映画『スケアクロウ』の口コミ・レビュー

スケアクロウ

[スケアクロウ]
Scarecrow
1973年上映時間:113分
平均点:7.20 / 10(Review 98人) (点数分布表示)
公開開始日(1973-09-22)
ドラマロードムービー
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2023-03-18)【TOSHI】さん
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監督ジェリー・シャッツバーグ
演出左近允洋(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
キャストジーン・ハックマン(男優)マックス・ミラン
アル・パチーノ(男優)フランシス・ライオネル(ライオン)・デルブッキ
リチャード・リンチ〔男優・1940年生〕(男優)ジャック・ライリー
アイリーン・ブレナン(女優)ダーリーン
小池朝雄マックス・ミラン(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
あおい輝彦フランシス・ライオネル(ライオン)・デルブッキ(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
此島愛子コーリー(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
荒砂ゆきフレンチー(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
堀勝之祐ジャック・ライリー(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
麻生美代子ダーリーン(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
野沢雅子アニー・グリーソン(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
細井重之ミッキー(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
渡部猛バーテンダー(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
村松康雄(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
若本紀昭(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
大塚明夫マックス・ミラン(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
平田広明フランシス・ライオネル(ライオン)・デルブッキ(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
田中正彦ジャック・ライリー(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
折笠愛アニー・グリーソン(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
さとうあい(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
荒川太郎(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
桐本琢也(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
柳沢栄治(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
宇垣秀成(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
高宮俊介(日本語吹き替え版【テレビ東京】)
撮影ヴィルモス・ジグモンド
製作ロバート・M・シャーマン
ワーナー・ブラザース
制作グロービジョン(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
配給ワーナー・ブラザース
美術アルバート・ブレナー(プロダクションデザイン)
字幕翻訳高瀬鎮夫
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💬口コミ一覧

98.ネタバレ 冒頭、マックス(G・ハックマン)とライオン(A・パチーノ)の出会いのシーンから、映画らしい息遣いに嬉しくなる。画面奥に長くのびる道路を大男のマックスがスタスタ歩いて行くと、後ろを背の低いライオンがちょこちょこ付いて行く。マンガみたいなでこぼこコンビの2人をカメラがロングショットで追う。風がビュービュー吹きすさぶ中、タンブルウィードが手前から奥にコロコロと転がる。奥行きのある画(え)と忍耐強いリズム。こういう画作りをする映画に最近はとんとお目にかからなくなった。ライターがつかないマックスにライオンが残り1本のマッチを惜しげもなく差し出し、2人の間に奇妙な友情の火が灯る。

2人は一緒に旅をすることになるが、粗暴なマックスは行く先々でトラブルを起こす。「寒いから」と言ってボロを何枚も重ね着しているのは、体ではなく心が冷え切っているのだ。他人を信じられない頑なな心を粗末な布切れで包み、必死で守っている。頑丈に覆われてはいない自我は脆く、些細なことで理性を失い攻撃の衝動を抑えられない。一方のライオンは、繊細な心を守るため「道化」を使う。「かかし(=スケアクロウ)は道化によって相手の信頼を得て危機を回避する」と言うのは彼らしい処世訓だ。そんな卑屈でひ弱なライオンの自我は、旅の途中で見舞われた不運、収容所での暴力によってバランスを崩し始める。

収容所では意地を張って友を守らなかった、その悔恨の思いがマックスを変える。喧嘩騒ぎを起こしかけた酒場で、寸でのところで拳を収めストリップでおどけて窮地を脱したマックス。他人に踏み込まれないよう、後生大事に守ってきた心を開かんと1枚1枚洋服を脱いでいく、不格好な大男の滑稽なダンスに涙が出た。彼はここで古い自分を脱ぎ捨てたのだ。ジーン・ハックマンの無骨な笑顔が眩しい。

マックスが人との繋がりを信じ始めていた時、ライオンは元妻との電話で人との繋がりを断たれてしまう。彼女に拒絶されウソをつかれるのだ。これは身重の身で捨てられた妻の復讐だったのか。不安定になっていた彼にはそれが決定打となってしまった。放心したように噴水の中に入っていくライオン。心理学で水は「無意識」を現わすが、意識の閾を越えて精神の闇に陥ってしまった比喩とも取れる。彼は心を閉ざし廃人のようになってしまう。診断した医師が「州立病院に移す」と言うのだが、当時のアメリカはベトナム帰還兵のPTSDが深刻で、精神病患者が増大し州立病院は軒並み精神病院に転換したというから、そのセリフの意味するところが推し量れる。そんなライオンを助けるためにマックスは開業資金として貯めていた金を、今度は自分の方が惜しげもなく友に捧げようとする。

