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 > かたゆき さんの口コミ一覧。9ページ目
かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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161.  ケイト 《ネタバレ》 
大都会・東京の裏社会で暗躍する凄腕の殺し屋、カイト。引退を決意した彼女が最後に挑む任務をハードに描いたサスペンス・アクション。ハリウッド・スターのウディ・ハレルソンが出演し、日本からは海外でも活躍する浅野忠信や國村隼が出演しているということで今回鑑賞してみました。率直な感想を述べますと、まー、ダメな映画でしたね、これ。『96時間』風のシリアス路線でいきたいのか『ジョン・ウィック』風のコミカル路線でいきたいのか、最後まで軸がブレブレで何とも中途半端。「今時これはないだろ!!」っいうアメリカ人が思い描くトンデモ日本描写もまぁ狙ってやってるのは分かるんですけど、振り切れてないから全然笑えないし、マジで見る分には寒すぎる。冒頭のやくざに追われた主人公が公道から車を盗むシーンなんて、わざわざ一番ど派手なヤンキー車をチョイスするというバカっぷり。何度も繰り返されるブーンブーンレモンのくだりもしつこいうえに終始すべってましたし。クライマックスなんてグダグダでもう見れたもんじゃありません。完全なる実力派の無駄遣い映画でありました。トホホ。
[インターネット(字幕)] 3点(2021-10-29 07:23:01)
162.  THE GUILTY ギルティ(2021) 《ネタバレ》 
ここは、ロサンゼルス各地からかかってくる911コールを一手に引き受ける緊急通報センター。自らのデスクで今日も業務にいそしむ彼の名は、ジョー・ベイラーだ。数日前に発生した大規模な山火事により、その日はいつもよりも通報が多くもう目が回るような忙しさだった。ようやく勤務が終わるというその時間に彼はある一本の通報を受ける。「私の名は、エミリー。今、元夫の車に拉致され何処かへと向かっている。私、このままじゃ殺される、お願い、助けて」――。明らかに切迫した彼女の悲痛な声に、ジョーは運転しているであろう夫に悟られないよう慎重に言葉をかける。警察と連携を取り、すぐさま発信元である高速道路へとパトカーを向かわせるジョー。ここで彼の仕事は終わったはずだった。だが、自らも幼い娘を抱える彼は、携帯の登録情報から彼女の実家へと電話を掛けてみる。電話に出たのはエミリーの幼い子供だった。詳しく話を訊いてみても、血だらけのママが父親に連れ去られたと泣き叫ぶだけ。さらにはまだ赤ん坊の弟までナイフで刺されて血だらけになっているという。どう考えても異常な事態。居ても立ってもいられなくなった彼は、現場の警察とは別に独自の行動を取るのだが……。緊急通報センターという閉じられた空間を舞台に、主人公であるオペレーターとあとは電話の向こうにいる幾人かの人々とのやり取りのみで描くという挑戦的なスタイルでスマッシュヒットを飛ばしたデンマーク製サスペンスをリメイクしたという本作、監督は男臭いエンタメを得意とするアントワン・フークワでしかも人気実力ともに今一番脂ののっているベテラン俳優ジェイク・ギレンホールが主演を務めております。ちなみに僕はオリジナルの方は鑑賞済みで、そのワンシチュエーションな設定ながら練られた脚本の力で最後まで見せきったなかなかの佳品だったので、今回楽しみに鑑賞してみました。結論を言うと、ほぼオリジナルに忠実なリメイクでしたね、これ。状況設定もお話の展開も最後のあっと驚くどんでん返しも。なので新たな驚きはなかったのですが、やはり見どころは主役を務め、ほぼ最後まで独り芝居を披露したジェイク・ギレンホールの熱演でしょう。オリジナルで主役を演じた方も決して悪くはなかったのですが、ハリウッドの第一線で子役の頃から何十年もキャリアを積んできた実力派はやはり違いますねぇ。最後までぐいぐい惹き込ませる素晴らしい熱演でした。特に最後、自らの過ちに気づいた彼の真に迫った表情には圧倒されるものがあります。新たに追加された山火事設定がいまいち活かされていなかったのがちょっと気になったけど、なかなか見応えのあるサスペンス・ドラマの逸品でありました。お薦めです。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-10-22 21:13:35)
163.  ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 《ネタバレ》 
