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プロフィール
コメント数 107
性別 男性
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1.  マネー・ショート 華麗なる大逆転 《ネタバレ》 
私もトレードを少々やっているのだが、天井で買って、底で売って、を繰り返している。あの規模で、逆張りのショートを二年間続けるなど信じられない。しかも顧客からのプレッシャーに加えて、債務不履行が増えているのに、値段が上昇するという不可解。ルールも何もあったもんじゃない。作中でも触れていたが確かに昔は、銀行員は真面目でお堅いというのが一般的なイメージであった。証券会社の方が悪名高かったと思う。いつからこうなったのだろうか。いきなり役者が説明を始めたり、テロップが出たり、こういう『アウトサイド』な演出は割と好きです。ドキュメンタリー映画が一般化しているが、その影響なのかな。四人とも(というか六人?)強烈なキャラクターだが、彼らの憤りと葛藤には誰もが共感できるだろう。何故、愚行が繰り返されるのか。派遣切りとかブラックにも通じるところがあると思うのだが、良心の欠如というより、想像力の欠如が問題のような気がする。ある種の集団心理だ。そっちの方向から分析すれば、再発も防げるのではないだろうか。リーマンの社内に潜入するシーンが切ない。私もアベノミクス崩壊に賭けて、全力ショートしよう。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:47:09)
2.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 
カソリック教会での児童虐待。私が初めて知ったのは、CBSドキュメントによってだったと思う。恐らく十年以上も前だろう。現在ではほぼ『常識』として認知されているが、そうなるまでには当然何らかのきっかけがあったわけだ。この記事がそうだったんですね。性欲すなわち『種の保存』本能は、人間にとって最も根源的で強力な欲求なので、何らかの手段によって解消しないと、必ずゆがんだ形で暴発する。中世以来の魔女狩りなども、明らかに性的倒錯の発露だと思う。それにしてもこの規模と人数には驚かされる。最初は地味だなあと思って見ていたが、被害者の話を聞いているうちに、こちらまで心を動かされた。そこから話に引き込まれていく。うまい構成だ。カソリック教会、日本だと創○学会や解○に喧嘩を売るようなものだろうか。記者たちのプレッシャーは想像を絶するものがある。いやいや、教会の方がまだ良心的かも。決して他人事ではない。彼らのようなジャーナリストは日本に存在するのか。やっぱり文春?ネットの普及によって、既存メディアには逆風が吹いている。しかしネット自体が新聞やテレビにかなり依存している。誠実さに心打たれる良作。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:39:08)
3.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
過去に原作を二回ほど読んでいたにもかかわらず、内容をあまり覚えていなかった。しかし映画を見ながら思い出した。コントロール、ナイフ使いのリッキー・ター。ギラムが若い。年配の男だと思っていた。妻も若くてギャルっぽい。もっと地味でキャリアっぽいタイプを想像していた。カーラは顔が見えないにもかかわらず、ほぼイメージ通りなのが凄い。孤独な学生と元スパイの交流。さりげないヒューマニズムもル・カレの魅力だと思うが、きっちり描かれていて好感が持てる。運転するシーンがいい。そして何と言ってもスマイリーをゲイリーが演じるとは。太っていないスマイリーなどあり得るのか。しかしこれが見事にスマイリーなのだ。お互いに壁の向こう側にいて、顔も見えない相手に対して、策を弄して人生を破滅させようとする。アクションはほとんどない。書類を漁り、証言を集め、過去を一つずつゆっくりと辿っていく。何もかもが地味な作品だが、冷戦時代の諜報戦のリアリティと恐ろしさを、これほど堪能できる作品は他にないだろう。最初から最後までゾクゾクしっ放しでした。続編が超絶楽しみ。
[映画館(字幕)] 10点(2017-01-12 01:28:22)
4.  マトリックス