ラストシーンは忘れられない。空港カウンターでのこの男のふるまいったら。こんなに無作法でカッコ悪い主人公がいるだろうか。「人は変われる」・・・そんなメッセージをこの映画から感じていたのに、最後にこんな姿を見せられたら、本当に彼は帰ってくるのか?と不安がよぎってしまう。人は変われる?そんな甘いものか?分からない。分からないけど信じたい。そんな、観客の祈るような思いを宙づりにして物語は幕を下ろす。ニューシネマは安心なんかさせてくれない(笑)。でも、このツンデレがたまらなく好きだ。
ポッシュさん [CS・衛星(字幕)] 10点(2017-07-24 11:05:23)
97.ネタバレ カカシは鴉を怖がらせているのか、笑わせているのか。どっちにしろカカシであることに違いは無い。それはパーソナルな領域に踏み込ませない、繊細さを隠す壁、本心では受け入れてもらいたいのだけどあまりに不器用。それを道化と気付いても、弱者が素直に生きるには辛過ぎる世の中。夕暮れのカカシの哀しさよ、それでも二人なら、俺とお前がいれば、ちっぽけな夢や希望さえ失ってしまったとしても、この船が泥舟だとしても!涙、涙、涙。
長谷川アーリオ・オーリオさん [DVD(字幕)] 10点(2011-06-12 05:00:39)
96.ネタバレ 久々にDVDで見直しましたがやはり何度観てもいい映画です。僕のお気に入りのジャンルにロードムービーがある。そしてそれがバディムービーならなお良い。その2人の男が不器用でカネも無いけどささやかな夢があり、憎めない愛すべき連中ならなお良い。そんな奴らが旅をするのは埃っぽいアメリカの中西部ならなお良い。旅はヒッチハイクや貨物列車のタダ乗りがいい。そんな二人が喉の渇きを癒し、空腹を満たすのは街の中のしゃれたレストランではなく、寂れた町の埃っぽい道路脇に佇む小さな店でなければならない。そんな店でまずは煙草か安葉巻に火を付け、熱いコーヒーかよく冷えたビールを頼む。食事はオートミールやトーストにスクランブルエッグ、ベーコンやポテトがいい。(一度アメリカに旅行してこんな店でこんな食事をするのに実は憧れているんですよね。)つまり本作は僕の大好きな設定がこれでもかと言う位揃っているのです。大男で血の気の多いマックスと小柄で実は繊細なライオン、このコンビも実にいい。マックスが小柄なライオンの肩を抱き語りかけるのですが、これがまたいい絵なんですよね。更にこの作品は最初と最後が素晴らしい。殺風景な田舎の一本道で二人が出会う。お互い意識しながらも微妙な距離感を保っている。そんな様子が可笑しく、そんな二人を結びつけたのが一本のマッチの小さな炎というのがまたいい。デトロイトには悲劇が待っていましたが、「俺一人じゃダメだ。あの電話ボックスに戻ってやり直そう」と語りかけるマックスの姿は何度観ても泣けます。マックスがデトロイトーピッツバーグ間の往復切符を買うラストは2人のこれからに小さいながらも確実に希望を感じさせてくれます。そして靴の中に隠した金を出すマックスを見て寝る時も靴を枕元に置いて片時も離さない理由がよ~く分かりました。
とらやさん [DVD(字幕)] 10点(2009-06-29 19:51:31)
👍 3
95.「成功した映画」かどうかはともかく、ワタシにとっては「好きな映画」であるという、ただその一点。物語だけを取り出してみれば、実は結構、作り物めいたクサイお話なんだけども、2人のクセモノ俳優による自由で気ままな(に見える)やりとりが、違和感を感じさせず、これぞまさに映画の勝利、だと思う。映画冒頭にて、まるでどこか地の底から湧いてきたように登場する、どこの馬の骨とも知れぬ2人の風来坊、最後まで馬の骨に過ぎない2人であるけれども、映画を通じて、我々も彼らにある種の友情を感じずにはいられない。この映画の主人公2人とは、人生の主役(ハックマン)と人生の脇役(パチーノ)であって、この物語は結局、「脇役が最後に主役にさせられてしまった瞬間の悲劇」を描いたものだと思っている。それにしても何と暖かく描かれた悲劇であることか。
鱗歌さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2009-05-16 12:00:36)
👍 1
94.ネタバレ ほぼ同じ時期にゴッド・ファーザーを演じたアルが名もないダメ男を演じる。子供のような大きい眼をして。カミサンと子供がいたり刑務所暮らしであったりして十分世間の垢をまとっている筈だが異常な程に純真無垢な30男。相棒の大男の頑なな心はその厚着と共に一枚一枚はぎとられていく。しかし自分の心の拠り所を失った瞬間、彼は崩壊する。あっけなくも無残に。純真すぎたでくのぼう(かかし)には耐えられない醜悪な世界。この時期のアルだから演じられた一世一代の名演技。
