Menu
 > レビュワー
 > S&S さんの口コミ一覧
S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  アルプススタンドのはしの方 《ネタバレ》 
甲子園出場の地方大会に義務的に動員された生徒たち、本気で熱くなっている応援席から離れたアルプス席に逃げ込んだJK二人と野球部を途中脱落した男子生徒の会話が面白い。野球のルールが全く判らない二人の会話に元野球部が突っ込みを入れるところが延々と続くが、これがグラウンドを全く見せないから試合の進行を観客に説明する仕組みにもなっている。私らの世代と違って最近の子供たちの野球離れが話題になったりしているので、野球に興味がなく基本的なことも知らないJKがいてもちっとも不思議じゃない世の中になってるんですねえ。 良くも悪くも高校演劇部には相応しいストーリーだったかなと思います。でも色んな意味でしらけた高校生活を送っていた四人が、高校野球の応援を通じていつの間にか熱くなってゆくところには、素直に共感できました。イマイチ感情移入できなかった自分ではありますが、青春映画としては良作だと思います。ただ「人生は送りバントだ」みたいな陳腐なことをドヤ顔で言うあの鬱陶しい教師の存在と、どう考えてもいらん付け足しだったと思うエピローグのせいで、マイナス一点!
[CS・衛星(邦画)] 6点(2024-04-21 23:00:59)
2.  赤毛 《ネタバレ》 
製作当時はもう五社協定は雲散霧消しているわけですが、こうやって岩下志麻や乙羽信子が東宝映画で三船敏郎と共演しているのが観れるというのは珍しいことです。明治維新のときの赤報隊の史実をもとにしたオリジナル・ストーリーですが、穿った観方かもしれないけど70年安保闘争をカリカチュアしたような脚本であるような気がしてなりませんでした。官軍=佐藤栄作政権という図式で、宿場に突入してきた官軍が村人と対峙する絵面はまるで機動隊と衝突する学生デモ隊が彷彿されます。その村人たちも代官に反抗していたのは女郎屋の女たちと老師に扇動された若者だけで、半分以上の住民がこの騒動を眺めるだけの野次馬だったというのも意味深です。けっきょく赤報隊として官軍に利用されて果てる権三=三船敏郎なのですが、若者たちに詰め寄られて「理想と現実は違うものだ」と逃げを打つ老師=天本英世のセリフを聴くと、70年安保闘争後の無残な学生運動の成れの果てを予言していたようにすら感じます。 前半はとくに岡本喜八節が快調で、岡本映画常連の伊藤雄之助だけでなく三船敏郎までもがコミカルな演技を見せてくれます。権三が吃音気味というキャラ設定のおかげで、三船は普段は聴き取りにくいセリフ回しなんですが切れ切れに喋るおかげでいつもより耳に入りやすかったです。そして全編で効果的に使われるのが“ええじゃないか”節で、あの踊り狂う群衆の迫力は後年の珍作『ジャズ大名』の前振りみたいに感じました、もちろん今村昌平の『ええじゃないか』よりもずっと早いですね。コミカルな前半から打って変わって悲劇的な結末を迎えるわけですが、後半はちょっとテンポがもたつく感はありました。宿場に潜入していた幕府側の遊撃隊のエピソードは、ちょっと詰め込み過ぎた脚本のような感じでもたつきの原因だったと思います。とは言え個人的には珍しい三船敏郎のコメディ演技は堪能できたかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-02-11 22:11:58)
3.  愛の亡霊 《ネタバレ》 
『愛のコリーダ』に続いてフランス資本が主導で撮られた一編、仏語原題と邦題の『コリーダ』との類似性から未だにハードコア作品と誤解されている節があるのはちょっと残念です。自分は『愛のコリーダ』は一種のゲテモノ映画だと思っているので、物語として何の繋がりもない本作の方が評価されるべきじゃないかと思っています。 茨城県で実際に起こった事件を基にした脚本だそうですが、大島渚映画の中でもピカイチと言えるぐらい映像が美しい。それもそのはず、撮影の宮島義勇を始め主要スタッフが小林正樹の『怪談』を製作した人たちなんですから。武満徹の音楽がまた絵も言えぬ独特の雰囲気を出しています。お話しは吉行和子と愛人の藤竜也が夫の田村高廣を殺して古井戸に隠すけど、その後田村の幽霊に悩まされるという割と単純なものです。