離婚のショックから広場恐怖症を患い、以来狭い一軒家でずっと閉じこもって暮らす児童心理学者のアナ。愛する一人娘とも離れ離れとなってしまった彼女の唯一の心の慰め、それは向かいの家につい最近越してきた家族を夜な夜な覗き見ることだった。窓の隙間から双眼鏡を使い、そのラッセル家の赤裸々な日々をじっと見つめる歪な毎日。ラッセル家はそんなことなどつゆ知らず、彼女の元へと挨拶にやってくる。まるで初めて会ったかのように気さくに話し込むアナ。特に妻ジェーンとは夜中まで酒を酌み交わすほど意気投合するのだった。それでもアナは夜ごとカーテンの隙間から彼らの生活を覗き見ることを止められない。そんなある夜、アナは恐ろしい出来事を目撃してしまう――。なんとジェーンが夫との口論の末に刺し殺されてしまったのだ。動揺しながらも、すぐに警察へと通報するアナ。だが、ラッセル家を訪れた警察はそのような事実は確認できなかったと彼女に告げるのだった。さらには別の女性をジェーンだと言い張る夫も現れ、彼女の証言は誰にも信用されないまま警察は帰ってしまう。到底納得いかないアナは、部屋の中から独自に調査を開始する。ネットや電話を使い、夫の私生活を執拗に追ううちに彼こそが真犯人だという確信を深めてゆくアナ。ところが、彼女自身の心にも忘却の彼方へと押し込んでいた深い闇が潜んでいて……。引きこもりの孤独な中年女性がたまたま残虐な殺人事件を目撃したことによって、悪夢のような世界へと迷い込むサスペンス・スリラー。というなかなか古典的な設定の作品なのですが、何度もオスカーの栄誉に輝くジョー・ライト監督の作品ということで今回鑑賞。しかも同じくオスカー俳優のエイミー・アダムスとゲイリー・オールドマン、そしてジュリアン・ムーアが豪華共演というのですからこれは観ないわけにはいきますまい。この布陣からも分かる通り抜群の安定感で、最後までぐいぐい引き込ませる良質のエンタメ作品に仕上がっておりました。舞台はほとんどこの狭い家の中のみで登場人物も限られているのに手を変え品を変え、最後までこの緊張感を途切れさせずに見せきったのは素直に素晴らしい。ヒッチコック風の古典的なサスペンスでありながら、そこにSNSやGメールといった現代のアイテムをさりげなく盛り込む手腕もお見事。中盤に明かされる主人公の衝撃の過去もまぁベタではありますけども、エイミー・アダムスの真に迫った演技により惹き込ませます。肝心のことの真相が若干強引でしかも後味がいまいち良くないのが残念ではありましたけれど、僕は充分楽しめました。お薦めです。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-10-16 02:30:22)
164.  アーミー・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
感染した人々が次々とゾンビになるという謎のウィルス蔓延により、完全に崩壊してしまった眠らない街、ラスベガス。華やかなショービジネスの世界も人々の欲望渦巻くカジノも男と女の駆け引きが繰り広げられる夜の街も全て、人間を喰らうゾンビたちによって阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった。慌てふためいた政府はとにかく感染を食い止めるため、街全体を強固なバリケードで封鎖してしまう。何とか解決策を探る政府だったが、何一つ有効な方法を見出せぬまま、やがて苦渋の決断を下すのだった。それは、小型の核ミサイルで街そのものを吹き飛ばすこと――。刻一刻とその時が迫る中、かつてその街から逃げ出した元傭兵スコットの前に謎の男タナカが現れる。「カジノの地下にある巨大金庫に残された2億ドルを回収してくれないか」。そんな無謀ともいえる依頼を口にするタナカ。だが、今は疎遠になっている娘のためにスコットはその依頼を引き受けるのだった。命知らずの仲間たちを集め、着実に計画を練ってゆくスコット。タイムリミットは、核ミサイル投下までの32時間。意を決してバリケードの中へと乗り込んだスコットたちだったが、そこには彼らの予想を上回る敵が待ち構えていたのだった……。独自の映像センスで唯一無二の作品を撮り続けてきたザック・スナイダー監督の最新作は、そんな『ドーン・オブ・ザ・デッド』以来となる本格的なゾンビ・サバイバル・アクションでした。いやー、相変わらずこの人の映像への拘りは凄いですね~。ウィルス流出(原因はドライブ中にフェラーリしてたバカップル!笑)からゾンビ大量発生、そしてラスベガス崩壊への下りを冒頭10分でサクサク見せるシーンなんてセンス抜群でテンション上がりまくり!!とにかくこの映像とアクションを見せるために用意されたシンプルすぎる脚本も潔くて大変グッド。反発しあってた父子がひょんなことから一緒にゾンビ渦巻くラスベガスへと乗り込むことになるシーンなんて、あまりにもベタで思わず笑っちゃいましたわ。他のメンバーも男勝りの女傭兵から、チェーンソーを振り回す黒人マッチョ、金庫破りしか出来ない軟弱男、ヘリの操縦にしか興味がないイカれたパイロット、お調子者のユーチューバー、そして何処か信用しきれない依頼主からの同行者ともはやジャンプ並みの分かりやすさ。彼らがゾンビたちをバチクソに殺しまくるシーンはキレッキレでもうサイコーでした。対するゾンビの皆様も知能を持った王と女王にゾンビ化したホワイトタイガーと誰もがキャラ立ちしまくってます。考えてみれば、ゾンビに支配された街へと金を取り返しに行くというこの設定も結構新しいですね。まあストーリーに深みなんて全くありませんが、切れのいいアクションとど派手なバトルシーンを観ているだけで140分あっという間に過ぎ去ってましたわ。うん、やぱサイコーだぜ!ザック・スナイダー!!8点!!
