脚色なのか、そして主人公の心、内面の部分の表現はこれで正しいのか、ここまで考えるとややこしい事になるので、純粋にこの作品だけを楽しむことにする。
 冒頭は主人公の葬儀、そこでの故人の評判はさまざまで、良く言う者もいれば、恥知らずの目立ちたがり屋、偉大な人物だったが良く知らん、という者も。とにかく変わり者であることは分かった。お調子者で気分屋、時代の波にのまれ、周りの雰囲気に流され、自分がアラブ人になったかのように振る舞い、この戦いはイギリス軍のためなどではなく大義ある聖戦だと思い込む。しかしアラブにはジハードという考え方があって、イギリス人が簡単にアラブ人になることは出来ないと思い知らされる。アラブは砂漠を愛さない、とアラブ人が言っていた。アラブを軽く見ていると。一連の作戦にしても結局は、政治家と軍人の妥協劇のお膳立てに過ぎなかった。アラブ軍の指導者かのように嬉々としてオスマン軍と戦ってきたオレンスは、最後は骨抜きになって同胞のもとへと帰っていく。儚い夢のごとく切ないラスト。砂漠はもう二度と見たくない。そして冒頭のバイクのシーンを思い出すと、ロレンスの超ハードで短い人生はいったい何だったんだという余韻にふける。こんな気の毒な人物だったとは。ドラマにしたくなる気持ちが分かった。
 そして何より、美しい映像も存分に堪能しよう。マッチの火を消すとそこは砂漠の日の出。ラクダと広大な景色、地平線の遥か遠くから現れた小さな点がたっぷり時間をかけて徐々に近づくシーン、竜巻、太陽、白い砂漠、青い空。美しい金髪碧眼のピーターオトゥール。音楽も美しい。長いが観てよかった。
ちゃかさん [インターネット(字幕)] 8点(2023-08-03 13:06:33)
👍 1
34.ネタバレ ロレンスの葬儀、語る人それぞれで一致しない人物像。スエズ運河の対岸でバイクの男が問い掛ける「お前は何者だ!?」
イギリス人でありながら、エル・オレンスという名を与えられ、1人だけの部族としてトーブに身を包む。カメラを向けられるとヒラリと舞ってみせる。自分のやることがほぼ上手く行って、神か英雄の気分だろうか、相当なナルシストなんだろう。
ガシムを処刑し流砂でダウドを死なせたことを「楽しんだ」と告白してしまう。アカバから休まる暇が無かったためもあるけど、この時すでにかなり精神的に追い詰められていたから出た発言に思える。オスマン帝国軍に捕まり、自信喪失してアッサリ転属を願い出るところは、理想よりも恐ろしい現実を見せつけられたんだろう。かと思えばモトの任務にもアッサリ戻るところから、行動に一貫性がない。子供のような人物だ。
村の虐殺に感化され、感情のまま皆殺し命令を出したり、ダマスカスを占領したけど、アラブ民族会議をまとめられなかったり。カリスマ性はあっても、軍人としても政治家としても一流とは言えないロレンス。ダマスカス侵攻中、まだ熟れてない葡萄を口にしたロレンス。上手く機能しないアラブ民族会議にバラバラに散るアラブ部族。“もし実れば見事な果実だった”は、ロレンス自身のツメの甘さ、未熟さを表すかのようだ。アラブのためと言いつつ、自分が誰かに認められるための戦いだったように思える。結局、あれだけの活躍をしたのに、イギリスにもファイサルにも利用され、終いには砂漠に居場所がなく、すごすごと本国に帰るしか無いロレンスが寂しい。だけど未だに国家としてまとまっていないアラブ諸部族を考えると、ロレンスの能力に関わらず、西洋とは文化が違いすぎるために、イギリスやフランスがアラブを国家というワクにハメること自体が、そもそもの間違いなんだとしか思えない。