前半では藤と吉行が田村を殺すに至る経緯があまりに雑なのが気にかかります、殺人から三年たっても二人の関係が変わらないというかかえって疎遠になった様な感じで、これじゃなんで夫殺しに走ったのか?って言いたくなるけど、実話って案外と雑なことが多いんですよね、まあ生身の人間のすることですから。でもそれから田村の亡霊が出現するようになってからは、俄然見どころが多くなってきます。この亡霊は自分を殺した妻の前にだけ現れるのですが、彼女を恨む様子はまったくないんです。そりゃ女房の方は恐怖のどん底ですけど、彼女の注ぐ酒は飲むし勧められれば芋は食べるしでで、こんな人の良い亡霊は珍しいです。だいたい幽霊が現生のものを飲み食いするのは初めて観た気がします。でもこの幽霊・田村はいつも寂しそうに出現するけど不気味さは高レベルで、生前は車引きだった彼が吉行を人力車に乗せて走るところなんかゾクッとさせられますよ。粗野で自分勝手な男としか見えなかった藤も、後半になると亡霊に悩まされて半狂乱になる吉行と供に苦しむようになる演技には胸を突かれました。 斜に構えたような映画を撮っていた大島渚ですが、本作はそんな彼の残した珍しい正統派の映画だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-23 22:39:31)
4.  アルキメデスの大戦 《ネタバレ》 
これは誰もが認めるところでしょうが、冒頭の大和撃沈のシークエンスはまさに“和製プライベート・ライアン”的な壮絶な映像。攻撃する米軍機もとうぜんCGながらもそのマーキングや機動などは実感あふれています。大和自体や後に登場する長門も含めて緻密な再現は山崎貴の本領発揮、まさに“神は細部に宿る”です。 この大和沈没が鮮烈過ぎて出落ち感すらあるストーリー展開ですが、まあこれはフィクションですから良いでしょう。櫂直などフィクショナルなキャラはともかくとして、実在の人物やモデルにされた人物が明らかに判るキャラにはちょっと?となる部分が無きにしも非ずです。舘ひろしの山本五十六は、自分としては歴代五十六の中でもっともイメージが合った良いキャスティングだったと思います。平山造船中将は平賀譲、藤岡造船少将は藤本喜久雄という有名な造船官がモデルなのは明白です。でも実際の大和建造計画策定時には藤本は死去していたのですが、まあここはフィクションなので五月蠅く言わないことにします。でも違和感がどうしても拭えなかったのは(これを言っちゃうと原作コミック自体の否定に成りかねないですが)、超秘密主義だった帝国海軍にいくら山本五十六の後押しがあったといっても、帝大を中退したばかりの民間人を少佐として迎え入れるという設定自体が絶対あり得ない。あと、天才的な数学才能がどうして一晩で造艦設計図面を書き上げる能力に繋がるのかが、理解しにくい。使用鉄量から造艦経費を導き出す方程式を創出するのは確かに数学的才能ですが、設計自体はデザイン的な能力だと思うんですけどねえ、まったく“数学万能”かよ(笑)。 冒頭で大和が建造されることはいわばネタバレしているのでこの広げた大風呂敷をどういう風に閉じるのかと楽しみにしてましたが、櫂と平山のラストの対決はなかなか見応えがありました。けっきょく櫂は平山造船中将に負けたというか説き伏せられた感じですけど、演じているのが田中泯ですからその結末も納得です。やっぱ本作では彼がいちばん光ってましたね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-13 22:34:19)
5.  赤×ピンク 《ネタバレ》 
ただの百合エロ映画と軽い気持ちで観始めましたが、原作がラノベとは言っても桜庭一樹なので観終わってみれば引き込まれてしまいました。主演の芳賀優里亜と多田あさみはそっち系の女優じゃないのに潔いと言えるほどの脱ぎっぷりとAV並みのエロ絡みは見事です。この映画はR15+指定ですがDC版のR18+指定バージョンもあるそうで、もっとエロいのかと思うとちょっと観てみたい気がします。ガールズ・ブラッドの女闘美ファイターたちのキャラも立ちまくっていて観てて愉しい、モモミーちゃんが私の推しです(笑)。とうぜんスタントも使っているでしょうけど、彼女たちのファイトは素人目には迫力満点で、満足できました。ただ気になるところは、彼女たちが女闘美ファイターになったきっかけが家庭や学校で負ったトラウマだったという設定があまりに定型すぎて、どうなのかなと思います。