[インターネット(字幕)] 8点(2021-10-11 06:00:20)
165.  ザ・ハント(2020) 《ネタバレ》 
ある日、目が覚めると何故か知らない森の中にいた12人の男女。口には猿ぐつわを嵌められ、身分を証明できるようなものは全て没収、携帯も何もない状態で放置された彼ら。戸惑いながらも開けた場所へとやって来た彼らに突然、今度は何の前触れもなく銃弾が浴びせかけられるのだった。さらにはいたるところに仕掛けられた罠、張り巡らされた有刺鉄線、どこまでも追いかけてくるドローンなどが彼らを追い詰める。無慈悲にも次々と命を落とす仲間たち。果たしてこれはなんなのか?彼らを〝ハント〟してくる奴らは何者なのか?そして、彼らと一緒に放置された服を着せられたブタには何の意味があるのか?ある日突然、不条理な事態に放り出された何の関係性もない12人の男女と彼らを執拗に付け狙うハンターとのバトルをノンストップで描いたバイオレンス・アクション。冒頭から容赦なく描き出される残虐描写の連続にまず戸惑わされました。当然のように飛び散る血液、吹き飛ぶ肉片、思わず目を背けたくなるような痛々しい暴力の嵐……。主人公だと思われた人物が次々と虫けらのように殺されてゆくのを見て、正直鑑賞を後悔したほどなんですけど、本当の主人公が登場したあたりからがぜん面白くなります。なるほど、これは全てこの主人公の反撃のカタルシスを見せるための前振りだったのですね。確かにこの反吐が出そうになるほど酷いハンターを次々と血祭りにあげてゆく主人公の登場にはだいぶスカッとさせられました。いやー、なかなか巧い脚本と演出だったんじゃないでしょうか。まぁストーリーなんてあってなきが如しなんですけど、全体的に新保守主義とリベラルの対立という現代アメリカの深刻な政治状況を揶揄する内容になってるのも面白い視点だと思います。最後の主人公とラスボスとの最終決戦なんて、そんな政治的な対立も結局は殴り合いで解決しちまえという如何にもアメリカンな感じもシニカルでナイス!!ラストの主人公の行動はさすがにやりすぎ感はありましたけど。監督は、結局エロとグロを描きたいだけなのにそこに妙に政治的主張をぶっこんでくる作風が僕にはどうにも印象の良くなかったクレイグ・ゾベル。でも、今回はその趣味の悪さがいい方向に向いたようです。うん、なかなか面白かった。まぁ次はまたどうなるか分かんないですけどね。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-02 03:00:53)
166.  幸せへのまわり道(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フレッド・ロジャース。アメリカで30年以上にわたり人気を博してきた子供向け長寿番組で、ずっとMCを務めてきた名司会者だ。優しい語り口と明るい歌声、そして何よりあくまで子供の視点に立ったスタンスで幅広い世代から親しまれてきた。そんな彼はある日、とある社会派ジャーナリストから取材を受けることに。ロイド・ボーゲルと名乗る彼は、早速フレッドの仕事場であるテレビのスタジオへとやってくる。だが、彼は明らかに顔面を殴られた痣があり、何とも不機嫌な様子で早く取材を終わらしたがっていた。いたく興味を惹かれたフレッドは、逆に彼に質問を浴びせかける。聞き出してみると、なんと彼は姉の結婚式で久しぶりに会った実の父親と激しい口論となり、殴り合いにまで発展してしまったのだという。取材はそのまま終わったものの、彼のことが気になったフレッドは後日、取材の延長ということで彼と再び会うことに。子供のように純粋な好奇心から話を聞くフレッドに、ロイドは淡々と語り始める。父が過去、幼かった自分と病弱な母を残し、他の女の元へと逃げ出してしまったことを――。実話を元に、アメリカでもっとも有名な人気司会者と家族との確執を抱えた中年ジャーナリストとの交流を暖かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。アメリカでは知らない人はいないとも言われるそんな人気司会者を演じるのはベテラン俳優トム・ハンクスで、なんと20年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたということで今回鑑賞してみました。というか、そんなに久しぶりのノミネートなんですね。なんか毎年受賞してるくらいのイメージだったんですけど、それは僕の思い込みでした。確かに長年のキャリアに裏打ちされたであろう彼の演技は抜群の安定感で、このフレッド・ロジャースという人物を知らない僕でも「ああ、確かにこの人は長年多くの人に親しまれたんだろうなぁ、こんなに大らかで見ているだけで癒される人は滅多にいないだろう」と思わせるほどの説得力がありますね。そんな彼が、ある日偶然出会った短気で偏屈な中年男の心を徐々に開いてゆくというのはベタですけど、なかなか面白かったです。特に、この大らかな人物の周りの人が「あれで昔は短気だったのよ」と語らせるとこもさりげなくて巧い。全体的に子供向け番組のような演出を差し挟んでくるのもそこまで違和感なく、逆にこの地味なお話を魅力溢れる物語へと昇華させることに成功している。うん、観終わるころにはほっこりしている自分がいましたわ。まぁお話としてはあまりにもストレートで若干パンチに欠ける気がしなくもないですが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。監督は、前作でもそんなうまくいかない人生に疲れた人たちを終始暖かな目線で見つめたマニエル・ヘラー。この人の作風は僕の好みと合うようなので、これからも追いかけていこうと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2021-10-01 07:02:29)