この映像凄い。これは音楽とマッチして、とっても良いシーンだな。…とか思ったところがそのまんまウィキに書かれていて、なんかリーン監督の思うツボって感じでちょっと悔しい。
マッチの火を吹き消すと画面に広がる曙色の朝焼け。蜃気楼から現れるアリ。砂漠のアカバ戦で役に立たない大砲とその先の海。夕暮れの海岸をラクダで進むロレンス。想像を超える砂漠の世界の美しさ。映画という文化が伝える自然のダイナミズム。おそらく誰が観ても圧倒される映像美。オリジナリティのない表現で悔しいけど、これが映画だ。とても長い映画だけど、しばらくするとまた観たくなる魅力がある。
コロナの影響はもちろん、中東の不安定な政局を考えると、今後しばらくは、本物のこの風景を安全に見ることは難しいかもしれない。生きているうちに一度は見てみたいな。
K&Kさん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-09 00:52:02)
👍 1
33. とにかく、ロング・ショットで映される砂漠の景観の雄大さ。やっぱりこれは映画館の大スクリーンで観なくっちゃダメでしょ、という感じになる。デヴィッド・リーンとしては、ジョン・フォードのお得意のモニュメント・ヴァレーなんか、この砂漠の雄景に比べたら箱庭みたいなもんだぜえといわれるようにしてやるという対抗意識もあったかもしれない。ベドウィン族はどうみても西部劇のインディアンだし。これ以後の映画でいえば「スターウォーズ」の砂漠、「風の谷のナウシカ」の腐海とかに受け継がれる光景ではないだろうか。こんかい観て、「風の谷のナウシカ」なんかぜったいにこの「アラビアのロレンス」の変奏曲ではないかと思ってしまう。
 しかし、そんな映像の雄大さにくらべ、このドラマの屈折ぶりは半端ではないということになる。基本的には砂漠を舞台として、「砂漠を愛してしまった男」の一大叙事詩を描くという演出なのだけれども、どう観てもこの作品のドラマ展開にはホモセクシュアルな香りがプンプンと匂い立つ(とにかく、女性というものがまったく、これっぽっちも登場してこない映画というのも珍しい限りなのだけれども)。そこに、あまりに象徴的に「銃」という小道具(これはもちろんいうまでもなくペニスの象徴である)が何度も登場するわけである。あきらかにホモセクシャルな傾向をもつ主人公のロレンス(ピーター・オトゥールがはまりすぎ!)に対して、ナヨナヨフニャフニャしたファイサル王子(アレック・ギネス)という存在と、あまりにマッチョなベドウィン族のアウダ(アンソニー・クイン)とが彼を両サイドからはさみ、ノンケな顔をしていながらロレンスに異常な愛憎感情を持つアリ(オマー・シャリフ)がいつもロレンスのわきにいる。これにさらに、ホセ・ファーラーみたいなトルコ軍のサディストじみた将校も登場して、SM趣味まで加わってくる。こんなイヤらしい映画に誰がした!という感じであるけれども、まあわたしのなかではヴィスコンティの「ベニスに死す」にも拮抗する、偉大なるホモセクシャル映画、ということになる。そうそう、モーリス・ジャールのスコアが、素晴らしいのである!







keijiさん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-02-15 13:02:35)
😂 1
32.前半に比べて、後半がどうも弱い。長いからこっちが疲れちゃうのかもしれない。『風と共に去りぬ』も、後半が駄目だった。でもあれは、原作がそもそも後半、南部歴史修正主義者の信念吐露みたいなものが入り込んできて気色悪いんだけど、こっちはどちらかというと後半のほうがロレンスの屈折に焦点が当たり、ドラマとしては面白くなれるはずだった。その屈折が映画としてうまく膨らんでくれてない気がする。というより前半が良すぎたのか。前半の「清潔な砂漠」の魅惑と脅威を描いては、絶品である。ロレンスが、これに魅せられたのが映像だけで納得できる。飛砂の舞いとなだらかな造形の妙。一度足跡つけてNG出しちゃうと、撮り直しするのが大変だっただろうなあ。それと砂漠の奥の深さの描写。オマー・シャリフの登場シーンを筆頭に、「果てしのなさ」を二次元でちゃんと描けている。3Dは、いらない(『戦場にかける橋』のジャングルや『ライアンの娘』の海のように、人間の愛憎を凌駕していく大自然を描くと天才的な監督)。シナリオも丁寧で、マッチを吹き消すとこや、こだまの反響なぞ、いい。後半では、そういうシナリオの綾が、あまりなかった気がする。
なんのかんのさん [DVD(字幕)] 8点(2010-10-23 09:59:23)
31.ネタバレ  映画ファンならば死ぬ前に1回は見ておくべき作品の1つであることは間違いないですね。とにかく、映像のダイナミックさが凄すぎます。果てしなく続く砂漠の中では人間は本当に無力でちっぽけな存在であることを思い知らされました。戦闘シーンや戦士たちがラクダや馬に乗って砂漠を疾走するシーンの迫力も一見の価値ありです。

 そして何より凄いのは、ここまでダイナミックな映像を映し出しながら物語自体は人間の弱さや帝国主義にどっぷりつかった大国のしたたかさや奢りを辛辣なまでに描いていて、ロレンスを英雄ではなく英雄に仕立て上げられた人間として描いており、観ている者にカタルシスを全く感じさせないことです。