ガールズ・ファイトの社長とDV空手家が本作での唯一目立つ男性キャラでしたが、これまたキャラが立っていて良かったですね(とくに社長)。でも存亡がかかったラスト・マッチ、空手軍団は負けても実質ダメージがゼロのような気がするけど、ほんとにあれで良かったの?社長(笑)。観ていてふと気づいたのですが、観客エキストラのなかに南海キャンディーズの山里亮太にそっくりの人がいたんです。トレーナー鮫島役で品川祐も出ているし、ひょっとしてなのかもしれません。 桜庭一樹にはまだまだ映画化したら面白そうな作品が多いので、これからも期待しています。とくに『赤朽葉家の伝説』はぜひとも映像化して欲しいな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-05-22 22:42:23)
6.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
岡本喜八の作品としては『暗黒街の顔役』の方が有名ですが、どうしてどうして、本作の方が喜八らしさは濃厚で愉しめるかもしれない。お話し自体はハードボイルド刑事もの+任侠ものという感じです。三船敏郎の潜入刑事は、貫禄たっぷりの三船がストーリーラインはシビアなのにユーモア溢れる演技を見せてくれて、これが『用心棒』や『椿三十郎』より前の作品なのは興味深いところです。鶴田浩二はいつもの鶴田浩二で平常運転でしたが、お嬢様女優の司葉子がヤクザの情婦というキャラでヒロインというよりも汚れ役だったのは珍しかったです。この映画は脇役たちのキャラが立ちまくっていて、天本英世ら三人の殺し屋とミッキー・カーチスのコーラス・グループ、いわば元祖“キラーズ”みたいな連中が歌う“月を消しちゃえ”はもう抱腹絶倒間違いなしです。こういうところがいかにもな喜八節なんですよね。三船のトレンチコート姿は当時としては群を抜いたスタイリッシュだったと思いますが、残念だったところは彼は素手での殴り合いのようなアクションになると意外ともっさりしているんです。剣を握っての殺陣とは、やはり勝手が違ってくるんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-11-16 23:31:35)
7.  悪の教典 《ネタバレ》 
伊藤英明を稀代のサイコキラー・ハスミン役に持ってきたのは、とりあえず正解。彼もいつも演じている偽善が鼻につくヒーローよりも、こういう悪役を選択した方が役者生命を延ばせるというもんです。でもこのハスミンは通常の悪役キャラとは大違いで普段は快活で生徒に信頼されるナイスガイ、まあこのキャラについては普段の演技パターンでこなせるわけですが、鬼畜モードに入ったハスミンを演じるにはちょっと演技力が不足しているようです。それは別に凶暴にふるまう演技を要求しているわけではなく、さりげない所作などに普通じゃないところを盛り込んでほしかったんだけどなんか物足りなかったですね。区別せずに論ずる人が多いけど、いわゆるキチ〇イ(あっちの世界に行っちゃった人)とサイコパスは明確な違いがあるんです。ハスミンは原作者の意図からしてもサイコパス分類のはずで、そうなると彼に話しかける幻聴や幻覚は誤解を招く表現で不要だったとおもいます。 大量に射殺されてゆく高校生たちの阿鼻叫喚はすごい絵面ですが、彼女らに感情移入できなかったのが我ながら不思議でした。これはこの子たちの家庭環境などの個人的な背景がまったく描かれていなかったのが原因かと思いますが、原作から大幅にカットされたのはこの部分らしいです。大部の小説を映画化する場合にはどこを切るかは重要な作業で脚本家の腕の見せどころでもありますが、エピソード自体をばっさりカットして再構築するということも時には必要なはずです、でもこれは原作者との関係もあるので難しい問題かと思います。三池崇史のことですから30分以上にわたる大虐殺シーンには力を入れたかったと思いますし、そうなるとそこに至るまでにあと30分は尺が必要だったんじゃないでしょうか。 “To Be Continued ”がエンドマークでしたが、続編はどうなってるんでしょうか、まあ小説の方がまだ発表されていないので無理ですよね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2019-06-30 23:16:04)
8.  アウトレイジ 最終章 《ネタバレ》 
