1201. テナント/恐怖を借りた男
《ネタバレ》 イザベル・アジャーニが狂気に引きずり込まれるのだろうと思いきや、狂気に陥ったのはポランスキー自らだった。ジワリジワリ感は「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」と同様。演じたい願望が叶った喜びがあったのか、病的さ加減は二作を上回る。このような作品を自作自演する奇才・ポランスキーを堪能させてもらえました。 [DVD(字幕)] 7点(2015-08-18 03:16:46) |
1202. 情婦
《ネタバレ》 初見、予備知識ゼロ。澱みのない起承転結。緻密さとユーモアと使命感の強さの按配は余人には真似の出来ないワイルダー監督の名人芸。弁護士と看護師の仲良く喧嘩するさまは絶品で心地良さに浸りました。特筆すべきは情夫に尽くすクリスチーネを演ずるマレーネ・ディートリッヒの美しさでこの世にこのような56歳が存在するのか唖然とさせられます。「殺人ではなく処刑だ」との名台詞に辿る展開であの場所にナイフがポンと置かれていた事に-0.1点、端数切捨てで9点の傑作中の傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-11-03 14:25:16)(良:1票) |
1203. 合衆国最後の日
核施設でありながら、攻める側守る側双方から漂うチープ感がもどかしい。大統領が美味しいところを皆持っていった。女性が一人も登場しないところに「皇帝のいない八月」とは対極の硬派ぶりを感じた。私もサリンがあの後どうなったのか気になって仕方なかった。 [DVD(字幕)] 6点(2014-10-27 22:47:55) |
1204. アッシャー家の末裔
冒頭、皆がアッシャー家に恐れ戦いている様子に膨らんだ期待は裏切られた。生身の妻より絵の妻に執着する狂ったロデリック。恐怖や無常感など皆無で、その思わせぶりな表情に、志村けんのバカ殿が思い浮かび笑いがこみあげてくる始末。映像と物語が一体となってこその恐怖である事を実感。呆れ返るだけの作品だった。 [DVD(字幕)] 1点(2014-09-07 14:27:19) |
1205. 大統領の執事の涙
《ネタバレ》 与えられた環境で全力を尽くし職を全うした父。与えられた環境を変える事に心血を注いだ長男。意志を貫いた者同士が最後に分かり合えた事が感慨深い。僅か50年前に繰り広げられた惨劇は目を覆うもの。オバマ大統領就任に夢を形にする偉大さを思わされます。 [DVD(字幕)] 7点(2014-08-23 10:47:41)(良:1票) |
1206. 黄昏(1981)
初見。詩情溢れる湖の景色が脳裏に焼き付く作品です。ペラペラ喋りまくるキャサリン・ヘップバーンは元来苦手ですが今作は抑制されており嫌悪感はありませんでした。ヘンリー・フォンダがポツリポツリと吐く言葉に、老いての衰えは誰にも必ず訪れる事を突き付けられます。父と娘が抱擁を交わす姿に、父への憎しみが消えたのに亡くなるまで一度も抱擁どころか握手することもしなかった悔いが押し寄せてきました。 [映画館(字幕)] 7点(2014-08-03 23:57:27) |
1207. 蜘蛛女のキス
他の房は大人数なのに何故彼等は二人だけで広々と過ごしているのだろう。この疑問が解ける前と後で鑑賞の集中度がガラリと変わりました。しかし、期待には程遠い展開と結末で、男同士の惹かれ合いにこちらが惹かれるものはありませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2014-07-12 00:06:45) |
1208. 周遊する蒸気船
《ネタバレ》 自首するも正当防衛が認められず死刑判決が出てしまう。理不尽であろうとも罪に対する罰を受けねばならないという骨太さと、他者への深い慈愛。監督の価値観がクスクス笑いから大爆笑が止まらないハチャメチャな展開でもって描かれている傑作。結末の爽快感が心地良い。 [DVD(字幕)] 9点(2014-03-17 01:03:40)(良:1票) |
1209. 戦争と平和(1956)
原作未読、初見。1時間経過時にリタイア、1週間後に続きから完走。ダラダラとは言わないもののあまりの長尺にヘトヘト。冬将軍とクトゥーゾフの恐ろしさが際立つ戦闘模様は「命を愛し続けよ」との言葉に重みを感じるものでした。他方で貴族の恋愛模様はヘトヘトの原因で生き残った二人がこの先も薄っぺらなままのように見えました。 [DVD(字幕)] 5点(2014-03-01 01:03:57) |
1210. 十戒(1956)
人種がヒトを隔てる理不尽さを見せつける、モーゼがエジプトを追われるまでは見応えがありましたが、それ以降は苦痛に耐えての鑑賞でした。やられたらやり返す、正当防衛と言わんばかりに殺してしまう。そんな神さんが起こす奇跡に崇高さは感じられずオカルトチックなご都合主義に萎えました。老若男女、アヒル、羊、牛等の大移動のド迫力の映像とエドワード・G・ロビンソンのお姿を拝めたところに加点。 [DVD(字幕)] 7点(2014-02-04 01:59:23) |
1211. スミス都へ行く
