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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 615
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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121.  ハングオーバー!!! 最後の反省会 《ネタバレ》 
 三部作の最後は、完全にアランが主人公。   その分、アランの魅力も堪能出来る内容なら良かったのですが……  むしろ、その「嫌な奴」っぷりが前二作より強まってるくらいで、本当にもう「何でだよ!」とツッコみたくなっちゃいましたね。   これ、作り手としては「愛嬌のある、憎めないアラン」として魅力的に描いてるつもりなんでしょうけど、自分は全然そうは思えなくて、辛かったです。  息子のアランに怒り狂って死んじゃったパパも可哀想だし、そんなパパの最後の言葉まで偽って、母親に迷惑かけながらニート生活を続ける気満々な辺りとか、流石に呆れちゃいます。  フィル達には懐いてるけど、母親や女中への態度は悪いって点も(可愛い奴だ)とは全然思えなくて(人として最低)(周りに世話してもらって生きてるんだから、せめて周りに優しくしようよ)と、嫌悪感しか湧いてこなかったです。   終盤「キャシーという恋人が出来る」「悪友のチャウに別れを告げる」って形で、アランなりに成長した事が描かれているんだけど、それに関してもノリ切れなかったんですよね。  キャシーと意気投合したキッカケの一つが「母親に対する悪口」ってのも引いちゃうし、チャウに関しては(いやいや、アランが嫌な奴なのって別にチャウのせいじゃないでしょ?)と思えちゃうしで、全然マイナスが挽回出来てなかったと思います。   そんな訳で「主人公のアランに魅力を感じない」という、大きなハンデを背負って鑑賞した本作なのですが……  意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。  といっても、1ほどではなくて、2と同じくらいの面白さって感じなんですが、それでも(結構面白いじゃん)と、好意的な印象が残りました。   まず、2が「1の焼き直し過ぎて、2独自の良さが殆ど無いから良さを書けない」って内容だったのに対し、3には間違い無く「本作独自の良さ」が沢山あるってのがポイント高い。  それはつまり「1や2とは違う内容」「ハングオーバーシリーズである必要が無い」って事でもあるんですが、自分としてはそれで正解だったと思いますね。  感想を書く立場としても、3の方がずっと書き易いし、書いていて楽しいです。   冒頭、チャウの脱獄から物語が始まるっていうのも、刑務所もの(&脱獄もの)が好きな身としては興奮しちゃったし、そんなチャウが「第四の主人公格」として活躍しまくっているのも良い。  これは2にあった欠点「メインとなるのが前作と同じ三人組で、新鮮味が無い」を、見事に打ち消す効果があったと思います。   皆で力を合わせ、豪邸に忍び込む件も面白かったし「実はチャウの金塊ではなく、マーシャルの金塊を盗む手伝いをさせられていた」という、どんでん返しも良かったですね。  これは1や2には備わってなかった面白さであり、それだけでも(3を観て良かった)と思えました。   それでいて、後半には再びベガスに戻ったり、ジェイドが再登場したりと、1からの観客に対するファンサービスが、しっかり行われている点も良い。  今回は三部作を続けて鑑賞する形を取った為、1では赤ん坊だったジェイドの息子が成長してる事にも、何だかグッと来ちゃいましたね。   それと同じく、1では端役に過ぎなかったチャウが、立派なメインキャラに成長している事も、これまた感慨深い。  自分としては、アランよりもむしろチャウの方が魅力的なキャラなんじゃないか、と思えたくらいでしたね。  悪人だけど、彼なりに仲間は大切に思っているって事が伝わってきましたし、金塊を独り占めした後に警報を鳴らす時の、意味深な表情や仕草なんかも(アラン達を警察に保護させようとした、チャウなりの優しさでは?)と思えて、印象深いです。   最後には、しっかりチャウがトランクに閉じ込められて、そこから解放され、また馬鹿騒ぎのパーティーをやって終わりというのも、実に「ハングオーバー」らしくて好き。  映画の面白さという意味で考えると、点数では2と同じになっちゃうんですが……  印象としては、ずっと好ましい、良い完結編だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-16 18:07:52)
122.  ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える 《ネタバレ》 
 三部作の真ん中に位置する品なのですが、初代の焼き直し感の強い内容なのが残念でしたね。   逆に考えると「1を好きだった人なら問題無く楽しめる続編」なのですが、どうもマンネリっぷりを強く感じてしまいました。  理由の一端としては、主人公グループが「フィル、スチュ、アラン」の三人組で、前作と全く同じ顔触れだったのが痛いんじゃないかと。  ここは三人の中の誰かが行方不明になって、新キャラの天才少年テディが捜索側に回るか、あるいはダグも一緒に行動する形にしても良かったんじゃないかと思いますね。  作り手側としては「イケメン主人公のフィル」「頼りないけど知性派で、真相を解く探偵役のスチュ」「トラブルメーカーのアラン」の三人組が、バランスとして完璧という自負ゆえに、前作と全く同じ布陣にしたのでしょうが、流石に変化が無さ過ぎた気がします。   そもそも、スチュが結婚する相手がジェイドじゃなく、新顔のローレンって時点で(えっ、何で?)と思えてしまって、物語に入りきれなかったんですよね。  舞台をタイにする以上、仕方無かったのかも知れませんが、自分としては「タイが舞台である事」に必然性を感じなかったし、アメリカの田舎町かどこかでも良かったんじゃないかと思えたくらい。  スチュとローレンパパとの和解も無理矢理感があったので、もう少し自然な感じに仕上げて欲しかったです。   あとは、アランの嫌な奴っぷりが明らかにアップしている点もキツい。  両親に対して嫌味な態度を取る場面とか「俺は専業ニートなんだ」と偉そうにしている場面とか、本当ゲンナリしちゃったんですよね。  そんな描写が序盤にあった以上、改心して「これからは両親を大事にする」「ちゃんと働き出す」って結末になるんだろうなと思ったのに、それも無し。  前作の時点では、ここまで酷い奴じゃなかったと思いますし、アランが好きだった自分としては、かなり寂しかったです。   何だか欠点ばかりを書いちゃいましたが、それというのも、本作の良い部分って「答え合わせが、盲点を突かれた感じで気持ち良い」とか「エンドロールで明かされるパーティーの光景が楽しそう」とか、前作にあったのと同じ良さだったりするので、改めて本作の感想として書くのが、ちょっと難しいんですよね。  それでも、あえて本作独自の長所を挙げるなら……  「マイク・タイソンやチャウの再登場が嬉しい」「テディが指を失ったのは可哀想だけど、実は自業自得だったと分かり、思わず笑っちゃった」とか、そのくらいになりそう。   総合すると「それなりに楽しめた」「続編としては、そこまで悪くない」って感じになりますし、点数を付けるなら、決して低くはならないんですが……  自分としては、物足りない印象が残る一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-16 17:48:41)(良:1票)
123.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