シリーズ三作目かつ最終作となったわけですが、北野武および出演俳優の健康面をふくむゴタゴタの影響か、私から言わせると観るも無残な出来となってしまいました。 まず、西田敏行と塩見三省が製作までの間に健康を害してしまったのが、多大な悪影響を及ぼす結果になってしまいました。塩見の若頭補佐中田なんかもう前作とはまるきり別人という感じ、西田もセリフ回しに衰えが顕著で映画全編でもあの“バカヤロー&コノヤロー祭り”が雲散霧消してしまいました。新たにピエール瀧が起用されていますが、こんないい役者をあの役にしたのはあまりに無駄遣い、あのキャラならもっと違う俳優でもよかったんじゃないですか。前作でその猛威を見せつけた鉄の軍団・関西花菱会が、前作の脚本の使い回した様にかつての山王会みたいなガタガタな状態(いや、もっと悲惨)になっているというのもちょっとどうかと思います。現実世界でも広域暴力団の後継が世襲という事例はなく、まして元証券マンの女婿に後を継がせるなんてあまりにも非現実的な設定です。たしかに証券業界の偉いさんには、知能派極道みたいなのがゴロゴロしてますけどね(笑)。これも大杉漣起用から逆算したようなキャラなのかもしれません。そしてもっとも現実離れしているところは、闇市上がりの在日韓国人フィクサーが政官界にも権力を持っていてカッコよく描かれているところです。こいつが電話一本で警察の捜査を中止させるなんてシーンまであり、その脚本の発想の古臭さには唖然としました。ハリウッドはもちろん最近はカンヌやヴェネツィアでも相手にされなくなった北野武の、釜山映画祭に呼んでくれたりして優しくしてくれる韓国へのサーヴィスであることは見え見えです。そう見れば、たけしは劇中の大友よりもはるかに義理堅いのかもしれません(笑)。全般的に構成が前二作と比べても雑かつ安易な脚本で、大友と市川のパーティー会場での大乱射も『ソナチネ』の同様なシーン(ホテルの外に漏れてくる銃声だけを聞かせる秀逸な演出)を実演で再現しましたって感じです。そういやラストも『ソナチネ』風でしたね。 私が三作目を撮るならこうあるべきだと考えたのは、先輩刑事片岡をやられた繁田が大友と花菱会に対して警察権力を駆使して追い詰めてゆき全面対決にいたるという脚本でしたが、あまりに繁田が活躍しないで終わってしまったのには、ほんとにがっかりでした。三部作を振り返ってみると、大友と上部組織との争いはオフィス北野とたけしの確執を反映させていたのかも。北野武にはプロデューサーとしての力量はなさそうだし、これが彼の最後の監督作になるのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2019-02-04 23:05:23)
9.  アウトレイジ ビヨンド 《ネタバレ》 
日本映画史に残るあっけない荒業を使って黄泉の国から現生に帰ってきた大友の親分。「大友が死んだなんて私言ってないですよ、噂があるって言っただけです」、いやはや、こんなセリフだけでプロデューサーからの無茶ぶりを解決させたたけしは、やはり天才なのかもしれません(笑)。 さて二作目として物語をパワーアップさせるために登場してきたのは、お馴染みの関西の大組織。3分に一度は役者の誰かが「コノヤロー!」「バカヤロー!」を口にするのはスコセッシ映画の“FUCK”みたいなものだと思いますが、そこに関西弁が入ってくると迫力が一段ましです。刑務所から出てきても大友のお人よしぶりは相変わらずで、在日のフィクサーのところにいるときは借りてきた猫みたいに大人しいし、なんだかんだと言ってもけっきょく片岡の扇動に乗って木村とともに山王会潰しに奔走するわけです。でも殺しを重ねるうちに、大友の残忍な本性がだんだん目覚めてくる感じはよく出ています。花菱会のリップサービスを真に受けている木村に愛想を尽かして大友が最後に逃げだしちゃうところなんか、要は前作の愚かだった自分の姿を見てるようで嫌になっちゃたんだろうな、学習の効果が少しはあったというわけです。たけしのヤクザ映画にはいわゆる“指ネタ”はお約束ですけど、それにしても歯で自分の指を食いちぎるとは、木村は前作ではカッターナイフで指を詰めようとして悪戦苦闘しただけに、お前の歯はカッターナイフの刃よりも固いんかい、と思わず突っ込みを入れてしまいました(笑)。 この映画での最大のサプライズはやはりラストですが、これは大友がまだ見ぬ第三作ではカッコつけるの止めて鬼に徹することになるのを暗示してるのかな?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-01-26 22:14:09)