167.  レフト 恐怖物件 《ネタバレ》 
若手人気女優を妻にもち、可愛い盛りの一人娘にも恵まれた、裕福な資産家中年男性が、とある民泊に泊まったことによって不条理な世界へと迷い込む姿を描いたホラー。主演は、個性派俳優ケビン・ベーコンと人気女優アマンダ・セイフライト。まあやりたいことは分かるんですけど、演出の切れがいまいちだったかな。何とも間延びした展開の連続に終始睡魔が……。でも、後半からのまるでこの主人公の精神世界を表したかのような迷宮的映像はなかなかスタイリッシュでそこは見応えありました。ま、そんな感じです、はい。
[DVD(字幕)] 5点(2021-09-28 01:42:32)
168.  ウルフ・アワー 《ネタバレ》 
1977年、記録的な猛暑によりうだるような熱気に包まれたニューヨーク。新進気鋭の女流作家ジューン・リーは、処女作がいきなりベストセラーとなったものの、自らの家族をモデルとしたとされるそのスキャンダラスな内容により賛否両論を巻き起こし、以来プレッシャーから二作目を書けずにいた。そればかりか世間の目を恐れるあまり、ブロンクスの狭いアパートの一室に引きこもり、一歩も外に出られなくなってしまう。買い物も近所のスーパーの店員に届けてもらい、ゴミも窓から捨てるような徹底ぶり。しかも外の世界では女性ばかりを狙った連続殺人鬼が暗躍し、不満を訴える市民が今にも暴動を起こしそうになっている。部屋の掃除すらままならず、貯金もあとわずかで底を尽きそうに。追い打ちをかけるように、謎の人物が何度も部屋のインターフォンを鳴らしてくるのだった。そんな内外の不安要素に心が押しつぶされそうになりながらも、新作執筆のためにタイプライターへと向かう彼女だったが…。引きこもりの女性作家のそんな極限状況を乾いたタッチで見せる密室劇。制作・主演を務めるのは演技派として名高いベテラン女優、ナオミ・ワッツ。ほぼ彼女の一人芝居となる本作、舞台もほとんどこの薄汚れたアパートの一室のみなので、お話としては非常に単調になってしまいがちなのは自明の理。なので作品としてのカギとなるのは、監督の演出力だと思うのです。ところがこれがどうにもショボい。ずっと思わせぶりなだけで大して深みもないエピソードが延々続き、正直僕はあくびが止まりませんでした。こういうのってあくまでリアルに徹して脚本の力で見せきるか、それかもっとシュルレアリスム風の不条理劇に振り切るかだと思うんですけど、それもどっちつかずで何とも中途半端としか言いようがない。最後のオチなんていかにも取ってつけたようでもう呆れてしまいましたわ。相変わらずのカメレオン女優ぶりを発揮した、ナオミ・ワッツの熱演に+1点!
[DVD(字幕)] 4点(2021-09-24 17:30:33)
169.  ロックダウン(2021) 《ネタバレ》 
コロナ禍による都市封鎖――いわゆるロックダウン中のロンドンを舞台に、高級ダイヤを強奪しようと企む男女を終始軽快に描いたクライム・サスペンス。監督は、ハリウッドのエンタメ映画界を牽引するダグ・リーマン。主演には、人気女優アン・ハサウェイをはじめ、ベン・キングズレーやベン・スティラーといった新旧実力派俳優。新型コロナウィルス蔓延という未曽有の危機に直面し映画製作そのものがストップするなか、その危機を逆手にとって実際にロックダウン中のロンドンで撮影を決行したという本作、大変興味深く今回鑑賞してみました。なのですが、いや、これは正直アカンでしょ。倦怠期を迎えた同棲中のカップルがひたすら口喧嘩を繰り返し、そこにたまにズーム会議の映像が差し挟まれるだけというストーリーもへったくれもない展開が延々続き、もう退屈で退屈であくびが止まんなかったです。最後の方でダイヤ強奪ミッションがようやく開始されるわけですが、これもまたさっぱり面白くない。ロックダウン中の撮影ということでなかなか大変だったというのは分かるけど、さすがにこの出来なら中止した方が良かったんじゃないでしょうか。コロナ禍で撮影そのものが困難となり、ここ最近は公開される作品が明らかに減少している映画界。それでも頑張って良い映画を創ろうというスタッフたちの矜持には素直にエールを送りたいんですけどね。早くコロナが収まって、これまで通りお金と人材をアホほどかけて制作されたハリウッド超大作が普通に公開されることを願うばかりです。
[DVD(字幕)] 2点(2021-09-03 03:00:08)
170.  ストレイ・ドッグ(2018) 《ネタバレ》 
17年前のとある事件がきっかけで心を病み、以来酒に溺れ荒んだ生活を送ってきた女性刑事エリン。ロサンゼルス市警内でもお荷物扱いされ、夫とも離婚、16歳の一人娘からも嫌われ、生きる希望も見失いかけた彼女はただ刹那的に日々を生きていた。そんな折、エリンの元に差出人不明の一通の封筒が届く。中に入っていたのは、紫色の塗料で染められた、一枚の薄汚れた紙幣だった。そしてそれは、17年前に封印したはずの忌まわしき記憶を彼女によみがえらせるのだった――。17年前、エリンはFBI捜査官であるパートナーのクリスとともに、とある犯罪組織内で潜入捜査任務にあたっていた。だが、そこで彼女は取り返しのつかない失敗を犯し、犯罪組織のボスであるサイラスを取り逃してしまったのだ。そしてその紙幣は、以来潜伏生活を続けていたサイラスが再び、現役復帰を果たしたことを宣言するものだった。17年前の忌まわしき記憶にけりをつけるため、エリンは執念の捜査を再開するのだが……。オスカー女優ニコール・キッドマンが、過去の記憶に苦しめられ酒浸りの生活を送る刑事役を熱演し、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたクライム・サスペンス。全編に横溢する、このひりひりとした緊張感はなかなかのものでした。過去と現在を行き交いながら描かれるストーリーも全く先が読めず、最後まで飽きさせません。特に中盤辺りで突発的に開始される銀行強盗のくだりは、非常にサスペンスフルで見応え充分。大胆な老け顔メイクを披露したニコール・キッドマンもなかなかの熱演ぶりで、回想シーンの美しかった時との激しい落差がより、この女刑事の悲哀を浮き彫りにさせている。そして、クライマックスで明かされる主人公の衝撃の過去…。と、クライム・サスペンスとしては充分面白かったのですが、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。現代と過去の銀行強盗パートがさすがに都合よく行き過ぎる。ここまで大胆な行動を取った主人公をほっとく警察署は明らかに無能すぎだし、事故を起こした逃走車の近くにあるごみ箱を調べない鑑識も不自然。冒頭の殺人事件が実は…となるミスリードもイマイチ効果を発揮していない。と、そこらへんに不満は残るものの、総じて満足度は高い。なかなか密度の濃い犯罪劇の佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2021-08-21 02:07:33)
171.  カポネ 《ネタバレ》 
暗黒街の顔役として史上最も恐れられたギャングスター、アル・カポネ。だが、その晩年は長かった刑務所生活と梅毒による記憶障害、そして肉体的な衰えとで非常に寂しいものだった。本作は、そんな彼の知られざる最晩年を描いたもの。かつて残虐非道なギャングたちのボスとして恐れらたもの、今や下の世話も自分でできずおしめが手放せなくなるほど衰えた彼を演じるのは、人気俳優トム・ハーディ。という訳で今回鑑賞してみたのですが、正直微妙な出来でしたね、これ。ストーリーなんてほとんどあってなきが如し、ただひたすらボケ老人の妄想に付き合わされただけの二時間弱でした。こういうのって普通、全盛期のかっこいい主人公の姿を回想シーンで描くなりすれば、より衰えた現在の悲哀が浮き彫りになるものだけど、予算の都合か本作はずっと落ちぶれてしまった主人公の今を描くのみ。それもことあるごとに漏らしちゃったり、妄想から暴言を吐きまくったりでまったくもって不愉快というしかありません。クライマックスで主人公がいきなりマシンガンをぶっ放すのもやはり妄想で、「結局だからなんやねん!」と思わず突っ込んじゃいましたわ。ありきたりの伝記映画にはしたくなかったのか知れませんが、どうにも退屈と言わざるを得ない内容でありました。悪夢のような妄想シーンに若干センスを感じたのと、トム・ハーディの熱演に+1点。
[DVD(字幕)] 5点(2021-08-16 23:38:05)
172.  ザ・ビースト(2019) 《ネタバレ》 
彼の名は、フランク。世界を股にかけて希少動物や人気動物を捕えては動物園などに売り飛ばす猛獣ハンターだ。今回ブラジルの熱帯雨林へと赴いた彼は、思いがけない大物を捕えることに成功する。それは全身キレイな白い毛で覆われたホワイトジャガー。アメリカ本国へと持ち帰ってその筋のルートへと売り飛ばせば莫大な金が手に入るのは明らかだった。頑強な檻に閉じ込めたジャガーとともに意気揚々と巨大タンカーへと乗り込んだフランクだったが、そこで予想だにしない事態に見舞われるのだった――。精神に異常をきたした元米軍特殊部隊員で冷酷な殺人鬼であるラフラーをアメリカへと護送するために、連邦捜査官たちが乗り込んできたのだ。嫌な予感を感じながらもタンカーで大海原へと乗り出すフランク。彼のそんな懸念は見事的中し、ラフラーは見張りの隙を突いて易々と船内へと逃げ出すのだった。恐ろしいことにラフラーは、船内の檻に閉じ込められていた獰猛な猛獣たちまで開放してしまう。当然そこには狂暴なホワイトジャガーも含まれていた……。果たして彼らの運命は?巨大タンカーの密閉された船内で、逃げ出した凶悪犯のみならず猛獣たちにまで追い詰められる船員や捜査官、そして荒くれ者の猛獣ハンターたちのサバイバルを描いたパニック・アクション。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演で送る、いかにもB級なそんな本作、あまり期待せずに今回鑑賞してみました。まあいつものニコラス・ケイジ印の低予算・低クオリティの内容でしたね、これ。とにかく演出のキレが悪い!逃げ出したレクター博士もどきのサイコな殺人犯とホワイトジャガーをはじめとする猛獣たちにダブルで襲われるというのが本作の売りなんでしょうけど、どちらもまあショボい。出っ歯の殺人犯なんてとても元凄腕の特殊部隊員に見えず小者感が半端ないし、ホワイトジャガーのCGも今どきびっくりするくらいの低クオリティ。こいつらが同時に襲って来たってスリルが倍増するどころか逆に相乗効果でよりショボくなっちゃってます。なので、最後まで全く盛り上がらないままダラダラと終わっちゃいました。ま、いつものニコケイブランドの映画って感じです。