 既に三部作を鑑賞済みで再見した為 (1は意外と出だしがシリアスで、サスペンス物にも思えるような作りだ) (この頃はダグも主人公の一人だし、チャウは端役でしかなかったんだな……)  といった具合に、色んな発見があって面白かったですね。  本作の場合「新郎のダグは、何処にいるのか?」という謎がキーとなっているので、その答えを知っている状態で観たら楽しめないかもという不安もあったんですが、それを見事に吹き飛ばしてもらえました。   あと、1の時点だとアランの駄目人間っぷりも控えめで、観ていて不愉快に思える場面が無かった事も、非常にありがたい。  三部作の中では本作が最も優れていると思うんですが、その理由としては「長所が多い」という以上に、後の二作よりも「短所が少ない」という事が挙げられそうなくらいです。   特に感心したのが「昨夜の出来事を何も憶えていない」という設定にも「酒の飲み過ぎ」だけで済まさず「ドラッグの効果」という理由まで付け足し、リアリティを補強している事。  そして「ドアは開けておけよ」という、序盤の何気無い一言が伏線になっている事ですね。  後者は短いながらも印象的な場面ですし、真相が判明した際(そうだ、屋上のドアは中からじゃないと開けられないんだ)と観客に思い出させる効果があるしで、とても良かったです。  こういう部分がしっかりしていないと「設定に無理がある」「伏線が弱い」っていう欠点に繋がってしまう訳で、本作はそういう欠点を生まないように、丁寧に作られているのが窺えました。   足を引っ張ってばかりのアランが、実はカードカウンティングが可能な天才だったと判明する流れも、非常に気持ち良い。  三部作の中では、本作が最もアランの主人公っぷりが薄いんですが、活躍度では随一だったと思いますね。  義兄となったダグを「お兄ちゃん」と呼んでハグする場面も、幼い男の子なら感動的になりそうなんだけど、実際は髭っ面の良い歳した男性なのでシュールな絵面にしかならない可笑しさがあったし、自分としては本作のアランが一番好きです。   「虎」「赤ん坊」「パトカー」といった謎掛けアイテムの数々も魅力的だし、車を飛ばして結婚式場に向かう場面はカーチェイス的な魅力もあったしで「掴み」と「盛り上げ方」が上手かった点も、お見事。  「屋上での乾杯から記憶を失う」「実は、ダグの居所も屋上」っていう構成になっているのも、凄く良いですね。  盲点を突かれたというか「答えの場所を予め示しておいた」というフェア精神のようなものが感じられて、観ていて心地良かったです。   そんな中、数少ない欠点を挙げるとしたら……  フィルが生徒達から金を騙し取り、ベガスで遊ぶ為の資金にしている冒頭部分が、不要に思える事(カードカウンティングの際の資金にしたのがコレと示すとか、予想以上に儲けたので生徒達に豪華な見学旅行をプレゼントする後日談を付け足すとか、もっと上手い活かし方があったはず)  次作以降で明かされる「アランは歌が上手い」「スチュはジェイドと結ばれない」などの情報とは、矛盾した描写が目に付く事とか、そのくらいかな?  勿論「無茶をやり過ぎ、車の修理費だけで凄い額になる」とか「鶏は虎の餌にする為に連れてきたの?」とか、細かいツッコミ所や疑問点はあるけど、観ている間は気にならなかったです。  「その後のシリーズと比べると矛盾がある」って点に関しても、コレ単体で評価する限りでは欠点とは言い難いですし、本当に良く出来ていると思いますね。   「実際には、どんなパーティーだったのか」を明かしてくれるエンドロールに至るまで、楽しい時間を過ごせました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-04-16 17:25:04)(良:2票)
124.  ゾンビーワールドへようこそ 《ネタバレ》 
 ボーイスカウトとゾンビの組み合わせといえば「バンクス/ゾンビキャンプ」(2013年)という前例がありましたが、あちらが子供向けに仕上げていたのに比べると、こちらは背伸びしたい若者向けって感じの内容でしたね。  グロい場面や、エロい場面なんかも適度に配してあるし、何よりティーンエージャーの成長物語として作ってある。   である以上、何時まで経っても大人になりきれない自分としても、大好物な品のはずなのですが……  要所要所で引っ掛かる部分があって、手放しで絶賛出来ないのが残念でしたね。   いやもうホント、出来は良いんですよ。  ゾンビ映画ってジャンルは、百本観たら八十本以上は「外れ」と感じてしまうくらい「当たり」率の低いもんなのだけど、本作は間違い無く「当たり」の部類。  映像や音楽もしっかりしていますし、途中で間延びする場面も無かったし、娯楽作品として高い水準に達していると思います。   テントを張ったり焚火したりする「ゾンビに襲われる前の楽しい一時」が、きちんと描かれてるのもポイント高いし、お約束の武器としてショットガンが登場し、豪快にゾンビの頭を吹き飛ばしてくれるのも良い。  普段は車が壊れても全然手伝ってくれなかった悪友が、ゾンビに襲われている最中には積極的に手伝ってくれる対比なんかも、上手いなぁと感心しちゃいましたね。  主人公達がボーイスカウトという設定を活かした「ホームセンターで材料を集め、自前の武器を作成する場面」も、凄く良かったです。  物語上、特に必要は無いのに爆発シーンを挟み、分かり易く「はい、ここがクライマックスですよ」と教えてくれてる感じなのも、憎めない愛嬌がありました。    じゃあ、何が気に入らなかったのかというと……  本当に些細な事なんだけど、主人公のベンの言動が問題だったんです。  勿論、彼は良い奴だし、真面目だし、自分も彼が嫌いって訳じゃないんですが、何故か肝心な部分で(えっ? 何それ?)って思うような選択したり、行動を取ったりするんですよね。  なまじ彼が「良い奴」で、自分も序盤から彼に感情移入して観ていたもんだから、途中から徐々に(この主人公は、何か違う……)って違和感を抱き始めたのが、失望に繋がっちゃったんだと思います。   そんな違和感が決定的になったのが、パトリック・シュワルツェネッガー演じるジェフの首を切断して「この、カスが」と毒付く場面。  そりゃあジェフは「嫌味なイケメン男子」という、オタク映画における最大の憎まれ役キャラだったけど(ゾンビ化した知り合いを殺しておいて、そんな態度取る?)って引いちゃったんですよね。  なんか首の斬り方も妙に恰好良く、スタイリッシュに描いて「どう? 観客の皆もスカっとしたでしょ?」と言わんばかりの演出していたのにも(悪趣味だなぁ……)と、ゲンナリするばかりでした。  ここは、お調子者の相棒であるカーターが「ざまぁみろ」と罵って死体を蹴るのを「やり過ぎだ」とベンが咎めるくらいのバランスでも良かった気がします。    あとラストシーンにて、共に苦難を乗り越え、絆を育んできたデニースではなく、ケンドルの方と結ばれるというのも、スッキリしない感じ。  作中の人物の立場になれば「映画で描かれたのは、長い人生のほんのワンシーンに過ぎない。ずっと前から好きだったケンドルを選ぶのは当たり前」って話なんでしょうけど、映画を観ている観客からすれば、出番なんて僅かしかないケンドルより、ヒロイン格であったデニースの肩を持っちゃう訳で、どうも納得出来ないんですよね。  それならせめてデニースの目線で(あぁ、ベンに振られちゃった……)的な切なさを出してくれたら、彼女に同情して、切ない余韻が残ったと思うんですけど、それも無し。   良い映画だし、面白い映画だったんですが、肝心の部分が肌に合わないっていう、非常に勿体無いパターンでした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-04-07 08:59:31)(良:1票)
125.  ゾンビランド:ダブルタップ 《ネタバレ》 
 大好きな「ゾンビランド」の主人公四人組が、十年後も家族であり続けたという、それだけでも嬉しくなっちゃう映画。   家族ともなれば当然、意見が合わなくて喧嘩別れしちゃう事もあるんだけど、最後は元の鞘に収まり仲直りっていうのも気持ち良かったですね。  誰か一人くらいは死んじゃう可能性もあるかもって警戒していただけに、そんな懸念を吹き飛ばして全員生存エンドを迎えてくれたのも嬉しかったです。   監督も主要メンバーも同じ顔触れが揃っており、前作が好きな人なら安心して楽しめる内容となっているんですが……  「終盤の展開が雑」っていう欠点まで前作と同じだったりして、ちょっと困っちゃいましたね。  「ゾンビも進化して、更に厄介な敵となった」という伏線があったのに、それに殆ど意味が無かったという肩透かし感も寂しい。  「高さ」を利用してゾンビ達を一斉に退治するクライマックスも、中々痛快ではあったんだけど、上述の設定があるせいで (これなら敵は普通のゾンビのままで良かったな……)  って考えがチラついてノリ切れなかったし、典型的な設定倒れに思えちゃいました。  「二度撃ち」でも倒せない新型ゾンビって印象は強烈だっただけに、もっと上手く活用して欲しかったですね。   勿論、長所も色々あるというか、どちらかといえばそちらの方が多かったくらいだと思います。  ホワイトハウスを「我が家」にして四人で生活する様も楽し気で良かったし、人気漫画「ウォーキング・デッド」を読んで「全然リアルじゃない」と感想を漏らすのも、実際にゾンビ世界に住んでいる主人公達ならではって感じがして、面白かったですね。  すっかり豊満な女性に成長したリトルロックが、反抗期を迎えてしまい、それに他の三人が振り回される展開になるのも、ファミリー映画らしい魅力があって良かったです。  新キャラのマディソンを殺す場面をハッキリ描かなかったから (実は彼女は生きていて、ゾンビ化した彼女と再会する事になるんだろうな)  とばかり思っていたのに (……生きてるだけじゃなくて、ゾンビ化すらしてなかったよ!)  