10.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 
北野武の映画がなんで世間では高評価なのかがイマイチ解せない自分ですが、やくざモノを撮らせたら目が覚めるような秀作を撮ることは認めざるを得ません。この映画の優れているところは、ストーリーテリングというか脚本の構成です。会長の池元への叱責がきっかけでまずは大友組の嫌がらせから始まり次は村瀬組の反撃、このテニスのラリーのようなターン交代が徐々にエスカレートしながら上映40分過ぎまで続く。途中カジノ開業のハーフタイムショーがあり、試合再開したらたけしの怒涛の攻撃で村瀬組組長のタマを捕る。しかしこれでワナに落ちることになって、窮地に立たされた大友は池元を葬ってしまい、旧池元組と山王会の連合軍の猛反撃であえなく大友組は全滅。これぞまさしくヤクザ抗争におけるバタフライエフェクトと呼ぶにふさわしいエスカレーション劇、まことに見事な脚本です。この映画で面白いのは、北村総一朗が三浦友和を、椎名桔平が加瀬亮を、そしてたけしが小日向文世をと上位者や先輩が目下の者に恥をかかせたり殴ったりするのですが、三人とも逆襲されて無残な最期を迎えます。アウトレイジな世界でも、行き過ぎたパワハラは禁物ということなんでしょう。 とは言え、「やっぱたけし映画だなあ」と嘆息させられたのも確かです。それは大友が山王会会長に「池本を殺っちゃえ」と唆されるところで、大友が会長の甘言を疑わずに信じていたところです。たけしが自身の映画で演じるヤクザは、どれもお人よしだったり過剰にカッコつけたりなど悪人に徹しきれていないのは彼個人のナルシスト気質が濃厚すぎるからで、これが鼻につくんです。あんだけ無法の限りを尽くした大友が、あんな見え見えの策略に引っかかるようなアホでしたってのは、私には耐えがたいところです。半面、池元演じる國村隼の人間の卑しい面をこれでもかと強調した演技は、もう絶賛しかないです。これは『仁義なき戦い』シリーズの金子信雄を超えちゃったかもしれません。できたら二作目以降も出てほしかったけど、さすがのたけしも死人を蘇らせる(自分が復活するだけで精一杯)わけにはいかないでしょう(笑)。まあこの映画の前日譚を撮るという手もありますけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-01-23 22:08:57)
11.  暗黒女子 《ネタバレ》 
これが清水富美加の出家騒動であわやお蔵入りになりかけたやつですね。ストーリーテリングからして『キサラギ』のJK版という感じが濃厚。原作は若手女流作家の推理小説だそうで、原作が『キサラギ』の影響を強く受けたというのが正解でしょう。でもキャスティングからして文学サークル会長代行の清水富美加があまりにも怪しげなので、細部はともかくとしてオチの方向性は序盤からバレバレ。しかも文学サークル定例会の恒例行事が闇鍋というところからして、設定の無理やり度が高すぎです。そういうところからして、原作自体がケータイ小説の多少出来が良いバージョン程度なのかもしれません。飯豊まりえの死の顛末やラストの展開などに現実味がこれっぽっちもないのですから、いっそのこと“文学サークルは悪魔崇拝グループだった”みたいなオカルト噺にしたほうが正解だったんじゃないかな、でも原作があるからそういうわけにもいかないか。 清水が出家騒動の時に「人間を喰う内容の映画に出演しなければならなかったのが嫌だった」と事務所をディスっていたのはこの映画のことだったのかな?でも彼女は『東京喰種トーキョーグール』もほぼ同時期に出演してたよな、こりゃレプロもしくじったな(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2018-11-14 22:41:01)
12.  あさひなぐ 《ネタバレ》 