今更ながらDVDで観賞。本作以降、似たような映像をよく見かけるようになったが、それでもオリジナルはやはり違う。かつて見たことがないような斬新な映像が、洪水のように画面から迸り出る様は圧巻である。監督はジャパニメーションからの影響を公言しているが、ただ単に影響されるのと、実写でやるのとは訳が違う。さすがハリウッドである。映画館で観たらさぞかし楽しいだろうと思う。カンフー、禅などの東洋趣味に、コンピューターによる人間支配と、いかにもヒッピーくずれのコンピューターオタク趣味でもあり、サイバーパンクの典型でもある。そういえばここまでストレートなのは、今まであるようであまりなかったかもしれない。というよりも一度廃れたものが、撮影技術の進歩とネットの普及によって復活したような形であろうか。終末思想、「眠れる森の美女」に「不思議の国のアリス」などの古典、ワイヤーアクションと様々な引用をぶち込みつつ、SF特有の難解さをなるべく排して、徹底的に娯楽作に仕上げている点には好感が持てる。と同時に、コンピューターと仮想世界からの開放を隠喩とすると、強力かつ深遠なメッセージ性が読み取れる。「人間は苦痛がないと生きられない」は名セリフだと思う。「ニューロマンサー」「功殻機動隊」に続くサイバーパンクの系譜に新たな歴史を刻み、映画の表現技法に革新をもたらし、社会現象まで巻き起こしたという点で名作であることは間違いない。
[DVD(字幕)] 10点(2006-07-06 03:43:52)
5.  ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 《ネタバレ》 
ホアキンが濃いです。アップの連続は日本人には少々キツいかもしれない。しかし主役二人の演技には圧倒される。何せホアキンは、幼くして最愛の兄を亡くし、自らドラッグに溺れるという役である。彼以上の適役はいないだろう。兄のことを話すシーンは迫真の演技である。演奏シーンは吹き替えなし。リーズのアカデミーも納得である。ホアキンも賞を取るかと思ったが残念だ。私はオールドロックが結構好きなので、ロイ・オービソン、エルビス、ジェリー・リー・ルイスの登場をかなり楽しみにしていたのだが、それほど出番がなく、この点は少々微妙である。それでもステージの袖で「良かったぜ」とか言い合っているのを見ると思わずニヤける。映画館だとさすがに音質は最高で、ベースのボンボンいう音が重たい。キャッシュの曲自体も、声も歌詞もビートもかなりヘビーである。ゴスペルとカントリーを独自のダークネスで消化したキャッシュのロックンロールは、冒頭の綿花畑のように、アメリカ人にとっては原風景の一つなのであろう。「グレートボールズ・オブ・ファイア」ジェリー・リー・ルイスのハイテンションもいいが(彼もよくキャッシュの曲をカバーしている)、本作でのキャッシュのずしりと胸に響くような重みも悪くない。ラブストーリーとしてはかなり辛口である。本当は魅かれながらも、ホアキンの求愛を拒み続けるリーズと、愛のためにドラッグに溺れるホアキンの姿が痛々しい。作品全体に南部の保守的な宗教観や価値観が通奏低音のように響いているが、結局二人が結ばれるためには、時代から見ても、ジューンにとってもある程度の時間の経過が必要だったのかもしれない。
[映画館(字幕)] 10点(2006-03-09 01:06:15)(良:3票)
6.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 
「フルメタル・ジャケット」へのオマージュから始まり、「トレイン・スポッティング」のような鬱屈した青春群像劇を経て、「プラトーン」的な戦場リアリズムで終わる。しかし「プラトーン」とは違い、イラク軍との戦闘シーンがほぼ皆無なのが面白い。訓練で殺人マシーンへと変貌する主人公。しかし戦場に来ても戦闘はなく、毎日訓練に明け暮れ、フラストレーションを発散するためにバカ騒ぎして、国の女には振られ、下ネタにオナニーと、体育会系のバカぶりと現代の若者たちのダメぶりが最高に笑える。戦争とは関係ないところで凶行に走るのがまた可笑しい。そしてやっと戦闘が始まり、狙撃兵の主人公に命令が下ったと思いきや、思いがけない結末が・・・。ストーリーは盛り上がるところであえて外しており、乾いたユーモアがさらに虚脱感を煽る。油田が燃え盛り、黒い雨が降るシーンは圧巻である。「僕たちはまだ砂漠にいる」のセリフが印象的だ。戦争自体が虚しいのか、時代が悪いのか、よくわからなくなってくる。当時のヒット曲満載で、特にパブリック・エナミーの「Fight the power」がいい。グダグダな戦争とグダグダな青春を描いた、ダルなリアリズム戦争映画。