酒場で喧嘩しているジーン・ハックマンを止めて、どこからか潜水服を持ち出しておどける場面を見るたび泣けてくる。そしてかつては純白だったリボン付きの大きな箱。少しずつ汚されてひしゃげて、ついには置き去りにされる大きな白かった箱。あれはライオン自身なのだろうか。
SIGさん [映画館(字幕)] 10点(2009-01-18 07:01:03)
93.アルパチーノさいこおおおおおおおお!
norainuさん [DVD(字幕)] 10点(2008-06-04 01:20:09)
92.アルパチーノの黄金期(70~80年代初め)の作品は外れがないです。
TVC15さん [DVD(字幕)] 10点(2008-02-25 10:50:41)
91.それぞれ違った形での孤独に苛まれる二人の男達を名優二人が鳥肌物の熱演で見事に表現。世界観もやカメラワークも大好きです。ジーンハックマンはもちろんだが、病的な孤独感を抱えながらそれを何かで押さえ込んでいる繊細な青年を見事に演じ切っている。この抑制された哀愁は現在の哀愁の塊のような(もちろん褒め言葉です)パチーノにはない魅力ですね。若かりしパチーノの映画では印象は地味ですが、ゴッドファーザーに並ぶ名作と思っています。
さん 10点(2003-10-30 02:36:44)
90.主役の二人は、どちらも怖いくらいの名演。冒頭、枯れ草転がる荒野の真ん中のフリーウェイで、男が二人マッチの火をきっかけに旅を共にする。この場面だけでも名作の匂いが香水のように漂う。タイトルの込められた意味も切なく、切なく、優しい。
ひろみつさん 10点(2003-10-25 00:03:18)
89.大学生になりたての頃に観て、すごく衝撃を覚えた作品。最初のマッチ擦り擦りの出会いから最後の靴のシーンまで、ストーリーは淡々としたものだし、派手な展開もないけれど、作品自体がとても「向き合っている」という印象を受ける。その当時、凡百のエンターテイメント作品に飽き飽きしていた僕にとって、この真摯なロードムービーはかなり心に堪えました。人が真っ当に生きていく為に大事なものとは何か? 信じることに疑問が生じ、優しさに裏切られ始めたあの頃。人生って、ちょっとしたボタンの掛け違い、ほんのちょっとした思い違いで取り返しのつかない事態を招いてしまう。それは当たり前のことなんだけど、取り返しのつかなさがあまりにも境遇的なところに因っていて、そのどうしようもなさが辛い。。。
誠実さの行く末とはいつもこんなものなのかなぁ、と。ある意味でそれはアメリカ的な現実で、そんな現実の側面に当時の僕はささやかな衝撃的を受けたのだと今では思う。それは単なるニューシネマ特有の青さかもしれないが、僕にとってものすごく切実だったのです。とても思い入れのある映画、故に大傑作です。
onomichiさん [ビデオ(字幕)] 10点(2003-09-06 16:08:29)
👍 1
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88.あまりにもせつない物語。情感豊かな淡々とした運び。登場人物から滲み出てくるような生き方の記憶。パチーノさんは勿論ですが、ハックマンさんが素晴らしい。個人的にはパチーノさん出演作の中で一番印象に残った名作です。
ロバちゃんさん 10点(2003-07-23 12:36:00)
87.この時代の作品には切なさややりきれなさといった人間の感情がちゃんとありました。そうだからこそ、些細な希望や喜びが大きく印象付けられ感情移入できたのでしょう。スカスカのブロックバスターでは到底味わえない感情です。電話ボックスのライオンの姿は強烈に胸を締め付けられます。
モートルの玉さん 10点(2003-06-15 05:42:04)
86.初めは異常な厚着だったハックマンがいつしか薄着になっているところ。アル・パシーノの抱えたプレゼントがいつしか薄汚れていることろ。いつも他人のことに頑張って、いつしか自分が壊れていくライオン。カーウオッシュをやろうと言われて、すぐOKするところ。いつのまにか潜水服姿になってるライオン。思い出すと目が潤む。私のベストワン。
SIGさん 10点(2003-01-24 19:16:25)
👍 1
85.この映画オープニングが全てだよなぁ
B/67さん 10点(2000-10-20 07:14:53)
84.ネタバレ このジェリー・シャッツバーグ監督の「スケアクロウ」は、1960年代後半から1970年代前半にかけての、いわゆる"アメリカン・ニューシネマ"のひとつの頂点を示す秀作です。

旅をする人間は、アメリカ映画の永遠の登場人物で、この旅する人間を描く事は、アメリカ映画の"永遠のテーマ"でもあり、"ロード・ムービー"と呼ばれていますが、アメリカン・ニューシネマの抬頭以降、このテーマは、何度も繰り返して取り上げられ、純化して来たと言えます。

そして、"孤独な人間同士の結びつき、現代人の抱え込んでいる疎外感"などを描いて、アメリカという国の素顔をのぞかせようとする映画が、続々と製作されていた時代の正しく、この映画は、その思想のひとつの到達点を示す作品になったと思います。

監督のジェリー・シャッツバーグは、スチール・カメラマン出身なだけあって、斬新でスタイリッシュな映像表現を見せてくれます。
まず、映画の冒頭のシーンが見事です。

タンブル・ウイードと言われる枯草の輪が、南カリフォルニアの砂嵐に転んでいきます。
そこに、6年ぶりに出獄したばかりのマックス(ジーン・ハックマン)と、船から下りたばかりのライオン(アル・パチーノ)が偶然に出会い、マッチ一本をきっかけに意気投合します。

この二人の出会いのシーンの演出の素晴らしさで、我々、観る者は、一瞬にして、この"スケアクロウ"という映画的世界へ引き込まれてしまいます。

喧嘩早い粗野な大男のマックスと、人を笑わせる陽気な小男ライオンの、正に弥次喜多道中とでも言うべき旅が始まります。

性格の全く違う二人の男が、友情を抱きながら、カリフォルニアからデトロイトまで旅を続ける事になりますが、ジーン・ハックマンとアル・パチーノというメソッド演技の神髄を知り尽くした二人の名優が、まるで演技競争のようにして、ある意味、人生に敗れた、しがなさ、ダメさを、時にユーモラスに、時に切なく演じて、本物の演技のうまさ、凄さというものを我々、観る者に強烈なインパクトを与えてくれます。

アメリカ大陸を東に横切って、マックスの妹の住むデンバーと、ライオンが5年ぶりに会おうとする妻子の住むデトロイトへ、その間、約3,000km。
そして、最後は、二人で洗車屋を開く予定のピッッバーグへ。

シネ・モビルによる野外でのオール・ロケーション撮影は、敗残者と老人たちの蠢く街々の底辺と、広漠とした大陸の広がりを、ただひたすら淡々と映していきます。

途中の酒場でのドンチャン騒ぎの末に、ぶちこまれる豚小屋ならぬ、刑務農場、これもアメリカの知られざる隠れた一面を見せつけられます。

この映画でのアメリカ大陸横断には、かつての「イージー・ライダー」のような若々しい直線的な気負いというものがありません。
ダメになったアメリカ、しかし、"男同士の無垢な友情が絶望を突き抜けた希望"というものを育み、オプティミズムの明るい光を照射して来ます。

しかし、この映画のラスト近くで、暴力のみに頼るマックスに、笑いで生きる事の意味を教えたライオンが、妻子に裏切られたショックで錯乱しますが、マックスの力強い愛情によって救われます。

そこには、力のみで生きて来た大国アメリカの反省と、それを乗り越えて来た開拓者の自信といったものを考えてしまいます。

"スケアクロウ"とは、案山子の事ですが、「風采の上がらない、みすぼらしい奴」という意味もあり、「そう見られて、馬鹿にされるから、かえっていいんだ」という気負いを捨てた姿を言っているのと共に、「案山子を見てカラスは脅かされるのではなくて、カラスは実は笑っているのだ」、そして笑って馬鹿にして、『だからあいつの畑を襲うのはよそう』と、畑にやって来ないのだという、裏返しの見方が重なっているような気がします。

このように、ジェリー・シャッツバーグ監督の現代を視る眼は、複雑だと思います。
脅しが、本当は笑われているのだと力の空虚な誇示を批判しながらも、やはり、みすぼらしいながら、案山子のタフさを言おうとしているようにも思えます。

この映画を観終えて思う事は、アメリカでは開拓者の時代の昔から、男たちが、東から西へ、北から南へと歩いて行ったわけですが、この映画に描かれた人間たちも良いにつけ、悪しきにつけ、そういう人たちの一種で、当時の荒廃したアメリカも、やはり依然として、開拓者としての友情を求めてやまない社会であり、そして本質的に、男の世界である事をこの映画は描こうとしているんだなと改めて感じました。
dreamerさん [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-05-31 09:38:37)
83.ネタバレ アル・パチーノが若いです。
渋くて迫力のある彼ばかり見ていた私にとっては新鮮でしたが、本作の小物っぷり満載の彼の演技もこの頃から既に特筆に値します。
周りの状況や他人を伺う様に終始泳いでいる目線などは優しさと弱さと他人への迎合を併せ持つフランシスという人物により一層の深みを与えています。
矯正局でやりたい仕事は?と聞かれ、楽な仕事も選べたのに「洗車」と即答する彼からは純粋さを感じられる優れた演出になっています。

ジーン・ハックマンの異質の演技も本作では特に際立っています。
俳優を生業としていないミュージシャンやコメディアン等が勢いに任せて規格外の演技を見せたり、存在そのものから漂う何をするか分からない様な危うさと同等なものを彼からは感じます。
ジャック・ニコルソンやロバート・デ・ニーロのように突き詰めていった演技から生まれる狂気ではなく、身体に染み付いた無骨な危うさを持っている様に思います。
そんな危うさに確かな演技力が加味されているので彼中心に描かれている本作は全編を通して矛盾している様に聞こえますが、安心感の中で程よい緊張感を持って見る事が出来ましたし、話の平坦な前半もアル・パチーノとジーン・ハックマンを追う事によって作品に集中出来ました。

また、作品のトップカットでは手前に光が当たっているのに今にも雨が落ちてきそうなバックの暗い空とのコントラストが天候の偶然により印象的になっている画だと思っていたのですが構図の確かさが起因している事にも気付かされます。
この様にセンスを感じさせるカットが何箇所か忘れた頃に出てきます。
主演の2人が労働者街を目指す途中に歩いて鉄橋を渡っているカットでは夕陽に照らされている錆色の鉄骨の間を銀色に輝くパースのついたレールが貫き、その奥に黄金色と水色と雲の灰色が混在する空が淡く光っています。
歩いて行く二人の背中に漂う哀愁を画の中の全てが補完している様な美しいカットになっています。

始めダイナーのカウンターで洗車屋の話をしていた時には絶対に失敗すると思っていました。(成功する要素が見当たりません)
物語はそこまで届かずに終わってしまいますが変化していった彼等自身や2人の関係性を見ていると回復・退院するフランシスを、店前に案山子がある小さな洗車屋で葉巻を銜えたマックスが出迎えるシーンが目に浮かびます。
かなり甘めの理想的な想像ですが妥当な流れとも思ってしまう程に彼等の絆は固いものになっていたと思います。
長距離バスのカウンターに靴をバンバン叩き付ける社会不適合行為をしているマックスの横には冗談を言って窘めてくれるフランシスは居ません。
病院で意識のないフランシスに対して「俺にはお前が必要なんだ」と叫んでいたマックスを思い返させる切な過ぎるラストシーンになっています。

抑えていますが的確な演出の地味なストーリーに文字通りジーン・ハックマンとアル・パチーノが息を吹き込んで忘れる事の出来ない印象的な作品に仕上げていたと思います。
しってるねこのちさん [CS・衛星(字幕)] 9点(2016-06-20 00:53:52)
82.ネタバレ 1本のマッチを起点に傲慢と優柔不断を見事に変化させていく。どんどんくたびれてゆく粗末なプレゼント箱にそれが投影されており、捨てられたときにフランシスの希望はその箱からマックスへ代わっていくのか。マックスが靴で机を叩く音に彼の決意を埋め込む。不器用な男二人を描く秀作だ。
monteprinceさん [DVD(字幕)] 9点(2009-01-14 01:02:12)
81.ネタバレ この作品はニューシネマと言えど、救いがある。マックスがライオネルのためにバスのチケットを買うシーンがそれだが、同じニューシネマ作品の中でも変化が見られる。改めて持つべきは友だと感じさせられた。
TOSHIさん [DVD(字幕)] 9点(2007-08-07 00:56:54)
80.ネタバレ 笑いが全てを許すと信じる男が味わう絶望と人を信じず暴力で片付ける男が知る優しさ。レイモンド・チャンドラーが生んだマーロウの名台詞「人生はタフでなければ生きて行けない。だが、優しくなければ生きてる資格がない」を思い出した。二人の愚直なアメリカ男は、ハードボイルドの極みで男の生き様を感じずにはいられない。不幸であろうとも貧しかろうとも隠した10$札とマックスの笑顔が全てを水に流していく。
小僧さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-01-26 03:31:14)
79.ネタバレ 
案山子はカラスに笑われる。変な格好をしてて何をされてものんき顔・・

こういったようなキャラなんですがそれが実はパチーノなのでした。

ある意味弱い自分から逃げている案山子。

そして受け入れざるを得ない悟りの精神。

ハックマンにはわからない・・

刑務所で受けたパチーノの暴行にハックマンは切れる。

この刑務所行きもハックマンはパチーノが笑わせようと仕組んだことが原因だと思って、

ハックマンはシカトしていたのですが・・

とにかく最終的には前に感動した場所と同じところで泣いてしまったのです。

案山子になれと教えた道化者が案山子でいられなくなる・・

やはりバーでダンスを踊るシーンから電話をかけるシーン、

噴水のシーンのクライマックスへとものすごいリズムが変わります。

今までの(刑務所シーンはのぞいて)のんびりしたロードムービーはどこへ??

クライマックスまではセリフの少ないいい演技をしていたハックマンのほうが際立ち、

電話ボックスからはもうパチーノの一人芝居といっていいくらい。

特に噴水のシーンは妻であった女性の嘘の突き刺さる責め言葉に、

いつもの案山子になりきろうとするパチーノはパニックを起こし意識を失います。

ここの演技もさることながら音が効果的で正直怖かったです。

めまいの音、いわゆる耳鳴りのようなキーンという音が鳴ります(ルメットの未知への飛行でもあった)

案山子が道化を忘れて倒れてしまう哀しさ・・

ハックマンの懸命ながなり声が病院に響くともうだめでした。

やっぱりここで今までの場面が頭で流れ出し感動してしまう・・

自分の仕事のことしか考えてなかったはずなのに、

その貯めたお金をくれてやるから助けてやってくれと。



お金を調達するために往復キップを買おうとするハックマン。

まだ足りなかった・・

靴の底にあることを思い出し底からお金を取り出す。

払い終えたあとカウンターを靴底で叩く。

窓口のおばさんは怪訝そうに見る。

叩き続ける靴底にエンドクレジットがかぶさるように流れ出す・・

見事です。

後味のよろしくない作品のラストに救いを持ってくることはとても難しい。

たいていは付け足しのようにせっかくの場面さえうそ臭くなる。

この救いのセンスがとてもいい。

アルメイダさん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-17 06:43:34)
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【点数情報】

Review人数 98人
平均点数 7.20点
000.00%
100.00%
222.04%
355.10%
433.06%
51010.20%
61616.33%
799.18%
82525.51%
91414.29%
101414.29%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.50点 Review2人
2 ストーリー評価 6.25点 Review4人
3 鑑賞後の後味 7.00点 Review5人
4 音楽評価 8.00点 Review1人
5 感泣評価 8.50点 Review4人

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