アイドル映画としてはかなり上質な出来ではないでしょうか。乃木坂のメンバーは西野七瀬と白石麻衣ぐらいしか顔認識ができない私ですが、調べると主要キャストはほとんど乃木坂のメンバーなんですね。二年生の部長を演じる伊藤万理華って女優がけっこう個性があって上手いなあと思ったら、彼女も撮影当時は在籍していた元メンバーだったんですね(すいません知識がなさ過ぎて)。かなりコメディ色が強い撮り方ですが、演出のテンポが良いので愉しめました。演技力に難があるアイドルを起用する場合は、それをカヴァーするためにカット割りを短くするのがコツですが、こういうアイドルばかり出演する作品になるとそれがストーリーテリングのテンポをよくしてくれる効果があるわけです、これも怪我の功名ですかね。 面白いのは二ツ坂高校という校名で、私はてっきり乃木坂・欅坂の二つのグループ名をもじったシャレなのかと思っていたら、原作コミックの連載開始の方が乃木坂46結成より早かったんですね。現在の坂道グループの隆盛を予言しているみたいで面白いと思います。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-09-30 21:39:32)
13.  赤西蠣太 《ネタバレ》 
これほど見事に省略技法と繰り返し話法を駆使する映画は初めてです。ラストの小波の家を訪れた赤西蠣太の「今日はあまりゆっくりできなくて…」の三回繰り返し、そしてウェディング・マーチで閉めるセンスにはもう脱帽。確かに夭逝せずに戦後まで映画界におれば、伊丹万作は日本を代表する巨匠に間違いなくなっていたでしょう。あの片岡千恵蔵が不細工男に扮してラブコメするのが観られるなんて、予想もしませんでした。また原田甲斐との二役も見事な貫録で、これが同一人物とは信じられないですよね。この映画の魅力を語るにはモダンなカメラワークを外すことはできません。冒頭の唐傘がクルクルと回るところやクライマックスの寛文事件の立ち回りなど、真上からとらえたショットはバスビー・バークレーのミュージカル映画を彷彿させるセンスです。 古い映画ですけど、観て絶対に損はないですよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-19 23:44:42)
14.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
やっぱり日本映画界はできる子だったんですよ、でもこれだけグロかったら地上波放送は絶対に無理ですね。と思ってよくクレジットを眺めたら、この映画にはTV局が製作委員会に加わってないんですよ。日本映画界をここまでダメにしちゃったのは、製作委員会に大手TV局が名を連ねていることなんだなと、確信した次第です。 主人公とJKが山に迷い込むまでのこの世の終わり感は半端なくて、ここだけでもハリウッドのゾンビ映画と真っ向勝負ができるでしょう。「テレ東が通常放送をやめたら日本は終わり」というネットギャグを盛り込んでいるところなんか苦笑ですが、これも製作にTV局が絡んでないから可能な脚本だったのかも。半面、モールにたどり着いてからのモタモタ感は残念です。確かに立て籠もり軍団の構成には違和感があります。男女とも平均年齢が若すぎるし、とくに男は徳井優を除くとヤカラみたいなのがほとんど。その中でニートみたいな吉沢悠がリーダーとして采配を振るえたというのは、なんか説得力がないんですよね。大泉洋のヘタレぶりは観ていてイライラさせられるほど上手いです、銃刀法違反を極端に気にする訳の分からない小心さも笑えました。まあなんでこんな漫画アシスタントがクレー射撃用ライフルを持っているのかは謎ですけど(笑)。 これは原作ありきなんでしょうけど、有村架純の身に何が起こっていたのかは、すごく気になるところです。続編製作を希望です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-15 20:04:14)
15.  穴(1957) 《ネタバレ》 
以前のレビュアーの方もおっしゃてるように、私も市川崑は”日本のビリー・ワイルダー“だったんだなと再認識させられました。コメディと言っても、邦画界でこれだけセリフ過剰な映画を上手くコントロールできる監督は稀有な存在でしょう。そしてあの京マチ子がこんなに早口なセリフのオンパレードでコメデイ演技を易々とこなせるとは全く想像を超えていました。彼女を観ていると、『ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦』のジェームズ・キャグニ―を思い出してしまいました、そういえばこれも監督はビリー・ワイルダーでしたね。 