[映画館(字幕)] 10点(2006-02-18 16:50:23)
7.  ミュンヘン 《ネタバレ》 
10年ほど前、本作の参考図書(何故原作ではないのだろう?)「標的は11人」を読んで唖然としたのだが、今回スピルバーグが映画化すると聞いてさらに驚いた。細かい部分でかなり脚色されているが、初めて本を読んだ時の衝撃はそのままである。2時間半という長尺を感じさせないのは流石だ。作品は冒頭からして刺激的である。五輪村に侵入しようとするゲリラの前に、アメリカ選手と思しき団体が登場して、フェンスを乗り越えるのを助けてしまう。その後虐殺、暗殺チームの登場、ミッションまたミッションと、実にテンポよくストーリーが展開していく。引きずるような重さはあまりない。暗殺シーンはどれもグロテスクだが、どことなくコミカルだ。レバノン作戦のシーンは「地獄の黙示録」を連想させる。爆弾とおもちゃはいかにも監督が好きそうだ。「グーニーズ」ばりのトリックと、「ライアン」ばりのスーパーリアリズムを同時に殺戮シーンにぶち込むという荒業は、この監督以外不可能であろう。ミッションは進んでもテロは止まらず、ターゲットは皆紳士な普通の人間。味方と敵がわからず、狙う側がいつしか狙われる側へ。仲間が死んでいく。次第に暗殺チームを蝕む苦悩と疑心暗鬼を演じきった俳優陣もお見事である。不気味な音楽も素晴らしい。最後のシーンの貿易センタービルが印象的だ。舞台が70年代だけあって、灰色の画面はその頃のアクションの雰囲気である。しかし感動大作やアクションにしては悪趣味すぎる。とことんシリアスな内容のはずだが、視点は限りなくシニカルで、不気味で、無力感に溢れている。同時に、監督のダークサイドと偏ったリアリズムを凝縮してぶち撒けたようなぶっ飛び方が最高に痛快でもある。この暴走の果てに、監督が言いたいこととは一体何なのか。恐らく平和がどうたらというより、「あんたら、一体何やってんのさ?」という感じではあるまいか。本作は「シンドラー」「ライアン」の流れに位置づけられているが、どちらかというと「グーニーズ」「インディージョーンズ」の系譜だと私は思う。
[映画館(字幕)] 10点(2006-02-14 16:58:08)
8.  銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
鬱病のロボット、無限不可能性ドライブなどなど、全編に散りばめられたユーモアは実に秀逸で、最後までにやにやしていた。しかしあまりにもベタなギャグとキャストのオーバーアクトには「ここは笑うべきシーンなんだろうな」と思いつつも苦笑していた。こういうのは国民性の違いなのか?それとも意識してやっているのかわからない。冒頭で地球が吹き飛ぶシーンが一番笑えた。マジなのかギャグなのかよくわからない意外と深遠な哲学的テーマ、着ぐるみやセットからほとばしるチープなうさんくささ、そしていかにもイギリスらしいハイセンスさとどんくささが共存するヴィジュアルセンス、それらのブレンドとギャップが、ぐだぐだかつめまぐるしいストーリーに対して鮮やかなコントラストとなり、SF特有の固有名詞と情報量の多さに多少ついていけなくなるが、ともかく細かいことは気にしなくとも最高な感じである。パンフが60ページもあるが気が付くとパラパラめくりながら、1人にやけている日々が続き、少々ハマリ気味である。マービンを見て「スターウォーズ」のフィギアを集める人々の気持ちが初めてわかった。冒頭のテーマ曲はイーグルスの75年のアルバム「One of these nights」に収録の「Journey of the sorcerer」である。BBCテレビのドラマでもこの曲がオープニングテーマだったらしい。パンフでもスルーされていたのでこの場を借りて明記する。
[映画館(字幕)] 10点(2005-10-22 00:56:36)(良:2票)
9.  プレタポルテ