[DVD(字幕)] 4点(2021-08-09 05:39:15)
173.  ソニック・ザ・ムービー 《ネタバレ》 
超高速ハリネズミ、ソニックの大冒険をCG満載で描いたアクション・アドベンチャー。基になったゲームは全くやったことはないんですけど、ジム・キャリーが出ているということで今回鑑賞してみました。まあこんなもんじゃろという感じの内容でしたね、これ。可もなく不可もなくの安定の定番エンタメ。面白いっちゃ面白いけど、心に残るものはあんまないです。ただ、主人公のソニックが猛スピードで大都会を駆け巡るシーンは爽快感抜群で、それを観るだけでも充分楽しめます。ま、ストーリーに関してはこの際どうでもいいんじゃないでしょーか。
[DVD(字幕)] 6点(2021-08-03 00:00:21)
174.  ソング・トゥ・ソング 《ネタバレ》 
アメリカの音楽業界に生きる4人の男女のそれぞれの愛の形を美しい映像の中に描き出すヒューマン・ドラマ。監督は、唯一無二の作風でハリウッドでも独自の地位を築き上げた、テレンス・マリック師匠。正直、僕はこの人の芸術と退屈の狭間をゆく「分かる人にだけ分かってもらえればいいんだよ」とでも言わんばかりの唯我独尊的作風が大嫌いで、毎回観るたびに「もうこいつの映画は二度と観まい!」と決意するんですけど、悔しいことに出演俳優だけはむちゃくちゃ豪華なんですよね。本作も、マイケル・ファスベンダーやライアン・ゴズリング、ルーニー・マーラやナタリー・ポートマン、さらにはケイト・ブランシェットやヴァル・キルマー、果ては昔懐かしのイギー・ポップまで出てるんですから、もうそりゃ観ないわけにはいかないですわ、悔しいですけど。それにこんな新旧実力派が揃えば新たな化学反応でも起きて、もしかしたら面白くなってるかも知れないですし。んで、結果は……、うん、いつものテレンス・マリック節でした(笑)。随所に挿入される意味があるのかないのかさっぱり分からない観念的で独り善がりなモノローグ、ただキレイでお洒落ってだけで全く心に残らない映像、ストーリーなんてあってなきが如しひたすら雰囲気ごり押しで最後までダラダラ続く退屈極まりない脚本…、これらの合わせ技が波状攻撃となり、観客の睡眠中枢へと容赦なく襲い掛かってきます。いやー、これを最後まで眠くならずに観れる人って凄いです。「もうこいつの映画は二度と観まい!」と今度こそ誓う僕なのですが、これでまた豪華なキャストが揃ってたらまた観ちゃうんだろうな……。ホントもう勘弁してください(笑)。
[DVD(字幕)] 3点(2021-07-20 02:00:50)(良:1票)
175.  カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 《ネタバレ》 
都会の喧騒を逃れ、アメリカ郊外の田舎町へと越してきたガードナー家。納屋で飼っているアルパカが生きがいの父ネイサンに、神経質な母親やオカルトに嵌まっている長女、そして二人の息子たち。彼らは皆、それなりに幸せな日々を過ごしていた。だが、そんな家族の平凡な日常はある夜を境に一変する。紫の光を放つ謎の隕石が、自宅の裏庭へと墜ちてきたのだ。強烈な悪臭を放ち、禍々しい光を発するその隕石は恐らく宇宙の彼方からやって来たに違いなかった。当初はテレビの取材を受けたり、町の噂の的になり浮かれていたガードナー家だったが、やがて不可解な出来事が周りで多発するようになる。突然変異した紫色のカマキリ、無意識のうちに自らの指を切り落としてしまう母親、突如狂暴になるアルパカたち……。果たしてその隕石の正体とは?クトゥルフ神話で有名なアメリカの恐怖小説の巨人、H・P・ラブクラフトの小説をニコラス・ケイジ主演で映画化したというSFモダン・ホラー。この映画、率直に言って全く中身がありません。ストーリーなんてあってなきが如し、ただひたすらグロテスクなホラー描写満載で、ある一家族が徐々におかしくなっていくのが延々と続くだけ。その潔いまでの中身のなさは、観ていて逆に清々しく感じるくらいでした(笑)。その分、グロ描写にはけっこう気合が入ってます。ニンジンをとんとんと切っていた包丁でそのまま指を切り落としちゃうママに始まり、徐々に腕の皮膚がただれてきちゃうお父さん、全身の皮がめくれちゃったアルパカなどどれも生理に直接訴えてくるような嫌なものばかり。特に後半、幼い息子と同化しちゃうママなんて夢に出てきそうなほどエグかったです。もはやお家芸とも言える、ニコラス・ケイジのとち狂った演技もナイスな仕事ぶり。モンスターと化した自分の妻とキスしたときに、ニコケイの唇に糸引いてたシーンはさすがの僕でも「ひえぇぇ」と声が出ちゃいましたわ。うん、そういうものだと割り切っちゃえば、このやり過ぎなぐらいのグロ描写はなかなか良いんじゃないでしょうか。それに古き良きSFを髣髴とさせる紫色のエフェクトも個人的にツボでした。という訳で、僕はぼちぼち楽しめましたです、はい。まぁ完全なるB級ですけどね。あと全体的に長いかな。前半のかったるい部分を削って、もう少し短くしても良かったかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2021-07-05 22:07:01)(良:1票)
176.  マー/サイコパスの狂気の地下室 《ネタバレ》 
女手一つで自分を育ててくれた母親とともにとある地方都市へと越してきた女子高生、マギー。持ち前の明るい性格からすぐに友達もでき、転校から数日後にはクラスのイケてるグループからパーティへと誘われるまでになっていた。そんなある日、彼女は友達と飲む酒を手に入れるために町の酒屋の前で代わりに買ってくれる大人を探してたところ、とある年配の女性と知り合う。スー・アンと名乗るその黒人女性は、それどころか自宅の地下室を自由に使ってもいいと提案してくれるのだった。面倒臭い大人たちの目を避けるために、戸惑いながらもスー・アンの自宅へとやって来たマギーたち。広い地下室で自由に酒を飲み、今という時間を楽しむ彼女たちにスー・アンはこれからいつでもこの地下室を好きに使っていいとまで言ってくれるのだった。夢のようなそんな言葉を素直に受け入れ、友達も呼んで夜な夜なパーティーに浮かれるマギーたち。だが、マギーは知らなかった。彼女が、過去の辛い出来事を機に心を病んでしまったサイコパスであることを――。今どきのティーンエイジャーが、偶然知り合ったサイコパスな女によって恐怖のどん底へと叩き落とされる姿を描いたサイコ・サスペンス。実力派女優オクタヴィア・スペンサーが、そんな心を病んでしまった中年女性を演じているということで今回鑑賞してみました。率直に言って題材は良かったと思うんですよ、これ。何気に豪華な役者陣も、このありがちなストーリーに説得力を持たせることに貢献している。問題は、監督の演出力。雑と言うか稚拙と言うか、映画として面白くなりそうなポイントをことごとく外しているんです。頭空っぽな今どきティーンエイジャーの主人公たちが、最初は親切だと思っていた黒人のおばちゃんに地下室に閉じ込められて……なんて、エンタメホラーとして普通に面白くなりそうなのに、これがちっともそうならない。この監督って、これまでホラー映画というものを観たことがないんじゃないかって疑っちゃうくらいでした。物語の重要なポイントとなる、このサイコパス女性の過去を描く回想シーンの挿入の仕方も恐ろしく稚拙。彼女の足の悪い娘の存在なんて、居る意味あったのかってくらいでした。クライマックスでようやく、このサイコパスな女の暴走が始まるわけですが、これも見せ方があまりにテキトーでさっぱり怖くない。題材はシンプルで良かっただけに、もっとホラー映画を分かった監督に演出して欲しかったですね。
[DVD(字幕)] 4点(2021-07-02 18:00:35)
177.  野性の呼び声 《ネタバレ》 
ゴールドラッシュに沸く19世紀アメリカを舞台に、一人息子を亡くし失意の中に生きていた老人と悪徳業者にさらわれ流転の身となってなってしまった大型犬との友情を描いた冒険ドラマ。主演を務めるのは、大御所俳優ハリソン・フォード。まず特筆すべきなのは、やはり主役となる大型犬を最新のCG技術を駆使して生き生きと描いているところでしょう。鼻の濡れた感じだとか微妙に汚れた毛並みなどもはや本物としか思えません。犬が水から上がってきたときの全身の毛の濡れた質感なんてあまりにもリアル。そんな犬たちが雄大な大自然を背景に躍動的に駆けまわる姿は癒し効果抜群でした。ただ、それに対してお話の方は正直微妙。飼い犬としてのほほんと生きていた主人公バックが突然、弱肉強食の大自然の中に放り出され、様々な出会いと経験を経るうちに逞しく成長してゆくというが本作のおおまかなストーリー。率直に言ってこれがさっぱり面白くない。主人公のバックが大した苦労もないままに困難を易々と乗り越えてゆくものだから、最後まで説得力というものが皆無なのです。それに、郵便物を運ぶためにそり犬となって雪山を駆け抜ける前半部分と老人とともに金脈を求めて山の中へと分け入ってゆく後半部分が全く繋がっておらず、一編の物語としては散漫というしかありません。映像技術的は文句なしに素晴らしかっただけに、もっと脚本を練って欲しかったですね。
[DVD(字幕)] 5点(2021-06-26 02:19:33)
178.  グレタ GRETA 《ネタバレ》 
始まりは、電車の中で拾った小さなバッグだった――。NYの片隅で友人とともにルームシェアをしている若い女性、フランシス。レストランでウェイトレスをしながらそれなりに充実した毎日を過ごす彼女だったが、それでも一年前に病気で亡くなった母のことを未だ引きずっていた。そんなある日、彼女は電車の中に置き忘れられた小さなバッグを拾う。中にあった身分証を確かめてみると、持ち主はグレタという名の初老の女性。たまたま家が近所だったので、フランシスはバッグを返すために彼女の家を訪ねてみる。するとグレタは素直に喜んでくれ、お礼に一緒にお茶でもしないかと誘ってくるのだった。特に断る理由もなかったフランシスは、そのまま彼女の身の上話を聞くことに。愛する夫を亡くし、一人娘もパリへと留学して今はしがない独り暮らしだという彼女に、フランシスは思わず同情してしまう。犬を飼うよう勧めてみたり、一緒に食事をしてみたりと次第に距離を縮めてゆく二人。だが、フランシスは知らなかった。