ミステリーと言ってもこういう緩いお話しなので重箱の隅をほじくるような観方をしてもしょうがないです、でもミステリーとしても良く考え込まれた脚本だと思います。ラストの船越英二の飛び込みはちょっとシュールさすら感じる唐突ぶりですけど、そのために窓に空いた大穴の周りで、死ななかった登場人物たち全員がカーテンコール宜しく勝手なことを言い合っているところなんぞ、市川崑らしいブラックな幕切れだと感じました。 でもいちばん訳が判らなかったのは、石原慎太郎の無意味としか言いようがない出演でしょうね。もう調子に乗ってど下手な歌まで披露しちゃうんだから…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-16 23:23:15)
16.  赤い天使 《ネタバレ》 
なんでも増村・若尾コンビは全部で20本ああるそうですが、たぶん本作がその最高傑作というか極北に位置することは間違いないでしょう(全部観てるわけでもないのに偉そうですが)。だってほんと凄いんだもの、現役の映画作家ではその描写のエグさ・凄まじさはとうてい真似できないと思います。そりゃエグいスプラッターは日本でも撮られていますが、両腕を切断された兵士の性処理をナースがしてあげる描写なんて、当たり障りのない題材にしか手を出さないを製作委員会方式が幅を利かせている現状では絶対にありえません。まるで魚を捌くように手足を切り落としてゆく野戦病院、そして「俺は人命を救っているんじゃなくて〇〇〇を量産しているようなもんだ」と自嘲する軍医、ここら辺は『ジョニーは戦場に行った』に通じる不条理があって究極の反戦映画とも言えそうです。若尾文子もいい思いをさせてもらった男はみんな黄泉の国へ引っ張って行っちゃう、これじゃまるで“死の天使”ではございませんか。芦田伸介と二人で兵隊コスプレで始まるどう見たっての変態プレイはちょっと異様ですけど必見です。 増村作品の若尾文子はブレるところはあっても一途な女性というパターンが多いけど、それは本作の西さくらが完成形でしょう。ここは好みが分かれるところかもしれませんが、自分は川島雄三作品の若尾文子も捨てがたい魅力があると思ってます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-11-14 23:29:10)
17.  赤線地帯 《ネタバレ》 
巨匠・溝口健二が赤線をテーマにするなんてまるで新東宝のエログロ路線の踏襲かよと思ったりしましたが、良く考えると本家はこっちで新東宝の“地帯(ライン)”シリーズは題名からして溝口をパクってるんですね。まあそのころには溝口健二はこの世の人ではなかったので、文句は言われなかったでしょうけど。 でもこの映画は新東宝なんて引き合いに出すのは大失礼なほど完成度は高いです。5人の女優のアンサンブルはそれは見事なもので、さすが「女を撮らせたら溝口」と言われただけあります。その娼婦たちをウエットになり過ぎない冷徹な視点で撮っています。娼婦と赤線経営者夫妻そして客も、みんな欠点だらけのしょうもない人物ばかりで、中でも若尾文子はとても畳の上で往生出来そうもない様な嫌な娼婦を好演していました。唯一、小暮実千代が演じる通いの娼婦だけは良い人というか感情移入出来るキャラでしたね、普段は眼鏡をかけていてまるで女教師みたいだけど凄い色気を感じました。 でもそんな小暮実千代を出し抜いて最後に美味しいところを持って行ってしまったのが、あのしず子という娘です。店屋物の丼を「わたしこんな美味しいもん生まれて初めて食べた」なんて言ってた下働きの娘が親の借金のために吉原デビューする、おしろいを塗りたくられてプロ娼婦に変貌してゆくカットは胸が痛みます。そしてラストでおどおどしながら客に声をかける姿には、思わず心を鷲掴みにされてホロリとしてしまいました。本作が溝口健二の遺作になったことを考えると、黛敏郎のまるでホラー映画の様な音楽も相まって、このラスト・カットには不気味さすら感じられました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-01-06 22:03:59)
18.  海女の化物屋敷 《ネタバレ》 