ってツッコまされた辺りも、程好いサプライズ感があって好き。   他にも、リトルロックの彼氏を「胡散臭い」と観客に感じさせる流れも自然で (なんだ、この彼氏って良い奴かと思ってたのに、実は嫌な奴だったのか)  と失望させたりしないバランスに仕上げてあるんですよね。  かなり早い段階で、有名なボブ・ディランの曲を「自分の曲」と言ってリトルロックに聴かせる場面が挟まれており「こいつは信用出来ない」と印象付ける事に成功している。  こういった形の、さり気無い人物描写が上手い監督さんなのだなと、改めて感心させられました。  モンスタートラックや「誕生日プレゼントの銃」の使い方も巧みだし、人間をゾンビと勘違いして殺す事を「マーレイしちゃう」なんて表現するセンスにも、クスっとさせられましたね。   終わり方に関しては、前作と同じ「家族エンド」であり、予定調和な心地良さがある一方で、ちょっと物足りないとも感じていたのですが……  エンドロールの後、ビル・マーレイの大暴れを描いてくれた事には、もう大満足!  もし「ガーフィールド3」ならぬ「ゾンビランド3」があったら、再びエンドロール後には「ビル・マーレイが生きていた頃の話」を流して欲しいな、と思えたくらいでしたね。  完全なコメディパートかと思わせ、観客を油断させておき、意表を突いて格好良いゾンビ退治に突入する流れが、本当に面白かったです。   「ゾンビ世界を生き抜く為のルール」ならぬ「ゾンビランドを楽しむ為のルール」を作るとしたら、そこには是非「エンドロール中に席を立ったり、停止ボタンを押したりしてはいけない」って一文を付け加えたいな……と、そんな風に思えました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-03-04 23:41:12)(良:1票)
126.  9か月 《ネタバレ》 
 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。   残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが……  これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。   結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。  「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。   それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。  もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。  本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど……  もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。  そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。   子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。  母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。  我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。   主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。  途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。  車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど……  まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。   それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか  (妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ)  って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。  女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。   産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。  「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-27 04:30:10)(良:1票)
127.  フラッド 《ネタバレ》 
  これは……  「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。    クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。  両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。  トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。   繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。  町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。  牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。  口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。  「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。   じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと……  やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。  せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。  本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。   あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが……  (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。   途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。  スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが……  もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-26 05:37:51)
128.  10日間で男を上手にフル方法 《ネタバレ》 
