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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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261.  デッドロック(2002) 《ネタバレ》 
 監督はウォルター・ヒル、主演はウェズリー・スナイプス、おまけにピーター・フォークまで出演しているという布陣ゆえに、大いに期待を抱いて観賞した一本。   まず、正規の世界王者、ヴィング・レイムス演じるアイスマン側の尺が、予想以上に長い事に驚きました。  この映画のクライマックスは「表世界の王者VS裏世界の王者」という両者の対決なのですから、片方だけにバランスを偏らせなかった構成は正解なのかも知れませんが、戸惑いの方が大きかったというのが正直なところです。  理由としては、アイスマンに「もう一人の主役」と呼ぶに相応しい魅力を感じられなかった事が大きいですね。  レイプ容疑も冤罪とは思えないし、性格も「良い奴」とは程遠く、長時間にわたって彼にスポットを当てられると混乱してしまいます。  傲慢な悪役としては、中々に憎たらしくて味があると思いますし、ラストの刑務所帰りの姿には改心したような雰囲気も漂っていたので、決して嫌いなキャラクターではないのですが、作中での扱いに疑問が残りました。   そして、囚人側の王者、スナイプス演じるモンロー。  こちらは流石に存在感を放っており、飄々とした姿が魅力的ではあるのですが、今一つ「何故強いのか」の描写が足りていなかったように思えます。  刑務所という環境にあっても、物凄く厳しいトレーニングを積んでおり、食生活にも細心の注意を払っている……という事が大して伝わって来なくて、独房で黙々と模型作りに耽っていた姿ばかり印象に残ってしまう形。  ピーター・フォーク演じるボクシング通の老人メンディが、トレーナーとしてモンローの強さを支えているのだろうかと予想していたのですが、それも肩透かしでした。  余計な描写を挟まず「スナイプスだから強いんだ、文句あるか」と突き放してみせるのも、それはそれで痛快ではあるのですが、それならばボクシングシーンで完全にファンタジーな強さを見せ付けるくらい思い切った方が良かったのではないかと。  全体を通してリアルな雰囲気が漂っている作品であっただけに、逆に「リアルじゃない」部分が目立ってしまう形になっているように感じられました。   それでも、ラストシーンにて 「世間の連中はアイスマンが世界最強の王者だと思っているが、本当の王者は刑務所にいるモンローなのだ」  という秘密を、囚人達が誇らしげに共有しているという顛末は好み。   続編が二本も作られているとの事ですが、それも納得してしまうような、粗削りな魅力を秘めた作品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2018-10-25 22:54:18)
262.  アラクノフォビア 《ネタバレ》 
 冒頭の南米でのパートが、ちょっと長過ぎた気がしますね。  巨大な滝など、壮大なスケールの自然を拝ませてもらってテンションは上がりましたが、そこを舞台に二十分近くも引っ張ったのは、バランスが悪かったんじゃないかと。  (そうか、これは秘境を舞台にした冒険物だったのだな……)と感じ始めた矢先に、都市部の物語に移行する形なので、観ていて(えっ、そっちだったの?)と戸惑っちゃいましたからね。  物語の導入部に過ぎないなら、南米の件は十分以内に収めた方が良かったのではないかな、と思います。   そんな具合に、序盤で作品への不信感が芽生えてしまったせいか、以降も殆ど楽しむ事は出来ず仕舞い。  丁寧に作られた、真面目な映画だとは思うのですけど、その真面目さが「面白みに欠ける」「退屈」という印象に繋がってしまった気がします。  日常生活の中で、知らぬ間に小さな毒蜘蛛が脅威として迫っている……という描写にしても、子供が本を落とし、その上に足を乗せるだけで踏み潰せちゃう程度の脅威な訳だから「怖い」とは思えなかったりしたんですよね。  主人公家族が都会の生活に戻り、田舎を馬鹿にした台詞を口にして終わりっていうのも、ちょっと後味悪い。   蜘蛛の巣が我が家にあると気が付き、主人公が戦いを挑む終盤の展開は中々に面白かったですし、観賞中ずっと退屈だったという訳では無いのですが、正直「良かった」と思える部分が少ないですね。  そもそもタイトルからして「アラクノフォビア」=「蜘蛛恐怖症」なのだから、蜘蛛に対して怖いというイメージを全く持っていない自分が観たのが間違いだったのかも知れません。  肌に合わなかったのが残念な一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2018-10-22 12:39:49)
263.  地獄の変異 《ネタバレ》 
 某探検隊風の予告編とは異なり、コメディ要素は皆無で、至って真面目に作られた一品ですね。   洞窟内の映像も美しく、しっかり作り込まれているのが伝わってきます。  ……ただ、どうも真面目過ぎるというか、強くダメ出しする部分も無いけど、大きく褒める部分も見つからない。  退屈はしなかったけれど、面白いとも感じなかったという、何とも微妙な印象を受けてしまいました。   楽しめなかった理由を分析してみるに、まず全編に亘って舞台が洞窟内に絞り込まれており、洞窟外のシーンが僅かしか存在しないので、息苦しい構成になっている事。  そして「主人公の兄が怪物に変異して敵対するのかと思いきや、最後まで味方のままで終わる」事が大きかったのではないでしょうか。  この辺りは「徹底して洞窟探検に拘った、潔い映画」「観客の予想を裏切る脚本」と褒める事も出来そうなんですけど、自分としてはマイナス点に感じられましたね。  前者に関しては、やはりずっと洞窟内のままだと画面が代わり映えしなくて単調になってしまうし、後者に関しては「頼れる兄との対比で情けない弟だった主人公が、最後まで情けないまま成長せずに終わる」という落胆に繋がってしまった気がします。   終盤の怪物達との戦闘、そして兄が完全に怪物になってしまう前に自己犠牲で相打ちとなる事を選ぶ展開などは良かったと思うのですが、実はヒロインも地底生物に寄生されており「怪物が地上に解き放たれてしまった」という後味の悪いオチが付く辺りも、ちょっと微妙。  ここの部分、ヒロインが寄生されていると分かった時の音楽や演出などが「えっ、何? まだ終わっていなくて続くの?」と思わせる感じだったもので、その後すぐ音楽が止んで完結を迎えるのが、何かチグハグだったのですよね。  それなら「実は彼女も寄生されていた」という衝撃と共に映画を終わらせる……具体的に言うと「ヒロインが立ち去る場面」で、そのまま終わらせて「主人公がヒロインを追いかけようとするけど見つからなくて途方にくれる場面」の数十秒はカットした方が、余韻が残って良かったんじゃないかな、と思えました。   それにしても「カタコンベ」といい「ディセント」といい、地下を舞台としたホラー映画って後味が悪いというか(うわぁ……)と感じさせる終わり方が多いですね。  これって偶々なのか、それとも「やっぱり地下系ホラーは、こういう終わり方じゃないとな!」という拘りのようなものが存在しているのか、気になるところです。
[DVD(吹替)] 5点(2018-10-15 19:06:44)(良:3票)
264.  ブルークラッシュ 《ネタバレ》 
 この監督さんは、海を美しく撮るのが上手いなぁ……と、改めて実感。   海と、水着美女、爽快感のあるサーフィンの映像。  それらが画面に映っているだけでも満足しそうになるのですが、内容については、正直疑問符が付く代物でしたね。  同監督作の「イントゥ ザ ブルー」は結構楽しめたのに、本作を微妙に感じたのは何故だろうと、自分でも不思議。   理由を分析してみるに、主人公が女性である事が大きかったように思えますね。  ある日突然、理想の王子様が現れてくれる。  でも、それに溺れる事は無く、スポーツの分野でも成功してみせて、仲の良い女友達が沢山いて、陰口を叩くセレブ女には強気に対応してみせてと、如何にも女性が憧れそうな人物像。  それだけに、ちょっと距離を感じてしまったというか(あぁ、女性が観たらこのシーンは痛快かも知れないな)なんて思いながら、他人事気分で観賞する形になった気がします。   主人公がNFLの選手達にサーフィン指導を行うという形で「初めてサーフィンに挑戦した時の喜び」を劇中で描いている辺りは、凄く良かったのですけどね。  こういう初心者に配慮した作りって、とてもありがたい。  ……ただ、それなら劇中の大会ルールについても「彼氏に質問させて、主人公に簡潔に答えさせる」という形で、観客に教えてくれても良かったんじゃないかと思えるのですが、これは我儘というものでしょうか。   後は、主人公が大して努力しているようには見えなかった辺りも難点。  冒頭にてトレーニングしているし「これまでアンタがどれほど努力してきたか」という台詞もあるんだけど、映画を観る限りでは「男とイチャついてばかりで、殆ど練習していなかった」としか思えないし、あんまり彼女を応援する気になれなかったです。  「優勝を逃す」というオチについても、普通なら(あれだけ頑張ったのに……)と涙腺を刺激されそうなものなのに、本作に限っては(まぁ、練習してなかったんだから当たり前か)と納得してしまい、感情を揺さ振られず仕舞い。   一応、優勝したのと変わらないくらい皆に祝福されて「雑誌の表紙を飾る」という夢も叶えて終わる形の為、ハッピーエンドではあるんですが(それなら、もうちょっと贅沢に、あれもこれも手に入れる終わり方でも良かったんじゃない?)なんて、つい思っちゃいましたね。  「王子様のマットは一時の休暇で訪れただけなので、その内に別れる時が来る」「妹のペニーがマリファナをやっているので、止めさせなければいけない」「家出したママも帰って来ていない」と、まだまだ問題が山積みなので、今一つスッキリしないんです。  「何もかも上手くいく訳ではない」「それでも、サーフィンの楽しさを思い出した主人公なら、きっと大丈夫」という、ほろ苦さの中に希望を見出すような終わり方なら、それでも納得なんですが、本作の終わり方は、そうじゃない。  底抜けに明るくて、何もかも上手くいったと言わんばかりの空気の為(えっ、今までに描かれていたマイナス要素の数々は何だったの? 無かった事になったの?)と、戸惑っちゃうんですよね。  ここの部分を、もうちょっと上手く着地させてくれていたら、好きな映画になっていた気がします。   音楽や演出は決して嫌いじゃないし、大人も子供もサーフィンに興じるエンドロールの映像は素晴らしいと思うだけに、何だか勿体無いですね。  自分としては、好きになれそうというか……好きになりたかったタイプの作風なだけに、ノリ切れなかった事が残念な映画でありました。
[DVD(吹替)] 4点(2018-10-06 18:42:04)(良:1票)
265.  Mr.ボディガード/学園生活は命がけ! 《ネタバレ》 
 オーウェン・ウィルソンという人は、綺麗な金髪で二枚目なのに、こういう「負け犬男」を演じても妙にハマっているから不思議ですね。  どこか間の抜けた感じや、愛嬌があるからこそ出来る芸当なのだろうけど、それでいて元々のルックスは良いものだから「ダメ男でも、やれば出来る」を実践してみせるシーンで、しっかり説得力があったりする。  これは俳優さんとして、凄く強みになっているんじゃないかな、と思います。   そんな彼を主演に据えた本作は、お約束の「スクール下剋上映画」であり、特に目新しさは無い内容。  セス・ローゲンが原案と脚本を担当している為か、子供達三人のキャラクターも「スーパーバッド 童貞ウォーズ」と似通っており、既視感を覚えてしまうくらいでしたね。  でも、だからこそ安心して、しっかり楽しむ事が出来たように思えます。   子供側の主人公であるウェイドの義理の父が「私もイジメっ子だった」と誇らしげに語るような奴だったもので、彼と弟達が逞しくなったウェイドを見直すなり、幼少期にイジメていた相手に仕返しされるなりの顛末を迎えるかと思ったら、何にも無しで拍子抜けした事。  そしてヒロインの女教師が主人公を許し、刑務所に迎えに来るまでの心理描写が足りないように思えた事など、細かい不満点は色々あるんですが、面白い部分の方が多かったです。   物凄ぉ~くベタなんだけど、最初は金目当てでボディガードを引き受け、子供達を騙していた主人公が、徐々に優しさに目覚めていく流れが良いんですよね。  最初からそうなるって分かっていたし、見え見えのあざとい展開かも知れないけど、やっぱりグッと来ちゃう。  一緒に撮った写真を渡し「作戦が終わっても友達でいて」と訴えられて、何とも言えない表情を浮かべる辺りなんかは、特に好き。  一度は仲間を見捨てたかと思われたがエミットが、土壇場で「やっぱり仲間だった」と証明し、一緒に戦ってくれる展開も、これまたベタながら素敵でありました。   クライマックスの喧嘩に関しては、あくまで「リーチが長い」で通して、ウェイド達が自力でイジメっ子達を倒す方が良いんじゃないかなとも思いましたが、主人公が助けに来てくれる展開も熱かったし、判断が難しいところですね。  とはいえ、相手が十八歳で成人していると分かった途端、容赦無く殴り飛ばして「本当に強かったんだ!」と驚かせてくれる主人公の姿に関しては、実に痛快で、大満足。  日本刀を掴み、子供達の命を救った訳だけど、作中で過度にヒーロー扱いされる事は無いというバランス感覚も良かったです。   窃盗やら軍法違反やらの罪状で逮捕され、しっかり罪は償う事になる。  でも、たった三週間で出所して、ヒロインと子供達に再会するハッピーエンドを迎えてくれるから、後味は悪くないし、妙な罪悪感も残らないしで、とても爽やかな終わり方。   作中で描かれる「特別な時間」が過ぎ去った後も、彼らはずっと仲間のままなんだろうなと思える、良い映画でした。
[DVD(字幕)] 7点(2018-10-06 18:34:38)
266.  マイラ 《ネタバレ》 
 手術前の「切ったら生えてこないぞ。髪の毛やツメとは違うんだ」という台詞が、非常に生々しい。   ラクエル・ウェルチが性転換者を演じるブラックなコメディ映画という事で、ある程度覚悟した上で観たはずなのですが、冒頭のこの台詞の衝撃だけで、もう参っちゃった気がしますね。  想像以上に同性愛色が強く、しかもウェルチとファラ・フォーセットによる美女同士の絡みはおざなりなのに、男優のお尻はやたらと性的に撮っていたりするもんだから、ちょっと付いていけなかったです。  特に後半の、女性となったマイラが男性であるラスティのお尻を犯す場面なんかは、たっぷり時間をかけて、しかも力を込めて描かれており、正直言ってドン引き。  如何にもアメリカらしいマッチョ的な価値観「男らしさを誇示する男」に対する批判とか何とか、そういった建前があるのは分かるんだけど(これ、監督さんも同性愛者で性欲を発散させただけなんじゃない?)としか思えなくて、興醒めしちゃいました。   その一方で、今観ても斬新な場面が数多く存在しており、そちらに対しては素直に感心。  公開当時は結構な批判を受けたそうですが、その理由としては「演出が斬新過ぎて理解しきれなかった」ないしは「才能に溺れた自己陶酔的な作りが鼻についた」という面もあったんじゃないかなぁ……と思えました。   特に、古典映画の一場面やら曲やらを切り貼りして、登場人物の心象風景を表すというアイディアは、凄く良かったですね。  例として挙げると「マイラが耳を塞ぎたくなるような言葉を掛けられる」→「モノクロ映画で、耳を塞ぐシーンの映像が挟まれる」といった感じで、視覚的にも分かり易いし、非常にテンポが良く、御洒落でもある。  性転換前のマイロンの姿だったのが、ドアを潜ると同時にマイラの姿に変わったりする演出なんかも、楽しかったです。   「アメリカ人は男も女もレイプされたがっている」といった過激な出張があるかと思えば「1935年から1945年の10年間、アメリカ映画にクズはありません」「あの頃が全盛期ね。音楽の衰退は悲しいわ。映画の衰退も悲しいけど」なんていう懐古主義的な発言があるのも興味深いですね。  主人公マイラは「古臭い男らしさ」を嫌っている訳だけど、その一方で「古臭い映画」は礼賛している訳であり、そんな矛盾した考えが「男なのに女でありたい」「男が好きなのに男らしさを否定したい」という主人公の性的欲求とも合致しているという形。  マイラは念願叶って女になっても、結局は不幸な結末を迎えてしまう訳で、そんな根本的な矛盾を抱え込んだキャラクターを丁寧に描いているな……と感じました。   性別の壁を越えて愛した女性から「もし、あなたが男だったらきっと恋をするわ」と言われてしまう展開も、とびきり皮肉が効いていて面白いし、マイラが机の上に立って、下着を脱ぎ捨て「女になった証の股間」を男共に見せ付ける場面なんかも、忘れ難い味がありましたね。  そんな終盤の展開は好みだっただけに、最後の最後で「結局全ては、マイロンが見た夢に過ぎなかった」という夢オチに着地するのが残念なのですが……まぁ、これに関しては「大して美男子でもないマイロンが、手術を受けたくらいでマイラみたいな美女になれる訳無いじゃん」って事で、仕方の無い結末だったんでしょうか。  そういった「現実的な夢オチ」の後だからこそ、理想の美女であるマイラと現実のマイロンとが仲良く一緒に踊るエンディングは、陽気な中にも物悲しさを秘めた、独特の味わいに仕上がったというプラス面もある訳で、本当に評価が難しいです。   色んな意味で衝撃的な作りであるのは間違い無いし、出演者もやたらと豪華で、伝説的なカルト映画となったのも納得。  「映画好き」というより「映画オタク」というタイプの人に合うんじゃないかなぁ……って、まるで自分は「映画オタク」ではないかのような感覚で考えてしまう、そんな一品でありました。 
[DVD(字幕)] 6点(2018-10-05 00:55:25)
267.  恋愛だけじゃダメかしら? 《ネタバレ》 
 妊娠を主題としている為か、序盤にて嘔吐ネタが繰り返される事には、少々ゲンナリ。  演出も冴えていないというか、正直ちょっと好みじゃないなと感じる部分もあったりしましたね。  でも、総合的には良い映画だったと思います。   養子を迎えようとする夫婦、流産を経験するカップルなど、群像劇ならではの個性が感じられましたし、それによって様々なエピソード、様々なメッセージを描く事に成功しているのですよね。  妊娠による体調不良を「体内で奇跡が起きてる証拠」と美化する一方で「妊娠は最悪」「ニキビも出来る。歩けばアソコが痛む。オナラも出ちゃう」と、生々しく表現したりもしている。  基本的には「子を産むことの素晴らしさ」を声高に主張している映画なのだけど、そういう現実的な側面もキチンと描いている為、あまり偏った印象は受けず、素直に楽しむ事が出来たように思えます。   くしゃみと同時に軽く出産しちゃう女性もいれば、激痛に叫びながら出産する女性もいるという対比も面白かったし「血の繋がらぬ子を養子として迎え入れる場面」を、出産に負けず劣らず感動的に描いていたのも、何だか嬉しかったです。  劇中の人物同様に、世の中には子供を産みたくても産めない女性が存在する訳で、そういった人々への優しさというか「出産を経ずとも人は母親になれる、父親になれる」というメッセージが伝わって来て、とても温かい気持ちに浸れました。   ラストにて、子育てパパ軍団が、冷たい缶ビールをベビーベッドの下から取り出し、仲間にパスするシーンなんかも、妙にお気に入り。  筋トレマニアで、常に公園を走って身体を鍛え上げ、派手に女遊びしていた独身男がパパになると同時に「もう走るな、歩くんだ」と男友達から諭される件も、色々と象徴的に思えて良かったです。  そんな彼が、当初はタッチを拒んでいた相手と、仲良くタッチを交わして「パパ」の仲間入りを果たして映画が終わるという構成も、凄く後味爽やか。   大人達が主役であり、子供にスポットが当てられていない為、肝心の「子供を持つ喜び」が伝わってこない点など、色々と気になる部分もあるのですが「あぁ、良いなぁ……」と思える場面の方が多くて、帳消しにしてくれたという感じですね。  こういう映画、嫌いじゃないです。
[DVD(字幕)] 6点(2018-09-27 19:55:58)(良:1票)
268.  ジャックとジル 《ネタバレ》 
 映画に関するジンクスの一つとして「ゴールデンラズベリー賞を取った映画は、意外と面白い」というものがあるのですが、これもそんな一本。   とはいえ「傑作」と断言出来る程ではなく「意外と面白い」の範疇に止まってしまうのが寂しいですね。  下品なギャグが多いし「おたのしみ箱」やアル・パチーノ(本人役)といったキャラの言動が不自然に感じられるしで、もうちょっと脚本を煮詰めてから映画化した方が良かったんじゃないかなーと思ってしまうのも事実です。   でも、ちゃんと面白かった部分もあって、自分としては結構満足。  マッチョな男性陣が苦労して上げていたバーベルを、ジルが簡単に持ち上げちゃう件なんかは、ベタだけど微笑ましいギャグだったし、本物のジルを女装したジャックと勘違いして胸を触った男が、豪快に殴られちゃう場面なんかも良い。  養子の少年も良い味出していたし、ドン・キホーテに扮したパチーノが風車ならぬ天井のファンを怪物と勘違いして、戦いを挑むシーンも好きですね。  最後は家族愛に着地して、ハッピーエンドで終わってくれるし、後味も爽やか。  「そりゃあ好きだけど、離れている時はもっと好き」 「君を愛しているのは間違いないが、死の間際に気付く愛だ」   等々、心に残る台詞が散りばめられている辺りも良かったです。  それと、自分はクルーズ旅行の描写がお気に入りだったので、あそこをもっと尺を取ってやって欲しかったという想いもあるんですが……まぁ、コレは我が侭というものでしょうか。   欠点を論ったらいくらでもあるんだけど、なんとなく本作に関しては「好きな部分」をメインに語りたくなる。  憎みきれない、愛嬌のある映画でした。
[DVD(吹替)] 6点(2018-09-26 20:20:29)(良:1票)
269.  セブンティーン・アゲイン 《ネタバレ》 
 バスケだけでなく、ダンスを披露するシーンまであるのは「ハイスクール・ミュージカル」ファンへのサービスなのでしょうか。  当時ザック・エフロンは既に二十歳を越えていた訳だけど、十七歳の主人公を爽やかに演じ切っており(やはり、この人は学園映画だと輝くなぁ……)と、しみじみ思えましたね。  本作のラストにおいて、主人公はバスケ部のコーチに就任していますが、ザック・エフロンがコーチ役を務める学園スポーツ物なんかも、何時かは観てみたいものです。   そんな与太話はさておき、映画本編はといえば「安心して楽しめる青春映画」そのものという感じ。  「もう一度、高校時代に戻って人生をやり直したい」という後ろ向きな願望を満たしてくれる内容なんだけど、しっかり前向きな結論に達して終わる為、後味も良いんですよね。  「これまでの自分が積み重ねてきた過去は、決して間違いじゃなかった。だから、やり直す必要なんて無い」という着地の仕方は、予定調和ではあるんだけど、やっぱり清々しくて気持ち良いです。  ・息子と友達になり、一緒にバスケ部に入って活躍する。 ・娘に惚れられ、近親相姦に陥りそうになる。 ・妻に愛を語ったら、熟女マニアと罵られてしまう。   といった具合に「家庭を持つ中年男が、十七歳に若返ったら……」というシチュエーションならではの面白い場面が、ちゃんと盛り込まれているのも嬉しいですね。  どれも目新しい展開という訳ではなく「こういう設定なら、当然こうなるだろう」と思えるような王道展開なのですが、そのベタさ加減が心地良い。   主人公の親友ネッドと、美人校長とのロマンスも良いアクセントになっており「主人公と妻は、どうせ復縁するだろうけど、こっちの恋が上手くいくかどうかは分からない……」という意味で、適度な意外性を与えてくれた気がします。  校長の台詞「孔雀ってるの?」という表現には笑っちゃったし、通信教育で習得したというエルフ語をキッカケに意気投合する流れも微笑ましくて、自分としては、もう大好きなカップルです。   ネッドに関しては、十七歳時点での小柄なオタク少年姿も可愛らしかったので、作中で大人の姿でばかり出ているのが、ちょっと勿体無いようにも思えましたね。  「一緒にカンニングしてバレた」「レイア姫をプロムに誘った」などの断片的なエピソードだけでも面白かったし、やり直す前の「一度目の高校生活」についても、もっと詳しく観てみたかったものです。   その他にも「主人公と選手交代した息子が試合で活躍して、勝つところまで描いて欲しかった」とか「娘の彼氏だったスタンと喧嘩したまま終わっているのが気になるので、和解するなり何なりして関係に決着を付けて欲しかった」とか、色々と不満点は見つかるんですが、それも「この映画の、ここが嫌」という欠点ではなく「ここは、もっとこうすれば良かったんじゃない?」という類の不満点に止まる辺り、自分好みの映画だったんでしょうね。   良い映画、好きな映画に対しては「これ一本で終わる映画ではなく、何十話も続くドラマであって欲しかった」と思う事があるんですが、どうやら本作もそれに該当する一本みたいです。
[DVD(字幕)] 8点(2018-09-15 04:45:35)(良:2票)
270.  オブザーブ・アンド・レポート 《ネタバレ》 
 モールを舞台にした映画という事で楽しみにしていたのですが、ちょっと予想していたものとは違いましたね。   まず、コメディ成分が希薄です。  主人公は精神的な病を抱えた人物であり、笑いを誘う場面よりも、重苦しい雰囲気の漂う場面の方が中心。  警官となる為の体力テストを受ける件では、クスッとさせられる一幕もありましたが、印象的だったのは、そこくらい。  露出狂の犯人がシュールで面白いという面も、あるにはあったのですが、最後は主人公に撃たれて血まみれになって終わりという形なので、どうも爽快感に欠けていたような印象を受けました。   途中から「これはタクシードライバーに近しい映画だったのだな」と気が付き、何とか頭を切り変えようとしたのですが、上手くいかず仕舞い。  病人だから仕方ないとも思うのですが、どうしても主人公に感情移入が出来なかったのですよね。  社会から疎外された可哀想な人、という訳でも無く、実際は母親に同僚にヒロインの女の子にと、周りに良い人が沢山いて支えてもらっているのに、当人だけが自分勝手に悩んで暴走しているように思えて仕方なかったのです。  何といっても衝撃的だったのが、ラストにて犯人を撃ってモール内で殺人未遂を犯しているはずなのに、彼が作中でヒーローとして称賛されるエンディングを迎える事。  そりゃあ正当防衛が成り立つのかも知れないけれど、いくら何でもやり過ぎに思えたし、途中から彼の目的が「愛する女性を守ってあげたい」から「自分を振った女性を見返してやりたい」に摩り替っていたようにも感じられて、応援する気持ちにも、祝福する気持ちにもなれませんでした。   「警官」「化粧品売り場の美女」という主人公を悩ませていた二つの要素に対し、精神的な勝利を収めてみせた終わり方となっており、観客にカタルシスを与えようとしている事は感じられましたし、決して嫌いな映画では無いんですけどね。  音楽の使い方も良かったし、主演のセス・ローゲンも難しい役どころを丁寧に演じてくれていたと思います。  個人的好みとしては、仲良くなった友人が強盗犯だと気が付き、説得を試みるも結局は裏切られてしまう件が一番面白かったので、そこをもっと重点的に描いて欲しかったところです。
[DVD(字幕)] 4点(2018-09-11 07:10:54)(良:1票)
271.  ドッグ・ソルジャー(2002) 《ネタバレ》 
 冒頭にて「純銀のペーパーナイフ」が登場する時点で「じゃあ狼男が出てくるって事か」と観客に理解させてくれる、非常に親切な映画。   でも、こういった分かり易い籠城系ホラーは好みのジャンルのはずなのに、どうも最後までノリ切れないまま終わってしまった気がしますね。  恋愛要素を排した硬派なストーリーに、ユーモアの効いた会話、CGではなくあえて着ぐるみに拘った特撮部分など、文章にしてみれば褒めたくなるような要素ばかりなのに、何故楽しめなかったのか、自分でも不思議。   あえて理由を考えてみるなら、同監督の「ディセント」に比べ、全体的にカメラワークや画作りが粗削りで、洗練されていないように思えた辺りがネックになっているのでしょうか。  それと「分かり易い」を通り越して「分かり易過ぎる」脚本な辺りも気になります。  なんというか、フリが丁寧過ぎて 「どうせ狼男をペーパーナイフで倒すんでしょう?」 「このヒロインって絶対に敵側だよね?」 「これだけ伏線張ってるって事は、サッカーの試合結果も分かるんでしょう?」  と思ってしまうし、事実その通りになるのだから、全く意外性が無い。  特にペーパーナイフの件は深刻で、こんな軽い小ネタみたいな代物は、映画の中盤で窮地を脱するくらいの使い方しかしないだろうと思っていたら、とっておきの隠しネタみたいにラストで使われるものだから(そんな大層なネタじゃないでしょうに……)と、ガッカリしてしまったんです。  ヒロインが勿体ぶって正体を現したと思ったら、ヘッドショット一発で即退場しちゃう辺りも、何だか拍子抜け。  サッカーの試合結果ネタにしたって「狼男事件よりもサッカーの試合の方が記事が大きい」っていう皮肉さを出したかったとは思うんだけど、そこを写真無しで文字だけでスコアを表示しているから、写真付きの狼男事件の記事の方がスペースは小さくても重要に扱われているようにも見えちゃって、どうにもチグハグなんですよね。  その辺りに、作り手との「好みの違い」「感性の壁」があったように思えます。   狼に絡んだ童話の「赤ずきん」や「三匹の子豚」を連想させる台詞がある辺りはニヤリとさせられたし、主人公が何とか生き残るハッピーエンドに近い作りなのも好み。  低予算ながらも「面白い映画を撮ろう!」という意気込みは伝わってくる、好ましいタイプの映画であるだけに、楽しめなかった事が残念な一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2018-09-11 07:05:32)(良:1票)
272.  そして誰もいなくなった(1945) 《ネタバレ》 
 原作者アガサ・クリスティ自ら手掛けた戯曲版に則り「最後に残った二人が結ばれて、島を去る」というハッピーエンドになっている本作品。   自分としては「全員が死亡するバッドエンド」な原作小説よりも、より好みな結末のはずなのですが……どうにも楽しみきれなかった気がします。  以下は、その理由について。   まず、原作の「そして誰もいなくなった」(1939年)は紛れも無い名作なのですが、実はセオドア・ロスコーによる「死の相続」(1935年)という先駆作があったりするんですよね。  ・外界と遮断された場所に集められた人々が、次々に殺されていく。 ・途中で死んだかと思われていた人物が、真犯人である。   という内容なのですが、実はそちらでも「主人公達は無事に生還し、カップル成立のハッピーエンド」を迎えていたりするんです。  つまり、原作小説の結末をハッピーエンドに改変した結果、元ネタの小説と同じような形になってしまった訳で、これには流石に(何だかなぁ……)と思っちゃいました。  「死の相続」と「そして誰もいなくなった」の最大の差異とは「容疑者全員が死んでしまうという衝撃」にあったのに、本作ではそれがオミットされているんですからね。  元ネタよりも一歩進んでみせた原作小説に対し、本作は更に一歩下がって元の位置に戻ってしまったかのようであり、非常に残念でした。   勿論、本作なりの良い点もあって、各所に散りばめられたユーモラスな場面なんかは、原作に無かったオリジナルの魅力だと思います。  「こんな話がある。二人の英国人が孤島で3年間暮らしたが、紹介者がいないため会話ができなかった」という小噺も好きだし、医者と判事とが「(医者なのに)薬を信じないのですか?」「(貴方は判事ですが)正義を信じます?」と語って、笑い合う場面なんかも好み。  室内にいる人物を鍵穴から覗き見するという、映画ならではの視覚的な面白さが盛り込まれている点も、良かったですね。  「探偵役かと思われた人物が、実は犯人」という意外性が、原作より強調されている辺りも、上手い演出だったかと。   総評としては「面白かったとは言えないけど、観ておいて良かったと思える一品」という感じに落ち着くでしょうか。  モノクロの世界観が心地良く、それだけでも「格調の高さ」「名作の香り」を感じさせてくれただけに、結末が期待外れであったのが、実に惜しいですね。  ハッピーエンドに失望しちゃったという、貴重な体験を味わえた一本として、記憶に残る事になりそうです。
[DVD(字幕)] 5点(2018-08-28 21:37:21)
273.  ROCK YOU! ロック・ユー! 《ネタバレ》 
 馬上槍試合にて、敵を倒すと同時に槍が砕け散るシーンの迫力が凄い。  もう、それだけでも(観て良かったなぁ……)と思えたくらいでしたね。   平民の主人公が貴族達を次々に倒していくというストーリーも、非常に分かり易くて、好印象。  普通の歴史物なら首を傾げたくなるような「リアリティの無い場面」があっても、本作に関してはあんまり気にならないって点も、大きな長所だと思います。  なんせ冒頭にて「中世の人々が、二十世紀のバンドであるクィーンの曲を合唱している」という奇抜なシーンを挟んでいるくらいですからね。  それによって「時代考証云々と五月蠅く言うようなタイプの映画じゃないよ」という作り手側のメッセージが伝わって来た為、リラックスして楽しむ事が出来ました。   特訓シーンも全然辛そうじゃなくて、仲間達と一緒に遊んでいるようにしか見えないくらい、明るく楽しそうに描いているというのも、この映画らしい特色。  如何にも「高嶺の花」といった感じのヒロインに、とことん嫌味で憎まれ役なライバルが出てくる辺りも、単純明快な魅力がありましたね。  後者に関しては、主人公のウィリアムが金髪の美男子であるのに対し、ライバルとなるアダマーは黒髪の優男ってルックスな辺りが(日本の作品とは逆だなぁ……)と思えたりもして、興味深かったです。   父子の再会シーンも感動的に仕上がっているし「We Will Rock You」を聴いたら「We Are the Champions」も聴きたくなったなと思っていたら、最後にしっかり後者を流してくれる辺りも、嬉しい限り。  どちらの歌詞も映画の内容と合っていましたし、素晴らしい主題歌の存在が、映画の面白さを何倍にも高めてくれていた気がします。   で、難点としては……そんなエンディング曲の後に挟まれる「オナラの大きさを競う勝負」にドン引きしちゃったと、その事が挙げられそう。  いくらなんでも下品過ぎると思うし、折角クィーンの曲で感動していたのに水を差される形になっており、非常に残念でした。  主人公の仲間が口にする「私の小説に登場させ、最低のクズとして描写してやる」って脅し文句は格好悪いとか、愛を証明する為に試合に負けるよう要求するヒロインには魅力を感じなかったとか、他にも細かい不満点は色々あったんだけど、それら全てを忘れさせるだけの威力が、クィーンの曲にあった訳ですからね。  折角「エンディング曲による感動」で映画本編の不満点を忘れさせてくれたのに、その後また「オマケ映像」で感動を台無しにしちゃうという、二重の上書き感があって、凄く勿体無い。   ちなみに、地上波放送版では上述のオマケ部分がカットされている代わりに、クィーンの曲もフルでは流れないという仕様みたいで、本当に痛し痒しですね。  せめて、もっと無難な内容のオマケであったならば「好きな映画」と言えそうだっただけに、惜しくなる一品でした。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2018-08-17 03:57:15)(良:1票)
274.  団塊ボーイズ 《ネタバレ》 
 「Wild Hogs」という原題が恰好良過ぎるので、邦題もそのまま「ワイルド・ホッグス」にして欲しかったなぁ……なんて、つい思っちゃいますね。  かつて「バス男」が「ナポレオン・ダイナマイト」と改題し再販されたように、こちらも再販して欲しいものですが、流石に難しいでしょうか。   そんなタイトルに関するアレコレはさておいて、映画本編はといえば、実に心地良い「旅行映画」であり「青春映画」であり、自分としては、もう大満足。  ツーリング中の風景は美しいし、音楽も良い感じだし、何より「水場を見つけて、そこで泳ぐ」「テントを張って、皆で焚き火を囲む」などのお約束場面が、しっかり盛り込まれているんですよね。  こういった映画である以上「良いなぁ、自分もツーリングしたいなぁ」と感じさせる事は必要だと思いますし、それは間違いなく成功していたんじゃないかと。   主人公のウディは「破産」に「離婚」にと、様々な問題を抱えているのに、ラストにおいてもそれらの問題が一切解決していないというのも、本作の凄い部分ですよね。  それが決して投げっ放しにならず、劇中で語られた通り「たとえ仕事も家族も失っても、俺には仲間がいる」という前向きな結論に繋がっているんだから、お見事です。  聞くところによると続編の予定もあったそうで、諸々の問題については、その続編にて解決するつもりだったのかも知れませんが、これ一作でも充分綺麗に纏まっていた気がしますね。  この「仲間がいる」という結論は「仲間との絆さえあれば、どんな逆境でも乗り越えられる」というメッセージに繋がっているように思えて、本当に好きです。   一緒に水浴びしたハイウェイポリスをはじめ、同性愛ネタが多いのは鼻白むし「イージー・ライダー」を鑑賞済みじゃないとクライマックスで盛り上がれないんじゃないかと思える辺りは欠点なのでしょうが……それでもやっぱり好きなんですよね、この映画。  特に後者については、元ネタありきのパロディ展開なのを承知の上でも、観ていて熱くなるものがありました。  ピーター・フォンダって、恰好良い歳の取り方をしているなぁって、惚れ惚れしちゃいましたね。   腕時計を投げ捨てて旅に出る「イージー・ライダー」と重ね合わせる為、携帯電話を投げ捨ててから旅に出るシーンも面白かったし、それを踏まえての「時計を捨てろ」というラストの台詞も最高。  敵役となるデル・フェゴスのアジトを爆発炎上させちゃったのは「やり過ぎ」感があり、これじゃあ主人公達が悪者みたいでスッキリしないなと思っていたら、最後の最後で「以前より素敵な住処をプレゼント」というフォローが入っていたのも嬉しいですね。  その後、仲間達による乾杯シーンで終わるというのも、凄く気持ち良い〆方。  この「後味の良さ」は、偉大な先達である「イージー・ライダー」には備わっていなかった部分であり、本作が単なる模倣ではない、オリジナルの魅力を備えた品である事を証明している気がします。   「バイク好き限定」「中年男限定」などの枠に囚われず、女性や子供が観たとしても結構楽しめるんじゃないかな、と思えてくる。  とても愉快な、浪漫のある映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2018-08-15 20:00:54)(良:3票)
275.  クライムチアーズ 《ネタバレ》 
 どうやら自分は「チアリーダー」という存在が好きみたいだなと、遅まきながら自覚させてくれた一品。   何せ、劇中の四分の一くらいはチアリーダー衣装の女の子達が登場し、その魅力を振りまいてくれる内容なのだから、もう参ってしまいます。  と言っても、実際にチアリーディングのダンスを披露しているシーンは、極僅か。  その分、お金を盗む時もチア姿、留置場の檻の中でもチア姿と「そこまでやるか……」と思えるくらいに衣装に拘っており、殆どコスプレ映画といった趣がありましたね。   そんな品であるのだから、真面目にツッコミを入れる方が野暮かも知れませんが、一応は不満点なども。  同情出来る動機があると言えども、主人公達は犯罪行為を行っているのに、それに対して一切罰を受けない結末であった事には、驚かされました。  てっきり「無罪にはなるけど、証拠品のお金は燃やす破目になる」とか、そんなオチだろうなと予測していただけに、この完全無欠なハッピーエンド(?)っぷりには、唯々吃驚。  一応、無罪放免の代償としてチアリーダーのキャプテンの座を差し出した形にはなっているのですが、妊娠した以上は遠からず引退する事になっていたでしょうし、自己犠牲的な要素は希薄。  その能天気っぷりが意外性もあって良い……と言いたいところなのですが、正直、この「完全犯罪が成立しての大儲けエンド」には、後味の悪さ、若干の後ろめたさも感じてしまいました。   けれど、総じて考えると長所の方が多かった映画だと思いますね。   まず、キャスティングが良い。  「アメリカン・ビューティー」のミーナ・スヴァーリが、本作でもチアリーダー姿を披露しているだけで嬉しくなってしまうし、それよりも何よりも、ジェームズ・マースデン!  実写版サイクロップスなど、とかく不幸な役柄の印象が強い彼が、本作においては文句無しで幸せな結末を迎えているのだから、もうそれだけでも満足。  頭は軽いけど、底抜けに良い奴という旦那役を好演しており、その明るい魅力を見せ付けてくれていましたね。  「賢者の贈り物」めいたクリスマスのプレゼント交換の場面なんて、特にお気に入り。  結局、主人公のダイアンは罪を認めないままだし、強盗で得た金という秘密を抱えたまま生きていく事になる訳だけど、こんな旦那さんが一緒であれば、罪悪感に苛まれる事も無く、幸せな一生を送る事が出来そうです。   全編のあちこちに「銀行強盗映画」へのオマージュが散りばめられており、そのチョイスが「ハートブルー」「レザボア・ドックス」「ヒート」「狼たちの午後」と、自分好みなラインナップであったのも、嬉しかったですね。  映画を参考にして強盗を行うという、ちょっぴり際どいストーリーになるのかと思いきや、中盤にて 「映画は教材にはならない」 「映画から学べるのはセックスだけ」  と結論を出してしまう辺りも、皮肉なユーモアがあって素敵。   やはりコメディを楽しむ際には、道徳や倫理観に縛られていては駄目だなと再確認させてくれる。  良質な娯楽映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2018-07-26 03:16:24)
276.  プルーフ・オブ・ライフ 《ネタバレ》 
 誘拐を題材にした映画としては、かなり良く出来ていると思います。   ヒロインの旦那が拉致される場面は緊迫感があるし、人質が拘束されている粗末な小屋の描写なんかも良い。  最初の交渉人フェルナンデスが頼りない男であった分だけ、主人公のテリーが彼に代わって交渉する姿が、非常に頼もしく思えた辺りなんかも「上手いなぁ」と感心させられましたね。  終盤の武力突入による人質奪還シーンも迫力があり、そこは大いに満足です。   で、難点はというと……やっぱり「主人公とヒロインとが不倫する場面」って事になっちゃいますね、どうしても。  これに関しては、現実にラッセル・クロウとメグ・ライアンが不倫関係に陥ってしまったというスキャンダラスな側面もあり、映画の中だけの話として割り切って語るのは難しいのですが「映画単品で評価したとしても、この要素はいらない」という結論になる気がします。   そもそもヒロインの旦那が善人なので、不倫している二人に全く共感出来ないんですよね。  人質となり、過酷な状況の中でも、妻の写真を心の支えに生き延びようとする旦那の姿が描かれているのに、肝心の妻は他の男との許されぬロマンスを繰り広げているだなんて「ひでぇ話だ」と呆れちゃいます。  せめて関係を匂わせる程度で終わってくれたら良かったのに、ご丁寧にキスシーンまで挟んであるもんだから、決定的に幻滅。  試写会の段階ではキスどころか、もっとあからさまなベッドシーンまであったとの事ですが、それが本当なら「そりゃカットして正解だよ」という感想しか出て来ないです。   あるいは、命を懸けて人質を救出してみせた後「貸し借り無しだ」とヒロインに微笑んで見せるという「一度きりのキスの借りを返す為に、命を張った主人公」の恰好良さを描こうとしたのかも知れませんが、どうも受け入れ難いものがありましたね。  ラッセル・クロウも、メグ・ライアンも好きな俳優さんであるだけに、今作の二人が魅力的に思えなかった事が、非常に残念。    「父親に対し、敬語で話す息子」の存在が印象的で、最後は父子の和解で終わるのかなーって予想していたのに、それが外れちゃったのも寂しいですね。  ヒロインが流産していた過去が、単なるお涙頂戴のエピソードで終わっておらず、人質奪還の際の伏線になっている事には感心させられただけに、この「敬語で話す息子」の伏線も綺麗に回収して欲しかったなぁって、つい思っちゃいました。  酷な言い方をするなら「不倫するような男だから、息子も心を開かないんだよ」って事になっちゃいますし……やはり、どう考えても不倫の件は不要だったかと。   映画に道徳を求める方が変だし、どんなに不道徳でも面白ければそれで良いんですけど、本作みたいな描き方だと「主人公とヒロインが嫌な奴等に思えてくる」→「面白さが損なわれる」って形になっちゃう気がするんですよね。  傑作と呼べそうな部分も感じさせただけに、惜しい一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2018-07-24 20:24:44)
277.  SAFE/セイフ 《ネタバレ》 
 「パソコンは何を記憶させても探り出されてしまう」という台詞が印象的。  ハッキングやら何やらを警戒する余り「大切な情報は、記憶力の良い人間に憶えさせておくのが一番安心」という時代錯誤な結論に行き着くのが、実に皮肉が効いていましたね。   そんな「記憶力の良い人間」が幼い少女というのは非常に漫画的だけど、あんまり美少女過ぎない子役を起用しているのが、適度なリアリティを生み出していたと思います。  ちょっと目が細過ぎて、典型的な「欧米人から見たアジア人」ってルックスの子なんですけど、笑うと愛嬌があって可愛らしいし、映画を観終わる頃にはかなり好きになっていました。  こういったストーリーの映画である以上、子供の事を「守ってあげたくなるような存在」として描くのは大切だと思うし、それは成功していたんじゃないかと。   それと、本作は彼女の養父となるチャンを演じるレジー・リーも、凄く良い味を出していましたね。  悪人だし、ボスの命令には逆らえないんだけど、養女のメイの事は彼なりに大切に思っているというバランスが、実に魅力的。  彼がメイに対し「きっといい父親になってみせる」と語り掛け、笑ってみせる場面は、本作の白眉であったように思えます。  不器用ながらも愛情を示して、彼女の為に少しでも「良い人間」になろうとした事が伝わって来て、好きな場面です。   それだけに、その後すぐ彼が殺されてしまう展開になるのがもう、残念で仕方ないんですが……  やはり、この辺りは「一度でも娘を殺そうとした奴が、本当の父親になんかなれる訳が無い」って事なんでしょうか。  「怖いものから、目を背けたりするな」という彼の教えを、メイが守ってみせて「彼とメイが過ごした時間は、無駄じゃなかった」という落としどころになっただけでも、良しとすべきなのかも。   その一方で、ジェイソン・ステイサム演じるルークに関しては「タフガイ」「アウトロー」の王道を行く主人公となっており、安心して観賞する事が出来ましたね。  浮浪者として生活しなければいけない悲壮感、靴を譲った相手すらも「ルークと関わったから」という理由で悪人達に殺されてしまうという「誰とも親しくなれない」という孤独感が、ひしひし伝わって来て(やっぱりステイサムって良い役者さんだなぁ……)と、惚れ惚れさせられました。   ただ、そんなルークがメイを必死に守ろうとする動機が弱いようにも思えて、そこはもっと説得力が欲しかったですね。  自殺を止めるキッカケになってくれた恩返しというなら「たまたま目が合ったお蔭で、思い止まれた」という展開ではなく、もっと積極的にメイが彼の命を救ってみせた展開にしても良かったんじゃないでしょうか。  あるいは、冒頭にて殺されたのが「ルークの妻」ではなく娘だったという事にして、娘と同じ年頃の子だから助けずにはいられなかったとか、そんな形にしても良かった気がします。   一番悪どい存在に思えた中国マフィアのハンおじさんが、結局大したダメージを受けず「尻尾を巻いて中国に帰る」くらいで終わっちゃう事。  そして、黒幕のアレックス刑事とルークとの素手のタイマンが始まるかというところで、メイが銃でアレックスを撃ち、決着を付けちゃう事なんかも、欠点と言えそうですね。  そこは、もっとスッキリする形で〆て欲しかったです。   観賞前に期待していた「ジェイソン・ステイサムの骨太なアクション」は充分に堪能出来たし、ルークとメイが「父娘」ではない「友達」になるハッピーエンドは良かったしで、決して嫌いな映画じゃないんですけどね。  気になる点も多くて「そこそこ満足」くらいの感じで観終わってしまった……  そんな一品でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2018-07-23 05:31:01)(良:1票)
278.  イントゥ ザ ブルー 《ネタバレ》 
 「夏らしく、海の映画が観たい」という理由でチョイスした一本。   以前に観た時は「演出も脚本も凡庸だけど、主演がポール・ウォーカーというだけで大体満足」という評価を下した記憶があったのですが、改めて観賞してみると、ヒロインのジェシカ・アルバの存在感にも驚かされましたね。  「貴方と一緒なら、ボロでも幸せよ」「貴方が幸せなら良いの」なんて優しい言葉を掛けて、主人公にキスしてくれる姿を、冒頭から繰り返し拝ませてくれるのだから、何だか観ているコッチまで気恥ずかしくなる。  ここまで堂々とされると「男にとって都合が良いヒロイン像」なんてツッコミを入れるのも野暮に思えてきました。   作中で描かれる海の風景が、記憶に残っていた以上に鮮やかで美しかったのも、嬉しい限り。  ストーリーに関しては、正直色々と「ユルいなぁ」と感じる部分もあるのですが、海を舞台とした程好いリゾート気分、アドベンチャー気分を味わっていると、あんまり気にならないようになってくるから不思議です。   やや既視感のある展開ですが、海に眠っていた財宝が金塊ではなくコカインだったという導入部もキャッチーでしたし、ヒロインが空気を口移しキスする場面なども印象深い。  銃では無く銛を武器にして戦ったり、敵を出血させてサメを誘き寄せて攻撃させたりするなど、水中ならではのアクションが盛り込まれていたのも良かったですね。   終盤にて明かされる黒幕が、最初から嫌味な態度で主人公に接している奴だったので、特にショッキングな展開でもないという辺りも、何やらこの映画を象徴しているように感じました。  何というか、全てが「観客を不快にさせない予定調和の中にある」という感じで、安心して楽しめるのですよね。  裏切りの快感を与えてくれる映画も良いけれど、こういう安心させてくれる映画も、自分は好きです。   ヒロインは最初から主人公にベタ惚れで仲も良好である以上「喧嘩していたカップルが、命の危機を乗り越えて再び強く結ばれる」などのカタルシスは望めない訳で(彼女が死んで盛り上げる可能性もあるんじゃないかな~)と予想していたのですが、しっかりと生存してくれた辺りも良いですね。  予想が外れたはずなのに(そうこなくっちゃ!)と思えたりして、嬉しかったです。   「宝物はココにある」なんて気障な台詞と共にヒロインにキスをして、金銀財宝なんかよりも、ずっと大切なものに気が付いた主人公というオチかなと思っていたら、ちゃっかり財宝は財宝として発見しちゃう欲張りなハッピーエンドを迎える辺りも、妙に憎めない。   物凄く良い映画ではないかも知れないけど、自分としては希望通り、期待通りの映画でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-07-14 19:08:04)(良:2票)
279.  サボテン・ブラザース 《ネタバレ》 