実はグレタは日常的に嘘をつき、しかも娘と同じ年頃の若い女に異常なまでの執着を示すサイコパスであることを……。都会で暮らす平凡な女の子が、偶然知り合った初老の女性に執拗なまでに付き纏われ恐怖のどん底へと叩き落とされる姿を描いたサイコ・スリラー。人気若手女優クロエ・グレース・モレッツとフランスのベテラン女優イザベル・ユペールの豪華共演ということで今回鑑賞してみました。監督は、この手のサスペンス映画を得意とするニール・ジョーダン。率直な感想を述べさせてもらうと、もう全く新味のない最初から最後まで既視感満載のベタベタな内容でしたね、これ。母親を亡くした若い女性が、同じく娘を亡くした女性にストーカーされ、挙句監禁されて強制的に娘代わりにさせられてしまうというお話。それ以上のものはなんにもありません。おまけに話のテンポが悪く、主人公が間抜けな行動を取り続けるので観ていて若干イライラしちゃいました。見所と言えば、やはりベテラン女優イザベル・ユペールの恐怖のストーカーおばさんっぷりかな。神経症資質なサイコパスを見事に演じ切っていて、さすがの貫禄。ショパンのレコードに合わせてダンスを踊りながら、クロエちゃんを痛めつけるさまはなかなか気持ち悪かった。チョンバされた小指の切断面に注射器を刺すシーンはさすがにやり過ぎ感あったけども(笑)。という訳で彼女の熱演に+1点って感じです、はい。
[DVD(字幕)] 5点(2021-06-15 00:30:14)
179.  SKIN 短編 《ネタバレ》 
過激な白人至上主義者である、とある一家族の日常とその崩壊を研ぎ澄まされた感性で見せる短編ドラマ。後にベラ・ファーミガ主演で長編映画化されたものの原型となった作品で、アカデミー短編映画賞を受賞している。先に長編の方を見てからこちらを鑑賞したのだが、こちらはこちらでよく出来ている。と言うか、物語としては正直こちらの方が面白い。黒人を人間とみなしていない差別主義者が、スーパーの駐車場で絡んできた黒人に制裁を加えたことがきっかけでさらわれ、そして全身にあるタトゥーを彫られてしまうというストーリー。まあ単純で荒唐無稽ではあるが、ちゃんと起承転結がしっかりと纏まっているし、オチの切れ味も鋭い。一言で言うなら、世にも奇妙な物語の社会派版といった感じか。なにより素晴らしいのは、この暗鬱な世界観よ。社会に蔓延る闇を冷徹に凝視しながら、それをエンタメへと昇華してしまえるこの監督の手腕は大したものだ。社会派に特化した長編もなかなかのものだったが、次はこの短編のようにエンタメに寄った作品も観てみたいものだ。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:39:20)
180.  SKIN/スキン 《ネタバレ》 
全身に禍々しいタトゥーを彫り込み、常に社会に対して鋭い目を向けるその男の名は、ブライオン。幼いころ親に捨てられ、たまたま白人至上主義団体の代表を務める夫婦に引き取られた彼は、以来ずっとアメリカの白人の権利を守るために生きてきた。黒人やユダヤ人、同性愛者をアメリカから追い出すために、彼は日々、暴力と犯罪に塗れた生活を送っていた。そんなある日、ブライオンは3人の子供たちを女手一つで育てる貧しいシングルマザーと出会う。彼女や子供たちと過ごすうちに彼は生まれて初めて心の安らぎを感じ始めるのだった。「彼女たちと一緒に平穏な暮らしを手に入れたい」――。そう決心したブライオンは、差別主義者たちの転向を手助けしている団体と連絡を取る。だが、人種差別の闇は簡単には彼を手放してくれず、さらには全身に彫られたタトゥーが彼をより一層苦しめるのだった……。実話を基に、全身に禍々しいタトゥーを彫り込んだ白人至上主義者たちの真実を描いた社会派ドラマ。全編に横溢する、この濃厚な空気にとにかく圧倒されてしまった。カギ十字や髑髏などのタトゥーを全身に纏った男たちが大声で喚き散らしながら酒やドラッグをきめ、そして黒人を次々と血祭りにあげてゆく。しかもそこには当然のように子供たちの姿も…。噂には聞いていたが、そんな狂った世界が実際にあることに戦慄せざるを得ない。いったい何が彼らをそんな悪意に満ちた行動へと駆り立てるのか?この作品が優れているのは、ドラマの焦点をそこに絞るのではなく、主人公のそこからの厚生まで描いているところ。入るのは簡単だが、そこから出て社会復帰することの難しさを冷徹に見つめている。要所要所に挿入される、いかにも苦しそうな入れ墨除去手術の映像など、この監督のシャープで研ぎ澄まされた感性はなかなかのものだった。特に、雪の積もった真っ白なスクラップ置き場で放火された車から黒煙がもうもうと立ち上ってゆくシーンは、なんとも言えない暗鬱な美しさに満ちている。と、映像や世界観は文句なしに素晴らしかったのだが、惜しいのはストーリー面。単純なお話である分、一編の物語として観客を引き込む力が若干弱い。もう少しストーリーの見せ方を工夫するか、それかもうちょっと短くするべきだったのでは。90分くらいでコンパクトに纏めてくれたら、もっと完成度は上がったはず。とは言え、全体として非常に見応えのある社会派ドラマの秀作であることは確か。この監督の次作を楽しみに待とうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:02:40)
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