全編爆笑の連続であった。しかし公開当時からの不評は現在でも相変わらずのようだ。確かにストーリーはあってないようなものでよくわからない。豪華俳優陣も演技というよりキャメオ気取りでふざけているようにしか見えない。しかしパリコレを舞台にレポーター、カメラマン、デザイナー、その他もろもろもろもろもろもろの関係者が入り乱れて殺人事件まで絡んだ、アルトマンお得意の群像劇である。ストーリーよりも小ネタ、演技よりもセレブ観賞である。そもそもファッション業界はストーリーの舞台背景ではなくあくまで主役であり、その点で最も重要なのは気分と雰囲気である。監督のシニカルな視線とユーモアのセンスは最高に冴えている。新旧セレブ総動員で魅せる、目くるめく華やかなショーとそれ以上に熱い舞台裏は、臨場感たっぷりで超ハイテンション。まるでシャンパンの洪水を一気に飲み干すかのごとく、ゴージャスで愉快な気分に浸れることは間違いない。最優秀演技賞はやはり「キティ・ポター」ベイシンガーや、最近滅多に見られない楽しそうな笑顔を見せてくれるジュリア・ロバーツを押さえて、ところかまわず糞しまくるプードルちゃんに決定。
10点(2005-02-18 22:48:06)
10.  スーパーサイズ・ミー
意外とシリアスな内容だった、というのが素直な感想である。おバカなのは最初だけで、インタヴューと取材、多数のデータ、そしてもちろん陽気なスパーロック氏の体を張った実験によって、ファストフードの害と現代アメリカの食文化の問題点に非常にわかりやすく迫っている。正月の映画館は満員で、比較的カップルが多く、スパーロック氏のガールフレンドが彼との「セックスライフの変化」について語るシーン(「前の方が凄かったわ」)で、私は少しウケていたのだが、客席は全体的に妙にシーンとしているような気がしないでもなかった。恋人の前ではテレていたのか、あるいはもしかしてシャレになってなかったりして。あらゆる面で我が国はアメリカを追随していることではあるし、数年後にはアメリカンデブならぬ、ジャパニーズデブが世界中を震撼させることになるかもしれない。牛丼、ラーメン、コンビニ系ジャンクフードと我が国の食文化も崩壊の一途を辿っている。有名なラーメン評論家などはもうすぐ死ぬかもしれない。ビジネス優先の社会構造はアメリカ以上。こういう作品は予算の点で日本の映画会社にとっても有利かもしれない。でももう遅いか。
10点(2005-01-06 23:54:51)(良:1票)
11.  華氏911 《ネタバレ》 
正直「ボーリング・フォー・コロンバイン」ほどの衝撃と感動はなかった。恐らく事前情報が多すぎたせいだろう。ブッシュ家とラディン一族の関係やハリバートンなどは、TVなどですでに間接的に知っていたので驚かなかった。このテのドキュメンタリー作品は映像とかストーリーではなく、あくまで情報が肝なので、その点では個人的に致命的であった。とはいえ本作は「ボーリング」にみられた感傷やユーモアは影を潜め、視点と演出は限りなくシビアである。そういう意味で本作の方が評価は上だろう。そもそもハリウッド映画はほとんどプロパガンダに利用されているという事実と、アメリカのメディアではすでに報道の自由が著しく制限されているという状況を考えれば、決して偏向とはいえない。印象的な点をいくつか。まず大統領選のフロリダ。当時日本でニュースを見ている限りでは、結局何がなんだか不明だった。本作ではブッシュ側の不正によるものだとほぼ断定している。アフガンでの軍事作戦については、当時山岳地帯に大規模な正規軍を投入できないため特殊部隊を投入したという報道がされていて、信じてもいたが、本作の解釈ではブッシュがやる気がなかったということですね。なるほど。政治と企業の癒着という問題は決して他人事ではない。アメリカでは軍需産業だが日本では道路族と年金か。違いは直接的に人命が奪われるか、間接的に命をすり減らすかだけだ。一番印象的だったのはやはりフリントの惨状である。失業率50%!ありえない。貧困層の若者たちは生きるために入隊し、イラクで死んでいく。同じイラクでの兵士と企業派遣社員の給料格差。両方とも血税である。それにしても陰謀とか癒着は普遍的だが、ブッシュの何が問題かというと、そのあからさまなやり方とデリカシーのなさだと思う。彼に対する反感の理由は、彼らが大衆を舐めているとしか思えないことだろう。ここまでわかりやすいとどう考えても映画より有利だ。最早現実の方がフィクションより刺激的。そういう意味でも本作は映画史においてターニング・ポイントとなり得る。本作は情報量が多く、セリフ?が多いので他の映画のようには観れない。これから観る方は集中してのぞむべきでしょう。集中して観る甲斐はあります。上記のようにテーマのデカさの割に「ボーリング」よりは地味だ。しかし本作の方がデキは上です。必ずや心に残るものがあるでしょう。 
10点(2004-10-05 01:14:33)
12.  明日に向って撃て!
一攫千金を夢見る犯罪者や銀行強盗を「倒錯したアメリカンドリームの一形態」と表現したのは、一体誰であったか?しかしたとえ倒錯したものであったとしても、それがアメリカンドリームであることに変わりはない。当時でさえ、というのはつまり、劇中の西部開拓時代と映画が製作された七十年代にしてすでに、ブッチとサンダンスの二人はボリビアに逃亡しなければならなかった。そして壮絶な最期?どちらかというとバート・バカラックは苦手なのだが、彼の音楽が作品の雰囲気を、殺伐とした西部劇から、おしゃれな犯罪映画に塗り替たことは認めざるを得ない。21世紀となり、ヴェトナム戦争も反戦運動も完全に過去のものとなった現在のこの時代に、この作品を観る者が一体どれだけこの主役の二人に、手離しで共感できるのか定かではない。しかし彼ら二人の生き方は、現在でも十分魅力的には違いない。時代に取り残されても迎合することを拒み、自ら滅びいく自由な魂の何と美しいことか。そして時代に対する鋭敏なセンスは、普遍性をも獲得する。むしろ今の時代だからこそ、ぜひ若い人たちに観てほしい作品である。
10点(2004-08-19 23:02:13)
13.  13デイズ
多少細部の脚色はあるらしいが、おおむね事実に則して描かれているようだ。やはり一番驚いたのは、当初はジョンが感情的に、あるいは大統領として中立の立場から、表立って軍部の主張するキューバ空爆には反対していなかったということだ。事実、最後のロバートとドブルイニンの会談が失敗すれば、数十時間後には空爆開始というところまで追い詰められていたのだ。キューバ空爆は、即全面核戦争を意味する。おまけにクレムリンの状況をホワイトハウスはほとんど把握していなかった。ぎりぎりのところで危機を回避した、当時の指導者たちの冷静な判断力は賞賛に値する。ケネディ兄弟の死後、一族のスキャンダルがいろいろと暴露されているが、この作品を観ると、ただスキャンダラスなだけではない、彼らのその若さにそぐわぬ卓越した政治手腕には改めて感心する。エクスコム会議の席上では本音を言わず、兄弟2人きり、あるいはケニーを加えた3人の時だけ、感情も顕に本心をぶちまける。重要事項は自分たちだけでほとんど決定し、その決定に会議を誘導する。この狡猾さは、神話というにはあまりにも冷徹で、恐るべきものだ。この作品では、大統領特別補佐官で、ジョンとロバートの大学時代以来の親友でもある、ケネス・オドネル、通称ケニーの視点から、彼ら3人の結束を軸に、いかに彼らがキューバ危機を乗り越えたかが描かれている。ケニーはジョンやロバートと、時にぶつかり合い、時に彼らを叱咤激励しながら、危機を回避しようと奮闘する。ケビン・コスナーについては、意見が分かれているようだが、現実にケネディ兄弟の親友だったことを考えると、あの程度の発言は充分あり得るのではないだろうか。作品の随所に登場し、実に魅力的に描かれている、彼ら3人の固い絆と友情を示すシーンは、ケネディ兄弟の悲劇的な最期と重ね合わせて観ると、改めてより一層胸に沁みる。派手なアクションがあるわけでもなく、ほとんどはホワイトハウス内のシーン。にも拘らず、冒頭から最後まで途切れることなく続く異様な緊張感。出演者たちの気迫の漲った演技が素晴らしい。特にロバートとマクナマラ国防長官、アドレイ国連大使の3人の存在感が光る。キューバ危機を知っている人も、知らない人にとっても、格好のテキストになることは間違いない。ポリティカル・サスペンスの傑作。
10点(2003-01-02 02:48:10)(良:3票)
14.  ブラックホーク・ダウン
ドキュメンタリー風戦争映画としては、「史上最大の作戦」以来の傑作だと思います。飛び交う銃弾、立ち込める煙、押し寄せる群集、細部まで完璧に再現された、巨大なオープンセット、圧倒的なスケールと臨場感で、映画ではこれまで扱われることの少なかった、すさまじい市街戦を、文字通り「体感」できるというだけでも、一度は観る価値があるでしょう。まさに戦場叙事詩とでもいうべき映画だと思います。しかもあの「プライベート・ライアン」でさえ拭い切れなかった、対ナチス戦特有のオプティミズムやヒロイズムなど、当然この作品には微塵もなく、「プラトーン」のように、キャラクターに対する感情移入も難しい。だからこそ最後に残るのは「この戦闘は一体何だったのか?」という疑問だけ。そういう意味で監督の意図は完璧に達成されていると思います。 何も考えずにただその迫力ある映像を楽しむもよし。事件の背景や紛争、国際政治の舞台裏まで思いを馳せるもよし。どういう見方をするにせよ、この衝撃は他では味わえないものでしょう。 日本映画こそ、こういう手法を取り入れるべきではないかと思います。反戦や、政治的なメッセージなどは一切なし。ひたすら戦場をリアルに再現。硫黄島、沖縄、ガダルカナル島、あるいは中国などなど、ネタには困らないでしょう。やはり戦争を「表現した」のが「ガンダム」だけというのはどうも・・・。
10点(2002-10-21 21:26:53)(良:1票)
15.  マイレージ、マイライフ 《ネタバレ》 
会社はリストラ宣告で荒稼ぎ。全米を飛び回り、モチベーションのプロとして講演までこなす一流のビジネス・パーソンが主人公という、まさしくサメがうようよするような弱肉強食の世界と、誰もが羨むような、スマートな勝ち組の人々(ちょっと汚れ仕事というのがまたいい)を描いているわけだが、どちらかと言うと静謐で、ヒューマニズム溢れるハートウォーミング・ムービーに仕上がっていると思いきや、ありがちなハッピーエンドを軽くくつがえし、あのラスト。なかなか一筋縄ではいかない監督らしい。「JUNO」は未見だが。主人公は元の黙阿弥か?いやいや。人間というのは、様々な経験をして少しずつ変わっていくわけで、いきなり180度変われるなんてのは、まさに映画くらいなものなのである。それに人生というのは、人間関係も仕事もそんなに自由に選べるわけではない。そう、やっぱり自分についても、いろいろと考えさせられる、というか身につまされるものがあるわけだ。クルーニー様とは、大分レベルが違うが。彼のようにカッコ良くて金があれば、別に家庭とかいらないんじゃないの、とも思うのだが。ナタリーちゃんの顎の肉が少し気になる。あれも監督の趣味か。
[映画館(字幕)] 9点(2010-05-16 22:57:42)
16.  キャピタリズム~マネーは踊る~ 《ネタバレ》 
最近このテの本ばかり読んでいるので、正直言ってあまり衝撃というものはなかったのだが、それでもいろいろと驚かされるわけだ。パイロットの給料の安いこと。年俸1万数千ドルで、ウィトレスのバイトをしているというのは信じ難い。JALなんかは一体どうなっていたのだろう。そういえばオリバー・ストーン監督の「ウォール街」でも、弱小航空会社の買収劇が、ストーリー上の重要なポイントになっていた。あれもレーガノミックス下の規制緩和によって成立しえた話なのであろう。少年院を民営化して、判事がその会社から賄賂を受け取り、未成年を微罪で放り込む。もう滅茶苦茶。そりゃバレる。日本でも、刑務所か何かが民営化していると聞くが大丈夫か。労働の元の平等をうたった共産主義も、その実態強固な階級社会であり、結局崩壊したわけだが、アメリカ型資本主義も、同じ轍を踏んでいるように思える。冒頭では、ローマ帝国の崩壊を米国の未来に見立てていた。著しく不均衡で不平等な社会というものが、活力を失い崩壊するのは、しごく当然といえる。遅かれ早かれ、いつかアメリカも滅びる。もちろん日本も。誰か日本版をやってくれないだろうか。
[映画館(字幕)] 9点(2010-03-07 02:15:56)
17.  フィクサー(2007) 《ネタバレ》 
ストーリーのブツ切りに不親切な演出。またもやソダーバーグ一派か。ぼおっと見ていたせいか、馬のエピソードは、パンフを読むまで気づかなかった。フィクサーというのは、悪徳弁護士の意味もあるらしいが、普通の日本語の感覚からすると違和感がある。かといって原題だといまいちだし、最近こんなのばかりだ。本作で凄いのはやっぱりティルダ・スウィントンだろう。「フツー」のキャリア・ウーマンが殺人にまで手を出してしまうというのも恐ろしいが、それ以上に脇の下に汗じわーっとか、腹の肉ぶよっとか、もう正視に耐えない衝撃映像の数々には戦慄を覚える。何百億ドルもの訴訟を一人で仕切るなど、人間の限界を超えているというものだ。リーマンの鬱病なんてレベルじゃない。さすがアメリカ。殺人シーンも妙に機械的で怖いし、誰もが何気なく極限状態に陥っている様に、観ているこちらの神経までギリギリと締め付けられるようだ。正義を貫き勝利を手にしても、ハッピーエンドにならないのがいい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:59:21)