 この作品は是非大画面で観てもらいたいですね。

TMさん [映画館(字幕)] 8点(2010-08-28 16:58:46)
30.アラブ人になりきれず、英国軍人にも戻れなかった一人の男の悲哀。その悲喜こもごもを丁寧に描いていると思いました。
ロレンスに限らず人物の描き方が総じて丁寧ですね。
特にファイサル王子の英国軍に力を借りなければならないが侵略はされたくないという警戒感と、その英国軍人でありながらアラブ人に限りなく近づいたロレンスへの感情の複雑さの描写と演技は巧みです。
英国も老獪ですが、結局は帝国主義的侵略が許されなくなりつつある世界の趨勢を読んで立ち回ったファイサル王子が一枚上手だったように感じました。その間で弄ばれたのがロレンス。
比較的パンの少ないカメラワークながら、絵画的ともいえる緻密な構図で動感を表している点は見事です。ワイド、ロング共に映像美をたっぷり味わえました。
現代の忙しくシーンの切り替わるカメラワークに慣れた目には却って新鮮に映りましたね。
ピーター・オトゥール(ロレンス)の演技にはややぎこちなさを感じますが、この映画の場合は却ってそれが効果的だったかもしれません。
アリ役のオマー・シャリフはエジプト出身だけあって風景に馴染んでいるし、アンソニー・クインは中東とはまったく縁の無い出身ながらその無骨さと荒々しさは現地人並に見えました。名優ですね。
kazu-chinさん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-26 23:12:40)
👍 2
29.ネタバレ 男の映画です。砂漠の砂模様が見えるくらいの画質があると長さも感じません。
80年経ったいまでも中東情勢がたいして変わっていないのには驚きます。
実際のロレンスはバイク好きの考古学者でした。冒頭にも出てきますが、2輪のロールスロイスといわれた「ブラウシューペリア」を7台乗り継ぎました。中東に行く前後12年間で48万kmも走っています。年間4万kmですから当時の道路事情を考えれば、年中乗っていた計算になります。一日に600km以上走ることもあったようです。このへんがラクダにのっても苦にならなかった秘密かもしれません。事故で亡くなってしまいましたが、8台目が納車待ちでした。
ビモータさん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-11-04 17:04:16)
28.スピルバーグはこの映画を観て映画監督になることを志したらしいです。おそらく、今このような大作を撮ろうとしたら、確実にCGが多用されるでしょう。この映画が作られた時にはCGなんてありませんから、全てが実写、本物です。だから、もしかするとこの映画がスケールの大きな大作としては、完全実写最後の作品なのかもしれません。
あろえりーなさん 8点(2004-03-10 01:55:13)
27.ネタバレ 第一次世界大戦下の中東紅海周辺が舞台。主役のイギリス軍人のロレンスは、軍事顧問としてアラブの部族を率い、アラブの開放を名目に、オスマン帝国軍を襲撃し、着実に戦果を挙げていきます。しかし、部下を亡くす失意の中でも、人を殺すことに興奮を覚えている自分に戸惑いを感じるようになり、これに、イギリス本国の方針(三枚舌外交)との齟齬や、オスマン軍に捕まり、受けた拷問のトラウマなどが加わり、精神がただれて、イっちゃった人になっていく様子を、雄大かつ苛酷かつ清浄な砂漠を背景に、異国情緒趣味を前面に出さない渋めの演出で描いています。丁寧につくった良い映画だと思うのですが、扱っている史実が複雑で、こちらが疎いということもあり、3時間半と長い割りに、背景が読み取りづらく、感情移入もしづらく、感動のしどころもわかりづらいんですよね。たぶんスルメ的な味わいなのだとは思うのですが。イメージしづらい一次大戦の中東戦線を知るきっかけとして、イギリス側視点で脚色されているものの、有用な作品だと思います。特典のメイキング&インタビューが面白かったです。気温が高くフィルムに黒いシミができてしまうとか、太陽を撮ろうとするとフィルムが焼けてしまうとか。完全版の作成に奔走したスピルバーグが、まだ若々しくて、本作の1ファンとして、目を爛々とさせて本作のすばらしさを語っていたのが特に印象的でした。
camusonさん [DVD(字幕)] 7点(2023-10-03 18:39:16)
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【点数情報】

Review人数 46人
平均点数 7.22点
000.00%
100.00%
200.00%
324.35%
424.35%
536.52%
6919.57%
71123.91%
8817.39%
924.35%
10919.57%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 7.57点 Review7人
2 ストーリー評価 7.75点 Review8人
3 鑑賞後の後味 6.85点 Review7人
4 音楽評価 8.37点 Review8人
5 感泣評価 4.25点 Review4人

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