 ドナルド・ペトリ監督作のラブコメって「女性が観ても、男性が観ても楽しめる内容」な事が多い気がしますが、これもまたそんな一本。   男の自分としては「住んでる部屋が煉瓦の壁でオシャレ」「職場にビリヤード台があるなんて羨ましい」と思えて、主人公のベンの描写は観ていて気持ち良かったですし、恐らく女性が観ても、ヒロインであるアンディの「仕事が出来る、自立した女性」って描き方には好感が持てるんじゃないかな、って気がしました。  それと、ベンには「料理が得意」アンディには「スポーツ観戦が趣味」って属性が付与されており「女性にとっても魅力的な男性像」「男性にとっても魅力的な女性像」が、自然に描かれている辺りも上手い。  これらの属性を「せっかく料理を作ったのに、菜食主義者の振りしたアンディに突っぱねられてしまう」などのコメディタッチな場面で、自然に描いているもんだから、全く嫌味に感じられないんですよね。  これって、一歩間違えれば「ラブコメらしい、男に都合の良いヒロイン像だ」「女に都合の良い主人公像だ」なんて印象に繋がってしまいますし、それを感じさせずに仕上げてみせた手腕は、本当に見事だと思います。   主人公のベンが「バイク乗り」という伏線が、序盤から張り巡らされている事。  相手の嘘を見破るゲーム「馬鹿こけ」が効果的に活用されている事など、脚本も丁寧で良かったですね。  ラブコメではお約束の、ハッピーエンド前の喧嘩についても「互いの文句を、替え歌で熱唱する」って形にしており、重苦しい印象を与えず、笑って観られるような感じに仕上げてある。  その一方で「やっと目論見通りに別れられるとなった際に、寂しそうな顔になるヒロイン」の場面ではグッと来るものがあったし、そういった「決めるべきところは決める」作りなのも心地良かったです。  クライマックスにて、アンディを追っかけバイクで街を疾走する場面も良かったし、予定調和なハッピーエンドに着地してくれるしで、終わり方も文句無し。   よくよく考えてみたら「こんな相手の心を弄ぶような賭けするのって、どうなの?」という疑問も湧いてきたりするんですが、観ている間はスピーディーで楽しい作りゆえに、全く気にならなかったんですよね。  中には上司の悪口を言ったりする場面もあるんだけど、そこも陰湿な印象は受けなかったし、やはり監督の魅せ方、役者の演じ方が上手かった、って事なんだと思います。   それでもあえて不満点を述べるなら……ヒロインのアンディが職場でハンバーガーに齧り付いてる時に見せる「髪を後ろに結んだ姿」が非常にキュートだったので、出来ればアレをメインの髪型にして撮ってもらいたかったとか、そのくらいかな?   ラブコメ好きには安心してオススメ出来る、良質な一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2020-02-20 14:20:10)(良:2票)
129.  オールド・ボーイ(2013) 《ネタバレ》 
 今度は原作準拠で作ってくれるんじゃないかという期待があったのですが「原作漫画の再映画化」というよりは「2003年の韓国映画版のリメイク」という内容であった事が残念。   とはいえ、2003年版における欠点が色々と補われた形となっており、そこは良かったですね。  欠点が消えると同時に、あの独特の迫力というか、粘っこい魅力のようなものも失われているので、結果的にはプラマイゼロって感じなのですが……  それでも、リメイクした意義は充分にあったんじゃないかと思います。   まず、原作にもあった「催眠術」の要素をバッサリ削ってみせたのは、間違いなく英断でしたね。  「映画より原作漫画の方が面白い」と考えている自分ですら「あの漫画は催眠術で何でも出来ちゃうのがツマラナイ」って言われたら、反論出来ないところがありますし。  一応、本作においても「心理的な誘導工作」のようなものはありましたが、さほど非現実的ではなく、充分にリアルな範疇に留まっていたんじゃないかと。   また、2003年版においては「これ、ヒロインが主人公の娘なんじゃない?」と途中で観客も気付いちゃうような、作りが甘いところがあったんですが、本作はその点もフォロー済み。  「架空のテレビ番組」「スマホの待ち受け画面」を効果的に活用し、ヒロインの正体を上手くはぐらかす形にしてあったのは、お見事でしたね。  2003年版より先に、こちらを観賞していたとしたら、ネタバラシの瞬間まで「ヒロインのマリーは主人公の娘である」って事に気付かず仕舞いで、大いに衝撃を受けたんじゃないかと思えました。   他にも「飛び降り自殺する男を見殺しにする場面が無くなってる」「娘を人質にしていると犯人が語るので、主人公は彼を殺せない」などの改変が施されており、それらに不満を持っていた自分としては、嬉しい限り。  その一方で「テレビを観ながら自慰に耽る場面」「金槌を武器に大立ち回りを演じる場面」など、2003年版で印象深かったポイントは、しっかり再現してあったんだから、非常にバランスの良い作りだったと思います。   肝心の「犯人の動機」については「2003年版と違って、思いっきり本番行為しているのを見られたんだから、噂が広まるのは当然」「娘だけでなく息子とも性的な関係にあった男って設定にしたのは、流石にやり過ぎでは」「主人公の元嫁はアマンダをいじめるどころか庇っていたのに、殺されたのが可哀想」等々、気になる点も多かったんですが……  家族を淡々と射殺していく場面は不気味で良かったですし、これまた「結果的にはプラマイゼロ」って感じでしたね。  特に、犯人が「近親相姦の罪を背負って生きる事になった主人公」に対し、同情を示す描写があった点は、原作漫画における「孤独な二人の、奇妙な友情」を連想させるものがあり、僅かながらも原作の要素を取り入れてくれたように思えて、自分としては嬉しかったです。   オチとなる「再び監禁部屋に戻るエンド」に関しても、娘との近親相姦関係をスッパリ断ち切ったという感じがして、良かったですね。  曖昧なまま終わらせた2003年版よりも、ずっと誠実な終わり方だったと思います。   あっさり薄味だけど、薄味には薄味ならではの魅力があるんだなと感じさせてくれた、そんな一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-10 20:18:15)
130.  ユー・ガット・メール 《ネタバレ》 
 去年最後に観た映画が「めぐり逢えたら」である以上、今年最初の映画には、これが相応しかろうと思い観賞。   元ネタの「桃色の店」では文通だったのをEメールに変えた事に、ちゃんと意義があったというか「Eメールでのやり取り」ならではの魅力を感じられる作りだったのが流石でしたね。  一度書きかけた文章を消す為、キーを連打しちゃう主人公の場面なんて、特に印象的。  「ペンを使って手紙を書く」という動作では出せない「キーを叩いてメールを書く」という動作だからこその面白さだったと思います。   二作続けて観賞した為か「めぐり逢えたら」同様「他に恋人がいるのに、惹かれ合ってしまう主人公とヒロイン」という設定だった事には(またかよ)と思ってゲンナリしちゃったけど……  まぁ、それに関しては(そういう設定の方が喜ぶ人もいるから)と納得するしかないんでしょうね。  「オマケ程度にクリスマス要素がある」「子供がキッカケになって二人が出会う」という共通点に関してはクスッとしちゃったし、この辺は「二作続けて観賞した」という事がプラスに働いたのか、それともマイナスに働いたのか、微妙なところです。   そんな中「プラス」と言えそうな部分としては「かつての恋人との別れ方が、ずっと円満で納得のいく形になっている」って部分が挙げられそうですね。  お互いに、他に好きな人が出来たんだと分かって双方ホッとして笑い合う場面なんて、見ているこっちまで釣られて笑顔になっちゃったくらい。  エレベーターに閉じ込められ「自分が本当に望んでいる事を悟り、別れを切り出した」というのも、説得力があって良かったです。   ヒロインがマスコミを利用し、商売敵に「悪いキツネ」というイメージを与えようとする件とか(やっぱり、この監督が描くヒロイン像って好みじゃないな)と感じる場面もあったんですが……  とにかくヒロイン演じるメグ・ライアンがキュートなものだから、不快感が尾を引かないんですよね。  主人公に「ファイト」と励まされ、シャドーボクシングを始める場面なんて、もう最高に可愛らしい。  たとえ脚本が肌に合わなかったとしても、演じる役者さん次第で、こんなにも印象が変わってくるんだなって思えるし、ラブコメの女王メグ・ライアンの凄さを、改めて感じる事が出来ました。   「よく出会うわね」「土曜の昼に、また偶然に出会わない?」って会話も印象深いし「すべて35%オフ」のフォックス書店に対抗心を抱いていたヒロインが「閉店セールの40%オフ」で、ようやく価格争いに勝利する事が出来たという顛末も、悲しい皮肉が伴っていて良かったです。  主人公がパソコンから離れた後(どうせ戻って来て、彼女のメールに返事しちゃうんだろうな)と思っていたら、本当にそうなる流れなんかも、実に微笑ましい。  二人が結ばれた後「THE END」の文字を、さながらメールで打ち込む時のように表示して終わるのも、小粋な演出でしたね。   なんだかんだ言っても、やっぱり自分はノーラ・エフロン監督の映画が、そしてトム・ハンクスとメグ・ライアンの映画が好きなんだな……と思わされた一本でした。
[DVD(字幕)] 6点(2020-01-02 20:05:53)
131.  めぐり逢えたら 《ネタバレ》 