 「物語の中のヒーローが、本物のヒーローになる」映画の、元祖的存在ですね。   洋画では「ギャラクシー・クエスト」邦画では「ザ・マジックアワー」アニメにおいても「バグズ・ライフ」に「宇宙英雄記」と、様々な媒体で本作のプロットを拝借した作品が見つかる事に、その影響力の大きさが窺えます。  もしかしたら1986年以前にも似たような映画があったのかも知れませんが、自分は未だそんな映画に出会えていませんし(あえて言うなら「荒野の七人」?)やはり本作のオリジナリティはズバ抜けているんじゃないかと。   そんな訳で「映画史を語る上では外せない一本」「非常に斬新な、革命的作品」と、ひたすら絶賛したい気持ちもあるんですが……  正直、中弛みしている部分もあって、完成度が高いとは言い難い映画なんですよね。   象徴的なのが「唄う樹」と「透明な剣士」の存在であり、彼らだけ妙にファンタジー度が高い点も併せて、凄く浮いちゃっている。  作り手側としてもそれを気にしたのか、直前に「馬や亀も唄ったり喋ったりするシーン」を挟み、自然に感じられるようにと配慮しているのは窺えるのですが、それが成功しているとは言い難いかと。  結局、悪党のアジトは飛行機が原因で判明するので「アジトの場所を知る為には、唄う樹がある場所に辿り着き、透明な剣士に教えてもらう必要がある」って流れ自体が不要になっており、本当に(何だったんだアレは……)って思えちゃうんですよね。  そんな肩透かし感も、本作を彩るギャグの一種、愛嬌の一つではあるんですが「この映画の、そこが嫌」と言われたら、全く反論出来ない部分でもあります。  実際、上述の作品群も本作のプロットを拝借する一方で、この「唄う樹」と「透明な剣士」については、殆どスルーしちゃっていますからね。   それでも、やっぱりこの映画は好きというか……本当に魅力的な部分が幾らでもあって、語り出すと止まらなくなっちゃうくらいなんです。   まず、劇中劇となる白黒映画が意図的に稚拙に作られており(柵に切れ目があるのが破壊される前から見えてしまっている、など)それによって後の「映画ではない、本当の戦い」に迫力が生まれている点が素晴らしい。  主人公達が、一頭の馬に三人で乗ったり、一つのベッドに三人で寝たりする場面なんかも「仲良過ぎだろっ!」とツッコまされて、楽しかったですね。  荒野を彷徨い、他の二人が乾いている中で、ダスティだけが浴びるように水を飲む場面も可笑しくって、ギャグとしてはここが一番好きな場面かも。   「唄う樹」と「透明な剣士」とは反対に、後続の作品で頻繁に真似されている「相手が本物の悪党と分かって、怯える主人公達」の場面も、極めて面白く描かれており(こりゃあ真似したくなるわ)と、大いに納得させられました。   また「本当のヒーローじゃなかった」とヒロイン達がショックを受ける一方で、同じように「映画は嘘だった」とショックを受けて、かつての憧れが恨みに変わった男を敵役に配している辺りも凄い。  「映画の中のヒーロー」が、人々に希望を与えるだけでなく、絶望を与える事もあるという、非常に考えさせられる一幕。  このジャンルの映画が成熟して、数十年後にようやく生まれそうな展開を、元祖的存在の本作で既にやってのけているんだから、もう驚嘆するばかりです。   主役三人組の中で、一番頼りないかと思われたネッドが「男になるか、逃げだすか」と言い出して、三人が本物のヒーローになるキッカケを作ったり、銃による決闘に勝利したりと、作中で最も活躍しているという意外性も心地良い。  ラッキーによる終盤の演説「人は皆、心にそれぞれのエル・アポを抱えている」も胸を打つものがあり、本作に普遍的な物語性を与えているように思えましたね。    そして何といっても「正義。それが我らの報酬だ!」と劇中の映画同様に叫び、お金の入った袋を村の人々に投げ返してから別れるラストシーンが……もう、本当に名場面としか言いようが無い。  ここ、最初からお金を受け取らないつもりだった訳じゃなく、数秒の沈黙を挟んで、考えて、見つめ合って、それから「映画のように恰好付けて」袋を投げ返すっていうのが、たまらなく好きなんですよね。  決して完璧なヒーローではなく(このままお金を受け取っても良いかも?)と一瞬迷うという、人間的な弱さを備えている主人公達。  そんな彼らが、心の弱さに打ち勝って、女性や子供達に「ヒーローとは、斯くあるべし」という姿を見せ付け、颯爽と去っていく。   本当に素晴らしい、傑作という言葉が似合う一品でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2018-07-12 09:24:11)(良:3票)
280.  ホリデイ 《ネタバレ》 
 休日にノンビリ過ごしながら観賞するには、最適の映画なんじゃないかと思います。   それというのも、これって「面白過ぎて目が離せない」とか「続きが気になって仕方無い」とか、そういうタイプの作品じゃないんですよね。  話の展開は王道に則っており、主役の男女四人も予定調和で結ばれて、ハッピーエンドを迎える事になる。  いきなり大きな音がして吃驚させられる事も無いし、劇中の音楽も穏やかで、心地良いものばかり。  だから観賞中、ウトウトして眠くなったら、そのまま寝ちゃったとしても問題無いような、独特の包容力があるんです。  つまりは「退屈な映画」って事じゃないか……とも言えそうなんですが、自分としては好きなんですよね、こういう映画って。   まず、ホーム・エクスチェンジを題材にする事によって「夢のような豪邸」「お伽噺のようなコテージ」の魅力を、両方味わえる形になっているのが上手い。  しかも、劇中のヒロイン達にとっても、その豪邸とコテージは「初めて訪れる場所」である為、新鮮な反応を示す彼女達と観客とが、同じ気分になって楽しむ事が出来るんです。  旅行映画のお約束「新鮮な場所での、新鮮な恋」も描かれているし、素敵な異性以外にも「偏屈だけど、チャーミングな老人」「とっても無邪気で、可愛い子供達」と出会えたりするんだから、もう言う事無し。  「今いる場所から抜け出して、生まれ変わってみたい」という願望を満たしてくれる、実に良質な作品だと思います。   主演の四人も全員好きな俳優さんだし「予告編」や「劇中曲」の使い方も上手い。  リンジー・ローハンとジェームズ・フランコが出演しているという「危険な罠」についても(予告編だけでなく、本編も観てみたいなぁ……)と思っちゃったくらいですね。  老脚本家のアーサーが自力で歩き、階段を登ってみせる場面にて「マイルズがアーサーの為に作った曲」が流れ出す演出も、凄く好み。  正直、アーサーという人物については考え方が懐古主義過ぎて、あまり共感出来ずにいたのですが、この場面の感動によって一気に好きになれた気がします。  「映画は私にとって、永遠の恋人なのです」というスピーチも、心に響くものがありました。   タクシーが「Uターン出来ない道」と言っていたのに、その後に家から車で出掛けたりする場面があるのは戸惑ったし(多分、反対側の道なら普通に車で移動出来るって事なんだと思われます)折角の可愛い子犬が途中から空気になっているという不満点もあるんですが、気になるのはそれくらい。   アイリスが元カレへのメールで「Dear」と書きかけてから消す場面。  グレアムが「ナプキンヘッド」に変身して、幼い娘達を笑顔にする場面。  マイルズがビデオ店にて、色んな映画音楽を紹介する場面。  そしてアマンダが子供時代のトラウマを克服し、涙を流す場面と、主役四人にそれぞれ印象的な場面がある点も良いですね。   劇中の台詞に倣い「ホリデイ」は自分にとって「恋人のような映画」だと、そう紹介したくなるような、素敵な一品でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2018-07-02 20:23:28)(良:1票)
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