《ネタバレ》 欲望のままにあらん限りの卑劣な手段を弄するゲジゲジ野郎のテイラーと純朴な青年スミスの闘い。奮闘虚しくもはやこれまでと思われた時に飛び出した良心の呵責に耐えかねたペインの絶叫。奇跡の瞬間に鳥肌が立ち泣けてしまいました。彼を始め、秘書や記者、子供達、議長からこの世も捨てたものでないと痛感させられ、「一生皮肉屋で終わるのも不幸かもね」の台詞に千鈞の重みを感じた作品。 2021年5月30日追記 本日クロード・レインズ命日と言うことで再見。 ジョセフ・ペインを演じていたのはレインズだったのですね。 今回は声を殺して泣くスミスに貰い泣き。ゲジゲジと手を切れないペインの情けなさを自覚しているかのような姿に悔しさと、現実はこんなものかという諦めを感じました。 前回泣かされた作品をさらってしまったあのシーン、彼の墓碑に刻まれているという 「すべては一度、すべては永遠であり、魂は、かつて生き、永遠に生きる」 そのままの渾身の演技でした。 [DVD(字幕)] 10点(2014-01-19 17:15:41) |
1212. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 皆に尽くしたジョージの窮地を皆が救う「蛍の光」の大合唱は人の温もりが沁みる珠玉の名シーン。ポッターのネコババ行為を誰一人見ていなくても神様は見ており、罰は神様が与えるのだと確信が持てました。【2016/1/8追記】大合唱シーンを眺め、映画のお伽噺であったとしても、生を授かってからここまで過ごしてきた私の身には起こり得ない事を確信させられ号泣。今後二度と観れない作品となりました。 [DVD(字幕)] 9点(2014-01-05 00:22:44) |
1213. エデンの東(1955)
《ネタバレ》 初見。肉親の縁が薄い四人の葛藤が丹念に記されています。価値観を押しつける父と愛してやるから愛し返してと切望するキャルの対峙が哀しい。キャルが悔恨の情を示す父は死の床、兄は死の淵にいる結末が居た堪れない。 [DVD(字幕)] 7点(2014-01-03 17:31:02) |
1214. フルメタル・ジャケット
ハートマン軍曹の人間の尊厳を粉々に踏み潰す罵詈雑言から、戦場から生きて親元に帰したい、その為には上官の命令には絶対服従して個人的に何の恨みもないアカの他人を躊躇なく殺さねばならない、その為には人の心は捨てなきゃならん、という確固たる思いを感じました。微笑みデブ君がこのまま戦場に出れば自身もまわりの者も死んでしまうという考えが及ばなかったのが残念です。一見ありきたりな戦闘シーンも軍曹に「sir yes sir」と絶叫していた姿を重ねると合法的な殺人の不条理さに胸が詰まります。 [DVD(字幕)] 8点(2014-01-03 00:44:45)(良:1票) |
1215. 25年目の弦楽四重奏
三人の葛藤は、一流の演奏家である前に一個の人間であるにしても、作曲家や音楽に対する愚弄でありグダグダさが失笑ものでした。唐突に過ぎるラストシーンからはうそ臭さしか感じず盛り下がった気分のままエンドロールとなりました。ピーターの葛藤が考えさせられるものがあっただけに非常に残念です。 [DVD(字幕)] 5点(2013-12-31 01:58:16) |
1216. 許されざる者(1992)
《ネタバレ》 リメイク版から興味をそそられての鑑賞。びっくりする程忠実にリメイクされていたオリジナル版でした。話のつまらなさもそのまんま。イーストウッドから謙さんの気魄は感じず。一点だけ違った「その後商売で成功したらしい」には怒りがこみ上げます。「お前だけ幸せに暮らせると思うなよ」 [DVD(字幕)] 3点(2013-11-07 23:32:17) |
1217. 新しい人生のはじめかた
《ネタバレ》 「諦めながら生きる方が楽なの」後悔を重ね歳を重ねてきた者にとっては身につまされる台詞です。現実離れが甚だしい展開ながら一歩を踏み出す結末に力づけられます。肩の力が抜けた名優同士の用心深い触れ合いは、なだらかさに心安らぐ一方で二人なればこその起伏が感じられなかった物足りなさがありました。 [DVD(字幕)] 6点(2013-11-04 17:18:00) |
1218. イントレランス
時代が巡っても絶えず繰り返される過ちの根源は、不寛容と言うより私利私欲にまみれた偽善であると思えます。揺り籠の無垢な赤子を見守るリリアン・ギッシュから「この子はどのような一生を送るだろうか」と期待と不安を感じました。ユダヤ、フランスパートのせいで作品が冗長に流れたのは残念です。しかし、バビロンパートの空前絶後のセットとエキストラに、終盤の怒涛のカットバックに、映画の醍醐味を味わいました。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-31 19:27:48) |
1219. 消された証人
物語の9割方が証人、検事、刑事の描写である毛色の変わったギャング映画。証人と刑事の心模様の推移はなかなか見応えがありました。特筆すべきは検事を演ずるエドワード・G・ロビンソン。控えめな役柄であっても一本筋が通った姿は圧倒的な存在感で始終目が釘付けでした。内通者が誰かを悟ったシーンは10回くらい見直してしまいました。後味の良い結末は爽快感がありました。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-26 00:48:04) |
1220. キートンの探偵学入門
キートン2作目であって身体能力の物凄さは織り込み済みとは言えやはり唖然とさせられ、更にビリヤードでの身のこなしにはシビレました。アイデアに溢れた展開は笑いどころ満載。快作です。 [DVD(字幕)] 8点(2013-08-25 01:24:29) |