 さて、今年のクリスマスは何を観ようかと本棚を眺めていたところ (そういえば、これも一応クリスマス物だったな……)  と思い出した為、本作を観賞。   結果的には殆ど「クリスマス要素」が無くてズッコけた訳ですが……  観た後に幸せな気持ちになれるという意味では、非常にクリスマスらしい映画だったと思います。   なんといっても、恋のキューピット役となってくれる主人公の息子が良かったですね。  可愛らしい子供キャラを配し、ファミリー映画的な側面を備えているのは、元ネタである「めぐり逢い」(1957年)には無かった魅力。  なんせ本作の主人公カップルときたら、出会って話すと同時に映画が終了しちゃうくらいなんだし、作り手としても意図的に「二人を結び付けようとする子供が主軸の映画」として完成させたんじゃないかな、って気がします。   そんな息子くんには、同世代の彼女もいたりして、ちょっぴり憎たらしい感じだったのに……  エンパイアステートビルに一人ぼっちになった時は、心細げな顔を見せたり、パパと再会出来た時には、喜んで抱き付いたりと(なんだかんだ言っても、まだ子供なんだな)と思わせてくれた辺りが、実に可愛かったです。  個人的には、ここの「父子の再会」の場面が、映画の白眉だった気がしますね。  「めぐり逢い」(1957年)同様、やはり主人公カップルは約束の場所で会えない運命なのかなと思わせておいて、息子が置き忘れたリュックのお蔭で会う事が出来たという脚本も、非常に凝っていて素敵でした。   翻って、悪かった点はというと……これが結構多かったりもして、困っちゃいます。  まず、メグ・ライアン演じるヒロインに共感を抱けない。  主人公の住所を調べて会いに行く件とか、どう考えてもストーカーそのものだし、彼女の恋路を応援しようって気になれなかったのですよね。  作中にて彼女が昔の映画を鑑賞し「この頃は、みんな本当の愛し方を知っていたのよね」なんてウットリする場面がありましたが、二十年以上前の映画を観ている最中な自分からすると(この頃は、まだストーカー的な愛し方が肯定されていたんだなぁ……)と、皮肉気に考えちゃいました。  そもそも婚約者がいるのに「運命の出会いに憧れ、恋に恋している女性」って時点で、どうしても拒否感が出ちゃうんですよね。  彼女も浮気な自分を悔いて「許せない裏切りだと思うわ」と嘆く事になるんですが、観ているこちらとしても(ホンマやで)とツッコむしか無かったです。  トム・ハンクス演じる主人公も、ヒロインが強烈に恋い焦がれるほど魅力的には思えなかったという辺りも、辛いところ。  「ラジオ番組で話した時の声が素敵」「話す内容が素敵」というくらいで、手紙が殺到するほどの人気者になるというのも、ちょっと無理があった気がしますね。  二人とも好きな役者さんであるだけに、その辺は観ていて辛かったです。  結局「僕は君が妥協して仕方無く選んだ男には、なりたくない」と告げ、ヒロインを約束の場所へと送り出してくれた婚約者のウォルターこそが、作中で一番「いい男」だったんじゃないかと思えちゃうし、どうもスッキリしませんでした。   そんなウォルターと、主人公の恋人候補であったヴィクトリアが完全に「恋の当て馬」ポジションに収まっており、救いが描かれていなかった辺りも、残念なポイント。  上述の通り「観賞後は幸せな気持ちになれる映画」だったのですが、当て馬組にも優しい描写がもっと盛り込まれていたら、より好きになれた気がします。   ちなみに、この映画を基にしたとんねるずのコント「めぐり逢えたら スペシャル版」では、主人公の息子がラジオ番組に再び電話を掛け「パパが結婚する事になったんだ!」と嬉しそうに報告して終わるという形になっており、元ネタ以上に爽やかなハッピーエンドだったりするんですよね。  個人的には、そちらの方が好みな終わり方でした。
[DVD(吹替)] 6点(2019-12-25 22:25:51)(良:1票)
132.  シモーヌ 《ネタバレ》 
 こんな映画、シモーヌを演じる女優さん次第では観ていられない代物になりそうなのに、ちゃんと「世界中が熱狂するほどの美女」としての説得力があって、立派に作品として成立しているんだから凄いですよね。   シモーヌ役のレイチェル・ロバーツは、現在アンドリュー・ニコル監督の妻となっているそうで、結果的に親馬鹿ならぬ「旦那馬鹿」的な映画となっているのも、何だか面白い。  撮影当時から恋仲だったかどうかは分かりませんが、そんな関係性の二人だからこそ、監督側は「シモーヌ」を魅力的に描き、女優側は艶やかに「シモーヌ」を演じる事が出来たんじゃないかな、と思いました。    勿論、主演のアル・パチーノも良い味を出しており、実在しない女優に振り回される映画監督の役を、見事に演じ切っていましたね。  特に終盤、シモーヌ殺害容疑で警察の尋問を受ける件なんて、演技一つで作品のカラーをがらりと変えてしまったかのような迫力があり、流石だなと感心。  個人的には、ここの主人公が追い詰められる件は無理矢理過ぎるというか(ハッピーエンドの前振りとはいえ、悲壮感を出し過ぎたんじゃない?)と、少々気持ちが冷めてしまったりもしたんですが……  それでも決定的な違和感を抱くに至らなかったのは、やはりアル・パチーノの演技力あってこそ、なのだと思います。   あとは、ラストの「政治家を目指す」オチが微妙に思えた事。  シモーヌに黒子(?)を付け足す場面が伏線かと思ったら、そうでもなかった事。  日本の新聞記事だと「シモン」になってたのが気になる事とか、難点はそのくらいでしょうか。   ニコル監督の作品らしく、ビジュアルセンスも光っていたし、脚本についても御洒落な笑いが散りばめられていて、面白かったですね。  シモーヌを消去する場面での「主人公が泣いているからこそ、シモーヌも泣いている」場面にはグッと来るものがあったし「たった一人より、十万人を騙す方が簡単だ」という台詞や、シモーヌが唄う曲の歌詞なんかも、皮肉が効いていて素敵。   また、このストーリーの場合「シモーヌの元々の開発者はハンクなのに、主人公は手柄を一人占めにした」という印象を抱いてしまいそうなのですが、ちゃんと随所に「ハンクに感謝する場面」が挟まれており、反発を抱かずに済むよう配慮されているのも嬉しかったです。  こういう「主人公を嫌な奴にしない」バランス感覚って、映画作りではとても大切だと思いますからね。   自らが生み出した存在に、段々と恐怖を抱いていく「フランケンシュタイン・コンプレックス」も丁寧に描かれていて説得力があったし、皆がシモーヌに夢中になる中「シモーヌよりもパパの方が好き」というスタンスだった娘が、最後の最後で主人公を救ってくれる展開なんかも、実に気持ち良い。   (ラストシーンの後は、シモーヌの可愛い「坊や」が成長し、子役や男優になって世界を虜にするのかな?)  (父親がシモーヌを演じたように、娘が彼を演じてみせるのかな?)  なんて妄想まで出来ちゃう、楽しい映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-12-10 02:36:38)(良:1票)
133.  ラッキー・ガール 《ネタバレ》 
 「ラブコメなんて女子が観るもの」という考えだった自分に「ラブコメって、こんなに面白かったのか!」という衝撃を与えてくれた、記念すべき一本。   久々に再見してみると、非常にシンプルな作りであり(ありがちなラブコメでしかなくて、際立った傑作という訳ではなかったんだな)と、寂しい想いに駆られたりもしたんですが……  それでもなお、本作が「面白い映画」「好きな映画」である事は揺らぎませんでしたね。   主人公アシュレーを演じるリンジー・ローハンは魅力的だし、後にカーク船長となるクリス・パインが、彼女と対になる「とことん不運な彼氏」のジェイクを演じているのも面白い。  思えば、この映画を初めて観た頃の自分って(ラブコメ映画に出てくる彼氏役ときたら、男の自分には嘘臭くて耐えられないような奴ばかり)っていう偏見があった気がするんですよね。  でも、本作のジェイクには自然と感情移入出来たし(良い奴だなぁ……幸せになって欲しいな)と応援する気持ちになれたんだから、これって凄い事だと思います。   脇役も充実しており、ジェイクの隣に住んでる幼女のケイティなんて、特にキュートでしたね。  アシュレーが不運になっても決して見放したりせず、一緒に同居生活を送ってくれる女友達の存在も、実に好ましい。  ボウリング場で慣れない仕事を頑張る場面や、洗濯室で泡まみれになって戯れる場面など、昔観て(良いな)と思えた場面に対し、今観ても同じようなトキメキを感じられた事も嬉しかったです。   ラストの「二人同時にケイティにキスをする」という解決法も(そう来たか!)という感じで、意外性があって良かったですね。  今後の主人公カップルは、不運続きな人生になってしまうかも知れないけど、ケイティが傍にいて支えてあげれば大丈夫じゃないかなーって思えるし、ちゃんとハッピーエンドと呼べそうな雰囲気で終わっているのが嬉しい。  再び人生の岐路に立たされるようなイベントが起こったら、ケイティからキスしてもらって一時的に幸運を授かり、事を済ませた後に再びキスしてケイティに幸運を返す、なんて日々を送ってそうな気もしますね。   あえて難点を挙げるとすれば……「会議のプレゼンが成功」とか「車に轢かれても平気」とか(それって運が良いだけで済む話なの?)と思えてモヤッとする場面があるとか、それくらいでしょうか。  あとは、クライマックスの演奏シーンで、もっと盛り上げてくれていたら、文句無しの傑作と呼べていたかも。   思春期の頃、この映画と出会っていなかったら、ラブコメを好きになれないまま、多くのラブコメ映画を楽しめないままだったかも知れないなと思えば、ちょっと身震いするような気分になりますね。  そういう意味では、とても特別な映画ですし、忘れ難い一品です。