本作が菅原文太の映画初出演みたいです。生前はけっこう本数をこなした新東宝時代のことをほとんど語っていない文太のことですから、このデビュー作は彼には触れて欲しくなかった黒歴史だったんでしょう。だしかに映画デビュー作ですけど、これを一周忌ということで放映されるとは、文太もあの世で苦笑しているかもしれませんね。 とはいえ主演はあくまで三原葉子で、彼女の恋人の刑事役の菅原文太は開始20分たってやっと登場する脇役でしかありません。お話は典型的な新東宝お得意の海女ものですが、新東宝の海女もので幽霊が絡むものは純粋な怪談ではなく、ヒロインを脅かす悪漢のトリックというのがパターンですけど、本作も定石どおりです。でも三原葉子のキャラが頭が切れる素人探偵というのは、ちょっと珍しいパターンです。悪役の沼田曜一がまた彼らしい怪演を見せてくれたのは期待通りでしたね。それにしても文太は刑事のくせして全然活躍せず、ラストの三原葉子たち善玉ヒロイン危機一髪のお決まりのシーンには登場すらしてなく、沼田曜一が自滅して終わりというのはちょっと情けない。新東宝時代の文太は壮絶なまで演技がド下手でしたから、これはこれで正解なのかもとすら思えてしまいます。 でもこんな映画にも思わぬ取り柄がありまして、私が観た新東宝海女ものではずば抜けて露出度が高かったんです。冒頭の海女の水中サービスショットでは、なんと海女のオッパイぽろりのシーンまでありました。だいたい海女の衣装が臍の上でぶった切ったTシャツみたいなものだけなので(他の海女ものではその下にブラジャーらしきものを着用している)、水に濡れるとその中身がスケスケというわけです。そうなるとなんで三原葉子が海女じゃないんだと口惜しくなりますが、悪漢に捕まって小舟で海に連れ出されるシーンではなぜか下着姿になっているという無茶なサービスも有ります。 こんなことで喜んでいる様じゃ人格を疑われてしまいそうですが、新東宝プログラム・ピクチャーを研究するにはとても重要なポイントなんで、ここは得点高いです(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-11-09 21:14:03)
19.  青空娘 《ネタバレ》 
源氏鶏太が原作の人気ラジオドラマの映画化だそうですが、ストーリーは観ていて恥ずかしくなるほど通俗的でご都合主義です。でも、若き日の若尾文子の魅力を堪能するには、本作はベストに近いと言ってもいいんじゃないかな。妖艶で小悪魔チックな彼女は他の作品に譲って、もお少女漫画も白旗揚げる様なひたすら不幸な境遇にも明るく頑張り抜く彼女の笑顔は癒してくれます、ささくれだった心を。そして、誰が観ても「諸悪の根源はおまえだろ!」と言いたくなるダメな父親に最後に言い放つ口調は柔らかいけどキツイお説教、これは実に爽快でしたね。ここから若尾文子・増村保造の黄金コンビが始まったかと思うと、感無量です。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2015-10-26 22:17:10)
20.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
良く考えてみると脱獄してからの展開は『手錠のままの脱獄』のパクリみたいなもんですが、そんなことを微塵も感じさせない痛快な作品です。広大な国土のアメリカと違って日本では脱獄は自殺行為だと思ってましたが、こういう風に北海道の最果てなら成功して逃げ切れそうな説得力があります。 いつも通りのストイックで家族思いの高倉健なんですが、この映画の健さんは饒舌とまではいかないにしても良く喋るんです。入浴のシークエンスではハダカで阿波踊りまで見せてくれるんですから、びっくりです。でも随所で流される健さんのナマ歌『網走番外地』には、なんか荘厳な響きすら感じて震えちゃいました。 監督の石井輝男を始めとしてアラカンや丹波哲朗といった新東宝の残党メンバーたちの底力がこの作品を傑作にまで高めたのかもしれませんね。アラカンの鬼寅はさすがの迫力でしたし、丹波が最後までイイ人だったというパターンも珍しい。この映画は本来二本立て興行のBプロとして撮られた小品なんですけど、これでも新東宝の予算じゃ決して撮れない企画なんだから石井輝男も思い残すことなかったでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2015-02-10 20:16:10)(良:1票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS