1.誰向けか分からないシュールギャグ。絶妙(ときに微妙)な人選のゲストキャラ(芸能人声優)。何気に質が良いアクション。そして家族愛を軸とした感動ストーリー。近年の映画版クレヨンしんちゃんのフォーマットは以上のとおり。本作も当てはまります。悪く言えば『マンネリ』、良く言えば『定番』ですが、他の国民的な長寿アニメをみればわかるように、これは『定番』と捉えるのが適切と考えます。マンネリは飽きられますが、『定番』は愛されるものであります。というより『定番』を創り出すことが至難の業であり、優れた様式に辿り着いた先人の努力を称える案件と思慮します。実際、本作も手堅く楽しめ、満足しました。
さて、本作で語るのが適切ではないかもしれませんが、長寿アニメの宿命・声優交代について。劇場版クレしんは本作からしんのすけ役の声優さんが交代しました。
オリジナルのイメージを損なわないように(できれば気づかれないように)交代するパターンと、イメージを一新する思い切ったキャスティングをする場合と、主に2通りあるように思います。前者の代表が『ルパン3世』、後者は『ドラえもん』です。何となく前者の方が無難な印象がありますが、実際は逆という気がします。些細な違和感はかえって『偽物感』に通じるからです。一時的には大きな代償を払っても、新たなオリジナルを目指す『ドラえもん』方式の声優交代が個人的には好みです。
クレしんの声優交代の変遷を紐解くと、オリジナル声優死去に伴い人気キャラ『ぶりぶりざえもん』は10年近く発声を封印しました(今ではオリジナルに勝るとも劣らない素晴らしい声優さんが着任しております)。この判断自体は賛否あろうかと思いますが、私はキャラクターに対する限りない愛を感じました。そんな声優に拘った作品ですから、てっきり『ドラえもん』パターンの声優交代を選択するものとばかり思っていたのです。しかし、ひろしやしんのすけの声優交代は、イメージ継続パターンでした。実はちょっとガッカリしたのです。交代当初は。
ところが、本作を観て認識を改めました。確かにしんのすけに対しては、まだ違和感があります。でも、ひろしに対してはオリジナルと全く遜色ないのです。何故か。理由は簡単。新しい声に慣れたからです。TVレギュラーシリーズを持っている効果は絶大でした。ルパンのように不定期制作だと『耳慣れ』が進まないため、長く違和感が残るんですね。もちろん声優交代に正解などなく、あえて言うなら『定番』を守るか『マンネリ』を打破するかの選択なのだと思います。そういう意味で『ドラえもん』は大英断でしたし、『ルパン3世』は中途半端な選択をしてしまっている気がします。すみません。横道にそれました。愛すべき『定番』を守った『クレヨンしんちゃん』が末永く続きますように。