[DVD(吹替)] 8点(2019-11-28 18:50:03)
134.  きみがくれた未来 《ネタバレ》 
 こんなに可愛くって、しかもレッドソックスのファンな弟がいるだなんて、全くもって主人公が羨ましい。   一応、本作には女性のヒロインも登場しているのですが、明らかに「男女のロマンス」よりも「兄弟の絆」を重視した作りになっていますよね。  大人な自分としては、自然に兄の側に感情移入し (こんな可愛い弟がいたら、そりゃあ楽しいだろうな)  と思えた訳ですが、多分コレ、幼い子供が弟の側に感情移入して観たとしても (こんな恰好良いお兄ちゃんがいたら、きっと楽しいだろな)  って思えたんじゃないでしょうか。  そのくらい「理想の兄弟像」が描けていると思うし、兄を演じたザック・エフロンも、弟を演じたチャーリー・ターハンも、素晴らしく魅力的だったと思います。   「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る」という設定の使い方も上手かったですね。  特に序盤の、サリバン中尉殿とのやり取りなんて、凄く好き。  出征して戦死した友人に対し「俺も一緒に行けば良かった」と悲し気に訴える主人公と「来なくて良かったんだ」と笑顔で応え、静かに立ち去る友人。  ベタなやり取りなんだけど、じんわり心に沁みるものがあって、とても良かったです。  「実はヒロインも幽霊だった(正確には、仮死状態による生霊?)」というドンデン返しについても、彼女が墓場で眠っていたという伏線なども含めて、鮮やかに決まっていたんじゃないかと。   それと、この映画って「何時までも死者に囚われていないで、前を向いて生きるべき」という、ありがちなテーマを扱っている訳だけど、それがちっとも陳腐に思えなかったんですよね。  何せ本作においては「主人公は幽霊と会話出来るし、触れ合う事も出来る。たとえ幽霊でも弟と一緒にいれば、弟が生きていた時と何も変わらない、楽しい日々を過ごせる」という設定な訳なのだから、主人公が世捨て人のような暮らしをしていても納得出来るし、自然と感情移入出来ちゃうんです。  この手の映画の場合、いつまでもウジウジ悩んでいる主人公に共感出来ず、むしろ主人公を励ます側の目線で観てしまう事が多い自分ですら、本作に限っては完全に主人公側の目線で観る事が出来た訳だし、これって何気に凄い事なんじゃないでしょうか。  「良くあるタイプの映画でも、設定や描き方に一工夫加える事によって、独特な味わいになる」例の一つとして、大いに評価したいところです。   弟とのキャッチボールに、恋の悩み相談、雨の森ではしゃいで遊ぶ姿なんかも非常に楽し気に描かれており  (このままずっと、兄弟一緒の世界で生きていくのも、それはそれで素敵な事じゃないか……)  と思わせる作りになっているのも、凄いですよね。  「死者に囚われて生きる事」を決定的に否定するような真似はせず、むしろその生き方の魅力を存分に描いておいたからこそ、終盤における主人公の決断「弟と共に過ごす日々よりも、愛する女性の命を救う事を選ぶ」行為にも重みが出てくる訳で、この前後の繋げ方は、本当に良かったと思います。   約束の森で、一人ぼっちになった弟が「兄は自分よりも大切な存在を見つけたんだ」と悟ったかのように、寂しげに立ち去るも、恨み言などは一切口にせず「お兄ちゃん」「好きだよ」と呟いてから消えゆく様も、本当に健気で……観返す度に瞳が潤んじゃうくらい。  ラストシーンにて、以前のように会話する事も、触れ合う事も出来なくなってしまった兄弟が「それでも、何時かまた会える」「会えない間も、いつまでも俺達は兄弟だ」と約束を交わす終わり方も、凄く好きですね。   冷静になって考えてみると、肝心のヒロインには魅力を感じなかったとか、弟がお兄ちゃんにしか執着してないので両親の置いてけぼり感が凄いとか、色々と難点もある映画なんですが……  眩しいくらいの長所の数々が、それらを優しく包み込んで、忘れさせてくれた気がします。   「面白い映画」という以上に「好きな映画」として、誰かにオススメしたくなる一品でした。
[DVD(吹替)] 8点(2019-11-07 06:36:42)(良:1票)
135.  パッセンジャー57 《ネタバレ》 
 85分という短い尺の中で、主人公が悪人退治してハッピーエンドという、非常にシンプルな映画。   年代が近い事もあってか、そこかしこに「ビバリーヒルズ・コップ」の影響が窺える作りにもなっていますよね。  特に中盤、わざと情けない男の振りをして犯人一味を騙す件なんて、ウェズリー・スナイプス的というよりは、如何にもエディ・マーフィ的な感じ。  飛行機で隣の席になった老婦人から、主人公が「誰かさん」に間違われてしまう件も、そこら辺を踏まえてのネタなんじゃないかなって思えました。   そんな訳で、遊園地でのアクションパートも「ビバリーヒルズ・コップ3」(1994年)を意識したのかなと思ったのですが……  確認してみると、本作は1992年公開であり、これに関してはむしろ先取りしている形だったんですね。ちょっと吃驚。  果たしてジョン・ランディスは「3」を撮る前に本作を観賞済みだったのかどうか、気になるところです。    気になるといえば、脚本にも色々と粗が多くて……  主人公も敵役も「有能な男」という設定にも拘らず、それがあんまり伝わってこなかった辺りは残念でしたね。  特に主人公は「ハイジャック対策のスペシャリスト」って設定のはずなのに、犯人との交渉にはアッサリ失敗して乗客死なせちゃっているし、これなら「偶々飛行機に乗り合わせた刑事」で、ヒロイン格のスチュワーデスから飛行機の情報を色々聞きながら事件解決するってストーリーでも、充分に成立していた気がします。  犯人側も犯人側で「主人公を撃つよりも、無能な部下を撃って殺すのを優先した結果、肝心の主人公を逃がしてしまう」なんて醜態を晒しちゃっているし、どうも二人して詰めが甘い感じ。  犯人組と妙に仲が良い描写があって、その後に絡んでくるんじゃないかと思われた金髪少年のノーマンが、放ったらかしのまま終わるとか、保安官から貰った銃を主人公がアッサリ落として使わず仕舞いとか、肩透かしな場面が多かった辺りも、ちょっと寂しかったです。   ……とはいえ、それらのアレコレも「気になる」程度で済んでしまい、決定的な失望に至らなかったのは、スピーディーな演出でグイグイ物語を動かしてくれる力強い作りゆえ、なんでしょうね。  「車で並走して飛行機に乗り移る」とか「飛行中に扉が開いて機内がパニックになる」とか、この手の映画ならお約束の描写を、きちんと盛り込んでくれる辺りも嬉しい。  友人役のトム・サイズモアに、美人スチュワーデスのエリザベス・ハーレイと、味方側と敵側、両方に魅力的な脇役が揃っていた事も、画面を引き締める効果があったと思います。  最後は主人公とヒロインが結ばれて、予定調和な結末を迎える辺りも心地良い。   「期待以上」ではないにせよ「期待通り」の満足感は得られた、良質なアクション映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-11-01 00:47:54)(良:1票)
136.  エスター 《ネタバレ》 