18.  大いなる陰謀 《ネタバレ》 
現在のアメリカが抱えるジレンマや分裂状態を、ここまで凝縮してわかりやすくコンパクトに仕上げた脚本はお見事。原題のエピソードだが、かつて我が国の軍隊も同じようなことを言われたことがある。「末端の兵士たちは優秀だが、指揮官がダメだ」と。この辺は現代でもあまり変わっていないのだろう。わが国でも十分通用するテーマだ。しかし三人の大学生のような優秀な連中ならともかく、偏った連中や凡庸な愚民ども(もちろん私も含めて)が下手に政治づいたりしても、またあさっての方向にいってしまうので、難しいところではある。まあ本作をわざわざ観たいと思うような人なら、そんな心配はないのでしょう。その存在を感じさせないのが最も理想的な政治と言ったのは誰であったか。狂気すら漂うトムの演技は圧巻。レッドフォードは男性ホルモン不足なのか、おばちゃんみたいだ。メリルはまあいつも通り。「第二次大戦は五年で終わった」というセリフがあったが、当時は従軍記者たちが最前線から命がけで記事を配信していたのだ。これも「特殊部隊は足が速い」云々というセリフの通り、アフガンの雪山に特殊部隊のヘリボーンでは、確かに取材もできないだろう。現地で何が起きているのか、結局のところ誰にもわからないというのが恐ろしい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:57:38)
19.  アメリカを売った男 《ネタバレ》 
アメリカでは、カソリック教会の神父が、長年にわたって子供たちに性的虐待を繰り返していたということで、以前から問題になっている。しかも一人や二人ではなく、全米の教会において。魔女狩りや異端審問というのもあるし、カソリックの世界というのは元々そういう倒錯趣味を内包しているのであろうか。そういえば福田和也氏が雑誌で「カソリックは人間の中に悪魔と神が両方いる、というのが基本的なコンセプト。告解すればOKって」というようなことを言っていた。2ヶ月という期間設定、時間にして2時間弱で、スパイの複雑怪奇な心的内面をよく描いていたと思う。脚本もいいが、クリス・クーパーさんの不気味な演技が素晴らしい。彼が勤務中に見てたゼタ子の映画は「エントラップメント」かな?そっちも騙し騙されって内容だった。しかし実話とはいえ、新米の若造がよくここまでやったなと思う。セクハラ捜査のつもりが、50人の捜査員に監視されていたとは、きっと本人も驚いただろう。二人の壮絶な心理戦は最高にスリリングだ。まだPCが普及し出した頃の話で、何バイトとかWANとか言っているのも、その分野に詳しい人には、きっと面白いことだろう。ラストも最高。ローラ・リニーさんもいい。国立公文書館というのだけはよくわからなかったが。
[映画館(字幕)] 9点(2008-03-27 04:02:51)
20.  キングダム/見えざる敵 《ネタバレ》 
基本的に「マンハッタン無宿」「ブラニガン」「フレンチ・コネクション2」「ブラック・レイン」と続く、異文化交流熱血刑事アクションの系譜に位置する作品といえよう。しかし今の時代、敵がテロリストで舞台がサウジとなると、無茶やって喧嘩して事件解決して仲良くなってハッピーエンドとはいかないようだ。犯罪捜査を基本にしつつ、ポリティカル・サスペンスの要素を絡め、対テロ戦闘の火力をぶち込むという荒業をやってのけた脚本はお見事。サウジの暗部に切り込み、セリフ一つでテロ戦争の不毛を表現したあたりが「ダイ・ハード」やら何やらとは一味違うところだ。もちろん脚本に負けず劣らず演出もいい。ハイウェイを疾走する黒塗りのRVを追いかける流麗なカメラワーク。臨場感溢れるブレブレなハンディカメラ。怒涛のカーチェイスとアクション・シーンにはぞくぞくした。ハイウェイで襲撃されるシーンの滅茶苦茶な編集がもうたまらん。戦闘の恐怖、銃の恐怖、テロの恐怖をまさに体感できる。「こっちは安全ですよ~」、ボーン。大佐役のアシュラル・バルフムさんもいいですね。プロローグもおしゃれです。体感アクションと知的スリルの双方を味わえる秀作である。
[映画館(字幕)] 9点(2007-11-03 23:51:04)(良:1票)
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