 「オーメン」という有名過ぎる先例がある事が、良い目晦ましになっていましたね。  それによって、悪役であるエスターの勝利エンドとなる可能性もあるのでは? と思えたし、最後まで結末を読めないまま楽しむ事が出来ました。  この映画が2009年製であり、三年前にあたる2006年には「オーメン」のリメイクが公開されていた事を考慮すると、作り手側も意図的に「オーメン」とは異なる「悪が退治されて、めでたしめでたし」エンドを選んだんじゃないかな……って気がしますね。  DVD特典の未公開エンドでも、エスターが逮捕される事を示唆する終わり方でしたから。   そんな具合に、基本的には「面白かった」「充分に楽しめた」という一本なのですが、ちょっと気になる点もチラホラ。  まず「襲われるかと思ったら、実は大丈夫だった」という肩透かし演出を何度も繰り返す点に関しては、正直キツかったです。  作り手の意図としては「本当に襲われちゃう場面」の衝撃を強める為、あえてブラフを重ねておいたのかも知れませんが、流石にこれだけの頻度でやられると(もういいよ……)とゲンナリしちゃいましたからね。  この辺りの「ハッタリの積み重ね」を、もっと少なめにしてもらえたら、より自分好みな映画になっていた気がします。   エスターのジョンに対する愛情が、本物だったのかどうか曖昧なのも、クライマックスにおける集中力を削ぐ効果があって、勿体無かったです。  「エスターなりに本気でジョンを愛していた」でも「単なる性欲に過ぎなかった」でも、どっちでも構わないから、ハッキリした描き方をして欲しかったんですよね。  仮に前者の場合なら、エスターが彼に惹かれるキッカケを丁寧に描くべきだったと思うし、後者の場合なら、彼に拒まれた際にあんなに泣く事は無いだろうと思えるしで、どうも中途半端でした。    翻って、良かった点はといえば……やはり、エスター演じるイザベル・ファーマンの熱演が挙げられそう。  劇中における「三十三歳の素顔」は特殊メイクなのでしょうが、本当にそちらが素顔なんじゃないかって思えるくらい、劇中のキャラクターと一体化していましたからね。  ジュースを欲しがって、それを拒否されたら寂しそうに俯き大人を騙す場面や「殴る?」と挑発する場面など、幼い子供という立場を活用する「狡い大人」としての姿に、真に迫った説得力があったんだから、お見事です。   そんなエスターの正体が明かされていく流れを、丁寧に描いている点も素晴らしい。  最初の出会いや、養子としてコールマン家に貰われていく序盤の段階では「天使のような良い子」という印象を与えた上で、少しずつ「この娘、どこかが変だ」と思わせていく構成になっているんですよね。  特に感心させられたのが「パパに構って欲しがるダニエルと、そんな彼に見せ付けるようにパパに抱き付き甘えるエスター」という場面。  ここって、普通に考えれば「子供っぽい独占欲の発露」でしかないはずなのに、観ていて微かな違和感を覚えちゃうっていう、そのバランスが絶妙なんです。  ブレンダを突き落とす場面や、尼さんを殺害する場面で一気に衝撃を与える形ではなく、事前にそういった伏線を張っておき、猜疑心や恐怖心を徐々に高めていく形にしたのは、本当に上手かったと思います。   ケイトがアルコール依存症、マックスが聴覚障碍者であるという設定に、きちんと意味のある脚本だった点も良いですね。  特に前者は「ケイトが酒の誘惑に打ち勝った事を観客は知っているのに、酒を飲んだんだろうとジョンに責められてしまう」という展開への繋げ方が上手くて、本当にやるせない気持ちになるし、その分だけケイトを応援したい気持ちにもなる。  また、それによって「妻のケイトはエスターを疑っているのに、夫のジョンはエスターの言う事を信じている」という状況設定にも、説得力を与えていたと思います。   エスターが細かく肉を切り分けて食べる事すら伏線だった(歯がボロボロだから細かく切る必要がある)のには感心しちゃったし「薔薇のプレゼント」「万力で自らの腕を折る」場面なんかも、ショッキングで良かったですね。  白い雪原に、黒いコート姿のエスターが立っているコントラストの美しさには見惚れちゃったし「光を当てる事によって、絵の中に隠された別の一面が見えてくる」場面の衝撃も、忘れ難い。   自分は冒頭にて「オーメン」を「有名過ぎる先例」と評しましたが、この「エスター」もまた、今後「悪の子供」をテーマにした映画が製作される度に引き合いに出されるような……  そんな、スタンダードな品になっていく気がします。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-27 12:03:22)(良:3票)
137.  リトルデビル 《ネタバレ》 
 明らかに「オーメン」(1976年)の亜流作なのですが、単なる模倣で終わらず「たとえ悪魔であろうと、我が子である以上は守ろうとする主人公」という物語に昇華してみせたのが、お見事でしたね。   中盤までは「義子のルーカスが悪魔であると知り、殺そうとする主人公」という「オーメン」そのまんまな展開であっただけに、途中で主人公が思い直し、全く違った方向性へと舵取りするのが、実に痛快。  監督は前作の「タッカーとデイル」でも、王道スプラッター映画をパロった上でハッピーエンドな着地を迎えてみせ(そう来たか!)と唸らせてくれたものでしたが、本作もそれに近しい魅力を備えており(やっぱりイーライ・クレイグ監督の映画は良いなぁ……)って、しみじみ感じさせてくれました。  2019年現在、僅か二本の映画しか発表していない寡作の人というのが、非常に惜しまれます。   配役も絶妙であり、特に子役のオーウェン・アトラスは「無表情だと不気味なのに、笑うと可愛い」というルーカス役を、見事に演じ切っていましたね。  この映画のストーリー上、主人公だけでなく観客にも「ルーカスは不気味に思えたけど、実は可愛くて良い子なんだ」と感じさせる必要がある訳なのですが、その点に関しては、文句無しでクリアしていたと思います。  プールで父子が仲良くなる件も微笑ましかったし、笑顔を見せる場面では、主人公同様に観ているこっちまで(笑うと、こんなに可愛かったのか……)と、ドキッとしちゃう。  アイスを舐めながら、主人公の事を初めて「パパ」と呼ぶ姿なんて、もう抱きしめたくなるくらいに愛らしかったです。   レズビアン(?)な同僚のアルも良い味出してるし、出番は少なめながら、主人公の妻に女性としての魅力が感じられた辺りも嬉しかったですね。  モンスタートラックや、最優秀パパのボールなど、伏線の張り方や、回収の仕方も鮮やかだったと思います。   主人公自身が「父親に捨てられた」という過去を持っている為、ルーカスに幼少期の自分の姿を重ね合わせ、自然と心を開いていく流れにしたのも上手い。 「お前の本当の父親が誰でも関係無い」 「お前はお前だ。何時だってなりたい自分になれる」  という台詞は、ルーカスに語り聞かせる以上に、自分に言い聞かせる効果もあったんだろうなと、自然と納得する事が出来ました。  主人公が「息子殺し」な自分ではなく「息子を守ってみせる」自分になる事を選ぶ展開にも繋がっている訳で、この辺りの脚本は、本当に巧みだったと思います。  「義理の父親です」という、ルーカスの父親である事を間接的に否定する台詞を何度も繰り返しておいた上で、クライマックスにて「絶対に離さない、お前の父親だから」と主人公に言わせる構成にも、グッと来ちゃいました。   難点としては、意味ありげな双子の少女が、本筋に絡まず終わってしまうのは寂しい事。  ルーカスの言葉で飛び降り自殺を図った理科教師が、どう見ても死んでるので、入院くらいで済ませた方が良かったんじゃないかと思えた事。  終盤に集結したパパ友が全く活躍しておらず、存在意義が感じられなかった事とか、その辺りが挙げられそう。   それと、プールでルーカスを救う場面では、出来れば「神の啓示」ではなく、完全に自分の意思で助けに飛び込んで欲しかったなと思えたのですが……  これに関しては、何度も観賞している内に(たとえ神様から「見殺しにしろ」と命じられても、主人公なら助けたはずだ)と、次第に考え方が変わってきましたね。  上述の「なりたい自分になれる」という台詞もありますし「神様のお蔭で、息子を殺さずに済んだ」という訳ではなく「神様は、悩める主人公に助言をしてあげただけ」って事なんだと思います。   父子で出場した丘下りレースにて「スピードを出し過ぎるな」と言われても聞き入れず、笑顔ではしゃぐルーカスの姿を映し出し(やっぱりこの子、悪魔だな……)って感じさせて終わるのも、非常に御洒落。  期待値の高い中で観賞したのですが、そんな高いハードルすらも飛び越えてくれた、気持ちの良い一品でした。
[インターネット(吹替)] 8点(2019-09-25 16:53:08)
138.  ネイバーズ2 《ネタバレ》 
 前作同様、ラドナー夫妻のセックス場面から始まる構成には笑っちゃったけど、その後のリアルな嘔吐描写にはドン引き。  それで出鼻を挫かれちゃったせいか、前作ほどには楽しめないまま終わってしまい、残念でしたね。   クロエ・グレース・モレッツ演じるシェルビーも、可愛いは可愛いんだけど「魅力的なキャラクター」とまでは思えず、存在感が薄かったです。  なんせ後日談でも、マックとテディは「二人目の子供が生まれ、父親として更に成長する」「結婚式のプランナーという天職を見つける」という成長が描かれていたのに対し、彼女だけは姿を見せないままでしたからね。  やはり本作の主人公はマックとテディの二人であり、彼女はその中に割って入る事が出来ないまま終わってしまったんだな……と思えてしまいました。   不満点は他にもあって、前作ラストにて「仲間のハグ」をして和解したはずのマックとテディが、何故か再び仲違いしてるのも、如何なものかと。  その後、二人は前作以上に仲良くなるのだから、その為に必要な前振りだったのかも知れませんが「前作のラストを台無しにされた」感もあったりして、どうにも受け入れ難いんですよね。  こう言っては何ですが、あまり必然性が感じられませんし、これなら「1と違って2では、ずっと仲良し」という設定にしても良かった気がします。   前作に比べると、隣人と決定的な対立に至る理由が「パパを呼ばれたから」っていうのも弱いですし、終盤でキーアイテムになるエアバックの伏線が分かり難いのも気になります。  特に後者に関しては、前作を未観賞の場合「なんでエアバック?」と思っちゃいそうだし、もっと丁寧に描いて欲しかったですね。  例えば、テディに「アンタ達のせいで俺は逮捕された」と言われた際「君が仕掛けたエアバックの悪戯のせいで、俺は怪我した」とマックが言い返すとか、そんな感じでも良かったでしょうし。  そうやって、序盤の段階で分かり易く説明しておけば、終盤にエアバックを使おうと言い出した際に、もっと盛り上がれたんじゃないかなって思います。  「男性主体のフラタニティと違って、女性主体のソロリティはパーティーを開けない」という理不尽さに対するウーマンリブ運動のような流れも、男性の自分としては今一つピンと来なくて、ノリ切れず仕舞いでした。   翻って、良かった点はといえば……やはり、テディのキャラクターが挙げられそうですね。  元々自分は前作を観た段階で「マックよりもテディの方が魅力的だ」と感じていたのですが、2を観てもその感覚が揺らがなかったのは、何だか嬉しかったです。  友達が社会的に成功している中で、自分だけが取り残されている寂しさとか、同居していた親友が結婚して、家から追い出されてしまう悲しさとか、凄く感情移入しちゃうんですよね。  友人の前では強がって、笑顔で別れたけど、その後に裸足で外に飛び出し、泣きながら走り続ける場面なんて、特にお気に入り。  そんな落ちこぼれのダメ人間なはずのテディが、学生グループのリーダーとしては極めて優秀であり、シェルビー達をアシストして「出来る男」っぷりを見せ付けていく流れなんかも、実に気持ち良かったです。  年齢やら性別やらがキッカケとなり、結局シェルビー達とは別れてしまい、ラドナー夫妻の家に居候する事になって、テディもまた「家族の一員」に加わる流れも、凄く好き。   その他、前作では赤ん坊だったステラが成長して幼女になっているのも、微笑ましくて良かったですね。  シェルビー達が大金を手にして、家を二件借りる事になり、ラドナー夫妻に大家になってもらうという完璧な和解エンドを迎えたのも、意外性があって良い終わり方。   総評としては、前作には及ばないまでも、充分に「好きな映画」と呼べそうな……そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-09-18 07:41:47)
139.  ネイバーズ(2014) 《ネタバレ》 
 バットマンといえば「クリスチャン・ベール」世代なテディと「マイケル・キートン」世代なマックとが仲良くなって、喧嘩して、仲直りするという、とても楽しい映画です。   一応、本作の主人公がどちらかといえば、太り気味のオジサンなマックとなるはずなのですが……自分としては、マッチョな若者のテディの方に感情移入しちゃいましたね。  大学では皆のリーダーでも、社会に出たら学力不足の落ちこぼれに過ぎない。  成績優秀な親友だけが立派な会社に就職して、自分は取り残されてしまう。  そんな若者特有の切なさを、ザック・エフロンが鮮やかに演じ切っており、敵役であるにも関わらず共感を抱かせてくれたんだから、お見事でした。  「赤ん坊が生まれた結果、若い頃のようにパーティーに参加出来なくなったマック達は、テディの事が羨ましかった」 「テディはマック達のような大人になりたくなかったから、現実逃避の意味を込めて嫌がらせしていた」  等々、作中に出てきた「心理学を専攻している学生」よろしく「両者の対立の原因」について推理するのも楽しいのですが……  そういった難しいアレコレを考えなくても、シンプルに面白い映画だったと思いますね。   とにかく分かり易く、丁寧に作られており、序盤で(この二階に置いてある花火が伏線なんだろうな……)と思ったら、本当にそうだったりするのが気持ち良い。  視覚的にも派手な「エアバックの悪戯」には笑っちゃったし、デニーロの物真似をはじめとして「元ネタを知らずとも面白いし、知っていたらニヤリと出来ちゃう」小ネタが散りばめられているのも、楽しかったです。   それと、これが一番大事だと思うんですが、本作は序盤にてテディとマックが意気投合する描写に、ちゃんと説得力があったんですよね。  大人になりきれない二人が、世代の壁を越えて「男友達」になる一夜を、丁寧に描いている。  だからこそ、観客としても(この二人は本来、物凄く気の合う奴らなんだ)と理解出来る訳だし、ラストにて二人が「仲間のハグ」を行うハッピーエンドも、笑顔で祝福する事が出来たんだと思います。   テディが仲間を庇って逮捕される場面では、ちょっとした感動を味わえたりもして、程好いサプライズ感があったのも嬉しかったですね。  楽しい映画だし、それ以上に、好きなタイプの映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2019-09-18 07:37:21)(良:2票)
140.  ロマンティックじゃない? 《ネタバレ》 
 作中にて幾つかのラブコメ映画の名前が挙げられている訳ですが、その殆どを観賞済みな身としては、とても面白かったです。   主演のレベル・ウィルソンは太っているけど、美人でチャーミングな存在だし「ラブコメとしての見栄え」という点を考えても、充分に満足出来るキャスティング。  それに対し、彼氏役のアダム・ディヴァインも「美男子ではないけど、愛嬌があって優しい男」を好演しており、凄くバランスが良かったと思います。  「単純な美男美女ではないけど、魅力的な主人公カップルの映画」という形であり、作中で「美男美女が織りなす、王道なラブコメ映画」をパロっている事と併せて考えても、非常に相性の良い組み合わせだったんじゃないかと。   仕事中にラブコメ映画ばかり観てる同僚のホイットニーに、アパートの隣人なゲイ男性など、脇役がキュートなキャラクター揃いだった点も嬉しい。  この「キュートな脇役」達の中に、後に本命彼氏となるジョシュが自然と紛れ込んでいる形なので、お約束のはずの「親友と結ばれるエンド」に関しても、適度な意外性を味わえたんですよね。  「親友のジョシュを愛するべき」→「いいえ、やっぱり本当に愛すべきなのは他人ではなく自分」という、自己啓発的なエンドかと思わせておいて「でも、やっぱりジョシュが好き!」という三段仕掛けオチになっていたのも、上手い構成だったと思います。   ただ、終わり方に関しては「脱け出したと思ったラブコメ映画の世界から、実は抜け出せていない」というオチにも思えてしまい……そこが、ちょっと気になりましたね。  「汚い言葉を使おうとするとピー音が入る」という伏線があった為、ヒロインが汚い言葉を使えるようになったのは、現実世界に戻った証だとも思えるのですが、最後の歌って踊る展開は完全に「ラブコメ映画の世界」そのままなんです。  推測するに、ヒロインが迷い込んだ世界は「PG13指定の、健全なラブコメ映画」で、元いた世界は「大人向けの、普通のラブコメ映画の世界」だったと、そういう事なのでしょうか?  自分としては「結局ラブコメの世界から抜け出せていない」というバッドエンドではなく「実は元々ラブコメ映画の世界にいて、それに気付いていないだけだった」という、ハッピーエンドなのだと思いたいところです。   それと、本作は「王道なラブコメ映画」をパロってるというか、茶化して馬鹿にしているようなテイストもあるんだけど、そんな「王道なラブコメ映画」らしい場面を、ちゃんとロマンティックに、魅力的に撮っているというのがポイント高いんですよね。  ゲイの隣人にスクーターに乗っけられ、出勤する場面なんかは凄くオシャレだったし、音楽の使い方なんかも洗練されてる。  花びらに書かれた電話番号を繋げてみせる場面には感心しちゃったし、夜のアイス屋に忍び込んで二人で盗み食いする場面なんかも良い。  「君の目には愛が映らない」というジョシュの台詞には切なくなったし、窓の外の広告に見惚れてばかりいると思われた彼が、本当はずっとヒロインを見つめていたんだと分かるシーンも、実にロマンティック。   つまり「ラブコメをパロった映画」としての面白さと共に「王道なラブコメ」の魅力も同時に味わえる形になっている訳で、これは非常にお得感がありましたね。  皮肉な目線を備えつつも、ちゃんと「ラブコメを愛する気持ち」があるからこそ作れた映画なんじゃないかな……と、そう思えました。
[インターネット(吹替)] 7点(2019-09-18 03:49:12)(良:1票)
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